(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】セルロースから誘導されるポリマーベースの樹脂組成物及びこれらの組成物を用いて製造される物品
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20220930BHJP
C08L 1/12 20060101ALI20220930BHJP
C08K 5/04 20060101ALI20220930BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220930BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20220930BHJP
B29K 1/00 20060101ALN20220930BHJP
【FI】
B29C45/76
C08L1/12
C08K5/04
B29C45/26
B29C45/27
B29K1:00
(21)【出願番号】P 2019524926
(86)(22)【出願日】2017-11-09
(86)【国際出願番号】 US2017060823
(87)【国際公開番号】W WO2018089610
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-04
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】フェン,ウェンライ
(72)【発明者】
【氏名】アン,ハイニン
(72)【発明者】
【氏名】ドネルソン,マイケル・ユージン
(72)【発明者】
【氏名】ペコリーニ,トーマス・ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】マクラリー,ロバート・エリス
(72)【発明者】
【氏名】キャリコ,ダグラス・ウェルドン,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ギリアム,スペンサー・アレン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-183321(JP,A)
【文献】特表2005-515285(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0058425(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0068656(US,A1)
【文献】特開2011-162696(JP,A)
【文献】特開2007-138141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
B29C 33/00 - 33/76
B29C 48/00 - 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースから誘導されるポリマーベースの樹脂から形成される薄肉体部分を含む射出成形物品であって、
前記薄肉体部分は、
(i)ゲート位置;
(ii)最終充填位置;
(iii)100以上の肉厚に対する流動長の比、ここで、前記流動長は前記ゲート位置から前記最終充填位置までで測定される;及び
(iv)2mm以下の肉厚;
を有し;
前記ポリマーベースの樹脂は、(1)ASTM-D648にしたがって、70℃に4時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて1.82MPaにおいて測定して95℃以上のHDT及びASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して80J/m以上のノッチ付きアイゾッド衝撃強さ;(2)少なくとも20重量%のバイオ由来成分の含量;及び、(3)前記ポリマーベースの樹脂を、238℃のバレル温度、246℃の溶融温度、13.8MPaの成形圧力、0.8mmの金型厚さ、及び12.7mmの金型幅の条件でスパイラルフロー金型を用いて成形した際に少なくとも3.0cmのスパイラルフロー流動長を有する上記射出成形物品。
【請求項2】
前記肉厚に対する流動長の比が250~1500の範囲である、請求項1に記載の射出成形物品。
【請求項3】
前記肉厚に対する流動長の比が500~1500の範囲である、請求項2に記載の射出成形物品。
【請求項4】
前記肉厚が0.1~1.5mmの範囲である、請求項1~3のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項5】
前記肉厚が0.1~1.0mmの範囲である、請求項1~4のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項6】
前記肉厚が0.1~0.5mmの範囲である、請求項1~5のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項7】
前記ポリマーベースの樹脂が100℃を超えるHDTを有する、請求項1~6のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項8】
前記ポリマーベースの樹脂が100℃を超えて140℃以下の範囲のHDTを有する、請求項1~7のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項9】
前記ポリマーベースの樹脂が40重量%~60重量%の範囲のバイオ由来成分の含量を有する、請求項1~8のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項10】
前記ポリマーベースの樹脂が少なくとも5.0cmのスパイラルフロー流動長を有する、請求項1~9のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項11】
前記ポリマーベースの樹脂が更に、
(i)ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して1900MPaより高い曲げ弾性率;
(ii)乾燥炉の内部において、
10.2cm(4インチ
)のスパンを持つ治具上にスパンの中央上に
3.45MPa(500psi
)の見かけ応力をかけて90℃で68時間水平に配置した長さ
12.7cm(5インチ
)、幅
1.27cm(0.5インチ
)、及び厚さ
0.318cm(0.125インチ
)の寸法を有する成形棒材を用いて測定して12mm未満の曲げクリープ撓み;
(iii)ASTM-D1003にしたがって、249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間において射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも70の透過率;
(iv)249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて25未満のΔE値;又は
(v)ASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも85のL
*色彩値;から選択される特性の少なくとも1つを有する、請求項1~10のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項12】
前記ポリマーベースの樹脂がリストされた
請求項11の(i)~(v)の特性の少なくとも2つを有する、請求項11に記載の射出成形物品。
【請求項13】
前記ポリマーベースの樹脂が可塑剤を含まない、請求項1~12のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項14】
前記ゲート位置がゲート寸法を有するゲートを含み、前記ゲート寸法と前記肉厚との比が(0.5以下):1である、請求項1~13のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項15】
前記ゲート寸法が0.1~0.5mmの範囲である、請求項1~14のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項16】
前記肉厚が0.2~1.0mmの範囲である、請求項1~15のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項17】
前記ポリマーベースの樹脂がセルロースエステルを含む、請求項1~16のいずれかに記載の射出成形物品。
【請求項18】
前記セルロースエステルがCAPである、請求項17に記載の射出成形物品。
【請求項19】
前記ポリマーベースの樹脂がCAPを含み、可塑剤を含まない、請求項18に記載の射出成形物品。
【請求項20】
前記セルロースエステルがCAである、請求項17に記載の射出成形物品。
【請求項21】
前記ポリマーベースの樹脂がCAを含み、1~10重量%の量の可塑剤を含む、請求項20に記載の射出成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、セルロースから誘導されるポリマーベースの樹脂、特に比較的高温の用途のために有用なセルロースエステルの分野に属する。眼鏡フレーム、自動車部品、ハウジング、及び玩具のような、これらの組成物を用いて製造されるプラスチック物品も提供される。
【背景技術】
【0002】
[0002]木材、綿、又はトウモロコシのようなバイオ原料から製造される材料への関心が増加している。木材は、バイオベースの樹脂の食物源としての使用と競合する可能性がないのでトウモロコシよりも好ましい原料である。更に、トウモロコシから製造される通常の材料、例えばポリ乳酸(PLA)は、物理特性に関して限界があり、これによりそれらを用いることができる用途の範囲が制限される。
【0003】
[0003]一定範囲の用途においてポリカーボネート、ナイロン、又はABSのようなエンジニアリングプラスチックと競合することができる物理特性を有するバイオベースの材料を与えることが有益であろう。セルロースアセテート組成物は成形物品のために用いられているが、通常は90℃未満の熱変形温度(HDT)を有する。物品の溶融加工及び成形において用いられる商業的に入手できるセルロースエステルは、通常は、加工を可能にし、成形物品に靱性を与えるために相当量の可塑剤を含む。しかしながら、可塑剤を加えることは、これによってHDTがベースのセルロースエステルと比べて低下し、セルロースエステル材料の使用が約90℃より低いHDTを受け入れることができる用途に限定されるので欠点を有している。また、セルロースエステル成形物品は、使用中に可塑剤の滲出を起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]溶融加工することができるセルロースから誘導されるポリマーベースの樹脂、及びかかる欠点を有しないかかる組成物から製造される物品を提供することができれば有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]驚くべきことに、相当量のバイオベース材料の含量、及び90℃又は95℃を超えるHDTを有するセルロースエステルの組成物を製造することができることが見出された。本発明の幾つかの態様においては、これは、組成物中において可塑剤の量を減少させ、幾つかの態様においては可塑剤の使用を排除することによって、物理特性と、組成物を通常の成形操作で処理する能力の良好なバランスを維持しながら達成することができる。可塑剤を排除することにより、使用中の可塑剤の滲出に関する問題を排除することができる。
【0006】
[0006]石油ベースのエンジニアリング熱可塑性材料から製造される成形物品と同等か又はそれよりも良好な特性を有する成形物品を、バイオベースのプラスチック材料から製造することができることが見出された。より具体的には、これらの成形物品は、90℃より高いか又は95℃より高い熱変形温度(HDT)を有するバイオベースのプラスチック材料から製造される。この上昇したHDTによって、高温環境(即ち、食器洗浄、高温の液体の保持、太陽への曝露等)に耐え、高温の倉庫での貯蔵中又は適度な荷重又は応力下での用途での使用中におけるクリープ及び反りに抵抗し、使用中における寸法安定性の損失を阻止する能力が大きく向上する。
【0007】
[0007]これらのバイオベースのプラスチック材料は、他のエンジニアリング熱可塑性材料よりも良好に成形物品に加工することができ、成形された物品は、他の材料から製造される物品よりも高い剛性を有し、他のバイオプラスチックから製造される物品よりも優れた靱性を有し、他のエンジニアリング熱可塑性材料から製造される物品よりも優れた応力亀裂抵抗を有することができる。
【0008】
[0008]本発明の一形態においては、本発明は、セルロースから誘導されるポリマーベースの樹脂を含む成形物品であって、ポリマーベースの樹脂は、少なくとも90℃、又は少なくとも95℃のHDT、少なくとも20重量%のバイオ由来成分の含量を有し;そして、ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して1900MPaより高い曲げ弾性率;ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して80J/mより高いノッチ付きアイゾッド衝撃強さ;ポリマーベースの樹脂を、238℃のバレル温度、246℃の溶融温度、13.8MPaの成形圧力、0.8mmの金型厚さ、及び12.7mmの金型幅の条件でスパイラルフロー金型を用いて成形した際に少なくとも3.0cmのスパイラルフロー流動長;乾燥炉の内部において、4インチのスパンを持つ治具上にスパンの中央上に500psiの見かけ応力をかけて90℃で68時間水平に配置した長さ5インチ、幅0.5インチ、及び厚さ0.125インチの寸法を有する成形棒材を用いて測定して12mm未満の曲げクリープ撓み;ASTM-D1003にしたがって、249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間において射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも70%の透過率;249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて25未満のΔE値;又はASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも85のL*色彩値;から選択される特性の少なくとも1つを有する上記成形物品に関する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、リストされた特性の少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、1~15重量%、又は1~10重量%、或いは1~9重量%の量の可塑剤を含み、或いは可塑剤を含まない。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は2重量%未満、或いは1重量%未満の可塑剤を含み、或いは可塑剤が加えられていない。
【0009】
[0009]本発明の幾つかの態様においては、成形物品は、射出成形物品、押出成形物品、回転成形物品、圧縮成形物品、ブロー成形物品、射出ブロー成形物品、射出延伸ブロー成形物品、押出ブロー成形物品、シート又はフィルム押出物品、異形押出物品、ガスアシスト成形物品、ストラクチュラルフォーム成形物品、又は熱成形物品から選択することができる。
【0010】
[0010]本発明の幾つかの態様においては、成形物品は、不透明物品、透明物品、シースルー物品、薄肉物品、工業物品(例えば複雑なデザインを有する物品)、高度デザイン仕様を有する物品、入り組んだデザインの物品、通常の成形操作又は条件下では充填するのが困難な金型から製造される物品、着用物品、身体に触れる物品、容器(身体に触れることを意図している材料のための容器を含む)、食品に接触する物品、家庭用物品、一般的な消費者製品、包装物品、医療物品、又はこれらの部品から選択される。
【0011】
[0011]幾つかの態様においては、透明又はシースルー物品は、電子ディスプレイ、電子ディスプレイレンズ又はウィンドウ、電子ディスプレイカバー、眼科用具、眼科用レンズ、眼科用フレーム、サングラス、サングラスレンズ、自動車内装部品、照明器具、LEDライト、照明カバー、ヘッドライトカバー又はエンクロージャー、電気器具部品、運動用品、自動車部品、計装部品、計装カバー、計時装置部品、個人用機器、個人用電子機器、医療機器、個人用保護装置、安全装置、工具、保護具、事務用品、台所用具、台所物品、カトラリー、ガラス器具、バー用品、芸術家用品、装飾用品、包装、又はこれらの部品から選択することができる。
【0012】
[0012]幾つかの態様においては、薄肉物品は、包装物品(例えば、食品容器及び蓋)、自動車又は他の輸送手段用の物品(例えば、自動車の構造部品及び非構造部品の両方)、移動通信機器又は携帯式電子物品(例えば携帯電話のハウジング)、医療物品(例えばシリンジ及びコネクタ)、計算装置用物品(例えばコンピュータハウジング)、電子機器、電子機器部品、事務機器ハウジング、電子機器ハウジング、光コネクタ又は電気コネクタ、電子機器カバー、電子機器のスクリーン、タッチスクリーン、スクリーン又はタッチスクリーン用のカバー、又はこれらの部品から選択することができる。
【0013】
[0013]幾つかの態様においては、工業物品、高度デザイン仕様を有する物品、入り組んだデザインの物品、及び成形するのが困難な物品は、輸送手段又は自動車用部品、電気/電子機器部品、香水又は化粧品の容器、眼科用具、照明器具、計時器具、医療器具、又はこれらの部品から選択することができる。
【0014】
[0014]幾つかの態様においては、着用物品又は身体に触れる物品は、眼鏡フレーム、眼鏡レンズ、サングラスフレーム、サングラスレンズ、ゴーグル、着用電子機器、ヘッドホン、イヤホン、腕時計、個人用機器、個人用電子機器、医療機器、個人用保護機器、安全装置、宝石、ウォータースポーツ用品、又はこれらの部品から選択することができる。
【0015】
[0015]幾つかの態様においては、家庭用物品又は一般的な消費者製品は、台所用品、バー用品、屋外用家具、屋内用家具、家具部品、棚、棚の仕切り板、スラットウォール、玩具、旅行カバン、電気器具、小型電気器具、貯蔵容器、事務用品、浴室用具又は備品、工具、家庭用電子機器、又はこれらの部品から選択することができる。
【0016】
[0016]幾つかの態様においては、包装物品は、包装システム、製品包装、硬質医療包装、容器、薄肉カップ、ビーカー、バケツ、ペール、折り畳み式の箱、クレート、又はこれらの部品から選択することができる。
【0017】
[0017]幾つかの態様においては、医療物品又は用具は、使い捨て用品、シリンジ、管類、装置、計装、取手、医療用包装、医療用容器、ハウジング、又はこれらの部品から選択することができる。
【0018】
[0018]他の形態においては、本発明は、セルロースから誘導されるポリマーベースの樹脂から形成される薄肉体部分を含む射出成形物品であって、薄肉体部分は、
(i)ゲート位置;
(ii)最終充填位置;
(iii)100以上の肉厚に対する流動長の比(ここで、流動長はゲート位置から最終充填位置までで測定される);及び
(iv)約2mm以下の肉厚;
を有し;
ポリマーベースの樹脂は、少なくとも90℃、又は少なくとも95℃のHDT、少なくとも20重量%、又は少なくとも40重量%のバイオ由来成分の含量、及び、ポリマーベースの樹脂を、238℃のバレル温度、246℃の溶融温度、13.8MPaの成形圧力、0.8mmの金型厚さ、及び12.7mmの金型幅の条件でスパイラルフロー金型を用いて成形した際に少なくとも3.0cmのスパイラルフロー流動長;を有する上記射出成形物品に関する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、少なくとも4.0cm、又は少なくとも5.0cmのスパイラルフロー流動長を有する。
