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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】センサ及びセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20220930BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20220930BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/419 327H
G01N27/41 325H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019076807
(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2020173234
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大場 健弘
(72)【発明者】
【氏名】劉 孫超
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-226117(JP,A)
【文献】特開2006-145397(JP,A)
【文献】特開2003-065998(JP,A)
【文献】特開2012-068068(JP,A)
【文献】特開2007-101411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0109077(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
G01N 27/419
G01N 27/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びるセンサ素子と、
前記センサ素子を保持する主体金具と、
前記主体金具の後端側に接続される筒状の外筒と、
前記外筒の後端側の内側に配置され、前記外筒の前記後端側の加締め部によって縮径されて固定され、前記外筒の後端開口部を封止するゴムキャップと、を備えるセンサにおいて、
自由状態における前記ゴムキャップは、側面が先端に向かって窄まるテーパ部をなす筒状であり、
前記加締め部における前記ゴムキャップの圧縮率は、前記加締め部の前記軸線方向中央より後端側の第1領域のみにおいて最大値を示すことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記第1領域において、(自由状態における前記ゴムキャップの中実部の断面積S1)-(加締め状態における前記ゴムキャップの中実部の断面積S2)表される断面積差ΔSが最大である請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1領域において、(自由状態における前記ゴムキャップの外径D1)-(加締め状態における前記外筒の内径D2)で表される径差ΔDが最大である請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記第1領域において、前記外径D1が最大である請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記第1領域において、前記内径D2が最小である請求項3に記載のセンサ。
【請求項6】
前記ゴムキャップは前記軸線方向に貫通するリード線挿通穴を有し、
前記リード線挿通穴には、前記センサ素子に電気的に接続されるリード線が挿通され、
前記第1領域において、自由状態における前記リード線挿通穴の内径H1が最小である請求項2又は3に記載のセンサ。
【請求項7】
前記外筒の内部であって前記ゴムキャップの先端側に内部部品が当接して配置されている請求項1~6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
軸線方向に延びるセンサ素子と、
前記センサ素子を保持する主体金具と、
前記主体金具の後端側に接続される筒状の外筒と、
前記外筒の後端側の内側に配置され、前記外筒の前記後端側の加締め部によって縮径されて固定され、前記外筒の後端開口を封止するゴムキャップと、を備えるセンサの製造方法において、
