(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
H05B6/12 324
H05B6/12 313
H05B6/12 312
(21)【出願番号】P 2019017726
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】八幡 修平
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-257356(JP,A)
【文献】特開平6-215864(JP,A)
【文献】特開2012-89434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルに交流電圧を印加することによって交流磁界を発生させ、天板上に置かれた調理容器の底部に前記交流磁界を作用させることによって、前記調理容器の底部を加熱する誘導加熱調理器において、
前記交流電圧を発生させて前記コイルに印加するインバーターと、
前記インバーターの動作を制御するインバーター制御部と、
前記誘導加熱調理器の動作時に点灯する複数の光源と、
前記誘導加熱調理器の加熱調理動作を制御する加熱調理制御部と、
前記加熱調理制御部と前記インバーター制御部との間に介在して、前記加熱調理制御部から出力された情報を前記インバーター制御部に送信する送信部と、
前記加熱調理制御部と前記インバーター制御部との間に介在して、前記インバーター制御部からの情報を受信して前記加熱調理制御部に伝達する受信部と、
少なくとも前記送信部に動作用の電力を供給する第1電源部と
前記受信部と前記複数の光源とに動作用の電力を供給する第2電源部と
を備え、
前記加熱調理制御部は、前記受信部で異常が発生した場合には、前記インバーターの動作を停止させるための情報を、前記送信部を介して前記インバーター制御部に送信する
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱調理器において、
前記誘導加熱調理器の動作内容を設定するために操作される複数の操作ボタンを備え、
前記複数の光源は、前記複数の操作ボタンを照明する光源である
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルに交流電圧を印加して発生させた交流磁界を作用させることによって、天板上に置かれた調理容器の底部を加熱する誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
鍋やフライパンなどの金属製の調理容器の底部に交流磁界を作用させることによって、調理容器を加熱する誘導加熱調理器が知られている。この誘導加熱調理器には、交流磁界を発生させるためのコイルや、コイルに印加する交流電圧を生成するインバーターや、所望の特性の交流電圧が得られるようにインバーターの動作を制御するインバーター制御部や、ユーザーによるボタン操作を検出して、誘導加熱調理器による加熱調理動作を制御する加熱調理制御部などが搭載されている。尚、インバーターとは、直流電圧を変換して所望の特性の交流電圧を発生させる装置である。今日のインバーターは、トランジスターを用いて形成されており、商用の交流電圧を直流電圧に一旦変換してから所望の特性の交流電圧に変換することが一般的であるが、必ずしもこのような形式のインバーターである必要は無い。
【0003】
インバーターには大きな電流が流れるのでノイズが発生し易いのに対して、加熱調理制御部には小さな電流しか流れないのでノイズの影響を受け易い。このため、ノイズで加熱調理制御部が誤動作することを防止する目的で、インバーターおよびインバーター制御部を搭載した基板と、加熱調理制御部を搭載した基板とは別基板になっている。そして、加熱調理制御部を搭載した基板と、インバーター制御部を搭載した基板とが通信することによって、それぞれの制御部が制御に必要な情報を取得するようになっている。また、ユーザーに対して表示される誘導加熱調理器の動作状況などの情報は、加熱調理制御部が表示部を介して表示している。
【0004】
このような誘導加熱調理器は、加熱調理中でも炎が発生しないので、加熱調理中に鍋などが熱くなっていてもユーザーにはそのことが分かり難く、加熱された鍋などにユーザーがうっかりと触れてしまう可能性がある。このため、加熱調理中はランプを点灯させることによって、加熱調理中であることをユーザーが認識できるようにすると共に、ランプの点灯不能を監視する監視回路を搭載しておき、点灯不能が検知された場合には加熱調理が出来ないようにした技術が提案されている(特許文献1)。