【0019】
[0019]射出成形物品の一態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して1900MPaより高い曲げ弾性率;ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して80J/mより高いノッチ付きアイゾッド衝撃強さ;乾燥炉の内部において、4インチのスパンを持つ治具上にスパンの中央上に500psiの見かけ応力をかけて90℃で68時間水平に配置した長さ5インチ、幅0.5インチ、及び厚さ0.125インチの寸法を有する成形棒材を用いて測定して12mm未満の曲げクリープ撓み;ASTM-D1003にしたがって、249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間において射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも70の透過率;249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて25未満のΔE値;又はASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも85のL*色彩値;から選択される少なくとも1つの特性を更に有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、リストされた特性の少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は2重量%未満、又は1重量%未満の可塑剤を含み、或いは可塑剤が加えられていない。
【0020】
[0020]幾つかの態様においては、ゲート位置はゲート寸法を有するゲートを含み、ゲート寸法と肉厚との比は、1:1以下、又は0.5:1以下である。幾つかの態様においては、ゲート寸法は、1.0mm以下、又は0.5mm以下である。幾つかの態様においては、肉厚は、1.5mm以下、又は1.0mm以下、又は0.5mm以下である。
【0021】
[0021]本発明の他の形態においては、本発明は、セルロースから誘導されるポリマーベースの樹脂を含むハウジングであって、ポリマーベースの樹脂は、少なくとも90℃、又は少なくとも95℃のHDT、少なくとも20重量%のバイオ由来成分の含量を有し、そして、ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して1900MPaより高い曲げ弾性率;ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して80J/mより高いノッチ付きアイゾッド衝撃強さ;ポリマーベースの樹脂を、238℃のバレル温度、246℃の溶融温度、13.8MPaの成形圧力、0.8mmの金型厚さ、及び12.7mmの金型幅の条件でスパイラルフロー金型を用いて成形した際に少なくとも3.0cmのスパイラルフロー流動長;乾燥炉の内部において、4インチのスパンを持つ治具上にスパンの中央上に500psiの見かけ応力をかけて90℃で68時間水平に配置した長さ5インチ、幅0.5インチ、及び厚さ0.125インチの寸法を有する成形棒材を用いて測定して12mm未満の曲げクリープ撓み;ASTM-D1003にしたがって、249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間において射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも70の透過率;249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて25未満のΔE値;又はASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも85のL*色彩値;から選択される特性の少なくとも1つを有する上記ハウジングに関する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、リストされた特性の少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は2重量%未満、又は1重量%未満の可塑剤を含み、或いは可塑剤が加えられていない。一態様においては、ハウジングは電子機器ハウジングである。
【0022】
[0022]ここで開示する発明の種々の形態による幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂はセルロースエステルを含む。幾つかの態様においては、セルロースエステルは、全置換度が1.0~3.0の範囲の、CA(セルロースアセテート)、CAP(セルロースアセテートプロピオネート)、CAB(セルロースアセテートブチレート)、又はCAIB(セルロースアセテートイソブチレート)から選択される。一態様においては、セルロースエステルはCAPである。本発明の幾つかの態様においては、CAPは、0~5重量%、0~2重量%、0乃至2重量%未満、0~1重量%の可塑剤を含み、或いは加えられた可塑剤を含まない。
【0023】
[0023]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、セルロースエステル;及び場合によっては可塑剤を含み、可塑剤が存在する場合には、可塑剤は組成物の全重量を基準として20重量%未満で存在し、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D638にしたがって、70℃において50%の相対湿度に4時間かけた1.3cm×12.7cm×0.32cmの棒材を用いて1.82MPaにおいて測定して90℃より高く、又は95℃より高い熱変形温度(HDT)を有し、組成物を260℃のバレル温度、5分の滞留時間で射出成形した際に、重量平均分子量(Mw)の変化は30%未満である。
【0024】
[0024]幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、セルロースエステル、並びに、ポリマーベースの樹脂の機械的及び物理的特性を向上させるのに十分な量の小さな離散粒子の形態の、セルロースエステル中の1種類以上の耐衝撃性改良剤の分散液を含み、耐衝撃性が改良されたセルロースエステル樹脂は溶融加工することができる。
【0025】
[0025]本発明の一態様においては、少なくとも1種類のセルロースエステル、少なくとも1種類の耐衝撃性改良剤、及び場合によっては少なくとも1種類の可塑剤を含むポリマーベースの樹脂が提供される。一態様においては、セルロースエステルはCAPであり、0~1重量%の可塑剤を含む。一態様においては、セルロースエステルはCAPであり、可塑剤を含まない。
【0026】
[0026]本発明の他の態様においては、少なくとも1種類のセルロースエステル、及び少なくとも1種類の耐衝撃性改良剤、並びに少なくとも1種類の可塑剤を含むセルロースエステル組成物が提供される。一態様においては、セルロースエステルはCAであり、1~15重量%の可塑剤を含む。幾つかの態様においては、セルロースエステルはCAであり、1~10重量%、又は1乃至10重量%未満、或いは1~9重量%の可塑剤を含む。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[0027]本発明の一形態においては、本発明は、セルロースから誘導されるポリマーベースの樹脂を含む成形物品であって、ポリマーベースの樹脂は、少なくとも90℃、又は少なくとも95℃のHDT、少なくとも20重量%のバイオ由来成分の含量を有し;そして、ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して1900MPaより高い曲げ弾性率;ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して80J/mより高いノッチ付きアイゾッド衝撃強さ;ポリマーベースの樹脂を、238℃のバレル温度、246℃の溶融温度、13.8MPaの成形圧力、0.8mmの金型厚さ、及び12.7mmの金型幅の条件でスパイラルフロー金型を用いて成形した際に少なくとも3.0cmのスパイラルフロー流動長;乾燥炉の内部において、4インチのスパンを持つ治具上にスパンの中央上に500psiの見かけ応力をかけて90℃で68時間水平に配置した長さ5インチ、幅0.5インチ、及び厚さ0.125インチの寸法を有する成形棒材を用いて測定して12mm未満の曲げクリープ撓み;ASTM-D1003にしたがって、249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間において射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも70の透過率;249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて25未満のΔE値;又はASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも85のL*色彩値;から選択される特性の少なくとも1つを有する上記成形物品に関する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、リストされた特性の少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は2重量%未満、又は1重量%未満の可塑剤を含み、或いは可塑剤が加えられていない。
【0028】
[0028]幾つかの態様においては、本発明は、セルロースから誘導されるポリマーベースの樹脂を含む成形物品であって、ポリマーベースの樹脂は、少なくとも90℃、又は少なくとも95℃のHDT、少なくとも20重量%のバイオ由来成分の含量、ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して80J/mより高いノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有し、そして、ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して1900MPaより高い曲げ弾性率;ポリマーベースの樹脂を、238℃のバレル温度、246℃の溶融温度、13.8MPaの成形圧力、0.8mmの金型厚さ、及び12.7mmの金型幅の条件でスパイラルフロー金型を用いて成形した際に少なくとも3.0cmのスパイラルフロー流動長;乾燥炉の内部において、4インチのスパンを持つ治具上にスパンの中央上に500psiの見かけ応力をかけて90℃で68時間水平に配置した長さ5インチ、幅0.5インチ、及び厚さ0.125インチの寸法を有する成形棒材を用いて測定して12mm未満の曲げクリープ撓み;ASTM-D1003にしたがって、249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間において射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも70の透過率;249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて25未満のΔE値;又はASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも85のL*色彩値;から選択される特性の少なくとも1つを有する成形物品に関する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は2重量%未満、又は1重量%未満の可塑剤を含み、或いは可塑剤が加えられていない。
【0029】
[0029]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D648にしたがって、70℃に4時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて1.82MPaにおいて測定して90℃より高く、又は95℃より高い熱変形温度(HDT)を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、少なくとも95℃、少なくとも100℃、少なくとも105℃、又は少なくとも110℃、或いは少なくとも115℃の熱変形温度(HDT)を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、90℃~140℃、90℃~130℃、90℃~120℃、90℃~110℃、95℃~140℃、95℃~130℃、95℃~120℃、95℃~110℃、95℃~105℃、100℃~140℃、100℃~130℃、100℃~120℃、100℃~110℃、105℃~140℃、105℃~130℃、105℃~120℃、105℃~115℃、105℃~110℃、110℃~140℃、110℃~130℃、110℃~125℃、110℃~120℃、110℃~115℃、115℃~140℃、115℃~130℃、120℃~140℃、120℃~130℃、又は120℃~125℃の範囲の熱変形温度(HDT)を有する。
【0030】
[0030]バイオ由来の製品は、通常はUSDAのバイオ優先プログラムのようなプログラムによって特定される。これらのプログラムは、製品を製造するプラスチック材料中の「新しい炭素」の割合を測定するためにASTM法D6866-16を用いる。「新しい炭素」は、最近成長した植物に由来する炭素である。これは、石油、天然ガス、又は石炭に由来する「古い炭素」と比較される。本発明において用いるセルロースベースのプラスチック中の「新しい炭素」の含量は、通常は40%~60%であり、これはセルロース材料中のセルロース骨格が樹木又は綿に由来することを反映している。
【0031】
[0031]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM法D6866-16にしたがって測定して少なくとも20重量%のバイオ由来成分の含量を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM法D6866-16にしたがって測定して少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%、又は少なくとも35重量%、又は少なくとも40重量%、或いは少なくとも45重量%のバイオ由来成分の含量を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM法D6866-16にしたがって測定して約20~約60重量%、20~50重量%、20~45重量%、25~60重量%、25~50重量%、25~45重量%、30~60重量%、30~50重量%、30~45重量%、35~60重量%、35~50重量%、35~45重量%、40~60重量%、40~50重量%、又は40~45重量%の範囲のバイオ由来成分の含量を有する。
【0032】
[0032]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して1800MPaより高い曲げ弾性率を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して少なくとも1900MPa、少なくとも2000MPa、少なくとも2100MPa、少なくとも2200MPa、少なくとも2300MPa、又は少なくとも2400MPaの曲げ弾性率を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して約1800~約3500MPa、約1900~約3500MPa、約2000~約3500MPa、約2100~約3500MPa、約2200~約3500MPa、約2300~約3500MPa、約2400~約3500MPa、又は約2500~約3500MPaの範囲の曲げ弾性率を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して約1900~約2500MPa、約1900~約2800MPa、又は約1900~約3000MPaの範囲の曲げ弾性率を有する。
【0033】
[0033]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して少なくとも40J/m、又は少なくとも60J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して少なくとも80J/m、少なくとも90J/m、又は少なくとも100J/m、又は少なくとも110J/m、又は少なくとも120J/m、又は少なくとも130J/m、又は少なくとも140J/m、或いは少なくとも150J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して約40J/m~約400J/m、約40J/m~約200J/m、約60J/m~約400J/m、約60J/m~約200J/m、約80J/m~約500J/m、約80J/m~約400J/m、約80J/m~約300J/m、約80J/m~約200J/m、約100J/m~約500J/m、約100J/m~約400J/m、約100J/m~約300J/m、又は約100J/m~約200J/mの範囲のノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有する。
【0034】
[0034]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ポリマーベースの樹脂を、238℃のバレル温度、246℃の溶融温度、13.8MPaの成形圧力、0.8mmの金型厚さ、及び12.7mmの金型幅の条件でスパイラルフロー金型を用いて成形した際に少なくとも3.0cmのスパイラルフロー流動長を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ポリマーベースの樹脂を、238℃のバレル温度、246℃の溶融温度、13.8MPaの成形圧力、0.8mmの金型厚さ、及び12.7mmの金型幅の条件でスパイラルフロー金型を用いて成形した際に少なくとも4cm、又は少なくとも5cmのスパイラルフロー流動長を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ポリマーベースの樹脂を、238℃のバレル温度、246℃の溶融温度、13.8MPaの成形圧力、0.8mmの金型厚さ、及び12.7mmの金型幅の条件でスパイラルフロー金型を用いて成形した際に約3.0cm~約10.0cm、約4.0cm~約10.0cm、約5.0cm~約10.0cm、約4.0cm~約9.0cm、約4.0cm~約8.0cm、約4.0cm~約7.0cm、又は約5.0cm~約7.0cmの範囲のスパイラルフロー流動長を有する。
【0035】
[0035]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、90℃のオーブンの内部に68時間曝露した後に、ASTM-D2990にしたがって、4インチのスパンを持つ治具上に、スパンの中央上に500psiの見かけ応力をかけて水平に配置した長さ5インチ、幅0.5インチ、及び厚さ0.125インチの寸法を有する射出成形棒材を用いて試験して12mm未満、又は11mm未満、或いは10mm未満の曲げクリープ撓みを有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、90℃のオーブンの内部に68時間曝露した後に、4インチのスパンを持つ治具上に、スパンの中央上に500psiの見かけ応力をかけて水平に配置した長さ5インチ、幅0.5インチ、及び厚さ0.125インチの寸法を有する射出成形棒材を用いて試験して2~12mm、又は2~11mm、又は2~10mm、或いは5~10mmの範囲の曲げクリープ撓みを有する。
【0036】
