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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220930BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20220930BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20220930BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101R
C23C14/50 E
C23C16/458
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019176643
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2020057786
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】62/738,205
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 祐司
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-218592(JP,A)
【文献】特開2008-047883(JP,A)
【文献】米国特許第06490145(US,B1)
【文献】特開2010-010154(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0243726(US,A1)
【文献】特開2010-123712(JP,A)
【文献】特開2016-213456(JP,A)
【文献】特開2000-021957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
C23C 14/50
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面側に配設され、リング状の接合部で前記セラミックプレートとセラミック接合されたセラミック製の緻密質プラグと、
前記接合部以外の部分で前記セラミックプレートの下面に接合された金属製の冷却プレートと、
前記セラミックプレートを厚み方向に貫通するガス放出孔と、前記緻密質プラグの上面側と下面側とを屈曲しながら貫通し、前記ガス放出孔と連通するガス内部流路と、を有し、前記接合部の内周よりも内側を通る、ガス流路と、
を備えた半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記接合部は、セラミック焼結体である、請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記緻密質プラグの上面には、前記ガス放出孔及び前記ガス内部流路に連通し前記ガス内部流路よりも開口の大きい凹部が設けられている、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記ガス放出孔は、複数のガス細孔で構成され、
前記凹部は、前記複数のガス細孔と連通している、
請求項3に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記ガス内部流路は、螺旋状またはジグザグ状の通路である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
前記緻密質プラグは、前記ガス内部流路を有する柱状のプラグ本体と、前記プラグ本体から下方に突出した筒状のスカート部とを有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項7】
前記冷却プレートは、上面に開口する筒状穴を有し、
前記緻密質プラグの少なくとも一部は、前記筒状穴内に配設されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の半導体製造装置用部材が知られている。例えば、特許文献1の半導体製造装置用部材は、上面にウエハ載置面を有する静電チャックの下面に金属製の冷却プレートが接合されたものである。冷却プレートは、ガス供給孔を有している。静電チャックは、ガス供給孔と連通する有底筒状穴と、有底筒状穴の底面からウエハ載置面まで貫通するガス放出孔とを有している。静電チャックには、多孔質プラグが、有底筒状穴に嵌め込まれた状態で樹脂製の接着剤を介して接着されている。また、例えば特許文献2の半導体製造装置用部材は、上面にウエハ載置面を有する静電チャックの下面に中間プレートを介して冷却プレートが配置されたものである。