(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】マイクロ波によるセラミック部品の熱処理の方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/64 20060101AFI20220930BHJP
H05B 6/64 20060101ALI20220930BHJP
H05B 6/80 20060101ALI20220930BHJP
C04B 37/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C04B35/64
H05B6/64 Z
H05B6/80 Z
C04B37/00 Z
(21)【出願番号】P 2019523691
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2017076818
(87)【国際公開番号】W WO2018077735
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-09
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】515334773
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ カーン ノルマンディ
(73)【特許権者】
【識別番号】517338087
【氏名又は名称】エコール・ナショナル・スーペリウール・ダンジェニウル・ドゥ・カーン
(73)【特許権者】
【識別番号】522222489
【氏名又は名称】ウニベルシテ・ポリテクニック・オー-ドゥ-フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】515281787
【氏名又は名称】アソシアシヨン・プール・ラ・ルシェルシュ・エ・ル・デブロプマン・ドゥ・メトード・エ・プロセシュス・アンデュストリエル-アルミン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリネル,シルバン
(72)【発明者】
【氏名】サバリ,エチエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ルフェーブル,フランソワ-グザビエ
(72)【発明者】
【氏名】ルクール,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ソニエ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シャナン-ランベール,ポリーヌ
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-500940(JP,A)
【文献】特開昭57-187035(JP,A)
【文献】国際公開第2008/077224(WO,A1)
【文献】R. Heuguet,Effect of the Susceptor Dielectric Properties on the Microwave Sintering of Alumina,Journal of the American Ceramic Society,2013年,vol.96,p.3728-3736
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/64
H05B 6/64
H05B 6/80
C04B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波キャビティ(9)内でセラミック材料から作成された少なくとも1つの固体部品(4)を熱処理するための方法であって、前記
マイクロ波キャビティはチャンバによって形成され、前記チャンバの幾何形状は、900MHz~1GHzに含まれる周波数v
0で、前記
マイクロ波キャビティ内の
局所的電場または磁場の少なくとも1つの局所的極値を画定する、単一モードの電磁場における共振に適切であり、前記
局所的電場の方向は前記
マイクロ波キャビティが空であるときに前記
マイクロ波キャビティ内で実質的に均一であり、少なくとも以下のステップ:
a)前記
マイクロ波キャビティ内に周波数v
0および700℃以上の温度Tで、前記局所的電場または磁場の
局所的極値でマイクロ波(1)を吸収するのに適したセラミック材料から作成された少なくとも1つの前記
固体部品を置くステップであって、セラミック材料から作成された前記
固体部品は少なくとも1つの第1のサセプタ(3)によって包囲され、少なくとも1つの前記第1のサセプタ(3)の寸法、材料および配置は、赤外放射線が前記マイクロ波と相互作用中に前記固体部品に向かって直接放出されるように構成され、各前記第1のサセプタは少なくとも1つの第1の主表面(5)を含み、各前記第1の主表面は線織面であり、前記線織面の母線は前記
マイクロ波キャビティが空であるときの前記
マイクロ波キャビティ内の前記
局所的電場に平行である、置くステップと、
b)前記マイクロ波を前記周波数v
0で前記
マイクロ波キャビティの中に放出するステップとを含み、
少なくとも2つの前記固体部品は、ステップb)において蝋付けされる、方法。
【請求項2】
前記固体部品は最初に多孔であり、少なくとも1つの前記固体部品はステップb)において加熱することによって高密度化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記第1のサセプタのリッジおよび頂点から選択された少なくとも1つの要素は丸みを帯びている、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの前記第1のサセプタは、炭化ケイ素から作成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの前記
