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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】トリガー式液体噴出器
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/00 20060101AFI20220930BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20220930BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B05B11/00 102Z
B05B11/00 102G
B65D47/34 100
F04B9/14 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019086284
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020179381
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】角田 義幸
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203141(JP,A)
【文献】特開2016-221457(JP,A)
【文献】特開2017-131864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B11/00-11/06
B65D39/00-55/16
F04B 9/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、
液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、
前記噴出器本体は、
上下方向に延在し、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、
前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に配置されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、
前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、
前記貯留シリンダ内にその中心軸線に沿う軸方向に移動可能に配置され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記軸方向のうちの一方側に向けて移動するとともに、付勢部材によって他方側に向けて付勢される貯留プランジャと、
前記貯留シリンダに対して前記一方側に移動可能に配置された作動部材と、が設けられ、
前記作動部材は、
前記貯留プランジャが前記一方側に移動するときに、前記貯留プランジャから前記一方側に向けた力を受ける係止部と、
前記貯留シリンダに対して前記作動部材が前記一方側に移動したときに、前記トリガー部に対して近接或いは当接して前記トリガー部の揺動を規制する規制部と、
前記係止部から前記他方側に向けて延び、前記係止部と前記規制部とを連結する連結部と、を有する、トリガー式液体噴出器。
【請求項2】
前記係止部は前記貯留プランジャに固定されている、請求項1に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項3】
前記噴出器本体は、前記貯留シリンダの少なくとも一部を覆うカバー体をさらに備え、
前記貯留シリンダは前記一方側に向けて開口する開口部を有し、
前記貯留シリンダの前記開口部には、前記付勢部材を前記一方側から支持する支持部材が挿入され、
前記カバー体には、前記支持部材の前記一方側に向けた移動を規制する抜け止め部が形成されている、請求項1または2に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項4】
前記カバー体には貫通孔が形成されており、
前記貫通孔の内側に前記支持部材の一部が位置している、請求項3に記載のトリガー式液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示されるように、液体の連続噴出が可能なトリガー式液体噴出器が知られている。このトリガー式液体噴出器は、液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備えている。噴出器本体は、貯留シリンダ、貯留プランジャ、および作動部材を有している。作動部材は、貯留プランジャが後方移動するときに貯留プランジャから後方に向けた力を受ける係止部と、貯留シリンダに対して作動部材が後方移動したときに、トリガー部に対して近接或いは当接して前記トリガー部の揺動を規制する規制部と、が設けられている。この規制部によって、トリガー部の揺動を規制することで、貯留シリンダ内に許容量以上の液体が充填されてしまうことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-203141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のトリガー式液体噴出器では、噴出器本体のかさ張りを抑えて、よりコンパクトにすることが求められている。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、よりコンパクトなトリガー式液体噴出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るトリガー式液体噴出器は、液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、前記噴出器本体は、上下方向に延在し、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に配置されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、前記貯留シリンダ内にその中心軸線に沿う軸方向に移動可能に配置され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記軸方向のうちの一方側に向けて移動するとともに、付勢部材によって他方側に向けて付勢される貯留プランジャと、前記貯留シリンダに対して前記一方側に移動可能に配置された作動部材と、が設けられ、前記作動部材は、前記貯留プランジャが前記一方側に移動するときに、前記貯留プランジャから前記一方側に向けた力を受ける係止部と、前記貯留シリンダに対して前記作動部材が前記一方側に移動したときに、前記トリガー部に対して近接或いは当接して前記トリガー部の揺動を規制する規制部と、前記係止部から前記他方側に向けて延び、前記係止部と前記規制部とを連結する連結部と、を有する。