自由状態におけるゴムキャップ素形体は、側面が先端に向かって窄まるテーパ部をなす筒状であり、
加締め前の外筒素形体の後端側に前記ゴムキャップ素形体を配置し、前記ゴムキャップ素形体が配置された前記外筒素形体の前記軸線方向の少なくとも一部を内側に加締めて前記加締め部を形成する加締め工程を有し、
前記加締め工程にて、前記加締め部の前記軸線方向中央より後端側の第1領域のみにおいて前記ゴムキャップの圧縮率が最大値を示すように加締めることを特徴とするセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃焼器や内燃機関等の燃焼ガスや排気ガス中に含まれる特定ガスのガス濃度を検出するのに好適に用いられるセンサ及びセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排気ガス中の特定成分(酸素等)の濃度を検出するためのセンサが用いられている。このセンサは自身の内部にセンサ素子を有し、センサ素子は外筒に収容されている。ここで、外筒の後端は弾性のゴムキャップにより閉塞され、ゴムキャップは外筒を加締めることで固定されている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-101411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図10(a)に示すように、従来のセンサにおいては、側面がストレート形状で筒状の加締め前のゴムキャップ素形材1002xに、段付きの外筒素形材1004xを被せ、次いで、ゴムキャップ素形材1002xの軸線方向中央部に相当する外筒素形材1004xを加締め機の押し型1010にて加締めることで、加締め後のゴムキャップ1002を外筒1004内に固定している(図10(b))。
しかしながら、図10(b)に示すように、外筒1004の加締め部1004sの後端側は開き気味になって十分に縮径されないため、加締め部1004sの後端側におけるゴムキャップ1002の後端1002Eの圧縮率が低下し、この部位でシール性が低下するという問題がある。
又、この圧縮率の低下を抑制するために、単純にゴムキャップ1002の外径を大きくすると、加締め部1004sで拘束されたゴムキャップ1002が高温環境で大きく膨張して切れてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、外筒に加締められたゴムキャップの後端側の圧縮率の低下を抑制し、シール性を向上させたセンサ及びセンサの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のセンサは、軸線方向に延びるセンサ素子と、前記センサ素子を保持する主体金具と、前記主体金具の後端側に接続される筒状の外筒と、前記外筒の後端側の内側に配置され、前記外筒の前記後端側の加締め部によって縮径されて固定され、前記外筒の後端開口部を封止するゴムキャップと、を備えるセンサにおいて、自由状態における前記ゴムキャップは、側面が先端に向かって窄まるテーパ部をなす筒状であり、前記加締め部における前記ゴムキャップの圧縮率は、前記加締め部の前記軸線方向中央より後端側の第1領域のみにおいて最大値を示すことを特徴とする。
【0007】
このセンサによれば、加締め部の後端側におけるゴムキャップの後端側の圧縮率が低下することを抑制し、シール性を向上させることができる。又、この圧縮率の低下を抑制するためにゴムキャップの外径を一様に(軸線方向のすべてにわたって)大きくする必要がないので、加締め部で拘束されたゴムキャップが高温環境で大きく膨張して切れることも抑制できる。
【0008】
本発明のセンサは、前記第1領域において、(自由状態における前記ゴムキャップの中実部の断面積S1)-(加締め状態における前記ゴムキャップの中実部の断面積S2)表される断面積差ΔSが最大であってもよい。
このセンサによれば、第1領域で断面積差ΔSが最大になるので、ひいては第1領域のゴムキャップが最も圧縮され、第1領域のみにおいてゴムキャップの圧縮率を最大にすることができる。
【0009】
本発明のセンサは、前記第1領域において、(自由状態における前記ゴムキャップの外径D1)-(加締め状態における前記外筒の内径D2)で表される径差ΔDが最大であってもよい。
