(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】カチオン電着塗料組成物及び電着塗装方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220930BHJP
C09D 5/44 20060101ALI20220930BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220930BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20220930BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220930BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/44 A
C09D7/63
C09D4/00
C09D7/61
(21)【出願番号】P 2019537634
(86)(22)【出願日】2018-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2018030808
(87)【国際公開番号】W WO2019039467
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2017160451
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】安原 誠
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 睦
(72)【発明者】
【氏名】日高 貴弘
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-195349(JP,A)
【文献】特開平10-025437(JP,A)
【文献】特開平02-084469(JP,A)
【文献】特開2007-217686(JP,A)
【文献】特開平10-330690(JP,A)
【文献】特表2014-529001(JP,A)
【文献】特表2016-514760(JP,A)
【文献】特開2006-111880(JP,A)
【文献】特開2005-320538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C09D 13/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイケル付加反応ドナー成分を含むエマルション粒子(A)及びマイケル付加反応アクセプター成分を含むエマルション粒子(B)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、
前記エマルション粒子(A)若しくは前記エマルション粒子(B)内にマイケル付加反応触媒(C)を含有するか、又はマイケル付加反応触媒(C)を前記カチオン電着塗料組成物内にマイクロカプセル化して含有するカチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
前記エマルション粒子(A)のマイケル付加反応ドナー成分が、活性メチレン基含有化合物、第1級及び/又は第2級アミノ基含有化合物、チオール基(メルカプト基)含有化合物、及び水酸基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の活性水素基含有化合物(A-1)である請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
前記エマルション粒子(A)のマイケル付加反応ドナー成分が、
前記活性メチレン基
含有化合物であって、
前記活性メチレン基
含有化合物が、マロン酸化合物、アセト酢酸化合物、イソブチリル酢酸化合物、ベンゾイル酢酸化合物、及びプロピオニル酢酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項
2に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項4】
前記エマルション粒子(B)のマイケル付加反応アクセプター成分が、(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物、(メタ)アクリルアミド基含有化合物、マレイン酸化合物、フマル酸化合物、及びイタコン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物(B-1)である請求項
2又は3に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項5】
前記マイケル付加反応触媒(C)が、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、第4級アンモニウム化合物、第3級アミン化合物、グアニジン化合物、アミジン化合物、第3級ホスフィン化合物、フォスファゼン化合物、第3級スルホニウム化合物、第4級ホスホニウム化合物、及びイミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基性触媒である請求項1~4のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項6】
前記塩基性触媒の分子量が200以上である請求項
5に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を下記条件にて遠心分離を行い、固形物成分と溶媒成分とに分離した時の前記溶媒成分中に含まれる前記マイケル付加反応触媒(C)の含有量が、前記カチオン電着塗料組成物中の配合量を基準として、30質量%以下であるカチオン電着塗料組成物。
<遠心分離条件>
カチオン電着塗料組成物を、25℃、3.5×10
4
Gの相対遠心加速度で5時間遠心分離を行う。
【請求項8】
前記マイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)及び前記マイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)の少なくとも一方の粒子中に顔料を含有する請求項1~7のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項9】
前記活性水素基含有化合物(A-1)又は前記α,β-不飽和カルボニル基を有する化合物(B-1)のいずれか一方が、重量平均分子量1,800以上のエポキシ樹脂であり、他方が、重量平均分子量1,800未満の化合物である
請求項4に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項10】
前記マイケル付加反応触媒(C)が、マイクロカプセル化触媒である請求項1~9のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項11】
前記マイケル付加反応触媒(C)が、感温性マイクロカプセル化触媒であって、30~130℃の温度で溶出する請求項1~9のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を電着塗料浴として、該電着塗料浴に金属被塗物を浸漬し、電着塗装する電着塗装方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を電着塗料浴として、該電着塗料浴に金属被塗物を浸漬し、電着塗装した後、温度130℃以下の温度で硬化せしめる電着塗装方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を電着塗料浴として、該電着塗料浴に金属被塗物を浸漬し、電着塗装した後、電磁誘導加熱により硬化せしめる電着塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン電着塗料組成物及び電着塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カチオン電着塗料は塗装作業性が優れ、かつ、形成した塗膜の防食性が良好なことから、これらの性能が要求される自動車部品、電気機器部品及びその他の工業用機器等に広く利用されている。
一般に、カチオン電着塗料組成物は、カチオン性樹脂(例えば、アミノ基含有エポキシ樹脂等)と硬化剤(架橋剤ともいう。例えば、ブロック化ポリイソシアネート化合物等)から成る樹脂成分を混合して水性媒体中で分散した樹脂エマルションの成分、および顔料分散樹脂で分散された顔料を含む顔料分散ペーストの成分の2成分を混合した形態で提供される。この塗料組成物を塗装浴に用い、被塗物を陰極、また対極を陽極として通電し、被塗物上に析出塗膜を形成させた後、該析出塗膜を加熱することによって、架橋硬化された塗膜が形成される。
【0003】
上記の塗膜形成時の加熱は、通常、160℃より高い温度で行なっているが、エネルギーコスト削減のために、低温(0~130℃、好ましくは5~100℃、より好ましくは10~80℃)で行なうことが求められてきている。これは、低温焼付けと呼ばれている。
上記低温焼付け(または常温乾燥での硬化)を行なうためには、低温硬化性のブロック化ポリイソシアネート化合物を硬化剤に用いることが一般的である。例えば、特許文献1には、オキシムでブロックされたイソシアネートを含むカチオン電着塗料を用いて低温硬化することが開示されている。また、特許文献2には、100~160℃の低温焼付け型電着塗料が開示されており、オキシム系及びラクタム系でブロックされたブロック化ポリイソシアネート化合物が比較的低温で解離(反応)できると記載がある。さらに、特許文献3には、特定のブロックイソシアネート基を有する自己架橋樹脂を用いることで120℃以下の低温で硬化可能であり、カチオン電着塗料としても利用できることが開示されている。
【0004】
またさらに、特許文献4には、基体樹脂(アミン付加エポキシ樹脂)の電着塗装をした後、水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート硬化剤の水分散体を電着塗装して、得られた塗膜を60~150℃で加熱乾燥する低温焼付けの塗膜形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-120947号公報
【文献】特開平7-300698号公報
【文献】特開平4-39322号公報
【文献】特開2004-27255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1から3に記載のような、低温での反応性を高めた電着塗料組成物では、長期の貯蔵安定性(浴安定性)が不十分となり、その結果、塗膜の仕上がり性や防食性などが劣る場合がある。また、上記特許文献4に記載の塗膜形成方法では、基体樹脂と硬化剤の塗料及び塗装を分けることで塗料の貯蔵安定性(浴安定性)は改善されるものの、塗膜内に硬化剤が均一に存在しない場合があることから防食性などが劣ることがある。さらには、塗装工程や洗浄工程などの工程が増えるため、既存の設備では対応できず、新たに設備を増設する必要がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、貯蔵安定性、塗膜の低温硬化性及び仕上がり性に優れたカチオン電着塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、マイケル付加反応ドナー成分を含むエマルション粒子(A)、及びマイケル付加反応アクセプター成分を含むエマルション粒子(B)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、エマルション粒子(A)若しくはエマルション粒子(B)内にマイケル付加反応触媒(C)を含有するか、又はマイケル付加反応触媒(C)がカチオン電着塗料組成物内にマイクロカプセル化して含有するカチオン電着塗料組成物によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明のカチオン電着塗料組成物、及び電着塗装方法は以下の構成を有する。
【0009】
項1.マイケル付加反応ドナー成分を含むエマルション粒子(A)、マイケル付加反応アクセプター成分を含むエマルション粒子(B)、及びマイケル付加反応触媒(C)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、エマルション粒子(A)若しくはエマルション粒子(B)内にマイケル付加反応触媒(C)を含有するか、又はマイケル付加反応触媒(C)をカチオン電着塗料組成物内にマイクロカプセル化して含有するカチオン電着塗料組成物。