冷却プレートは、ガス供給孔を有している。静電チャックは、下面からウエハ載置面まで貫通するガス放出孔を有している。中間プレートは、冷却プレートとともに、ガス供給孔及びガス放出孔と連通する空所を形成していて、この空所に緻密質プラグが配置されている。緻密質プラグは、上面側と下面側とを屈曲しながら貫通するガス内部流路を有している。これらの半導体製造装置用部材はチャンバー内でウエハ載置面にウエハを載置し、チャンバー内に原料ガスを導入すると共に冷却プレートにプラズマを立てるためのRF電圧を印加することにより、プラズマを発生させてウエハの処理を行う。このとき、ガス供給孔には、ヘリウム等のバックサイドガスが導入される。バックサイドガスは、ガス供給孔から、多孔質プラグの空隙又は緻密質プラグのガス内部流路を経て、ガス放出孔を通ってウエハの裏面に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-232641号公報
【文献】米国特許出願公開第2017/0243726号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、有底筒状穴に多孔質プラグを樹脂製の接着剤を介して接着するが、樹脂製の接着剤は、長期使用に伴って劣化することがあった。こうして劣化した部分は絶縁破壊の一因となるため好ましくない。また、多孔質プラグは絶縁耐圧が低いという問題もあった。これも絶縁破壊の一因となるため好ましくない。また、特許文献2では、空所に緻密質プラグを配置するだけであるため、緻密質プラグと空所の内面との間に隙間が生じることがあった。こうした隙間も絶縁破壊の一因となるため好ましくない。空所に緻密質プラグを樹脂製の接着剤を介して接着して隙間が生じるのを抑制しても、上述の通り、樹脂製の接着剤は長期使用に伴って劣化することがあり、絶縁破壊の一因となることがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、従来に比べて絶縁破壊しにくくすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体製造装置用部材は、
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面側に配設され、リング状の接合部で前記セラミックプレートとセラミック接合されたセラミック製の緻密質プラグと、
前記接合部以外の部分で前記セラミックプレートの下面に接合された金属製の冷却プレートと、
前記セラミックプレートを厚み方向に貫通するガス放出孔と、前記緻密質プラグの上面側と下面側とを屈曲しながら貫通し、前記ガス放出孔と連通するガス内部流路と、を有し、前記接合部の内周よりも内側を通る、ガス流路と、
を備えた半導体製造装置用部材。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、セラミックプレートとセラミック製の緻密質プラグとがリング状の接合部でセラミック接合されている。つまり、セラミックプレートと緻密質プラグとの接合部分はセラミックである。このため、両者を樹脂製の接着剤を用いて接着する場合よりも、接合部の劣化が生じにくい。また、緻密質プラグは、多孔質プラグに比べて絶縁耐圧が高い。更に、緻密質プラグのガス内部流路は上面から下面まで屈曲しながら貫通しているため、ガス内部流路が上面から下面まで真っ直ぐに貫通する場合よりガス内部流路長は長くなり、このガス内部流路を介して放電が起きるのを抑制できる。そのため、従来に比べて絶縁破壊が生じにくいという効果が得られる。
【0008】
本明細書において、「上」「下」は、絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、セラミックヒータの向きによって「上」「下」は「下」「上」になったり「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。
【0009】
また、本明細書において、「セラミック接合」とは、セラミック同士がセラミックで接合されていることをいう。セラミックプレートと緻密質プラグは、例えば、焼結接合や拡散接合などの固相接合で接合されていてもよい。焼結接合は、セラミック粉体を接合界面に挿入して、加圧力を加えながら加熱し、焼結させて接合する方法である。拡散接合は、セラミック同士を直接接触させたまま加圧下で加熱し、構成元素を拡散させて接合する方法である。また、セラミックプレートと緻密質プラグは、例えば、セラミックス性接着剤で接着されていてもよい。
【0010】