固体部品の材料は、アルミナおよびジルコニアから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
セラミック材料から作成された少なくとも1つの前記固体部品は、単位容積当たり少なくとも90%のセラミック材料を含むように高密度化される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の第1のサセプタとセラミック材料から作成された前記1つまたは複数の
固体部品とを第1の熱閉じ込め部(10)内に置くことを含むステップを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の熱閉じ込め部は、1つまたは複数の第2のサセプタ(12)によって包囲される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数の第2のサセプタの前記配置は、前記1つまたは複数の第2のサセプタによって区切られた第2の容積を形成し、前記第2のサセプタの寸法、材料および配置は、赤外放射線が前記マイクロ波と相互作用中に放出されるように構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の第2のサセプタおよび前記第1の熱閉じ込め部は、第2の熱閉じ込め部(11)内に配置される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
各前記第2のサセプタは少なくとも1つの第2の主表面(21)を含み、各前記第2の主表面は線織面であり、前記線織面の母線は前記
マイクロ波キャビティが空であるときに前記
マイクロ波キャビティ内の前記
局所的電場
に平行である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの前記第2のサセプタのリッジおよび頂点から選択された少なくとも1つの要素は丸みを帯びている、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの前記サセプタ(3、12)の材料は、遷移金属の耐火性および半導体酸化物、ならびに炭化物から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数の第1および第2のサセプタ(3、12)の材料は、炭化ケイ素およびランタンクロマイトから選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記セラミック材料は、複数の異なるセラミック相を含み、各前記第1のサセプタの寸法、材料および配置は、セラミック材料から作成された各前記
固体部品の前記
セラミック相の少なくとも1つを選択的に熱処理するように構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記
固体部品の最大サイズDは、前記マイクロ波の前記
固体部品への侵入深さとDとの割合が0.5~10に含まれるように選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミック材料を熱処理するための方法に関し、より詳細にはマイクロ波キャビティ内でセラミック材料から作成された部品を高密度化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料から作成された部品は、強化し、かつ/または高密度化するために熱処理によって製造されてもよい。例えば圧縮または鋳造により事前に粉末形状にされた固体部品は、加熱または焼結により高密度化されてもよい。この操作は、従来赤外放射線で、かつ/または対流により圧縮された粉末の試料を加熱することによって実行される。赤外放射線を放出する熱源は、典型的には抵抗素子を使用して、またはガスを燃焼することによって獲得される。試料は、典型的には700℃を超える温度に加熱される。このタイプの方法を実施する熱処理の効率は、エネルギーを大きく損失し、生産コストがより高くなり、環境影響が大きくなるという非最適な結果をもたらす。ガスオーブンの場合、加熱により環境に有害な炭素含有ガスの放出を引き起こす。
【0003】
電子レンジは、これらの2つの加熱処理方法に替わる対象である。非金属を加熱するとき、それらの効率は上述した2つの方法の効率よりはるかに高く、対流式オーブンの場合に対して、使用されるエネルギー量を大幅に節約する可能性がある。この効率は、試料内でエネルギーの局在吸収および加熱される全容積の低減をもたらす。また電子レンジは熱処理の継続時間を従来の方法に比べて低減することもできる。
【0004】
先行技術では、大きい寸法、例えば3cmより大きいサイズのセラミック材料から作成された部品の加熱は、マイクロ波加熱に適合しない、またはあまり適合しない。いくつかの理由がこの技術的問題を説明し得る。
【0005】
多くのセラミック材料の誘電特性は、室温でマイクロ波との結合が好ましくなく、これは実際に通常約400℃の温度まではそのままである。例として、ジルコニアの誘電損失が著しく400℃を超えて増加することにより、この温度を超えてジルコニアとマイクロ波との間により良好な結合をもたらす。
【0006】
加えて(マイクロ波の試料への侵入深さに実質的に対応する)試料を加熱できる厚さは、材料の特性だけでなく、マイクロ波の周波数v0の両方に依存し、侵入深さは周波数が低減するにつれて増加する。マイクロ波によって加熱されたある特定のセラミック材料については、侵入深さは1ミリメートルより小さくてもよく、v0=2.45GHzである(この周波数は電子レンジで通常使用される周波数である)。前記部品内のマイクロ波によって消散されたエネルギーによって加熱されたセラミック材料の部品の大きさは、この場合に限定される。
【0007】
