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  • 特許-代謝によるEVの薬物ローディング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】代謝によるEVの薬物ローディング
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/51 20060101AFI20220930BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220930BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20220930BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20220930BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20220930BHJP
【FI】
A61K9/51
A61P35/00
A61P29/02
A61K45/00
A61K31/7068
A61K31/192
A61K35/12
A61K47/46
A61K47/54
A61K35/15 A
C12N5/07
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019500659
(86)(22)【出願日】2017-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2017067237
(87)【国際公開番号】W WO2018011128
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】1611990.1
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518259431
【氏名又は名称】エヴォックス・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オスカー・ヴィクランダー
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/168548(WO,A1)
【文献】Batrakova Elena V. et al.,Using exosomes, naturally-equipped nanocarriers, for drug delivery,Journal of controlled release,米国,2015年,vol.219,pp.396-405
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬薬剤を細胞外小胞(EV)に代謝的にローディングするための方法であって、代謝成分に接合された前記医薬薬剤を含む接合体の存在下においてEV供給源細胞を培養することを含み、前記代謝成分が、C18脂肪酸、コレステロール、パルミチン酸、ミリスチン酸、リン脂質、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンE、又はそれらの組合せである、方法。
【請求項2】
前記代謝成分が、C18脂肪酸、リン脂質、ビタミンB7、ビタミンB9、又はそれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接合体が、前記医薬薬剤と前記代謝成分との間の化学結合を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記医薬薬剤と前記代謝成分との間の前記化学結合が、解離して、壊れて、又は開裂されて前記医薬薬剤を放出してもよい結合である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記EV供給源細胞が、前記代謝成分の代謝による組み込みが起こりやすい条件下で培養される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記代謝による組み込みが起こりやすい条件が、未接合代謝成分が完全に存在しない状態、低酸素状態、又はサイトカイン曝露である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬薬剤を細胞外小胞(EV)にローディングするための方法、および治療目的のためのこのようなEVの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞(EV)は、通常の生理学および病理学において、標的組織中のレシピエント細胞に、その内容物(主に、RNA、タンパク質および脂質)を提示することによって、細胞同士の通信を制御する。さまざまな種類の医薬薬剤を組み込むためのEVの改変は、多くの内容で研究されてきている。例えば、生物治療薬の細胞内送達のためのエキソソームの使用を開示するWO2013/084000号、またはエキソソームを用いた外因性遺伝子材料の送達を記述するWO2010/119256号。
【0003】
薬物送達ビヒクルとしてのEVの有用性は、例えば、核酸に由来する薬物(例えば、siRNA)、細胞内構成要素を標的とする大きなタンパク質に由来する薬物(例えば、難溶性または非常に毒性の高い医薬薬剤)の場合には、議論の余地がないほど明白である。EVが介在する低分子薬物送達も、盛んに研究されてきており、例えば、WO2011/097480号は、有機低分子化合物をEVにローディングする典型的な手法を表している。WO2011/097480号は、例えば、精製されたEVと遊離薬物(例えばクルクミン)を、EVへの薬物の拡散に依存して、リン酸緩衝化食塩水(PBS)中で一緒に室温でインキュベートする、単純に一緒にインキュベートする工程を用い、ファイトケミカル低分子薬剤であるクルクミンおよびレスベラトロールをEVにローディングする、非常に容易な方法を記述している。非常に簡便でわかりやすいが、低分子薬剤をEVにローディングするこの従来の手法は、特に効率的ではなく、低分子薬剤の顕著な無駄が生じ、制御するのも非常に困難である。その他(例えば、Fuhrmanら、J.Control Rel.、2015)は、ローディング効率(この場合には、光活性低分子薬剤ポルフィリンのローディング効率)を高める一様式として、サポニンなどの洗剤を用いてEVの浸透性も評価している。
【0004】
最近の特許出願(WO2015/120150号)も、腫瘍由来のEVにさまざまな種類の抗癌薬物をローディングすることに関するものであり、低分子と大きな生物医薬の両方について述べている。しかし、当該技術分野で多くの場合にそうであるように、エキソソームにどのようにローディングするかについて、入手可能な情報は非常に少なく、入手可能な方法が存在する場合でも、医薬薬剤を保持するEVのローディングおよび実際の治療薬用途にとって有用なものがほとんどない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2013/084000号
【文献】WO2010/119256号
【文献】WO2011/097480号
【文献】WO2011/097480号