【0010】
項2.エマルション粒子(A)のマイケル付加反応ドナー成分が、活性メチレン基含有化合物、第1級及び/又は第2級アミノ基含有化合物、チオール基(メルカプト基)含有化合物、及び水酸基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の活性水素基含有化合物(A-1)である前記項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【0011】
項3.エマルション粒子(A)のマイケル付加反応ドナー成分が、活性メチレン基を有する化合物であって、該活性メチレン基を有する化合物が、マロン酸化合物、アセト酢酸化合物、イソブチリル酢酸化合物、ベンゾイル酢酸化合物、及びプロピオニル酢酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である前記項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【0012】
項4.エマルション粒子(B)のマイケル付加反応アクセプター成分が、(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物、(メタ)アクリルアミド基含有化合物、マレイン酸化合物、フマル酸化合物、及びイタコン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物(B-1)である前記項1~3のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【0013】
項5.マイケル付加反応触媒(C)が、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、第4級アンモニウム化合物、3級アミン化合物、グアニジン化合物、アミジン化合物、3級ホスフィン化合物、フォスファゼン化合物、3級スルホニウム化合物、4級ホスホニウム化合物、及びイミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基性触媒である前記項1~4のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【0014】
項6.塩基性触媒の分子量が200以上である前記項1~5のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【0015】
項7.前記項1~6のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を下記条件にて遠心分離を行い、固形物成分と溶媒成分に分離した時の溶媒成分中に含まれるマイケル付加反応触媒(C)の含有量が、カチオン電着塗料組成物中の配合量を基準として、30質量%以下であるカチオン電着塗料組成物。
<遠心分離条件>
カチオン電着塗料組成物を、25℃、3.5×104Gの相対遠心加速度で5時間遠心分離を行う。
【0016】
項8.マイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)及びマイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)の少なくとも一方の粒子中に顔料を含有する請求項1~7のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【0017】
項9.活性水素基含有化合物(A-1)又はα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物(B-1)のいずれか一方が、重量平均分子量1,800以上のエポキシ樹脂であり、他方が、重量平均分子量1,800未満の化合物であるカチオン電着塗料組成物。
【0018】
項10.マイケル付加反応触媒(C)が、マイクロカプセル化触媒である前記項1~9のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【0019】
項11.マイケル付加反応触媒(C)が、感温性マイクロカプセル化触媒であって、30~130℃の温度で溶出する前記項1~9のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【0020】
項12.前記項1~11のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を電着塗料浴として、これに金属被塗物を浸漬し、電着塗装する電着塗装方法。
【0021】
項13.前記項1~11のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を電着塗料浴として、これに金属被塗物を浸漬し、電着塗装した後、温度130℃以下の温度で硬化せしめる電着塗装方法。
【0022】
項14.前記項1~11のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を電着塗料浴として、これに金属被塗物を浸漬し、電着塗装した後、電磁誘導加熱により硬化せしめる電着塗装方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、良好な塗料安定性(浴安定性)を確保した上、常温又は低温で硬化したとしても、得られた塗膜は、硬化性、仕上がり性、及び防食性に優れる。
具体的には、本発明のカチオン電着塗料組成物が塗装された自動車ボディは、塗膜の仕上がり性が良好であり、融雪塩が散布された環境下を長期間走行しても腐食劣化が少ない。また、本発明のカチオン電着塗料組成物は、長期間にわたって貯蔵安定性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[カチオン電着塗料組成物]
本発明のカチオン電着塗料組成物は、マイケル付加反応ドナー成分を含むエマルション粒子(A)、マイケル付加反応アクセプター成分を含むエマルション粒子(B)、及びマイケル付加反応触媒(C)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、マイケル付加反応触媒(C)が、エマルション粒子(A)若しくはエマルション粒子(B)内に含有するか、又は塗料組成物内にマイクロカプセル化して含有している。
本発明のカチオン電着塗料組成物は、主にマイケル付加反応により低温で硬化可能な塗料組成物であり、該マイケル付加反応に関しては、任意の特定の理論により拘束されることを望まないが、例えば、RT MorrisonおよびRN BoydによるOrganic Chemistry、第三版、Allyn and Bacon、1973年に教示されている。この反応は、触媒の存在下において、マイケルドナー成分とマイケルアクセプター成分との間で起こるものと考えられている。
【0025】
本発明のカチオン塗料組成物は、マイケル付加反応のドナー成分であるエマルション粒子(A)と、マイケル付加反応アクセプター成分であるエマルション粒子(B)とが、塗料中(水性溶媒中)で別々に存在することで貯蔵安定性(浴安定性)を向上させることができるものである。特に、0~130℃(好ましくは5~100℃、より好ましくは10~80℃)で硬化反応をする一液型低温焼付け塗料(または一液型常温焼付け塗料)の貯蔵安定性に効果を奏する。
【0026】
本発明において、「水性溶媒」とは、水及び親水性溶媒の少なくとも一方を主成分とする溶媒を意味する。親水性溶媒としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)、グライム系溶媒(例えばエチレングリコールジメチルエーテル等)、ジグライム系溶媒(例えばジエチレングリコールジメチルエーテル等)、アルコール系溶媒(例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n-ブチルアルコール等)、ブロピレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0027】
また、本発明において、「化合物」とは、モノマー、オリゴマー、ポリマー(樹脂)などを含んだ総称である。
また、本発明において、「エマルション粒子」とは、化合物が溶媒中で分散している粒子のことであって、透明ではなく濁りを生じている。
以下、本発明に関して詳細に述べる。
【0028】
(マイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)
マイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)は、活性メチレン基含有化合物、第1級及び/又は第2級アミノ基含有化合物、チオール基(メルカプト基)含有化合物、及び水酸基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の活性水素基含有化合物(A-1)を含有するエマルション粒子である。なかでも、上記活性水素基含有化合物(A-1)としては、活性メチレン基含有化合物、及び、第1級及び/又は第2級アミノ基含有化合物の少なくとも1種が好ましい。
上記活性水素基含有化合物(A-1)は、1分子中に1個以上(好ましくは複数個)の活性水素基を含有するものであれば特に制限はなく、例えば、メチルアセトアセタート、エチルアセトアセタート、t-ブチルアセトアセタート、2-エチルヘキシルアセトアセタート、ラウリルアセトアセタート、アセトアセタニリド、2-アセトアセトキシエチルメタクリラート、アリルアセトアセタート、ブタンジオールジアセトアセタート、1,6-ヘキサンジオールジアセトアセタート、ネオペンチルグリコールジアセトアセタート、シクロヘキサンジメタノールジアセトアセタート、エトキシル化ビスフェノールAジアセトアセタート、トリメチロールプロパントリアセトアセタート、グリシントリアセトアセタート、ポリカプロラクトントリアセトアセタート、ペンタエリスリトールテトラアセトアセタートなどの活性メチレン基含有化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミンなどの第1級及び/又は第2級アミノ基含有化合物;ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)などのチオール基(メルカプト基)含有化合物;アルカンジオール、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの水酸基含有化合物、若しくはこれらの反応物などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0029】
上記活性水素基含有化合物(A-1)として、その骨格が樹脂であるものも好適に用いることができる。具体的には、例えば、下記の(例1)~(例5)が挙げられる。
(例1)活性水素基含有アクリルモノマーと他のアクリルモノマーとを共重合して得たアクリル樹脂。上記活性水素基含有アクリルモノマーとしては、例えば、2-エトキシマロニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2-シアノアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N-(2-シアノアセトキシエチル)アクリルアミド、N-(2-プロピオニルアセトキシブチル)アクリルアミド、N-(4-アセトアセトキシメチルベンジル)アクリルアミド、N-(2-アセトアセチルアミノエチル)アクリルアミド、2-(N-アセトアセチルアミノエチル)(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、分子末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(例2)マロン酸を含むジカルボン酸化合物とジオール化合物とを重縮合して得たポリエステル樹脂。
(例3)マロン酸を含むジカルボン酸化合物とジグリシジル化合物とを付加縮合して得たエポキシ樹脂。
(例4)マロン酸を含むジカルボン酸化合物とジアミン化合物とを重縮合して得たポリアミド樹脂。
(例5)樹脂(例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等)に活性水素基含有化合物を付加して得た樹脂。なかでも、樹脂の種類としては活性水素基含有エポキシ樹脂及び/又は活性水素基含有アクリル樹脂が好ましく、活性水素基含有エポキシ樹脂がより好ましい。
【0030】
