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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】フロースルー液体バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
F16K31/06 305M
F16K31/06 305J
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019005805
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2019152329
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】62/621,641
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/171,450
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505296441
【氏名又は名称】エムエイシー・バルブス,インク
【氏名又は名称原語表記】MAC VALVES,INC
【住所又は居所原語表記】30569 BECK ROAD,P.O.BOX 111,WIXOM,MICHIGAN 48393,UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランデイカー ブレット アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ ジェフリー
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-133179(JP,U)
【文献】特開2009-63024(JP,A)
【文献】国際公開第2016/106310(WO,A1)
【文献】実開昭58-150679(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられた弁座と、
前記弁座に近接して前記筐体内に配置され、前記弁座に対して進退可能であり、第1電機子と、この第1電機子に対し相対移動可能な第2電機子とを有する電機子アセンブリと、
前記電機子アセンブリを前記弁座から離隔させてバルブを開くコイルと、を備え、
前記コイルに第1電流が印加されると、前記第1電機子と前記第2電機子はそれぞれ、前記弁座から離隔され第1の開状態となり、
前記コイルに前記第1電流より大きい第2電流が印加されると、前記第2電機子は、前記第1電機子から離隔され、前記第1の開状態より多くの流体流量が前記バルブを通過することを可能とする第2の開状態になることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記第2電機子は前記第1電機子内に設置されることを特徴とする請求項に記載のバルブ。
【請求項3】
前記第1電機子および前記第2電機子にはそれぞれ、流体が前記電機子アセンブリの内部を通過することができるように複数のポートが形成され、
前記第1の開状態において、前記流体は前記第1電機子の前記複数のポートを通過可能だが、前記第2電機子の前記複数のポートは通過できず、
前記第2の開状態において、前記流体は前記第1電機子および前記第2電機子それぞれの前記複数のポートを通過可能であることを特徴とする請求項に記載のバルブ。
【請求項4】
前記第1電機子は、第1弾丸状端部および反対側の第2弾丸状端部を有する中空の円筒状部材であり、この第1弾丸状端部は、前記弁座に形成される円錐状の凹部に対応することを特徴とする請求項に記載のバルブ。
【請求項5】
前記中空の円筒状部材の内部は、前記バルブの閉状態において前記第2電機子と係合する円錐状座部を規定することを特徴とする請求項に記載のバルブ。
【請求項6】
前記第2電機子は、前記第1電機子の前記円錐状座部に対応する弾丸状端部を有する中空の円筒状部材であり、前記第2電流が前記コイルに印加されると前記コイルと協働する磁気プラグを内部に有することを特徴とする請求項に記載のバルブ。
【請求項7】
前記電機子アセンブリを前記弁座に向かって付勢するバネをさらに備えることを特徴とする請求項に記載のバルブ。
【請求項8】
前記コイルと前記電機子アセンブリの間にインナーシェルをさらに備えることを特徴とする請求項に記載のバルブ。
【請求項9】
前記コイルは、前記インナーシェルと前記筐体の間に配置されることを特徴とする請求項に記載のバルブ。
【請求項10】
筐体と、
前記筐体内に設けられた弁座と、
