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特許7149948波面の測定品質を評価する方法及びそのような方法を実現する装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】波面の測定品質を評価する方法及びそのような方法を実現する装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20220930BHJP
   G01J 9/02 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
G01M11/02 B
G01J9/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019540542
(86)(22)【出願日】2018-01-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2018051970
(87)【国際公開番号】W WO2018138269
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】1750684
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】304032424
【氏名又は名称】イマジン・オプチック
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】レベック、ザビエル
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526985(JP,A)
【文献】特表2003-511182(JP,A)
【文献】特開2016-000139(JP,A)
【文献】特開平08-005505(JP,A)
【文献】特開2001-050819(JP,A)
【文献】特開2015-150815(JP,A)
【文献】Optical Engineering,2013年,Vol.52 No.7,p.071413-1~071413-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - 11/02
G01J 1/00
G01J 9/00 - 9/04
A61B 3/00 - 3/18
G01B 9/02 - 9/029
G01B 11/00 - 11/30
G02C 13/00
H01L21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって特性解析される対象からの光波面の測定品質を評価する方法であって、
-2次元検出器を備えた、特性解析される対象からの光波面を測定するための波面センサを用いて得られる光電気信号を取得するステップ(10)と、
-前記光電気信号に基づいて、当該光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つ以上のパラメータを決定するステップ(11)と、
-波面測定の品質係数を、前記光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つ以上のパラメータの関数として評価するステップ(12)と、
-測定品質のレベルを、前記品質係数の関数として前記ユーザに表示するステップ(13)と、
を備え、
前記光電気信号に基づいて、当該光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つ以上のパラメータを決定するステップは、
前記光電気信号に基づいて、所定の数の点において波面の生の局所的傾きを計算するステップ(115)と、
波面の再構成を得るために、前記生の局所的傾きを積分するステップ(116)と、
生の局所的傾きの各々に関し、積分可能な成分を決定するために、再構成された波面を微分するステップ(117)と、
前記ステップ(117)により、前記点の各々で積分可能な局所的傾きのサブセットを形成するステップと、
積分不可能な局所的傾きの成分のサブセットを得るために、前記点の各々で、生の局所的傾きから積分可能な局所的傾きを減算するステップ(118)と、を備え、
当該光電気信号の寄生成分を特徴づけるパラメータは、前記積分不可能な局所的傾きの成分のサブセットを含むことを特徴とする、光波面の測定品質を評価する方法。
【請求項2】
前記品質係数は、前記積分不可能な局所的傾きの成分の少なくとも一部のピーク-バレー値又は二乗平均平方根(RMS)に基づいて評価されることを特徴とする、請求項1に記載の光波面の測定品質を評価する方法。
【請求項3】
前記品質係数は、前記積分不可能な局所的傾きの成分の少なくとも一部のパワースペクトル密度(PSD)値に基づいて評価されることを特徴とする、請求項1または2に記載の光波面の測定品質を評価する方法。
【請求項4】
当該光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つ以上のパラメータを決定するステップは、
-波面の測定に有用な信号によってカバーされない検出器の領域(321-324)を特定するステップ(111)と、
-前記領域における信号に基づいて、信号の寄生成分を特徴づけるパラメータを決定するステップ(112)と、
を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の光波面の測定品質を評価する方法。
【請求項5】
ユーザによって特性解析される対象からの光波面を解析する方法であって、