上記(例5)の活性水素基含有エポキシ樹脂の形成のために用いられるエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する樹脂であり、その分子量は、少なくとも300、好ましくは400~4,000、さらに好ましくは800~2,500の範囲内の数平均分子量及び少なくとも160、好ましくは180~2,500、さらに好ましくは400~1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適している。かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン(例えば、エピクロルヒドリン等)との反応によって得られるものを使用することができる。
上記ポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-フェニル)-2,2-プロパン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,2,2-エタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。
【0031】
また、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式の樹脂が好適である。
【化1】
ここで、n=0~8で示されるものが好適である。
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱化学(株)からjER828EL、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0032】
また、上記活性水素基含有エポキシ樹脂としては、樹脂骨格中にポリアルキレンオキシド鎖を含有しているエポキシ樹脂を使用することができる。通常、このようなエポキシ樹脂は、(α)エポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有するエポキシ樹脂と、アルキレンオキシド又はポリアルキレンオキシドを反応せしめてポリアルキレンオキシド鎖を導入する方法、(β)上記ポリフェノール化合物と、エポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有するポリアルキレンオキシドとを反応せしめてポリアルキレンオキシド鎖を導入する方法などにより得ることができる。また、既にポリアルキレンオキシド鎖を含有しているエポキシ樹脂を用いてもよい。(例えば、特開平8-337750号公報参照)
ポリアルキレンオキシド鎖中のアルキレン基としては、炭素数が2~8のアルキレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基がより好ましく、プロピレン基が特に好ましい。
【0033】
また、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂として、t-ブチルカテコール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂も好適に用いることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。ノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ダウケミカル日本株式会社製フェノールノボラック樹脂DEN-438、東都化成株式会社製クレゾールノボラック樹脂YDCN-703などが挙げられる。
【0034】
また、上記活性水素基含有エポキシ樹脂としては、カチオン電着塗装の塗装性の観点から、第1級、第2級、及び第3級のアミノ基の少なくとも1種を有することが好ましい。ここで、第1級及び/又は第2級のアミノ基の場合は、塗装性以外にマイケル付加反応のドナー成分としての効果を奏することができる。
【0035】
アミノ基の付加方法としては、例えば、(1)エポキシ樹脂と第1級モノ-及びポリアミン、第2級モノ-及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第3,984,299号明細書参照);(2)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ-及びポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第4,017,438号 明細書参照);(3)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物とのエーテル化により得られる反応物(例えば、特開昭59-43013号公報参照)等を挙げることができる。
【0036】
上記(1)のアミノ基含有エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ-及びポリアミン、第2級モノ-及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ-もしくはジ-アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2-ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミンなどを挙げることができる。
【0037】
上記(2)のアミノ基含有エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ-及びポリアミンとしては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1、2級混合ポリアミンのうち、例えば、ジエチレントリアミンなどにケトン化合物を反応させて生成させたケチミン化物を挙げることができる。
【0038】
上記(3)のアミノ基含有エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物としては、例えば、上記(1)のアミノ基含有エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ-及びポリアミン、第2級モノ-及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンのうち、第1級アミノ基とヒドロキシル基を有する化合物、例えば、モノエタノールアミン、モノ(2-ヒドロキシプロピル)アミンなどにケトン化合物を反応させてなるヒドロキシル基含有ケチミン化物を挙げることができる。
【0039】
また、上記アミノ基以外の活性水素基を付加することができる。
【0040】
上記活性水素基含有化合物としては、ドナー成分となる活性水素基以外にエポキシ基と反応可能な反応性官能基(例えば、カルボキシル基や1級又は2級アミノ基など)を有していれば特に制限はなく、具体的には、例えば、マロン酸、マロン酸アルキル、アセト酢酸、イソブチリル酢酸、ベンゾイル酢酸、プロピオニル酢酸などの活性メチレン基含有化合物;チオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、ジチオサリチル酸、メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト酪酸などのチオール基含有化合物;乳酸、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸、ジメチロールブタン酸、サリチル酸、マンデル酸、ε-カプロラクトン、モノエタノールアミンなどの水酸基含有化合物などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0041】
また上記活性水素基含有エポキシ樹脂は、必要に応じて、変性剤により変性を図ることができる。このような変性剤は、エポキシ樹脂との反応性を有する化合物であれば特に限定されず、例えばポリアミドアミン、ポリカルボン酸、脂肪酸、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物を反応させた化合物、アクリルモノマー、アクリルモノマーを重合反応させた化合物、キシレンホルムアルデヒド化合物、エポキシ化合物も変性剤として用いることができる。これらの変性剤は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0042】
上記のアミン化合物、活性水素基含有化合物、及び変性剤のエポキシ樹脂への付加反応は、通常、適当な溶媒中で、約80~約170℃、好ましくは約90~約150℃の温度で1~6時間程度、好ましくは1~5時間程度で行なうことができる。
【0043】
上記の反応溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノールなどのアルコール系、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール系化合物;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0044】
上記活性水素基含有エポキシ樹脂の数平均分子量としては、仕上がり性、防食性などの観点から、通常1,000~50,000の範囲内であり、さらに1,300~20,000の範囲内であり、さらに特に1,600~10,000の範囲内であることが好ましい。
活性水素基含有エポキシ樹脂のアミン価としては、樹脂固形分を基準として、通常10mgKOH/g以上であり、20~200mgKOH/gの範囲内が好ましく、30~150mgKOH/gの範囲内がより好ましい。
尚、本明細書におけるアミン価は、JIS K 7237-1995に準じて測定する。全て樹脂固形分当たりのアミン価(mgKOH/g)である。
【0045】
また、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel
G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0046】
このようにして得た活性水素基含有エポキシ樹脂の水性溶媒中への分散方法としては、特に制限はなく、それ自体既知の方法を用いることができるが、上記活性水素基含有エポキシ樹脂溶液を酸化合物で中和し、分散することが好ましい。
【0047】
上記酸化合物としては、公知の酸化合物を特に制限なく用いることができ、具体的には、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などのカルボン酸化合物を含む有機酸等が挙げられる。これらの酸化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、なかでも、有機酸が好ましく、特にカルボン酸化合物がより好ましく用いることができる。
【0048】
また、別の分散方法として、乳化剤を用いることもできる。上記乳化剤としては、特に制限なく用いることができ、例えば、ノニオン性、カチオン性、アニオン性乳化剤が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、ノニオン性及び/又はカチオン性乳化剤が好ましく、カチオン性乳化剤がより好ましい。
【0049】
(マイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B))
マイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)としては、(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物、(メタ)アクリルアミド基含有化合物、マレイン酸系化合物、フマル酸系化合物、イタコン酸系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物(B-1)を含有するエマルション粒子である。