なお、緻密質プラグの気孔率は、0.1%未満であることが好ましい。また、ガス内部流路は、上方から見たときに上面の開口から下面の開口が見えないことが好ましい。緻密質プラグのセラミックは高純度(例えば純度99%以上)であることが好ましい。
【0011】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記接合部は、セラミック焼結体であることが好ましい。接合部が焼結体でないもの、例えば接合部がセラミックス性接着剤を硬化させただけのものよりも、絶縁耐圧が高いからである。
【0012】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記緻密質プラグの上面には、前記ガス放出孔及び前記ガス内部流路に連通し前記ガス内部流路よりも開口の大きい凹部が設けられていてもよい。こうすれば、ガス内部流路がガス内部流路よりも開口の大きい凹部を介してガス放出孔と連通するため、ガス放出孔とガス内部流路との位置合わせが容易になる。こうした半導体製造装置用部材において、前記ガス放出孔は、複数のガス細孔で構成され、前記凹部は、前記複数のガス細孔と連通していてもよい。こうすれば、凹部を介して複数のガス細孔にガスを供給できる。
【0013】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記ガス内部流路は、螺旋状またはジグザグ状の通路としてもよい。こうすれば、ガス内部流路を介して放電が起きるのをより抑制できる。
【0014】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記冷却プレートは、上面に開口する筒状穴を有し、前記緻密質プラグの少なくとも一部は、前記筒状穴内に配設されていてもよい。なお、筒状穴は有底でも底なしでもよい。こうした半導体製造装置用部材において、前記緻密質プラグは、前記ガス内部流路を有する柱状のプラグ本体と、前記プラグ本体から下方に突出した筒状のスカート部とを有していてもよい。こうすれば、筒状穴に露出した金属をスカート部が覆うので、絶縁距離を長くできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】半導体製造装置用部材10の縦断面図。
図2図1の部分拡大図。
図3】緻密質プラグ30及び接合部32の上面図。
図4】半導体製造装置用部材10の製造工程図。
図5】緻密質プラグ30の別例の縦断面図。
図6】緻密質プラグ30の別例の縦断面図。
図7】半導体製造装置用部材10の別例の部分拡大図。
図8】半導体製造装置用部材10の別例の部分拡大図。
図9】半導体製造装置用部材10の別例の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。図1は半導体製造装置用部材10の縦断面図、図2図1の部分拡大図、図3は緻密質プラグ30及び接合部32の上面図である。
【0017】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、緻密質プラグ30と、冷却プレート40と、ガス流路50とを備えている。
【0018】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の上面20aは、ウエハ載置面となっている。セラミックプレート20は、静電電極22及びヒータ電極24を内蔵し、厚み方向に貫通するガス放出孔25(例えば直径0.5mm)を複数有している。セラミックプレート20の上面20aには、エンボス加工により図示しない凹凸が設けられており、凹部の底面にガス放出孔25が開口している。静電電極22は、平面状の電極であり、図示しない給電棒を介して直流電圧が印加される。この静電電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置面に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面への吸着固定が解除される。ヒータ電極24は、ヒータ線の一方の端子から他方の端子まで一筆書きの要領でウエハ載置面の全面にわたって配線されたものである。このヒータ電極24には、図示しない給電棒を介して電力が供給される。静電電極22もヒータ電極24も、ガス放出孔25に露出しないように形成されている。こうしたセラミックプレート20は、静電チャックヒータと称される。なお、図1以外の図面では、静電電極22及びヒータ電極24の図示を省略した。
【0019】