[0036]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D1003にしたがって、249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間において射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも70、又は少なくとも75、又は少なくとも80、又は少なくとも85、又は少なくとも90の透過率を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D1003にしたがって、249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間において射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して70~95、又は75~95、又は80~95、又は85~95、又は70~90、又は75~90、又は80~90、或いは85~90の範囲の透過率を有する。
【0037】
[0037]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて25未満、又は20未満、又は15未満、又は14未満、又は13未満、又は12未満、又は11未満、又は10未満、又は9未満、又は8未満、又は7未満、又は6未満、或いは5未満のΔE値を有し、ここで、ΔEは、次の等式:((L*-100)2+(a*-0)2+(b*-0)2)1/2(式中、L*、a*、b*色成分は、ASTM-E1348にしたがって測定されたものである)によって求められる。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて2~25、又は2~20、又は2~15、又は2~14、又は2~13、又は2~12、又は2~11、又は2~10、又は2~9、又は2~8、又は2~7、又は2~6、又は2~5の範囲のΔE値を有し、ここで、ΔEは、次の等式:((L*-100)2+(a*-0)2+(b*-0)2)1/2(式中、L*、a*、b*色成分は、ASTM-E1348にしたがって測定されたものである)によって求められる。
【0038】
[0038]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも85、又は少なくとも86、又は少なくとも87、又は少なくとも88、又は少なくとも89、又は少なくとも90、又は少なくとも91、又は少なくとも92、又は少なくとも93、又は少なくとも94、或いは少なくとも95のL*色彩値を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して85~98、又は85~97、又は85~96、或いは85~95のL*色彩値を有する。
【0039】
[0039]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して15未満、又は12未満、又は10未満、又は9未満、又は8未満、又は7未満、又は6未満、又は5未満、或いは4未満のb*値を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して0~15、又は0~10、又は0~8、或いは0~5の範囲のb*値を有する。
【0040】
[0040]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、組成物を260℃のバレル温度を用いて5分の滞留時間で射出成形した際に30%未満、又は25%未満、又は20%未満、又は15%未満、或いは10%未満の射出成形による絶対重量平均分子量(Mw)の変化を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、組成物を260℃のバレル温度を用いて5分の滞留時間で射出成形した際に0~30%、又は0~25%、又は0~20%、又は0~15%、又は0~10%、又は2~30%、又は2~25%、又は2~20%、又は2~15%、或いは2~10%の範囲の射出成形による絶対重量平均分子量(Mw)の変化を有する。
【0041】
[0041]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D5296にしたがって、溶媒としてテトラヒドロフラン及び1mL/分の流速を用いて測定して約40,000Da~約200,000Daの範囲の絶対重量平均分子量を有するセルロースエステルを含む。幾つかの態様においては、セルロースエステルは、ASTM-D5296にしたがって、溶媒としてテトラヒドロフラン及び1mL/分の流速を用いて測定して約50,000Da~約200,000Da、又は50,000Da~約170,000Da、又は50,000Da~約120,000Da、又は50,000Da~約90,000Da、又は60,000Da~約200,000Da、又は60,000Da~約170,000Da、又は60,000Da~約120,000Da、又は60,000Da~約90,000Da、又は90,000Da~約170,000Da、又は90,000Da~約120,000Da、又は120,000Da~約170,000Da、或いは120,000Da~約200,000Daの範囲の絶対重量平均分子量を有する。
【0042】
[0042]本発明の幾つかの形態においては、本発明は成形物品に関する。幾つかの態様においては、成形物品は、圧延フィルムの場合のように、一方向において無限(又は連続)であり、他の2つの方向において幅及び厚さが一定の連続押出しフィルムではない。幾つかの態様においては、フィルム又はシートは、例えばカップ若しくはボウルのような三次元物体に熱成形することによって成形物品に変化させることができる。本発明の幾つかの態様においては、成形物品はフィルムではなく、又はシートではない。本発明の幾つかの態様においては、成形物品は、射出成形物品、押出成形物品、回転成形物品、圧縮成形物品、ブロー成形物品、射出ブロー成形物品、射出延伸ブロー成形物品、押出ブロー成形物品、シート又はフィルム押出物品、異形押出物品、ガスアシスト成形物品、ストラクチュラルフォーム成形物品、又は熱成形物品から選択することができる。
【0043】
[0043]本発明によるポリマーベースの樹脂から製造される成形物品は、輸送、電気器具、電子機器、建設及び建築、バイオメディカル、包装、及び消費者市場において用いるために、成形又は押出によって成形することができる。本発明の幾つかの態様においては、成形物品は、透明物品、シースルー物品、薄肉物品、工業物品(例えば複雑なデザインを有する物品)、高度デザイン仕様を有する物品、入り組んだデザインの物品、通常の成形操作又は条件下では充填するのが困難な金型から製造される物品、着用物品、身体に触れる物品、容器(身体に触れることを意図している材料のための容器を含む)、食品に接触する物品、家庭用物品、一般的な消費者製品、包装物品、医療物品、又はこれらの部品から選択される。
【0044】
[0044]幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ペレット、プレート、及びパリソンのような形状に一次成形することができ、或いはその後にシート、薄肉容器、又は厚肉容器に二次成形することもできる。薄肉容器は、トレイ、ブリスターパック等に加工することができ:厚肉容器は、瓶、園芸用容器等に加工することができる。また、ポリマーベースの樹脂は、ホース、パイプ等のような日用品、並びに工業材料;発泡体の形態の緩衝材、農業材料等;ドレイン材料、擁壁、枠組のような工業材料;及び通常の成形体として植物保護材料、並びに容器(飲料、食品、機械製品又は電気製品、農業製品、医薬、又は種苗ポット用);食事用具、ナイフ、フォーク、スプーン、トレイ、壁紙、化粧紙、包装用の紐、枕、及びクッション用の発泡ビーズのような家庭用品;医療用具;ペンのシリンダー部分、ファイル、タックシート、及びCD、電子機器用の保護フィルムなどのような事務用具;カードのような情報媒体材料;屋外用品、ゴルフティーのような運動用品、及び娯楽用品の本体等に加工することができる。
【0045】
[0045]幾つかの態様においては、物品としては、例えば、アウトドア車及び屋外機器のための筺体、ハウジング、パネル、及び部品;電気機器及び電気通信機器のための筺体;屋外用家具;航空機部品;ボート及び船舶用機材(トリム、筐体、及びハウジングを含む);船外機ハウジング;水深計ハウジング;個人用の船艇;ジェットスキー;プール;スパ;ホットタブ;ステップ;ステップカバー;ガラス、屋根、窓、床、装飾窓調度品又は処理材のような建築又は建設用途;絵画、塗装、ポスター、及び同様のディスプレイ用品のための処理ガラスカバー;壁板、及び扉;カウンタートップ;保護グラフィック;屋外及び屋内看板;自動預金支払機(ATM)用の筐体、ハウジング、パネル、及び部品;コンピュータ;デスクトップコンピュータ;ポータブルコンピュータ;ラップトップコンピュータ;ハンドヘルドコンピュータのハウジング;モニター;プリンター;キーボード;FAX機;コピー機;電話機;電話機のベゼル;携帯電話;無線送信機;無線受信機;芝及び園芸用トラクター、芝刈り機、及び用具(芝用具及び園芸用具)のための筐体、ハウジング、パネル、及び部品;窓及び扉のトリム;運動器具及び玩具;スノーモービル用の筐体、ハウジング、パネル、及び部品;レジャー用自動車のパネル及び部品;遊園地器具;靴紐;プラスチック/木材の組合せから製造される物品;ゴルフコースマーカー;排水ピットカバー;照明設備;照明装置;ネットワークインターフェースデバイスハウジング;変圧器ハウジング;空調機ハウジング;公共輸送のためのクラッディング又は座席;鉄道、地下鉄、又はバスのためのクラッディング又は座席;計器ハウジング;アンテナハウジング;衛星放送受信アンテナ用のクラッディング;コーティングされたヘルメット及び個人用保護器具;コーティングされた合成又は天然布帛;塗装されてコーティングされた物品;塗装されて染色された物品;塗装された蛍光物品;塗装されたフォーム物品;及び同様の電気器具;を挙げることができる。
【0046】
[0046]幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂を用いて本発明にしたがって製造することができる物品としては、例えば、自動車、航空機、及び船艇の室外及び室内部品が挙げられる。物品としては、計器パネル、オーバーヘッドコンソール、室内トリム、センターコンソール、パネル、クォーターパネル、ロッカーパネル、トリム、フェンダー、ドア、デッキリッド、トランクリッド、フード、ボンネット、ルーフ、バンパー、ダッシュボード、グリル、マイナーハウジング、ピラーアップリケ、クラッディング、ボディサイドモールディング、ホイールカバー、ハブキャップ、ドアハンドル、スポイラー、ウィンドウフレーム、ヘッドランプベゼル、ヘッドランプ、テールランプ、テールランプハウジング、テールランプベゼル、ナンバープレート筐体、ルーフラック、サーキットブレーカー、電気機器及び電子機器ハウジング、及びランニングボード、自動車用ベゼル、自動車用ヘッドランプレンズ(例えば、アウターヘッドランプレンズ、又はインナーヘッドランプレンズ)、又はヘッドランプレンズ、ヘッドランプ反射板、ベゼル、及びハウジングを含むヘッドランプアセンブリ、或いはこれらの任意の組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0047】
[0047]幾つかの態様においては、ここに記載するより高いHDT及び改良された機械特性を有するセルロースエステルを含むポリマーベースの樹脂を用いる物品としては、自動車室内部品(例えば、ドアハンドル、カップホルダー、ダッシュボード、及びグローブボックス)、電気機器部品、食品及び飲料容器、食品及び飲料容器の蓋、電気機器及び電子機器の筐体(例えば、コンピュータモニターの筐体、ラップトップの筐体、携帯電話の筐体)など、電気機器及び電子機器の筐体(例えば、コンピュータモニターの筐体、ラップトップの筐体、携帯電話の筐体)などを挙げることができる。
【0048】
[0048]物品の更なる例としては、使い捨てのナイフ、フォーク、スプーン、プレート、カップ、ストロー、並びに眼鏡フレーム、歯ブラシの柄部、玩具、自動車用トリム、工具の柄部、カメラ部品、電子機器の部品、かみそりの部品、インクペンのバレル、使い捨て注射器、ボトルなどが挙げられる。一態様においては、本発明の組成物は、プラスチック、フィルム、及びシートとして有用である。幾つかの態様においては、本明細書に記載する組成物は、ボトル、ボトルキャップ、眼鏡フレーム、カトラリー、使い捨てカトラリー、カトラリーの柄部、棚、棚仕切板、電子機器ハウジング、電子機器ケース、コンピューターモニター、プリンター、キーボード、パイプ、自動車部品、自動車内装部品、自動車トリム、看板、熱成形文字、サイディング、玩具、熱伝導性プラスチック、眼科用レンズ、工具、工具の柄部、家庭用品を製造するためのプラスチックとして有用である。他の態様においては、本明細書に記載する組成物は、フィルム、シーティング、成形物品、医療器具、包装材、ボトル、ボトルキャップ、眼鏡フレーム、カトラリー、使い捨てカトラリー、カトラリーの柄部、棚、棚の仕切り板、家具部品、電子機器ハウジング、電子機器ケース、コンピューターモニター、プリンター、キーボード、パイプ、歯ブラシの柄部、自動車部品、自動車内装部品、自動車トリム、看板、屋外看板、天窓、多層フィルム、熱成形文字、サイディング、玩具、玩具部品、熱伝導性プラスチック、眼科用レンズ及びフレーム、工具、工具の柄部、及び家庭用品、ヘルスケア用品、商業飲食サービス用製品、箱、グラフィックアート用途のためのフィルム、及びプラスチックガラス積層体用のプラスチックフィルムとして用いるのに好適である。
【0049】
[0049]本明細書に記載するセルロースエステル組成物は、フィルム、成形物品、及びシーティングを形成するのに有用である。セルロースエステル組成物を、フィルム、成形物品、及びシーティングに成形する方法は、当該技術において公知の方法にしたがうことができる。可能性のある成形物品の例としては、限定なしに、医療器具、医療用包装材、ヘルスケア用品、商業飲食サービス用製品、例えばフードパン、タンブラー及び貯蔵ボックス、ボトル、フードプロセッサー、ブレンダー、及びミキサーボウル、家庭用品、水筒、クリスパートレイ、洗濯機前面部、電気掃除機部品、及び玩具が挙げられる。他の可能性のある成形物品としては、眼科用レンズ及びフレームを挙げることができる。
【0050】
[0050]本発明は更に、本明細書に記載するセルロースエステル組成物を含む1つ又は複数のフィルム及び/又はシートを含む製造物品に関する。幾つかの態様においては、本発明のフィルム及び/又はシートは、当業者に明らかな任意の厚さのものであってよい。
【0051】
[0051]本発明は更に、本明細書に記載する1つ又は複数のフィルム及び/又はシートに関する。セルロースエステル組成物を1つ又は複数のフィルム及び/又はシートに成形する方法としては、当該技術において公知の方法を挙げることができる。本発明の1つ又は複数のフィルム及び/又はシートの例としては、1つ又は複数の押出フィルム及び/又はシート、1つ又は複数のカレンダー加工フィルム及び/又はシート、1つ又は複数の圧縮成形フィルム及び/又はシートが挙げられるが、これらに限定されない。フィルム及び/又はシートを製造する方法としては、押出、圧縮成形、湿式ブロック加工、及び乾式ブロック加工が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
[0052]ここで議論したように、本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は少なくとも1種類のセルロースエステルを含む。
[0053]幾つかの態様においては、本発明において用いるセルロースエステルは当該技術において公知の任意のものであってよい。本発明のために用いることができるセルロースエステルは、一般に構造:
【0053】
【0054】
(式中、R1、R2、及びR3は、独立して、水素、又は2~10個の炭素原子を有する直鎖アルカノイルからなる群から選択される)
の繰り返し単位を含む。セルロースエステルに関しては、置換レベルは通常は無水グルコース単位(AGU)あたりの非OH置換基の平均数である置換度(DS)で表される。一般に、従来のセルロースは、置換することができるそれぞれのAGU単位中に3つのヒドロキシル基を含み;したがってDSは0~3の間の値を有し得る。しかしながら、低分子量セルロース混合エステルは、末端基の寄与のために3よりも僅かに高い全置換度を有し得る。天然のセルロースは、パルプ化及び精製の後においても250~5,000の重合度を有する大型の多糖であり、したがって最大DSは3.0であるという前提はぼぼ正しい。しかしながら、低分子量のセルロース混合エステルのように重合度が低下するにつれて、多糖骨格の末端基は相対的により有意になり、これにより3.0を超える範囲であり得るDSがもたらされる。低分子量セルロース混合エステルは、本明細書において下記でより詳細に議論する。DSは統計平均値であるので、1の値は全てのAGUが単一の置換基を有することを示している訳ではない。幾つかの場合においては、非置換の無水グルコース単位が存在し、幾つかは2つ、幾つかは3つの置換基を有している可能性があり、通常はこの値は非整数である。全DSは、無水グルコース単位あたりの全部の置換基の平均数として定義される。AGUあたりの置換度はまた、例えばヒドロキシル、アセチル、ブチリル、又はプロピオニルのような特定の置換基を指す場合もある。
【0055】
[0054]幾つかの態様においては、用いるセルロースエステルは、セルローストリエステル又は第2級セルロースエステルであってよい。セルローストリエステルの例としては、セルローストリアセテート、セルローストリプロピオネート、又はセルローストリブチレートが挙げられるが、これらに限定されない。第2級セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0056】
[0055]本発明の一態様においては、セルロースエステルは、セルロースアセテート(CA)、セルロースプロピオネート(CP)、セルロースブチレート(CB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースプロピオネートブチレート(CPB)など、又はこれらの組合せから選択することができる。かかるセルロースエステルの例は、米国特許1,698,049;1,683,347;1,880,808;1,880,560;1,984,147;2,129,052;及び3,617,201(本明細書中の記述と矛盾しない範囲でそれらの全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0057】
[0056]本発明の幾つかの態様においては、セルロースエステルは少なくとも2つの無水グルコース環を有し、少なくとも50乃至5,000以下の間の無水グルコース環を有していてよい。分子あたりの無水グルコース単位の数は、セルロースエステルの重合度(DP)として定義される。幾つかの態様においては、セルロースエステルは、フェノール/テトラクロロエタンの重量基準で60/40の溶液100mL中の0.25グラムの試料に関して25℃の温度で測定して、約0.2~約3.0デシリットル/グラム、又は約0.5~約1.8デシリットル/グラム、或いは約1~約1.5デシリットル/グラムのインヘレント粘度(IV)を有してよい。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースプロピオネートブチレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの態様においては、本発明において有用なセルロースエステルは、約2~約2.99のDS/AGUを有していてよく、置換エステルは、アセチル、プロピオニル、及びブチリルのいずれか、又はこれらの任意の組合せを含んでいてよい。本発明の他の態様においては、全DS/AGUは約2~約2.99の範囲であり、アセチルのDS/AGUは約0~2.2の範囲であり、エステル基の残りは、プロピオニル、ブチリル、又はこれらの組合せを含む。
