(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ペイントアプリケーターの低圧非接触クリーニングのための装置
(51)【国際特許分類】
B05B 15/555 20180101AFI20220930BHJP
B05B 1/14 20060101ALI20220930BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B05B15/555
B05B1/14 Z
B08B3/02 A
B08B3/02 F
B08B3/02 G
(21)【出願番号】P 2019526551
(86)(22)【出願日】2017-11-16
(86)【国際出願番号】 CA2017051369
(87)【国際公開番号】W WO2018090138
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-11
(32)【優先日】2016-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519173152
【氏名又は名称】ジェサップ フィリップ
(73)【特許権者】
【識別番号】519173163
【氏名又は名称】ジェサップ エレノア
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ジェサップ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ジェサップ エレノア
【審査官】磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-107771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0089762(US,A1)
【文献】特表2000-500389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0097051(US,A1)
【文献】特開昭63-123458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 15/555
B05B 1/14
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペイントスプレー装置用の非接触クリーナーであって、
第1の開口部を伴う、開放頂部を有する支持体と、
前記支持体内に収容され、前記第1の開口部から下方に間隔を置いて配置された、第2の開口部を有するリングであって、該リングと前記第1の開口部との間にチャンバーを形成し、該チャンバーがクリーニングすべきペイントスプレーチップを受け入れるようになっている、リングと、
前記チャンバー内に円周方向に間隔を置いて配置され、加圧空気源と流体的に接続された複数のエアノズルと、
前記支持体内で前記第2の開口部の下方に収容される少なくとも1つの溶剤ノズルであって、前記ペイントスプレーチップが前記チャンバ
ーを経由して前記非接触クリーナーの中に挿入されたときに、前記ペイントスプレーチップに向けられている、少なくとも1つの溶剤ノズルと、
前記少なくとも1つの溶剤ノズルに流体接続された加圧塗料溶剤の供給源と、
を含む、クリーナー。
【請求項2】
前記第1の開口部は円形である請求項1に記載のクリーナー。
【請求項3】
前記チャンバーから下方に延びる漏斗アセンブリを含む、請求項1に記載のクリーナー。
【請求項4】
前記少なくとも1つの溶剤ノズルは、円周方向に間隔を置いて配置された複数のノズルを含む、請求項1に記載のクリーナー。
【請求項5】
前記エアノズルは前記第1の開口部から離れる方向に空気流を方向付ける、請求項1に記載のクリーナー。
【請求項6】
前記ペイントスプレーチップが前記チャンバ
ーを経由して前記非接触クリーナーの中に挿入されたとき、前記ペイントスプレーチップの下方に円周方向に間隔を置いて配置される複数の第2のエアノズルをさらに含み、前記第2のエアノズルは、前記ペイントスプレーチップが前記チャンバ
ーを経由して前記非接触クリーナーの中に挿入されたときに、空気流を前記ペイントスプレーチップから下方に向けるように配置される、請求項1に記載のクリーナー。
【請求項7】
前記漏斗アセンブリを通って下向きに、円周方向に間隔を置いて配置される複数の第2のエアノズルをさらに含む、請求項3に記載のクリーナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2016年11月17日に出願された米国仮特許出願第62/423,359号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、工業用塗装機器に関する。
【背景技術】
【0003】
工業用塗装機器は、自動車業界など、さまざまな業界で広く使用されている。例えば、自動車産業においてロボットは、自動車およびそれらの自動車用の構成部品を塗装するためにペイントアプリケーターを巧みに扱う。
【0004】