【文献】WO2015/120150号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Fuhrmanら、J.Control Rel.、2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、その後の治療、予防および/または診断用途のために医薬薬剤をEVにローディングすることに関連する上に規定した問題を克服することである。さらに、本発明は、例えば、かなりの量の医薬薬剤をEVにローディングすることが可能なこと、制御可能なローディングを実現すること、かなりの治療薬の可能性を有する医薬薬剤がローディングされたEVを提供することなど、当該技術分野で存在する他の既存の需要を満足することを目的とする。さらに、本発明は、さまざまな由来の医薬薬剤(本発明に包含される医薬薬剤の非限定例としては、小さな有機化合物、RNA治療薬、ペプチドおよびタンパク質など)をEVにローディングするための一般的に適用可能な戦略を提供し、これは、当該技術分野ではまだないものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、EVのローディングのための代謝経路を利用することによって、これらの目的および他の目的を達成する。したがって、一態様では、本発明は、代謝成分に接合された医薬薬剤を含む接合体の存在下、EV供給源細胞を培養する工程を含む、前記医薬薬剤をEVに代謝的にローディングするための方法に関する。通常、EV供給源細胞によって作られるEVは、典型的にはその後に、典型的には細胞培地から収穫され、この細胞培地の中にEVが放出されており、さらなる使用のために精製されてもよい。
【0009】
別の態様では、本発明は、代謝成分に接合される医薬薬剤を含むEVに関する。適切な代謝成分としては、脂質類(例えばリン脂質)、ペプチド類、ステロール類(例えばコレステロール)、ビタミン類(例えばビタミンB12)などが挙げられ得る。有利な実施形態では、代謝成分と、EVによって運ばれる医薬薬剤との接合は、EV中の医薬薬剤を放出し、潜在的に、その後に標的位置に放出するために、放出可能および/または開裂可能なように設計されてもよい。したがって、一態様では、本発明は、目的の医薬薬剤を含むEVであって、前記薬物が、代謝成分を含む接合体からEVへと放出された、EVにも関する。
【0010】
本明細書で使用される「医薬薬剤」または「薬物」との用語は、ペプチド、核酸系薬剤(例えば、siRNAまたはmRNA)および有機化合物を含め、多種多様な異なる種類の分子を包含する。さらに詳細には、本発明の医薬薬剤は、例えば、抗癌剤、例えば、ドキソルビシン、メトトレキサート、5-フルオロウラシルまたは他のヌクレオシド類似体、例えば、シトシンアラビノシド、プロテアソーム阻害剤、例えば、ボルテゾミブ、またはキナーゼ阻害剤、例えば、イマチニブまたはセリシクリブ、またはNSAID、例えば、ナプロキセン、アスピリンまたはセレコキシブ、抗生物質、例えば、ヘラシリン、抗高血圧剤、例えば、ACE阻害剤、例えば、エナラプリル、種々の標的遺伝子をサイレンシングするための低分子干渉RNA、タンパク質をコードする薬剤の送達を可能にするmRNAおよび改変mRNA、スプライシングパターンを変えるためのスプライススイッチングRNA、薬理活性またはエンドソーム脱出活性を有するペプチド、タンパク質治療薬などの多種多様な薬物または診断薬剤のカテゴリーから選択されてもよい。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、医薬薬剤を標的位置(例えば、標的細胞、標的組織、標的臓器)にまたは任意の標的コンパートメント(体液、例えば、血液の流れまたは脳脊髄液も含んでいてもよい)に送達するためのEV由来の方法に関する。このような方法は、代謝成分との接合体の形態で、またはEV中の接合体から放出された代謝成分または医薬薬剤の形態で、標的位置を、医薬薬剤がローディングされたEVにさらすことを含む。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、医薬薬剤の薬物動態プロファイルまたは薬力学プロファイルを変える方法にも関する。このような方法は、主題となる医薬薬剤の性質をin vivoで調整し、可能ならばin vitroでも調整するために、主題となる医薬薬剤をEVに代謝的にローディングすることを含む。
【0013】
さらに、さらなる態様では、本発明は、本発明の医薬薬剤を保持するEVを含む医薬組成物、または実際の観点では、本発明の医薬薬剤を含むEVの集合を含む組成物に関する。このような組成物中のEV濃度は、例えば、単位(多くは体積)あたり、または用量あたりのEVタンパク質の量、単位(多くは体積)あたり、または用量あたりの粒子の数、単位あたり、または用量あたりの低分子薬物の濃度など、多くの異なる様式で表現されてもよい。典型的には、このような医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤を用い、in vivoで、またin vitroでの使用のために配合される。
【0014】
最後に、本発明は、例えば、炎症性疾患、自己免疫疾患、癌、代謝性障害、中枢神経系疾患、神経筋疾患、または任意の適切な疾患または障害の治療において、さまざまな種類の医薬薬剤を含むEVの医療での使用および用途にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、MTTアッセイを用い、MDA-MB-231細胞中でアッセイされる、C18脂肪酸が接合されたシトシンアラビノシド(C18-AraC)を含有するPBMC由来のEVの抗腫瘍効果を示す。
図2図2は、RAW264.7細胞モデルで測定されるような、イソブチルフェニルプロパン酸に接合されるリン脂質を含むEVのCOX-2阻害を示す。
図3図3は、RAW264.7細胞で測定される、IBU-ビタミンB7およびIBU-ビタミンB9がローディングされたEVのCOX-2阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、特に、医薬薬剤を送達するための新規な方法、組成物、EVおよびEVの使用を記載する。より特定的には、本発明は、EVローディングのための方法、医薬薬剤がローディングされたEV、このようなEVを利用するための種々の方法、EVを治療に有効な量で含む医薬組成物、本発明の薬物がローディングされたEVの医学的使用に関する。
【0017】
簡便さと明確さのために、本明細書で使用する特定の用語を以下に集め、記載している。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0018】
本発明の特徴、態様、実施形態または代替物がマーカッシュグループで記載されている場合、当業者は、本発明が、マーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点でも記載されていることを認識するだろう。当業者は、さらに、本発明が、マーカッシュグループの個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの任意の組み合わせの観点でも記載されていることを認識するだろう。さらに、本発明の態様および/または実施形態の1つに関連して記載されている実施形態および特徴を、本発明の他の態様および/または実施形態の全てにも適宜変更しつつ適用することも注記しておくべきである。例えば、EVに代謝的にローディングするための方法と組み合わせて記載される種々の低分子は、EVを含む医薬組成物の観点でも開示され、関連しており、含まれることも理解すべきである。さらに、特定の態様(例えば、薬物がローディングされたEVの投与経路)と組み合わせて記載される特定の実施形態は、EVをそのまま用いて特定の医学的適応を治療することに関する態様と関連して記載される場合、通常、例えば本発明の医薬組成物に関する他の態様および/または実施形態と組み合わせて関連していてもよい。さらに、任意および全ての特徴(例えば、マーカッシュグループの任意および全てのメンバー)を、任意および全ての他の特徴(例えば、任意の他のマーカッシュグループの任意および全てのメンバー)と自由に組み合わせることができる。例えば、任意の代謝成分を任意の医薬薬剤と組み合わせてもよく、または任意のEV細胞供給源を任意のEVタンパク質と組み合わせてもよく、ひいては、任意の標的化薬剤と組み合わせてもよい。さらに、本明細書の教示が、EVを単数で、および/またはEVを別個の天然ナノ粒子様小胞として言及する場合、このような全ての教示が、複数のEVおよびEVの集合に等しく関連しており、これらに適用可能であることを理解すべきである。