【0058】
[0057]セルロースエステルは、当該技術において公知の任意の方法によって製造することができる。セルロースエステルを製造する方法の例は、Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 5版, vol.5, Wiley-Interscience, New York (2004), pp.394-444において教示されている。セルロースエステルを製造するための出発物質であるセルロースは、中でもコットンリンター、軟木パルプ、硬木パルプ、トウモロコシ繊維、及び他の農業原料物質、及びバクテリアセルロースなどから異なるグレード及び供給源で得ることができる。
【0059】
[0058]セルロースエステルを製造する1つの方法は、セルロースを適当な有機酸、酸無水物、及び触媒と混合することによるセルロースのエステル化である。セルロースは次に、セルローストリエステルに転化させる。次に、セルローストリエステルに水-酸混合物を加えることによってエステルの加水分解を行い、これを次に濾過してゲル粒子又は繊維を除去することができる。次に、混合物に水を加えてセルロースエステルを沈澱させる。次に、セルロースエステルを水で洗浄して反応副生成物を除去し、次に脱水及び乾燥を行うことができる。
【0060】
[0059]加水分解するセルローストリエステルは、2~10個の炭素原子を有するアルカノイルから独立して選択される3つの置換基を有していてよい。セルローストリエステルの例としては、セルローストリアセテート、セルローストリプロピオネート、及びセルローストリブチレート、又はセルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートのようなセルロースの混合トリエステルが挙げられる。これらのセルロースエステルは、当業者に公知の数多くの方法によって製造することができる。例えば、セルロースエステルは、セルロースを、カルボン酸と無水物の混合物中において、H2SO4のような触媒の存在下で不均一アシル化することによって製造することができる。セルローストリエステルはまた、LiCl/DMAc又はLiCl/NMPのような適当な溶媒中に溶解したセルロースの均一アシル化によって製造することもできる。
【0061】
[0060]当業者であれば、セルローストリエステルの商用語は、アシル基によって完全には置換されていないセルロースエステルも包含することを理解する。例えば、Eastman Chemical Company, Kingsport, TN,米国から商業的に入手できるセルローストリアセテートは、通常は約2.85~約2.99のDSを有する。
【0062】
[0061]セルロースをトリエステルにエステル化した後、アシル置換基の一部を加水分解又はアルコリシスによって除去して、第2級セルロースエステルを与えることができる。上述したように、用いる特定の方法によって、アシル置換基の分布はランダム又は非ランダムであり得る。第2級セルロースエステルはまた、限定量のアシル化試薬を用いることによって、加水分解を行わずに直接製造することもできる。このプロセスは、セルロースを溶解する溶媒中で反応を行う場合に特に有用である。これらの方法の全てによって、本発明において有用なセルロースエステルが生成する。
【0063】
[0062]一態様においては、本発明において有用な第2級セルロースエステルは、ASTM-D6474にしたがってゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定して約5,000~約400,000の絶対重量平均分子量(Mw)を有する。CEに関する絶対重量平均分子量の値(Mw)を計算するためには、次の方法を用いる。溶媒はBHT保存料で安定化されたTHFである。THF/セルロースエステル手順のための装置は、次のAgilent 1200シリーズの構成要素;脱気装置、アイソクラティックポンプ、自動サンプラー、カラムオーブン、UV/Vis検出器、及び屈折率検出器から構成される。試験温度は30℃であり、流速は1.0mL/分である。BHT保存料及び10μLのトルエン流速マーカーを有する10mLのTHF中の25mgのセルロースエステルの試料溶液を調製する。注入体積は50μLである。カラムセットは、Polymer Laboratoriesの5μm-PLgel, Guard+Mixed C+Oligoporeである。検出は屈折率による。検量体は、Polymer Laboratoriesからの単分散ポリスチレン標準試料、Mw=580~3,220,000である。ユニバーサル較正パラメーターは次の通り:PS(K=0.0001280及びa=0.7120)並びにCE(K=0.00007572及びa=0.8424)である。上記のユニバーサル較正パラメーターを光散乱及び粘度計によって求めて、正確な重量平均分子量を得る。更なる態様においては、Mwは約15,000~約300,000である。更なる態様においては、Mwは、約10,000~約250,000;約15000~約200000;約20,000~約150,000;約50,000~約150,000;又は約70,000~約120,000の範囲である。
【0064】
[0063]最も通常的な商業的第2級セルロースエステルは、まずセルロースを酸接触不均一アシル化してセルローストリエステルを形成することによって製造される。セルローストリエステルの対応するカルボン酸中の均一な溶液が得られた後、セルローストリエステルを次に所望の置換度が得られるまで加水分解にかける。単離した後、ランダムな第2級セルロースエステルが得られる。即ち、それぞれのヒドロキシルにおける相対置換度(RDS)はほぼ同等である。
【0065】
[0064]本発明において有用である可能性があるセルロースエステルの幾つかの例は、当該技術において公知の技術を用いて製造することができ、Eastman Chemical Company, Kingsport, TN,米国から得ることができ、例えばEastman(登録商標)セルロースアセテートプロピオネートCAP482-20、Eastman(登録商標)セルロースアセテートプロピオネートCAP141-20、Eastman(登録商標)セルロースアセテートブチレートCAB381-20、セルロースアセテートブチレートCAB171-15、及びEastman(登録商標)セルロースアセテートCA398-30である。
【0066】
[0065]幾つかの態様においては、本発明において用いるセルロースエステルはまた、化学官能基を含んでいてもよく、これらは誘導体化、変性、又は官能化セルロースエステルのいずれかとしてここに記載する。官能化セルロースエステルは、セルロースエステルの遊離ヒドロキシル基を、セルロースエステルにグラフトするための1つの連結基、及びセルロースエステルに新しい化学基を与えるための1つの官能基を有する二官能性反応物質と反応させることによって製造することができる。かかる二官能性反応物質の例としては、エステル結合によって連結し、酸官能基を与える無水コハク酸;アルコキシシラン結合によって連結し、メルカプト官能基を与えるメルカプトシラン;及びウレタン結合によって連結し、メタクリレート官能基を与えるイソシアナトエチルメタクリレートが挙げられる。
【0067】
[0066]本発明の一態様においては、官能化セルロースエステルは、セルロースエステルの遊離ヒドロキシル基を、不飽和(二重結合)、カルボン酸、アセトアセテート、アセトアセテートイミド、メルカプト、メラミン、及び長鎖アルキル鎖からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するセルロースエステルを生成する二官能性反応物質と反応させることによって製造される。
【0068】
[0067]本発明の一態様においては、セルロースエステルは、セルロースプロピオネート(CP)、セルロースブチレート(CB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースプロピオネートブチレート(CPB)、セルローストリプロピオネート(CTP)、又はセルローストリブチレート(CTB)から選択することができるが、セルロースアセテート(CA)からは選択されない。
【0069】
[0068]幾つかの態様においては、本発明によるポリマーベースの樹脂は、セルロースエステル、及び場合によっては可塑剤を含み、可塑剤が存在する場合には、可塑剤は樹脂の全重量を基準として20重量%未満で存在し、樹脂は、ASTM-D648にしたがって、70℃に4時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて1.82MPaにおいて測定して約90℃~約140℃の範囲の熱変形温度を有し、樹脂を260℃のバレル温度を用いて5分の滞留時間で射出成形した際の射出成形による絶対重量平均分子量(Mw)の変化は30%未満である。
【0070】
[0069]幾つかの態様において、ポリマーベースの樹脂がセルロースエステル組成物である場合には、樹脂を260℃のバレル温度を用いて5分の滞留時間で射出成形した際の射出成形による重量平均分子量(Mw)の変化は、25%未満、又は20%未満、又は15%未満、或いは10%未満である。幾つかの態様においては、樹脂を260℃のバレル温度を用いて5分の滞留時間で射出成形した際の射出成形による重量平均分子量(Mw)の変化は、0~25%、又は0~20%、又は0~15%、或いは0~10%の範囲である。
【0071】
[0070]幾つかの態様において、ポリマーベースの樹脂がセルロースエステル組成物を含む場合には、成形物品は低い複屈折性を有して、一部のプラスチック(例えばエンジニアリングプラスチック)が偏光を起こす歓迎されないレインボー効果が実質的に排除される。この低い複屈折性により、電子機器スクリーン及び小売り展示に関するユーザーの感覚を向上させることができる。幾つかの態様においては、本発明による成形物品は、PMMAを用いて成形された物品(例えばEvonik CYRO Acrylite H12を用いて製造された物品)に非常に近接していて、ポリエステル(例えば、Eastman Tritan TX1501HF)又はポリカーボネート(例えば、Covestro Markrolon 2458)を用いて成形された物品よりも相当に低い複屈折性を有する。
【0072】
[0071]幾つかの態様においては、塩安定剤をセルロースエステル組成物中に含ませて、加工中においてセルロースエステル組成物を安定化させることができる。塩安定剤のカチオン成分は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、銅、コバルト、マンガン、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、クロム、及び鉄カチオンから選択され;塩安定剤のアニオン成分は、(C6~C20)脂環式カルボン酸、(C6~C20)アルキルカルボン酸、又は(C6~C20)アルケニルカルボン酸である。(C6~C20)脂環式カルボン酸、(C6~C20)アルキルカルボン酸、又は(C6~C20)アルケニルカルボン酸の例としては、ナフテン酸、アビエチン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンプロピオン酸、3-メチル-シクロペンチル酢酸、4-メチルシクロヘキサンカルボン酸、2,2,6-トリメチルシクロヘキサンカルボン酸、2,3-ジメチルシクロペンチル酢酸、2-メチルシクロペンチルプロピオン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸などが挙げられる。塩安定剤の例としては、ナフテン酸ストロンチウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸マグネシウム、アビエチン酸銅、アビエチン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0073】
[0072]一態様においては、セルロースエステル組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.01重量%~約0.5重量%の範囲の塩安定剤を含む。一態様においては、セルロースエステル組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.01重量%~約0.4重量%の範囲の塩安定剤を含む。一態様においては、セルロースエステル組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.01重量%~約0.3重量%の範囲の塩安定剤を含む。一態様においては、セルロースエステル組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.01重量%~約0.2重量%の範囲の塩安定剤を含む。一態様においては、セルロースエステル組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.1重量%~約0.3重量%の範囲の塩安定剤を含む。一態様においては、セルロースエステル組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.01重量%~約0.1重量%の範囲の塩安定剤を含む。
【0074】
[0073]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂には、例えばポリマーベースの樹脂がセルロースエステル組成物である場合には、酸化防止剤及び酸安定剤を含ませることができる。酸化防止剤は、材料の処理中の分解プロセスを妨げるために用いられる化学物質である。酸化防止剤は、一次酸化防止剤及び二次酸化防止剤などの幾つかのクラスに分類される。
【0075】
[0074]「一次酸化防止剤」は、水素移動によってペルオキシド基と反応してラジカルをクエンチすることによって作用する酸化防止剤である。一次酸化防止剤は、一般に、ヒンダードフェノール及び第2級芳香族アミンにおけるように反応性のヒドロキシ又はアミノ基を含む。一次酸化防止剤の例としては、Irganox(登録商標)1010、1076、1726、245、1098、259、及び1425;Ethanox(登録商標)310、376、314、及び330;Evernox(登録商標)10、76、1335、1330、3114、MD1024、1098、1726、120、2246、及び565;Anox(登録商標)20、29、330、70、IC-14、及び1315;Lowinox(登録商標)520、1790、221B46、22M46、44B25、AH25、GP45、CA22、CPL、HD98、TBM-6、及びWSP;Naugard(登録商標)431、PS48、SP、及び445;Songnox(登録商標)1010、1024、1035、1076CP、1135LQ、1290PW、1330FF、1330PW、2590PW、及び3114FF;並びにADK Stab AO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-60、AO-80、及びAO-330;が挙げられる。
【0076】
[0075]一態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として0~約1.0重量%の範囲の一次酸化防止剤を含む。幾つかの態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.1~約1.0重量%、又は約0.2~約1.0重量%、又は約0.3~約1.0重量%、又は約0.4~約1.0重量%、又は約0.5~約1.0重量%、又は約0.6~約1.0重量%、又は約0.7~約1.0重量%、或いは約0.8~約1.0重量%の範囲の一次酸化防止剤を含む。幾つかの態様においては、本組成物は、組成物の全重量を基準として約0.1~約0.8重量%、又は約0.1~約0.6重量%、又は約0.1~約0.4重量%の範囲の一次酸化防止剤を含む。
【0077】
[0076]「二次酸化防止剤」は、しばしばヒドロペルオキシド分解剤と呼ばれる。これらは、ヒドロペルオキシドと反応して、それらをラジカルでない非反応性の熱的に安定な生成物に分解することによって作用する。これらは、しばしば一次酸化防止剤と組合せて用いられる。二次酸化防止剤の例としては、有機リンクラスの化合物(例えば、ホスファイト、ホスホナイト)、及び有機イオウクラスの化合物が挙げられる。これらの化合物のリン原子及びイオウ原子がペルオキシドと反応して、ペルオキシドをアルコールに転化させる。二次酸化防止剤の例としては、Ultranox(登録商標)626;Ethanox(登録商標)368、326、及び327;Doverphos(登録商標)LPG11、LPG12、DP S-680、4、10、S480、及びS-9228;Evernox(登録商標)168及び626;Irgafos(登録商標)126及び168;Weston(登録商標)DPDP、DPP、EHDP、PDDP、TDP、及びTPP;Mark(登録商標)CH302、CH55、TNPP、CH66、CH300、CH301、CH302、CH304、及びCH305;ADK Stab 2112、HP-10、PEP-8、PEP-36、1178、135A、1500、3010、C、及びTPP;Weston 439、DHOP、DPDP、DPP、DPTDP、EHDP、PDDP、PNPG、PTP、PTP、TDP、TLP、TPP、398、399、430、705、705T、TLTTP、及びTNPP;Alkanox(登録商標)240、626、626A、627AV、618F、及び619F;並びにSongnox(登録商標)1680FF、1680PW、及び6280FF;が挙げられる。
【0078】
[0077]幾つかの態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.1~約0.8重量%、又は約0.2~約0.8重量%、又は約0.3~約0.8重量%、又は約0.4~約0.8重量%、又は約0.5~約0.8重量%、或いは約0.6~約0.8重量%の範囲の二次酸化防止剤を含む。幾つかの態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.1~約0.7重量%、又は約0.1~約0.6重量%、又は約0.1~約0.5重量%、又は約0.1~約0.4重量%、或いは約0.1~約0.3重量%の範囲の二次酸化防止剤を含む。幾つかの態様においては、本組成物は、組成物の全重量を基準として約0.3~約0.7重量%、又は約0.3~約0.6重量%の範囲の二次酸化防止剤を含む。
【0079】
[0078]「酸スキャベンジャー」は、ポリマーの処理中に形成される酸を中和する添加剤である。酸スキャベンジャーの例としては、Hycite 713;Kisuma DHT-4A、DHT-4V、DHT-4A-2、DHT-4C、ZHT-4V、及びKW2200;Brueggemann Chemical炭酸亜鉛RAC;Sipax(登録商標)AC-207;ステアリン酸カルシウム;Baerlocher GL 34、RSN、GP、及びLA Veg;Licomont CAV 102;FAClステアリン酸カルシウムDW、PLC、SP、及びWLC;Hangzhou Hitech Fine Chemical:CAST及びZnST;Songstab(登録商標)SC-110、SC-120、SC-130、SM-310、及びSZ-210;Sun Ace SAK-CS、SAK-DSC、SAK-DMS、SAK-DZS、及びSAK-KS;US Zinc酸化亜鉛201、205 HAS、205H、210、及び210E;Drapex(登録商標)4.4、6.8、39、391、392、及び392S;Vikoflex(登録商標)4050、5075、7170、7190、7040、9010、9040、及び9080;Joncryl(登録商標)ADR 4468、及びADR 4400;Adeka CIZER D-32;Epon(登録商標)1001F、1002F、及び1007F;Aralidite(登録商標)ECN 1299、1273、1280、1299、及び9511;Dynamar RC 5251Q;及びNexamite PBO;が挙げられる。