このセンサによれば、第1領域で径差ΔDが最大になるので、ゴムキャップの外径と断面積に相関がある場合に、断面積差ΔSを第1領域で最大にすることができ、第1領域のみにおいてゴムキャップの圧縮率を最大にすることができる。
【0010】
本発明のセンサは、前記第1領域において、前記外径D1が最大であってもよい。
このセンサによれば、第1領域で外径D1が最大になるので、ゴムキャップの外径と断面積に相関がある場合に、断面積差ΔSを第1領域で最大にすることができ、第1領域のみにおいてゴムキャップの圧縮率を最大にすることができる。
【0011】
本発明のセンサは、前記第1領域において、前記内径D2が最小であってもよい。
このセンサによれば、第1領域で内径D2が最小になるので、ゴムキャップの外径と断面積に相関がある場合に、外筒の内径D2、つまり加締め状態における断面積S2を小さくし、逆に断面積差ΔSを第1領域で最大にすることができ、第1領域のみにおいてゴムキャップの圧縮率を最大にすることができる。
【0012】
本発明のセンサは、前記ゴムキャップは前記軸線方向に貫通するリード線挿通穴を有し、前記リード線挿通穴には、前記センサ素子に電気的に接続されるリード線が挿通され、
前記第1領域において、自由状態における前記リード線挿通穴の内径H1が最小であってもよい。
このセンサによれば、第1領域で内径H1が最小になるので、ゴムキャップの断面積を減じるリード線挿通穴の内面積が小さくなり、逆に自由状態における断面積S1を大きくするので、断面積差ΔSを第1領域で最大にすることができ、第1領域のみにおいてゴムキャップの圧縮率を最大にすることができる。
【0013】
本発明のセンサにおいて、前記外筒の内部であって前記ゴムキャップの先端側に内部部品が当接して配置されていてもよい。
このセンサによれば、ゴムキャップの膨張が内部部品によって妨げられるためにゴムキャップの圧縮率がさらに向上し、シール性がさらに向上する。更には、ゴムキャップの先端側の圧縮率を低くすることで、ゴムキャップの膨張を抑制できるため、ゴムキャップに当接している内部部品が過度に押されることを抑制でき、その結果、内部部品の姿勢や配置位置の精度が向上する。
【0014】
本発明のセンサの製造方法は、軸線方向に延びるセンサ素子と、前記センサ素子を保持する主体金具と、前記主体金具の後端側に接続される筒状の外筒と、前記外筒の後端側の内側に配置され、前記外筒の前記後端側の加締め部によって縮径されて固定され、前記外筒の後端開口を封止するゴムキャップと、を備えるセンサの製造方法において、自由状態におけるゴムキャップ素形体は、側面が先端に向かって窄まるテーパ部をなす筒状であり、加締め前の外筒素形体の後端側に前記ゴムキャップ素形体を配置し、前記ゴムキャップ素形体が配置された前記外筒素形体の前記軸線方向の少なくとも一部を内側に加締めて前記加締め部を形成する加締め工程を有し、前記加締め工程にて、前記加締め部の前記軸線方向中央より後端側の第1領域のみにおいて前記ゴムキャップの圧縮率が最大値を示すように加締めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、外筒に加締められたゴムキャップの後端側の圧縮率の低下を抑制し、シール性を向上させたセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係るセンサ(酸素センサ)の長手方向に沿う断面図である。
図2】センサの外観図である。
図3】外筒の後端内にゴムキャップを加締める工程図である。
図4】自由状態におけるゴムキャップの外径D1及び外筒の内径D2の軸線方向の変化を示す図である。
図5】ゴムキャップの圧縮率Cの軸線方向の変化を示す図である。
図6】外筒の後端内に第2の実施形態のゴムキャップを加締める工程図である。
図7】自由状態における第2の実施形態のゴムキャップの外径D1及び外筒の内径D2の軸線方向の変化を示す図である。
図8】外筒の後端内に第3の実施形態のゴムキャップを加締める工程図である。
図9】自由状態における第3の実施形態のゴムキャップの中実部の断面積S1、加締め状態におけるゴムキャップの中実部の断面積S2の軸線方向の変化を示す図である。