単一モードのキャビティの使用により、試料をキャビティの容積内で均一に熱処理することができ、この容積の大きさは、キャビティ内に誘導されたマイクロ波の周波数が増加するにつれて低減する。例えばその中にマイクロ波が周波数2.45GHzで放出される典型的な単一モードのキャビティは、典型的には0.35L未満の容積の試料を処理することができる。
【0008】
1つの先行技術の解決策は、915MHzに等しい低い周波数v0を使用することを含む。S.Liらは(Li,S.,Xie,G.,Louzguine-Luzgin,D.V.,Sato,M.,& Inoue,A.(2011).Microwave-induced sintering of Cu-based metallic glass matrix composites in a single-mode 915-MHz applicator.Metallurgical and Materials Transactions A,42(6),1463-1467)、例えばアモルファス金属合金、すなわち非セラミック材料の熱処理にこの解決策を適用した。熱処理の温度は400℃であった。この方法を使用すると、最高熱処理温度は、電磁場の強度によって生じるプラズマおよび/または電弧の出現によって制限される。セラミック材料の焼結は、試料を高温、例えば1300℃~1600℃で処理する必要がある。マイクロ波の加熱によってこれらの温度に達することは困難であり、すなわち高い強度の電磁場が通常必要とされる。マイクロ波キャビティの内側の試料またはあらゆる他の部品がマイクロ波を(一部であっても)反射することができるとき、マイクロ波の反射によって局所的に増加された電場強度はプラズマの出現をもたらすことがある。プラズマの出現は試料の熱処理に劇的効果を有する。プラズマはそれらの容積内に自由荷電粒子を含有し、したがって非常に伝導性が良く、すなわちプラズマは入射電磁場を反射する特性を有する。このプラズマは、試料の温度を非常に急激に大幅に低減させるように加熱に大きな障害をもたらすことがある。プラズマの出現は、キャビティ内の電磁場の空間分布の障害をもたらし、したがって1つまたは複数の処理部品の不均一な熱処理をもたらす。
【0009】
別の解決策は、単一モードの915MHzオーブン内で2つの平行なサセプタを使用することを含み、その表面はキャビティ内にある電磁場に垂直であり(R.Heuguet,“Developpement des procedes micro-ondes monomodes a 2450 MHz et 915 MHz pour le frittage de ceramiques oxydes”[Development of single-mode 2450 MHz and 915 MHz microwave processes for sintering oxide ceramics],Thesis presented 14 October 2014,Universite de Caen Basse Normandie)、2つのサセプタは熱処理される試料を包囲する。具体的には、サセプタは電磁場に垂直であるので、サセプタにより電磁場が試料に集結する。これにより必要なマイクロ波電力を最小にすることができ、したがって試料付近でのプラズマの生成を大幅に制限する。この解決策により約1500℃の温度に達することができる。しかし本発明者らは、高いマイクロ波電力が必要であるときに、プラズマが依然としてサセプタ付近に現れることを観察し、これは方法に悪影響を与えることに気付いた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Li,S.,Xie,G.,Louzguine-Luzgin,D.V.,Sato,M.,& Inoue,A.(2011).Microwave-induced sintering of Cu-based metallic glass matrix composites in a single-mode 915-MHz applicator.Metallurgical and Materials Transactions A,42(6),1463-1467
【文献】R.Heuguet,“Developpement des procedes micro-ondes monomodes a 2450 MHz et 915 MHz pour le frittage de ceramiques oxydes”[Development of single-mode 2450 MHz and 915 MHz microwave processes for sintering oxide ceramics],Thesis presented 14 October 2014,Universite de Caen Basse Normandie
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、先行技術の前述の欠点の一部またはすべてを、より具体的には1cm3を超える容積のセラミック部品の少なくとも一部のマイクロ波による熱処理を修正し、多孔セラミック材料から作成された部品の場合、例えば対流式オーブンを使用して先行技術の方法で実行した高密度化で達した温度と等しい温度にセラミック部品を高密度化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成することができる本発明の一主題は、マイクロ波キャビティ内でセラミック材料から作成された少なくとも1つの固体部品を熱処理するための方法であって、前記キャビティはチャンバによって形成され、チャンバの幾何形状は、900MHz~1GHzに含まれる周波数v0で、前記キャビティ内の電場または磁場の少なくとも1つの局所的極値を画定する、単一モードの電磁場における共振に適切であり、電場Eの方向は前記キャビティが空であるときに前記キャビティ内で実質的に均一であり、少なくとも以下のステップ、すなわち
