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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ポリマービーズ及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20220930BHJP
   B01J 41/14 20060101ALI20220930BHJP
   B01J 47/014 20170101ALI20220930BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20220930BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C08F2/44 Z
B01J41/14
B01J47/014
C02F1/42 B
B01J20/26 G
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019542569
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 AU2018050089
(87)【国際公開番号】W WO2018145152
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】2017900397
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519280874
【氏名又は名称】イクソム オペレーションズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド マシュー ロイ
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105061663(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0341554(US,A1)
【文献】特表2007-530717(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103881023(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105884985(CN,A)
【文献】XUE, P. et al.,Hydrophilic porous magnetic poly(GMA-MBAA-NVP) composite microspheres containing oxirane groups: An efficient carrier for immobilizing penicillin G acylase,Journal of Magnetism and Magnetic Materials,2014年11月28日,p.306-312
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
C08F 6/00 -246/00
B01J39/20
B01J41/14
B01J47/014
C02F 1/42
B01J20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子材料が分布する多孔質ポリマーマトリックス及びイオン交換能力を有するポリマービーズを製造するためのプロセスであって、
(i)分散有機相及び連続相を有する分散物を用意するステップ、前記分散有機相は、
(a)重合性モノマー組成物、
(b)固体粒子材料、
(c)非ポリマーポロゲン、及び
(d)前記分散有機相全体に前記固体粒子材料を分散させるための分散剤、
を含み、
)ポリマーポロゲン
を含まず、
前記重合性モノマー組成物は、
)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー
(g)少なくとも4個の連続した非環式原子によって分離された少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の架橋モノマー、及び
(h)前記ビーズの前記ポリマーマトリックスにアミン官能基の形のイオン交換サイトを供給する、又は反応時に供給する、官能基を有する1種以上の官能性モノマー
を含む、
(ii)前記重合性モノマー組成物を前記非ポリマーポロゲン及び固体粒子材料の存在下で重合して、前記ビーズの前記多孔質ポリマーマトリックスを形成するステップ
を含むプロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1種の架橋モノマーが、エチレングリコールジメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラート、メチレンビスアクリルアミド、トリエチレングリコールジアクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート、グリセロールジアクリラート、グリセロールジメタクリラート、1,3-ブタンジオールジアクリラート及び1,3-ブタンジオールジメタクリラート、1,3-プロパンジオールジアクリラート、1,3-プロパンジオールジメタクリラート、1,3-ペンタンジオールジアクリラート、1,3-ペンタンジオールジメタクリラート、1,4-ブタンジオールジアクリラート、1,4-ブタンジオールジメタクリラート、ヘキサメチレングリコールジアクリラート、ヘキサメチレングリコールジメタクリラート、デカメチレングリコールジアクリラート、デカメチレングリコールジメタクリラート、2,2-ジメチロールプロパンジアクリラート、2,2-ジメチロールプロパンジメタクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、トリプロピレングリコールジメタクリラート、2,2-ジ(p-ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリラート、2,2-ジ(p-ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリラート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジアクリラート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジアクリラート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、並びにそれらの組合せから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記少なくとも1種の架橋モノマーが、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ペンタエリスリトールトリアクリラート、ペンタエリスリトールトリメタクリラート、グリセロールトリアクリラート、グリセロールトリメタクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリラート、ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートトリアクリラート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシル化トリメチロールプロパントリメタクリラート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリメタクリラート、エトキシル化グリセロールトリアクリラート、エトキシル化グリセロールトリメタクリラート、プロポキシル化グリセロールトリアクリラート、プロポキシル化グリセロールトリメタクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリメタクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールトリアクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールトリメタクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリラート及びそれらの組合せから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記固体粒子材料が磁性を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記磁性固体粒子材料がマグヘマイト、マグネタイト、二酸化クロム及びそれらの組合せから選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記非ポリマーポロゲンが、トルエン、ベンゼン、ブタノール、イソオクタノール、シクロヘキサノール、ドデカノール、イソアミルアルコール、第三級アミルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、n-ヘプタン、イソオクタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジブチル及びそれらの組合せから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
孔質ポリマーマトリックスを含み、固体粒子材料及び多孔質ポリマーマトリックス全体に分散させた分散剤を有するイオン交換能力を有するポリマービーズであって、前記ポリマーマトリックスが(i)(a)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー(b)少なくとも4個の連続した非環式原子によって分離された少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の架橋モノマーの重合モノマー残基及び(c)前記ビーズの前記ポリマーマトリックスにアミン官能基の形のイオン交換サイトを供給する、又は反応時に供給する、官能基を有する1種以上の官能性モノマーを含み、前記ポリマーマトリックスが、非ポリマーポロゲンを含み、ポリマーポロゲンを含まない、ポリマービーズ。
【請求項8】
孔質ポリマーマトリックスを含み、固体粒子材料及び多孔質ポリマーマトリックス全体に分散させた分散剤を有するイオン交換能力を有するポリマービーズであって、前記ポリマーマトリックスが(i)(a)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー(b)少なくとも4個の連続した非環式原子によって分離された少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の架橋モノマーの重合モノマー残基及び(c)前記ビーズの前記ポリマーマトリックスにアミン官能基の形のイオン交換サイトを供給する、又は反応時に供給する、官能基を有する1種以上の官能性モノマーを含み、前記ポリマーマトリックスがポロゲンを含まない、ポリマービーズ。
【請求項9】
前記非ポリマーポロゲンが、トルエン、ベンゼン、ブタノール、イソオクタノール、シクロヘキサノール、ドデカノール、イソアミルアルコール、第三級アミルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、n-ヘプタン、イソオクタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジブチル及びそれらの組合せから選択される、請求項に記載のポリマービーズ。
【請求項10】
前記少なくとも1種の架橋モノマーが、エチレングリコールジメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラート、メチレンビスアクリルアミド、トリエチレングリコールジアクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート、グリセロールジアクリラート、グリセロールジメタクリラート、1,3-ブタンジオールジアクリラート及び1,3-ブタンジオールジメタクリラート、1,3-プロパンジオールジアクリラート、1,3-プロパンジオールジメタクリラート、1,3-ペンタンジオールジアクリラート、1,3-ペンタンジオールジメタクリラート、1,4-ブタンジオールジアクリラート、1,4-ブタンジオールジメタクリラート、ヘキサメチレングリコールジアクリラート、ヘキサメチレングリコールジメタクリラート、デカメチレングリコールジアクリラート、デカメチレングリコールジメタクリラート、2,2-ジメチロールプロパンジアクリラート、2,2-ジメチロールプロパンジメタクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、トリプロピレングリコールジメタクリラート、2,2-ジ(p-ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリラート、2,2-ジ(p-ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリラート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジアクリラート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジアクリラート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、並びにそれらの組合せから選択される、請求項からのいずれか一項に記載のポリマービーズ。
【請求項11】