図10】従来のセンサにおいて、外筒の後端内にゴムキャップを加締める工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るセンサ(酸素センサ)1の長手方向(軸線L方向)に沿う断面図、図2はセンサ1の外観図である。
【0018】
図1に示すように、センサ1は、センサ素子100、センサ素子100等を内部に保持する主体金具30、主体金具30の後端側に装着される外筒25、主体金具30の先端部に装着されるプロテクタ24等を有している。センサ素子100は軸線L方向に延びるように配置されている。
センサ素子100は公知の板状の酸素センサ素子であり、図示しないが、酸素濃度検出セルと酸素ポンプセルと、ヒータとを備え、酸素ポンプセルに流れる電流に応じた被測定ガス中の酸素濃度をリニアに検出する。
又、センサ素子100の後端側の主面には複数の電極パッド100pが形成されている。
【0019】
主体金具30は、SUS430製のものであり、センサを排気管に取り付けるための雄ねじ部31と、取り付け時に取り付け工具をあてがう六角部32とを有している。また、主体金具30には、径方向内側に向かって突出する金具側段部33が設けられており、この金具側段部33はセンサ素子100を保持するための金属ホルダ34を支持している。そしてこの金属ホルダ34の内側にはセラミックホルダ35、滑石36が先端側から順に配置されている。この滑石36は金属ホルダ34内に配置される第1滑石37と金属ホルダ34の後端に渡って配置される第2滑石38とからなる。
【0020】
金属ホルダ34内で第1滑石37が圧縮充填されることによって、センサ素子100は金属ホルダ34に対して固定される。また、主体金具30内で第2滑石38が圧縮充填されることによって、センサ素子100の外面と主体金具30の内面との間のシール性が確保される。
そして第2滑石38の後端側には、アルミナ製のスリーブ39が配置されている。このスリーブ39は多段の円筒状に形成されており、軸線に沿うように軸孔39aが設けられ、内部にセンサ素子100を挿通している。そして、主体金具30の後端側の加締め部30aが内側に折り曲げられており、ステンレス製のリング部材40を介してスリーブ39が主体金具30の先端側に押圧されている。
【0021】
また、主体金具30の先端側外周には、主体金具30の先端から突出するセンサ素子100の先端部を覆うと共に、複数のガス取り入れ孔24aを有する金属製のプロテクタ24が溶接によって取り付けられている。このプロテクタ24は、二重構造をなしており、外側には一様な外径を有する有底円筒状の外側プロテクタ41、内側には後端部42aの外径が先端部42bの外径よりも大きく形成された有底円筒状の内側プロテクタ42が配置されている。
【0022】
一方、主体金具30の後端側には、SUS430製の外筒25の先端側が挿入されている。この外筒25は先端側の拡径した先端部25aを主体金具30にレーザ溶接等により固定している。外筒25の後端側内部には、セパレータ50が配置され、セパレータ50と外筒25の隙間に保持部材51が介在している。この保持部材51は、後述するセパレータ50の突出部50aに係合し、外筒25を加締めることにより外筒25とセパレータ50とにより固定されている。
【0023】
また、セパレータ50には、センサ素子100用のリード線11~15を挿入するための挿通孔50bが先端側から後端側にかけて貫設されている(なお、リード線14、15については図示せず)。挿通孔50b内には、電極パッド100pに接続する接続端子16が収容されている。各リード線11~15は、外部において、図示しないコネクタに接続されるようになっている。このコネクタを介してECU等の外部機器と各リード線11~15とは電気信号の入出力が行われることになる。また、各リード線11~15は詳細に図示しないが、導線を樹脂からなる絶縁皮膜にて披覆した構造を有している。
【0024】
さらに、セパレータ50の後端側には、外筒25の後端側の開口部25eを閉塞するための略円柱状のゴムキャップ60が当接して配置されている。このゴムキャップ60は、外筒25の後端内に装着された状態で、外筒25の外周を径方向内側に向かって加締めて加締め部25bを形成することにより、外筒25の後端開口部25eを封止するとともに外筒25に固着されている。ゴムキャップ60にも、リード線11~15をそれぞれ挿入するためのリード線挿通穴62が先端側から後端側にかけて貫設されている。