a)前記キャビティ内に周波数v0および700℃以上の温度Tで、前記局所的電場または磁場の極値でマイクロ波を吸収するのに適したセラミック材料から作成された少なくとも1つの前記部品を置くステップであって、セラミック材料から作成された前記部品は少なくとも1つの第1のサセプタによって包囲され、サセプタの寸法、材料および配置は、赤外放射線がマイクロ波と相互作用中に前記固体部品に向かって直接放出されるように構成され、各前記第1のサセプタは少なくとも1つの第1の主表面を含み、各前記第1の主表面は線織面であり、線織面の母線は前記キャビティが空であるときに前記キャビティ内の前記電場Eに平行である、置くステップと、
b)前記マイクロ波を周波数v0で前記キャビティの中に放出するステップとを含む。
【0013】
好都合なことに、前記固体部品は最初に多孔であり、少なくとも1つの前記固体部品はステップb)において加熱することによって高密度化される。
【0014】
好都合なことに、少なくとも2つの前記固体部品は、ステップb)において蝋付けされる。
【0015】
好都合なことに、少なくとも1つの前記第1のサセプタのリッジおよび頂点から選択された少なくとも1つの要素は丸みを帯びている。
【0016】
好都合なことに、少なくとも1つの前記第1のサセプタは、炭化ケイ素から作成される。
【0017】
好都合なことに、少なくとも1つの前記セラミック部品の材料は、アルミナおよびジルコニアから選択される。
【0018】
好都合なことに、セラミック材料から作成された少なくとも1つの前記固体部品は、単位体積当たり少なくとも90%のセラミック材料を含むように高密度化される。
【0019】
好都合なことに、前記方法は、前記1つまたは複数の第1のサセプタおよびセラミック材料から作成された前記1つまたは複数の部品を第1の熱閉じ込め部内に置くことを含むステップを含む。
【0020】
好都合なことに、前記第1の熱閉じ込め部は、1つまたは複数の第2のサセプタによって包囲される。
【0021】
好都合なことに、前記1つまたは複数の第2のサセプタの前記配置は、前記1つまたは複数の第2のサセプタによって区切られた第2の容積を形成し、前記第2のサセプタの寸法、材料および配置は、赤外放射線がマイクロ波と相互作用中に放出されるように構成される。
【0022】
好都合なことに、前記1つまたは複数の第2のサセプタおよび前記第1の熱閉じ込め部は、第2の熱閉じ込め部内に配置される。
【0023】
好都合なことに、各前記第2のサセプタは少なくとも1つの第2の主表面を含み、各前記第2の主表面は線織面であり、線織面の母線は前記キャビティが空であるときに前記キャビティ内の前記電場Eに平行である。
【0024】
好都合なことに、少なくとも1つの前記第2のサセプタのリッジおよび頂点から選択された少なくとも1つの要素は丸みを帯びている。
【0025】
好都合なことに、少なくとも1つの前記サセプタの材料は、遷移金属の耐火性および半導体酸化物、ならびに炭化物から選択される。
【0026】
好都合なことに、前記1つまたは複数の第1および第2のサセプタの材料は、炭化ケイ素およびランタンクロマイトから選択される。
【0027】
好都合なことに、前記セラミック材料は、複数の異なるセラミック相を含み、各前記第1のサセプタの寸法、材料および配置は、セラミック材料から作成された各前記部品の前記相の少なくとも1つを選択的に熱処理するように構成される。
【0028】
好都合なことに、前記部品の最大サイズDは、前記マイクロ波の前記部品への侵入深さとDとの割合が0.5~10に含まれるように選択される。
【0029】
本発明は、例として添付図面を参照して提供された以下の例示的記載からより良く理解され、それらの他の利点、詳細および特徴が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明を実施するために使用される装置の断面を概略的に示す。
【
図2】本発明を実施するために使用される装置の一部の写真である。
【
図3】部品を含有するキャビティの側面、ならびにキャビティの様々な構成に関連した電場および磁場の概略図である。
【
図4】本発明と異なる間接加熱方法の概略図である。
【
図5】本発明と異なる直接加熱方法の概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるハイブリッド加熱方法の概略図である。
【
図7】本発明に利用されたサセプタと異なるサセプタを中心とする電場強度のシミュレーションの図である。
【
図8】本発明に利用されたサセプタと異なるサセプタを中心とする電場強度のシミュレーションの1組の図である。
【
図9】本発明の一実施形態による熱処理中のセラミック材料から作成された部品の温度の変動を示す。
【
図10】本発明の一実施形態による熱処理後に、セラミック材料から作成された部品の断面を電子顕微鏡を走査することによって撮った顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の記載は、本発明の装置の実施形態の複数の例を表し、これらの例は本発明の範囲を限定するものではない。実施形態のこれらの例は本発明の本質的特徴および問題になっている実施形態に関係した追加特徴の両方を有する。わかりやすくするために、同じ要素は様々な図において同じ参照番号が与えられている。
【0032】
図1は、本発明を実施するために使用される装置の断面を概略的に示す。
【0033】
概して用語「マイクロ波」は、電磁波を意味すると理解され、その周波数は300MHz~300GHzに含まれる。本発明に使用されるマイクロ波1の周波数は、先行技術の問題の一部を解決するために900MHz~1000MHzに含まれ、マイクロ波周波数は、最大の可能な侵入深さをもつセラミック材料から作成された固体部品4を加熱するように、またマイクロ波キャビティ内で均一に部品を加熱できる最大の可能な容積を獲得するように、マイクロ波周波数の範囲で最低周波数から選択される。具体的には
