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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/00 20060101AFI20220930BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20220930BHJP
   H01H 36/00 20060101ALN20220930BHJP
【FI】
F24C15/00 M
H05B6/12 313
H05B6/12 312
H01H36/00 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019014980
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020122620
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八幡 修平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴士
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120656(JP,A)
【文献】実開昭60-164792(JP,U)
【文献】特開2012-079425(JP,A)
【文献】特開2015-130269(JP,A)
【文献】特開2011-216457(JP,A)
【文献】特開2010-092650(JP,A)
【文献】特開2016-128733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 9/00-15/14
H05B 6/12
H01H 36/00-36/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が載置可能な天板と、該天板上の被加熱物を加熱する加熱部と、静電容量式のタッチスイッチと、タッチ操作の検出に応じた制御を行う制御基板とを備える加熱調理器において、
前記タッチスイッチは、前記天板の一部の領域に設けられたガラス製の操作パネル部を備え、該操作パネル部内のタッチ操作を検出すると共に、タッチ操作を検出する検出電極を形成した電気絶縁体からなる樹脂製電極シートと、前記操作パネル部と前記電極シートとの間に介在する電気絶縁体からなり前記電極シートよりも耐熱性の高い耐熱樹脂シートとを備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1記載の加熱調理器において、前記タッチスイッチの前記電極シート下部に発光体を設け、前記樹脂製電極シートと、前記耐熱樹脂シートとは光透過性を有することを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の加熱調理器において、前記電極シートがポリエチレンテレフタレートからなるときに、前記耐熱樹脂シートはポリカーボネートからなり、該耐熱樹脂シートは、0.8~1.8mmの範囲の厚さを備えることを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロやIHコンロ等の加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスコンロやIHコンロ等の加熱調理器では美観の高い強化ガラスが天板に用いられている。そして、この種の加熱調理器においては、天板上の被加熱物を加熱する加熱部の手前側に位置する天板の一部の領域に操作パネル部を設けたものが知られている。
【0003】
前記加熱調理器は、操作パネル部に対するタッチ操作を検出する静電容量式のタッチスイッチを備え、操作パネル部に使用者が指で触れたときに、使用者がどの部分に触れたかを該タッチスイッチにより検出し、その部分に割り当てられた内容の操作を行うことができるようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
タッチスイッチとしては、誘電体パネルの裏面に電極シートを密着して取り付け、アッシーケース(基板ケース)に収容される制御基板を電極シートの下部に取り付けて、制御基板のコネクタと電極シートの中継接続部を接続することにより構成されたものが知られる(下記特許文献2参照)。
【0005】
電極シートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等からなる透明の合成樹脂製フィルムにタッチ操作を検出する検出電極及び配線パターンを形成したものである。誘電体パネルとしては、光透過性を有するガラス板が採用され、ガラス板には操作パネル部が設定される。操作パネル部は、電極シートの検出電極に対応して設けられる。また、操作パネル部の直下には制御基板に設けられたLEDが配置される。これにより、ガラス板の上方から操作パネル部の操作に応じたLEDの発光を確認することができる。
【0006】
この構成により、誘電体パネルとして機能させるガラス板が天板とされている加熱調理器において上記タッチスイッチが好適に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-2126号公報