前記少なくとも1種の架橋モノマーが、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ペンタエリスリトールトリアクリラート、ペンタエリスリトールトリメタクリラート、グリセロールトリアクリラート、グリセロールトリメタクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリラート、ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートトリアクリラート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシル化トリメチロールプロパントリメタクリラート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリメタクリラート、エトキシル化グリセロールトリアクリラート、エトキシル化グリセロールトリメタクリラート、プロポキシル化グリセロールトリアクリラート、プロポキシル化グリセロールトリメタクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリメタクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールトリアクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールトリメタクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリラート及びそれらの組合せから選択される、請求項からのいずれか一項に記載のポリマービーズ。
【請求項12】
前記固体粒子材料が磁性を有する、請求項から11のいずれか一項に記載のポリマービーズ。
【請求項13】
前記磁性固体粒子材料がマグヘマイト、マグネタイト、二酸化クロム及びそれらの組合せから選択される、請求項12に記載のポリマービーズ。
【請求項14】
水溶液を処理する方法であって、前記水溶液を請求項から13のいずれか一項に記載のポリマービーズと接触させるステップを含む方法。
【請求項15】
溶存有機炭素を水溶液から除去する方法であって、(i)前記水溶液を請求項から13のいずれか一項に記載のポリマービーズと接触させるステップ、及び(ii)溶存有機炭素がその上に吸着したポリマービーズを前記水溶液から除去するステップを含む方法。
【請求項16】
イオンを水溶液から除去する方法であって、(i)前記水溶液を請求項7から13のいずれか一項に記載のポリマービーズと接触させるステップ、及び(ii)除去すべき前記イオンとイオン交換したポリマービーズを前記溶液から除去するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ポリマービーズ、それを調製するためのプロセス、及びその適用に関する。ポリマービーズは、望ましくない混入物を水から除去するのに使用するのに特に適し、したがって本発明を本願に関連して本明細書に記述することが好都合であろう。しかし、ポリマービーズを他の用途にも使用できることを理解されたい。
【背景技術】
【0002】
世界の大半では、人が飲用水を十分に利用できていない。したがって、重要な研究は、水から混入物を除去して、それを飲用にする製品及びプロセスの開発に向けられている。
【0003】
例えば、溶存有機炭素(DOC:dissolved organic carbon)で汚染された水の処理にポリマービーズが応用されてきた。その場合、水中のDOCは、ポリマービーズ表面に吸着することができる。ポリマービーズは、イオン交換能力を付与して、当該技術分野において一般にイオン交換樹脂と称するものを提供することもできる。ポリマービーズにイオン交換能力を付与すると、それらの混入物除去効率を高めることができる。
【0004】
使用時、ポリマービーズは、イオン交換能力があってもなくても、カラムに充填することができ、汚染水をカラムに通して精製することができる。しかし、混入物を水から除去するこの「充填カラム」手法は、その効率が限定的であり得る。
【0005】
ポリマービーズを応用する一代替手法は、イオン交換能力があってもなくても、ポリマービーズを汚染水と一緒にタンク中で撹拌する必要がある。この手法によって、ポリマービーズを汚染水と最大接触させることができる。しかし、その後にポリマービーズ(一般に極めて小さい)を水から分離することが問題になり得る。
【0006】
水からの混入物の除去を促進するために、ポリマービーズに汚染水と接触するその表面積を増加させる多孔性を付与することができる。
【0007】
それを通して分布した固体粒子材料を有するポリマービーズは、ポリマービーズの密度を増加させることによって、及び/又は水からポリマービーズを分離するのに使用することができる磁化率などの別の性質を付与することによって、水からのポリマービーズの分離を更に容易にすることができる。
【0008】
特許文献1は、固体粒子材料を含むポリマービーズを開示する。ポリマービーズは、イオン交換能力を付与することができ、DOCなどの混入物を水から除去するのに有効であることが判明した。
【0009】
水からの混入物の除去に使用するのに適した有効なポリマービーズの存在にもかかわらず、公知のポリマービーズ技術を向上させる、又は少なくとも有用な代替を提供する、新しいポリマービーズ技術を開発する機会が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第96/07675号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、固体粒子材料が分布する多孔質ポリマーマトリックスを有するポリマービーズを製造するためのプロセスであって、
(i)分散相及び連続相を有する分散物を用意するステップ、分散相は、
(a)重合性モノマー組成物、
(b)固体粒子材料、
(c)非ポリマーポロゲン
を含み、
(d)ポリマーポロゲン
を含まず、
重合性モノマー組成物は、
(e)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、及び
(f)少なくとも4個の連続した非環式原子によって分離された少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の架橋モノマー
を含む、
(ii)重合性モノマー組成物を非ポリマーポロゲン及び固体粒子材料の存在下で重合して、ビーズの多孔質ポリマーマトリックスを形成するステップ
を含むプロセスを提供する。
【0012】
驚くべきことに、本発明に従って製造されたポリマービーズは、他の公知の類似ポリマービーズに比べて、混入物を水から除去する優れた能力を示すことが今回見いだされた。理論に拘泥するものではないが、非ポリマーポロゲンと組み合わせ、ポリマーポロゲンと組み合わせずに、特定の架橋モノマーを使用すると、驚くべきことに水からのDOCなどの汚染物質の除去を促進する特別なモルフォロジーをポリマービーズのポリマーマトリックスに付与すると考えられる。そのモルフォロジーは、驚くべきことに、改善された機械的性質をそのように形成されたビーズに付与するとも考えられる。
【0013】
一実施形態においては、そのように形成されたポリマービーズを清浄化ステップに供して、非ポリマーポロゲンをポリマービーズのポリマーマトリックスから除去する。
【0014】
本発明は、それを通して固体粒子材料を分布させた多孔質ポリマーマトリックスを含むポリマービーズであって、ポリマーマトリックスが(i)(a)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー及び(b)少なくとも4個の連続した非環式原子によって分離された少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の架橋モノマーの重合モノマー残基を含み、ポリマーマトリックスが、非ポリマーポロゲンを含み、ポリマーポロゲンを含まない、ポリマービーズも提供する。