多くの塗布において、スプレー操作間に塗装するペイントアプリケーターのシュラウド及びスプレーチップを清浄化することが、実際にはしばしば必要とされることが望ましい。さもないと、アプリケーター上に蓄積した塗料は、塗料のドリップ、不均一なスプレーパターン、ならびに審美的欠陥をもたらす可能性がある。このようなことが起こる場合、物品上にスプレーされた塗料を完全に除去し、その後、物品全体を再塗装することがしばしば必要となる。しかし、それは費用と時間のかかる手順である。
【0005】
しかしながら、ロボットによって操作される種類の塗装機器のアプリケーターをクリーニングするための装置は以前から知られていた。例えば、米国特許第7,467,634号および第9,221,068号は両方とも、ロボット式ペイントスプレーヤーのスプレーチップをクリーニングするための非接触装置を開示している。これらの既知の装置では、ペイントスプレーチップは、ハウジングの頂部の開口部を通して挿入され、その後、塗料用の溶剤がスプレーされる。スプレー後、ペイントスプレーチップを乾燥させるために、より乾燥した空気がペイントスプレーチップ上に放出される。さらに、ハウジング内に収容されたダウンドラフトノズルは、ハウジング内にダウンドラフトまたは部分的な真空を作り出して、ハウジングの上部の開口部を通り、クリーニングされているペイントスプレーチップにわたって空気流を引き込む。
【0006】
ペイントアプリケーターを非接触でクリーニングするためのこれらの従来公知の装置は、溶剤系塗料と共に使用された場合に完全に適切であることが証明されている。このような溶剤系塗料の場合、溶剤でペイントスプレーチップをクリーニングした後に、チップを完全に乾燥させるのに、より乾燥した空気流で十分すぎることが証明されている。
【0007】
しかし、主に政府の規制およびその他の考慮事項により、多くの産業が溶剤型塗料から水性塗料へと移行している。スプレーガンのためのペイントスプレーチップを非接触でクリーニングするためのこれらの既知の装置では、スプレーアプリケーターはしばしば装置から取り除かれたときに適切に洗浄されずそして適切に乾燥されない。ペイントスプレー塗布の適切な乾燥は、非接触クリーニング装置のサイクルタイムを増加させることによって達成され得るが、そのようなサイクルタイムの増加は、塗装作業全体のサイクルタイムを、許容できないほど増加させる。これにより、塗装作業の全体的なコストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
溶剤系塗料への依存を軽減または排除するために、水性塗料は自動車産業および他の産業においてますます受け入れられてきている。そのような水性塗料は、もちろん、洗浄媒体として有機溶剤ではなく、水性溶剤を使用する。しかしながら、水性塗料の使用は、スプレー操作間にスプレーシュラウドおよびスプレーチップをクリーニングするための特別な課題を提示する。
【0009】
第1に、水性塗料用のスプレーペイントアプリケーターは、塗料接着特性を改善するために、そのスプレー端部においてペイントスプレーヤーの周囲に円周方向に間隔が置かれた複数の電極を含むことが多い。しかしながら、これらの電極はペインティングチップを密接に囲み、スプレー操作の後にペイントチップをクリーニングするためのこれまでに知られている方法を妨害する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、これまでに知られている装置の上述の欠点を克服するペイントアプリケーター用のペイントスプレーアプリケーターの、非接触クリーニングのための装置を提供する。
特に、本発明の装置は水性塗料用のスプレーチップを効果的に清浄化するのに使用することができる。
【0011】
簡単にいえば、本発明のペイントアプリケータークリーナーは、開放頂部を有するハウジングを含む。漏斗アセンブリは、その開放頂部にわたってハウジング内に配置される。その後、溶剤リングアセンブリが漏斗アセンブリの開いた上端部の上に重なって固定される。この溶剤リングアセンブリはさらに、上向きの円形開口部を含み、ロボット塗装機のペイントアプリケーターを受け入れるように寸法決めされている。
【0012】
コーンアセンブリの上端から下方に間隔を置いた位置には、ベンチュリリングがコーン内に配置されかつコーンに固定されている。したがって、このベンチュリリングは、ベンチュリリングとコーンの上端との間にペイントスプレーチップの一部を受けるチャンバーを形成する。スプレーチップに向けてこのチャンバー内に、円周方向に間隔の置かれた複数の空気ノズルが配置されている。逆に、スプレーガンの端にあるスプレーチップはベンチュリリングの下に配置されている。
【0013】
複数のスプレーヤーは、スプレーヤーからの出力がペイントスプレーヤーのペイントスプレーチップに向けられるように、ベンチュリリングの下のコーン内に含まれる。
【0014】
送風機もコーン内に収容されているので、送風機からの出力はコーンを通って下方に向けられ、円錐形の空気/溶剤リングアセンブリから離れるように方向付けられる。この下方へのエアスプレーは、水性溶剤、ならびにその水中に含まれる任意の塗料を、ハウジング内への収集およびその後の廃棄のためにコーンを通して下方に引き込む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のより良い理解は、添付の図面と併せて読まれるときに以下の詳細な説明を参照することによって得られるであろう。いくつかの図を通して同様の参照文字は同様の部分を指す。
【0016】
【