【0005】
更に近年では、主に意匠的な観点から、各種の操作ボタンがタッチパネル化されると共に、誘導加熱調理器に電源が投入されていない間は操作ボタンが見えないが、電源が投入されると内蔵したランプやLEDなどの光源が点灯して、各種の操作ボタンや表示が視認可能となる誘導加熱調理器も開発されている。このような誘導加熱調理器でも、ランプ等の光源が点灯しなければ、ユーザーには加熱調理中か否かが分からないので、安全性を確保するためには光源の点灯不能を監視しておくことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電源が投入されると各種の操作ボタンや表示を光らせる誘導加熱調理器では、操作ボタンや表示を光らせるために複数の光源が使用されているので、それらの光源の点灯不能を監視しようとすると、複数の監視回路が必要となり、誘導加熱調理器の構造が複雑になってしまうという問題があった。
【0008】
この発明は、電源が投入されると点灯する複数の光源を備えた誘導加熱調理器で、光源の数が多くなっても、構造を複雑化させることなく、安全性を確保することが可能な誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の誘導加熱調理器は次の構成を採用した。すなわち、
コイルに交流電圧を印加することによって交流磁界を発生させ、天板上に置かれた調理容器の底部に前記交流磁界を作用させることによって、前記調理容器の底部を加熱する誘導加熱調理器において、
前記交流電圧を発生させて前記コイルに印加するインバーターと、
前記インバーターの動作を制御するインバーター制御部と、
前記誘導加熱調理器の動作時に点灯する複数の光源と、
前記誘導加熱調理器の加熱調理動作を制御する加熱調理制御部と、
前記加熱調理制御部と前記インバーター制御部との間に介在して、前記加熱調理制御部から出力された情報を前記インバーター制御部に送信する送信部と、
前記加熱調理制御部と前記インバーター制御部との間に介在して、前記インバーター制御部からの情報を受信して前記加熱調理制御部に伝達する受信部と、
少なくとも前記送信部に動作用の電力を供給する第1電源部と、
前記受信部と前記複数の光源とに動作用の電力を供給する第2電源部と
を備え、
前記加熱調理制御部は、前記受信部で異常が発生した場合には、前記インバーターの動作を停止させるための情報を、前記送信部を介して前記インバーター制御部に送信する
ことを特徴とする。
【0010】
かかる本発明の誘導加熱調理器においては、インバーターの動作を制御するインバーター制御部と、誘導加熱調理器の加熱調理動作を制御する加熱調理制御部と、誘導加熱調理器の動作時に点灯する複数の光源とを備えており、ユーザーは複数の光源が点灯しているか否かによって、誘導加熱調理器が動作中か否かを判断することができる。また、加熱調理制御部は、インバーター制御部と通信することによって誘導加熱調理器の加熱調理動作を制御しており、インバーター制御部からの情報を受信するための受信部と、インバーター制御部に情報を送信するための送信部とを備えている。更に、誘導加熱調理器には、第1電源部と第2電源部とが搭載されており、第1電源部は、送信部に電力を供給し、第2電源部は、受信部と複数の光源とに電力を供給する。そして、加熱調理制御部は、受信部で異常が発生したことを検知した場合には、インバーターの動作を停止させるための情報を、(受信部に電力を供給している第2電源とは別の)第1電源から電力が供給されている送信部からインバーター制御部に送信する。
【0011】
こうすれば、複数の光源に供給される電力に異常が生じると、受信部でも異常が検知されるので、複数の光源が点灯できなくなったことを検知することができる。そして、受信部で異常が検知されたらインバーターを停止させることが出来るので、誘導加熱調理器の加熱調理動作を停止させることが出来る。このため、実際には加熱調理中であるにも拘わらず、複数の光源が点灯していないために、誘導加熱調理器が動作していないものとユーザーが誤判断して、加熱中の鍋などに触れてしまう事態を回避することが可能となる。また、加熱調理制御部は、インバーター制御部と通信して加熱調理動作を制御しているために、受信部の異常を検知する機能を有している。従って、本発明では、この機能を利用することができるので、誘導加熱調理器の構造が複雑になってしまうこともない。