上記α,β-不飽和カルボニル基を有する化合物(B-1)は、1分子中に1個以上(好ましくは複数個)のアクセプター成分(α,β-不飽和カルボニル基)を含有するものであれば特に制限はなく、上記(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物としては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、レソルシノールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アクリル化エポキシジアクリレート、アリルウレタンジアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレートなどのジアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシ化グリセロールトリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、アリルウレタントリアクリレート、脂肪族ウレタントリアクリレート、メラミントリアクリレート、脂肪族エポキシトリアクリレート、エポキシノボラックトリアクリレート、ポリエステルトリアクリレートなどのトリアクリレート;ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシ化ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、アリルウレタンテトラアクリレート、脂肪族ウレタンテトラアクリレート、メラミンテトラアクリレート、エポキシノボラックテトラアクリレートなどのテトラアクリレート;ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、メラミンペンタアクリレートなどのペンタアクリレートなどが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0050】
上記α,β-不飽和カルボニル基を有する化合物(B-1)として、その骨格が樹脂であるものも好適に用いることができる。製造方法としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を合成し、(1)該樹脂のカルボキシル基に対してグリシジル(メタ)アクリレートを反応させたもの、(2)該樹脂の水酸基に対してイソシアネートエチル(メタ)アクリレートを反応させたもの、(3)該樹脂のエポキシ基に対して(メタ)アクリル酸化合物、マレイン酸化合物、フマル酸化合物、イタコン酸化合物などを反応させたもの、などが挙げられる。
【0051】
また、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などを含む多価カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとの重縮合反応によって得られるポリエステル樹脂や、上記多価アルコールの代わりに多価アミンを使用して重縮合反応によって得られるポリアミド樹脂なども好適に用いることができる。他の例として、例えば、多官能ポリイソシアネート化合物に水酸基含有及びアクリロイル基を有する化合物(例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレートなど)を反応して得られるウレタン化合物などがある。
【0052】
なかでも、α,β-不飽和カルボニル基含有エポキシ樹脂及び/又はα,β-不飽和カルボニル基含有アクリル樹脂が好ましく、α,β-不飽和カルボニル基含有エポキシ樹脂がより好ましい。
【0053】
上記α,β-不飽和カルボニル基含有エポキシ樹脂としては、前述の活性水素基含有エポキシ樹脂の形成のために用いられるエポキシ樹脂として説明したエポキシ樹脂を原料として好適に用いることができ、該エポキシ樹脂に対してカチオン電着塗料の塗装性の観点から3級アミノ基を付加することが好ましい。(ドナー成分としての効果がある1級及び2級アミノ基は含有しないことが好ましい。)
また、上記α,β-不飽和カルボニル基含有エポキシ樹脂は、前記活性水素基含有エポキシ樹脂と同様に変性剤により変性することができる。
【0054】
上記α,β-不飽和カルボニル基含有エポキシ樹脂の数平均分子量としては、仕上がり性、防食性などの観点から、通常1,000~50,000の範囲内であり、さらに1,300~20,000の範囲内であり、さらに特に1,600~10,000の範囲内であることが好ましい。
【0055】
上記α,β-不飽和カルボニル基含有エポキシ樹脂のアミン価としては、樹脂固形分を基準として、通常10mgKOH/g以上であり、20~200mgKOH/gの範囲内が好ましく、30~150mgKOH/gの範囲内がより好ましい。
【0056】
上記のようにして得たα,β-不飽和カルボニル基含有エポキシ樹脂の水性溶媒中への分散方法としては、特に制限はなく、それ自体既知の方法を用いることができるが、上記α,β-不飽和カルボニル基含有エポキシ樹脂溶液を酸化合物で中和し、水中で分散することが好ましい。
【0057】
上記酸化合物としては、公知の酸化合物を特に制限なく用いることができ、具体的には、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などのカルボン酸化合物を含む有機酸等が挙げられる。これらの酸化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、なかでも、有機酸が好ましく、特にカルボン酸化合物がより好ましく用いることができる。
【0058】
また、別の分散方法として、乳化剤を用いることもできる。上記乳化剤としては、特に制限なく用いることができ、例えば、ノニオン性、カチオン性、アニオン性乳化剤が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、ノニオン性及び/又はカチオン性乳化剤が好ましく、カチオン性乳化剤がより好ましい。
【0059】
(マイケル付加反応触媒(C))
本発明のカチオン電着塗料組成物に含有するマイケル付加反応触媒(C)は、上記エマルション粒子(A)若しくはエマルション粒子(B)のいずれか一方のエマルション粒子内に含有するか又はカチオン電着塗料組成物中にマイクロカプセル化して含有する。
【0060】
上記マイケル付加反応触媒(C)は、マイケル付加反応の触媒としてそれ自体既知のものを特に制限なく用いることができ、具体的には、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、第4級アンモニウム化合物、第3級アミン化合物、グアニジン化合物、アミジン化合物、第3級ホスフィン化合物、フォスファゼン化合物、第3級スルホニウム化合物、第4級ホスホニウム化合物、イミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、触媒性能の観点から塩基性触媒であることが好ましい。
【0061】
上記アミジン化合物としては、それ自体既知のものを特に制限なく用いることができ、具体的には、例えば、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-ノネン-5(DBN)、1,5-ジアザビシクロ[4,4,0]-デセン-5、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデセン-7(DBU)、5-ヒドロキシプロピル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデセン-7、5-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデセン-7等が挙げられる。
【0062】
上記グアニジン化合物としては、それ自体既知のものを特に制限なく用いることができ、具体的には、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジメチルグアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)等が挙げられる。これらの触媒は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記マイケル付加反応触媒(C)としては、特に触媒性能の観点から、塩基性触媒の酸解離定数(pKa)が、10以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましい。
また、上記塩基性触媒としては、塗料の仕上がり性及び塗膜の耐水性の観点から、分子量が100以上の化合物であることが好ましく、200以上の化合物であることがより好ましく、300以上の化合物であることが更に好ましい。
【0063】
塩基性触媒を高分子量化させる方法としては、例えば、上記アミジン触媒又はグアニジン触媒の場合では、(1)上記アミジン触媒又はグアニジン触媒の第1級又は第2級アミノ基と、エポキシ基又はイソシアネート基などの反応性官能基含有化合物とを反応させる方法、(2)上記アミジン触媒又はグアニジン触媒とカルボジイミド化合物とを反応させる方法、などが挙げられ、いずれも好適に用いることができる。
【0064】
カチオン電着塗料組成物中のマイケル付加反応触媒(C)配合量としては、樹脂固形分を基準として、0.1~10質量%の範囲内であることが好ましく、0.5~7質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0065】
マイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)又はマイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)のいずれか一方の粒子内にマイケル付加反応触媒(C)を含有する場合、マイケル付加反応触媒(C)は、マイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)に含有されることが塗料の安定性の観点から好ましい。任意の特定の理論により拘束されることを望まないが、これは触媒(C)がドナー成分から水素イオンを引き抜くことでマイケル付加反応が始まると考えられるためである。
【0066】
エマルション粒子(B)内にマイケル付加反応触媒(C)を含有させる方法としては、例えば、該触媒(C)とα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物(B-1)を含む成分を均一に混合し、次いで水と混合して転相乳化する方法などが挙げられる。この場合、必要に応じて乳化剤を用いることができる。
【0067】
マイケル付加反応触媒が、カチオン電着塗料組成物中にマイクロカプセル化して含有する場合、該触媒が他の成分と接触する可能性が低くなるため、エマルション粒子(A)内、エマルション粒子(B)内、又は溶媒のいずれに存在してもよい。
また、上記マイクロカプセル化触媒は、塗装後に熱によって内包する触媒が未硬化塗膜内に溶出及び拡散され、次いでマイケル付加反応が始まることが好ましいため、感温性マイクロカプセル化触媒(C-1)であることが好ましい。
なお、本明細書において、感温性とは、温度変化によって変化する性質を意味する。具体的には、感温性マイクロカプセル化触媒とは、ある温度以上になった時にマイクロカプセルの状態が変化して、中の触媒が溶出するものである。
上記溶出温度としては、30~130℃が好ましく、30~100℃がより好ましく、30~80℃がさらに好ましい。
【0068】
マイクロカプセル化する方法としては、触媒をコアとして、所望する温度(本発明では30~130℃)のLCST(下限臨界溶解温度)又はTg(ガラス転移温度)を持つ感温性ポリマーをシェルとするコア/シェル型粒子が知られている。
ここで、LCST(下限臨界溶解温度)を持つ感温性ポリマーとは、該ポリマー溶液において、ある温度(LCST)以下では溶媒に対して溶解状態となり、ある温度(LCST)以上では凝集を起こす特性を有するポリマーのことである。本発明においては、上記感温性ポリマーをシェル部に使用することで、常温(例えば20℃前後)では水性溶媒に対して安定であるが、加温して下限臨界溶解温度以上になるとシェル部が崩れ、コア部の触媒が未硬化塗膜内に溶出及び拡散することになる。
【0069】
また、Tg(ガラス転移温度)を持つ感温性ポリマーとは、ある温度でガラス転移が起きるポリマーのことである。本発明においては、上記感温性ポリマーをシェル部に使用することで、常温(例えば20℃前後)ではシェル部が形成されているが、加温してガラス転移温度以上になるとシェル部が溶融して、コア部の触媒が未硬化塗膜内に溶出及び拡散することになる。
【0070】
上記感温性ポリマーは、一定の温度においてLCST又はTgを持つポリマーであれば好適に用いることができるが、樹脂設計の自由度の観点から、感温性ポリマーのTg(ガラス転移温度)が30~130℃であることが好ましく、50~110℃であることがより好ましい。また、重合性不飽和モノマーを共重合して得られるアクリル樹脂を用いることが好ましい。
ここで、本発明において、Tg(ガラス転移温度)は、DSC(示差走査熱量測定)により測定することができる。
【0071】