セパレータ50が特許請求の範囲の「内部部品」に相当する。
なお、加締め部25bは、八方丸加締めのように、分割した複数の押し型を外筒25の径方向外側から内側に向かって押圧して形成され、図2に示すように、隣接する押し型同士の隙間が軸線L方向に延びて周方向に分離した複数の凸部25Lとなる。従って、加締め部25bとは、外筒25の最大外径よりも小径で凸部25Lが生じた領域で、かつ軸線L方向に凸部25Lの先後端までの領域とする。
【0025】
次に、図3図5を参照し、第1の実施形態の特徴部分であるゴムキャップ60の圧縮率について説明する。図3は、外筒25の後端内にゴムキャップ60を加締める工程図、図4は自由状態におけるゴムキャップの外径D1及び外筒の内径D2の軸線L方向の変化を示す図、図5はゴムキャップ60の圧縮率Cの軸線方向の変化を示す図である。
【0026】
まず、図3(a)に示すように、加締め前のゴムキャップ素形材60xに、段付きの外筒素形材25xを被せる。ゴムキャップ素形材60xは側面が先端に向かって窄まるテーパ部60tをなす筒状であり、先端側に径大のフランジ部60dを有する。そして、外筒素形材25xの先端側が拡径する段部を、このフランジ部60dに係止させる。なお、ゴムキャップ素形材60xにおけるリード線挿通穴62xの内径は、軸線L方向に一定になっている。
次に、図3(b)に示すように、ゴムキャップ素形材60xの軸線L方向のほぼ中央部に相当する外筒素形材25xを加締め機の押し型200にて縮径して加締め、加締め部25bを形成する。これにより、加締め後のゴムキャップ60を外筒25内に固定する。
本実施形態では、加締め機は八方丸加締め機であり、軸線L方向に加締め部25bのどの位置でも外筒25の内径D2(D21)が同一になるよう、押し型200の押圧面200aが軸線L方向に平行なストレート状になっている。
【0027】
ここで、加締め部25bの軸線L方向中央より後端側を第1領域Rとする。なお、図3(a)の状態では、まだ外筒素形材25xは加締められていないが、ゴムキャップ素形材60xの軸線L方向の各外径を、加締め部25b及び第1領域Rの位置と対比できるよう、加締め部25b及び第1領域Rの位置を表示した。
図3(c)に示すように、「自由状態におけるゴムキャップ60p」とは、図3(b)で加締められた外筒25を取り去り、加締め部25bによる拘束を除荷した状態のゴムキャップ60pをいう。
この場合、例えば図3(b)で加締めてすぐの新品のセンサであれば、外筒25を取り去ったときのゴムキャップ60pは、ほぼゴムキャップ素形材60xに近い形状まで復元する。一方、例えば経年使用したセンサの場合、ゴムキャップ60pは、ゴムキャップ素形材60xに比べて若干圧縮された状態が残る。
【0028】
しかしながら、経年使用したセンサであっても、自由状態におけるゴムキャップ60pにおける軸線L方向の形状変化の傾向(例えばゴムキャップ60pの側面がテーパ部になる)はゴムキャップ素形材60xと同様である。
従って、説明を簡単にするため、以下ではゴムキャップ素形材60xの形状を、自由状態におけるゴムキャップ60pの形状と同等とみなし、ゴムキャップ素形材60xの形状に基づいて説明する。後述する第2及び第3の実施形態も同様である。
なお、自由状態におけるゴムキャップ60pにおける軸線L方向の形状を求めるには、外筒25を取り去る際に、ゴムキャップ60pにおける加締め部25bの位置を記録しておく必要がある。
また、加締め状態におけるゴムキャップ60の形状は、加締めた状態で、X線画像等で求めることができる。
【0029】
ここで、ゴムキャップ素形材60xの側面がテーパ部60tをなすため、図3(a)及び図4に示すように、自由状態におけるゴムキャップの外径D1は、加締め部25bのうち最も後端側が最も大きく(D11)、第1領域Rの先端ではD11よりも小さいD12、第1領域Rより先端ではD12よりもさらに小さい。
一方、加締め部25bにおける外筒25の内径D2(D21)は、軸線L方向に一定である。そして、内径D2(D21)は、加締め部25bで圧縮されたゴムキャップ60の外径に相当する。
従って、径差ΔD=(D1-D2)も加締め部25bのうち最も後端側が最も大きくなる。
【0030】