【0007】
上記態様によれば、トリガー部を後方に引いて移動させることで、トリガー機構によって貯留シリンダ内に液体が供給される。貯留シリンダ内に液体が充填された状態で、トリガー部の操作を停止すると、貯留シリンダ内への液体の供給も停止されるが、付勢部材の付勢力によって、貯留プランジャが復元移動する。これにより、貯留シリンダ内の液体を噴出孔から噴出させることが可能となり、トリガー部を操作しない状態でも液体を連続して噴出させることができる。
そして、貯留プランジャが軸方向における一方側に移動する際に、作動部材の係止部が貯留プランジャから一方側に向けた力を受けることで、作動部材も一方側に移動する。従って、規制部によって、トリガー部の揺動を規制することが可能となり、貯留シリンダ内に液体が過剰に供給されることを抑制できる。
さらに、係止部と規制部とを連結する連結部が、係止部から軸方向における他方側に向けて延びている。これにより、例えば連結部が係止部から軸方向における一方側に延びている場合と比較して、軸方向における噴出器本体のかさ張りが抑えられる。特に、仮に連結部が係止部から軸方向における一方側に延びている場合、作動部材が一方側に移動するための空間を確保するために噴出器本体のかさ張りも大きくなる。これに対して、上記態様のように、連結部が係止部から一方側に延びるように配置することで、よりコンパクトなトリガー式液体噴出器を提供することが可能となる。
【0008】
ここで、前記係止部は前記貯留プランジャに固定されていてもよい。
【0009】
この場合、貯留プランジャが移動するときに、作動部材をより確実に貯留プランジャに追従させて移動させることができる。
【0010】
また、前記噴出器本体は、前記貯留シリンダの少なくとも一部を覆うカバー体をさらに備え、前記貯留シリンダは前記一方側に向けて開口する開口部を有し、前記貯留シリンダの前記開口部には、前記付勢部材を前記一方側から支持する支持部材が挿入され、前記カバー体には、前記支持部材の前記一方側に向けた移動を規制する抜け止め部が形成されていてもよい。
【0011】
この場合、付勢部材の付勢力などによって支持部材が軸方向の一方側に向けて脱落することを、抜け止め部によって抑制することができる。特に、貯留プランジャが貯留シリンダに対して一方側に移動すると付勢部材の圧縮量が大きくなり、支持部材が付勢部材から受ける反力も大きくなるが、このような反力によって支持部材が脱落することを抑制できる。
【0012】
また、前記カバー体には貫通孔が形成されており、前記貫通孔の内側に前記支持部材の一部が位置していてもよい。
【0013】
この場合、支持部材の形状を変更することで、支持部材のうち付勢部材を支持する部分の軸方向における位置を容易に変更することができる。したがって、付勢部材が生じさせる付勢力も容易に変更することが可能となり、吐出態様の異なるトリガー式液体噴出器の製造がより容易になる。なお、付勢部材の付勢力を変更すると、貯留シリンダ内の液圧が変わるため、液体が噴出される際の飛距離を調整したり、液体を噴霧させる場合には霧の粒の大きさを調整したりすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、よりコンパクトなトリガー式液体噴出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るトリガー式液体噴出器の縦断面図である。
図2図1の貯留シリンダ周辺の拡大図である。
図3図2のトリガー式液体噴出器の平面図であって、図2のII-II線の位置における一部の断面を示した図である。
図4図2のIV-IV断面矢視図である。
図5図1のトリガー部よび貯留プランジャを後方移動させた状態を示す図である。
図6図2の支持部が後方に突出した形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態のトリガー式液体噴出器について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態のトリガー式液体噴出器1は、液体を収容する容器体Aに装着され、液体を吸上げる縦供給筒部10を有する噴出器本体2と、液体を前方に向けて噴出する噴出孔4が形成され、噴出器本体2に装着されたノズル部材3と、を備えている。
なお、トリガー式液体噴出器1の各構成は、特に記載がなければ合成樹脂を用いた成型品とされている。
【0017】
噴出器本体2は、縦供給筒部10と、射出筒部11と、装着キャップ14と、トリガー機構50と、貯留シリンダ90と、貯留プランジャ110と、カバー体140と、支持部材150と、付勢部材160と、作動部材190と、を備えている。貯留シリンダ90は有頂筒状に形成されており、貯留シリンダ90の内側に、貯留プランジャ110および付勢部材160が配置されている。
【0018】
(方向定義)
本実施形態では、縦供給筒部10の中心軸線を軸線O1といい、貯留シリンダ90の中心軸線を軸線O2という。軸線O1に沿う方向を上下方向といい、上下方向において、容器体A側を下方といい、その反対側を上方という。上下方向から見た平面視において、軸線O1に交差する一方向を前後方向といい、上下方向および前後方向の双方に直交する方向を左右方向という。前後方向において、噴出孔4が開口する側を前方、その反対側を後方という。また、軸線O2に沿う方向を軸方向といい、軸方向において、貯留シリンダ90が開口する側を一方側といい、その反対側を他方側という。本実施形態では、軸方向と左右方向とが一致しており、軸方向における一方側が後方に相当し、軸方向における他方側が前方に相当している。ただし、軸方向と左右方向とは一致していなくてもよい。