-2次元検出器を備えた、特性解析される対象からの光波面を測定するための波面センサを用いて得られる光電気信号を取得するステップと、
-波面を測定するために、前記光電気信号に基づいて、波面を再構成するステップと、
-請求項1から4のいずれかに記載の光波面の測定品質を評価する方法に従って波面測定の品質係数を前記光電気信号に基づいて評価するステップと、品質のレベルを前記品質係数の関数として前記ユーザに表示するステップと
を備えることを特徴とする、波面の直接測定により光波面を解析する方法。
【請求項6】
直接測定によって光波面を解析するシステム(20)であって、
-特性解析される対象からの波面測定を可能とする光電気信号をユーザが取得するための2次元検出器(210)を与えられた波面センサ(21)と、
-前記光電気信号に基づいて、波面を再構成するための光電気信号処理ユニット(22)と、
-測定品質のレベルを、品質係数の関数としてユーザに表示する表示ユニット(23)と、
を備え、
前記光電気信号処理ユニット(22)はさらに、
・前記光電気信号に基づいて、前記光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つのパラメータを決定し、
・波面測定の品質係数を、前記光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つのパラメータの関数として評価し、
前記光電気信号に基づいて、当該光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つ以上のパラメータを決定するステップは、
前記光電気信号に基づいて、所定の数の点において波面の生の局所的傾きを計算するステップ(115)と、
波面の再構成を得るために、前記生の局所的傾きを積分するステップ(116)と、
生の局所的傾きの各々に関し、積分可能な成分を決定するために、再構成された波面を微分するステップ(117)と、
前記ステップ(117)により、前記点の各々で積分可能な局所的傾きのサブセットを形成するステップと、
積分不可能な局所的傾きの成分のサブセットを得るために、前記点の各々で、生の局所的傾きから積分可能な局所的傾きを減算するステップ(118)と、を備え、
当該光電気信号の寄生成分を特徴づけるパラメータは、前記積分不可能な局所的傾きの成分のサブセットを含むことを特徴とする、直接測定によって光波面を解析するシステム。
【請求項7】
前記波面センサは、2次元検出器の前に位置づけられたマイクロレンズのマトリックス、又は、2次元検出器の前に位置づけられた孔のマトリックス、を備え、
前記光電気信号は、それぞれ、測定対象の波面によって照射された前記マイクロレンズの各々によって形成されるスポットのアレイ、又は、測定対象の波面によって照射された前記孔の各々によって形成されるスポットのアレイ、を備えることを特徴とする、請求項6に記載の直接測定によって光波面を解析するシステム。
【請求項8】
前記波面センサは、2次元検出器の前に位置づけられた位相アレイを備え、
前記光電気信号は、測定対象の波面が通過する位相アレイによって生成された波の干渉に起因する像によって形成されるスポットのアレイを備えることを特徴とする、請求項6に記載の直接測定によって光波面を解析するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、光波の波面の測定品質を評価する方法、より具体的には、波面解析器を用いて直接測定によって得られた波面の測定品質を評価する方法に関する。本明細書はまた、このような方法を用いた波面の直接測定による波面解析システムを含む。
【背景技術】
【0002】
光波の波面解析(以下、本明細書では簡単に「光波面解析」と呼ぶ)には、以下のような多くの応用がある。すなわち、光源(レーザー光源、レーザーダイオード、LED)、屈折型又は反射型の光学部品(撮影レンズ、ミラー、フィルター、ウィンドウ等)の品質認定、変形可能な光学部品(例えば、変形可能ミラー、液晶バルブ、液晶レンズ、より一般的には、能動的光学部品、補償光学部品又はビーム成形に使われる任意の位相変調器など)の制御、などである。
【0003】
特に、波面の直接測定(解析対象の波面と参照波面との干渉を用いる干渉技術とは対照的な)による波面解析には、既知の技術が存在する。直接測定による波面解析の技術により、局所的な波面の傾き(すなわち、波面の一次微分)を決定することができる。こうした技術は一般に、波面センサを用いて、光路の角度の変化を解析することに基づく。こうした波面センサは、一組の1つ以上の光学部品と、一般に2次元検出器とを備える。
【0004】
このようにして、直接測定による波面解析の技術の中で、例えば(すべてではないが)、Hartmann及びShack Hartmann、横切断干渉法、モアレ画像によるデフレクトメトリ、Schlieren法として知られる技術に言及することができる。以下でこれらの技術を簡単に説明する。
【0005】
Hartmann及びShack Hartmannの技術では、波面センサは、(通常は2次元)検出器の前に典型的には数ミリメートルの距離を置いて位置づけられた孔又はマイクロレンズのマトリックスを含む。この技術では、孔又はマイクロレンズにより、スポットのアレイが検出器の上に形成される。収差のない平面波面が存在する中での、これらのスポットの各々の参照位置に対する変位の測定は、観測された波面の局所的傾きに直接比例し、すなわち、観測された波面上に存在する収差の微分に直接比例する。この比例係数は、孔又はマイクロレンズのマトリックスと、検出器との距離に等しい。これらの局所的傾きを数値積分することにより、測定された歯面の位相を得ることができる(例えば、"Principles and History of Shack-Hartmann "、Journal of Refractive Surgery Volume 17 September/October 2001を参照)。