磁性体から形成され、バルブが閉状態にあるとき前記弁座に係合し、前記バルブが開状態にあるとき前記弁座から離隔し、全長にわたって軸方向に延出する流路と前記全長にわたって軸方向に延出する前記流路から径方向外側に配置される複数の第1流体ポートとを有する第1電機子と、
前記第1電機子の前記軸方向に延出する流路内に配置され、前記第1電機子に対して相対移動可能であり、磁気プラグを収容して軸方向に延出する凹部が内部に形成され、前記軸方向に延出する凹部の径方向外側で全長にわたって軸方向に延出する複数の第2流体ポートを有する第2電機子と、
前記第1および第2電機子を動かして前記バルブを開くコイルと、を備え、
前記コイルに第1電流が印加されると、前記第1電機子の前記磁性体は前記コイルと相互作用し、前記第1および第2電機子を前記弁座から離隔させ、前記バルブを第1の開状態にし、
前記コイルに前記第1電流より大きい第2電流が印加されると、前記第2電機子の前記磁気プラグは前記コイルと相互作用し、前記第2電機子を前記第1電機子から離隔し、前記バルブを前記第1の開状態より多くの流体流量が前記バルブを通過することを可能とする第2の開状態にすることを特徴とするバルブ。
【請求項11】
前記第1の開状態において、流体は前記第1電機子の前記複数の第1流体ポートを通過可能だが、前記第2電機子の前記複数の第2流体ポートは通過できず、
前記第2の開状態において、流体は前記第1電機子の前記複数の第1流体ポートおよび前記第2電機子の前記複数の第2流体ポートを通過可能であることを特徴とする請求項10に記載のバルブ。
【請求項12】
前記第1電機子は第1弾丸状端部と反対側の第2弾丸状端部とを有することを特徴とする請求項10に記載のバルブ。
【請求項13】
前記第1電機子の前記軸方向に延出する流路は、前記バルブの閉状態において前記第2電機子と係合する円錐状座部を規定することを特徴とする請求項10に記載のバルブ。
【請求項14】
前記第2電機子は、前記第1電機子の前記円錐状座部に対応する弾丸状端部を有する中空の円筒状部材であり、前記第2電流が前記コイルに印加されると、前記磁気プラグは前記コイルと協働することを特徴とする請求項13に記載のバルブ。
【請求項15】
前記第1電機子を前記弁座に向かって付勢するバネをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のバルブ。
【請求項16】
前記コイルと前記第1電機子の間にインナーシェルをさらに備え、
前記コイルは、前記インナーシェルと前記筐体の間に配置されることを特徴とする請求項10に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年1月25日に出願されたアメリカ仮出願番号第62/621,641の利益を主張する。上記出願の開示事項全体が本明細書に援用される。
【0002】
本願開示事項はバルブに関する。
【背景技術】
【0003】
本セクションは、必ずしも先行技術ではない本願開示事項に関連する背景情報を示すものである。
【0004】
ビール(あるいは他の飲料、液体もしくは流体)に二酸化炭素等のガスを加え、各種供給ラインを介して移動させると、このガスが引き込まれて(entrained)液体に溶け、約華氏30度以下の温度では安定した状態で存在する。通常、このガスは液体から泡となって抜けることなく液体に含まれた状態で運ばれ、摂取(飲んだ)時、飲料に特有の泡立ちをもたらす。しかしながら、流体の温度が華氏30度を超えると、装置への圧力が上昇しなければ、ガスは徐々に不安定なり、流れる液体から泡立ち始める。液体がさらに温まると、泡立ち効果が増す。というのは、ガスの気泡が形成され、下流に向かって増殖からである。泡立ちは、ディスペンサーバルブから流体が供給される際に生じる乱流等の液体内の乱れ(disturbances)によりさらに悪化する。常室温に曝されるなどして液体が華氏45度以上に温められると、ガスは十分に不安定となり、供給時に非常に多くの泡が生成されるため、しばしば好まれない。
【0005】
液体温度の好ましくない上昇を引き起こしうる要因の一つは、ソレノイドバルブの使用である。つまり、電流がソレノイドコイルに印加されてバルブが動かされると、バルブを流れる液体を熱しうる熱が生成される。このことは好ましくないため、バルブ使用時に流体に熱を伝達しないバルブが流体を供給する際に必要とされる。
【0006】
液体内の泡の形成に影響を及ぼす別の要因は、バルブ内の流路である。つまり、その内部を流れる流体が何度も方向を変更しなければならない流路の場合、液体中の泡の量が増加する可能性があり、前述の通り好ましくない。
【発明の概要】
【0007】