【0012】
また、上述した本発明の誘導加熱調理器においては、誘導加熱調理器の動作内容を設定するために操作される複数の操作ボタンを備え、これら複数の操作ボタンを、複数の光源によって照明することとしても良い。
【0013】
加熱調理制御部に対して誘導加熱調理器の動作内容を設定するためには、複数の操作ボタンを備えていれば便利であり、そして、誘導加熱調理器の動作中は、これら複数の操作ボタンを複数の光源によって照明することとすれば、ユーザーは、操作ボタンが操作可能な状態(すなわち、誘導加熱調理器が動作中)であることを容易に認識することができる。その一方で、誘導加熱調理器が動作中であるにも拘わらず、複数の操作ボタンが照明できない事態が生じると、誘導加熱調理器が動作していないものとユーザーが誤判断する虞が高くなる。しかし、上述した本発明の誘導加熱調理器では、複数の操作ボタンを照明できなくなったら、受信部でも異常が検知されるので、誘導加熱調理器の加熱調理動作を停止させることができ、加熱中の鍋などにユーザーが触れてしまう虞を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施例の誘導加熱調理器1の外観形状を示した斜視図である。
【
図2】本実施例の誘導加熱調理器1の内部構造を示した分解組立図である。
【
図3】誘導加熱調理器1に搭載された第1基板100および第2基板200による回路構成についての説明図である。
【
図4】本実施例の誘導加熱調理器1の内部で電力が供給される様子についての説明図である。
【
図5】本実施例の誘導加熱調理器1では、加熱調理中であるにも拘わらず天板20に操作ボタンなどが表示されない事態の発生を簡単に回避することが可能な理由を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施例の誘導加熱調理器1の外観形状を示した斜視図である。図示されるように、誘導加熱調理器1は、本体ケース10の上に、ガラス製で黒い色の天板20が載置された形状となっており、天板20の上面には、鍋などの調理容器を載せる箇所を示す円形の図形21や、電源ボタンの図形22が白いインクで印刷されている。また、電源ボタンの図形22が印刷された部分の天板20の裏面側には、図示しない静電容量式のタッチスイッチが搭載されている。このため、ユーザーが電源ボタンの図形22を手で触れると、誘導加熱調理器1の電源がONになるようになっている。
【0016】
図1(a)は、誘導加熱調理器1の電源がONになっていない状態を表している。図示されるように、誘導加熱調理器1の電源がONにされていない間は、天板20には円形の図形21や電源ボタンの図形22は表示されているものの、操作ボタンなどは表示されていない。しかし、ユーザーが電源ボタンの図形22に触れて誘導加熱調理器1の電源をONにすると、
図1(b)に示すように、天板20の所定の表示領域20d内に、各種の操作ボタンや文字や図形などが浮かび上がって見えるようになる。また、これらの操作ボタンが表示された部分の天板20の裏面側にも、図示しない静電容量式のタッチスイッチが搭載されており、表示された操作ボタンをユーザーが触れることによって、誘導加熱調理器1を操作することができる。その後、ユーザーが再び電源ボタンの図形22に触れると、誘導加熱調理器1の電源がOFFになって、表示領域20d内に表示されていた各種の操作ボタンや文字などが見えなくなり、
図1(a)に示した状態となる。
【0017】
誘導加熱調理器1は炎が発生しないので調理容器を加熱中であっても、そのことがユーザーには分かり難い。しかし、天板20上の表示領域20dに操作ボタンなどが表示されていれば、電源がONとなっていることを容易に認識することができ、且つ、天板20に調理容器が載せられていれば、調理容器を加熱している可能性が高いことを認識することができる。また逆に、天板20上の表示領域20dに操作ボタンなどが表示されていない場合は、ユーザーは、電源がOFFになっているので調理容器が加熱されている可能性は無いと判断することが可能である。
【0018】
図2は、本実施例の誘導加熱調理器1の内部構造を示した分解組立図である。図示されるように、誘導加熱調理器1の本体ケース10の中には、奥側の位置に第1基板100が搭載され、手前側の位置に第2基板200が搭載されている。そして、第1基板100の上方には、ブラケット31に支えられた状態でコイル30が搭載されており、これら第1基板100や第2基板200やコイル30を内部に収納した状態で、本体ケース10の上方から天板20が取り付けられている。また、コイル30は、巻線が樹脂あるいはセラミックスなどの材料によってモールド化されて薄い円板形状となっており、円板形状のコイル30の上面には、中心付近および中心よりも外側の2箇所に、温度センサー32,33が搭載されている。