【0080】
[0079]幾つかの態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.2~約2.0重量%、又は約0.4~約2.0重量%、又は約0.6~約2.0重量%、又は約0.8~約2.0重量%、又は約1.0~約2.0重量%、又は約1.2~約2.0重量%、又は約1.4~約2.0重量%、又は約1.6~約2.0重量%、又は約1.8~約2.0重量%の範囲の酸スキャベンジャーを含む。幾つかの態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.2~約1.8重量%、又は約0.2~約1.6重量%、又は約0.2~約1.4重量%、又は約0.2~約1.2重量%、又は約0.2~約1.0重量%、又は約0.2~約0.8重量%、又は約0.2~約0.6重量%、又は約0.2~約0.4重量%の範囲の酸スキャベンジャーを含む。幾つかの態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.4~約1.8重量%、又は約0.6~約1.6重量%、又は約0.8~約1.4重量%、又は約0.8~約1.2重量%の範囲の酸スキャベンジャーを含む。
【0081】
[0080]一態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.1~約0.8重量%の範囲の二次酸化防止剤;及び組成物の全重量を基準として約0.2~約2.0重量%の範囲の酸スキャベンジャーを含む。
【0082】
[0081]一態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0~約1.0重量%の範囲の一次酸化防止剤;組成物の全重量を基準として約0.1~約0.8重量%の範囲の二次酸化防止剤;及び組成物の全重量を基準として約0.2~約2.0重量%の範囲の酸スキャベンジャー;を含む。
【0083】
[0082]一態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0.1~約0.8重量%の範囲の二次酸化防止剤;組成物の全重量を基準として約0.2~約2.0重量%の範囲の酸スキャベンジャー;及び組成物の全重量を基準として0~約15重量%の範囲の耐衝撃性改良剤;を含む。
【0084】
[0083]一態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として約0~約1.0重量%の範囲の一次酸化防止剤;組成物の全重量を基準として約0.1~約0.8重量%の範囲の二次酸化防止剤;組成物の全重量を基準として約0.2~約2.0重量%の範囲の酸スキャベンジャー;及び組成物の全重量を基準として0~約15重量%の範囲の耐衝撃性改良剤;を含む。
【0085】
[0084]本発明の幾つかの態様においては、耐衝撃性改良剤は、セルロースエステル組成物の衝撃強度を増加させることがわかっている任意の材料であってよい。本発明の目的のためには、耐衝撃性改良剤は、その組成の少なくとも一部が室温より低いガラス転移温度(Tg)を有するエラストマーである任意の材料として規定される。Tgは、例えばASTM-D3418にしたがって、TA2100熱分析装置を用い、20℃/分の走査速度を用いて測定することができる。幾つかのクラスの耐衝撃性改良剤がこの記載に合致する。一態様においては、本組成物は更に、組成物の全重量を基準として0~約15重量%の範囲の耐衝撃性改良剤を含む。
【0086】
[0085]一態様においては、耐衝撃性改良剤は、変性ポリオレフィンとして知られるクラスの材料から選択することができる。このクラスにおいては、オレフィンを、ポリマーの結晶化を制限する更なるモノマーと共重合して、室温より低いTgを有する鎖の量を増加させ、弾性率を500MPaより低く低下させている。変性オレフィンの例としては、EMA(例としては、Elvaloy 4051、Lotader 3410、及びLotader 8900が挙げられる)、EBA、EVA(例としては、Levamelt 500、Levamelt 600、Levamelt 700、Levamelt 800、Elvax 40W、Evatane 28-40、Evatane 40-55、Evatane 18-150、Bynel E418、及びBynel 3101が挙げられる)、EEA、EPDM(例としてはRoyaltuf 498が挙げられる)、EPR等が挙げられる。
【0087】
[0086]これらの態様の1つのクラスにおいては、耐衝撃性改良剤は、鎖の少なくとも1つのセグメントが室温より低いTgを有し(軟質セグメントと呼ばれる)、鎖の少なくとも1つのセグメントが室温よりも高いTg又はTmを有する(硬質セグメントと呼ばれる)ブロックコポリマーである。これらのブロックコポリマーはまた、一般に熱可塑性エラストマー(TPE)とも呼ばれる。このクラスのブロックコポリマーの例としては、SBS、SEBS、及びSIS(例としては、Kraton G1657MS、Kraton FG1901G、及びKraton FG1924Gが挙げられる)のようなスチレン系材料;熱可塑性ウレタン(TPU)(例としては、Elastolan 1170Z、Estane 2355、Estane ALR-CL87A、及びEstane ALR-72Aが挙げられる);ポリエステル-エーテルコポリマー(例としては、Ecdel 9966及びHytrel 3078が挙げられる)、又はポリアミド-エーテルコポリマー(例としてはPebax 5533が挙げられる)が挙げられる。
【0088】
[0087]一態様においては、耐衝撃性改良剤は、コア-シェル型耐衝撃性改良剤として知られるエマルジョン形成材料のクラスから選択することができる。一態様においては、耐衝撃性改良剤は、ブタジエン-スチレンコポリマーから形成されるコア、及びメチルメタクリレート-スチレンコポリマーから形成されるシェルを有するメタクリレート-ブタジエン-スチレンのようなMBSコア-シェル型耐衝撃性改良剤である。他の態様においては、耐衝撃性改良剤は、アクリルポリマーから形成されるコア、及びメチルメタクリレート/ブチルアクリレートのようなポリメチルメタクリレートから形成されるシェルを有するアクリル系コア-シェル型耐衝撃性改良剤である。
【0089】
[0088]本発明の一態様においては、コア-シェル型耐衝撃性改良剤は、
(A)約70~約85部の、約15~約35重量%の少なくとも1種類のビニル芳香族モノマーから誘導される単位、及び約65~約85重量%の少なくとも1種類のジオレフィンモノマーから誘導される単位を含むコア;
(B)約8~約14部の、少なくとも1種類のビニル芳香族モノマー又は少なくとも1種類のC1~C4アルキルメタクリレートモノマーを含む内部グラフト段階;
(C)約0.1~約5部の、C1~C8アルキルアクリレート又は多価不飽和架橋剤から選択される少なくとも1種類のモノマーを含む中間シーラー段階;及び
(D)約10~約16部の、少なくとも1種類のC1~C4アルキル(メタ)アクリレートモノマー又は少なくとも1種類のビニル芳香族モノマーを含む外側シェル;
を含んでいてよいMBS耐衝撃性改良剤である。
【0090】
[0089]幾つかの態様においては、MBS耐衝撃性改良剤には、10~70重量%のブタジエンのポリマー又はコポリマー、並びに第1にメチル(メタ)アクリレート及び架橋剤、第2にスチレン、及び第3にメチル(メタ)アクリレートと場合によっては架橋剤のグラフトを含むグラフトポリマー組成物を含ませることができる。
【0091】
[0090]共役ジオレフィン、好ましくはブタジエンと重合させるのに好適なモノマーとしては、アルケニル芳香族化合物、好ましくはビニル芳香族化合物、例えばスチレン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、水素化スチレン;低級(CZ-Cu)アルキルアクリレート、例えばエチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、Z-メチルブチルアクリレート、3-メチルブチルアクリレート、アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、Z-エチルヘキシルアクリレート;低級(C2~C12)アルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル;オレフィンなど;或いは上記の任意のものの組合せを挙げることができる。
【0092】
[0091]好適な架橋剤としては、ジビニルベンゼン;ジ(メタ)アクリレート;ジアクリレート、例えばモノ、ジ、若しくはポリエチレングリコールのジアクリレート;それらの(メタ)アクリレート;ジビニルスルフィド;ジビニルエーテル;ビニルアクリレート;ビニル(メタ)アクリレート;トリビニルベンゼン;トリメチロールプロパン;トリ(メタ)アクリレート;トリアリルシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
【0093】
[0092]一態様においては、MBSコア-シェル型耐衝撃性改良剤に、ブタジエンとスチレンのコポリマー、又はブタジエン、スチレン、及びジビニルベンゼンのターポリマーを含ませることができる。コポリマー基材を構成するモノマーの相対量は変化してよいが、ブタジエン、スチレン、及びジビニルベンゼンの合計の100重量部を基準として、ブタジエン成分は通常は約30~100重量部を構成し、スチレン成分は0~約70重量部を構成してよく、ジビニルベンゼン成分は0~約5重量部を構成してよい。一態様においては、コポリマー基材に、同じ基準で、約50~約90重量部のブタジエン、約10~約50重量部のスチレン、及び0~約5重量部のジビニルベンゼン、又は同じ基準で、約65~約85重量部のブタジエン、約15~約35重量部のスチレン、及び約0.5~約2.0重量部のジビニルベンゼンを含ませることができる。
【0094】
[0093]メタクリレート-ブタジエン-スチレンコアシェルポリマーの例は、特許US-4,446,585、US-5,534,594、及びUS-6,331,580に記載されているものであるが、これらに限定されない。MBSコア-シェル型耐衝撃性改良剤は、KanekaからKane Ace B564として、ArkemaからClearstrengthとして、DowからParaloidとして、及びEvonikからVisiomerとして入手することができる。
【0095】
[0094]この態様の1つのクラスにおいては、耐衝撃性改良剤はABSコア-シェル型耐衝撃性改良剤である。ABSコア-シェル型耐衝撃性改良剤の例としては、ブタジエン-スチレンコポリマーから形成されるコア、及びアクリロニトリル-スチレンコポリマーから形成されるシェルを有するアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンABSコア-シェル型耐衝撃性改良剤が挙げられる。
【0096】
[0095]本発明の一態様においては、コア-シェル型耐衝撃性改良剤は、約75~99.8重量%の(C1~C6)アルキルアクリレート、0.1~5重量%の架橋性モノマー、及び0.1~5重量%のグラフト連結性モノマーを含むモノマー系から重合される第1のエラストマー相約25~95重量%、及びかかるエラストマー相の存在下で重合されるエポキシ基を含まない最終剛性熱可塑性相約75~5重量%を含むアクリル系耐衝撃性改良剤である。
【0097】
[0096]有用なアクリレートの例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートなどである。幾つかの態様においては、アクリレートはn-ブチルアクリレート及びエチルアクリレートである。
【0098】
[0097]アクリルコアシェルポリマーの例は、特許US-3,448,173、US-3,655,825、及びUS-3,853,968に記載されているものであるが、これらに限定されない。好適なアクリル系耐衝撃性改良剤の例は、KanekaからのKane Ace ECO100、ArkemaからのDurastrength、DuPontからのElvaloy及びElvaloy HP、並びにDowからのParaloidである。
【0099】
[0098]一態様においては、耐衝撃性改良剤は比較的中性のpH(例えば、6~8の間、好ましくは6.5~7.5の間のpH)を有する。これは、組成物の溶融加工中にセルロースエステルが分解するのを阻止するのを助けると考えられる。
【0100】
[0099]他の態様においては、耐衝撃性改良剤の屈折率(RI)は、高い透過率及び低い曇り度を有する組成物を与えるのに十分に、セルロースエステルのものに近接している。一態様においては、アクリル系耐衝撃性改良剤は約1.46~1.50のセルロースエステルのRIに近いRIを有していて、透明な組成物を与える。幾つかの態様においては、耐衝撃性改良剤成分とセルロースエステル成分は、約0.006~約-0.0006のRI(第2の成分)-RI(第1の成分)(例えばCEのRI-耐衝撃性改良剤のRI)の屈折率の差を有しており、非混和性のブレンドは、少なくとも75%の透過率%、及び10%以下、より好ましくは5%以下の曇り度を有する。
【0101】
[00100]幾つかの態様においては、耐衝撃性改良剤を更に含む組成物は、少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%の透過率%を有する。この態様の1つのクラスにおいては、耐衝撃性改良剤を更に含む組成物は、10%未満の曇り度%を有する。幾つかの態様においては、耐衝撃性改良剤を更に含む組成物は、8%未満、又は6%未満、又は5%未満の曇り度%を有する。
【0102】
[00101]一態様においては、耐衝撃性改良剤は、非反応性の耐衝撃性改良剤、又は反応性の耐衝撃性改良剤のいずれか、或いは両方の組合せであってよい。幾つかの耐衝撃性改良剤はまた、セルロースエステル組成物の機械的及び物理的特性を向上させることもできると考えられる。
【0103】
[00102]一態様において、非反応性の耐衝撃性改良剤を用いる場合には、耐衝撃性改良剤は、他のポリマー鎖セグメントよりもセルロースエステルと化学的又は物理的により適合性である第1のポリマー鎖セグメントを含む。一態様においては、第1のセグメントは、エーテル、エステル、アミド、アルコール、アミン、ケトン、及びアセタールのような極性官能基など(しかしながらこれらに限定されない)の、セルロースエステルとの適合性を与える極性官能基を含む。適合性は、第2のセグメントに対して優先的な第1のポリマー鎖セグメントとセルロースエステルポリマーとの相互作用によって定義され、分子スケール又はミクロスケールの相互作用を意味し得る。一態様においては、第1のセグメントは、ポリエチレンビニルアセテート;ポリオキシエチレン、又はポリビニルアルコールである。
【0104】
[00103]幾つかの態様においては、第2のセグメントは、飽和又は不飽和のいずれかの炭化水素基であってよく、或いは飽和及び不飽和炭化水素基の両方を含んでいてよい。第2のセグメントは、オリゴマー又はポリマーであってよい。本発明の一態様においては、非反応性耐衝撃性改良剤の第2のセグメントは、ポリオレフィン、ポリジエン、芳香族ポリマー、及びコポリマーからなる群から選択される。芳香族ポリマーの第2のセグメントの例はポリスチレンである。コポリマーの第2のセグメントの例はスチレン/ブタジエンコポリマーである。
【0105】
[00104]非反応性耐衝撃性改良剤の例としては、エトキシル化アルコール、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化脂肪酸、ポリエチレンビニルアセテート、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのブロックポリマー、エチレン/プロピレンターポリマー、官能化ポリオレフィン、ポリグリセロールエステル、多糖エステル、及びソルビタンエステルが挙げられるが、これらに限定されない。エトキシル化アルコールの例は、C11~C15第2級アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びエチレンオキシドでエトキシル化されているC12~C14天然線状アルコールである。C11~C15第2級アルコールエトキシレートは、Dow Chemical CompanyからDow Tergitol(登録商標)15Sとして入手することができる。ポリオキシエチレンセチルエーテル及びポリオキシエチレンステアリルエーテルは、ICI SurfactantsからBrij(登録商標)シリーズの製品で入手することができる。エチレンオキシドでエトキシル化されているC12~C14天然線状アルコールは、Hoechst CelaneseからGenapol(登録商標)シリーズの製品で入手することができる。エトキシル化アルキルフェノールの例としては、オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール及びノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールが挙げられる。オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールは、RhodiaからIgepal(登録商標)CAシリーズの製品として入手することができ、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールは、RhodiaからIgepal COシリーズの製品としてか、或いはDow Chemical CompanyからTergitol(登録商標)NPとして入手することができる。エトキシル化脂肪酸としては、HenkelからNopalcol(登録商標)シリーズの製品で入手することができるポリエチレングリコールモノステアレート又はモノラウレートを挙げることができる。プロピレンオキシドとエチレンオキシドのブロックポリマーは、BASFからPluronic(登録商標)シリーズの製品で入手することができる。ポリグリセロールエステルは、StepanからDrewpol(登録商標)シリーズの製品で入手することができる。多糖エステルは、HenkelからGlucopon(登録商標)シリーズの製品(これはアルキルポリグルコシドである)で入手することができる。ソルビタンエステルは、ICIからTween(登録商標)シリーズの製品で入手することができる。
【0106】
[00105]本発明の他の態様においては、非反応性耐衝撃性改良剤は、セルロースエステル適合性の化合物を反応させることによってセルロースエステル組成物中でin situで合成することができる。これらの化合物は、例えば、それらの反応性末端基によって更なる重合又は他の反応を開始することができるプレポリマーとして定義されるテレケリックオリゴマーであってよい。本発明の一態様においては、これらのin situの耐衝撃性改良剤は、約10,000~約1,000,000のより高い分子量(重量平均分子量Mw)を有し得る。
【0107】