本セクションは、開示事項の概括的要約を示すものであり、その範囲全体またはその特徴の全ての包括的開示ではない。
【0008】
本願開示事項の第1の側面によれば、筐体と、磁極部材と、弁座と、前記磁極部材と前記弁座の間に配置される電機子と、前記電機子を前記弁座に付勢して係合させるバネ部材と、を有する電機子アセンブリと、を備えるバルブが提供される。前記バルブはまた、電流が印加されているときは、前記電機子を前記弁座から離隔させて前記バルブを開き、電流が印加されていないときは、前記バネ部材に前記弁座に向かって前記電機子を付勢させて前記バルブを閉じるコイルを備える。前記電機子には、前記バルブが開いているとき、前記流体が前記電機子の内部を通過することができるように複数のポートが形成される。前記電機子は第1弾丸状端部および反対側の第2弾丸状端部を有する円筒状部材である。この第1および第2弾丸状端部は前記磁極部材および前記弁座に形成される円錐状の凹部にそれぞれ対応する。
【0009】
本願開示事項の第2の側面によれば、筐体と、前記筐体内に設けられた弁座と、前記弁座に近接して前記筐体内に配置された電機子アセンブリと、を備えるバルブが提供される。前記電機子アセンブリは、前記弁座に対して進退可能であり、第1電機子と、この第1電機子に対し相対移動可能な第2電機子とを有する。前記バルブはまた、前記電機子アセンブリを前記弁座から離隔させて前記バルブを開くコイルを備え、前記コイルに第1電流が印加されると、前記第1電機子と前記第2電機子はそれぞれ、前記弁座から離隔され第1の開状態となり、前記コイルに前記第1電流より大きい第2電流が印加されると、前記第2電機子は、前記第1電機子から離隔され、前記第1の開状態より大きい第2の開状態になる。
【0010】
本願開示事項の第3の側面によれば、筐体と、前記筐体内に設けられた弁座と、を備えるバルブが提供される。磁性体から形成される第1電機子は、バルブが閉状態にあるとき前記弁座に係合し、前記バルブが開状態にあるとき前記弁座から離隔する。前記第1電機子は、全長にわたって軸方向に延出する流路と、前記全長にわたって軸方向に延出する前記流路から径方向外側に配置される複数の第1流体ポートとを有する。第2電機子は、前記第1電機子の前記軸方向に延出する流路内に配置される。前記第2電機子は、前記第1電機子に対して相対移動可能であり、磁気プラグを収容して軸方向に延出する凹部が内部に形成される。前記第2電機子は、前記軸方向に延出する凹部の径方向外側で全長にわたって軸方向に延出する複数の第2流体ポートを有する。前記バルブはまた、前記第1および第2電機子を動かして前記バルブを開くコイルを備え、前記コイルに第1電流が印加されると、前記第1電機子の前記磁性体は前記コイルと相互作用し、前記第1および第2電機子を前記弁座から離隔させ、前記バルブを第1の開状態にし、前記コイルに前記第1電流より大きい第2電流が印加されると、第2電機子の前記磁気プラグは前記コイルと相互作用し、前記第2電機子を前記第1電機子から離隔し、前記バルブを前記第1開状態より大きい第2の開状態にする。
【0011】
さらなる利用分野は、本願明細書に示される記載から明らかになるであろう。この概要における説明および特定の実施例は、説明のみを目的とするものであり、本願開示事項の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
ここに示される図面は、選択された実施形態の説明のみを目的とするものであり、可能な全ての実施を示すものではなく、本願開示事項の範囲を限定することを意図するものでもない。
図1】本願開示事項の第1の原理によるバルブの斜視図である。
図2図1に示されるバルブの別の斜視図である。
図3図1に示されるバルブの分解斜視図である。
図4】閉状態にある図3に示されるバルブの断面図である。
図5】開状態にある図3に示されるバルブの断面図である。
図6】閉状態にある、本願開示事項の第2の原理による別のバルブの断面図である。
図7】低流量状態にある図6に示されるバルブの断面図である。
図8】高流量状態にある図6に示されるバルブの断面図である。 図面中のいくつかの図を通じて、対応する参照番号は対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例示的実施形態を、添付図面を参照してより十分に説明する。
【0014】
図1から5は、本願開示事項におけるフロースルー液体バルブ10を示す。バルブ10は、外装シェルすなわち筐体12と、筐体12に係合する内部電機子アセンブリ14と、筐体12と電機子アセンブリ14との間に配置され、通電時、電機子アセンブリ14を動かしてバルブ10を開閉するコイル13とを備える電気機械式バルブである。筐体12は、第1端部18と第2端部20とを有する筒体16を備える。第1端部18は経方向内側に延出する壁部22を有する。筐体12は、電気機械式のバルブ10の使用中に磁界を生成可能な、鋼材や他の材料といった当業者に周知の材料から形成されてもよい。