【0019】
第1基板100には、コイル30に印加する交流電圧を生成するインバーター101や、インバーター101の動作を制御するインバーター制御部102や、商用の交流電圧を整流して必要な電圧の直流電圧を生成する電源部103などが搭載されている。インバーター101には複数のスイッチング素子が搭載されており、これらのスイッチング素子を同期させてON/OFFすることによって直流電圧から所望の周波数の交流電圧を生成することが可能である。また、これらの複数のスイッチング素子を同期させてON/OFFする制御は、インバーター制御部102が実行する。インバーター制御部102は論理回路を用いて実現することも出来るが、本実施例ではマイクロコンピューターによって実現されている。また、インバーター101やインバーター制御部102を駆動するための直流電圧は、電源部103から供給されている。
【0020】
第2基板200には、誘導加熱調理器1の加熱調理動作を制御する図示しない加熱調理制御部が搭載されている。本実施例では、加熱調理制御部もマイクロコンピューターによって実現されている。更に、第2基板200には、加熱調理制御部の上方にユーザーインターフェースユニット201が搭載されている。このユーザーインターフェースユニット201には、天板20上の表示領域20dに表示される図形(操作ボタンなど)や文字(数字および記号を含む)が描かれた透明シートや、これらの図形を裏側から照明するLEDや、数字や文字などを表示するための7セグメント式のLEDや、静電容量式のタッチスイッチなどが一体に組み込まれている。LEDを点灯させると、透明シートに描かれた図形や文字が浮かび上がって、ガラス製の天板20を介して視認されるようになる。
【0021】
図3は、本実施例の誘導加熱調理器1の第1基板100および第2基板200に搭載された各種部品の回路構成についての説明図である。第1基板100には、インバーター101や、インバーター制御部102や、電源部103などが搭載されている。また、第2基板200には、ユーザーインターフェースユニット201や、加熱調理制御部202や、送信部203や、受信部204などが搭載されている。更に、ユーザーインターフェースユニット201には、複数のタッチスイッチSWや、複数のLEDが搭載されている。尚、本実施例のタッチスイッチSWが本発明における「操作ボタン」に対応し、本実施例のLEDが本発明における「光源」に対応する。また、本実施例の光源はLEDであるものとして説明するが、ランプであっても構わない。
【0022】
ユーザーインターフェースユニット201のタッチスイッチSWは、加熱調理制御部202に接続されており、ユーザーがタッチスイッチSWを操作すると、その内容に応じて加熱調理制御部202が加熱調理動作の具体的な内容を決定する。そして加熱調理制御部202は、決定した内容に基づいて送信部203からインバーター制御部102に向かって必要な情報を送信する。インバーター制御部102は、加熱調理制御部202から受け取った情報に基づいてインバーター101の動作を制御し、その結果、インバーター101で生成された交流電圧がコイル30に印加される。また、コイル30に搭載された温度センサー32はインバーター制御部102に接続されており、インバーター制御部102は温度センサー32の出力をインバーター101の制御に反映させる。
【0023】
更に、インバーター制御部102は、制御中の情報などの必要な情報を加熱調理制御部202に向けて送信可能となっており、インバーター制御部102から送信された情報は、受信部204を介して加熱調理制御部202に入力される。また、コイル30に搭載された温度センサー33は加熱調理制御部202に接続されており、このため加熱調理制御部202はコイル30の温度を直接検出することが可能となっている。そして、加熱調理制御部202が、ユーザーインターフェースユニット201の複数のLEDの点灯あるいは消灯を制御することによって、誘導加熱調理器1の動作状況に関する情報(例えば、加熱調理のモードや、調理温度、タイマーなど)をユーザーに表示することが可能となる。更に、電源部103は、高圧の直流電力を生成してインバーター101に供給すると共に、低圧の直流電力を生成して、インバーター制御部102や加熱調理制御部202などに供給している。