【0019】
図1及び図2に示すように、縦供給筒部10は、有頂筒状の外筒12と、外筒12内に嵌合された内筒13と、を備えている。外筒12および内筒13は、下方から上方に向けて縮径した二段筒状に形成されている。図2に示すように、外筒12の頂壁は、貯留シリンダ90と一体に形成されており、当該頂壁には下方に向けて延びるシール筒部12eが形成されている。内筒13の上端部内には、外筒12のシール筒部12eが嵌合されている。内筒13の下端部には、パイプ15の上部が嵌合されている。パイプ15の下端開口は、容器体Aの図示しない底部に向けて開口している。
【0020】
外筒12及び内筒13で構成される縦供給筒部10の軸線O1は、容器体Aの容器軸に対して後方に偏心している。
図1に示すように、外筒12はフランジ部12cを有している。内筒13は、外筒12のフランジ部12cよりも下方に位置するフランジ部13cを有している。フランジ部12cとフランジ部13cとの間には隙間S1が設けられている。
【0021】
内筒13の内周面のうちシール筒部12eよりも下方に位置し、且つパイプ15の上端よりも上方に位置する部分には、内筒13よりも径が小さい円筒状に形成され、ボール弁36を下方から支持する支持筒部35が配設されている。
支持筒部35は、軸線O1と同軸に配設され、その下端部は径方向外側に突出して内筒13の内周面に一体的に形成されている。支持筒部35の上端開口端は、ボール弁36が着座する着座面とされ、縦断面視においてテーパ状に形成されている。
【0022】
ボール弁36は、支持筒部35の着座面に離反可能に着座した状態で内筒13の内側に配設されている。ボール弁36は、内筒13内において、支持筒部35よりも上方に位置する空間と、支持筒部35よりも下方に位置する空間と、を連通及び遮断する。
【0023】
図2に示すように、縦供給筒部10の上端部には、前方に向けて延びる接続筒部30が設けられている。接続筒部30の後端部は、外筒12に接続されている。そして、接続筒部30の後端開口は、シール筒部12e内に開口している。これにより、接続筒部30は縦供給筒部10内に連通している。
接続筒部30の前端部には、接続筒部30内に密に嵌合し、接続筒部30の前端開口を閉塞する閉塞栓31が設けられている。
【0024】
接続筒部30よりも下方に位置する部分には、シリンダ用筒部40が設けられている。シリンダ用筒部40の上端部は、接続筒部30の下端部と一体に形成されている。シリンダ用筒部40は、外筒12から前方に向けて突出すると共に、前方に向けて開口している。シリンダ用筒部40は、接続筒部30とフランジ部12cとの間に配置され、接続筒部30と共通の隔壁を有すると共に、フランジ部12cと共通の隔壁を有している。
【0025】
装着キャップ14は、容器体Aの口部A1に装着(例えば螺着)される。射出筒部11は前後方向に沿って延在しており、射出筒部11の内側は、縦供給筒部10の内部に連通している。図2に示すように、射出筒部11は、貯留シリンダ90から前方に向けて延設され、縦供給筒部10内の液体を噴出孔4に導いている。なお、射出筒部11は、中心軸線が貯留シリンダ90の軸線O2よりも下方に位置するように配置されている。
【0026】
トリガー機構50は、トリガー部51と、主ピストン52と、主シリンダ53と、弾性板部54と、により構成されている。トリガー機構50は、トリガー部51の後方への揺動によって、液体を縦供給筒部10内から射出筒部11内を通じて噴出孔4側に流通させる。トリガー部51は、射出筒部11から下方に向けて延び、縦供給筒部10の前方に前方付勢状態で後方に揺動可能(移動可能)に配置されている。主ピストン52は、トリガー部51の揺動に連動して前後方向に移動する。主シリンダ53は、主ピストン52の移動に伴って内部が加圧及び減圧する。弾性板部54は、トリガー部51を前方に付勢する。
【0027】
主シリンダ53は、前方に向けて開口する外筒部60と、外筒部60の後方開口部を塞ぐ後壁部61と、後壁部61の中央部分から前方に向けて突設されると共に前端が閉塞された有頂筒状のピストンガイド62と、を備えている。主シリンダ53の内側は、連通筒部63内を通じて縦供給筒部10内に連通している。なお、主シリンダ53には閉塞栓31が一体に形成されている。
【0028】
外筒部60は、シリンダ用筒部40の内側に嵌合されている。シリンダ用筒部40の内周面と外筒部60の外周面とは、前後方向の両端部において密接している。その一方、シリンダ用筒部40の内周面と外筒部60の外周面との間のうち、前後方向の両端部同士の間に位置する中間部に、環状の隙間S2が確保されている。
【0029】
外筒部60には、外筒部60の内側と上記隙間S2とを連通させる第1通気孔64が形成されている。外筒12のフランジ部12cには、上記隙間S2と、外筒12のフランジ部12cと内筒13のフランジ部13cとの間に画成された隙間S1と、を連通させる第2通気孔65が形成されている。
さらに、内筒13のフランジ部13cには、上記隙間S1と、装着キャップ14の内側と、を連通させる第3通気孔66が形成されている(図1参照)。
【0030】
図2に示すように、連通筒部63は、主シリンダ53から後方に向けて突設されている。具体的には、連通筒部63は主シリンダ53の後壁部61のうちピストンガイド62よりも上方に位置する部分に形成され、外筒12及び内筒13を一体に挿通している。この際、連通筒部63は、外筒12に形成された第1貫通孔67内に密に嵌合されていると共に、第1貫通孔67を通じて、内筒13に形成された第2貫通孔68内に密に嵌合されている。これにより、縦供給筒部10内と主シリンダ53内とは、連通筒部63内を通じて互いに連通している。
【0031】
連通筒部63は、内筒13のうちシール筒部12eとボール弁36との間に位置する空間に連通するように形成されている。これにより、主シリンダ53の内側は、連通筒部63内を通じて、内筒13内のうちシール筒部12eとボール弁36との間に位置する空間に連通している。従って、ボール弁36は、容器体A内と主シリンダ53内との連通及びその遮断を切り替え可能とされている。