ここで、自由状態におけるゴムキャップ60pの中実部の断面積S1は、ゴムキャップ60p(ゴムキャップ素形材60xとみなす)の外縁の断面積から、リード線挿通穴62xの合計内面積を差し引いた値となるが、リード線挿通穴62xの内径が軸線L方向に一定であるから、リード線挿通穴62xの内面積を差し引いた、自由状態におけるゴムキャップ60pの中実部の断面積S1はD1の2乗に相関する。
また、加締め状態におけるゴムキャップ60の中実部の断面積S2は、ゴムキャップ60の外縁の断面積から、リード線挿通穴62の合計内面積を差し引いた値となるが、加締め状態ではリード線挿通穴62にリード線11~15がほぼ密着して挿通されており、リード線挿通穴62の内径が軸線L方向に一定となる。従って、リード線挿通穴62の内面積を差し引いた、加締め状態におけるゴムキャップ60の中実部の断面積S2は、D2の2乗に相関する。
つまり、本実施形態においては、断面積S2が軸線L方向に一定となる一方で、断面積S1はD1に応じて変化するため、断面積差ΔS=(S1-S2)も、径差ΔDと同様に、加締め部25bのうち最も後端側が最も大きくなる。
【0031】
そうすると、加締め部25bにおけるゴムキャップ60の圧縮率C=(S1-S2)/S1で定義すると、C=1-(S2/S1)となるが、S2は一定で、S1は加締め部25bの最も後端側が最も大きいから、図5の実線に示すように、Cも加締め部25bの最も後端側が最も大きな最大値Cmaxを示す。
つまり、ゴムキャップ60の圧縮率Cは、加締め部25bの軸線L方向中央より後端側の第1領域Rのみにおいて最大値を示すことになる。
これにより、加締め部25bの後端側におけるゴムキャップ60の後端側の圧縮率が低下することを抑制し、シール性を向上させることができる。
又、この圧縮率の低下を抑制するためにゴムキャップ60の外径を一様に(軸線L方向のすべてにわたって)大きくする必要がないので、加締め部25bで拘束されたゴムキャップ60が高温環境で大きく膨張して切れることも抑制できる。
【0032】
なお、本実施形態では、ゴムキャップ60の先端側にセパレータ50が当接して配置されている。この場合、ゴムキャップ60の膨張がセパレータ50によって妨げられるためにゴムキャップ60の圧縮率がさらに向上し、シール性がさらに向上する。
【0033】
次に、図6図7を参照し、本発明の第2の実施形態に係るセンサについて説明する。但し、第2の実施形態に係るセンサは、加締め部25c及びゴムキャップ70の構成が異なること以外は、第1の実施形態に係るセンサと同一の構成であるので、加締め部25c及びゴムキャップ70付近のみ図示して説明する。
図6は、外筒25の後端内に第2の実施形態のゴムキャップ70を加締める工程図、図7は自由状態における第2の実施形態のゴムキャップの外径D1及び外筒25の内径D2の軸線方向の変化を示す図である。
【0034】
まず、図6(a)に示すように、加締め前のゴムキャップ素形材70xに、段付きの外筒素形材25xを被せる。ゴムキャップ素形材70xは側面が軸線L方向に平行なストレート形状の筒状であり、先端側に径大のフランジ部70dを有する。そして、外筒素形材25xの先端側が拡径する段部を、このフランジ部70dに係止させる。なお、ゴムキャップ素形材70xにおけるリード線挿通穴72xの内径は、軸線L方向に一定になっている。
次に、図6(b)に示すように、ゴムキャップ素形材70xの軸線L方向のほぼ中央部に相当する外筒素形材25xを加締め機の押し型202にて縮径して加締め、加締め部25cを形成する。これにより、加締め後のゴムキャップ70を外筒25内に固定する。
第2の実施形態では、加締め機は八方丸加締め機であるが、加締め部25cにおける外筒25の内径D2が、先端に向かうにつれて径大になるよう、押し型202の押圧面202tが先端に向かって広がるテーパ状になっている。
【0035】
ここで、加締め部25cの軸線L方向中央より後端側を第1領域Rとする。ゴムキャップ素形材70xの側面がストレート状なため、図6(a)及び図7に示すように、自由状態におけるゴムキャップの外径D1(D13)は、軸線L方向に一定である。なお、図6(a)の状態では、まだ外筒素形材25xは加締められていないが、ゴムキャップ素形材70xの軸線L方向の各外径を、加締め部25c及び第1領域Rの位置と対比できるよう、加締め部25c及び第1領域Rの位置を表示した。