【0024】
ここで、
図1を用いて前述したように、誘導加熱調理器1のユーザーは、天板20上の表示領域20d内に操作ボタンなどが表示されていない場合は、誘導加熱調理器1の電源がOFFになっていると判断することが通常である。しかし、ユーザーインターフェースユニット201に搭載されたLEDが故障するなどして点灯できなくなると、誘導加熱調理器1の電源がONになっているにも拘わらず、天板20の表示領域20d内に操作ボタンなどが表示されなくなる。このため、実際には加熱調理中で鍋などが熱くなっているのに、電源がOFFになっていると判断したユーザーが鍋などに触れてしまう事態が起こり得る。こうした事態、すなわち加熱調理中であるにも拘わらず、天板20に操作ボタンなどが表示されない事態を回避するためには、LEDを点灯させようとしているのに点灯できない状態(すなわち、LEDの点灯不能)を監視しておけばよい。しかし、本実施例の誘導加熱調理器1のように複数のLEDが搭載されている場合は、点灯不能を監視する回路を、それら全てのLEDについて搭載しようとすると、誘導加熱調理器1の回路構成(特に第2基板200の回路構成)が複雑になってしまう。そこで、本実施例の誘導加熱調理器1では、電源部103が生成する低圧の直流電力を、2つの系統に分けることとしている。詳細には後述するが、こうすれば、実際には誘導加熱調理器1が加熱調理中であるにも拘わらず、天板20に操作ボタンなどが表示されない事態が発生することを、簡単に回避することが可能となる。
【0025】
図4は、本実施例の電源部103が高圧および低圧の直流電力を供給する様子についての説明図である。上述したように、本実施例の誘導加熱調理器1では、低圧の直流電力として2系統の直流電源が設けられており、このことに対応して電源部103には、低圧の直流電力を生成する第1低圧電源部103aおよび第2低圧電源部103bとが搭載されている。更に、電源部103には、高圧の直流電力を生成する高圧電源部103cも搭載されている。尚、本実施例では、第1低圧電源部103aおよび第2低圧電源部103bは同じ電圧の直流電力を生成しているが、異なる電圧の直流電力を生成するようにしても良い。また、本実施例では、第1低圧電源部103aが本発明の「第1電源部」に対応し、第2低圧電源部103bが本発明の「第2電源部」に対応する。
【0026】
図4中に示した太い実線の矢印は、高圧電源部103cで生成された高圧の直流電力が供給される経路を表している。図示されるように、高圧の直流電流はインバーター101に供給されている。また、
図4中に示した太い破線の矢印は、第1低圧電源部103aで生成された低圧の直流電力が供給される経路を表している。第1低圧電源部103aで生成された電力は、インバーター制御部102や、加熱調理制御部202や、コイル30の温度センサー32,33や、送信部203や、複数のタッチスイッチSWに供給されている。更に、
図4中に示した太い一点鎖線の矢印は、第2低圧電源部103bで生成された低圧の直流電力が供給される経路を表している。第2低圧電源部103bで生成された電力は、受信部204と、複数のLEDとに供給されている。尚、本実施例の受信部204は、もっぱら第2低圧電源部103bからの電力で動作している。しかし、本実施例では、第1低圧電源部103aと第2低圧電源部103bとは同じ電圧の直流電力を生成しているので、受信部204が動作する電力の一部を第1低圧電源部103aから供給するようにしても良い。
【0027】
このように本実施例の誘導加熱調理器1では、受信部204および複数のLEDに供給される電力を共通にすると共に、インバーター制御部102や加熱調理制御部202などに供給される電力とは別系統の電力となっている。こうすれば、以下の理由から、実際には誘導加熱調理器1が加熱調理中であるにも拘わらず、天板20に操作ボタンなどが表示されない事態の発生を、簡単に回避することが可能となる。また、LEDの数が多くなっても、誘導加熱調理器1の回路構成が複雑になってしまうことも無い。以下では、この理由について説明する。
【0028】