一般的な意見として、本発明の医薬薬剤、代謝成分、標的部分、細胞供給源、エキソソームのタンパク質、および全ての他の態様、実施形態、および代替物を、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、任意および全ての可能な組み合わせと自由に組み合わせてもよい。さらに、本発明の任意のポリペプチドまたはポリヌクレオチドまたは任意のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列(それぞれ、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列)は、任意の所与の分子が、これに関連する技術的効果を実施する能力を保持している限り、元々のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび配列からかなり逸脱していてもよい。これらの生物学的特性が保持される限り、本出願のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド配列は、ネイティブ配列と比較して、50%程度逸脱していてもよい(例えば、BLASTまたはClustalWを用いて計算される)が、可能な限り高い配列同一性が好ましい(例えば、60%、70%、80%、または例えば、90%以上)。例えば、少なくとも1つの標的とするポリペプチドと少なくとも1つのエキソソームのタンパク質の組み合わせ(融合)は、それぞれのポリペプチドの特定のセグメントが交換および/または改変されていてもよいことを暗示しており、鍵となる特性(例えば、標的化特性および特定の場合にはエキソソームの表面に対するトラフィッキング)が保存されている限り、ネイティブ配列からの逸脱が考慮されてもよいことを意味している。したがって、通常は、同様の理由付けが、このようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列にも適用される。
【0019】
「細胞外小胞」または「EV」または「エキソソーム」との用語は、本明細書で相互に置き換え可能に使用され、任意の形態で細胞から得ることができる任意の種類の小胞、例えば、微小胞(例えば、細胞の血漿膜から剥がれた任意の小胞)、エキソソーム(例えば、リソソーム内経路から誘導される任意の小胞)、アポトーシス小体(例えば、アポトーシス細胞から得ることができる)、微粒子(例えば血小板から誘導されてもよい)、エクトソーム(例えば、血清中の好中球および単球から誘導可能)、プロスタトソーム(例えば、前立腺癌細胞から得ることができる)、またはカーディオソーム(例えば、心臓細胞から誘導可能)などに関連すると理解すべきである。さらに、上述の用語は、細胞押出、膜押出、小胞押出または他の技術などによって得られる細胞外小胞模倣物、細胞および/または細胞膜に由来する小胞に関連することも理解すべきである。本質的に、本発明は、目的の医薬薬剤を送達または輸送するためのビヒクルとして機能し得る任意の種類の脂質由来の構造(小胞の形態を有するか、または任意の他の種類の適切な形態を有する)に関連していてもよい。EVの医学的および科学的な使用および用途を記載する場合、本発明は、通常、複数のEV(すなわち、数千、数百万、数十億または数兆のEVを含んでいてもよいEVの集合)に関するものであることは、当業者には明らかであろう。以下の実験の章からわかるだろうが、EVは、単位体積あたり(例えばmlあたり)10、10、1011、1015、1018、1025、1030EV(多くは「粒子」と呼ばれる)などの濃度で、または任意の他のさらに多く、またはさらに少なく、またはその間にいずれかの濃度で存在していてもよい。同様に、「集合」との用語は、例えば、特定の医薬薬剤と、多くは特定の代謝成分とを含むEVに関するものであってもよいが、このような集合を構成する複数の部分を包含すると理解すべきである。言い換えると、個々のEVは、複数存在する場合には、EVの集合を構成する。したがって、通常、本発明は、当業者には明らかであろうが、医薬薬剤を含む個々のEVと、医薬薬剤を含むEVを含む集合の両方に関する。EVの投薬量は、in vivoで適用される場合、通常、治療される疾患、投与経路、保持する医薬薬剤などに応じてかなり変動し得る。
【0020】
「医薬薬剤」または「医薬的に活性な薬剤」または「治療薬剤」または「薬物」または「医薬薬物」または「医薬治療薬」との用語は、本明細書で相互に置き換え可能に使用され、ある疾患および/または障害の治療および/または予防および/または診断に使用されてもよい任意の分子薬剤に関すると理解されるべきである。本発明の医薬薬剤は、(i)通常は化学合成によって合成される、薬理活性を有する有機化合物、(ii)例えば、天然源からの精製によって得てもよい、天然で誘導される化合物、(iii)さまざまな種類の核酸由来の化合物、例えば、オリゴヌクレオチド、例えば、siRNA、スプライススイッチングRNA、CRISPRガイド鎖、短ヘアピンRNA(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、例えば、mRNA、特に、化学合成され、および/または化学改変されたヌクレオチドを含む、核酸ベースの薬剤、例えば、2’-O-Me、2’-O-アリル、2’-O-MOE、2’-F、2’-CE、2’-EA、2’-FANA、LNA、CLNA、ENA、PNA、ホスホロチオエート、トリシクロ-DNAなど、(iii)例えば、ペプチド合成または組換えタンパク質産生によって得られる、任意の種類のペプチドおよびポリペプチド(すなわち、タンパク質)、(iv)適切な代謝成分に接合可能な、本質的に任意の種類の薬理学的および/または医薬的に活性な薬剤を含め、多種多様な薬理学的または医薬的に活性な薬剤を包含する。当業者には明らかであろうが、本発明は、通常、本発明の趣旨から逸脱することなく、他の医薬薬剤にも適用可能である。
【0021】
「代謝成分」または「代謝分子」との用語は、本明細書で相互に置き換え可能に使用され、構造要素(例えば、リン脂質またはコレステリル部分)であるとして、中間のアナボリックまたはカタボリック経路で(例えば、ピルビン酸)、酵素のための補因子(例えばビタミンB12)、または使用し、組み込むことが可能な任意の他の種類の分子および/または任意の様式で代謝されるか、または細胞(通常はEV供給源細胞)内に含まれる、本質的にあらゆる目的のために細胞または細胞誘導体(例えばEV)によって利用可能な任意の分子に関連すると理解すべきである。本発明の非限定例としては、脂質、脂肪酸、単糖、二糖または多糖、ビタミン、ステロール、ガングリオシド、ペプチド、タンパク質、ヌクレオシドおよびヌクレオチド、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。代謝成分の非限定例としては、例えば4~30個の炭素を含む脂肪酸、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸およびベヘン酸、またはこれらの任意の誘導体、特に、これらの不飽和脂肪酸誘導体が挙げられる。脂質の他の非限定例としては、リン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、コレステロールおよび他のステロール、モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドが挙げられる。さらなる非限定例としては、ビタミンA、B、C、D、E、K、およびこれらの全てのビタマー(例えば、B7(ビオチン)、B9(葉酸)、B12など)、糖類および糖類似体、ヌクレオチドおよびヌクレオシドおよびこれらの類似体、アミノ酸およびこれらの類似体が挙げられる。
【0022】