緻密質プラグ30は、セラミックプレート20と同種のセラミック製のプラグ(例えば外径4mm、全長4mm)であり、ガス放出孔25のそれぞれに対応して設けられている。緻密質プラグ30は、緻密質プラグ30の上面30aと下面30bとを螺旋状に屈曲しながら貫通するガス内部流路35を有している。ガス内部流路35は、上方から見たときに外周が円形となる滑らかな螺旋状(例えば巻径20mm、ピッチ0.7mm、流路断面直径0.1mm)になっている(図3参照)。このガス内部流路35は、セラミックプレート20のガス放出孔25と連通している。緻密質プラグ30は、ガス内部流路35を有する柱状のプラグ本体33と、プラグ本体33から下方に突出した筒状のスカート部34(例えば内径3mm、長さ3mm)とを有している。緻密質プラグ30の上面30aには、ガス放出孔25及びガス内部流路35に連通し、ガス内部流路35よりも開口の大きい凹部36(例えば内径3mm、深さ0.1mm)が設けられている。緻密質プラグ30は、セラミックプレート20の下面20bに、セラミックプレート20と同種のセラミック製の接合部32でセラミック接合されている。接合部32は、リング状であり、緻密質プラグ30の上面30aのうち凹部36の周囲のリング状の部分に形成されている(図3参照)。緻密質プラグ30は、例えば、3Dプリンターを用いて成形した成形体を焼成して製造してもよいし、モールドキャスト成形した成形体を焼成して製造してもよい。モールドキャスト成形の詳細は、例えば特許第5458050号公報などに開示されている。モールドキャスト成形では、成形型の成形空間に、セラミック粉体、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むセラミックスラリーを注入し、ゲル化剤を化学反応させてセラミックスラリーをゲル化させることにより、成形型内に成形体を形成する。モールドキャスト成形では、ワックスなどの融点の低い材料で形成された外型及び中子を成形型として用いて成形型内に成形体を形成し、その後、成形型の融点以上の温度に加熱して成形型を溶融除去又は消失させて、成形体を製造してもよい。
【0020】
冷却プレート40は、金属アルミニウムやアルミニウム合金などの金属製の円板(セラミックプレート20と同じ直径かプレートよりも大きな直径の円板)である。冷却プレート40の内部には、冷媒が循環する冷媒流路42が形成されている。冷却プレート40は、厚さ方向に貫通する、つまり、上面40a及び下面40bに開口する筒状穴40hを複数有している。筒状穴40hの内部には、緻密質プラグ30が配置されており、筒状穴40hのうち緻密質プラグ30が配置されていない部分は、ガス供給孔45となる。筒状穴40hの直径は、緻密質プラグ30の直径よりもわずかに(例えば0.5mmとか1mm)大きい。そのため、筒状穴40hを取り囲む壁面40cと緻密質プラグ30の外周面30cとの間には、図示しない隙間が存在している。冷却プレート40の上面40aは、セラミックプレート20の下面20bと樹脂製のボンディングシート60を介して接着されている。ボンディングシート60には、緻密質プラグ30を挿通するための穴(穴径は緻密質プラグ30の直径よりもやや大きい)が設けられている。なお、冷却プレート40の上面40aはセラミックプレート20の下面20bにろう材層を介して接合されていてもよい。
【0021】
ガス流路50は、接合部32の内周よりも内側を通るように形成されている。ガス流路50は、セラミックプレート20に設けられたガス放出孔25と、緻密質プラグ30に設けられたガス内部流路35とを有している。また、ガス流路50は、冷却プレート40に設けられたガス供給孔45を有しており、ガス供給孔45から供給されたガスが、ガス内部流路35を通ってガス放出孔25からウエハ載置面へ放出される。
【0022】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内に半導体製造装置用部材10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置面に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の静電電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置面に吸着固定する。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極と半導体製造装置用部材10の静電電極22との間に高周波電圧を印加させてプラズマを発生させる。なお、上部電極と静電電極22との間に高周波電圧を印加する代わりに、上部電極と冷却プレート40との間に高周波電圧を印加してもよい。ウエハWの表面は、発生したプラズマによってエッチングされる。冷却プレート40の冷媒流路42には、冷媒が循環される。ヒータ電極24には、ウエハWの温度が予め設定された目標温度となるように電力が供給される。ガス流路50には、図示しないガスボンベからヘリウム等のバックサイドガスが導入される。バックサイドガスは、ガス供給孔45、ガス内部流路35及びガス放出孔25を通ってウエハ載置面に供給される。プラズマを発生させているときに、仮にガス流路がストレート形状だとすると、ガス流路を通ってウエハWと冷却プレート40との間で放電が起きることがある。また、プラズマを発生させているときに、仮に接合部が樹脂製の接着剤だとすると、長期使用に伴って劣化し、緻密質プラグ30の沿面を通ってウエハWと冷却プレート40との間で放電が起きることがある。