【0015】
電機子アセンブリ14は、内面26と外面28とを有するインナーシェル24を備える。インナーシェル24は、電機子30と、弁座32と、磁極部材34を収容し、コイル13は筐体12とインナーシェル24との間に配置される。磁極部材34は略円筒状部材であり、外面36と、内部を通る流路40を規定する内面38を有する。インナーシェル24と磁極部材34の間をシールするために、一対のOリング42がインナーシェル24と外面36の間に配置されてもよい。磁極部材34の一部は、インナーシェル24の内面26に形成された対応するねじ面46に係合するねじ面44を有する。磁極部材34の内面38は円筒状であり、変更可能な第1内径D1を有する。電機子30に近づくにつれ、内面38に第2内径D2を有する径方向拡張部48が形成されるように、内面38は径方向に拡張する。D1と同様にD2も変更可能である。磁極部材34はまた、一体に設けられた流入部50を有する。なお、本願開示事項の範囲を逸脱しなければ、流入部50を磁極部材34とは別体にし、ろう付けや、溶接や、他の取付方法により磁極部材34に取り付けてもよい。
【0016】
磁極部材34と同様に、弁座32は略円筒状の部材であり、外面52と、流路55を規定する内面54を有する。インナーシェル24と弁座32の間をシールするために、一対のOリング56がインナーシェル24と外面52の間に配置されてもよい。さらに、弁座32は、インナーシェル24の端部60に当接可能な肩部を規定する、径方向外側に延出するフランジ58を有する。弁座32の内面54は円筒状であり、電機子30の内径D1と略等しい内径D3を有する。なお、D1およびD3は様々な大きさにすることができ、必ずしも等しいわけではない。内面54が電機子30から遠ざかるにつれ、径方向拡張部62が形成されるように内面54は径方向に拡張する。径方向拡張部62における内面54の内径D4は、磁極部材34の内径D2より大きくてもよく(図示の通り)、あるいは、内径D4は内径D3と略等しくてもよい。なお、直径D4は変更可能である。また、弁座32は一体に設けられた流出部64を有してもよい。なお、本願開示事項の範囲を逸脱しなければ、流出部64を弁座32とは別体にし、ろう付けや、溶接や、他の取付方法により弁座32に取り付けてもよい。
【0017】
電機子30は円筒状部材であり、磁極部材34および弁座32にそれぞれ形成された対応する円錐状座面70、72に係合する第1弾丸状端部66および第2弾丸状端部68を有し、電機子30が閉位置(図4)および開位置(図5)の間で動かされると、弾丸状端部66、68が円錐状座面70、72にそれぞれ着座する。電機子30は、コイル13が通電されると、コイル13と協働するように設計された磁性体から形成されてもよい。電機子30は、弾丸状端部66から第2弾丸状端部68に向かって軸方向に電機子30を貫通すると共に、電機子30の軸方向長さに沿って見たとき電機子30が蝶形となるように、インナーシェル24に向かって径方向外側に延出する複数のフローポート74を有する。フローポート74の形状は、図3で最もよく図示されている。電機子30は4つのフローポート74を有するように図3では図示されているが、これに限られず、フローポート74の数はそれより多くまたは少なくてもよい。バルブ10が開状態のとき、流体は、流入部50から流入して磁極部材34を通過し、弁座32に向かってフローポート74を通過し、弁座32を通過して流出部64から流出可能となる。フローポート74は流路40、55と軸方向に並んでいるため、バルブ10を流れる流体がバルブ10を流れる際に受ける乱流が少なくて済む。さらに、弾丸状端部66により流体は容易にフローポート74に流出入可能となり、乱流がさらに抑制される。したがって、流体がビールまたは他の種類の炭酸飲料である場合、流体がバルブ10内を移動する際に生じる泡立ちが少なくなる。バルブ10が閉状態にあるとき(図4)、電機子30の弾丸状端部68は弁座32に対して着座する。バルブ10が閉じているときに流体が弁座32を通過しないことを確実にするために、弁座32の円錐面72は、電機子30の弾丸状端部68に係合するシール部材73を有してもよい。
【0018】
バネ部材76が、磁極部材34の径方向拡張部48内において電機子30と磁極部材34の間に配置され、バルブ10が閉状態にあるとき(図4)、電機子30を付勢して弁座32に係合させる。バネ部材76は、コイルばねとして図示されているが、当業者に周知の他のバネを適宜使用可能である。