図1に概略的に示されたように、単一モードの共振キャビティは、マイクロ波1の周波数が915MHzであるとき、試料を均一に加熱できる9Lの容積を含有する。マイクロ波1は、例えば
図1に示された断面の平面に垂直方向にキャビティの中に放出される。比較すると、類似しているが、2.45GHzに等しい周波数のマイクロ波1に対して単一モードの共振に(例えば外形的に)修正されたキャビティは、25分の1の大きさで同様の容積を含有するはずである。本発明の様々な実施形態において、セラミック材料から作成された固体部品4の大きさは、キャビティの大きさより小さいように選択される。好都合なことに、とりわけ放出されるマイクロ波1の周波数に依存して固体部品4の大きさを選択することが可能であり、Dは部品4の最大の大きさであり、部品4の材料へのマイクロ波の侵入深さとDとの割合は、0.5~100、好ましくは0.5~10に含まれるように大きさDを選択することが可能である。本発明の様々な実施形態において、マイクロ波1はマグネトロンでキャビティ9の中に放出されてもよい。
【0034】
概して本発明のすべての実施形態において、方法はチャンバによって形成されたキャビティ9内で実行され、チャンバの幾何形状は、900MHz~1GHzに含まれる周波数v
0、実質的に915MHzが好都合である、電磁場の単一モード(モノモード)の共振を伝播して支持するのに適している。本発明の様々な実施形態において、利用された構成は、好ましくはキャビティ9がマイクロ波1の共振の1モードを支持するように設計された構成であり、キャビティ9はしたがって単一モードであると言われる。キャビティ9の幾何形状は、単一モードであるように試料を導入する前に調節されてもよい。
図1に示されたキャビティは概略であり、実際には、例えば可動の短絡ピストンまたはマイクロ波1をキャビティの中に導入するために、使用される導波管内のアイリスのパラメータを変えることによりキャビティを修正することができる。本発明のすべての実施形態において、キャビティが空であるときのキャビティ内の電場Eは、マイクロ波1がキャビティの中に放出されるときに均一方向を有する。具体的には電場Eの方向は、セラミック材料から作成された固体部品4が熱処理プロセスの間、好都合なことには高密度化プロセスの間に置かれる容積内で均一である。ベクトルEは
図1に示されている。
【0035】
セラミック材料から作成された少なくとも1つの固体部品4は、キャビティ9内に置かれる。セラミック材料から作成された少なくとも1つの固体部品4は、好都合なことに断熱材7から作成されたホルダ上に置かれる。「セラミック材料から作成された固体部品」が意味することは、少なくとも1つのセラミック材料を含む部品であり、これは例えばホルダ上に置かれたときに、坩堝内に置かれたセラミック材料の粉末とは対照的に、部品が機構的に自立できる。セラミック材料から作成された固体部品4は多孔であってもよい。「多孔」が意味することは、固体部品4が多孔を含有する、すなわち容積が液体または気体媒体を含有できることである。具体的には多孔材料は、細孔の容積と材料の見掛容積との間の割合が実質的にゼロでない、好ましくは1%より高い割合を有する材料である。固体部品4は、ホルダ上に置かれたときに例えば材料の様々な粒子の間の付着によって自立でき、部品の機構的安定性が確保される。概してセラミック材料から作成された固体部品4のセラミック材料は、周波数v0および700℃以上の温度Tでマイクロ波1を吸収するのに適している。本発明の特定の実施形態では、固体部品4の材料は、例えばアルミナ、ジルコニアおよびスピネルから選択されたセラミック酸化物であってもよい。キャビティ9を通るマイクロ波1の伝播のモードは、部品4の材料によりマイクロ波1の吸収を最適にするように選択されてもよい。マイクロ波1の放出中に、少なくとも1つの定常局所電場および/または磁場極値は、単一モードのキャビティ9内で別個の場所に形成されてもよい。例えば電場および/または磁場の反ノードおよびノードは、直角位相でキャビティ9内に長手方向に配置されてもよい。好ましくはセラミック材料から作成された固体部品4は、キャビティ9内に電場または磁場の反ノードに配置される。
【0036】
本発明の特定の一実施形態では、断熱材7は、例えば断熱材7liteCell(AET Technologies、高いアルミナ含有量の断熱材)であってもよい。
【0037】
セラミック材料から作成された固体部品4は、少なくとも1つの第1のサセプタ3によって包囲される。
図1に示されている本発明の特定の一実施形態では、セラミック材料から作成された固体部品4は、セラミック材料から作成された固体部品4の左右それぞれに2つの第1のサセプタ3によって包囲される。本発明の他の実施形態では、1つまたは複数の第1のサセプタ3は、セラミック材料から作成された固体部品4を包囲してもよい。好都合なことに、少なくとも1つの前記第1のサセプタのリッジおよび頂点から選択された少なくとも1つの要素は丸みを帯びている。この特性は熱処理中にプラズマの出現を制限または防止する。「丸みを帯びる」が意味することは、第1のサセプタ3の様々な壁がリッジおよび/または頂点を形成するために接合することであり、リッジおよび/または頂点の表面は湾曲の少なくとも1つの半径を辿り、湾曲の長さはキャビティ9の最大寸法の1000分の1より長く、好ましくはキャビティ9の最大寸法の100分の1より長い。
【0038】
1つまたは複数の第1のサセプタ3の寸法、材料および配置は、赤外放射線が周波数v0で各前記固体部品4付近または各前記部品4を中心にマイクロ波1と相互作用している間に、前記固体部品4に向かって直接放出されるように選択または構成される。「直接」が意味することは、1つまたは複数の固体部品4に向かって1つまたは複数の第1のサセプタ3によって放出された赤外放射線の経路が、固体材料から作成されたあらゆる他の部品を通過せず、1つまたは複数の固体部品4を包囲する気相のみを通過することである。