【0023】
次に、半導体製造装置用部材10の製造例について説明する。図4は、半導体製造装置用部材10の製造工程図である。まず、セラミックプレート20及び緻密質プラグ30を準備する。この緻密質プラグ30の上面30aに、セラミックプレート20と同種のセラミック粉末と焼結助剤と溶剤とを含む接合材ペースト32pをリング状に塗布する。焼結助剤としては、例えば、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ケイ素、硝酸マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。溶剤としては、例えば、メタノールやエタノールなどが挙げられる。接合材ペースト32pを塗布した上面30aを、セラミックプレート20の下面20bに重ねる(図4(a)参照)。このとき、セラミックプレート20のガス放出孔25と、緻密質プラグ30の凹部36とが対向するように配置する。そして、セラミックプレート20と緻密質プラグ30とを加圧しつつ加熱して接合材ペースト32pを焼成することにより両者を接合(焼結接合)する。接合材ペースト32pは焼成されて接合部32になる。このとき、接合材ペースト32pには焼結助剤が含まれているため、それほど高圧や高温にしなくても接合することができる。これにより、セラミックプレート20の下面20bに複数の緻密質プラグ30がセラミック焼結体製でリング状の接合部32を介して接合された接合体70が得られる(図4(b)参照)。セラミックプレート20と接合部32との界面及び緻密質プラグ30と接合部32との界面には焼結助剤成分が含まれる。なお、接合部32がアルミナ焼結体製の場合、焼結助剤としては、アルミナ焼結体の体積抵抗率や耐電圧を高く維持することを考慮すると、フッ化マグネシウム(MgF2)が好ましい。MgF2は他の焼結助剤(例えばCaOなど)に比べて体積抵抗率や耐電圧が低下しにくいからである。
【0024】
続いて、厚さ方向に貫通する筒状穴40hが形成された冷却プレート40を準備する(図4(b)参照)。この冷却プレート40の上面40aと接合体70のセラミックプレート20の下面20bの少なくとも一方(ここでは上面40a)に樹脂性のボンディングシート60を配置し、その後両者を合わせて接着する。このとき、筒状穴40hを取り囲む壁面40cと緻密質プラグ30の外周面30cとの間には隙間が存在するようにする。これにより、半導体製造装置用部材10が得られる。なお、冷却プレート40の上面40aとセラミックプレート20の下面20bとをボンディングシート60で接着する代わりに、ろう材で接合してもよい。
【0025】
以上詳述した半導体製造装置用部材10では、セラミックプレート20とセラミック製の緻密質プラグ30とがリング状の接合部32でセラミック接合されている。つまり、セラミックプレート20と緻密質プラグ30との接合部分はセラミックである。アルミナ焼結体などのセラミックは、樹脂よりも、絶縁耐圧が高いだけでなく、半導体製造プロセス中の雰囲気(例えばプラズマなど)に対する耐食性が高いことなどにより、長期使用に伴う劣化が少ない。このため、両者を樹脂製の接着剤を用いて接着する場合よりも、接合部32の劣化が生じにくい。これにより、プラグの沿面を通る絶縁破壊を抑制できる。また、緻密質プラグ30は、多孔質プラグに比べて絶縁耐圧が高い。このため、緻密質プラグ30に代えて、多孔質プラグやその外周を緻密質としたもの(例えば、緻密質の筒状部材に多孔質プラグを嵌め込んで一体化させたもの)を用いた場合などに比べて絶縁破壊が生じにくい。更に、緻密質プラグ30のガス内部流路35は、上面30aから下面30bまで屈曲しながら貫通しているため、このガス内部流路35を介して放電が起きるのを抑制できる。これらにより、プラグの内部空間を通る絶縁破壊を抑制できる。そのため、従来に比べて絶縁破壊が生じにくいという効果が得られる。
【0026】