また、下限臨界溶解温度(LCST)を示す重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N-イソプロピルアクリルアミド(LCSTは30.9℃である)、N-nプロピルアクリルアミド(LCSTは21.5℃である)、N-nプロピルメタクリルアミド(LCSTは28.0℃である)、N,N-ジエチルアクリルアミド(LCSTは32.0℃である)などが挙げられる〔参考文献:伊藤昭二 高分子論文集、46(7)、437-443(1989)〕。また、下限臨界溶解温度(LCST)を示さないN置換(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0072】
上記コア/シェル型感温性マイクロカプセル化触媒の製造方法としては、それ自体公知の方法を特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、(1)あらかじめ調製された感温性ポリマーと触媒とを混合し、次いで水を添加して転相乳化する方法、(2)触媒を水溶液中で乳化した後に、感温性ポリマーの前駆体であるモノマーのプレエマルションを滴下して乳化重合する方法、(3)感温性ポリマーの前駆体であるモノマーのプレエマルションを水溶液中に滴下して乳化重合し、次いで触媒を添加して内包する方法、(4)感温性ポリマーの前駆体であるモノマーと触媒とを予め混合してプレエマルションを作成し、次いで水溶液中に滴下して乳化重合する方法、(5)感温性ポリマーの前駆体であるモノマーと触媒とを予め混合してプレエマルションを作成し、次いでミニエマルション重合を行う方法、などが挙げられ、いずれの方法においても必要に応じて乳化剤を用いることができる。
【0073】
ここで、プレエマルションとは、モノマー溶液に水(純水、蒸留水、イオン交換水、脱イオン水など)を添加して希釈し、転相乳化することである。プレエマルションは、乳化剤、中和剤、重合開始剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0074】
上記(2)~(4)の乳化重合を用いる製造方法としては、例えば、水中にプレエマルションを滴下して乳化重合することにより行うことができる。重合反応は、通常、40℃~100℃、好ましくは60℃~95℃の温度で行われる。
【0075】
上記重合性不飽和モノマーとしては、通常、アクリル樹脂の合成で使用される重合性不飽和モノマーであれば特に制限なく用いることができ、例えば、スチレン;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の非官能基(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等のウレタン結合を含まない含窒素重合性不飽和モノマー;イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと水酸基含有化合物との反応生成物又は水酸基含有重合性不飽和モノマーとイソシアネート基含有化合物との反応生成物等のウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等、これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールマクロモノマー;などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、カチオン電着塗装の塗装性の観点から、3級アミノ基を有するモノマーが好ましい。また、壊れにくいシェル部を作製する観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを用いるか、及び/又は高Tg(50℃以上)の重合性不飽和モノマーを50質量%以上用いことが好ましい。
【0076】
上記乳化剤としては、アクリル樹脂エマルションの合成に使用される乳化剤であれば特に限定はなく、例えば、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤などが挙げられ、1種を単独で又は2種を以上組み合わせて用いることができる。なかでも、カチオン性乳化剤が好適である。
【0077】
上記乳化剤の使用量は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、0.1~15質量%程度が好ましく、0.5~10質量%程度がより好ましく、1~5質量%程度が更に好ましい。
【0078】
上記重合開始剤としては、アクリル樹脂エマルションの合成に使用される重合開始剤であれば特に限定はなく、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩等が挙げられ、油溶性または水溶性のいずれのタイプのものであってもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、0.1~5質量%程度が好ましく、0.2~3質量%程度がより好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0080】
かくして得られるコア/シェル型感温性マイクロカプセル化触媒は、水分散性であり、一般に10~1,000nm程度、好ましくは40~500nm程度、特に好ましくは70~200nm程度の範囲内の平均粒子径を有することができる。
【0081】
本明細書において、感温性マイクロカプセル化触媒の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0082】
また、本発明において、マイケル付加反応触媒(C)は、貯蔵安定性の観点から、エマルション粒子(A)、エマルション粒子(B)、マイクロカプセルのいずれかに内在していることが好ましく、カチオン電着塗料組成物の水性溶媒中に溶出していないことが好ましい。
そのため、カチオン電着塗料組成物を下記条件で遠心分離を行い、固形物成分(主に樹脂及び顔料)と溶媒成分に分離した時の溶媒成分(上澄み液)中に含まれるマイケル付加反応触媒(C)の含有量が、カチオン電着塗料組成物中の配合量を基準として、通常30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下であり、10質量%以下であることが好適である。尚、触媒(C)の測定は、例えば、ガスクロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィーを含む、当業者に周知の従来的な技法によって測定することができる。
<遠心分離条件>
カチオン電着塗料組成物を、25℃、3.5×104Gの相対遠心加速度で5時間遠心分離を行う。
【0083】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、必須成分である上記エマルション粒子(A)、エマルション粒子(B)、及びマイケル付加反応触媒(C)以外に、顔料分散ペースト、樹脂各種(アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、メラミン樹脂)、各種添加剤(界面活性剤、表面調整剤、中和剤)、溶媒等を必要に応じて含有することができる。
【0084】
上記顔料分散ペーストは、着色顔料、防錆顔料、及び体質顔料などの顔料をあらかじめ微細粒子に分散したものであって、例えば、顔料分散用樹脂、顔料、及び中和剤などの各種添加剤を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミル等の分散混合機中で分散処理して、顔料分散ペーストを調製することができる。
【0085】
上記顔料分散用樹脂としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば水酸基及びカチオン性基を有するエポキシ樹脂やアクリル樹脂、3級アミン型エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、3級スルホニウム塩型エポキシ樹脂、3級アミン型アクリル樹脂、4級アンモニウム塩型アクリル樹脂、3級スルホニウム塩型アクリル樹脂などを使用できる。
【0086】
上記顔料としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料;防錆顔料等を添加することができる。
【0087】
尚、本発明のカチオン電着塗料組成物において、顔料分散ペーストは、エマルション粒子(A)又はエマルション粒子(B)の中に含有することができる。
上記顔料分散ペーストの顔料配合量は、カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分100質量部あたり、1~100質量部、特に10~50質量部の範囲内が好ましい。
【0088】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、溶媒中に、水が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有していることが好適であり、実質的に水性塗料組成物といえる。
本発明のカチオン電着塗料組成物において、エマルション粒子(A)中に含まれるマイケル付加反応ドナー成分(活性水素基含有化合物)、及びエマルション粒子(B)中に含まれるマイケル付加反応アクセプター成分(α,β-不飽和カルボニル基を有する化合物)の含有割合としては、マイケル付加反応の反応性官能基比(モル比)で、通常0.5/1~1/0.5であり、好ましくは0.7/1~1/0.7であることが、貯蔵安定性が良好で、仕上がり性、防食性に優れた塗装物品を得る為にも好適である。
また、本発明において、防食性の観点から、塗料活性水素基含有化合物(A-1)又はα,β-不飽和カルボニル基を有する化合物(B-1)の少なくとも一方が重量平均分子量1,800以上のエポキシ樹脂であることが好ましい。また、いずれか一方が重量平均分子量1,800以上のエポキシ樹脂であり、もう一方が重量平均分子量1,800未満の化合物であってもよい。
【0089】
また、塗料中に含まれる樹脂全体のアミン価としては、樹脂固形分を基準として、アミン価が、通常5~200mgKOH/g、好ましくは10~150mgKOH/gの範囲内であることが好適である。配合割合が上記範囲であることにより、上記の塗料特性及び塗膜性能の少なくとも一方の特性に優れる。
【0090】
[電着塗装方法]
本発明の電着塗装方法は、カチオン電着塗料組成物からなる電着浴に被塗物を浸漬する工程、及び被塗物を陰極として通電して電着塗装する工程を含む。
本発明のカチオン電着塗料組成物の被塗物としては、自動車ボディ、2輪車部品、家庭用機器、その他の機器等が挙げられ、金属を含む被塗物であれば特に制限はない。
【0091】
被塗物としての金属鋼板としては、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛-鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材など、並びにこれらの金属板を必要に応じてアルカリ脱脂等の表面を洗浄化した後、リン酸塩化成処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理を行ったものが挙げられる。
【0092】
カチオン電着塗料組成物は、カチオン電着塗装によって所望の被塗物基材表面に塗装することができる。カチオン電着方法は、一般的には、脱イオン水等で希釈して固形分濃度が約5~40質量%とし、好ましくは10~25質量%とし、さらにpHを4.0~9.0、好ましくは5.5~7.0の範囲内に調整したカチオン電着塗料組成物を浴として、通常、浴温15~35℃に調整し、負荷電圧100~400V好ましくは150~350Vの条件で被塗物を陰極として通電することによって行う。電着塗装後、通常、被塗物に余分に付着したカチオン電着塗料を落とすために、限外濾過液(UF濾液)、逆浸透透過水(RO水)、工業用水、純水等で十分に水洗する。
【0093】
電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて5~40μm、好ましくは10~30μmの範囲内とすることができる。また、塗膜の焼き付け乾燥は、電着塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機などの加熱乾燥設備を用いて、塗装物表面の温度で、160℃より高く、且つ200℃より低い温度が一般的であるが、本発明においては、エネルギーコスト削減の観点から、通常0~130℃、好ましくは5~130℃、より好ましくは10~80℃の温度が好適である。
【0094】
マイケル付加反応触媒としてマイクロカプセル化触媒を用いた場合は、塗装物表面の温度がマイクロカプセルのTg以上の温度になることが好ましい。
焼き付け時間としては、通常10~180分間、好ましくは20~50分間、電着塗膜を加熱して行う。