一方、加締め部25cにおける外筒25の内径D2は、加締め部25cのうち最も後端側が最も小さく(D22)、第1領域Rの先端でD23、第1領域Rより先端ではD23よりもさらに大きい。従って、径差ΔD=(D1-D2)も加締め部25cのうち最も後端側が最も大きい。
そして、上記の通り、リード線挿通穴72xの内径が軸線L方向に一定であるから、リード線挿通穴72xの内面積を除いた、自由状態におけるゴムキャップ70の中実部の断面積S1はD1の2乗に相関し、加締め状態におけるゴムキャップ70の中実部の断面積S2はD2の2乗に相関する。
つまり、本実施形態においては、断面積S1が軸線L方向に一定となる一方で、断面積S2はD2に応じて変化するため、断面積差ΔS=(S1-S2)も、加締め部25cのうち最も後端側が最も大きくなる。
【0036】
そうすると、第1の実施形態と同様、図5の実線に示すように、圧縮率Cも加締め部25cの最も後端側が最も大きくなる。つまり、第2の実施形態においても、ゴムキャップ70の圧縮率Cは、加締め部25cの軸線L方向中央より後端側の第1領域Rのみにおいて最大値を示すので、シール性を向上させることができる。
【0037】
次に、図8図9を参照し、本発明の第3の実施形態に係るセンサについて説明する。但し、第3の実施形態に係るセンサは、ゴムキャップ80の構成が異なること以外は、第1の実施形態に係るセンサと同一の構成であるので、加締め部25b及びゴムキャップ80付近のみ図示して説明する。
図8は、外筒25の後端内に第3の実施形態のゴムキャップ80を加締める工程図、図9は自由状態における第3の実施形態のゴムキャップの中実部の断面積S1、加締め状態におけるゴムキャップ80の中実部の断面積S2の軸線方向の変化を示す図である。
【0038】
まず、図8(a)に示すように、加締め前のゴムキャップ素形材80xに、段付きの外筒素形材25xを被せる。ゴムキャップ素形材80xは側面が軸線L方向に平行なストレート形状の筒状であり、先端側に径大のフランジ部80dを有する。そして、外筒素形材25xの先端側が拡径する段部を、このフランジ部80dに係止させる。但し、ゴムキャップ素形材80xにおけるリード線挿通穴82xの内径は、先端に向かうにつれて径大になっている。
次に、図8(b)に示すように、ゴムキャップ素形材80xの軸線L方向のほぼ中央部に相当する外筒素形材25xを加締め機の押し型202にて縮径して加締め、加締め部25bを形成する。これにより、加締め後のゴムキャップ80を外筒25内に固定する。
加締め部25bは、第1の実施形態と同一形状であり、軸線L方向に加締め部25bのどの位置でも外筒25の内径D2(D21)が同一になる。
【0039】
ここで、加締め部25bの軸線L方向中央より後端側を第1領域Rとする。ゴムキャップ素形材80xの側面がストレート状なため、図8(a)に示すように、自由状態におけるゴムキャップの外径D1(D14)は、軸線L方向に一定である。ここで、図8(a)の状態では、まだ外筒素形材25xは加締められていないが、ゴムキャップ素形材80xの軸線L方向の各外径やード線挿通穴の内径を、加締め部25b及び第1領域Rの位置と対比できるよう、加締め部25b及び第1領域Rの位置を表示した。
又、第3の実施形態における加締め部25bは、第1の実施形態における加締め部25bと同一であるので、同一符号とした。
しかしながら、自由状態におけるゴムキャップのリード線挿通穴82xの内径H1は、図8(a)及び図9に示すように、加締め部25bのうち最も後端側が最も小さく(H11)、第1領域Rの先端でH12、第1領域Rより先端ではH12よりもさらに大きくなっている。
【0040】
ここで、自由状態におけるゴムキャップの中実部の断面積S1は、ゴムキャップ(ゴムキャップ素形材80xとみなす)の外縁の断面積から、リード線挿通穴82xの合計内面積を差し引いた値となるが、リード線挿通穴82xの内径が先端に向かって大きくなる一方で、ゴムキャップの外縁の断面積は一定である。従って、図9に示すように、リード線挿通穴82xの内面積を差し引いた、自由状態におけるゴムキャップの中実部の断面積S1は、加締め部25bのうち最も後端側が最も大きく(S11)、第1領域Rの先端でS12、第1領域Rより先端ではS12よりもさらに小さくなる。