また、冷却プレート40は、上面40aに開口する筒状穴40hを有し、緻密質プラグ30の少なくとも一部は、筒状穴40h内に配設されている。緻密質プラグ30は、ガス内部流路35を有する柱状のプラグ本体33と、プラグ本体33から下方に突出した筒状のスカート部34とを有しており、筒状穴40hに露出した金属をスカート部34が覆うので、絶縁距離を長くできる。このとき、スカート部34の下端が筒状穴40hの下端に至るようにすれば、筒状穴40hに露出した金属をスカート部34が完全に覆うので、ガス流路50を介する放電を確実に抑制できる。
【0027】
更に、緻密質プラグ30の上面30aには、ガス放出孔25及びガス内部流路35に連通し、ガス内部流路35の上端よりも開口の大きい凹部36が設けられているため、ガス放出孔25とガス内部流路35との位置合わせが容易になる。
【0028】
更にまた、ガス内部流路35は、螺旋状の通路であるため、ガス内部流路35を介して放電が起きるのをより抑制できる。
【0029】
そして、筒状穴40hを取り囲む壁面40cと緻密質プラグ30の外周面30cとの間には、隙間が存在しているため、壁面40cと緻密質プラグ30の外周面30cとが接着されている場合に比べて、緻密質プラグ30と冷却プレート40との間の熱移動を考慮する必要がない。そのため、ウエハWの温度制御の設計がしやすくなる。
【0030】
そしてまた、セラミックプレート20と緻密質プラグ30とを、セラミック粉体と焼結助剤を含む接合材ペースト32pを用いて接合するため、それほど高圧や高温にしなくても両者を接合することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。例えば、以下に示す別例を適宜組み合わせて適用してもよい。
【0032】
例えば、上述した実施形態において、ガス内部流路35は、図5,6に示すようなジグザグ状としてもよい。図5,6は、緻密質プラグ30の別例の縦断面図である。図5では、ガス内部流路35は、ジグザグが直角の角を有している。この角は鋭角でも鈍角でもよい。図6では、ガス内部流路35は、角がアールである、つまり角がない。こうしたジグザグは、平面的であってもよいし、立体的であってもよい。また、ガス内部流路35は、上方から見たときに外周が多角形となるような、角を有する螺旋状でもよい。螺旋の巻き数やジグザグの折り返し数などは特に限定されない。
【0033】
上述した実施形態では、緻密質プラグ30は、スカート部34や凹部36を有するものとしたが、図7に示すように、少なくとも一方を省略してもよい。図7は、半導体製造装置用部材10の別例の部分拡大図であり、半導体製造装置用部材10は、スカート部34及び凹部36の両方を省略した緻密質プラグ130を備えている。図7では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。こうした緻密質プラグ130でも、ガス内部流路35は上面30aから下面30bまで屈曲しながら貫通しているため、ガス内部流路35の長さは、緻密質プラグ130(プラグ本体33)の全長より長くなり、絶縁破壊が生じにくい。緻密質プラグ130は、プラグ本体33の下端が冷却プレート40の筒状穴40hの下端に至るようにしてもよい。この場合、冷却プレート40を緻密質プラグ130のガス内部流路35が貫通するため、ガス内部流路35がガス供給孔45を兼ねる。緻密質プラグ130においても、ガス内部流路35は、図5,6に示すようなジグザグ状としてもよい。
【0034】
上述した実施形態において、セラミックプレート20は、図8,9に示すように、下面20bに開口する有底筒状穴20hを有し、緻密質プラグ30の少なくとも一部は、有底筒状穴20h内に配置されていてもよい。図8,9は、半導体製造装置用部材10の別例の部分拡大図である。図8,9では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。この場合、緻密質プラグ30は、図8のように、一部が有底筒状穴20h内に配置されていてもよいし、図9のように、全部が有底筒状穴20h内に配置されていてもよい。また、緻密質プラグ30は、図8のように有底筒状穴20hの壁面20cにリング状の接合部32でセラミック接合されていてもよいし、図9のように有底筒状穴20hの底面20dにリング状の接合部32でセラミック接合されていてもよい。このうち、図9のように有底筒状穴20hの底面20dに緻密質プラグ30がセラミック接合されている方が、セラミック接合時の加圧が容易なため、好ましい。図8のように緻密質プラグ30が有底筒状穴20hの壁面20cにセラミック接合されている場合、緻密質プラグ30の上面30aは有底筒状穴20hの底面20dと接触していてもよいし、底面20dとの間に隙間があってもよい。有底筒状穴20hの直径は、緻密質プラグ30の直径よりもわずかに(例えば0.5mmとか1mm)大きいものとしてもよい。