[00106]本発明の他の態様においては、耐衝撃性改良剤は反応性であってよい。反応性の耐衝撃性改良剤には、組成物の1つの成分と適合性のポリマー又はオリゴマー、及び組成物の他の成分と反応することができる官能基を含ませることができる。幾つかの態様においては、用いることができる2つのタイプの反応性耐衝撃性改良剤が存在する。第1の反応性耐衝撃性改良剤は、セルロースエステルと適合性の炭化水素鎖を有し、セルロースエステルと反応することができる官能基も有する。かかる官能基としては、カルボン酸、無水物、酸塩化物、エポキシド、及びイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。このタイプの反応性耐衝撃性改良剤の具体例としては、長鎖脂肪酸、例えばステアリン酸(オクタデカン酸);長鎖脂肪酸塩化物、例えばステアロイルクロリド(オクタデカノイルクロリド);長鎖脂肪酸無水物、例えば無水ステアリン酸(無水オクタデカン酸);エポキシ化油脂エステル;スチレン無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸グラフトポリプロピレン;無水マレイン酸とオレフィン及び/又はアクリル酸エステルのコポリマー、例えばエチレン、アクリル酸エステル、及び無水マレイン酸のターポリマー;並びに、グリシジルメタクリレートとオレフィン及び/又はアクリル酸エステルのコポリマー、例えばエチレン、アクリル酸エステル、及びグリシジルメタクリレートのターポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
[00107]反応性耐衝撃性改良剤は、Sartomer/Cray ValleyからのSMA(登録商標)3000スチレン無水マレイン酸コポリマー、Eastman Chemical CompanyからのEastman G-3015(登録商標)無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、Westlake Chemicalから得られるEpolene(登録商標)E-43無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、Arkemaから得られるエチレン、アクリル酸エステル、及び無水マレイン酸のLotader(登録商標)MAH 8200ランダムターポリマー、エチレン、アクリル酸エステル、及びグリシジルメタクリレートのLotader(登録商標)GMA AX8900ランダムターポリマー、及びエチレン、アクリル酸エステル、及びグリシジルメタクリレートのLotarder(登録商標)GMA AX8840ランダムターポリマーとして入手することができる。
【0109】
[00108]変性ポリオレフィン耐衝撃性改良剤は、Lotader、Fusabond、Elvloy PTW、Lotryl、Elvaloy AC、InterLoyとして入手することができる。
[00109]反応性耐衝撃性改良剤の第2のタイプは、セルロースエステルと適合性の極性鎖を有し、セルロースエステルと反応することができる官能基も有する。これらのタイプの反応性耐衝撃性改良剤の例としては、オレフィン官能基又はチオール官能基を有するセルロースエステル又はポリエチレングリコールが挙げられる。オレフィン官能基を有する反応性ポリエチレングリコール耐衝撃性改良剤としては、ポリエチレングリコールアリルエーテル及びポリエチレングリコールアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。チオール官能基を有する反応性ポリエチレングリコール耐衝撃性改良剤の例としては、ポリエチレングリコールチオールが挙げられる。反応性セルロースエステル耐衝撃性改良剤の例としては、メルカプトアセテートセルロースエステルが挙げられる。
【0110】
[00110]本発明の幾つかの態様においては、セルロースエステル組成物中における耐衝撃性改良剤の量は、セルロースエステル組成物の重量を基準として、約1重量%~約30重量%、又は約1重量%~約15重量%、又は約5重量%~約10重量%、又は約10重量%~約30重量%、或いは約15重量%~約30重量%の範囲であってよい。
【0111】
[00111]本発明の他の態様においては、セルロースエステル組成物は、少なくとも1種類の更なるポリマー成分を、全セルロースエステル組成物を基準として5~95重量%の量で(セルロースエステルとの)ブレンドとして更に含む。更なるポリマー成分の好適な例としては、ナイロン;ポリエステル;ポリアミド;ポリスチレン;他のセルロースエステル、セルロースエーテル;ポリスチレンコポリマー;スチレンアクリロニトリルコポリマー;ポリオレフィン;ポリウレタン;アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー;ポリ(メチルメタクリレート);アクリルコポリマー;ポリ(エーテル-イミド);ポリフェニレンオキシド;ポリ塩化ビニル;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンスルフィド/スルホン;ポリ(エステル-カーボネート);ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリ乳酸;ポリブチレンスクシネート;ポリスルホンエーテル;及び芳香族ジヒドロキシ化合物のポリ(エーテル-ケトン);或いは任意の上記のポリマーの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ブレンドは、溶融ブレンド又は溶液ブレンドのような当該技術において公知の通常の処理技術によって形成することができる。
【0112】
[00112]本発明の一態様においては、組成物に可塑剤を含ませることができる。本発明において用いる可塑剤は、セルロースエステルのガラス転移温度及び/又は溶融粘度を低下させて溶融加工特性を向上させることができる当該技術において公知の任意のものであってよい。可塑剤は、セルロースエステルと共に用いるのに好適な任意の可塑剤であってよい。可塑剤のレベルはセルロースエステルに関する標準(又は通常)の可塑剤レベルよりも低くして;組成物が完全に可塑化したセルロースエステル組成物よりも高いTg(又はHDT)、良好な靱性、及び良好な流動性を有するようにしなければならない。幾つかの態様においては、可塑剤は、セルロースエステル組成物のTg(又はHDT)を、可塑剤を有しない同様の組成物と比べて実質的に減少させない量で存在させる。幾つかの態様においては、Tg(又はHDT)は、可塑剤を含む結果として20%より多く、又は15%より多く、又は10%より多く、又は5%より多く、或いは2%より多く変化(例えば減少)しない。
【0113】
[00113]可塑剤は、モノマー構造又はポリマー構造のいずれかであってよい。一態様においては、可塑剤は、芳香族ホスフェートエステル可塑剤、アルキルホスフェートエステル可塑剤、ジアルキルエーテルジエステル可塑剤、トリカルボン酸エステル可塑剤、ポリマーポリエステル可塑剤、ポリグリコールジエステル可塑剤、ポリエステル樹脂可塑剤、芳香族ジエステル可塑剤、芳香族トリエステル可塑剤、脂肪族ジエステル可塑剤、カーボネート可塑剤、エポキシ化エステル可塑剤、エポキシ化油可塑剤、ベンゾエート可塑剤、ポリオールベンゾエート可塑剤、アジペート可塑剤、フタレート可塑剤、グリコ-ル酸エステル可塑剤、クエン酸エステル可塑剤、ヒドロキシル官能性可塑剤、又は固体の非結晶質樹脂可塑剤からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0114】
[00114]本発明の一態様においては、可塑剤は、次のもの:トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、クレシルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、トリエチルシトレート、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチル-トリ-n-ブチルシトレート、及びアセチル-トリ-n-(2-エチルヘキシル)シトレート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、又はトリエチレングリコールジベンゾエートの少なくとも1つから選択することができる。
【0115】
[00115]本発明の他の態様においては、可塑剤は、次のもの:(i)フタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、コハク酸、安息香酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、酪酸、グルタル酸、クエン酸、又はリン酸の1以上の残基を含む酸残基;及び(ii)約20個以下の炭素原子を含む脂肪族、脂環式、又は芳香族アルコールの1以上の残基を含むアルコール残基;を含むエステルの少なくとも1つから選択することができる。
【0116】
[00116]本発明の他の態様においては、可塑剤は、次のもの:(i)フタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、コハク酸、安息香酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、酪酸、グルタル酸、クエン酸、又はリン酸からなる群から選択される少なくとも1つの酸残基;及び(ii)約20個以下の炭素原子を含む脂肪族、脂環式、又は芳香族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つのアルコール残基;を含むエステルの少なくとも1つから選択することができる。
【0117】
[00117]本発明の他の態様においては、可塑剤はアルコール残基を含んでいてよく、アルコール残基は、次のもの:ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びジエチレングリコールから選択される少なくとも1つである。
【0118】
[00118]本発明の他の態様においては、可塑剤は、次のもの:ベンゾエート、フタレート、ホスフェート、アリーレン-ビス(ジアリールホスフェート)、及びイソフタレートの少なくとも1つから選択することができる。他の態様においては、可塑剤は、ジエチレングリコールジベンゾエート(ここでは「DEGDB」と略称する)を含む。
【0119】
[00119]本発明の他の態様においては、可塑剤は、次のもの:C2~C10二酸残基、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸の残基;並びにC2~C10ジオール残基を含む脂肪族ポリエステルの少なくとも1つから選択することができる。
【0120】
[00120]他の態様においては、可塑剤は、次のC2~C10ジオール:エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ペンチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールの少なくとも1つの残基であってよいジオール残基を含んでいてよい。
【0121】
[00121]本発明の他の態様においては、可塑剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコールのようなポリグリコールを挙げることができる。これらは、低分子量の二量体及び三量体から、高分子量のオリゴマー及びポリマーまでの範囲であってよい。一態様においては、ポリグリコールの分子量は約200~約2000の範囲であってよい。
【0122】
[00122]本発明の他の態様においては、可塑剤は、次のもの:Resoflex(登録商標)R296可塑剤、Resoflex(登録商標)804可塑剤、SHP(ソルビトールヘキサプロピオネート)、XPP(キシリトールペンタプロピオネート)、XPA(キシリトールペンタアセテート)、GPP(グルコースペンタアセテート)、GPA(グルコースペンタプロピオネート)、及びAPP(アラビトールペンタプロピオネート)の少なくとも1つを含む。
【0123】
[00123]本発明の他の態様においては、可塑剤は、(A)約5~約95重量%のC2~C12炭水化物有機エステル(炭水化物は約1~約3の単糖単位を含む);及び(B)約5~約95重量%のC2~C12ポリオールエステル(ポリオールはC5又はC6炭水化物から誘導される)の1以上を含む。一態様においては、ポリオールエステルは、1種類又は複数のポリオールアセテートを含まないか又は含有しない。
【0124】
[00124]他の態様においては、可塑剤は少なくとも1種類の炭水化物エステルを含み、炭水化物エステルの炭水化物部分は、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ラクトース、フルクトース、ソルボース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、及びラフィノースからなる群から選択される1種類以上の化合物から誘導される。
【0125】
[00125]本発明の他の態様においては、可塑剤は少なくとも1種類の炭水化物エステルを含み、炭水化物エステルの炭水化物部分は、α-グルコースペンタアセテート、β-グルコースペンタアセテート、α-グルコースペンタプロピオネート、β-グルコースペンタプロピオネート、α-グルコースペンタブチレート、及びβ-グルコースペンタブチレートの1以上を含む。
【0126】
[00126]他の態様においては、可塑剤は少なくとも1種類の炭水化物エステルを含み、炭水化物エステルの炭水化物部分は、α-アノマー、β-アノマー、又はこれらの混合物を含む。
【0127】
[00127]他の態様においては、可塑剤は、次のもの:プロピレングリコールジベンゾエート、グリセリルトリベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、及びポリエチレングリコールジベンゾエートの少なくとも1つから選択することができる。
【0128】
[00128]本発明の他の態様においては、可塑剤は固体の非結晶質樹脂であってよい。これらの樹脂は、若干量の芳香族又は極性官能基を含んでいてよく、セルロースエステルの溶融粘度を低下させることができる。本発明の一態様においては、可塑剤は、例えばロジン;水素化ロジン;安定化ロジン、及びこれらの単官能性アルコールエステル又はポリオールエステル;マレイン酸及びフェノール変性ロジン及びそれらのエステルなど(しかしながらこれらに限定されない)の変性ロジン;テルペン樹脂;フェノール変性テルペン樹脂;クマリン-インデン樹脂;フェノール樹脂;アルキルフェノール-アセチレン樹脂;及びフェノール-ホルムアルデヒド樹脂;のような固体の非結晶質化合物(樹脂)であってよい。
【0129】
[00129]本発明の他の態様においては、可塑剤は、トリアセチン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルシトレート、アセチルトリメチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリブチル-o-アセチルシトレート、ジブチルフタレート、ジアリールフタレート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジ-2-メトキシエチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジブチルタルトレート、エチルo-ベンゾイルベンゾエート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、n-エチルトルエンスルホンアミド、o-クレシルp-トルエンスルホネート、芳香族ジオール、置換芳香族ジオール、芳香族エーテル、トリプロピオニン、トリベンゾイン、ポリカプロラクトン、グリセリン、グリセリンエステル、ジアセチン、グリセロールアセテートベンゾエート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールジエステル、ジ-2-エチルヘキシルポリエチレングリコールエステル、トリエチレングリコールビス-2-エチルヘキサノエート、グリセロールエステル、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリジノン、C1~C20ジカルボン酸エステル、ジメチルアジペート、ジブチルマレエート、ジオクチルマレエート、レゾルシノールモノアセテート、カテコール、カテコールエステル、フェノール類、エポキシ化大豆油、ヒマシ油、亜麻仁油、エポキシ化亜麻仁油、他の植物油、他の種油、ポリエチレングリコールベースの二官能性グリシジルエーテル、γ-バレロラクトン、アルキルホスフェートエステル、アリールホスフェートエステル、リン脂質、オイゲノール、シンナミルアルコール、樟脳、メトキシヒドロキシアセトフェノン、バニリン、エチルバニリン、2-フェノキシエタノール、グリコールエーテル、グリコールエステル、グリコールエステルエーテル、ポリグリコールエーテル、ポリグリコールエステル、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、ポリプロピレングリコールエステル、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、ナプロキセン、イミダゾール、トリエタノールアミン、安息香酸、ベンジルベンゾエート、サリチル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、プロピル-4-ヒドロキシベンゾエート、メチル-4-ヒドロキシベンゾエート、エチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ベンジル-4-ヒドロキシベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ソルビトール、キシリトール、エチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、トリアジン、トリアゾール、ピロール、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種類の可塑剤である。
【0130】
[00130]セルロースエステル組成物中における可塑剤の量は、セルロースエステル組成物の重量を基準として0~約15重量%の範囲であってよい。一態様においては、この量はセルロースエステル組成物の重量を基準として約15重量%以下の範囲であってよい。他の態様においては、この量はセルロースエステル組成物の重量を基準として約10重量%以下の範囲であってよい。他の態様においては、この量は、セルロースエステル組成物の重量を基準として約5重量%以下、又はセルロースエステル組成物の重量を基準として約3重量%以下、或いはセルロースエステル組成物の重量を基準として2重量%未満の範囲であってよい。
【0131】
[00131]本発明の他の態様においては、本組成物は可塑剤を含まない。一態様においては、セルロースエステル組成物は、CAPであるセルロースエステルを含み、可塑剤を含まない。一態様においては、セルロースエステル組成物は、CABであるセルロースエステルを含み、可塑剤を含まない。
【0132】
[00132]本発明の他の態様においては、組成物は溶融加工可能である。溶融加工性は、一般に、材料をそれらの分解温度より低い温度において熱加工して均一なペレット又はプラスチック物品を得る能力を指す。例えば、記載される組成物は、Werner & Pflerderer30mm二軸押出機において250rpmのスクリュー速度及び240℃のバレル温度を用いて35ポンド/時の処理量で溶融押出することができ、Toyo 110射出成形機において240℃のバレル温度及び160°Fの金型温度を用いて最小の分子量又は退色で射出成形することができる。
【0133】
[00133]本発明の一態様においては、1~30重量%、又は1~15重量%、或いは2~10重量%の耐衝撃性改良剤を含み、可塑剤を含まない、95℃より高い熱変形温度(HDT)の値(ASTM-D648にしたがって、70℃で4時間コンディショニングした後に、1.82MPaの応力レベルにおいて測定)、及び80J/mより高いノッチ付きアイゾッド衝撃強さの値(厚さ3.2mmの棒材についてASTM-D256にしたがって23℃において測定)、並びに本明細書に記載する手順を用いて測定して240℃において少なくとも15インチのスパイラルフロー値を有する溶融加工可能なセルロースエステル組成物が提供される。一態様においては、セルロースエステル組成物は、ASTM-D3418にしたがって20℃/分で測定して120℃より高いTg値を有する。