「EVタンパク質」、「エキソソームのタンパク質」、「エキソソームのソーティングドメイン」、「EVソーティングドメイン」、「EVソーティングタンパク質」、「エキソソームのタンパク質」、「エキソソームのポリペプチド」、「EVポリペプチド」などの用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられ、ポリペプチド構築物(典型的には、EVタンパク質に加え、目的の少なくとも1つのタンパク質を含む)を適切な小胞構造に運ぶために利用可能な任意のポリペプチドに関連すると理解すべきである。より特定的には、この用語は、ポリペプチド構築物を小胞構造(例えばエキソソーム)に運び、トラフィッキングし、またはシャトリングすることが可能な任意のポリペプチドを含むと理解すべきである。このようなエキソソームのソーティングドメインの例は、例えば、CD9、CD53、CD63、CD81、CD54、CD50、FLOT1、FLOT2、CD49d、CD71、CD133、CD138、CD235a、ALIX、シンテニン-1、シンテニン-2、Lamp2b、TSPAN8、TSPAN14、CD37、CD82、CD151、CD231、CD102、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、DLL1、DLL4、JAG1、JAG2、CD49d/ITGA4、ITGB5、ITGB6、ITGB7、CD11a、CD11b、CD11c、CD18/ITGB2、CD41、CD49b、CD49c、CD49e、CD51、CD61、CD104、Fc受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン、MHC-IまたはMHC-IIの構成要素、CD2、CD3ε、CD3ζ、CD13、CD18、CD19、CD30、CD34、CD36、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD45RA、CD47、CD86、CD110、CD111、CD115、CD117、CD125、CD135、CD184、CD200、CD279、CD273、CD274、CD362、COL6A1、AGRN、EGFR、GAPDH、GLUR2、GLUR3、HLA-DM、HSPG2、L1CAM、LAMB1、LAMC1、LFA-1、LGALS3BP、Mac-1α、Mac-1β、MFGE8、SLIT2、STX3、TCRA、TCRB、TCRD、TCRG、VTI1A、VTI1B、およびこれらの任意の組み合わせであるが、ポリペプチド構築物をEVに運ぶことが可能な多くの他のポリペプチドが、本発明の範囲内に含まれる。本発明のEVタンパク質は、典型的には、ヒト由来であり、種々の公的に利用可能なデータベース(例えば、Uniprot、RCSBなど)の中に見出すことができる。EVタンパク質は、例えば、表面提示を向上させ、アビディティを増加させ、または特定の種類の結合タンパク質と相互作用が可能なように、種々の他のタンパク質および/またはタンパク質ドメインに融合していてもよい。
【0023】
「供給源細胞」または「EV供給源細胞」または「親細胞」または「細胞供給源」または「EVを産生する細胞」との用語、または任意の他の同様の用語は、適切な条件下で、例えば、懸濁培養物中、または接着性培養物中、または他の種類の任意の培養系で、EVを産生することができる任意の種類の細胞に関連すると理解すべきである。本発明の供給源細胞は、in vivoでエキソソームを産生する細胞も含んでいてもよい。本発明の供給源細胞は、例えば、ヒト間葉系幹細胞または間質細胞または線維芽細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、ホウォートンゼリー、周産期の組織、羊膜組織および/または羊水、歯芽、臍帯血液、皮膚組織などから得ることができる)、羊膜細胞およびより特定的には羊膜上皮細胞、場合により種々の初期マーカーを発現するもの、骨髄免疫抑制細胞、M2型マクロファージ、含脂肪細胞、内皮細胞、線維芽細胞など、多種多様な細胞および細胞株から選択されてもよい。特定の目的の細胞株としては、ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)、ヒトヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞、内皮細胞株、例えば、微小血管またはリンパ内皮細胞、軟骨細胞、さまざまな由来のMSC、気道または肺胞上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞などが挙げられる。また、免疫細胞、例えば、B細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞(DC)も本発明の範囲内であり、本質的に、EVを産生することができる任意の種類の細胞も本発明に包含される。
【0024】
第1の態様では、本発明は、代謝成分に接合された医薬薬剤を含む接合体の存在下、EV供給源細胞を培養する工程を含む、前記医薬薬剤をEVに代謝的にローディングするための方法に関する。より特定的には、一実施形態では、EV供給源細胞は、本質的に任意の機構によって供給源細胞に組み込まれ、通常、EV供給源細胞から得られるEVに組み込まれる、医薬薬剤と代謝成分とを含む接合体にさらされる。接合体は、典型的には、代謝成分と医薬薬剤との間に化学結合を含み、この化学結合は、場合により、解離してもよく、壊れてもよく、放出してもよく、または開裂されて医薬薬剤を放出してもよい。医薬薬剤が、代謝成分に結合しながらその薬理学的効果を発揮し得るのであれば、代謝成分からの医薬薬剤の放出は、有利ではあるが、必要ではない。放出可能な化学結合の適切な非限定例は、還元環境では還元を受け得るジスルフィド架橋またはチオエーテル結合、例えば、プロテアーゼおよび他の酵素によって開裂し得るアミド結合、特定のin vivo条件などで解離するビオチン-ストレプトアビジン結合である。それ以外にも、医薬薬剤を代謝成分に共有結合/接続するために利用可能な複数の戦略が存在し、例えば、エステル結合、アミド結合、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用、マレイミド-NHS反応によって得られる結合、EDC-NHS反応によって得られる結合、ステープル結合(例えば、全ての炭水化物ステープル)および種々の他の結合などの非限定例がある。
【0025】
さらなる実施形態では、EV供給源細胞は、代謝成分の代謝による組み込みが起こりやすい細胞培養条件で培養されてもよい。このような条件の適切な例は、例えば、通常、代謝的にEVにローディングされる医薬薬剤に接合されるビタミンB12またはビオチンを除き、ビタミンB12またはビオチンを低濃度で含むか、または本質的に完全に含まない細胞培地を使用することであろう。低い濃度の代謝成分/代謝成分を含まないことにより、代謝性の取り込み、プロセシングおよび組み込みが起こり、それによって、EV供給源細胞およびEVへのローディングが増加する。代謝による組み込みが起こりやすい別の様式は、低濃度の酸素(低酸素状態)、サイトカイン曝露、および/または他の形態の細胞ストレス、例えば、バフィロマイシンなどの薬剤に曝露しつつ、EV供給源細胞を培養することである。
【0026】