【0006】
横切断干渉法は、例えば米国特許6577403公報に記載される。この技術によれば、複数の「娘」波が、「母」波によって照射された回折格子から異なる伝播軸に沿って生成され、伝播後に干渉する。干渉パターンは、回折格子の例えば数ミリメートル後に配置された2次元の検出器によって記録される。この干渉パターンの変形は、解析される波面の局所的傾きに比例する。これらの変形を解析することにより、波面の局所的傾きを計算することができ、これを積分することにより波面の位相を得ることができる。
【0007】
モアレ画像デフレクトメトリとして知られる技術(例えば米国特許出願公開20100310130公報を参照)では、波面センサは、良好な空間コヒーレンスを持つ波源からの波によって照射された可変強度のパターンのアレイを含む。これらのパターンは、制御されるべき光学素子を光波が通過するとき変形する。これらの変形は、可変強度のパターンのネットワークの共役面内に配置された2次元の検出器上に記録される。これらの変形を解析することにより、制御されるべき光学素子を光線が通過するとき、この光線によって生じる偏差を追跡することができる。これらの偏差は、波面の局所的傾き(これは、制御されるべき光学素子によって導入された光学収差の局所的な変化を表す)である。このようにして測定された局所的傾きを積分することにより、波面が計算される。
【0008】
Schlieren法(例えば米国特許出願公開20050036153公報を参照)では、測定対象の光学素子を通過した後の波面が、空間的に可変な光学密度ブレードのある焦点面内にフォーカスされる。光線が測定対象の光学素子を通過すると、焦点面内の光線の位置は、この光線に生じる角度の偏差に直接比例する。その後これらの光線は、測定対象物の共役面内に配置された検出器上で画像化される。各ピクセル上の信号レベルにより、ピクセル上に入射したビームに生じる減衰が求まる。これにより、このビームが測定対象光学素子を通過するときに、当該ビームに生じる角度の偏差を知ることができる。従って、2次元検出器によって得られた信号レベルのマップにより、測定対象の光学素子を通過したときの波面の局所的傾きを求めることができる。
【0009】
一般に、直接測定による波面解析の技術は、干渉技術より実現が容易であり(参照波面を使用しない)、光源からの波面の特性解析を可能とする。従ってこれらの技術は、特に光学部品の特性評価で広く使われている。これらの技術はまた、より変形が著しい波面の解析を可能とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの技術を実行したときに、得られた波面の測定精度をユーザが検証することは難しい。実際、これらの解析システムの実施条件は、ユーザが簡単に測定できるような波面でない限り、波面の測定の妨げとなる可能性がある。例えば、寄生光源(延長するもの、あるいはスポットであるもの)、解析対象の光学部品のジオプター上の寄生反射、あるいは寄生干渉の存在は、検出器に寄生信号を発生させる可能性がある。この寄生信号は、波面の局所的傾きの測定を妨げる可能性があり、従って波面の再構成を劣化させる可能性がある。
【0011】
本明細書の目的は、波面解析器を用いて直接測定によって得られた波面の測定品質を評価する方法を与えることにある。これにより、ユーザに実行された観測の品質係数を与え、同様に、これにより測定の信頼性レベルの評価を可能とし、必要であれば波面解析の実行条件にフィードバックを与える。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本明細書は、光波面の測定品質を評価する方法に関する。測定は、直接測定による波面解析器を用いて行われる。この方法は、
-2次元検出器を備えた波面を測定するための波面センサを用いて、光電気信号を取得するステップと、
-光電気信号に基づいて、当該光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つ以上のパラメータを決定するステップと、
-波面測定の品質係数を、光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つ以上のパラメータの関数として評価するステップと、
-測定品質のレベルを、品質係数の関数としてユーザに表示するステップと、
を備える。
【0013】
上で説明した波面の測定品質を評価する方法により、ユーザは、測定自体に使われる光電気信号に基づいて、実行された測定の信頼性を考察できる。これにより、一方では実行された測定についての信頼できる品質係数を得ることができ、他方では特別なツール(例えば、寄生光測定試験)による追加的な試験を実施する必要性を避けることができる。
【0014】
1つ以上の典型的な実施の形態では、光電気信号の寄生成分を表すパラメータは、波面測定に有用な信号によってカバーされない2次元検出器の領域における信号を含んでもよい。測定品質を評価するためにこのようなパラメータを決定することは、例えば、寄生信号源が環境光であって、2次元検出器上に不均一な拡散背景信号を形成する場合や、良好なコヒーレンスを持つ点光源である場合に好適である。
【0015】
従って、1つ以上の典型的な実施の形態では、光電気信号に基づいて光電気信号の寄生成分を特徴づけるパラメータを決定するステップは、