【文献】特開2013-120656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記構成のタッチスイッチは、電極シートとしてPETフィルム等からなる透明の合成樹脂製フィルムを用いることで、制御基板のLEDの光を透過させることができるが、その反面、比較的耐熱性が低くなる不都合がある。このため、加熱調理器の加熱部で加熱された鍋やフライパン等の高温の被加熱物を、操作パネル部上に載置した場合には、高温の被加熱物からの熱によって電極シートに変形や損傷が生じ、タッチ操作の検出不良や誤動作が生じるおそれがある。
【0009】
上記の点に鑑み、本発明は、熱の影響によって電極シートに変形や損傷が生じることがなく、さらにタッチスイッチの機能も維持することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明は、被加熱物が載置可能な天板と、該天板上の被加熱物を加熱する加熱部と、静電容量式のタッチスイッチと、タッチ操作の検出に応じた制御を行う制御基板とを備える加熱調理器において、前記タッチスイッチは、前記天板の一部の領域に設けられたガラス製の操作パネル部を備え、該操作パネル部内のタッチ操作を検出すると共に、タッチ操作を検出する検出電極を形成した電気絶縁体からなる樹脂製電極シートと、前記操作パネル部と前記電極シートとの間に介在する電気絶縁体からなり前記電極シートよりも耐熱性の高い耐熱樹脂シートとを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の加熱調理器によれば、前記操作パネル部と、前記電極シートとの間に該電極シートよりも耐熱性の高い耐熱樹脂シートを介在させたので、高温の被加熱物を、操作パネル部上に載置した場合にも、高温の被加熱物からの熱によって電極シートに変形や損傷が生じることがなく、さらに、前記タッチスイッチの機能も維持することができる。
【0012】
また、本発明は、前記タッチスイッチの前記電極シート下部に発光体を設け、前記樹脂製電極シートと、前記耐熱樹脂シートとは光透過性を有することを特徴とする。このようにすることにより、操作パネル上から使用者に前記発光体の発光を認識させることができる。
【0013】
また、本発明において、前記電極シートがポリエチレンテレフタレートからなるときに、前記耐熱樹脂シートはポリカーボネートからなり、該耐熱樹脂シートは、0.8~1.8mmの範囲の厚さを備えることが好ましい。前記ポリカーボネートからなる耐熱樹脂シートの厚さが0.8mm未満であるときには、高温の被加熱物を操作パネル部上に載置した場合に高温の被加熱物からの熱によって前記ポリエチレンテレフタレートからなる電極シートに変形や損傷が生じることがある。一方、前記ポリカーボネートからなる耐熱樹脂シートの厚さが1.8mmを超えると、使用者が操作パネル部に触れたときに、使用者が触れた部分の操作パネル部に割り当てられた内容の操作を行うことができないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の加熱調理器の構成を示す斜視図。
図2図1に示す加熱調理器の天板の一部を切り欠いた状態を示す斜視図。
図3図1に示す加熱調理器のタッチスイッチの構成を模式的に示す分解斜視図。
図4図1に示す加熱調理器におけるポリカーボネートフィルムの厚さと電極シートの温度との関係を示すグラフ。
図5図1に示す加熱調理器におけるポリカーボネートフィルムの厚さとタッチスイッチの静電容量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の加熱調理器であるガスコンロ1を示している。図1に示すように、ガスコンロ1は、筐体2の上面を覆う天板3と、天板3に形成されたバーナ用開口4から露出するガスバーナ5と、ガスバーナ5上に鍋やフライパン等の被加熱物(図示せず)を支持するための五徳6とを備えている。ガスコンロ1では、ガスバーナ5及び五徳6により被加熱物を加熱する加熱部7が形成されている。
【0017】
天板3は、耐熱強化ガラスであって光透過性を有しているが、筐体内部の構造物等の視認が困難となる程度の暗色とされている。天板3の手前側の一部には、操作パネル部8が設けられている。操作パネル部8は、天板3の五徳6が設けられている領域と区切りなく同一の平滑面で連続して設けられている。
【0018】
また、図2に示すように、天板3の裏面側の操作パネル部8に対向する位置には、制御基板9が設けられている。
【0019】
次に、図3を参照して、図1に示す加熱調理器1のタッチスイッチ10の構成及び作用について説明する。図3に示すタッチスイッチ10は、天板3の一部の領域に設けられた操作パネル部8と、天板3の裏面側の操作パネル部8に対向する位置に設けられた制御基板9と、操作パネル部8と制御基板9との間に配設された電気絶縁体からなる樹脂製電極シート11とを備えている。
【0020】
電極シート11は、使用者が操作パネル部8に指で触れるタッチ操作を行ったときに、該タッチ操作を検知する複数の検出電極(図示せず)と、各検出電極に接続された端子からなる中継接続部(図示せず)とを備えている。使用者が前記タッチ操作を行うと、使用者の指と操作パネル部8との間にコンデンサが形成され静電容量が変化する。そこで、前記検出電極は、使用者の指と操作パネル部8とにより形成されるコンデンサの容量を検出することにより前記タッチ操作を検知する。電極シート11は、前記中継接続部を例えば制御基板9のコネクタ(図示せず)に挿入することにより制御基板9と接続される。尚、電極シート11は透明であり、光透過性を備えている。