別の代替となる態様では、本発明は、EV自体に直接組み込むことができるように、医薬薬剤と代謝成分とを含む接合体に、EV(EV供給源細胞ではなく)を直接的にさらすことによって、医薬薬剤をEVに代謝的にローディングする方法に関する。このような方法の非限定例としては、医薬薬剤を、例えば、脂質、例えばスフィンゴ脂質、セラミド、コレステロール、リン脂質または脂肪酸、またはガングリオシド、例えば、GM1、またはステロールおよび/またはペプチドまたはタンパク質(例えば、従来のEVタンパク質、またはEVタンパク質と、したがってEVと相互作用するペプチド/タンパク質)、または任意の他の種類の適切な代謝成分に接合することに基づくローディングが挙げられる。さらに、エレクトロポレーションの使用、および/または接合体と、例えば、トランスフェクション試薬との混合も、本発明の範囲内である。エレクトロポレーションおよび/またはトランスフェクション試薬(例えば、リポソーム、細胞透過性ペプチド、PEIなどのカチオン性ポリマー、脂質ナノ粒子など)が使用されるとき、医薬薬剤のEVおよび/または親細胞へのローディングを増加させることができる。エレクトロポレーションは、20V/cm~1000V/cm、多くは20V/cm~100V/cmの範囲の電圧を用いて行われてもよい。エレクトロポレーション工程のキャパシタンスは、通常、25F~250F、例えば、25F~125Fであるが、これらのパラメータは、種々の因子に基づき、EV供給源細胞、EVの任意の遺伝的または化学的な改変、代謝成分の性質、医薬薬剤の性質など、広範囲に変動してもよい。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、代謝成分に接合される医薬薬剤を含むEVに関する。医薬薬剤は、典型的には、化学結合を介して代謝成分に接合され、この化学結合は、場合により、医薬薬剤を放出することができてもよい。医薬薬剤の放出によって、有利には、遊離低分子薬物を、例えば、EVの内側またはEV膜の中に配置してもよい。この様式の化学結合は、例えば、酵素開裂、解離、溶解、または任意の種類の化学結合の破壊の結果として放出させてもよい。
【0028】
上述のように、本発明の医薬薬剤は、例えば、抗癌剤、細胞増殖抑制剤、チロシンキナーゼ阻害剤、スタチン、NSAID、抗生物質、抗真菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗線維化剤、抗高血圧剤、アロマターゼ阻害剤またはエステラーゼ阻害剤、抗コリン作用薬、SSRI、BKT阻害剤、PPARアゴニスト、HER阻害剤、AKT阻害剤、BCR-ABL阻害剤、シグナル伝達阻害剤、血管形成阻害剤、シンターゼ阻害剤、ALK阻害剤、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、PI3K阻害剤、ネプリライシン阻害剤、β2-アゴニスト、CRTH2アンタゴニスト、FXRアゴニスト、BACE阻害剤、スフィンゴシン-1-ホスフェート受容体調整剤、MAPK阻害剤、Hedgehogシグナル伝達阻害剤、MDM2アンタゴニスト、LSD1阻害剤、ラクタマーゼ阻害剤、TLRアゴニスト、TLRアンタゴニスト、IDO阻害剤、ERK阻害剤、Chk1阻害剤、スプライシング調整剤、DNAまたはRNA挿入剤などの医薬的および/または薬理学的および/または診断的に関連する薬剤の本質的に全範囲から得ることができる。本発明の医薬薬剤の他の非限定例としては、例えば、特に、エベロリムス、トラベクテジン、アブラキサン、パゾパニブ、エンザスタウリン、バンデタニブ、FLT-3阻害剤、VEGFR阻害剤、EGFR TK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PIK-1調整剤、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、c-MET阻害剤、PARP阻害剤、Cdk阻害剤、EGFR TK阻害剤、IGFR-TK阻害剤、抗-HGF抗体、PI3キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、JAK/STAT阻害剤、チェックポイント-1または2阻害剤、接着斑キナーゼ阻害剤、Mapキナーゼキナーゼ(mek)阻害剤、ペメトレキセド、エルロチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、デカタニブ、パニツムマブ、アムルビシン、オレゴボマブ、ノラトレキセド、バタブリン、オファツムマブ、ザノリムマブ、エドデカリン、テトランドリン、ルビテカン、テスミリフェン、オブリメルセン、チシリムマブ、イピリムマブ、ゴシポール、シレンジタイド、ギマテカン、ルカントン、ニューラジアブ、ビテスパン、タラムパネル、アトラセンタン、ロミデプシン、スニチニブ、5-フルオロウラシル、ボリノスタット、エトポシド、ゲムシタビン、ドキソルビシン、5’-デオキシ-5-フルオロウリジン、ビンクリスチン、テモゾロミド、セリシジブ、カペシタビン、カンプトテシン、PEG標識されたイリノテカン、タモキシフェン、トレミフェンクエン酸塩、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ベタラニブ、ゴセレリン酢酸塩、酢酸ロイプロリド、パモ酸トリプトレリン、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル、酢酸メゲストロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、酢酸メゲストロール、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ、ロナファルニブ、チピファルニブ、アミホスチン、スベロイルアナリドヒドロキサム酸、バルプロ酸、トリコスタチンソラフェニブ、アムサクリン、アナグレリド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クラドロネート、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエチルスチルベストロール、エピルビシン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、オクトレオチド、オキサリプラチン、パミドロン酸塩、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾトシン、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トレチノイン、ビンデシン、13-cis-レチノイン酸、フェニルアラニンマスタード、ウラシルマスタード、エストラムスチン、アルトレタミン、フロクスウリジン、5-デオキシウリジン、シトシンアラビノシド、6-メルカプトプリン、デオキシコホルマイシン、カルシトリオール、バルルビシン、ミトラマイシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、トポテカン、ラゾキシン、マリマスタット、COL-3、ネオバスタット、スクアラミン、エンドスタチン、ビタキシン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、スピロノラクトン、フィナステリド、シメチジン、トラスツズマブ、デニロイキンディフティトックス、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、クレモフォールを含まないパクリタキセル、ドセタキセル、エポチロンB、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ピペンドキシフェン、アルゾキシフェン、フルベストラント、アコルビフェン、ラソフォキシフェン、イドキシフェン、トポテカン、ラパマイシン、テムシロリムス、ゾレドロネート、プレドニゾン、レナリドミド、ゲムツズマブ、ヒドロコルチゾン、デクスラゾキサン、アレムツズマブ、オールトランスレチノイン酸、ケトコナゾール、メゲストロール、免疫グロブリン、ナイトロジェンマスタード、メチルプレドニゾロン、イブリツモマブチウキセタン、アンドロゲン、デシタビン、ヘキサメチルメラミン、ベキサロテン、トシツモマブ、三酸化ヒ素、コルチゾン、エジトロネート、ミトタン、シクロスポリン、リポソームダウノルビシン、エドウィナアスパラギナーゼ、ストロンチウム89、カソピタント、ネツピタント、NK-1受容体アンタゴニスト、パロノセトロン、アプレピタント、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、メトクロプラミド、ロラゼパム、アルプラゾラム、ハロペリドール、ドロペリドール、ドロナビノール、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プロクロルペラジン、グラニセトロン、オンダンセトロン、ドラセトロン、トロピセトロン、ペグフィルグラスチム、エリスロポエチン、エポエチンアルファおよびダルベポエチンアルファ、エファビレンツが挙げられる。