【0039】
「近位」が意味することは、セラミック材料から作成された1つまたは2つ以上の固体部品4の特性長さより短い長さである。
【0040】
サセプタは、所与の周波数でマイクロ波1の放射線の優れた吸収が可能な材料である。この放射線を吸収する間、サセプタ材料は、例えば赤外放射線2を介して吸収されたエネルギーを再度放出してもよい。サセプタ材料の吸収は、例えばマイクロ波1の場合、電磁場により材料を励起中に高い誘電、電力または磁気の損失によって支配される。本発明の実施形態において第1および/または第2のサセプタとして使用される材料は、好都合なことに炭化ケイ素(SiC)および/またはランタンクロマイト(LaCrO3)であってもよい。マイクロ波1を吸収する高い能力を備えた他の材料が使用されてもよい。遷移金属の耐火性および半導体酸化物を含む材料が使用されてもよい。また例えば炭化ホウ素などの炭化物からなる材料の使用も可能である。
【0041】
概して、また本発明のすべての実施形態において、第1のサセプタ3は少なくとも1つの第1の主表面5を含む。「主表面」が意味することは、第1のサセプタ3または第2のサセプタ12の一部または全体の配置が表面によって画定されてもよいことである。主表面は、
図1が例えば2つの第1のサセプタ3を示し、2つの第1のサセプタ3の第1の主表面5は平面であり、前記サセプタは断面に見える平面であってもよい。これらの主表面の1つは、白い破線によって示されている。また主表面は、例えば円筒の側面の場合に湾曲していてもよい。概して、また本発明のすべての実施形態において、各前記第1または第2のサセプタ3、12の各前記第1または第2の主表面5、21は線織面であり、線織面の母線はキャビティ9が空であるときにキャビティ9の電場E、かつ/または試料を受領するのに適した容積の電場Eに平行である。この特徴により、先行技術の1つの技術的問題、すなわちセラミック材料から作成された固体部品4を高温、例えば700℃を超える温度で900MHz~1GHzに含まれた周波数v
0のマイクロ波1で、キャビティ9内にプラズマまたはいかなる電弧も形成することなく処理する方法の問題を解決できる。この技術的問題の解決策の物理的態様は、
図6および7の説明に詳述されている。
【0042】
マイクロ波1の局所吸収は、キャビティ9内の様々なサセプタの配置に依存して容積を形成することができ、その中で固体部品4は赤外放射線により1つまたは複数の第1のサセプタ3によって直接加熱されてもよい。
【0043】
好都合なことに、セラミック材料から作成された固体部品4およびセラミック材料から作成された固体部品4を包囲する1つまたは複数の第1のサセプタ3によって形成された組立体は、断熱材7から作成された第1の熱閉じ込め部10内に配置される(または置かれる)。本発明の特定の一実施形態では、断熱材7は、liteCell(AET Technologies S.A.S.、高いアルミナ含有量の断熱材)および/またはQuartzel(登録商標、Saint-Gobain Quartz S.A.S.)から作成されてもよい。断熱材7によるこの閉じ込め部は、熱処理中に放射線を介するエネルギー損失を制限することができる。熱閉じ込め部10の形状は円筒形であってもよい。
【0044】
図1に示された本発明の一実施形態では、2つの第2のサセプタ12は第1の熱閉じ込め部10を包囲する。第2のサセプタ12および第1の熱閉じ込め部10から構成された組立体は、断熱材7から作成された第2の熱閉じ込め部11によって包囲される。この構造は熱閉じ込め部を増加させることができる。本発明のこの特定の実施形態では、第2の熱閉じ込め部11は断熱材7から作成される。
【0045】
図1に示された本発明の実施形態では、第2の熱閉じ込め部11はアルミニウムから作成されたデッキ8上に置かれる。
【0046】
キャビティ9、第1の熱閉じ込め部10および第2の熱閉じ込め部11は、サイト6の高温測定ラインを描くことができるために穿孔されてもよい。サイト6のこのラインは、熱処理中に遠隔温度センサがセラミック材料から作成された固体部品4の温度を測定できることがある。本発明の特定の一実施形態では、温度センサおよびマイクロ波1のエミッタは、バスを介して処理装置に接続される。処理装置は、1つまたは複数のマイクロプロセッサおよびメモリを含む。処理装置により、マイクロ波エミッタの放出力を独立して制御し、温度センサによって送達された情報を処理することができる。本発明の特定の実施形態では、電力は、所与の温度設定点に依存して自動的に制御される。温度設計点は、温度勾配または定常温度熱処理などの画定された処理温度プロファイルを行うことができるように経時的に変動できることがある。本発明の一実施形態によれば、マイクロ波1の一部の放出を通して、またはその間、セラミック材料から作成された固体部品4の温度を測定し、次いで測定した温度に依存してマイクロ波の放出強度を調節または自動的に制御することができる。
【0047】
図2は、本発明の方法を実施するために使用される装置の一部の写真である。セラミック材料から作成された固体部品4は、写真をわかりやすくするために白い長方形でその中に概略的に示されている。2つの第1のサセプタ3は、セラミック材料から作成された固体部品4を包囲する。「包囲する」がここで意味することは、セラミック材料から作成された固体部品4の面積の少なくとも半分が、第1のサセプタ3付近に配置されることである。第1のサセプタ3の1つの第1の主表面5は、斜視的に長方形の白い破線で示されている。磁場Eは写真の右下に示されている。本発明のこの実施形態では、2つのサセプタの平坦な第1の主表面5は、磁場Eの方向に平行である。第1のサセプタ3およびセラミック材料から作成された固体部品4は、4つのレンガによって形成された一部が写真に示されている、第1の熱閉じ込め部10の内部に置かれる。