-波面の測定に有用な信号によってカバーされない検出器の領域を特定するステップと、
-当該領域における信号に基づいて、信号の寄生成分を特徴づけるパラメータを決定するステップと、
を含んでもよい。
1つ以上の典型的な実施の形態では、光電気信号の寄生成分を特徴づける別のパラメータは、局所的傾きの測定値の積分不可能な成分のサブセット(以下、「積分不可能な局所的傾き」と呼ぶ)を含んでもよい。
【0016】
本明細書では、波面の局所的傾きを測定するために光電気信号に基づいて決定された量を「測定された局所的傾き」又は「生の局所的傾き」と呼ぶ。これは、選択される(先行技術で思い出されるような)技術(Shack Hartmann、横切断干渉法、モアレ画像によるデフレクトメトリ、Schlieren法、等)に応じて、異なる仕方で定義することができる。所定の点で、測定された局所的傾きは、特に波面の局所的傾きを含む積分可能な成分を含む。この成分が究極的に求められるものである。一方同じ点で、測定された局所的傾きは、積分不可能な成分も含む。この成分は(存在するときは)その起源に関わらず、光電気信号の寄生成分にのみ関連する。
【0017】
従って、生の局所的傾きの中の積分不可能な成分(本明細書では「積分不可能な局所的傾き」と呼ぶ)の存在は、光電気信号の寄生成分を特徴づける非常によいパラメータとなり、従って測定品質の非常によい指標となる。特に、測定品質係数の評価のためのこうした特徴パラメータは、測定に有用な信号が位置する領域の外側の領域をカバーする検出器上に寄生信号が光束を発生させる場合のみならず、寄生信号が測定に有用な信号が位置する領域に寄生信号が位置する場合にも好適である。
【0018】
従って、1つ以上の典型的な実施の形態では、光電気信号の寄生成分を特徴づけるパラメータを決定するステップは、
-光電気信号に基づいて、所定の数の点において生の局所的傾きを計算するステップと、生の局所的傾きの各々に関し積分不可能な成分を決定し、これにより積分不可能な局所的傾きのサブセットを形成するステップと、を備える。
1つ以上の典型的な実施の形態では、積分不可能な局所的傾きの組を決定するステップは、
-波面の再構成を得るために、生の局所的傾きを積分するステップと、
-生の局所的傾きの各々に関し、積分可能な成分を決定するために、再構成された波面を微分するステップと、点の各々で積分可能な局所的傾きのサブセットを形成するステップと、
-積分不可能な局所的傾きのサブセットを得るために、点の各々で、生の局所的傾きから積分可能な局所的傾きを減算するステップと、
を備える。
【0019】
1つ以上の典型的な実施の形態では、その後品質係数は、積分不可能な局所的傾きの少なくとも一部のピーク-バレー値又は二乗平均平方根(「root mean square」のアングロサクソンの略語では「RMS」)に基づいて評価することができる。
【0020】
1つ以上の典型的な実施の形態では、品質係数はまた、積分不可能な局所的傾きの少なくとも一部のパワースペクトル密度(又は「PSD」)、あるいはこうしたパラメータの組み合わせ(例えばRMSとPSD)に基づいて評価することができる。
【0021】
第2の態様では、本明細書は、波面の直接測定により光波面を解析する方法に関する。この方法は、
-波面を測定するための2次元検出器を用いて、光電気信号を取得するステップと、
-波面を測定するために、光電気信号に基づいて、波面を再構成するステップと、
-第1の態様の方法に従って波面測定の品質係数を評価するステップと、品質のレベルを品質係数の関数としてユーザに表示するステップと
を備える。
【0022】
第3の態様では、本明細書は、直接測定によって光波面を解析するシステムに関する。このシステムは、
-波面測定を可能とする光電気信号を取得するための2次元検出器(210)を与えられた波面センサ(21)と、
-光電気信号に基づいて波面を再構成するための光電気信号処理ユニット(22)と、
-測定品質のレベルを、品質係数の関数としてユーザに表示する表示ユニット(23)と、
を備え、
処理ユニットはさらに、
・光電気信号に基づいて、光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つのパラメータを決定し、
・波面測定の品質係数を、光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つのパラメータの関数として評価する。
【0023】
1つ以上の典型的な実施の形態では、波面センサは、2次元検出器の前に位置づけられたマイクロレンズのマトリックスを含み、光電気信号は、測定対象の波面によって照射されたマイクロレンズの各々によって形成されるスポットのアレイを含む。
【0024】
1つ以上の典型的な実施の形態では、波面センサは、2次元検出器の前に位置づけられた孔のマトリックスを含み、光電気信号は、測定対象の波面によって照射された孔の各々によって形成されるスポットのアレイを含む。
【0025】
1つ以上の典型的な実施の形態では、波面センサは、2次元検出器の前に位置づけられた位相アレイを備え、光電気信号は、測定対象の波面が通過する位相アレイによって生成された波の干渉に起因する像によって形成されるスポットのアレイを備える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明のその他の利点と特徴を、以下の図面を参照しながら説明する。
図1】本明細書に係る光波面の測定品質を評価する方法のステップを示す図である。
図2】本明細書に係る直接測定による光波面解析システムの例を示す図である。
図3A】本明細書に係る直接測定による光波面の解析品質を評価する方法の第1の例のステップを示す図である。