さらに、上述のように、本発明の医薬薬剤は、例えば天然源からの精製によって得られてもよい天然で誘導される化合物、任意の種類の核酸由来の化合物、例えば、オリゴヌクレオチド、例えば、siRNA、スプライススイッチングRNA、CRISPRガイド鎖、短ヘアピンRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、特に、化学合成されるか、および/または化学的に改変されたヌクレオチドを含む核酸由来の薬剤、例えば、2’-O-Me、2’-O-アリル、2’-O-MOE、2’-F、2’-CE、2’-EA、2’-FANA、LNA、CLNA、ENA、PNA、ホスホロチオエート、トリシクロ-DNAなども含む。さらに、ペプチドおよびポリペプチド(ペプチド合成によって得ることができるペプチドおよび/またはタンパク質だけではなく、組換えタンパク質産生によって得ることができるペプチドおよびタンパク質も)も、本発明の医薬薬剤の定義に含まれる。上述のように、当業者には明らかであろうが、本発明は、通常、本発明の趣旨から逸脱することなく、他の医薬薬剤にも適用可能である。
【0029】
さらに別の実施形態では、本発明のEVは、目的の組織、臓器または細胞型を標的とすることによる、その治療薬としての可能性をさらに高めるために、EV表面に提示される少なくとも1つの標的部分を含んでいてもよい。標的部分は、通常、アミノ酸配列を含み、例えば、ファージディスプレイまたは任意の他の種類のスクリーニング方法によって同定されてもよい。標的部分は、典型的には、EV供給源細胞の遺伝子操作によってEV表面に提示され、ここで、供給源細胞は、標的部分とエキソソームタンパク質とを含む融合タンパク質を含むEVを産生するようにトランスフェクションされる。抗体(例えばモノクローナル抗体)は、特にEV表面に接続すると、標的化薬剤としても機能し得る。
【0030】
さらなる態様では、本発明は、標的細胞に医薬薬剤を送達する方法に関する。このような送達方法は、標的細胞または標的組織または標的臓器(血液、間質液、脳脊髄液などの流体または液体を含んでいてもよい)を、本発明のEVにさらすことを含んでいてもよい。上述のように、EVは、その表面で発現する標的部分を含んでいてもよく、または天然の向性および標的化に基づいていてもよく、または標的化されていなくてもよい。標的細胞への送達は、その内容に応じて、in vitroおよび/またはin vivoで行われてもよい。さらに、本発明は、低分子薬物の薬物動態プロファイルまたは薬力学プロファイルを変える方法に関する。このことは、主題となる医薬薬剤をEVにローディングすることによって達成することができ、これは通常、分布、酵素活性、組織への浸透などの因子に影響を受けるだろう。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、医薬薬物を含むEVに関し、医薬薬剤は、医薬薬剤と代謝成分とを含む接合体からEVに放出される。化学結合の性質に応じて、代謝成分から放出された後に、残基(例えば、チオール、ビオチン、ヒドロキシル基など)が、低分子薬剤に残っていてもよい。
【0032】
さらに別の態様では、本発明は、薬物が代謝的にローディングされるEVを含む医薬組成物に関する。典型的には、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤と共に配合される1種類の治療薬EVを含む(すなわち、特定の所望の医薬薬剤を含むEVの集合)が、例えば、併用治療が望ましい場合には、1種類より多いEVの集合が医薬組成物に含まれていてもよい。少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤は、例えば、ある臓器、または身体の一部から別の臓器、または身体の一部へと(例えば、血液から目的の任意の組織および/または臓器および/または身体の一部へとEVの集合を運ぶか、または輸送する活性を保持し、維持することに関与し得る、任意の医薬的に許容される物質、組成物またはビヒクル、例えば、固体または液体のフィラー、希釈剤、賦形剤、担体、溶媒またはカプセル化材料を含む群から選択されてもよい。
【0033】
本発明は、化粧品用途および皮膚科用途の医薬薬剤を含むEVにも関する。したがって、本発明は、乾燥肌、細かい皺、ひだ、隆線および/または皮膚の皺などの症状および問題を改善および/または軽減するための、適切なEVを含むスキンケア製品、例えば、クリーム、ローション、ゲル、エマルション、軟膏、ペースト、粉末、塗布薬、サンスクリーン、シャンプーなどに関する。一実施形態では、EV(目的の薬物を含む)は、再生特性を有する適切なEVを産生する細胞供給源(例えば、間葉系間質細胞)から得られ、細かい皺、線、ひだ、隆線および/または皮膚の皺を軽減する化粧品または治療薬で使用するための化粧用クリーム、ローションまたはゲルに含まれる。
【0034】
さらに別の態様では、本発明は、医薬に使用するための本発明のEVに関する。通常、本発明の医薬薬剤を含むEVが医薬で使用される場合、実際には、通常は、使用されるEVの集合である。患者に投与されるEVの用量は、EVにローディングされた薬物の量、治療されるか、または軽減される疾患またはその症状、投与経路、薬物自体の薬理作用、EVの固有の特性、および種々の他の関連するパラメータによって変わるだろう。
【0035】
したがって、例えば、種々の疾患および障害の予防および/または治療および/または軽減に使用するために、本発明のEV、EVの集合および/または医薬組成物を、予防目的および/または治療目的に使用してもよい。本発明のEVを適用し得る疾患の非限定例は、クローン病、潰瘍性結腸炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、特発性肺線維症、乾癬、腫瘍壊死因子(TNF)受容体に関連する周期性症候群(TRAPS)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA)、子宮内膜症、自己免疫性肝炎、強皮症、筋炎、卒中、急性脊髄損傷、血管炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、線維症、ギランバレー症候群、急性心筋梗塞、ARDS、敗血症、髄膜炎、脳炎、肝不全、腎不全、心不全または任意の急性または慢性の臓器不全および不随する原因疾患、移植片対宿主病、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよび他の筋ジストロフィー、リソソーム蓄積症、例えば、ゴーシェ病、ファブリー病、MPS I、II(Hunter症候群)およびIII、Niemann-Pick病、Pompe病、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病を含む神経変性疾患、および他のトリヌクレオチドリピートに関連する疾患、認知症、ALS、癌によって誘発される悪液質、拒食症、2型糖尿病および種々の癌を含む。