【0048】
図3は、部品4を含有するキャビティ9の側面図、ならびにキャビティ9の様々な構成に関連した電場および磁場の概略図である。キャビティ9は壁から、その端部の一方が結合アイリス19から、その端部の他方が短絡ピストン20から形成されてもよい。第1の構成(a)は、結合アイリス19の位置および短絡ピストン20の位置に関連付けられ、それらの位置は不規則な点鎖線によって示されている。第2の構成(b)は、結合アイリス19の別の位置および短絡ピストン20の別の位置に関連付けられ、それらの位置も不規則な点鎖線によって示されている。
図3の中央には、空洞の構成(a)に対応する電場(c)の振幅および磁場(d)の振幅が、概略的に示されている。
図3の底部には、空洞の構成(b)に対応する電場(c)の振幅および磁場(d)の振幅が、概略的に示されている。
【0049】
本発明の実施形態では、部品4は電場または磁場の局所的極値に置かれる。空洞の構成(a)では、部品4は、磁場(d)の振幅の反ノード(または極値)および電場(c)のノードに置かれる。空洞の構成(b)では、部品4は、電場(c)の反ノード(または極値)および磁場(d)のノードに置かれる。
【0050】
図4は、本発明と異なる間接加熱方法を概略図である。
図4のパネルAは、間接加熱作動の実施の上面図の概略図である。
【0051】
間接加熱は、少なくとも1つの第1のサセプタ3および1つまたは複数の第1のサセプタ3によって包囲された試料18を必要とする。間接加熱する場合、加熱される試料18が作成される材料は、マイクロ波1に対して透明、またはマイクロ波1に対して不透明である。
【0052】
「透明」が意味することは、材料が所与の周波数でマイクロ波場1に曝されるときに、材料の誘電および/または磁気損失が実質的にゼロである材料である。透明材料は、概して非常に低い電気伝導率を有する。透明材料の電気伝導率は10-8S.m.-1未満、好ましくは10-10S.m.-1未満、より好ましくは10-12S.m.-1未満であってもよい。
【0053】
「不透明」が意味することは、所与の周波数に対してマイクロ波1の放射線を反射する材料である。不透明材料は、概して高い電気伝導率を有する。不透明材料の電気伝導率は好ましくは103S.m.-1より高い。本発明と異なるこの実施形態では、マイクロ波1と試料18との間の相互作用は、試料18の温度を高くすることができない。それと対照的に、試料18を中心に置かれたサセプタ3はマイクロ波1を吸収し、赤外放射線2を放出する。試料は、次いで赤外放射線2によって加熱されてもよい。
【0054】
図4のパネルBは、軸に沿って試料18の中心を通過する温度プロファイルを概略的に示す。この実施の2つの温度最大値は、第1のサセプタ3の場所の距離(横座標dによって示されている)に置かれる。試料の中心の温度は、主に試料の周辺の赤外放射線2、および/または上に説明されたように試料内の熱伝導と結合された、試料を包囲する媒体の対流による加熱に起因する。
【0055】
熱処理のこのモードは、先行技術の1つの技術的問題を解決できず、すなわちマイクロ波1による加熱で可能な効果のほとんどの部分は失われる。
【0056】
図5は、本発明と異なる直接加熱方法の概略図である。
図5のパネルAは、直接加熱作動の実施の上面図の概略図である。直接加熱する場合、加熱される試料18が作成される材料は、マイクロ波1を所与の周波数で吸収する。マイクロ波1と試料18の吸収材料との間の相互作用は、試料を加熱することができる。
【0057】
図5のパネルBは、軸に沿って試料18の中心を通過する温度プロファイルを概略的に示す。本発明と異なるこの実施では、温度プロファイルは試料の中心に最大値を有する。プロファイルは、特に試料18の大きさ、試料18の材料、ならびに放出されたマイクロ波1の電力および波長に依存するので、プロファイルは異なることがある。
【0058】
この実装は、先行技術のある特定の技術的問題を解決できない。試料18がセラミック材料から作成された固体部品4である場合、部品の材料は室温でマイクロ波1によって直接加熱できない可能性がある。加えて多孔部品4は高温の熱処理中に高密度化され、すなわちある特定のセラミック材料の場合、部品の密度が高過ぎると、マイクロ波1の穿孔容積は、部品4の総容積に対して小さいことがある。マイクロ波1で達成した加熱効果は、したがって制限され、ある特定の温度設定点、例えば700℃を超える温度に到達することができない。
【0059】
図6は、本発明の一実施形態によるハイブリッド加熱プロセスの上面図の概略図である。本発明のこの実施形態の実施は、セラミック材料から作成された固体部品4を含む。試料は第1のサセプタ3によって包囲される。本発明のこの実施形態では、サセプタ3はマイクロ波1を所与の周波数で吸収する。第1のサセプタ3は、この場合赤外放射線2を放出し、赤外放射線2は、特に固体部品4の温度の増加の第1段階の間にセラミック材料から作成された固体部品4の熱処理に寄与し、この段階では固体部品4の材料はマイクロ波1と弱い相互作用のみが可能である。さらに一部のマイクロ波1は、セラミック材料から作成された固体部品4により所与の周波数で吸収されることがある。このハイブリッドプロセスは、固体部品4を赤外放射線によってなされた寄与を介して、またマイクロ波放射線1によってなされた寄与を介して加熱することができる。すなわち電磁場の局部強度は、固体部品4の温度が最初に上昇する間にセラミック材料から作成された固体部品4の近位でプラズマ14の形成を限定するように、同等の部品4が第1のサセプタ3なしで加熱されたときと比べて緩やかであることがある。
【0060】