上記焼付け乾燥により硬化塗膜を得ることができる。
【0095】
また、本発明においては、エネルギーコスト削減及び工程時間短縮の観点から、加熱乾燥設備として電磁誘導加熱を用いることができる。
上記電磁誘導加熱を用いた場合、塗装物表面の温度は上記と同じ温度(通常0~130℃、好ましくは5~130℃、より好ましくは10~80℃)であるが、焼き付け時間としては、通常1~15分間、好ましくは1~12分間、より好ましくは1~9分間である。
【実施例】
【0096】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0097】
以下に、実施例及び比較例で用いる各成分の製造例を示す。
[製造例1]
(活性水素基含有エポキシ樹脂No.1(マイケル付加反応ドナー成分))
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、jER828EL(商品名、三菱化学株式会社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量370)1000部に、ビスフェノールA400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量850になるまで反応させた。次に、ジエチルアミン15部、及びジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンとのケチミン化物187部を加え、120℃で4時間反応させた。さらにアセト酢酸102部を加えて4時間反応させ、エチレングリコールモノブチルエーテルで調整して固形分80%の活性水素基含有エポキシ樹脂溶液を得た。活性水素基含有エポキシ樹脂は、アミン価84mgKOH/g、重量平均分子量2,000であった。
【0098】
[製造例2]
(α,β-不飽和カルボニル基を有するエポキシ樹脂(マイケル付加反応アクセプター成分))
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、水素化ビスフェノールAとマレイン酸の付加物(水素化ビスフェノールA 1モルにマレイン酸2モルを付加した化合物)790部、jER828EL(商品名、三菱化学株式会社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量370)1000部、及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃で5時間反応させた。次に、ジエチルアミン178部を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルで調整して固形分80%のα,β-不飽和カルボニル基を有するエポキシ樹脂溶液を得た。α,β-不飽和カルボニル基を有するエポキシ樹脂は、アミン価78mgKOH/g、重量平均分子量2,000であった。
【0099】
[製造例3]
(アミノ基含有エポキシ樹脂No.1)
撹拌機、温度計、および還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828EL(商品名、三菱化学株式会社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量370)1200部に、ビスフェノールA 500部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量850になるまで反応させた。次に、ジエタノールアミン160部及びジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンとのケチミン化物65部を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル480gを加え、固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂溶液を得た。アミノ基含有エポキシ樹脂は、アミン価59mgKOH/g、重量平均分子量1,900であった。
【0100】
[製造例4]
(エポキシ樹脂付加アミン触媒No.1(マイケル付加反応触媒))
撹拌機、温度計、および還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828EL(商品名、 三菱化学株式会社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量370)370部、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン230部、イソブチルメチルケトン500部を加え、120℃に昇温し、5時間反応させた。その後、イソブチルメチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分50%のアミン触媒(マイケル付加反応触媒)溶液を得た。
【0101】
[製造例5]
(マイクロカプセル化触媒No.1(マイケル付加反応触媒))
攪拌器、温度計、デカンター、還流冷却器、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器にブチルセロソルブ500部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ120℃に昇温し、スチレン100部、メチルメタクリレート500部、ブチルアクリレート100部、ジメチルアミノエチルメタクリレート100部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート200部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート10部の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間さらに120℃で反応後、冷却し、ブチルセロソルブで調整して固形分50%の3級アミノ基含有アクリル樹脂を得た。得られた樹脂は、Tg60℃、アミン価35mgKOH/gであった。
上記3級アミノ基含有アクリル樹脂30部と製造例4で得られたエポキシ樹脂付加アミン触媒70部を混合した。更に、強く撹拌しながらイオン交換水をゆっくりと加えて相転換させ、エマルションを形成した。減圧下で溶媒を留去することにより、固形分32%のマイクロカプセル化触媒(マイケル付加反応触媒)を得た。該マイクロカプセル化触媒は上記エポキシ樹脂をコア部、上記アクリル樹脂をシェル部とするコアシェル型マイクロカプセル化構造を有し、シェル(アクリル樹脂)のTgである60℃以上の温度になるとコア部(エポキシ樹脂)の溶出が始まる。
【0102】
[製造例6]
(ブロック化ポリイソシアネート硬化剤)
反応容器中に、コスモネートM-200(商品名、三井化学株式会社製、クルードMDI)270部及びメチルイソブチルケトン127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレングリコールモノブチルエーテル236部を1時間かけて滴下して加え、その後、100℃に昇温し、この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分80%のブロック化ポリイソシアネート硬化剤を得た。
【0103】
[製造例7]
(顔料分散樹脂)
フラスコにトリレンジイシシアネート(TDI)696部、メチルイソブチルケトオキシム(MIBK)304部を加えて60℃に昇温し、2エチルヘキシルアルコール520部を滴下し、NCO価110.5になるまで反応させ、樹脂固形分80%の部分ブロックイソシアネートAを得た。
【0104】
次にこの部分ブロックイソシアネートA380部を取り、70℃でジメチルエタノールアミン89部を滴下し、実質的にNCOが無くなるまで反応させ、エチレングリコールモノブチルエーテル34.75部で希釈した後、90%の乳酸100部で中和して80%の乳酸中和アミノ基含有ブロックイソシアネートBを得た。
【0105】
別のフラスコに、jER828EL(商品名、三菱化学株式会社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量370)1125部、ビスフェノールA456部及びトリフェニルホスホニウムアイオダイド1.1部を加え、170℃でエポキシ当量790になるまで反応させたのち、MIBK279部で希釈し、ついで上記部分ブロックイソシアネートA760部を加え実質的にNCOが無くなるまで100℃で反応させた。
【0106】
次いでエチレングリコールモノブチルエーテル630部を加えて80℃まで冷却し、80%の乳酸中和アミノ基含有ブロックイソシアネートB860部を加え、酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂溶液を得た。
【0107】
[製造例8]
(顔料分散ペーストNo.1)
製造例7の顔料分散用樹脂溶液8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー9.0部、カーボンブラック0.3部、及び脱イオン水20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料分散ペーストNo.1を得た。
【0108】
[製造例9]
(顔料分散ペーストNo.2)
製造例7の顔料分散用樹脂溶液8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー7.0部、カーボンブラック0.3部、ジオクチル錫オキサイド1部、水酸化ビスマス1部、及び脱イオン水20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料分散ペーストNo.2を得た。
【0109】
[製造例10]
(活性水素基含有エポキシ樹脂No.2(マイケル付加反応ドナー成分))
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、jER828EL(商品名、三菱化学株式会社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量370)1000部に、ビスフェノールA400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量850になるまで反応させた。次に、アセト酢酸180部を加えて120℃で4時間反応させ、エチレングリコールモノブチルエーテルで調整して固形分80%の活性水素基含有エポキシ樹脂No.2溶液を得た。活性水素基含有エポキシ樹脂は、アミン価0mgKOH/g、重量平均分子量1,900であった。
【0110】
[製造例11]
(アミノ基含有エポキシ樹脂No.2)
撹拌機、温度計、および還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828EL(商品名、三菱化学株式会社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量370)1200部に、ビスフェノールA 500部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量850になるまで反応させた。次に、ジエタノールアミン100部及びジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンとのケチミン化物214部を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル480gを加え、固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂No.2溶液を得た。アミノ基含有エポキシ樹脂No.2は、アミン価90mgKOH/g、重量平均分子量2,000であった。
【0111】
[製造例12]
(アミノ基含有アクリル樹脂)
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル35部及びプロピレングリコールモノブチルエーテル25部を仕込み、加熱撹拌して110℃に保持した。この中に、「MPEG1000」(商品名、デグサ社製、分子量が約1000であるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート)10部、4-ヒドロキシブチルアクリレート10部、ジメチルアミノエチルメタクリレート20部、スチレン10部、イソボルニルアクリレート30部、メチルメタクリレート10部、n-ブチルアクリレート10部、アゾビスイソブチロニトリル1部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル20部からなる混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で30分間熟成し、次にプロピレングリコールモノメチルエーテル15部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる追加触媒混合液を1時間かけて滴下した。さらに110℃で1時間熟成したのち冷却し、固形分50%のアミノ基含有アクリル樹脂溶液を得た。アミノ基含有アクリル樹脂のアミン価は70mgKOH/g、重量平均分子量は20,000であった。