【0019】
前述したように、コイル13は電機子アセンブリ14と筐体12の間に配置される。コイル13は円筒状のコイルシート84内に配置され、筐体12の径方向内側に延出する壁部22に当接する端部86と、筐体12の第2端部20に近接して配置される別の端部88を有する。コイル13とコイルシート84が径方向内側に延出する壁部22に当接した(seated)状態を確実に維持するために、環状板材90がインナーシェル24周りに配置され、筐体12の第2端部20に当接される(seated)。第1シール部材92がコイルシート84と環状板材90の間に配置され、第2シール部材94が第2端部20と環状板材90の間に配置され、第3シール部材96が環状板材90とインナーシェル24の間に配置される。
【0020】
環状板材90は、環状板材90に導体100を通し、コイル13に電流を供給可能にするための開口98を有する。開口98内にはカップリング102が配置され、導体100をシールする。環状板材90が筐体12の第2端部20に適切に当接した(seated)状態を確実に維持するため、筐体12の第2端部20との間に環状板材90を挟む円筒状のキャップ部材104が、106で磁極部材34のねじ面44に螺合される。キャップ部材104を電機子アセンブリ14に固定可能にするために、図1および2で最もよく図示されるように、キャップ部材104は、キャップ部材104を磁極部材34に螺合・離隔する際に、キャップ部材104を把持して適切に回動することを可能にする戻り止め108を有する。
【0021】
図4および5に示されるように、筐体12は電機子アセンブリ14に固定されない。したがって、筐体12とコイル13が適切に電機子アセンブリ14周りに配置されることを確実にするために、インナーシェル24の外側のねじ面112に螺合されるロックナット110がキャップ部材104と合わせて使用される。ロックナット110は、外側のねじ面112との係合可能な円筒状のねじ面114と、レンチ等を用いてロックナット110をインナーシェル24にきつく連結可能にする、外形が六角形状の外面116を有する。本願開示事項の要件ではないが、キャップ部材104およびロックナット110のそれぞれから筐体12およびコイル13に過度の力が加わることを防ぐために、ロックナット110と筐体12の間に環状ワッシャ118を設けてもよい。
【0022】
最後に、バルブ10は、バルブ10における弁座32に近接した位置でインナーシェル24に取り付けられるボンネット120を備える。ボンネット120は、インナーシェル24の外側のねじ面112に連結可能なねじ124を内面126に有する円筒状延出部122を有する。ボンネット120はまた、内部に流体流出部64を収容する、径方向内側に延出するカバー128を有する。カバー128の内面130は、径方向外側に延出する弁座32のフランジ58に当接する。また、円筒状延出部122の外面132は、ボンネット120をインナーシェル24に対して回動させ、螺合により固定可能にする六角形状の輪郭を有してもよい。
【0023】
図4は、バルブ10が閉状態にあるときのバルブ10を示す。つまり、コイル13が通電されないように、導体100には電流が印加されない。図5は、バルブ10が開状態にあるときのバルブ10を示す。前述したように、電機子アセンブリ14を動かす際、導体100を介して電流源(図示されず)からコイル13に電流が印加される。コイル13が通電されると、コイル13は磁気的に電機子30と相互作用し、電機子30を磁極部材34の方に引き戻す。電機子30が磁極部材34の方に引き戻されると、流体が流体流入部50からバルブ10に流入し、電機子30に形成されたフローポート74および弁座32を通過して流体排出口64に至る。バルブ10を閉じる場合、コイル13がこれ以上通電されないように、電流源(図示されず)からコイル13への電流は停止され、これによりコイル13と電機子30間の磁気的相互作用が解除される。そして、バネ部材76が電機子30を付勢し、弁座32とシール可能に係合した状態に戻す。
【0024】
図3および4に示されるように、電機子30は、バルブ10が開いてるとき、電機子30周りではなく流体に電機子30内を通過させることができるフローポート74を有する。この構成によれば、電機子30をコイル13により近接して配置することができる。さらに、電機子30およびコイル13間の流体が実質的に少なくなることから、電機子30およびコイル13間の磁気的相互作用に影響する干渉が減少し、電機子30を動かすために必要な動力、すなわち電流を小さくすることができる。このことは、バルブ10を動かすために必要な動力が小さくなるため、コイル13の通電時に生じる熱も減少するという点で、本願開示事項の重大な側面の一つである。生じる熱が減少するため、バルブ10内を流れる流体に伝達される熱が減少する。したがって、バルブ10は、バルブ10の使用中に流体が熱されることが好ましくない、飲料供給等の流体に関する用途に使用可能である。