実質的に全ての種類の癌が、本発明の関連する疾患標的であり、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDSに関連する癌、AIDSに関連するリンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、小脳または脳の基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨腫瘍、脳幹グリオーマ、脳癌、脳腫瘍(小脳星状細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、上原始神経外胚葉腫瘍、視覚伝導路および視床下部膠腫)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児、胃腸)、原発不明の癌腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼の癌(眼内黒色腫、網膜芽腫)、胆嚢癌、胃腸(胃)癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、生殖細胞腫瘍(頭蓋外、性腺外または卵巣)、妊娠性絨毛性腫瘍、神経膠腫(脳幹の神経膠腫、大脳星細胞腫、視覚伝導路および視床下部膠腫)、胃カルチノイド、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、心臓癌、幹細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞癌(膵島)、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌)、喉頭癌、白血病((急性リンパ芽球性(急性リンパ性白血病とも呼ばれる)、急性骨髄性(急性骨髄性白血病とも呼ばれる)、慢性リンパ球性(慢性リンパ球性白血病とも呼ばれる)、慢性骨髄性(慢性骨髄性白血病とも呼ばれる)、有毛細胞白血病))、口唇、口腔の癌、脂肪肉腫、肝臓癌(原発性)、肺癌(非小細胞、小細胞)、リンパ腫、AIDSに関連するリンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキン、髄芽腫、メルケル細胞癌、中皮腫、再発した原発不明の転移性頸部扁平上皮、口癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫、菌状息肉腫、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病(急性、慢性)、骨髄腫、鼻腔および副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、上皮性卵巣癌(表面上皮間質腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、膵島細胞癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体ジャーミノーマ、松果体芽細胞腫および上原始神経外胚葉腫瘍、下垂体腺腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎癌)、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(腫瘍肉腫のユーイングファミリー、カポジ肉腫、軟組織肉腫、子宮肉腫)、セザリー症候群、皮膚癌(非黒色腫皮膚癌、黒色腫)、小腸癌、扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、胃癌、上原始神経外胚葉腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、および/またはウィルムス腫瘍である。
【0036】
本発明の薬物がローディングされたEVは、ヒトまたは動物被験体に、種々の異なる投与経路によって投与されてもよく、投与経路は、例えば、耳介(耳)、口腔、結膜、皮膚、歯、電気浸透、頸管内、洞内、気管内、腸内、硬膜外、羊膜外、体外、血液透析、浸潤、間質、腹部内、羊膜内、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、滑液内、心臓内、軟骨内、尾内、海綿体内、腔内、大脳内、嚢内、角膜内、歯冠内(歯)、冠動脈内、陰茎海綿体内、皮内、椎間板内、導管内、十二指腸内、硬膜内表皮内、食道内、胃内、歯肉内、回腸内、病巣内、腔内、リンパ管内、髄内、髄膜内、筋肉内、眼球内、卵巣内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、眼窩内、髄腔内、滑液嚢内、肘頭腱内、精巣内、くも膜下内、管内、腫瘍内、鼓室内、子宮内、血管内、静脈内、静脈内ボーラス投与、点滴、脳室内、膀胱内、硝子体内、イオン導入、潅注、喉頭部、経鼻、経鼻胃、密封包帯技術、眼、経口、口腔咽頭、その他、非経口、経皮、関節周囲、硬膜外、神経周囲、歯周、直腸、呼吸(吸入)、眼球後方、軟組織、くも膜下、結膜下、皮下、舌下、粘膜下、局所、経皮、経粘膜、経胎盤、経気管、経鼓膜、尿管、尿道および/または膣投与、および/または上述の投与経路の任意の組み合わせであり、典型的には、治療される疾患および/または医薬薬剤の特徴および/またはEVの集合自体の特徴に依存して変わる。
【0037】
本明細書に記載するEVに医薬薬剤をローディングする方法は、非常に効率的であり、容易にスケール変更可能であり、治療薬投与に必要な量で、薬物がローディングされたEVを迅速に製造することができる。上述の態様の特定の実施形態では、EVに医薬薬剤が直接ローディングされる場合、ローディングは、30分以下、例えば、5分以下で起こり得る。いくつかの実施形態では、EVのローディングは、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、5分以内または1分以内に起こる。特定の実施形態では、所与のEVの集合のうち、少なくとも80%のEVに、主題の薬物がローディングされてもよい。好ましい実施形態では、EVの少なくとも90%に薬物がローディングされてもよい。例示的な実施形態では、EVの少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、またはさらに多くに薬物がローディングされる。通常、代謝的にEV供給源細胞にローディングすると、ローディングはEV供給源細胞の内側の移動プロセスおよび/または代謝プロセスに依存すると考えられるため、EVのローディングは、さらに長くかかる場合がある。
【0038】
本発明の方法は、得られるEVの収率または特性に影響を及ぼすために、EV供給源細胞を、血清飢餓状態、低酸素状態、バフィロマイシンまたはサイトカイン、例えばTNF-αおよび/またはIFN-γにさらすことも含んでいてもよい。EVの集合の規模およびタイムラインは、EVを産生する細胞または細胞株に大きく依存し、したがって、当業者によって適応させることが可能である。本発明の方法は、さらに、EV精製工程を含んでいてもよく、ここで、EVは、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、スピン濾過、タンジェンシャルフロー濾過、中空繊維濾過、遠心分離、免疫沈降、フローフィールドフラクショネーション、透析、微小流体に基づく分離など、またはこれらの任意の組み合わせを含む技術群から選択される手順によって精製される。通常、EV供給源細胞の代謝的なローディングまたはEVへの直接的なローディングによって、EVに薬物がローディングされるかどうかに依存して、EVの精製は、これにしたがって適応されてもよい。典型的には、直接的にEVにローディングされる場合、ローディングされるEVの集合は、少なくとも1つの精製工程によって既になくなっている。一方、EV供給源細胞にローディングする場合、精製工程は、EV供給源細胞から放出/分泌される「ローディング前の」EVに適用される。有利な実施形態では、EVの精製は、濾過(好ましくは、限外濾過(UF)、タンジェンシャルフローフィルトレーションまたは中空繊維濾過)およびサイズ排除液体クロマトグラフィー(LC)の連続的な組み合わせを用いて行われる。精製工程のこの組み合わせによって、最適化された精製が得られ、優れた治療活性を生じる。