【0112】
[製造例13]
(エポキシ樹脂付加アミン触媒No.2(マイケル付加反応触媒))
撹拌機、温度計、および還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828EL(商品名、 三菱化学株式会社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量370)370部、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン278部、イソブチルメチルケトン500部を加え、120℃に昇温し、5時間反応させた。その後、イソブチルメチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分50%のアミン触媒No.2(マイケル付加反応触媒)溶液を得た。
【0113】
[製造例14]
(マイクロカプセル化触媒No.2(マイケル付加反応触媒))
攪拌器、温度計、デカンター、還流冷却器、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器にブチルセロソルブ500部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ120℃に昇温し、スチレン100部、メチルメタクリレート500部、ブチルアクリレート100部、ジメチルアミノエチルメタクリレート100部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート200部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート10部の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間さらに120℃で反応後、冷却し、ブチルセロソルブで調整して固形分50%の3級アミノ基含有アクリル樹脂を得た。得られた樹脂は、Tg60℃、アミン価35mgKOH/gであった。
上記3級アミノ基含有アクリル樹脂30部と製造例13で得られたエポキシ樹脂付加アミン触媒No.2 70部を混合した。更に、強く撹拌しながらイオン交換水をゆっくりと加えて相転換させ、エマルションを形成した。減圧下で溶媒を留去することにより、固形分32%のマイクロカプセル化触媒No.2(マイケル付加反応触媒)を得た。
【0114】
次に、実施例及び比較例について説明する。
各実施例及び比較例において、カチオン電着塗料組成物(顔料なし、顔料あり)をそれぞれ調製した後、顔料ありのカチオン電着塗料組成物を用いて電着塗装板を製造した。
なお、顔料ありと顔料なしの電着塗装板を製造した理由は以下の通りである。「顔料あり」のサンプルについては、後述の、樹脂粒子のみの貯蔵安定性評価(粒子径測定)評価において、顔料粒子の粒子径も同時に測定してしまうため、正確な評価が困難である。また、「顔料なし(透明塗膜)」のサンプルについては、後述の低温硬化性の評価において、ガーゼの色付着が評価できないため、正確な評価が困難である。
[実施例1]
(カチオン電着塗料組成物No.1-1)
製造例1で得られた活性水素基含有エポキシ樹脂溶液50部(固形分40部)、製造例4のアミン触媒溶液10.6部(固形分5.3部)、及び10%ギ酸3.2部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32%のマイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)を得た。
続いて製造例2で得られたα,β-不飽和カルボニル基を有するエポキシ樹脂溶液75部(固形分60部)及び10%ギ酸4.8部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32%のマイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)を得た。
上記のエマルション粒子(A)141.5部及びエマルション粒子(B)187.5部を混合し、固形分32%のカチオン電着塗料組成物(顔料なし)No.1-1を得た。
【0115】
(カチオン電着塗料組成物No.1-2)
続いて、上記塗料組成物No.1-1に、製造例8で得た55%の顔料分散ペーストNo.1 52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水289.1部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.1-2を得た。
【0116】
(電着塗装板の作製)
化成処理(商品名「パルボンド#3020」、日本パーカライジング株式会社製、リン酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、上記カチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.1-2を用いて乾燥膜厚15μmとなるように電着塗装し、80℃と100℃で20分間焼付け乾燥して電着塗装板(80℃焼付け乾燥と100℃焼付け乾燥の2枚)を得た。得られた電着塗装板の塗面の表面粗度値(Ra)を、表面粗度計(商品名「サーフテスト301」、株式会社ミツトヨ製)を用いて、カットオフ0.8mmにて測定した。表面粗度値(Ra)は0.25未満であり、良好な仕上がり性を有するものであった。
【0117】
[実施例2]
(カチオン電着塗料組成物No.2-1)
製造例1で得られた活性水素基含有エポキシ樹脂溶液50部(固形分40部)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-ノネン-5(DBN)2部、及び10%ギ酸3.2部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32.0%のマイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)を得た。
続いて製造例2で得られたα,β-不飽和カルボニル基を有するエポキシ樹脂溶液75部(固形分60部)及び10%ギ酸4.8部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32.0%のマイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)を得た。
上記のエマルション粒子(A)131.3部及びエマルション粒子(B)187.5部を混合し、固形分32%のカチオン電着塗料組成物(顔料なし)No.2-1を得た。
【0118】
(カチオン電着塗料組成物No.2-2)
続いて、製造例8で得た55%の顔料分散ペーストNo.1 52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水282.8部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.2-2を得た。
【0119】
(電着塗装板の作製)
化成処理(商品名「パルボンド#3020」、日本パーカライジング株式会社製、リン酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、上記カチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.2-2を用いて乾燥膜厚15μmとなるように電着塗装し、80℃と100℃で20分間焼付け乾燥して電着塗装板(80℃焼付け乾燥と100℃焼付け乾燥の2枚)を得た。得られた電着塗装板の塗面の表面粗度値(Ra)は0.30未満であり、標準的な仕上がり性を有するものであった。
【0120】
[実施例3]
(カチオン電着塗料組成物No.3-1)
製造例1で得られた活性水素基含有エポキシ樹脂溶液50部(固形分40部)、及び10%ギ酸3.2部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32.0%のマイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)を得た。
続いて製造例2で得られたα,β-不飽和カルボニル基を有するエポキシ樹脂溶液75部(固形分60部)及び10%ギ酸4.8部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32.0%のマイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)を得た。
上記のエマルション粒子(A)125部、エマルション粒子(B)187.5部、及び製造例5で得られたマイクロカプセル化触媒23.3部を混合し、固形分32%のカチオン電着塗料組成物(顔料なし)No.3-1を得た。
【0121】
(カチオン電着塗料組成物No.3-2)
続いて、カチオン電着塗料組成物No.3-1に、製造例8で得た55%の顔料分散ペーストNo.1 52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水293.3部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.3-2を得た。
【0122】
(電着塗装板の作製)
化成処理(商品名「パルボンド#3020」、日本パーカライジング株式会社製、リン酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、上記カチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.3-2を用いて乾燥膜厚15μmとなるように電着塗装し、80℃と100℃で20分間焼付け乾燥して良好な仕上がり性を有する電着塗装板(80℃焼付け乾燥と100℃焼付け乾燥の2枚)を得た。
【0123】
[実施例4]
(カチオン電着塗料組成物No.4-1)
製造例10で得られた活性水素基含有エポキシ樹脂No.2溶液81部(固形分65部)、製造例12のアミノ基含有アクリル樹脂溶液12部(固形分6部)、及び10%ギ酸3.2部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32%のマイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)を得た。
続いて、EBECRYL450(商品名、ダイセル・サイテック株式会社製、1分子につき平均6のアクリレート官能基を有するポリエステルアクリレート、重量平均分子量:約620)25部、製造例12のアミノ基含有アクリル樹脂8部(固形分4部)、及び10%ギ酸3.2部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32%のマイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)を得た。
上記のエマルション粒子(A)221.9部、エマルション粒子(B)90.6部、及び製造例14のマイクロカプセル化触媒No.2 23.3部を混合し、固形分32%のカチオン電着塗料組成物(顔料なし)No.4-1を得た。
【0124】
(カチオン電着塗料組成物No.4-2)
続いて、上記塗料組成物No.4-1に、製造例8で得た55%の顔料分散ペーストNo.1 52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水289.1部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.4-2を得た。
【0125】
(電着塗装板の作製)
化成処理(商品名「パルボンド#3020」、日本パーカライジング株式会社製、リン酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、上記カチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.4-2を用いて乾燥膜厚15μmとなるように電着塗装し、80℃と100℃で20分間焼付け乾燥して良好な仕上がり性を有する電着塗装板(80℃焼付け乾燥と100℃焼付け乾燥の2枚)を得た。