【0134】
[00134]本発明の他の態様においては、組成物は、ASTM-D4440にしたがって、1rad/秒~400rad/秒の間の振動数スキャンを用いて測定し、Rheometrics動的分析装置(RDA II)のようなプレートプレートメルトレオメーターによって、直径25mmの平行プレート、1mmの間隙、及び10%の歪みを用いて測定して10,000 1/秒以下の240℃及び400rad/秒における溶融粘度を有する。
【0135】
[00135]一態様においては、溶融加工可能なセルロースエステル組成物は、0~30重量%又は0~15重量%の耐衝撃性改良剤、0~15重量%の可塑剤を含み、90℃より高いTgを有する。他の態様においては、溶融加工可能なセルロースエステル組成物は、0~30重量%又は0~15重量%の耐衝撃性改良剤、0~10重量%の可塑剤を含み、100℃より高いTgを有する。更に他の態様においては、溶融加工可能なセルロースエステル組成物は、0~10重量%の耐衝撃性改良剤、0~10重量%の可塑剤を含み、100℃より高いTgを有する。他の態様においては、溶融加工可能なセルロースエステル組成物は、0~10重量%の耐衝撃性改良剤、0~5重量%の可塑剤を含み、115℃より高いTgを有する。
【0136】
[00136]本発明の他の態様においては、セルロースエステル組成物は、耐衝撃性改良剤を導入し、可塑剤を導入しないことによって僅か数℃(例えば5℃未満、又は2℃未満)の下降しか与えないで、ベースのセルロースエステルポリマーのものと同等のTg又は熱変形温度(0.455psiにおけるHDT)を有する。これらの組成物の衝撃特性も、80J/m(23℃におけるノッチ付きアイゾッド衝撃強さ)を超えることができる。
【0137】
[00137]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D648にしたがって、70℃に4時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて1.82MPaにおいて測定して90℃より高く、又は95℃より高い熱変形温度(HDT)を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、少なくとも95℃、少なくとも100℃、少なくとも105℃、又は少なくとも110℃、或いは少なくとも115℃の熱変形温度(HDT)を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、90℃~140℃、90℃~130℃、90℃~120℃、90℃~110℃、95℃~140℃、95℃~130℃、95℃~120℃、95℃~110℃、95℃~105℃、100℃~140℃、100℃~130℃、100℃~120℃、100℃~110℃、105℃~140℃、105℃~130℃、105℃~120℃、105℃~115℃、105℃~110℃、110℃~140℃、110℃~130℃、110℃~125℃、110℃~120℃、110℃~115℃、115℃~140℃、115℃~130℃、120℃~140℃、120℃~130℃、又は120℃~125℃の範囲の熱変形温度(HDT)を有する。
【0138】
[00138]本発明の幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して、少なくとも80J/m、又は少なくとも90J/m、又は少なくとも100J/m、又は少なくとも110J/m、又は少なくとも120J/m、又は少なくとも130J/m、又は少なくとも140J/m、又は少なくとも150J/m、又は少なくとも160J/m、又は少なくとも170J/m、又は少なくとも180J/m、又は少なくとも190J/m、又は少なくとも200J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して、約80J/m~約500J/m、約80J/m~約400J/m、約80J/m~約300J/m、約80J/m~約200J/m、約100J/m~約500J/m、約100J/m~約400J/m、約100J/m~約300J/m、約100J/m~約200J/m、約120J/m~約500J/m、約120J/m~約400J/m、約120J/m~約300J/m、約120J/m~約200J/m、約150J/m~約500J/m、約150J/m~約400J/m、約150J/m~約300J/m、約150J/m~約200J/m、約170J/m~約500J/m、約170J/m~約400J/m、約170J/m~約300J/m、約170J/m~約200J/m、180J/m~約500J/m、約180J/m~約400J/m、約180J/m~約300J/m、約180J/m~約200J/m、190J/m~約500J/m、約190J/m~約400J/m、約190J/m~約300J/m、約190J/m~約200J/m、200J/m~約500J/m、約200J/m~約400J/m、又は約200J/m~約300J/mの範囲のノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有する。
【0139】
[00139]本発明の他の態様においては、セルロースエステル組成物は、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、静電防止剤、増白剤、着色剤、流動助剤、加工助剤、可塑剤、防曇添加剤、無機物、UV安定剤、滑剤、連鎖延長剤、成核剤、強化フィラー、木質又は木粉フィラー、ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、染料、顔料、着色剤、更なる樹脂、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤を更に含む。
【0140】
[00140]幾つかの態様においては、耐衝撃性改良剤、セルロースエステル、及び随意的な可塑剤、並びに任意の添加剤の混合は、耐衝撃性改良剤、可塑剤、及び添加剤をセルロースエステル中に分散させるのに適切である当該技術において公知の任意の方法によって行うことができる。混合装置の例としては、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、ロールミル、及び押出機(一軸又は二軸)が挙げられるが、これらに限定されない。混合中の剪断エネルギーは、装置、ブレードのデザイン、回転速度(rpm)、及び混合時間の組み合わせによって定まる。剪断エネルギーは、耐衝撃性改良剤をセルロースエステル全体に分散させるのに十分でなければならない。
【0141】
[00141]幾つかの態様においては、セルロースエステル、耐衝撃性改良剤、可塑剤、及び添加剤は、プロセス中に任意の順番で混合することができる。一態様においては、セルロースエステルを耐衝撃性改良剤及び/又は可塑剤と前もって混合する。次に、耐衝撃性改良剤及び/又は可塑剤を含むセルロースエステルを添加剤と混合する。本発明の他の態様においては、反応性耐衝撃性改良剤を用いる場合には、まず反応性耐衝撃性改良剤をセルロースエステルと混合することができ、次に他の成分を加える。
【0142】
[00142]本発明の幾つかの態様においては、セルロースエステル組成物は、セルロースエステル組成物の全重量を基準として2重量%~15重量%の耐衝撃性改良剤を含み、95℃より高いHDT値、及び80J/mより高いノッチ付きアイゾッド衝撃強さの値、並びに240℃及び400rad/秒において10,000Pより高い粘度を有する。
【0143】
[00143]他の態様においては、約2~約2.99の範囲の全DS/AGUを有し、アセチルのDS/AGUは約0~約2.2の範囲であり、エステル基の残りはプロピオニル、ブチリル、又はこれらの組合せを含むセルロースエステル組成物が提供される。
【0144】
[00144]他の態様においては、上記に記載の溶融加工可能なセルロースエステル組成物は、場合によっては多少の可塑剤を含む。幾つかの態様においては、可塑剤は、セルロースエステル組成物のHDTを、可塑剤を有しない同様の組成物と比べて実質的に減少させない量で存在させる。幾つかの態様においては、HDTは、可塑剤を含む結果として10%より多く、又は5%より多く、或いは2%より多く変化(例えば減少)しない。
【0145】
[00145]一形態においては、本発明は、セルロースから誘導されるポリマーベースの樹脂から形成される薄肉体部分を含む射出成形物品であって、薄肉体部分は、
(i)ゲート位置;
(ii)最終充填位置;
(iii)100以上の肉厚に対する流動長の比(ここで、流動長はゲート位置から最終充填位置までで測定される);及び
(iv)約2mm以下の肉厚;
を有し;
ポリマーベースの樹脂は、少なくとも90℃、又は少なくとも95℃のHDT、少なくとも20重量%、又は少なくとも40重量%のバイオ由来成分の含量、及び、ポリマーベースの樹脂を、238℃のバレル温度、246℃の溶融温度、13.8MPaの成形圧力、0.8mmの金型厚さ、及び12.7mmの金型幅の条件でスパイラルフロー金型を用いて成形した際に少なくとも3.0cmのスパイラルフロー流動長;を有する上記射出成形物品に関する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、少なくとも4.0cm、又は少なくとも5.0cmのスパイラルフロー流動長を有する。
【0146】
[00146]射出成形物品の一態様においては、ポリマーベースの樹脂は更に、ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して1900MPaより高い曲げ弾性率;ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して80J/mより高いノッチ付きアイゾッド衝撃強さ;乾燥炉の内部において、4インチのスパンを持つ治具上にスパンの中央上に500psiの見かけ応力をかけて90℃で68時間水平に配置した長さ5インチ、幅0.5インチ、及び厚さ0.125インチの寸法を有する成形棒材を用いて測定して12mm未満の曲げクリープ撓み;ASTM-D1003にしたがって、249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間において射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも70の透過率;249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて25未満のΔE値;又はASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも85のL*色彩値;から選択される少なくとも1つの特性を有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、リストされた特性の少なくとも2つ、又は少なくとも3つを有する。幾つかの態様においては、ポリマーベースの樹脂は、5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は2重量%未満、又は1重量%未満の可塑剤を含み、或いは可塑剤が加えられていない。
【0147】
[00147]「肉厚」とは、他に規定していない限りにおいて薄肉体部分の平均肉厚を意味する。一態様においては、肉厚は、成形物品全体の平均肉厚であってよい。一態様においては、肉厚は実質的に一定である。
【0148】
[00148]「ゲート位置」とは、射出成形するポリマーが射出成形プロセス中に金型に導入されるゲートが配置されている位置である。例えば、サイドゲート、スポークゲート、ピンゲート、サブマリンゲート、フィルムゲート、ディスクゲート、又はこれらの任意の組合せのような種々のタイプのゲートを、成形物品を製造するために用いることができる。
【0149】
[00149]「最終充填位置」とは、射出成形中にポリマーを充填することが意図されるゲート位置から最も離れた金型キャビティ内の位置である。
[00150]「ゲート寸法」は、それが円形のゲートである場合にはゲートの開口の直径である。非円形のゲート開口に関しては、これは有効径、又は開口の最も小さな寸法である。
【0150】
[00151]幾つかの態様においては、ゲート位置はゲート寸法を有するゲートを含み、ゲート寸法と肉厚との比は、1:1以下、又は0.9:1以下、又は0.8:1以下、又は0.7:1以下、又は0.6:1以下、又は0.5:1以下である。幾つかの態様においては、ゲート位置はゲート寸法を有するゲートを含み、ゲート寸法と肉厚との比は、1:1~0.1:1、又は0.9:1~0.1:1、又は0.8:1~0.1:1、又は0.7:1~0.1:1、又は0.6:1~0.1:1、又は0.5:1~0.1:1の範囲である。
【0151】
[00152]幾つかの態様においては、ゲート寸法は、1.0mm以下、又は0.9mm以下、0.8mm以下、又は0.7mm以下、0.6mm以下、又は0.5mm以下である。幾つかの態様においては、肉厚は、1.9mm以下、又は1.8mm以下、1.7mm以下、又は1.6mm以下、1.5mm以下、又は1.4mm以下、又は1.3mm以下、1.2mm以下、又は1.1mm以下、1.0mm以下、又は0.9mm以下、0.8mm以下、又は0.7mm以下、0.6mm以下、又は0.5mm以下である。
【0152】
[00153]幾つかの態様においては、肉厚に対する流動長の比は、少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも200、又は少なくとも250、又は少なくとも300、又は少なくとも350、又は少なくとも400、又は少なくとも450、或いは少なくとも500であり、ここで流動長はゲート位置から最終充填位置までで測定される。幾つかの態様においては、肉厚に対する流動長の比は、100~1500、又は100~1250、又は100~1000、又は100~750、又は150~1500、又は150~1250、又は150~1000、又は150~750、又は200~1500、又は200~1250、又は200~1000、又は200~750、又は250~1500、又は200~1250、又は200~1000、又は250~750、又は300~1500、又は300~1250、又は300~1000、又は300~750、又は350~1500、又は350~1250、又は350~1000、又は350~750、又は400~1500、又は400~1250、又は400~1000、又は400~750、又は450~1500、又は450~1250、又は450~1000、又は450~750、又は500~1500、又は500~1250、又は500~1000、又は500~750の範囲であり、ここで流動長はゲート位置から最終充填位置までで測定される。
【0153】
[00154]本発明の幾つかの態様においては、成形物品は、約1.0ミリメートル未満の肉厚に関しては約450~約1500の比のような450を超える肉厚に対する流動長の比;約0.75ミリメートル未満の肉厚に関しては約350~約1250の比のような約350を超える比;約0.5ミリメートル未満の肉厚に関しては約300~約1000の比のような約200を超える比;約1ミリメートル未満の肉厚に関しては約200~約1000の比のような約200を超える比;約0.375ミリメートル未満の肉厚に関しては約250~約750の比のような約200を超える比;そして約0.25ミリメートル未満の肉厚に関しては約150~約500の比のような約150を超える比;を有する。
【0154】
[00155]幾つかの態様においては、射出成形物品を形成するポリマーベースの樹脂は、ここで議論した任意のセルロースエステル組成物から選択される。一態様においては、樹脂は、CAP、二次酸化防止剤、及び酸スキャベンジャーを含むセルロースエステル組成物であり、95℃より高いHDTを有する。一態様においては、このセルロースエステル組成物は更に、1~30重量%の耐衝撃性改良剤、2重量%未満の可塑剤(又は可塑剤は含まない)、及び5重量%未満、又は2重量%未満の任意の他の添加剤を含む。
【0155】
[00156]本発明はその好ましい態様の下記の実施例によって更に示すことができるが、これらの実施例は単に例示の目的のために含めるものであり、他に具体的に示していない限りにおいて発明の範囲を限定することは意図しないことが理解される。
【実施例】
【0156】
[00157]本発明は、その態様の下記の実施例によって更に示すことができる。これらの実施例は単に例示の目的のために含めるものであり、他に具体的に示していない限りにおいて発明の範囲を限定することは意図しない。
【0157】
[00158]略号:
[00159]Exは実施例であり;CAはセルロースアセテートであり;CABはセルロースアセテートブチレートであり;CAPはセルロースアセテートプロピオネートであり;%Hは曇り度であり;%Tは透過率%であり;Mwは絶対重量平均分子量であり、ΔMw%は絶対重量平均分子量の変化率であり;%Hは曇り度%であり;RHは相対湿度であり;℃は摂氏温度であり;minは分であり;°Fは華氏温度であり;Comp.Ex.は比較例であり;Pzは可塑剤であり;Antioxは酸化防止剤であり;SNMOはAKCROSTAB AN-MOであり;Tempは温度であり;minは分であり;NPPPはWESTONネオペンチルフェニルホスファイトであり;Primは一次であり;IMは耐衝撃性改良剤であり;Scavはスキャベンジャーであり;Stabは安定剤であり;CEはセルロースエステルであり;ozはオンスであり;in/secはインチ/秒であり;sec又はsは秒であり;psiはポンド/平方インチであり;BSPはバレル設定点であり;RTは滞留時間である。
【0158】
[00160]組成物を製造するための基本手順:
[00161]これらの実施例は、セルロースエステル粉末を、安定剤、耐衝撃性改良剤、及び可塑剤のような添加剤と、室温においてHobartミキサー内で20分間予め混合することによって調製した。
【0159】
[00162]実施例1:
[00163]実施例1は、Eastman(登録商標)CAP482-20(18.484ポンド、92.42重量%)、ECO 100(1.2ポンド、6.0重量%)、IRGANOX 1010(0.05ポンド、0.25重量%)、IRGAFOS 168(0.066ポンド、0.33重量%)、DRAPEX 4.4(0.194ポンド、0.97重量%)、SNMO(0.0006ポンド、0.03重量%)を、室温においてHobartミキサー内で20分間混合することによって調製した。
【0160】
[00164]表1において実施例で示す重要な特性に対する異なる安定剤の効果を求めるために、一連の組成物を調製した。これらの実施例のために用いたベース材料はEastman(登録商標)CAP482-20であった。
【0161】
[00165]
【0162】
【0163】
[00166]比較例1は、CAP482-20から製造された通常の可塑化CE配合物であり、低いHDTのために比較例である。比較例2は、上記に開示した手順を適合させることによって調製したものであり、低いΔE及び/又は高い透過率が必要な本発明の幾つかの態様に対する比較例である。これらの比較例のために用いたベース材料はEastman(登録商標)CAP482-20であった。
【0164】
[00167]
【0165】
【0166】
[00168]ペレットの製造:
[00169]予め混合した材料(実施例1~13及び比較例1~4)を、次にDavis-Standard32mm押出機のスロート中に供給し、Eastman(登録商標)CAP482-20ベースの組成物に関して、300rpmのスクリュー速度及び225℃のバレル温度で40ポンド/時の処理量で混合してペレットを製造した。