図3B図3Aに示す方法のステップを実行中に特定される寄生信号の例を表す検出器により取得された光電気信号の例である。
図3C図3Aに示す方法のステップを示す図である。
図4】本明細書に係る直接測定による光波面の解析品質を評価する方法の第2の例のステップを示す図である。
図5A】寄生干渉によって妨げられた、波面解析システムの検出器により取得された光電気信号の例である。
図5B】すべての生の局所的傾き(これらは、図5Aに示される光電気信号に基づいて、波面解析システムによって計算される)を積分した後の波面である。
図6A図5Aに示される光電気信号に基づいて計算された波面の生の局所的傾きの組を示す画像である。
図6B】波面(図5Bに示される)の微分に基づいて計算された波面の局所的な積分可能な傾きの組を示す画像である。
図6C】すべての生の局所的傾き(図6A)から、波面の積分可能な局所的傾きの組(図6B)を減算することに基づいて計算された波面の局所的な積分不可能な傾きの組を示す画像である。
図7A】生の局所的傾きのパワースペクトル密度を示す図である。
図7B】積分可能な局所的傾きのパワースペクトル密度を示す図である。
図7C】積分不可能な局所的傾きのパワースペクトル密度を示す図である。 一貫性のために、異なる図面の同じ要素は、同じ符号で区別される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2に、それぞれ一般に、光波面の測定品質を評価する方法のステップ、及び、そのような方法を実行する直接測定による解析システムを示す。
【0028】
より正確には、図2に示される波面解析システム20は、光電気信号(これにより、波面の測定を可能とする)を取得するための2次元検出器210を備える波面解析器21と、1つ以上の光学素子(図2で単一の素子211で示される)の集合と、を含む。波面解析システムはまた、光電気信号に基づいて波面を再構成する目的で検出器210によって取得された光電気信号を処理するために適用される処理ユニット22と、表示ユニット23と、を含む。処理ユニットはまた、以下に示すように、本明細書に係る波面の測定品質を評価する方法を実行するのに好適である。これにより、品質を評価する方法が実行されたとき、測定の「品質係数」が、例えばカラーコードからのカラー形式で、あるいは数字で、表示ユニット23に表示される。
【0029】
図2の例では、波面解析システム20は、それ自体は光を発しない対象物OBJの特性を解析するのに好適である。典型的な実施の形態では、波面解析システム20はまた、対象物の照射源24を含む。代替的に、対象物は、解析システムには属さない外部光源によって照射される。測定は、伝達において行われてもよい(図2の場合)が、反射システム(例えばミラー)の解析の場合は反射において行われてもよい。特性解析される対象物OBJは、例えば(すべてではないが)屈折型又は反射型の光学部品、例えば、撮像レンズ、ミラー、フィルター、のぞき窓等である。対象物OBJはまた、変形可能な光学部品、例えば、変化可能ミラー、液晶バルブ、液晶レンズ、より一般的には、能動的光学部品、補償光学部品又はビーム成形に使われる任意の位相変調器などである。この場合、解析される波面は、照射された対象物からの波面である。波面の解析は、対象物の特性解析を可能とする。光源24は、例えばレーザー、(ファイバか否かを問わず)レーザーダイオード、(ファイバか否かを問わず)スーパールミネッセントダイオード、(ファイバか否かを問わず)LED又はランプで照射された孔などである。
【0030】
もちろん、特性解析される対象物が光源(例えばレーザー光源、レーザーダイオード光照射ダイオード又はLEDなど)である場合は、測定の実行のために図2に示される光源を与える必要はない。実際、解析される波面は、直接的にそれ自身が解析の対象である光源から発せられた波面である。
【0031】
図1に、本明細書に係る波面の測定品質を評価する方法(これは、例えば図2に示される波面解析システムを用いて実行される)のステップの一例を示す。
【0032】
この方法は、波面を測定するための波面センサを用いて、光電気信号を取得するステップ(ステップ10)と、光電気信号に基づいて、当該光電気信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つ以上のパラメータを決定するステップ(ステップ11)と、波面測定の品質係数を、信号の寄生成分を特徴づける少なくとも1つ以上のパラメータの関数として評価するステップ(ステップ12)と、当該品質係数の関数として決定された品質のレベルを、例えば図2に示される表示ユニット上に表示するステップ(ステップ13)と、を備える。
【0033】
本明細書はまた、直接測定により波面を解析する方法を含む。この方法は、図1に示される波面の測定品質を評価する方法を含む。
【0034】
「背景技術」で説明したように、特に直接測定による波面解析の技術はすべて、共通の解析が望まれる波面の局所的傾きの測定を含む。寄生信号がない場合、これらの局所的傾きは、再構成が望まれる波面の位相の第1微分に一致する。
【0035】
より具体的には、以下の説明において、直交座標系(x、y)で定義される測定面内の座標(i、j)で測定された局所的傾き(「生の」局所的傾き)は、x軸に沿った座標とy軸に沿った座標とで表すことができると考えられるだろう。従ってすべての生の局所的傾きは、傾きxのテーブル(「tabX」)と傾きyのテーブル(「tabY」)とで表すことができる。従って、測定面内の座標点(i、j)における生の局所的傾きは、x軸に沿った成分として「tabX(i、j)」と、y軸に沿った成分として「tabY(i、j)」とを持つだろう。以下の説明では、処理は、x軸に沿った傾きのテーブル、及び/又は、y軸に沿った傾きのテーブルから実行される。