【0025】
バルブ10を流れる流体の流れは、流体流入口50から流体排出口64であると記載しているが、バルブ10はその反対方向にも動作可能である。つまり、流体排出口64は流体流入口として機能してもよく、流体流入口50は流体排出口として機能してもよい。
【0026】
図6から8は、本願開示事項における別のフロースルー液体バルブ210を示す。バルブ210は、外装シェルすなわち筐体212と、筐体212内に設けられる電機子アセンブリ214と、筐体212と電機子アセンブリ214との間に配置され、通電時、電機子アセンブリ214を動かし、バルブ210を開閉するコイル216とを有する電気機械式バルブである。筐体212は、第1端部220と第2端部222とを有する筒体218を備える。第1端部220は経方向内側に延出する壁部224を有する。筐体212は、電気機械式のバルブ210の使用中に磁界を生成可能な、鋼材や他の材料といった当業者に周知の材料から形成されてもよい。
【0027】
内面228と外面230とを有するインナーシェル226が、コイル216と電機子アセンブリ214の間に設けられてもよい。インナーシェル226は、電機子アセンブリ214と、弁座234と、磁極部材236を収容し、コイル216は筐体212とインナーシェル226との間に配置される。磁極部材236は略円筒状の部材であり、外面238と、内部を通る流路242を規定する内面240を有する。インナーシェル226と磁極部材236の間をシールするために、一対のOリング244がインナーシェル226と外面238の間に配置されてもよい。磁極部材236の一部は、インナーシェル226の内面228に形成された対応するねじ面248に係合するねじ面246を有する。磁極部材236の内面240は円筒状であり、変更可能な第1内径D1を有する。電機子アセンブリ214に向かって延出するにつれ、内面240に第2内径D2を有する内面の径方向拡張部分250が形成されるように、内面240は径方向に拡張する。D1と同様にD2も変更可能である。磁極部材236はまた、一体に設けられたねじ付き流入部252を有する。なお、本願開示事項の範囲を逸脱しなければ、流入部252を磁極部材236とは別体にし、ろう付けや、溶接や、他の取付方法により磁極部材236に取り付けてもよい。
【0028】
磁極部材236と同様に、弁座234は略円筒状の部材であり、外面254と、流路258を規定する内面256を有する。インナーシェル226と弁座234の間をシールするために、一対のOリング260がインナーシェル226と外面254の間に配置されてもよい。さらに、弁座234は、インナーシェル226のねじ付き端部266に当接可能な肩部264を規定する、径方向外側に延出するねじ付きフランジ262を有する。弁座234の内面256は円筒状であり、磁極部材236の内径D1より小さく図示される内径D3を有する。なお、D1およびD3は様々な大きさにすることができ、本願開示事項の範囲を逸脱しなければ等しくてもよい。また、弁座234は一体に設けられたねじ付き流出部268を有してもよい。なお、本願開示事項の範囲を逸脱しなければ、流出部268を弁座234とは別体にし、ろう付けや、溶接や、他の取付方法により弁座234に取り付けてもよい。
【0029】
電機子アセンブリ214は、バルブ210を開状態にしたい場合に、低流量状態と高流量状態を可能にするツーピース構造である。つまり、電機子アセンブリ214は、第1の低流電機子270と、第2の高流電機子272とを有する。電機子30と同様に、第1電機子270は中空の円筒状部材であり、弁座234および磁極部材236にそれぞれ形成された対応する円錐状座面278、280に係合する第1弾丸状端部274および第2弾丸状端部276を有し、電機子アセンブリ214が閉位置(図6)および開位置(図7および8)の間で動かされると、弾丸状端部274、276が円錐状座面278、280にそれぞれ着座する。第1電機子270は、第1弾丸状端部274において径方向に狭められて第2電機子272用の円錐状座面284を規定する、軸方向に延びる流路282を有し、第2電機子272は軸方向に延びる流路282内に移動可能に収容される。座面284は、第2電機子272に当接するシール部材286を有する。
【0030】