【0035】
上述した実施形態において、ガス放出孔25は、例えば図9のように複数のガス細孔25aで構成され、凹部36は、複数のガス細孔25aと連通していてもよい。こうすれば、凹部36を介して複数のガス細孔25aにガスを供給できる。
【0036】
上述した実施形態では、冷却プレート40に設けられた筒状穴40hは、冷却プレート40を厚さ方向に貫通する底なしの穴としたが、下面40b側に底を有する有底の穴でもよい。その場合、冷却プレート40の有底筒状穴の壁面又は底面に開口して外部と連通する流路をガス供給孔45としてもよい。また、図9のようにセラミックプレート20の有底筒状穴20h内に緻密質プラグ30を配置し、筒状穴40hを省略してもよい。その場合、冷却プレート40の上面40aに開口する流路をガス供給孔45としてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、筒状穴40hを取り囲む壁面40cと緻密質プラグ30の外周面30cとの間に隙間が存在しているものとしたが、隙間に接着剤が充填されていてもよい。また、図8,9において、有底筒状穴20hを取り囲む壁面20cと緻密質プラグ30の外周面30cとの間には、隙間が存在していてもよいし、隙間に接着剤が充填されていてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、セラミックプレート20、緻密質プラグ30及び接合部32がアルミナ製の場合について主に説明したが、例えば、窒化アルミニウム製としてもよいし、炭化珪素製としてもよいし、窒化珪素製としてもよいし、その他のセラミック製としてもよい。これらが窒化アルミニウム製の場合、接合剤ペースト32pに含まれる焼結助剤としては、マグネシア、イットリア等が挙げられ、炭化珪素製の場合にはイットリア等が挙げられ、窒化珪素製の場合にはジルコニア等が挙げられる。
【0039】
上述した実施形態では、セラミックプレート20として、静電電極22及びヒータ電極24の両方を内蔵した静電チャックヒータを例示したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、セラミックプレート20を、静電電極22のみを内蔵した静電チャックとしてもよいし、ヒータ電極24のみを内蔵したセラミックヒータとしてもよい。また、セラミックプレート20は、高周波(RF)電極を内蔵していてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、セラミックプレート20と冷却プレート40とを焼結接合で接合したが、セラミックの接合部32が得られる方法であれば、接合方法は特に限定されない。例えば、拡散接合等で接合してもよい。また、セラミックス性接着剤で接着してもよい。セラミックス性接着剤としては、例えば、アレムコ(AREMCO)社製のセラマボンド571、セラマボンド690及びセラマボンド865や、東亞合成化学(株)製のアロンセラミックなどが挙げられる。なお、セラミックス性接着剤に含まれる有機材料は揮発するため、セラミックス性接着剤を用いた場合にも、セラミックの接合部32には実質的には有機材料は含まれない。
【0041】
上述した実施形態では、接合材ペースト32pは、緻密質プラグ30の上面30aに塗布したが、セラミックプレート20の下面20bに塗布してもよいし、緻密質プラグ30の上面30aとセラミックプレート20の下面20bの両方に塗布してもよい。
【0042】
本出願は、2018年9月28日に出願された米国特許仮出願第62/738,205号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、半導体製造装置に用いられる部材、例えば静電チャックヒータ、静電チャック、セラミックヒータなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 半導体製造装置用部材、20 セラミックプレート、20a 上面、20b 下面、20c 壁面、20d 底面、20h 有底筒状穴、22 静電電極、24 ヒータ電極、25 ガス放出孔、25a ガス細孔、30 緻密質プラグ、30a 上面、30b 下面、30c 外周面、32 接合部、32p 接合材ペースト、33 プラグ本体、34 スカート部、35 ガス内部流路、36 凹部、40 冷却プレート、40a 上面、40b 下面、40c 壁面、40h 筒状穴、42 冷媒流路、45 ガス供給孔、50 ガス流路、60 ボンディングシート、70 接合体、130 緻密質プラグ、W ウエハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9