【0036】
測定された局所的傾き(生の局所的傾き)を波面の位相に変換するために、生の局所的傾きの数値積分が実行される。2次元の信号をデジタル的に積分するためにはいくつかの方法がある。これは例えば、いわゆる「ゾーン」積分であってよい。この説明は、以下の記事に示される。
"Wave-front estimation from wave-front slope measurements" J. Opt. Soc. Am、Vol.70、No. 8、August 1980
【0037】
波面の測定精度を評価する方法は、波面自体の測定と同時に実行する、すなわち、検出器によって得られた光電気信号に基づく波面の再構成に付随して実行することができる。この場合ユーザは、再構成された波面と、表示された品質係数の値とを、両方同時に知る。こうしてユーザは、実行された測定が信頼できるかを考察する。
【0038】
波面の測定品質を評価する方法はまた、波面自体の測定の後まで先延ばしすることもできる。実際、光電気信号が得られて保存されれば、ユーザは品質係数の評価を、波面が測定された後の任意のタイミングで時間の制限なく開始してよい。
【0039】
測定品質係数を評価するために、検出器210によって取得された光電気信号に基づいて、寄生信号成分を表す複数のパラメータを決定することができる。パラメータの特性は、寄生信号のタイプに依存してよい。これらのパラメータを組み合わせることも可能だろう。
【0040】
図3A図3C(一方)及び図4図7(他方)は、異なるパラメータ(いずれも信号の寄生成分を表す)が特定される2つの例を示す。
【0041】
図3Aに、本明細書に係る波面の測定品質を評価する方法の第1の例を示す。この場合、信号は、波面の測定に有用な信号によってカバーされない、2次元検出器の領域で検出される。測定品質係数の評価のためのこのような特性パラメータは、寄生信号源が環境光であって2次元検出器上に不均一な拡散背景信号を形成する場合や、良好な空間的コヒーレンスを持つスポット光源である場合などに、特に好適である。
【0042】
図3Aに示される方法は、波面の測定のために光電気信号を取得するステップ(ステップ10)の後に、当該光電気信号に基づいて、波面の測定に有用な信号によってカバーされない領域を特定するステップ111を含む。
【0043】
図3Bに、例えば、測定が行われる部屋の環境光に起因する拡散寄生信号が存在するときに、Shack Hartmann解析器の2次元の検出器によって取得された画像を示す。スポット31のアレイは、マイクロレンズマトリックス(解析されるべき波面はここを通過する)によって生成されたスポットを表す。このスポット31のアレイは、有用な信号を表す。この図は、部屋の環境光に起因する寄生信号に起因する、拡散した不均一な寄生流を明確に示す。この信号は、有用な信号によってカバーされない2次元検出器の領域で、簡単に特定することができる(領域32)。図3Cは、マイクロレンズ(有用な信号)により生成されたスポットを表す領域31と、領域31の外部の領域32とを模式的に示す。
【0044】
その後、波面の測定品質を評価する方法は、波面測定に有用な信号によってカバーされない領域で測定された光電気信号に基づいて、寄生成分を決定するステップ(ステップ112)と、寄生成分を表す少なくとも1つのパラメータに基づいて品質係数を計算するステップ(ステップ121)と、を含む。
【0045】
例えば、Hartmann Shack解析器の場合、ステップ111、112及び121は、以下のように実行することができる。-ステップ111:マイクロレンズマトリックスにより形成されたスポットから生の局所的傾きを計算するとき、各マイクロレンズで形成されたスポットの周囲の寄生信号の所定の数の観測領域は、検出器からの光信号に基づいて特定される。図3Cでは、符号321、322、323及び324で示される4つのゾーンが例示されている。
-ステップ112:各スポットに関し、マトリックス検出器の光電気信号の値は、寄生信号321、322、323及び324の観測領域で測定され、これらの平均が計算される。このようにして、信号の寄生成分を表すパラメータに相当する寄生フローの強度のマップが得られる。
-ステップ121:例えば、ステップ112で得られた寄生フラックス強度のマップを平均化することによって、品質係数が計算される。この例では、品質係数の値が大きければ大きいほど、ユーザに対する干渉信号によって測定が妨げられていることを表す。
【0046】
別の例(これもHartmann Shack解析器の場合だが)では、ステップ111、112及び121は、以下のように実行することができる。
-ステップ111:マイクロレンズマトリックスにより形成されたスポットから生の局所的傾きを計算するとき、各マイクロレンズで形成されたスポット31の周囲の寄生信号321、322、323及び324の所定の数(先の例では、例えば4つ)の観測領域は、検出器からの光電気信号に基づいて特定される。これにより、有用な信号の周囲の寄生信号の不均一さを表すマップが得られる。このマップは、信号の寄生成分を表すパラメータを形成する。
-ステップ112:各スポットに関し、マトリックス検出器の光電気信号の値は、寄生信号321、322、323及び324の観測領域で測定される。そして、2×2で所得された領域における光電気信号の値の違いの絶対値が計算され、平均化される。
このようにして、信号の寄生成分を表すパラメータに相当する寄生フローの強度のマップが得られる。