第2電機子272は、円錐状座面284に係合するように構成された弾丸状端部288を有する、円筒状の部材である。第2電機子272は第1電機子270に対して相対移動可能だが、電機子アセンブリ214が動かされると、第1電機子270と共に移動するように構成される。第2電機子272は、第2電機子272の略全長にわたって延出するが弾丸状端部288には到達しない、軸方向に延出する凹部290を有する。ボルト状のプラグ292が凹部290内に設置される(seated)。プラグ292は、凹部290内に設置された(seated)シャンク部294と、第2電機子272の端部298に当接される、シャンク部294よりも直径が大きい頭部296とを有する。
【0031】
第1電機子270とプラグ292は、コイル216が通電されると、コイル216と協働するように設計された磁性体から形成されてもよい。第1電機子270は、第1弾丸状端部274から第2弾丸状端部276に向かって軸方向に第1電機子270貫通すると共に、電機子270の軸方向長さに沿って見たとき(例えば、図3参照)電機子270が蝶形となるように、インナーシェル226に向かって径方向外側に延出する複数のフローポート300を有する。同様に、第2電機子272も、端部298から弾丸状端部288に向かって延出すると共に、第2電機子272の軸方向長さに沿って見たとき第2電機子27が蝶形となるように、第1電機子270に向かって径方向外側に延出する複数のフローポート302を有する。
【0032】
第1および第2電機子270、272は、それぞれ4つのフローポート300、302を有する。なお、これに限られず、フローポート300、302の数はそれぞれ、それより多くまたは少なくてもよい。バルブ210が開状態にあるとき、流体は、流入部252から流入して磁極部材236を通過し、弁座234に向かってフローポート300および/または302を通過し、弁座234を通過して流出部268から流出可能となる。フローポート300、302は、流路242、258と軸方向に並んでいるため、バルブ210を流れる流体がバルブ210を流れる際に受ける乱流が少なくて済む。さらに、弾丸状端部274、276、288により、流体は容易にフローポート300および/または302に流出入可能となり、乱流がさらに抑制される。したがって、流体がビールまたは他の種類の炭酸飲料である場合、流体がバルブ210内を移動する際に生じる泡立ちが少なくなる。バルブ210が閉状態にあるとき(図6)、第1電機子270の第1弾丸状端部274は弁座234に着座し、第2電機子272の弾丸状端部288は第1電機子270の円錐状座面284に着座する。バルブ210が閉じているときに流体が弁座234を通過しないことを確実にするために、弁座234の円錐面278は、第1電機子270の第1弾丸状端部274に係合するシール部材304を有してもよく、円錐状座面284は、第2電機子272の弾丸状端部288に係合するシール部材286を有する。
【0033】
バネ部材306が、第1電機子270と磁極部材236の間に配置され、バルブ210が閉状態にあるとき(図6)、第1電機子270を付勢して弁座234に係合させる。バネ部材306は、コイルばねとして図示されているが、当業者に周知の他のバネを適宜用いてもよい。
【0034】
前述の通り、コイル216は、電機子アセンブリ214と筐体212の間に配置される。コイル216は円筒状のコイルシート308内に配置され、インナーシェル226の径方向外側に延出するフランジ312に当接される端部310と、筐体212の径方向内側に延出する壁部224に近接して配置される別の端部314を有する。シール部材316が、コイルシート308と径方向内側に延出する壁部224の間に配置される。
【0035】
径方向内側に延出する壁部224は、径方向内側に延出する壁部224に導体320を通し、コイル216に電流を供給可能にするための開口318を有する。開口318内にはカップリング322が配置され、導体320をシールする。
【0036】
図6は、バルブ210が閉状態にあるときのバルブ210を示す。この場合、コイル216が通電されないように、導体320には電流が印加されない。図7および8は、バルブ210が開状態にあるときのバルブ210示す。前述したように、電機子アセンブリ214を動かす際、導体320を介して電流源(図示されず)からコイル216に電流が印加される。コイル216が通電されると、コイル216は磁気的に電機子アセンブリ214と相互作用し、電機子アセンブリ214を磁極部材236の方に引き戻す。電機子アセンブリ214が磁極部材236の方に引き戻されると、流体が流体流入部252からバルブ210に流入し、電機子アセンブリ214に形成されたフローポート300および/または302を通過し、かつ、弁座234を通過して流体排出口234に至る。バルブ210を閉じる場合、コイル216がこれ以上通電されないように、電流源(図示されず)からコイル216への電流は停止され、これによりコイル216と電機子アセンブリ214間の磁気的相互作用が解除される。そして、バネ部材306が電機子アセンブリ214を付勢し、弁座234とシール可能に係合した状態に戻す。