【0032】
ボール弁36は主シリンダ53内の加圧時に閉弁して、容器体A内と縦供給筒部10内との連通を遮断すると共に、主シリンダ53内の減圧時に上方に向けて変位することで開弁して、容器体A内と縦供給筒部10内との連通を許容する逆止弁とされている。これにより、ボール弁36の閉弁時、縦供給筒部10内を通じた容器体A内と主シリンダ53内との連通は遮断され、ボール弁36の開弁時、縦供給筒部10内を通じた容器体A内と主シリンダ53内との連通が許容される。
【0033】
図示の例では、連通筒部63は内筒13内に突出している。これにより、連通筒部63のうち内筒13内に位置する部分は、ボール弁36が開弁したときに該ボール弁36に係止し、ボール弁36の上方へのさらなる変位を規制することが可能とされている。
ただし、連通筒部63は内筒13内に突出していなくてもよい。この場合には、例えばシール筒部12eを利用して、ボール弁36のさらなる上方への変位を規制することが可能である。
【0034】
ピストンガイド62は、その内側が後方に開口している。そして、ピストンガイド62の内側には、シリンダ用筒部40における後壁から前方に向けて突設された嵌合筒部41が後方から嵌合されている。
主ピストン52は、トリガー部51に連結される円柱状の連結部70と、連結部70よりも後方に位置し、連結部70よりも大径とされたピストン筒71と、を備え、全体として後方に開口した筒状に形成されている。
なお、主シリンダ53及び主ピストン52は、前後方向に沿って延びる図示しない共通の軸線上に配置されている。
【0035】
ピストン筒71は、後方に向けて開口し、且つ内部にピストンガイド62が挿入されるピストン本体部72と、ピストン本体部72の後端部からその径方向の外側に向けて突出し、且つ外筒部60の内周面に摺接する摺動筒部73と、を備えている。
ピストン本体部72は、その内径がピストンガイド62の外径よりも僅かに大きく形成されている。ピストン本体部72の内周面とピストンガイド62の外周面とは、ピストン筒71の径方向に若干の隙間をあけて対向している。
ピストン本体部72の後端部には、ピストン本体部72の径方向内側に向かって突出し、ピストンガイド62の外周面に対して摺接する環状の内側リップ部72aが形成されている。これにより、内側リップ部72aとピストンガイド62の外周面との間には、シール性が確保されている。
【0036】
摺動筒部73は、前後方向の中央部から前方及び後方に向かうに従って漸次拡径するテーパ状に形成され、前後方向の両端部に位置する外側リップ部73aを備えている。外側リップ部73aは、外筒部60の内周面に対して密に摺接している。これにより、外側リップ部73aと外筒部60の内周面との間には、シール性が確保されている。
【0037】
主ピストン52の連結部70は、連結軸を介してトリガー部51に連結されている。これにより、主ピストン52は、トリガー部51と共に弾性板部54の付勢力によって前方に付勢されていると共に、トリガー部51の後方への揺動に伴って後方に移動して主シリンダ53内に押し込まれる。
【0038】
主ピストン52は、トリガー部51が最前方揺動位置(最前方移動位置)にあるときに、これに対応して最前方位置に位置しており、摺動筒部73が第1通気孔64を閉塞している。そして、トリガー部51の後方への揺動によって主ピストン52が最前方位置から所定量だけ後方移動したときに、摺動筒部73が第1通気孔64を開放する。これにより、容器体Aの内部は、第3通気孔66、第2通気孔65及び第1通気孔64を通じて外部に連通する。
【0039】
トリガー部51は、回転軸部83(図1参照)を中心に前後方向に揺動可能とされている。トリガー部51と主ピストン52とは、互いに連結されている。トリガー部51の前後方向への揺動に伴って、主ピストン52は前後移動可能とされている。
【0040】
図2に示すように、射出筒部11の上方には、上板部材84が設けられている。上板部材84の左右両側には、左右方向から見た側面視で前方に凸の円弧状に形成され、且つ射出筒部11の下方まで延びる上記弾性板部54がそれぞれ一体に形成されている。弾性板部54は、左右方向から見た側面視で互いに同心の円弧状に形成され、前後に並ぶ一対の板ばねを備えている。一対の板ばねにはそれぞれ、下方に向けて係止片が突設されており、この係止片がトリガー部51に形成されたポケット部に上方から差し込まれて係合している。これにより、弾性板部54はトリガー部51を前方に向けて付勢している。
【0041】
トリガー部51の上端部は、弾性板部54による付勢によって後述する規制壁172の下端部に対して後方から当接している。これにより、トリガー部51は最前方揺動位置に位置決めされている。
図2に示すように、ノズル部材3は、ノズル板170、装着筒171、規制壁172、挿入部173、ノズル軸部174及び囲繞筒175を備えている。
【0042】
ノズル板170は、射出筒部11の前端開口部を前方から覆うように配置されている。
装着筒171は、ノズル板170から後方に向けて突設され、射出筒部11に対して密に外嵌されている。
ノズル板170には、接続孔176が形成されている。接続孔176は、ノズル板170を前後方向から見た正面視で、装着筒171の内側に配置されている。規制壁172は、その下端部がトリガー部51に対して前方から当接することで、トリガー部51を最前方揺動位置に位置決めしている。
【0043】
挿入部173は、ノズル板170から後方に向けて突設され、射出筒部11内における前後方向のほぼ全長にわたって前方から挿入されている。ノズル軸部174は、中心軸線が貯留シリンダ90の軸線O2よりも僅かに上方に位置するように配置されている。囲繞筒175は、ノズル軸部174よりも前方に向けて僅かに突出している。ノズル軸部174と囲繞筒175との間には、接続孔176に連通する環状の流通路177が形成されている。
【0044】