-ステップ121:例えば、ステップ112で得られた有用な信号の周囲の干渉信号の不均一マップを平均化することによって、品質係数が計算される。この例では、品質係数の値が大きければ大きいほど、測定が干渉信号によって乱されていることを表す。
【0047】
いずれの場合も「測定品質」は表示される。例えば、カラーの不連続な数や複数の数は、計算された品質係数の値に関連し、それぞれのカラーや数が何に相当するかをユーザに示す。このようにして、例えば、品質係数の5つのレベル、すなわちそれぞれ、最高、高、中間、低、最低の5つのレベルがあってよい。品質係数のレベルに応じて、ユーザは、より良好な測定条件を回復するために、実行すべき測定回数の推薦を受けてよい。品質のレベルが満足されない場合、いくつかの改良を行うことができる。例えば、
-環境光を低減する(測定が行われる部屋の照明を消す)。
-波面解析器の検出器を照射する可能性のある(部分的に、であっても)寄生光源を隠す。こうした干渉光源は、例えば、コンピュータモニタ、電子機器のオンオフインジケータ、デスクライトなどである。
-背景画像(すなわち、波面測定のために取得した画像から減算されるべき画像)を取得する。背景画像を取得する方法の1つは、測定の実行に使われるビームを生成する光源(例えば、図2の光源24)を切った(又は隠した)状態で、波面解析器の検出器からの画像を取得することである。
【0048】
前述の測定品質レベルの典型的な計算及び表示は、Shack-Hartmann解析器の特定の場合に示されたが、これらは、直接測定による波面解析器の任意の1つに容易に適用することができる。
【0049】
図4に、波面の測定品質を評価するために、寄生信号成分を表すパラメータを決定するステップの第2の典型的な例を示す。この例では、寄生信号成分を特徴づけるパラメータは、光電気信号に基づいて決定される生の局所的傾きのサブセットであって、積分不可能な局所的傾きによって形成されるものを含む。
【0050】
本出願人は以下の測定を行った。直接測定による波面解析器は、波面の微分のみを測定することができる。従ってこれらの解析器は、連続的な波面、すなわちその傾きが100%積分可能な波面のみを測定することができる。従って、測定された局所的傾きに積分不可能な局所的傾きの特定及び認定は、波面測定の実行品質の客観的な表示となる。実際、最適な実行条件下で実行される波面測定は、積分不可能なものが無視できる程度の(又はほとんどゼロの)局所的傾きの組を与えなければならない。これに対して、寄生信号に起因する劣化が、100%積分可能な特性を持つ理由はない。従って、こうした劣化は、波面測定を劣化させる可能性のある積分可能な傾きの組と、積分不可能な傾きの組とを生成する。これを評価することにより、品質係数を決定することができる。実際、積分不可能な局所的傾きの存在は、寄生信号に起因する寄生的な積分可能な局所的傾きの存在(これは、解析が望まれる波面の再構成の妨げとなるだろう)の指標となる。
【0051】
例えば、図5Aは、128×128のマイクロレンズを備えるHartmann Shack解析器で取得された光電気信号を示す。この解析器は、平坦で平行な面(これら面の一方は半反射コーティングされ、他方はコーティングされない)を持つ回折格子を通過する光波面の位相を測定する。図示されたビームは波長1064nmの単色光であり、そのコヒーレンス長はブレードの厚さより遥かに長い。従って、信号は、ブレードの両側での二重反射によって発生する寄生波によって乱される。この寄生波は、ブレードを通過したビームと干渉する。この干渉のコントラストは非常に弱く、この干渉をマトリックス検知器からの光電気信号上で検知することは難しい。しかしながら、この干渉の効果は、波面測定の結果に明確に表れ(図5B)、波面解析器の精度の2倍の測定誤差を発生させる。図6Aは、図5Aに示される光電気信号に基づいて計算された生の局所的傾きのマップを示す。図6Bは、図5Bに示される波面のデジタル微分によって得られた積分可能な局所的傾きのマップを示す。図6Cは、積分不可能な局所的傾き(すなわち生の局所的傾きと積分可能傾きとの差の結果)のマップを示す。図6A、6B及び6Cは、局所的傾きを表すため、同じスケールで表示される。干渉の効果が、著しい強度の(積分可能な局所的傾きの強度と同じオーダの大きさの)積分不可能な局所的傾きを生成することが直ちに分かる。局所的傾きのデータの表示を簡単化するため、これらはベクトルで表されている。このベクトルの基準と向きは、x軸及びy軸に沿った2つの傾きのテーブルに基づいて計算される。
【0052】
図7A図7B及び図7Cはそれぞれ、x軸に沿った生の局所的傾き(図7A)、x軸に沿って積分可能な局所的傾き(図7B)及びx軸に沿って微分不可能な局所的傾き(図7C)、のパワースペクトル密度(PSD)を示す。これらの図は、それぞれ、x軸に沿った局所的傾き、積分可能な傾き、及び積分不可能な傾き、のテーブルから得られる。パワースペクトル密度は、x軸に沿った局所的傾きのテーブルのフーリエ変換数の2乗を計算することによって得られる。この計算の結果は、パワー密度テーブルを与える。表示された曲線の各々は、それぞれの空間周波数に関するパワースペクトル密度テーブルの積分の結果である。同じ計算を、y軸に沿った局所的傾きのテーブルから行うことももちろん可能である。
【0053】
典型的な実施の形態では、積分不可能な局所的傾きからの品質係数の計算(図4のステップ125)は、例えば、単純に、x軸に沿って積分不可能な局所的傾きのテーブルのRMS値、y軸に沿って積分不可能な局所的傾きのテーブルのRMS値、及び得られた2つのRMS値の平均を計算することによって実行することができる。当然、品質係数の値が大きければ大きいほど、測定値はより大きく乱されていることを示す。品質係数は、この他にも様々な方法で計算することができる。