図5は、本実施例の誘導加熱調理器1では、加熱調理中であるにも拘わらず天板20に操作ボタンなどが表示されない事態の発生を簡単に回避することが可能な理由を示した説明図である。本実施例の誘導加熱調理器1のように複数のLEDを有する場合、それらのLEDの中で幾つかのLEDが点灯不能になっても、残りのLEDが点灯していれば、電源がOFFになっているとユーザーが誤認識する可能性は低いと考えられる。また、点灯するLEDは誘導加熱調理器1の動作内容によって変わり得るから、必ずしも搭載されている全てのLEDが点灯するとは限らないが、それでも点灯するLEDは複数個、存在すると考えて良い。従って、それら複数個のLEDが全て点灯不能とならない限り、実際には加熱調理中なのに電源がOFFになっているとユーザーが誤認識することは無いと考えられる。そして、複数個のLEDが同じようなタイミングで故障することは考えにくいから、それらのLEDが点灯不能になるのは、LEDに供給される電力に異常が発生(例えば電力が供給されないか、若しくは過大な電力が供給されてLEDが故障するなど)したためと考えられる。
【0029】
一方で、
図3を用いて前述したように、加熱調理制御部202はインバーター制御部102との間で制御に必要な情報を通信しており、このため加熱調理制御部202は、情報を受信する受信部204が正常に動作しているか否かを監視している。そこで、
図4に示したように、受信部204および複数のLEDに供給する電力を、その他のインバーター制御部102や加熱調理制御部202などに供給する電力とは別系統としておく。こうすれば、LEDに供給される電力に何らかの異常が生じてLEDを点灯させることが出来なくなった場合には、受信部204も正常に動作しなくなる。
【0030】
図5には、第2低圧電源部103b(
図4参照)に問題が生じて電力を生成することができなくなった場合が例示されている。図中で複数のLEDが破線で表示されているのは、これらのLEDが点灯不能となったことを表している。また、図中で受信部204が破線で表示されているのは、電力が供給されなくなって受信部204が動作を停止したことを表している。このように受信部204が動作を停止すると、加熱調理制御部202はそのことを直ちに認識することができるので、複数のLEDが点灯不能となっていることを認識して、送信部203からインバーター制御部102に向かって、加熱調理を停止するようにコマンドを送信することができる。その結果、誘導加熱調理器1が加熱調理中であるにも拘わらず天板20の操作ボタンなどが表示されないために、電源がOFFになっているとユーザーに誤認識させてしまう事態を回避することが可能となる。また、第1低圧電源部103aの他に第2低圧電源部103bを設ける必要はあるものの、加熱調理制御部202は、元々、受信部204の動作を監視しているため、誘導加熱調理器1の構造や制御が複雑になってしまうこともない。
【0031】
尚、第2低圧電源部103bと同時に、第1低圧電源部103aにも問題が生じることも起こり得る。そして、第1低圧電源部103aにも問題が生じると、送信部203からインバーター制御部102に向かってコマンドを送信したりすることが出来なくなる。しかし、この場合は、インバーター制御部102も動作を停止するので、送信部203からコマンドが送信できなくなっても問題が生じることはない。
【0032】
以上、本実施例の誘導加熱調理器1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上述した本実施例では、タッチスイッチSWが天板20の裏面側に搭載されており、電源がOFFの状態ではユーザーがタッチスイッチSWを視認できないものとして説明した。しかし、電源がOFFの状態でも、タッチスイッチSW(あるいは操作ボタン)をユーザーが視認可能であっても構わない。このような場合でも、タッチスイッチSW(あるいは操作ボタン)を照明するなどの目的で複数のLEDが搭載されており、電源をONにすると、それらのLEDが点灯するような誘導加熱調理器であれば、本実施例の誘導加熱調理器1と同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…誘導加熱調理器、 10…本体ケース、 20…天板、
20d…表示領域、 30…コイル、 31…ブラケット、
32…温度センサー、 33…温度センサー、 100…第1基板、
101…インバーター、 102…インバーター制御部、 103…電源部、
103a…第1低圧電源部、 103b…第2低圧電源部、
103c…高圧電源部、 200…第2基板、
201…ユーザーインターフェースユニット、 202…加熱調理制御部、
203…送信部、 204…受信部、 SW…タッチスイッチ。