一方、加締め状態におけるゴムキャップ80の中実部の断面積S2は、ゴムキャップ80の外縁の断面積から、リード線挿通穴82の合計内面積を差し引いた値となるが、加締め状態ではリード線挿通穴82にリード線11~15がほぼ密着して挿通されており、リード線挿通穴82の内径H2が軸線L方向に一定となる。そして、図9に示すように、加締め部25bにおける外筒25の内径D2(D21)は第1の実施形態と同様、軸線L方向に一定である。従って、リード線挿通穴82の内面積を差し引いた、加締め状態におけるゴムキャップ80の中実部の断面積S2は軸線L方向に一定となる。
つまり、図9に示すように、本実施形態においては、断面積S2が軸線L方向に一定となる一方で、断面積S1はH1に応じて変化するため、断面積差ΔS=(S1-S2)は、加締め部25bのうち最も後端側が最も大きくなる。
【0041】
そうすると、第1の実施形態と同様、図5の実線に示すように、圧縮率Cも加締め部25bの最も後端側が最も大きくなる。つまり、第3の実施形態においても、ゴムキャップ80の圧縮率Cは、加締め部25bの軸線L方向中央より後端側の第1領域Rのみにおいて最大値を示し、シール性を向上させることができる。
【0042】
次に、本発明の実施形態に係るセンサの製造方法について説明する。
本発明の実施形態に係るセンサの製造方法は、軸線L方向に延びるセンサ素子100と、センサ素子100を保持する主体金具30と、主体金具30の後端側に接続される筒状の外筒25と、外筒25の後端側の内側に配置され、外筒25の後端側の加締め部25bによって縮径されて固定され、外筒25の後端開口を封止するゴムキャップ60と、を備えるセンサ1の製造方法において、加締め前の外筒素形体25xの後端側にゴムキャップ素形体60xを配置し、ゴムキャップ素形体60xが配置された外筒素形体25xの軸線L方向の少なくとも一部を内側に加締めて加締め部25bを形成する加締め工程を有し、加締め工程にて、加締め部25bの軸線L方向中央より後端側の第1領域Rのみにおいてゴムキャップ60の圧縮率が最大値を示すように加締める。
【0043】
第1領域Rのみにおいてゴムキャップ60の圧縮率が最大値を示すように加締める方法としては、既に図3図6図8の工程図で説明した通りであり、ゴムキャップ素形体の側面をテーパ状にする方法、加締め部をテーパ状にする方法、リード線挿通穴を先端側に向かって拡径する方法が例示されるが、これらに限定されない。
そして、加締め工程にて、第1領域Rに、ゴムキャップ60の圧縮率Cが最大値となる部分があり、第1領域Rより先端側の加締め部25bでは、圧縮率Cは最大値未満となるように加締める。
【0044】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、外筒素形体にゴムキャップ素形体を配置してから加締めるのでなく、外筒素形体に加締め部を形成した後、その縮径された加締め部にゴムキャップ素形体を圧入し、ゴムキャップを加締め部の内側に固定すると共に、ゴムキャップを圧縮してもよい。
センサ素子の種類も限定されず、例えば、酸素センサ素子のほか、被測定ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサ(NOxセンサ素子)や、HC濃度を検出するHCセンサ(HCセンサ素子)等に本発明を適用してもよい。
【0045】
図5の二点鎖線に示すように、ゴムキャップの圧縮率Cは第1領域Rのみにおいて最大値Cmaxを示すのであれば、軸線L方向に第1領域Rのどの位置で最大値を示してもよく、また、第1領域Rより先端側では最大値未満であれば必ずしも先端に向かって単純に圧縮率Cが低下しなくてもよい。
この場合、例えば図3のゴムキャップ素形体の側面形状も、テーパ部に限らず、第1領域Rのいずれかの位置に対応するゴムキャップ素形体が部分的に径大になっていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 センサ
11~15 リード線
25 外筒
25b、25c 加締め部
25e 外筒の後端開口部
25x 外筒素形体
30 主体金具
50 内部部品(セパレータ)
60,70,80 ゴムキャップ
60x、70x、80x ゴムキャップ素形体
60p 自由状態におけるゴムキャップ
62,72,82 リード線挿通穴
100 センサ素子
L 軸線
R 第1領域
Cmax ゴムキャップの圧縮率の最大値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10