ノズル軸部174には、前方に向けて開口する噴出孔4が形成されたノズルキャップ178が装着され、流通路177と噴出孔4とが連通している。これにより、貯留シリンダ90の内部は、連通孔95、射出筒部11内、接続孔176及び流通路177を通じて噴出孔4に連通している。つまり、連通孔95は、貯留シリンダ90の内部と噴出孔4とを連通している。
【0045】
図2に示すように、ピストンガイド62の後端部における外周面には、環状の窪み部181が形成されている。これにより、主ピストン52が最前方位置から後方に移動したときに、ピストン本体部72に形成された内側リップ部72aが上記窪み部181に達し、窪み部181内に収容可能とされている。
【0046】
なお、本実施形態では、窪み部181は主ピストン52が最後方位置に移動したときに内側リップ部72aに対してピストンガイド62の径方向に対向する位置に形成されている。これにより、主ピストン52が最後方位置に移動したときに、内側リップ部72aが窪み部181内に収容される。
【0047】
内側リップ部72aが窪み部181内に収容されることで、内側リップ部72aと窪み部181との間には、若干の隙間が形成される。これにより、内側リップ部72aと窪み部181との間の隙間を通じて、主シリンダ53内と、ピストン本体部72の内周面とピストンガイド62の外周面との間の隙間とが連通可能とされている。
【0048】
なお、後壁部61には、前方に向けて突出すると共にピストンガイド62の径方向に沿って延びるリブ182がピストンガイド62の周方向に間隔をあけて複数形成されている。内側リップ部72aは、主ピストン52が最後方位置に移動したときに、複数のリブ182に対して前方から接触する。これにより、主シリンダ53内は、周方向に隣り合うリブ182同士の隙間を通じて、内側リップ部72aと窪み部181との間の隙間に連通し易くなる。
【0049】
図2に示すように、ピストンガイド62の前端壁には、該前端壁を前後方向に貫通し、ピストン本体部72の内側とピストンガイド62の内側とを連通する連通開口部183が形成されている。
図示の例では、連通開口部183は、ピストンガイド62の周方向に間隔をあけて複数形成されている。連通開口部183は、ピストン本体部72の内周面とピストンガイド62の外周面との間の隙間に連通すると共に、ピストンガイド62の内側を通じて嵌合筒部41の内側に連通する。
【0050】
縦供給筒部10における外筒12の内周面と、内筒13の外周面と、の間のうち前方部分には、嵌合筒部41内と第3通気孔66内とを連通する接続通路184が形成されている。内側リップ部72aと窪み部181との間、ピストン本体部72の内周面とピストンガイド62の外周面との間の隙間、連通開口部183内、ピストンガイド62の内側、及び接続通路184は、連通路180を構成している。連通路180は、主ピストン52が最前方位置から後方に外れた位置に移動したときに、連通筒部63内を経由する経路とは異なる経路で、主シリンダ53内と容器体A内とを連通可能とする。
【0051】
貯留シリンダ90は、接続筒部30の上方に配置されている。貯留シリンダ90は、前後方向に延びており、前後方向において縦供給筒部10を跨いでいる。貯留シリンダ90の下端部は、縦供給筒部10の上端部と一体に形成されている。貯留シリンダ90の内部には、トリガー部51の後方への揺動(移動)によって、縦供給筒部10内及び接続筒部30内を通過した液体が供給される。
【0052】
貯留シリンダ90は、接続筒部30及びシリンダ用筒部40に対して平行に配置されている。図示の例では、貯留シリンダ90は、縦供給筒部10よりも後方に突出するように形成されている。貯留シリンダ90には、接続筒部30内に連通する供給孔91が形成されている。供給孔91は、前筒部96における前端部の下側部分に位置している。貯留シリンダ90内には、縦供給筒部10内及び接続筒部30内を通過した液体が供給孔91を通じて供給される。
貯留シリンダ90は、接続筒部30の前端部の上方に配置された前壁部92と、前壁部92から後方に向けて延びたシリンダ筒93と、を備え、全体として後方に開口した筒状に形成されている。
【0053】
前壁部92には、装着凹部94及び連通孔95が形成されている。
装着凹部94は、前壁部92の後端面に、貯留シリンダ90の軸線O2と同軸の環状に形成されている。連通孔95は、前壁部92を前後方向に貫通するように形成されている。連通孔95は、前壁部92を前後方向から見た正面視において、装着凹部94の内側に配置され、前壁部92を前後方向に貫通している。
【0054】
シリンダ筒93は、前壁部92に接続された前筒部96と、前筒部96よりも外径及び内径が大きく形成され、前筒部96よりも後方に位置する後筒部97と、前筒部96及び後筒部97を前後に連結する段部98と、を備え、前方から後方に向けて漸次拡径する多段筒状に形成されている。
【0055】
段部98は、前方から後方に向かうに従い漸次拡径している。後筒部97は、縦供給筒部10よりも後方に配置されている。後筒部97の後端部には、係止凹部97aが後筒部97の周方向に間隔をあけて複数形成されている。図示の例では、係止凹部97aは後筒部97を貫通する貫通孔である。ただし、係止凹部97aは貫通孔である必要はなく、例えば後筒部97の内周面に形成された凹部(窪み部)であっても良い。
【0056】
シリンダ筒93には、一対のガイド溝93aが形成されている。図3に示すように、各ガイド溝93aは、シリンダ筒93の左端部および右端部に配置されており、前後方向に沿って延びている。各ガイド溝93aは、段部98から後筒部97の前後方向における中間部にかけて形成されている。各ガイド溝93aはシリンダ筒93を左右方向に貫通している。
【0057】
図2に示すように、貯留シリンダ90内には、弁体100が配設されている。弁体100は、弁基部101及び貯留弁102を有している。
弁基部101は、軸線O2と同軸の環状に形成され、前壁部92の後端面側に配置されている。弁基部101は、前方に向けて突設され、装着凹部94内に後方から入り込むことで装着凹部94に装着される装着凸部103を備えている。これにより、弁体100の全体は、前壁部92に対して一体に組み合わされている。
【0058】