【0167】
[00170]プラークの製造:
[00171]混合された材料のペレットを、6.7オンスのバレル容量を有する150トンToyo射出成形機内において、1インチ/秒の射出速度で、249℃(480°F)又は260℃(500°F)のみかけバレル温度、2分又は5分の滞留時間、及び80℃の金型温度を用いて、ショットあたり2つの4インチ×4インチ×0.126(10.2cm×10.2cm×0.32cm)のプラークに射出成形した。
【0168】
[00172]試験棒材の製造:
[00173]混合された材料のペレットを射出成形して、0.5インチ×5インチ×0.125インチ(1.27cm×12.7cm×0.3cm)の標準試験棒材を形成した。ペレットは、3.4オンスのバレル容量を有する110トンToyo射出成形機内で成形した。通常は、混合された材料を、249℃(480°F)のみかけバレル温度及び80℃の金型温度を用いて、1インチ/秒の射出速度でショットあたり4つの試験棒材に射出成形する。
【0169】
[00174]試験方法:
[00175]試料は、標準規格ASTM試験法を用い、下記に示すいずれかの特別な条件を用いて評価した。
【0170】
[00176]
【0171】
【0172】
[00177]スパイラルフロー:
[00178]厚さ3.2mmの棒材:
[00179]32mmのスクリュー径を有する、110トンの型締力を有する往復スクリュー式射出成形機に、幅0.50インチ×深さ0.125インチ×長さ60.00インチの寸法を有するらせん形状のキャビティを有する水冷コールドランナー金型を取り付けた。キャビティに、0.400インチのみかけ直径及び3°のテーパーを有する長さ3.5インチのコールドスプルー、次に0.30インチのみかけ直径を有する長さ1.0インチのコールドランナー、次に幅0.25インチ×厚さ0.050インチ×長さ0.10インチの長方形のゲートを通して供給した。実験の範囲に関して制御された変数には、樹脂の乾燥、射出ユニットバレル温度、金型温度、当初射出速度、射出圧力限界、スクリュー回転速度、及びスクリューリカバリーに関する背圧、射出時間、及びサイクル時間が含まれた。
【0173】
[00180]それぞれの変数の組合せに関して、応答には、実際の溶融温度、及びらせん形状のキャビティ内の溶融体の移動距離(ランナー及びゲートを除く)が含まれた。射出プロセスは、それぞれの条件の組(通常は10~15ショット)において安定化することができ、次に報告された平均流動長に関して10の成形試験片が回収された。
【0174】
[00181]全ての材料は、圧力制御を用い、80°Fの金型温度、1インチ/秒の当初射出速度、1000psiの射出ユニット圧力限界、10秒の射出時間、38秒のサイクル時間、0.1インチの最大クッション、150rpmのスクリューリカバリー回転速度、及び100psiのスクリューリカバリー背圧を用いて成形した。
【0175】
[00182]厚さ0.8mmの棒材:
[00183]32mmのスクリュー径を有する、110トンの型締力を有する往復スクリュー式射出成形機に、幅0.50インチ×深さ0.030インチ×長さ60.00インチの寸法を有するらせん形状のキャビティを有する水冷コールドランナー金型を取り付けた。キャビティに、0.400インチのみかけ直径及び3°のテーパーを有する長さ3.5インチのコールドスプルー、次に0.30インチのみかけ直径を有する長さ1.0インチのコールドランナー、次に幅0.25インチ×厚さ0.030インチ×長さ0.10インチの長方形のゲートを通して供給した。実験の範囲に関して制御された変数には、樹脂の乾燥、射出ユニットバレル温度、金型温度、当初射出速度、射出圧力限界、スクリュー回転速度、及びスクリューリカバリーに関する背圧、射出時間、及びサイクル時間が含まれた。
【0176】
[00184]それぞれの変数の組合せに関して、応答には、実際の溶融温度、及びらせん形状のキャビティ内の溶融体の移動距離(ランナー及びゲートを除く)が含まれた。射出プロセスは、それぞれの条件の組(通常は10~15ショット)において安定化することができ、次に報告された平均流動長に関して10の成形試験片が回収された。
【0177】
[00185]全ての材料は、圧力制御を用い、120°F(49℃)の金型温度、1インチ/秒の当初射出速度、2000psiの射出ユニット圧力限界、5秒の射出時間、32秒のサイクル時間、0.2インチの最大クッション、150rpmのスクリューリカバリー回転速度、及び100psiのスクリューリカバリー背圧を用いて成形した。
【0178】
[00186]試験結果:
[00187]下記の表4における結果(実施例1~13及び比較例2~4)は、混合した材料のペレットから成形した4インチ×4インチのプラークを用いて得た。射出成形条件、並びに得られたプラークの色彩値(L*、a*、b*)、%H、及び%Tを与える。ペレット段階及びプラーク段階において成形した後におけるセルロースエステルのMwを、%ΔMw(ペレットからプラークへの変化率)と一緒に与える。
【0179】
[00188]
【0180】
【0181】
【0182】
[00189]表5に、比較例1、3、及び4、並びに実施例2、3、12、及び13に関するノッチ付きアイゾッド、熱変形温度、及び曲げ弾性率を与える。
[00190]
【0183】
【0184】
[00191]表6に、実施例12~13及び比較例3に関するスパイラルフローデータを与える。
[00192]
【0185】
【0186】
[00193]ESCR:背面衝撃における特性保持:
[00194]試験は、それぞれ5.0インチ、0.5インチ、及び0.125インチの長さ、幅、及び厚さを有する射出成形曲げ試験棒材を用いて行った。棒材は、23℃/50%RHにおいて最小で72時間コンディショニングした。棒材を、定歪み試験治具又は3点曲げ治具中に1.5%の歪みで締着し、低粘度又は揮発性の材料に関しては湿潤パッチ法を用いて化学試薬に曝露し、高粘度材料に関しては直接塗布した。試薬を、棒材のエジェクタピンマークを有しない側の上に施し、棒材を取り付けた歪み試験治具を、23℃のみかけ温度においてポリエチレンバッグ内に24時間密封し、その後、棒材を綺麗に拭き取って、歪み試験治具から取り外した。
【0187】
[00195]棒材を、歪み試験治具から取り外した後の24~96時間以内に、23℃において背面衝撃に関して試験した。試験装置は、15ジュールのハンマーを取り付けたCEAST Pendulum衝撃試験装置であった。棒材を、2インチのスパンの治具内に、化学物質に曝露されてない側をハンマーに向けて配置した。化学物質に曝露した4つの棒材に加えて、4つの対照の棒材(歪みなし、化学物質曝露なし)を衝撃試験した。対照の棒材と化学物質に曝露した棒材の間の結果の比較を用いて、元の衝撃エネルギーの保持率%を計算した。
【0188】
[00196]
【0189】
【0190】
[00197]ESCR:引張試験における特性の保持:
[00198]試験は、それぞれ8.5インチ、0.5インチ、及び0.125インチの長さ、中央幅、及び厚さを有する射出成形引張試験棒材を用いて行った。棒材は、23℃/50%RHにおいて最小で72時間コンディショニングした。棒材を、定歪み試験治具中に1.0%の歪みで締着し、低粘度又は揮発性の材料に関しては湿潤パッチ法を用いて化学試薬に曝露し、高粘度材料に関しては直接塗布した。試薬を棒材のエジェクタピンマークを有しない側の上に施した後、棒材を取り付けた歪み試験治具を、23℃のみかけ温度においてポリエチレンバッグ内に24時間密封し、その後、棒材を綺麗に拭き取って、歪み試験治具から取り外した。
【0191】
[00199]棒材を、歪み試験治具から取り外した後の24~96時間以内に、23℃において引張特性に関して試験した。試験装置は、10kNのロードセルを取り付けたInstron引張試験機であった。棒材を、把持部の間に4.5インチのスパンを取って把持部内に配置し、最初の0.03インチに関しては0.2インチ/分、引張の残りに関しては2.0インチ/分で破断するまで引っ張った。化学物質に曝露した5つの棒材に加えて、5つの対照棒材(歪みなし、化学物質への曝露なし)を引張試験した。対照の棒材と化学物質に曝露した棒材の間の結果の比較を用いて、元の破断強さ及び破断伸びの保持率%を計算した。
【0192】
[00200]
【0193】
【0194】
[00201]曲げクリープ撓み:
[00202]長さ5インチ、幅0.5インチ、及び厚さ0.125インチの寸法を有する射出成形曲げ試験棒材を、ASTM-D2990の試験手順にしたがって、オーブンの内部において、4インチのスパンを持つ治具上に水平に配置した。重りをスパンの中央においてそれぞれの棒材から吊下し、質量は曲げ試験棒材上に500psiのみかけの応力が与えられるように選択した。
【0195】
[00203]重りを吊下した棒材を、規定の時間の間、オーブン内に曝露した状態に放置した。曝露が完了した後、棒材から重りを取り外し、棒材を周囲空気中で室温に冷却し、4インチのフリースパンの撓みに関して測定した。
【0196】
[00204]
【0197】
【0198】
[00205]含水試験における寸法変化:
[00206]長さ5インチ、幅0.5インチ、及び厚さ0.125インチの寸法を有する射出成形曲げ試験棒材を、85℃の脱イオン水中に310時間浸漬して最大吸水を達成した。浸漬の前に、棒材を23℃/50%RHにおいて48時間コンディショニングした。
【0199】
[00207]水浸漬の前後に棒材の重量及び寸法を測定して、長さにおける変化%を計算した。それぞれの試験に関して3つの試験棒材の平均を記録した。
[00208]
【0200】
【0201】
[00209]表11~15における実施例14~39は、次のようにして調製した。まず、ドラムタンブラー内で、セルロース粉末を、1%のエポキシ化オクチルタレート安定剤と一緒に、Kaneka CorporationからのKaneAce B564-MBS耐衝撃性改良剤、又はKaneka CorporationからのKaneAce ECO100アクリル耐衝撃性改良剤のいずれかと前もって混合した。
【0202】
[00210]次に、前もって混合した材料を、Werner & Pflerderer 30mm二軸押出機において、35ポンド/時の処理量で、250rpmのスクリュー速度、及びCAP 482ベースの組成物に関しては220℃のバレル温度、CA及びCAP 141-20ベースの組成物に関しては240℃のバレル温度において混合した。
【0203】
[00211]次に、混合した材料を、Toyo110トン射出成形機において、240℃のバレル温度及び70℃の金型温度を用いて厚さ3.2mm×幅12.8mmの棒材に射出成形した。
【0204】
[00212]実施例において用いたセルロースエステル材料は、Eastmanの製品のCAP 482-20、CAP-482-0.5、及びCAP 141-20から選択した。(実施例14~39に関する)試料は、HDT試験の前に70℃のオーブン内に5時間配置することによってコンディショニングしたことを除いて上記で議論したように、ASTM法D648にしたがって成形棒材について熱変形温度(HDT)を求めた。
【0205】
[00213]実施例14~39に関する材料の組成及び特性を表11~15に示す。
[00214]
【0206】
【0207】
[00215]
【0208】
【0209】
[00216]
【0210】
【0211】
[00217]
【0212】
【0213】
[00218]
【0214】
【0215】
表11~15を検討すると、実施例15~36及び38~39は、耐衝撃性改良剤を含まない実施例14及び37よりも高い靱性を有することが示される。
[00219]実施例26の溶融加工性:
[00220]スパイラルフロー試験を用いて、上表12からの実施例26の流動挙動を通常のプラスチック材料と比較した。スパイラルフロー試験は、Toyo110トン成形機を用い、1000psiの射出圧力、1.0インチ/秒の射出速度、10秒の充填時間、150rpmのスクリュー速度、100psiの背圧、22秒の冷却時間を用いて、幅0.5インチ×厚さ0.125インチのスパイラルフロー金型に溶融した材料を充填して行った。流動長は、同じ成形条件下で特定のバレル温度において成形されたそれぞれの材料のスパイラルの長さである。
【0216】
[00221]まず、スパイラルフローを実施して、幾つかのポリマー材料の流動長の値を求めた。用いた材料は、CovestroからのMakrolon 2458ポリカーボネート(PC)、INEOSからのLustran SAN31(スチレン-アクリロニトリル又はSAN)、及びINEOSからのTerluran GP22NR-ABSであった。これらの材料を、下表16に示す加工温度で試験した。
【0217】
[00222]上記で議論した材料に加えて、実施例26及び比較例3に関してスパイラルフローを求めた。これらの材料は、表16に示す加工温度で試験した。
[00223]
【0218】
【0219】
[00224]表16を検討すると、商業材料の流動長の値は10~30インチの間であることが分かる。実施例26のスパイラルフローは、この組成物が非常に良好な流動性(ABS及びSANと同等で、PCよりも良好)を有することを示しており、本発明の実施例は射出成形及び他のプロセスで溶融加工することができることが示される。比較例3(CAPで完全可塑化したが、耐衝撃性改良剤は用いなかった)のスパイラルフロー流動長が最も高かった。
【0220】
[00225]実施例40~44においては、セルロースエステル組成物は、CAP 482-20を、幾つかのブロックコポリマー熱可塑性エラストマー、及びABSコア-シェル型耐衝撃性改良剤などの更なる耐衝撃性改良剤と混合することによって調製した。セルロースエステル組成物の混合は、Leistritz 18mm(50:1のL/D比)二軸押出機において、18ポンド/時の処理量、250rpmのスクリュー速度、及び220℃のバレル温度において行った。CA及びCAP 141-20ベースの組成物の混合に関しては、バレル温度は230℃であった。次に、混合した材料を、Toyo110トン射出成形機において、240℃のバレル温度及び70℃の金型温度を用いて、厚さ3.2mm×幅12.8mmの棒材に射出成形した。表17において、これらの組成物に関する特性を実施例14と比較する。
【0221】
[00226]試料を20℃/分の加熱速度で-110℃から加熱するASTM規格法D3418にしたがってガラス転移温度(Tg)を測定した。複数の材料のブレンドのDSCスキャンは複数のTg遷移を示す場合がある。1つより多いTg遷移がスキャン中に求められた場合には、マトリクスのガラス転移はスキャン中に測定された最も高いTgとして規定される。
【0222】
[00227]厚さ3.2mmの成形棒材について、棒材を230℃及び50%のRHにおいて48時間コンディショニングした後に、ASTM法D256にしたがって、ノッチを付けた後に23℃においてノッチ付きアイゾッド衝撃強さ試験を実施した。
【0223】
[00228]
【0224】
【0225】
他の態様は、明細書の考察及びそこに開示されている態様の実施によって当業者に明らかになるであろう。開示された態様の精神及び範囲内で変更及び修正を行うことができることが理解される。更に、明細書及び実施例は例示のみとしてみなされ、開示された態様の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示されることが意図される。
本発明は以下の実施態様を含む。
(1)セルロースから誘導されるポリマーベースの樹脂から形成される薄肉体部分を含む射出成形物品であって、
前記薄肉体部分は、
(i)ゲート位置;
(ii)最終充填位置;
(iii)100以上の肉厚に対する流動長の比、ここで、前記流動長は前記ゲート位置から前記最終充填位置までで測定される;及び
(iv)約2mm以下の肉厚;
を有し;
前記ポリマーベースの樹脂は、少なくとも95℃のHDT、少なくとも20重量%のバイオ由来成分の含量、及び、前記ポリマーベースの樹脂を、238℃のバレル温度、246℃の溶融温度、13.8MPaの成形圧力、0.8mmの金型厚さ、及び12.7mmの金型幅の条件でスパイラルフロー金型を用いて成形した際に少なくとも3.0cmのスパイラルフロー流動長を有する上記射出成形物品。
(2)前記肉厚に対する流動長の比が250~1500の範囲である、(1)に記載の射出成形物品。
(3)前記肉厚に対する流動長の比が500~1500の範囲である、(2)に記載の射出成形物品。
(4)前記肉厚が0.1~1.5mmの範囲である、(1)~(3)のいずれかに記載の射出成形物品。
(5)記肉厚が0.1~1.0mmの範囲である、(1)~(4)のいずれかに記載の射出成形物品。
(6)前記肉厚が0.1~0.5mmの範囲である、(1)~(5)のいずれかに記載の射出成形物品。
(7)前記ポリマーベースの樹脂が100℃~140℃の範囲のHDTを有する、(1)~(6)のいずれかに記載の射出成形物品。
(8)前記ポリマーベースの樹脂が40重量%~60重量%の範囲のバイオ由来成分の含量を有する、(1)~(7)のいずれかに記載の射出成形物品。
(9)前記ポリマーベースの樹脂が少なくとも5.0cmのスパイラルフロー流動長を有する、(1)~(8)のいずれかに記載の射出成形物品。
(10)前記ポリマーベースの樹脂が更に、ASTM-D790にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して1900MPaより高い曲げ弾性率;ASTM-D256にしたがって、23℃において50%の相対湿度に48時間かけた厚さ3.2mmの棒材を用いて測定して80J/mより高いノッチ付きアイゾッド衝撃強さ;乾燥炉の内部において、4インチのスパンを持つ治具上にスパンの中央上に500psiの見かけ応力をかけて90℃で68時間水平に配置した長さ5インチ、幅0.5インチ、及び厚さ0.125インチの寸法を有する成形棒材を用いて測定して12mm未満の曲げクリープ撓み;ASTM-D1003にしたがって、249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間において射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも70の透過率;249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて25未満のΔE値;又はASTM-E1348にしたがって、249℃のバレル温度及び5分の滞留時間で射出成形した後の3.2mmのプラークを用いて測定して少なくとも85のL
*
色彩値;から選択される特性の少なくとも1つを有する、(1)~(9)のいずれかに記載の射出成形物品。
(11)前記ポリマーベースの樹脂がリストされた特性の少なくとも2つを有する、(10)に記載の射出成形物品。
(12)前記ポリマーベースの樹脂が可塑剤を含まない、(1)~(11)のいずれかに記載の射出成形物品。
(13)前記ゲート位置がゲート寸法を有するゲートを含み、前記ゲート寸法と前記肉厚との比が0.5:1以下である、(1)~(12)のいずれかに記載の射出成形物品。
(14)前記ゲート寸法が0.1~0.5mmの範囲である、(1)~(13)のいずれかに記載の射出成形物品。
(15)前記肉厚が0.2~1.0mm又はそれ以下の範囲である、(1)~(14)のいずれかに記載の射出成形物品。
(16)前記ポリマーベースの樹脂がセルロースエステルを含む、(1)~(15)のいずれかに記載の射出成形物品。
(17)前記セルロースエステルがCAPである、(16)に記載の射出成形物品。
(18)前記ポリマーベースの樹脂がCAPを含み、可塑剤を含まない、(17)に記載の射出成形物品。
(19)前記セルロースエステルがCAである、(16)に記載の射出成形物品。
(20)前記ポリマーベースの樹脂がCAを含み、1~10重量%の量の可塑剤を含む、(19)に記載の射出成形物品。