【0126】
[実施例5]
(カチオン電着塗料組成物No.5-1)
製造例10で得られた活性水素基含有エポキシ樹脂No.2溶液81部(固形分65部)、製造例12のアミノ基含有アクリル樹脂溶液12部(固形分6部)、及び10%ギ酸3.2部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32%のマイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)を得た。
続いて、EBECRYL450(商品名、ダイセル・サイテック株式会社製、1分子につき平均6のアクリレート官能基を有するポリエステルアクリレート、重量平均分子量:約1600)25部、製造例13のエポキシ樹脂付加アミン触媒No.2 10.6部(固形分5.3部)、製造例12のアミノ基含有アクリル樹脂溶液8部(固形分4部)、及び10%ギ酸3.2部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32%のマイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)を得た。
上記のエマルション粒子(A)221.9部及びエマルション粒子(B)107.2部を混合し、固形分32%のカチオン電着塗料組成物(顔料なし)No.5-1を得た。
【0127】
(カチオン電着塗料組成物No.5-2)
続いて、上記塗料組成物No.5-1に、製造例8で得た55%の顔料分散ペーストNo.1 52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水289.1部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.5-2を得た。
【0128】
(電着塗装板の作製)
化成処理(商品名「パルボンド#3020」、日本パーカライジング株式会社製、リン酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、上記カチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.5-2を用いて乾燥膜厚15μmとなるように電着塗装し、80℃と100℃で20分間焼付け乾燥して良好な仕上がり性を有する電着塗装板(80℃焼付け乾燥と100℃焼付け乾燥の2枚)を得た。
【0129】
[実施例6]
(カチオン電着塗料組成物No.6-1)
製造例11で得られたアミノ基含有エポキシ樹脂No.2溶液87.5部(固形分60部)、及び10%ギ酸3.2部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32%のマイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)を得た。
続いて、エポキシエステル3002A(商品名、共栄社化学株式会社製、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、重量平均分子量:約1600)35部、製造例12のアミノ基含有アクリル樹脂溶液10部(固形分5部)、及び10%ギ酸3.2部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32%のマイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子Bを得た。
上記のエマルション粒子(A)187.5部、エマルション粒子(B)125部、及び製造例14のマイクロカプセル化触媒No.2 23.3部を混合し、固形分32%のカチオン電着塗料組成物(顔料なし)No.6-1を得た。
【0130】
(カチオン電着塗料組成物No.6-2)
続いて、上記塗料組成物No.6-1に、製造例8で得た55%の顔料分散ペーストNo.1 52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水289.1部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.6-2を得た。
【0131】
(電着塗装板の作製)
化成処理(商品名「パルボンド#3020」、日本パーカライジング株式会社製、リン酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、上記カチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.9-2を用いて乾燥膜厚15μmとなるように電着塗装し、80℃と100℃で20分間焼付け乾燥して良好な仕上がり性を有する電着塗装板(80℃焼付け乾燥と100℃焼付け乾燥の2枚)を得た。
【0132】
[比較例1]
(カチオン電着塗料組成物No.7-1)
製造例1で得られた活性水素基含有エポキシ樹脂溶液50部(固形分40部)及び10%ギ酸3.2部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32.0%のマイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)を得た。
続いて製造例2で得られたα,β-不飽和カルボニル基を有するエポキシ樹脂75部(固形分60部)及び10%ギ酸4.8部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32.0%のマイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)を得た。
上記のエマルション粒子(A)125部、及びエマルション粒子(B)187.5部を混合し、次いで1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-ノネン-5(DBN)2部とエマルゲン707(商品名、花王株式会社製、非イオン性界面活性剤)1部の混合物を添加し、固形分32%のカチオン電着塗料組成物(顔料なし)No.7-1を得た。
【0133】
(カチオン電着塗料組成物No.7-2)
続いて、上記カチオン電着塗料組成物No.7-1に、製造例8で得た55%の顔料分散ペーストNo.1 52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水282.8部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.7-2を得た。
【0134】
(電着塗装板の作製)
化成処理(商品名「パルボンド#3020」、日本パーカライジング株式会社製、リン酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、上記カチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.7-2を用いて乾燥膜厚15μmとなるように電着塗装し、80℃と100℃で20分間焼付け乾燥して電着塗装板(80℃焼付け乾燥と100℃焼付け乾燥の2枚)を得た。
【0135】
[比較例2]
(カチオン電着塗料組成物No.8-1)
製造例1で得られた活性水素基含有エポキシ樹脂溶液50部(固形分40部)及び10%ギ酸3.2部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32.0%のマイケル付加反応ドナー成分を含有するエマルション粒子(A)を得た。
続いて製造例2で得られたα,β-不飽和カルボニル基を有するエポキシ樹脂75部(固形分60部)及び10%ギ酸4.8部を配合し、均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下し、固形分32.0%のマイケル付加反応アクセプター成分を含有するエマルション粒子(B)を得た。
上記のエマルション粒子(A)125部及びエマルション粒子(B)187.5部を混合し、固形分32%のカチオン電着塗料組成物(顔料なし)No.8-1を得た。
【0136】
(カチオン電着塗料組成物No.8-2)
続いて、上記カチオン電着塗料組成物No.8-1に、製造例8で得た55%の顔料分散ペーストNo.1 52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水282.8部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.8-2を得た。
【0137】
(電着塗装板の作製)
化成処理(商品名「パルボンド#3020」、日本パーカライジング株式会社製、リン酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、上記カチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.8-2を用いて乾燥膜厚15μmとなるように電着塗装し、80℃と100℃で20分間焼付け乾燥して良好な仕上がり性を有する電着塗装板(80℃焼付け乾燥と100℃焼付け乾燥の2枚)を得た。
【0138】
[比較例3]
(カチオン電着塗料組成物No.9-1)
製造例3で得られたアミノ基含有エポキシ樹脂溶液87.5部(固形分70部)及び製造例6で得られたブロック化ポリイソシアネート硬化剤37.5部(固形分30部)を混合し、さらに10%酢酸13部を配合して均一に攪拌した後、脱イオン水174.5部を強く攪拌しながら約15分間を要して滴下して固形分32%のカチオン電着塗料組成物(顔料なし)No.9-1を得た。
【0139】
(カチオン電着塗料組成物No.9-2)
続いて、上記カチオン先着塗料組成物No.9-1に、312.5部(固形分100部)に、製造例9で得た55%の顔料分散ペーストNo.2 52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水279.1部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.9-2を得た。
【0140】
(電着塗装板の作製)
化成処理(商品名「パルボンド#3020」、日本パーカライジング株式会社製、リン酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、上記カチオン電着塗料組成物(顔料あり)No.9-2を用いて乾燥膜厚15μmとなるように電着塗装し、80℃と100℃で20分間焼付け乾燥して良好な仕上がり性を有する電着塗装板(80℃焼付け乾燥と100℃焼付け乾燥の2枚)を得た。
【0141】
上記実施例及び比較例で得られたカチオン電着塗料組成物(顔料なし、顔料あり)を後述する評価試験により評価した。評価結果を表1および表2に示す。
2つの評価試験のうち、1つでも不合格「D」の結果が出た場合、その塗料は不合格である。また、評価は顔料あり又は顔料なしの塗料で評価しているが、どちらか一方で不合格「D」の結果が出た場合、その塗料系は全て不合格である
【0142】
[評価試験]
<貯蔵安定性>
実施例及び比較例で得られたカチオン電着塗料組成物(顔料なし)を30℃の温度で1ヶ月貯蔵して、貯蔵前後の粒径変化を比較した。
粒径の測定は、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター株式会社製)を用いた。評価は、A~Cが合格であり、Dが不合格である。
A:貯蔵後の平均粒径が、貯蔵前の平均粒径を基準としてプラス10%未満である。
B:貯蔵後の平均粒径が、貯蔵前の平均粒径を基準としてプラス10%以上、かつプラス20%未満である。
C:貯蔵後の平均粒径が、貯蔵前の平均粒径を基準としてプラス20%以上、かつプラス40%未満である。
D:貯蔵後の平均粒径が、貯蔵前の平均粒径を基準としてプラス40%以上である。
【0143】
<低温硬化性>
実施例及び比較例で得られたカチオン電着塗料組成物(顔料あり)をガラス板上に乾燥塗膜が15μmとなるようにアプリケーターで塗布し、120℃の温度で30分間加熱した。その後、アセトンを滲みこませたガーゼを用いて500gの荷重で5回往復させ、ラビング処理を行った。ガーゼ及び塗膜の状態を下記基準に基づいて評価することにより、低温硬化性を評価した。評価は、A~Cが合格であり、Dが不合格である。
A:基材の露出および顔料のガーゼへの移行は全く確認されない。
B:基材の露出は確認できないが、顔料のガーゼへの移行が僅かに確認される。
C:基材の露出は確認されないが、顔料のガーゼへの移行が多少確認される。
D:顔料のガーゼへの移行が著しく、さらに基材の露出が確認される。
【0144】
【0145】