貯留弁102は、弁基部101の外周縁部から後方に向けて突出する環状に形成されている。貯留弁102は、貯留シリンダ90の径方向に弾性変形可能とされ、自由端とされた後端部がシリンダ筒93の内周面に対して離反可能に着座している。貯留弁102の後端部は、供給孔91よりも後方に位置している。これにより、貯留弁102は、貯留シリンダ90の内側から供給孔91を開放可能に閉塞している。
【0059】
貯留弁102は、供給孔91を通じた接続筒部30内から貯留シリンダ90内への液体の供給を許容し、且つ供給孔91を通じた貯留シリンダ90内から接続筒部30内への液体の流出を規制する逆止弁とされている。つまり、貯留弁102は、後述する主シリンダ53内の加圧時に、噴出孔4と縦供給筒部10内との連通を許容し、且つ主シリンダ53内の減圧時に、噴出孔4と縦供給筒部10内との連通を遮断する逆止弁とされている。
【0060】
貯留シリンダ90は後方に向けて開口している。貯留シリンダ90の後方に向けた開口部を通して、支持部材150が貯留シリンダ90内に挿入されている。支持部材150は、略有底筒状に形成されており、前後方向に沿って延びる嵌合筒部151と、嵌合筒部151の後方の開口部を覆う支持部152と、を有する。嵌合筒部151は、貯留シリンダ90の後端開口部内に嵌合している。支持部152は、カバー体140の抜け止め部142によって囲われている。図2に示すように、支持部152の中央部には、この支持部152を前後方向に貫通する空気孔152aが形成されている。なお、空気孔152aは、貯留シリンダ90の内部と外部とを連通させている。
【0061】
嵌合筒部151の外周面には、外側に向けて突出する係止突部151a、151bが形成されている。係止突部151aは、嵌合筒部151の周方向に間隔を空けて複数設けられている。各係止突部151aは、係止凹部97aの内側に位置している。係止突部151bは、係止突部151aよりも後方に位置し、前後方向から見て環状に形成されている。係止突部151bは、カバー体140の抜け止め部142と前後方向で対向している。係止突部151bと抜け止め部142との間には、前後方向において微小な隙間が設けられているが、このような隙間は設けられていなくてもよい。係止突部151aが係止凹部97a内に位置していること、および係止突部151bが抜け止め部142と前後方向で対向していることにより、支持部材150が貯留シリンダ90およびカバー体140から後方に脱離することが規制される。
【0062】
カバー体140は、縦供給筒部10、射出筒部11及び貯留シリンダ90の全体を、少なくとも上方及び左右方向から覆っている。カバー体140は、カバー部141と、抜け止め部142と、を有している。カバー部141の一部は、前後方向に沿って延びる筒状に形成されており、貯留シリンダ90の後端部を外側から囲っている。抜け止め部142は、カバー部141の後端部から、軸線O2に向けて延びている。抜け止め部142は前後方向から見て環状に形成されている。抜け止め部142の内周縁は、カバー体140を前後方向に貫通する貫通孔143とされている。
【0063】
貯留プランジャ110は、貯留シリンダ90内に収容されており、貯留シリンダ90内で前後方向に移動可能に設けられている。貯留プランジャ110は、貯留シリンダ90内への液体の供給に伴って後方に向けて移動する。
貯留プランジャ110は、貯留シリンダ90内を前後方向に摺動する摺動部材120と、摺動部材120の内側に嵌合された受け部材130と、を備えている。摺動部材120及び受け部材130は、前後方向に延びる筒状に形成され、軸線O2と同軸に配設されている。
【0064】
摺動部材120は、例えば受け部材130よりも軟質の材料により形成され、前後方向に延びるプランジャ筒121と、プランジャ筒121の前端開口を閉塞する閉塞壁122と、を備えている。プランジャ筒121の外周面には、プランジャ筒121の周方向の全周にわたってリップ部123が形成されている。リップ部123は、シリンダ筒93における前筒部96の内周面上を前後方向に密に摺動する。これにより、リップ部123と前筒部96の内周面との間には、シール性が確保されている。
【0065】
閉塞壁122は、前端面が弁基部101の後端面に対して後方から離反可能に着座している。これにより、閉塞壁122は連通孔95を開放可能に閉塞している。
特に、閉塞壁122は、付勢部材160の付勢力によって前方に付勢されており、弁基部101の後端面に対して後方から強く押し付けられている。これにより、閉塞壁122は、連通孔95をシールしていると共に、貯留プランジャ110の全体が付勢部材160に抗して後方移動したときに開弁して連通孔95を開放する。従って、閉塞壁122は、貯留プランジャ110が後方移動するまで貯留シリンダ90内で液体を加圧することができると共に、液体の圧力が所定値に達したとき、すなわち貯留プランジャ110が付勢部材160に抗して後方移動したときに開弁して、噴出孔4側に加圧した液体を供給する蓄圧弁として機能する。
【0066】
なお、本実施形態の閉塞壁122は、貯留弁102よりも噴出孔4側に配置され、付勢部材160の付勢力に対応した作動圧で開弁する。閉塞壁122の作動圧は、貯留弁102が開弁するときの作動圧よりも高い。
【0067】
閉塞壁122の前端面には、凸部125及び凹溝126が形成されている。凸部125は、閉塞壁122から前方に向けて突出し、環状の弁基部101の内側に後方から入り込んでいる。凹溝126は、貯留プランジャ110の径方向に延びていると共に、径方向外側に向けて開口している。
なお、閉塞壁122の前端面が弁基部101の後端面に対して当接している場合では、凹溝126と連通孔95との連通は遮断されている。
【0068】
受け部材130は、受け筒131と、受け座部132と、係止座部133と、を有している。受け筒131は、前端が閉塞された有頂筒状に形成されており、プランジャ筒121の内側に配置されている。受け筒131の外径はシリンダ筒93の後筒部97の内径よりも小さいため、受け筒131と後筒部97との間には、環状の隙間が形成されている。この環状の隙間を利用して、付勢部材160が受け部材130に取り付けられている。
【0069】