図1】本発明の好ましい実施形態を示す立面分解図である。
【
図2】本発明の好ましい実施形態を示す立面分解図である。
【
図3】
図5のA-A線に沿った部分断面側面図である。
【
図6】本発明のクリーニング装置の上部を示す分解図である。
【
図7】本発明のクリーニング装置の上部を示す部品を取り除いた立面斜視図である。
【
図9】本発明の好ましい実施形態を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、
図1および
図2を参照すると、本発明のクリーニング装置(クリーナー)20の好ましい実施形態が示されている。装置20は、概して長方形の形状の基部22を含む。漏斗アセンブリ24は、基部22の開放頂部26内に配置され、その上を覆う。
【0018】
ここで、
図3~
図5および
図7を参照すると、空気/溶剤リングアセンブリ28は、頂部に円形のベンチュリ開口部32を有する円錐形支持体30(コーン30)を含む。中央開口部36を有する第2のベンチュリリング34は、開口部32の真下の位置でコーン30内に収容されているので、開口部32とベンチュリリング34との間にチャンバー38が形成されている。さらに、ベンチュリリング34の開口部32と開口部36の両方は、その中に自動ペイントスプレーロボットのペイントスプレーチップを受け入れるように寸法決めされている。
【0019】
図3、
図4、および
図7に最もよく示されるように、複数のエアスプレーアセンブリ40はそれぞれ、チャンバー38内に配置されたエアスプレーノズル42を有する。スプレーノズル42は、パイプ44によってベンチュリリング28の底部の周りに延びる空気圧分配器48に流体的に接続されている。空気圧分配器48は、空気圧源に流体的に接続されていると共に、漏斗(漏斗アセンブリ)24の内部に収容され漏斗24を通って下方に向いている複数の円周方向に間隔を置いて下方に延びる空気ノズル50にも流体的に接続されている。
【0020】
引き続き
図3および
図4を参照して、加圧空気供給部48はまた、コーンアセンブリ28内に収容された複数の円周方向に間隔を置いて配置された溶剤スプレーノズル54に流体的に接続されている。おそらく
図3に最もよく示されるように、これらのノズル54は、ベンチュリリング34の開口部36の真下の位置にそれらの流体スプレーを方向付けるように配向されている。
【0021】
乾燥の効率を高めるために、熱交換器100が空気圧分配器48の下にあり、それと接触している。熱交換器100は流体入口102および出口104を有し、加熱水が流体として使用されるのが好ましい。したがって、反対に、熱交換器100は、パイプ44および50を通って流れる空気を加熱して乾燥を促進する。
【0022】
図9および
図10もまた、本発明の装置22の構造を示す分解図および不展開図である。
図9に例示的なペイントアプリケーター60が示され、これは、シュラウド及びペイントスプレーチップ62、ならびに円周方向に間隔が置かれた静電ロッド(電極)64を含む。ノズル62がベンチュリリング34の開口部36を通って降下すると、これらの電極64は、
図10に示すように、コーン28の外側に配置され、これにより、クリーニング作業から隔離される。
【0023】
実際には、スプレー操作に続いて、ロボットは、ペイントアプリケーターを、ベンチュリリング34の開口部32(
図3)における開口部36内に配置されるように動かす。そのとき、ノズル40からの加圧空気は(
図3に見られるように)ペイントアプリケーターの上部を乾燥させるだけでなく、流体スプレー54からの水性溶剤がベンチュリリング34の上のチャンバー38に入るのを防ぐ。
【0024】
同時に、4つのスプレーヤー54からの加圧水性溶剤がペイントスプレーヤーの先端をスプレーし、したがってペイントスプレーチップから塗料を除去する。同時に、管50を通る空気流は、混入した塗料と一緒に、水を、漏斗24(
図1)を介して下方に、ハウジング22内の底部収集領域内に引き込む。
【0025】
先端部の塗料が洗浄された後、ノズル54からの水性溶剤スプレーは終了され、ペイントアプリケーターの端部はゆっくりと上方へ持ち上げられてリングアセンブリ28から外へ出る。さらに、そこで洗浄されたペイントチップをハウジング28から引き出す速度は、ノズル40からの空気流がリングアセンブリ28から最終的に除去される前にペイントアプリケーターを完全に乾燥させるように十分に遅いことが好ましい。
【0026】
本発明の主な利点は、ペイントアプリケーターのシュラウドとスプレーチップの両方を清浄化(クリーニング)できることである。さらに、塗料の色を変えるとき、古い色の塗料をアプリケーターから完全に一掃することができる。さらに、漏斗およびハウジングは、空気が逃げることができ、溶剤が取り除かれて収集のために排出されるバッフルを作り出す。バッフル、ベント、および漏斗が「一体型メディアセパレーター」を構成している。
【0027】
上記を考慮すると、本発明は自動化されたペイントスプレー操作においてスプレーチップを清浄化するための効果的な装置を提供することが理解されよう。ただし、本発明を説明してきたが、それに対する多くの変更は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神から逸脱することなく関係する当業者には明らかになるであろう。