図7は、本発明に利用されたサセプタと異なるサセプタの周囲の電場の強度のシミュレーションを示す図である。電場の強度は、黒色に対応するEの最大強度を図のグレースケールによって示されている。この実施形態では、第1のサセプタは、例えばセラミック材料を最初に粉末の形で焼結するために使用される坩堝である。この第1のサセプタも、
図7に示されたようにセラミック材料から作成された固体部品4を含有してもよい。電場Eの線は、細い黒線によって示されている。第1のサセプタおよびセラミック材料から作成された固体部品4がない場合、電場の線は垂直線である。示された坩堝形状のサセプタの幾何形状は、第1の主表面5を含まないだけであり、第1の主表面5の母線は空のキャビティ9の電場Eに平行である。本発明者らは、空のキャビティ9の電場Eに平行でない1つまたは複数の第1の主表面5が、具体的には電場が高い強度からなる空間帯域をもたらし、マイクロ波1の放出中に、第1および/または第2のサセプタの表面で電場が途切れる傾向があることを発見した。これらの帯域は、具体的にはセラミック材料から作成された固体部品4の熱処理および/または高密度化中に、プラズマおよび/または電弧の出現をもたらす傾向がある。本発明者らは、1つのみまたは複数の第1のサセプタ3を利用することによりこれらの帯域の大きさを低減することができ、1つのみまたは複数の第1のサセプタ3の第1の主表面5は、空のキャビティすなわちサセプタ内のEの方向に平行であり、サセプタの各前記第1の主表面5は線織面であり、線織面の母線は空のキャビティ9内のEに平行であることを発見した。また1つまたは複数の第2のサセプタ12をキャビティ内に置くことにより、これらの帯域の大きさを低減することも可能であり、1つまたは複数の第2のサセプタ12の各前記第2の主表面21は線織面であり、線織面の母線は空のキャビティ9内のEに平行である。
【0061】
図8は、本発明に利用されたサセプタと異なるサセプタの周囲の電場の強度のシミュレーションの1組の図である。電場の強度は、黒色に対応するEの最大強度を図のグレースケールによって示されている。
【0062】
具体的には
図8のパネルAは、坩堝の底部に対応する
図7の詳細であり、坩堝の幾何形状は空のキャビティ内のEに平行な第1の主表面5を含まない。破線はサセプタの外表面に対応し、サセプタは破線の上に配置されている。パネルAに示された電場の強度、強度の変動および断絶は、マイクロ波1の放出中にプラズマおよび/または電弧の出現を促すことがある。
【0063】
図8のパネルBは、
図7に示された坩堝の右の部分に対応する
図7の詳細である。この部分は、空のキャビティ内の電場Eに平行な第1の主表面を含む。Eの平均強度は、パネルAに示された平均強度より低い。この部分の配置により、キャビティ9内にプラズマおよび/または電弧を形成することなく、有効な熱処理および/または有効な高密度化に十分な温度増加を獲得できる。
【0064】
図9は、本発明の一実施形態による熱処理中に、セラミック材料から作成された固体部品4の温度の変動を示す。使用されるセラミック材料は、アルミナであってもよい。本発明の変動が示された本発明の実施形態では、温度設定点は1600℃である。この設定点には250分未満で到達する。3段階の変動が見られ、すなわち変動の傾斜が平均9℃/分である第1段階(0分~約40分)、変動の傾斜が平均6.5℃/分である第2段階(約40分~約150分)、および変動の傾斜が平均3.5℃/分である第3段階(約150分~約210分)である。この変動は部品4のセラミック材料の微細構造への影響を有する。
【0065】
図10は、本発明の一実施形態による熱処理後に、セラミック材料から作成された固体部品4の断面を電子顕微鏡が走査することによって撮られた顕微鏡写真である。使用されるセラミック材料は、アルミナであってもよい。スケールバーは1μmの長さに対応する。顕微鏡写真のセラミック材料の微細構造は、熱処理により獲得された微細構造に対応し、熱処理の変動は
図9に示されている。まず熱処理の前に、セラミック材料から作成された、利用された固体部品4はアルミナ酸化物のペレットであり、ペレットの直径は例えば80mmである。本発明の一実施形態による高密度化プロセスの後、セラミック材料から作成された固体部品4の測定された密度は、(容積で)厳密に95%を超え、材料内に観察された微細構造は細かく、具体的には
図10は微細構造を示し、微細構造の粒子17は1ミクロン未満、実質的には350nmに等しい平均直径を有する。サセプタが、空のキャビティ9の電場Eに平行でない第1の主表面5および/または第2の主表面21を含むとき、プラズマの出現によりこの設定点温度に達するのを妨げられることがある。本発明の実施形態では、マイクロ波1を放出するステップに対応する熱処理時間、および放出されたマイクロ波1の電力は、セラミック材料から作成された固体部品4を単位容積当たりのセラミック材料が90%を超える値に熱処理および/または高密度化するようにパラメータ化されてもよい。
【0066】
本発明の実施形態では、部品4のセラミック材料は多相であってもよく、複数の異なるセラミック相を含んでもよい。これらの材料のマイクロ波1との相互作用の特質は、900MHz~1GHzに含まれる周波数v0のマイクロ波1を放出中に異なってもよい。様々な第1のサセプタ3の配置は、様々な相において消散された電力を変化させ、したがって部品4の1つの材料のある特定の相、または少なくとも1つの相を選択的に熱処理および/または高密度化することができることがある。
【0067】
好都合なことに、任意選択的に多孔セラミックから作成された2つの部品4はマイクロ波の放出中に蝋付けされるように熱処理されてもよい。本発明による方法により、この場合、蝋付けするセラミック部品に対する従来の温度に達することができる一方で、プラズマが出現する危険性を低減し、従来の蝋付け方法に関してエネルギーを節約し、これらの従来の蝋付け温度に達するために必要な時間を低減する(蝋付け温度は固体部品4のセラミック材料に依存して、例えば600℃~1200℃に含まれてもよい)。