受け座部132および係止座部133は、受け筒131から外側に向けて突出しており、前後方向から見て環状に形成されている。受け座部132および係止座部133は、貯留プランジャ110の前後方向における中間部分に設けられている。係止座部133は、プランジャ筒121に対して後方から当接若しくは近接している。受け座部132は、係止座部133よりも後方に位置しており、受け座部132と係止座部133との間には前後方向の隙間が設けられている。受け座部132には、付勢部材160の前端部が後方から当接している。
【0070】
貯留プランジャ110の受け座部132と支持部材150の支持部152との間には、付勢部材160が圧縮状態で配置されている。このため、貯留プランジャ110には付勢部材160の前方付勢力が作用している。
本実施形態における付勢部材160は、前後方向に沿って延び、軸線O2と同軸に配置された金属製のコイルばねである。なお、付勢部材160として樹脂製のコイルばねを用いても良いし、その他の弾性を有する部材を用いてもよい。
【0071】
付勢部材160は、受け筒131の後端部を囲繞するように配置され、その前端部は受け座部132に対して後方から当接し、その後端部は支持部152に対して前方から当接している。これにより、付勢部材160は、貯留シリンダ90内において貯留プランジャ110を前方に向けて付勢している。これにより閉塞壁122は、付勢部材160からの付勢によって連通孔95をシールした状態で塞いでいる。
【0072】
なお、閉塞壁122が連通孔95を塞いでいるときの貯留プランジャ110の位置を最前進位置とする。従って、貯留プランジャ110が最前進位置に配置されている場合には、貯留シリンダ90内に液体がほとんど収容されていないうえ、連通孔95が遮断されている。
これに対して図5に示すように、貯留プランジャ110の後方移動によって、作動部材190の規制部193(後述)がトリガー部51に前方から当接し、主ピストン52が最後方位置に位置するときの貯留プランジャ110の位置を、最後退位置とする。なお、貯留プランジャ110が最後退位置に位置するとき、係止部191(後述)とガイド溝93aの後端部との間に隙間が生じていてもよいし、係止部191がガイド溝93aの後端部に接していてもよい。
【0073】
作動部材190は、一対の係止部191と、連結部192と、規制部193と、を有している。図3図4に示すように、一対の係止部191は、左右方向において貯留プランジャ110の受け部材130を挟むように配置されている。一対の係止部191は、貯留シリンダ90のガイド溝93aを通して貯留シリンダ90の内側に挿入されている。各係止部191のうち軸線O2に近い側の端部は、貯留プランジャ110の受け座部132と係止座部133との間に挟まれている。このため、作動部材190は貯留プランジャ110に固定されており、貯留プランジャ110が前後方向に移動すると、追従して作動部材190も前後方向に移動する。
【0074】
連結部192は、一対の係止部191と、規制部193とを連結している。連結部192は、前後方向に沿って延びる一対の帯状部192aと、一対の帯状部192aの前端部に設けられた囲繞部192bと、を有している。一対の帯状部192aは、一対の係止部191からそれぞれ前方に向けて延びている。一対の帯状部192aは、左右方向において貯留プランジャ110および射出筒部11を挟むように配置されている。
【0075】
囲繞部192bは下方に開口するC字状に形成されており、射出筒部11の前端部を外側から囲っている。囲繞部192bの上下方向における中央部に、一対の帯状部192aが接続されている。
図2に示すように、規制部193は、囲繞部192bの下端部から前方に向けて突出するように設けられている。規制部193は、上下方向に厚みを有する板状に形成されている。規制部193は、トリガー部51の前方に位置している。
【0076】
次に、上述のように構成されたトリガー式液体噴出器1を使用する場合について説明する。
なお、トリガー部51の複数回の操作によって、トリガー式液体噴出器1の各部内に液体が充填され、縦供給筒部10から液体を吸い上げることができる状態になっているものとする。
【0077】
図1に示される状態で、トリガー部51を弾性板部54の付勢力に抗して後方に引くと、トリガー部51の後方移動に伴って主ピストン52が最前方位置から後方に移動するので、主シリンダ53内を加圧することができる。これにより、主シリンダ53内の液体を、連通筒部63内を通じて縦供給筒部10の内筒13に供給することができる。すると、内筒13に供給された液体は、ボール弁36を押し下げて閉弁させると共に、接続筒部30を通じて供給孔91に供給され、貯留弁102を押し上げて開弁させる。
【0078】
これにより、液体が貯留シリンダ90内に供給され、貯留シリンダ90内が加圧される。貯留シリンダ90内の加圧に伴い、貯留プランジャ110は付勢部材160の付勢力に抗して最前進位置から後方に向けて移動する。なお、貯留シリンダ90内に液体が導入されはじめた初期段階では、液体は凹溝126内に入り込む。そのため、貯留プランジャ110を後方に向けて移動させ易い。
【0079】
貯留プランジャ110が後方に移動することで、閉塞壁122の前端面を弁基部101の後端面から離間させて開弁させ、連通孔95を開放することができる。従って、連通孔95、射出筒部11内、接続孔176及び流通路177を通じて、圧力が高まった液体を噴出孔4に導くことができ、噴出孔4から前方に向けて液体を噴出させることができる。
また、これと同時に、上述のように貯留プランジャ110を後方に向けて移動させることができる。
このように、トリガー部51を後方に引く操作を行う毎に、液体を噴出孔4から噴出させることができると共に、貯留プランジャ110を後方に移動させて、貯留シリンダ90内に液体を溜める(充填する)ことができる。
【0080】
その後、トリガー部51を引く操作を止めて該トリガー部51を解放すると、弾性板部54の付勢力によってトリガー部51が前方に付勢されて元の位置に復帰するので、これに伴って主ピストン52が主シリンダ53内を前方に向けて復元移動する。そのため、主シリンダ53内の圧力を減圧させて容器体A内の圧力よりも負圧にすることができるので、容器体A内の液体を縦供給筒部10内に吸い上げることができる。