【0037】
図7は、バルブ210が第1の開位置にあるときの、バルブ210の低流量状態を示す。図7に示されるように、第1弾丸状端部274が円錐状座面278から引き離されて流体がフローポート300を通過可能となるように、第1電機子270のみがコイル216によって動かされている。つまり、バルブ210の低流量状態時、流体がフローポート302内を流れないように、第2電機子272は円錐状座面284に着座し続ける。これは、導体320を通ってコイル216に流れる電流の量を制御することにより達成される。より具体的に、コイル216に印加される電流の量は、第1電機子270の磁性体と相互作用させるのに十分であればよい。すなわち、プラグ292がコイル216からさらに離隔しているため、コイル216に印加される電流が減少すると、第1電機子270のみがコイル216と相互作用し、バルブ210を開いて低流量状態にする。
【0038】
図8は、バルブ210が第2の開位置にあるときの、バルブ210の高流量状態を示す。図8に示されるように、第1弾丸状端部274が円錐状座面278から引き離されて流体がフローポート300を通過可能となり、また、第2電機子272の弾丸状端部288が円錐状座面284から引き離されて流体がフローポート302を通過可能となるように、第1電機子270および第2電機子272がそれぞれコイル216によって動かされている。流体がフローポート300およびフローポート302の両方を流れることができるため、より多くの量の流体がバルブ210を通過可能である。これは、導体320を通ってコイル216に流れる電流の量を増加させることにより達成される。つまり、コイル216に印加される電流の量を増加するだけで、第1電機子270の磁性体とプラグ292の磁性体とを相互作用させるのに十分である。すなわち、プラグ292がコイル216からさらに離隔していても、コイル216に印加される電流が増加されるため、第1電機子270とプラグ292のそれぞれがコイル216と相互作用し、バルブ210を全開にして高流量状態にする。
【0039】
なお、第2電機子272をシール部材286に付勢する別のバネ(図示されず)を第2電機子272と磁極部材236の間に配置してもよい。
【0040】
図7および8に示されるように、電機子アセンブリ214は、バルブ210が開いてるとき、電機子アセンブリ214周りではなく流体に電機子アセンブリ214内を通過させることができるフローポート300、302を有する。この構成によれば、電機子アセンブリ214をコイル216により近接させることができる。さらに、電機子アセンブリ214およびコイル216間の流体が実質的に少なくなることから、電機子アセンブリ214およびコイル216間の磁気的相互作用に影響する干渉が減少し、第1電機子270および第2電機子272が両方動かされる高流量状態であっても、電機子アセンブリ214を動かすために必要な動力、すなわち電流を小さくすることができる。このことは、バルブ210を動かすために必要な動力が小さくなるため、コイル216の通電時に生じる熱も減少するという点で、本願開示事項の重大な側面の一つである。生じる熱が減少するため、バルブ210内を流れる流体に伝達される熱が減少する。したがって、バルブ210は、バルブ210の使用中に流体が熱されることが好ましくない、飲料供給等の流体に関する用途に使用可能である。
【0041】
バルブ210を流れる流体の流れは、流体流入口252から流体排出口268であると記載しているが、バルブ210はその反対方向にも動作可能である。つまり、流体排出口268は流体流入口として機能してもよく、流体流入口252は流体排出口として機能してもよい。
【0042】
実施形態に関する上記記載は、図解および説明の目的で提供される。網羅的または開示事項を限定することを意図しない。特定の実施形態の個別の要素または特徴は、一般にその特定の実施形態に限定されないが、適用可能な場合には、詳細に図示または説明されないとしても選択された実施形態で交換可能であり、使用可能である。同じものが多くの点で変更されてもよい。そのような変更は本願開示事項からの逸脱とはみなされない。そのような修正は全て本願開示事項の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8