【0054】
例えば、典型的な実施の形態では、品質係数の計算は、積分不可能な局所的傾きの周波数(空間周波数)の挙動を考慮に入れることができる。実際、ユーザが探し求める情報は、波面の情報、すなわち測定された局所的傾き(生の局所的傾き)の積分結果である。しかしながら、局所的傾きの誤差が、積分実行中に波面に再注入される強度は、局所的傾き誤差の空間周波数に依存する。空間周波数が低い誤差は、積分実行中に高い波面誤差を発生させる。一方、空間周波数が高い誤差は、低い波面誤差を発生させる。積分可能な局所的傾きの周波数挙動と、積分不可能な局所的傾きの周波数挙動とは同じであるので、積分可能な局所的傾きの周波数を調べることにより、波面測定の劣化の重要性に関する我々の知見を改善することができる。特に測定品質係数の計算において、積分不可能な傾きの、低い空間周波数に所定の重みを与えることができる。例えばこの重みは、空間周波数の逆数であってよい。あるいは、品質係数の計算において、その空間周波数がカットオフ周波数の所定のパーセンテージより小さいような傾きだけを保存するように定めてもよい。
【0055】
ある実施の形態では、積分不可能な局所的傾きに基づいて実行される品質係数(Q)の計算(図4のステップ125)は、以下のように実行することができる。
【0056】
図7A図7Cに示されるように、x軸及びy軸に沿って積分不可能な局所的傾きに関し、積分されたパワースペクトル密度(DSP)をそれぞれDSPix及びDSPiyとおく。
【0057】
最大の空間周波数(すなわち、この値以下のDSPの周波数を考慮の対象とする値)をfmaxとおく。例えば、品質係数を計算するときに低い空間周波数が望まれる場合、fmaxはDSPix及びDSPiyのカットオフ周波数の1/4に設定されてよい(図7の場合、カットオフ周波数は64である)。
【0058】
この場合、品質係数Qは以下のようになる。
【数1】
【0059】
この例では、測定品質は、Qが1より小さいとき最良で、Qが20を超えると最悪と考えることができる。
【0060】
別の典型的な実施の形態では、積分不可能な局所的傾きから実行される品質係数(Q)の計算(図4のステップ125)は、以下のように実行することができる。
【0061】
図7A図7Cに示されるように、DSPix及びDSPiyは、それぞれx軸及びy軸に沿って積分不可能な局所的傾きの積分されたDSPである。
【0062】
DSPix及びDSPiyのカットオフ周波数をfcとおく(図7の場合、カットオフ周波数は64である)。
【0063】
品質係数Qは以下のようになる。
【数2】
【0064】
この例では、測定品質は、Qが0.25より小さいとき最良、Qが5を超えると最悪と評価することができる。
【0065】
再び、先の例はShack Hartmann解析器に関して説明したが、直接測定による波面解析器の任意の1つに適用することができる。
【0066】
前述のように、その後「品質係数」を表示させることができる。例えば、カラー又は数は、計算された品質係数の値に関連し、それぞれのカラーや数が何に相当するかをユーザに示す。このようにして、例えば、品質係数の5つのレベル、すなわちそれぞれ、最高、高、中間、低、最低の5つのレベルがあってよい。品質係数のレベルに応じて、ユーザは、より良好な測定条件を回復するために、実行すべき測定回数の推薦を受けてよい。品質のレベルが満足されない場合、いくつかの改良を行うことができる。例えば、
-環境光を低減する(測定が行われる部屋の照明を消す)。
-波面解析器の検出器を照射する可能性のある(一部であっても)寄生光源を隠す。こうした干渉光源は、例えば、コンピュータモニタ、電子機器のオンオフインジケータ、デスクライトなどである。
-背景画像(すなわち、波面測定のために取得した画像から減算されるべき画像)を取得する。背景画像を取得する方法の1つは、測定の実行に使われるビームを生成する光源(例えば、図2の光源24)を切った(又は隠した)状態で、波面解析器の検出器にからの画像を取得することである。
-測定の実施に使われるビーム焦点面(もしこのような面が存在すれば)内の寄生光のためのフィルタホールを設置する。
これは、反射システムにおける「ダブルパス」測定に有効である。
-干渉の任意のリスクを低減するために、可能であれば光源の時間コヒーレンスを小さくする。
【0067】
測定品質係数を計算するために、光電気信号の寄生成分を表すいくつかのパラメータを組み合わせて使うことももちろん可能である。例えば、測定の最終品質係数が、図3Aと関連付けて説明した方法を用いて計算された品質係数を、図4と関連付けて説明した方法を用いて計算された品質係数と掛け合わせて算出されてもよい。
【0068】
いくつかの詳細な実施の形態を用いて説明したが、光波面の測定品質を評価する方法、及びそのような方法を実行する直接測定による波面解析システムは、当業者に自明な、異なる代替的な実施の形態、変形及び改良を含む。こうした異なる実施の形態、変形及び改良は、以下の請求項で定義される本発明の範囲内あることが理解される。
【0069】
特に本発明をShack Hartmannの例を用いて説明したが、本発明はHartmann型システム、横切断干渉型システム、あるいはより一般的に、波面の局所的傾きを測定するために設計された直接エッジ解析器に適用することもできる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C