すると、新たに吸い上げられた液体は、ボール弁36を押し上げて開弁させ、連通筒部63内を通じて主シリンダ53内に導入される。これにより、次の噴出に備えることができる。
なお、このとき貯留弁102は閉弁していると共に、ボール弁36の上方への移動量は内筒13内に突出した連通筒部63の一部によって規制されている。
【0081】
トリガー部51の操作を停止すると、縦供給筒部10内及び接続筒部30内を通じた貯留シリンダ90内への液体の供給は停止するものの、付勢部材160の付勢力によって貯留プランジャ110が最前進位置に向けて前方移動しはじめる。このとき、貯留シリンダ90内から接続筒部30内への液体の流出は、貯留弁102によって規制される。
【0082】
これにより、貯留シリンダ90内に溜まった液体を、連通孔95、射出筒部11内、接続孔176及び流通路177を通じて噴出孔4に導き、噴出孔4を通じて前方に向けて液体を引き続き噴出させることができる。
このように、トリガー部51を後方に引く操作を行ったときだけでなく、トリガー部51を操作しない場合であっても液体を噴出させることができ、液体の連続噴出を行うことができる。
【0083】
ここで、貯留プランジャ110が最後退位置に位置した状態で、仮にトリガー部51を後方に引く操作を行った場合、貯留シリンダ90内に液体が過剰に供給されて、液漏れや各部の破損が発生することが考えられる。しかしながら本実施形態では、貯留プランジャ110が後方に移動する際、作動部材190も追従して後方に移動する。そして、貯留プランジャ110が最後退位置に位置するとき、作動部材190の規制部193が、主ピストン52を最後方位置に位置させた状態のトリガー部51に対して前方から当接する。このため、弾性板部54によるトリガー部51の復元変位がされなくなり、それ以上はトリガー部51を操作できなくなる。したがって、貯留シリンダ90内に液体が過剰に供給されることを抑制できる。
【0084】
その後、付勢部材160の付勢力によって貯留プランジャ110が前方移動すると、貯留プランジャ110に追従して作動部材190も前方移動する。従って、規制部193も前方移動し、トリガー部51を再び操作することが可能となる。
なお、作動部材190が貯留シリンダ90に対して前後方向に移動する際、係止部191がガイド溝93a内を前後方向に摺動する。
【0085】
そして本実施形態のトリガー式液体噴出器1によれば、係止部191と規制部193とを連結する連結部192が、係止部191から前方(軸方向における他方側)に向けて延びている。これにより、例えば連結部192が係止部191から後方(軸方向における一方側)に延びている場合と比較して、軸方向における噴出器本体2のかさ張りが抑えられる。特に、仮に連結部192が係止部191から後方に延びている場合、作動部材190が後方に移動するための空間を確保するために噴出器本体2のかさ張りも大きくなる。これに対して、連結部192が係止部191から前方に延びるように配置することで、よりコンパクトなトリガー式液体噴出器1を提供することが可能となる。
【0086】
また、係止部191は貯留プランジャ110に固定されている。このため、貯留プランジャ110が前後方向に移動したときに、作動部材190をより確実に貯留プランジャ110に追従させて移動させることができる。
【0087】
また、貯留シリンダ90は後方に向けて開口する開口部を有し、当該開口部には、付勢部材160を後方から支持する支持部材150が挿入されている。噴出器本体2は、貯留シリンダ90の少なくとも一部を覆うカバー体140を備えている。そしてカバー体140には、支持部材150の後方に向けた移動を規制する抜け止め部142が形成されている。この構成により、付勢部材160の付勢力などによって支持部材150が後方に向けて脱落することを、抜け止め部142によって抑制することができる。特に、貯留プランジャ110が貯留シリンダ90に対して後方に移動すると付勢部材160の圧縮量が大きくなり、支持部材150が付勢部材160から受ける反力も大きくなるが、このような反力によって支持部材150が脱落することを抑制できる。
【0088】
また、カバー体140には貫通孔143が形成されており、貫通孔143の内側に支持部材150の一部が位置している。この構成によれば、例えば図6に示すように支持部材150の形状を変更することで、支持部材150のうち付勢部材160を支持する支持部152の軸方向における位置を容易に変更することができる。したがって、付勢部材160が生じさせる付勢力も容易に変更することが可能となり、吐出態様の異なるトリガー式液体噴出器1の製造がより容易になる。なお、付勢部材160の付勢力を変更すると、貯留シリンダ90内の液圧が変わるため、液体が噴出される際の飛距離を調整したり、液体を噴霧させる場合には霧の粒の大きさを調整したりすることができる。
【0089】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0090】
例えば、前記実施形態では、作動部材190の係止部191が、貯留プランジャ110の前後方向における中間部に固定されていた。しかしながら、例えば作動部材190の係止部を貯留プランジャ110の後方に位置させて、貯留プランジャ110が後方移動するときに、作動部材190の係止部が貯留プランジャ110によって後方に押されるようにしてもよい。つまり、係止部が貯留プランジャ110に固定されることは必須ではなく、貯留プランジャ110が後方移動するときに、貯留プランジャ110から後方に向けた力を受ける位置に係止部が位置していればよい。
【0091】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…トリガー式液体噴出器 2…噴出器本体 3…ノズル部材 10…縦供給筒部 11…射出筒部 50…トリガー機構 51…トリガー部 90…貯留シリンダ 110…貯留プランジャ 140…カバー体 142…抜け止め部 143…貫通孔 150…支持部材 190…作動部材 191…係止部 192…連結部 193…規制部 A…容器体 O1…縦供給筒部の中心軸線 O2…貯留シリンダの中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6