【0021】
このような電極シート11を構成する樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂を挙げることができる。
【0022】
制御基板9は、上側基板ケース12aと下側基板ケース12bとの間に収容されており、電極シート11の検出電極から前記中継接続部を介して入力される信号(例えば前記タッチ操作の検知信号)に応じて所要の制御を行うCPU等の制御装置を備えている。また、制御基板9は、操作パネル部8に対応する部分にLED等の発光体が設けられている。
【0023】
前記制御装置は、例えば電極シート11の検出電極から前記タッチ操作の検知信号が入力されたときに、操作パネル部8の該タッチ操作が検知された部分に対応するLEDを発光させる制御を行う。上側基板ケース12aは前記LEDに対応する部分にそれぞれ開口13を備え、該LEDの発光光が電極シート11に照射されるようになっている。このとき、電極シート11及び天板3を構成する耐熱強化ガラスはいずれも光透過性を備えているので、操作パネル部8上から使用者に該発光を認識させることができる。前記発光を認識させるには、例えば、電極シート11を構成するPETフィルム等に操作に対応するマークを印刷し、該マークの周囲を前記LEDの発光により照らすようにすることができる。
【0024】
ところで、電極シート11を前記PETフィルムにより構成すると、該PETフィルムは、高温の被加熱物を操作パネル部8上に載置する等したときに、120℃程度以上の温度に加熱されると変形や損傷が生じ、前記タッチ操作の検出不良や誤動作が生じるおそれがある。
【0025】
そこで、本実施形態のタッチスイッチ10では、操作パネル部8と電極シート11との間に、電気絶縁体からなり電極シート11よりも耐熱性の高い光透過性の耐熱樹脂シート14を備えている。電極シート11がPETからなるときに、耐熱樹脂シート14はポリカーボネート(PC)からなり、例えば、0.8~1.8mmの範囲の厚さを備えていることが好ましい。前記ポリカーボネートからなる耐熱樹脂シート14は前記範囲の厚さを備えることにより、前記PETフィルム等からなる電極シート11の加熱による変形や損傷を防止することができ、しかも操作パネル部8と電極シート11との相互の位置の相関関係を取ることができるので、前記検出電極により前記タッチ操作を確実に検出することができる。
【0026】
また、耐熱樹脂シート14は光透過性であるので電極シート11と共に前記LEDの発光光を透過することができ、操作パネル部8上から使用者に該発光を認識させる際の障害となることがない。
【0027】
このような耐熱樹脂シート14を構成する樹脂として、例えば、前記PCの他、ポリアミド(PA)、ポリブチレンナフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等の樹脂を挙げることができる。
【0028】
次に、本実施形態のガスコンロ1において、PETフィルムからなる電極シート11と、PCフィルムからなる耐熱樹脂シート14とを用い加熱部7で高温に加熱された被加熱物が操作パネル部8上に載置された場合を想定して、操作パネル部8を220℃に加熱したときのPCフィルムからなる耐熱樹脂シート14の厚さに対するPETフィルムからなる電極シート11の温度の変化を図4に示す。
【0029】
また、使用者が操作パネル部8に前記タッチ操作を行った場合を想定して、使用者が操作パネル部8に触れたときのPCフィルムからなる耐熱樹脂シート14の厚さに対するタッチ静電容量の変化を図5に示す。尚、前記「タッチ静電容量」とは、使用者が前記タッチ操作を行ったときに使用者の指と前記タッチ操作部との間に形成されるコンデンサの静電容量に相当する静電容量である。
【0030】
図4から、PCフィルムからなる耐熱樹脂シート14の厚さを0.8mm以上とすることにより、PETフィルムからなる電極シート11の温度をPETフィルムが変形や損傷を生じるおそれのある120℃以下の温度とすることができることがわかる。
【0031】
一方、図5から、PCフィルムからなる耐熱樹脂シート14の厚さを1.8mm以下とすることにより、前記タッチ静電容量を、電極シート11の前記検出電極がノイズ等の外乱による誤動作を生じることなく前記タッチ操作を検出するために必要とされる1000bit(静電容量をマイコンで認識する静電容量認識値)以上の静電容量とすることができることがわかる。
【0032】
以上から、本実施形態の加熱調理器では、PCフィルムからなる耐熱樹脂シート14が0.8~1.8mmの範囲の厚さを備えることにより、熱の影響によってPETフィルムからなる電極シート11に変形や損傷が生じることがなく、さらにタッチスイッチ10の機能も維持することができることが明らかである。
【0033】
なお、本実施形態の加熱調理器では、天板3の全体を耐熱強化ガラスにより構成しているが、天板3は結晶化ガラスであってもよく、さらに少なくとも操作パネル部8が耐熱強化ガラス、結晶化ガラス等のガラス製であればよく、操作パネル部8以外は、ホウロウ板又はステンレス板で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…加熱調理器、 3…天板、 7…加熱部、 8…操作パネル部、 9…制御基板、 10…タッチスイッチ、 11…電極シート、 14…耐熱樹脂シート。
図1
図2
図3
図4
図5