さらに、通常はエキソソームを精製するために使用される超遠心分離(UC)と比較して、連続的な濾過-クロマトグラフィーは、かなり迅速であり、これは、より大きな製造容積へとスケール変更が可能であり、従来技術で優勢である現行のUC方法の顕著な欠点である。別の有利な精製方法は、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)であり、スケール変更が可能で、純度が得られ、濾過などの他の種類の精製技術と組み合わせてもよい。低分子を保持するEVを製造する典型的なワークフローは、(1)EVを発現する安定な細胞株の作成(場合により、その表面に提示される標的部分を有する)、(2)任意の工程において、このような(場合により遺伝子操作された)EVを大量に精製、(3)EVの集合を、代謝成分に接合された医薬薬剤を含む接合体にさらすことによる、少なくとも1つの医薬薬剤を主題となるEVに導入の工程を含む。薬物がローディングされたEVを製造するための別の典型的なワークフローは、(1)EVを発現する安定な細胞株の作成(場合により、その表面に提示される標的部分を有する)、(2)代謝成分に接合された医薬薬剤を含む接合体の存在下でEV供給源細胞を培養することによる、EV供給源細胞に代謝的にローディング、(3)EV供給源細胞によって産生される、薬物がローディングされたEVの精製の工程を含む。
【0039】
上に記載の例示する態様、実施形態、代替物および変形例を、本発明の範囲から逸脱することなく改変することができることを理解すべきである。本発明を、一緒に記載している実施例を用いてさらに説明し、通常、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、大幅に改変することもできる。
【実施例
【0040】
実施例1:脂肪酸の接合を介する、免疫細胞由来のEVへのシトシンアラビノシドのローディング
末梢血単核細胞(PBMC)は、全血から抽出され、適切な密度で細胞培地に播種された。この細胞培地を24時間後に取り出し、プレートをPBSで3回洗浄する。C18脂肪酸が接合されたシトシンアラビノシド(C18-AraC)を含む、新しく新鮮なEVを含まない培地または血清を含まない培地を加え、EVを産生する細胞に、この薬物を1時間かけてプレローディングした。その後、細胞を洗浄し、培地を、新しく新鮮なEVを含まない培地または血清を含まない培地と交換し、24時間インキュベートし、内因性代謝経路によって、分泌したEVの膜に薬物を組み込んだ。EVを馴化培地から精製した。または、まず、未処理の細胞に由来するEVを単離し、次いで、一緒にインキュベートすることによってC18-AraCをローディングし、ローディングされていない薬物を洗浄工程によって除去した。分泌したEV中のC18-AraCのローディング能力をHPLCによって定量した。
【0041】
細胞を成長させる培地は、通常、細胞と共にインキュベートする前に、110000gで一晩、超遠心分離処理をすることによって、外来EVおよび微粒子が除去されている。または、血清を含まない培地をその場で適用する(例えば、OptiMEMまたはDMEM)。PBMC培養物からの馴化培地を、異なる技術を用いて精製する(この場合には、シーケンシャルLCを用いる限外濾過またはタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF))。
【0042】
遊離C18-AraC、C18-AraCをローディングしたEV(内因性および外因性の代謝経路を介する)、コントロールEVの細胞毒性を、MTTアッセイを用いて決定した。MDA-MB-231細胞(1×10細胞/100μΙ/ウェル)を、96ウェルプレート中、37℃、5%COで培養した。当量C18-AraC濃度は、0.1、1、10、100および1000nM。4時間のインキュベート時間の後、MTT溶液(2mg/PBS(ml))を加え、プレートを4時間インキュベートし、細胞を、20%SDS(pH4.5)を含む50%のN,N-ジメチルホルムアミドで溶解させた。SpectraMax M5装置(Molecular Devices、CA)によって、各ウェルについて、570nmでの吸光度を測定した。
【0043】
コントロール細胞の吸光度を100%生存率とし、治療された細胞の値を、コントロールに対する割合として計算した。結果を図1に示し、C18-AraCをローディングされたEVは、遊離C18-AraCと同様の抗癌効果を示すことを示しており、さらなるin vivo観察が当然必要である。同様の実験設定を用い、siRNAを標的とするcMycをC18に接合し、100V/cmでのエレクトロポレーションを行い、または行わずに、EVに直接ローディングした。siRNAをローディングされたEVは、細胞生存率になんら影響を与えなかったスクランブルsiRNA-C18とは異なり、固有の抗増殖効果を示した。
【0044】
実施例2:リン脂質接合を介する、MSC-EVへのNSAIDのローディング
間充織幹細胞(MSC)を適切な密度で細胞培地に播種した。この細胞培地を24時間後に取り出した。プレートをPBSで3回洗浄する。リン頭部基を介するイソブチルフェニルプロパン酸に接合したリン脂質(PhLip-IBU)を含む、新しく新鮮なEVを含まない培地または血清を含まない培地を、薬物を含むローディング前のEVを産生する細胞に1時間かけて加えた。その後、細胞を洗浄し、培地を、新しく新鮮なEVを含まない培地または血清を含まない培地と交換し、24時間インキュベートし、内因性代謝経路によって、分泌したEVの膜に薬物を組み込んだ。EVを馴化培地から精製した(PhLip-IBU内因性EV)。または、まず、未処理の細胞に由来するEVを単離し、次いで、一緒にインキュベートすることによってPhLip-IBUをローディングし、ローディングされていない薬物を洗浄工程によって除去した(PhLip-IBU外因性EV)。分泌したEV中のCPhLip-IBUのローディング能力をHPLCによって定量した。
【0045】
EVを、実施例1と同様に得て、処理した。EVにローディングされたものと、遊離PhLip-IBUのCOX-2阻害を、24ウェルプレートに播種したRAW264.7細胞で測定した。次の日に、細胞を、遊離PhLip-IBU、EV PhLlp-IBUまたはCTRL EVと共にプレインキュベートし、次いで、100ng/mlのLPSで24時間刺激した。細胞培養物の上清を集め、1000xgで15分間遠心分離処理し、適切なELISAキットを用い、下流のPGE2の活性を測定することによって、COX-2阻害を評価した。図2は、遊離PhLip-IBUと比較して、COX-2阻害がEVによって高められることを示す。
【0046】
実施例3:ビタミンB7またはB9の接合を介する、MSC-EVへのNSAIDのローディング
MSCを安定に発現するストレプトアビジン、アクセプターペプチド、および/または葉酸受容体α(FRα)を、実施例2と同様に培養し、調製したが、イソブチルフェニルプロパン酸およびビオチン(IBU-B7)またはイソブチルフェニルプロパン酸および葉酸(IBU-B9)のヘテロトリマー接合体と共に供給した。または、単離された野生型エキソソームに、IBU-B7またはIBU-B9を外から加えてインキュベートした。分泌したEV中のIBU-B7およびIBU-B9のローディング能力をHPLCによって定量した。
【0047】
EVを、実施例1と同様に得て、処理した。EVにローディングされたものと、遊離IBU-B7およびIBU-B9のCOX-2阻害を、24ウェルプレートに播種したRAW264.7細胞で測定した。次の日に、細胞を、遊離PhLip-IBU、EV PhLlp-IBUまたはCTRL EVと共にプレインキュベートし、次いで、100ng/mlのLPSで24時間刺激した。細胞培養物の上清を集め、1000xgで15分間遠心分離処理し、適切なELISAキットを用い、下流のPGE2の活性を測定することによって、COX-2阻害を評価した。図3は、COX-2阻害が、IBU-B7およびIBU-B9がローディングされたMSC EVによって達成されたことを示す。
図1
図2
図3