【0015】
本発明は、更に、それを通して固体粒子材料を分布させた多孔質ポリマーマトリックスを含むポリマービーズであって、ポリマーマトリックスが(i)(a)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー及び(b)少なくとも4個の連続した非環式原子によって分離された少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の架橋モノマーの重合モノマー残基を含み、ポリマーマトリックスがポロゲンを含まない、ポリマービーズを提供する。
【0016】
当業者は、ポリマービーズの調製にポロゲンを使用してポリマービーズのポリマーマトリックス全体に多孔性を付与することをよく知っている。予想外に、発明に係る特定の架橋モノマーと組み合わせて非ポリマーポロゲンを使用すると、有利なことに(i)DOCなどの混入物を水から除去する能力を改善し、(ii)機械的性質を改善する、ポリマービーズのモルフォロジーを生じる。
【0017】
一実施形態においては、分散相は有機相であり、連続相は水相である。分散有機相は、固体粒子材料を含む。
【0018】
別の一実施形態においては、ポリマービーズは、イオン交換能力が付与される。その場合、ポリマービーズは、ビーズのポリマーマトリックスにイオン交換サイトを供給する、又は反応時に供給する、官能基を有する1種以上の官能性モノマーを含む重合性モノマー組成物を用いて製造される。
【0019】
一実施形態においては、少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー及び/又は少なくとも1種の架橋モノマーは、イオン交換サイトを供給する、又は反応時に供給する、官能基を有する官能性モノマーである。
【0020】
別の一実施形態においては、ポリマービーズは、イオン交換能力を有し、又は反応するとイオン交換能力を与える。
【0021】
更なる一実施形態においては、ポリマーマトリックスは、ポリマービーズのイオン交換サイトを供給する、又は反応時に供給する、官能基を有する1種以上の官能性モノマーの重合モノマー残基を含む。
【0022】
別の一実施形態においては、少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー及び/又は少なくとも1種の架橋モノマーの重合モノマー残基は、重合官能性モノマー残基である。
【0023】
本発明は、水溶液を処理する方法であって、本発明の、又は本発明に従って調製された、ポリマービーズと前記水溶液を接触させるステップを含む方法も提供する。水溶液の処理は、混入物をDOCなどの溶液から除去することを含むことができる。
【0024】
本発明は、更に、イオンを水溶液から分離する方法であって、イオン交換能力を有する、本発明の、又は本発明に従って調製された、ポリマービーズと溶液を接触させるステップを含む方法も提供する。
【0025】
本発明の更なる態様及び/又は実施形態を以下でより詳細に記述する。
【0026】
本発明を本明細書において以下の非限定的図面を参照して記述する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係るポリマービーズの中程度に平滑な表面モルフォロジーを示すSEM画像である。
図2】ポリマーポロゲン及びトリメチロールプロパントリメタクリラート(すなわち、TMPTMA架橋モノマー)を用いて調製されたポリマービーズのくぼみのある表面モルフォロジーを示すSEM画像である。
図3】非ポリマーポロゲン及びジビニルベンゼン(すなわち、架橋モノマー)を用いて調製されたポリマービーズの極めて平滑な表面モルフォロジーを示すSEM画像である。
図4図1(本発明に係る新しい樹脂)、図2(PP樹脂-比較)及び図3(古い樹脂-比較)に示したタイプのポリマービーズを用いた3種の米国起源水試料A、B及びCからのDOC除去性能を示すグラフである。
図5図1(本発明に係る新しい樹脂)及び図3(古い樹脂-比較)に示したタイプのポリマービーズを用いたオーストラリア起源水試料からのDOC除去性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係るポリマービーズは、多孔質ポリマーマトリックスを有する。「多孔質」ポリマーマトリックスを有するとは、ビーズ構造を形成するポリマーマトリックスが内部及び表面の孔(空隙)を有することを意味する。
【0029】
本発明に係るポリマービーズは、固体粒子材料が分布する多孔質ポリマーマトリックスを有する。固体粒子材料が多孔質ポリマーマトリックス中に「分布する」とは、固体粒子材料が、ポリマーマトリックス自体の中に含まれ、全体に拡散している(すなわち、ポリマーマトリックスの孔隙内に単に位置するのでなない)ことを意味する。
【0030】
以下でより詳細に考察するように、ポリマービーズのポリマーマトリックスは、重合性モノマー組成物から形成され、したがって、その分子構造の一部としてその組成物由来の重合モノマー残基を含む。
【0031】
本発明に係るプロセスは、分散相及び連続相を有する分散物を用意するステップを含む。分散物は、当該技術分野で周知の技術に従って調製することができる。例えば、分散物は、分散又は懸濁重合の周知の技術を実施するのに適切な様式で調製することができる。
【0032】
当業者は、分散物の分散相が合体するのを防止するために、安定剤を使用するのが望ましい場合もあることを理解されたい。使用される安定剤のタイプは、分散相と連続相の両方の性質に依存する。分散相が合体するのを防止するのに使用することができる適切な安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム又はそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0033】
安定剤は、一般に、全分散物の重量に基づいて約0.01~約5重量%、例えば約0.05~約2.0重量%の量で使用される。
【0034】
一実施形態においては、分散相は有機相であり、連続相は水相である。その場合、プロセスは、分散有機相及び連続水相を有する分散物を用意するステップを含む。
【0035】
分散相は、重合性モノマー組成物を含む。重合性モノマー組成物自体は、少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマーを含む。
【0036】
「モノエチレン性不飽和モノマー」とは、重合してポリマーを形成することができる1個の二重結合を有するモノマーを意味する。適切なモノマーは、フリーラジカルプロセスによって重合することができるものである。モノマーは、他のモノマーとも重合可能であるべきである。種々のモノマーの共重合性を決定する因子は、当該技術分野において詳細に記録されている。例えば、Greenlee,R.Z.「Polymer Handbook」3版(Brandup,J.及びImmergut.E.H.編)Wiley:ニューヨーク、1989pII/53を参照されたい。こうしたモノマーとしては、一般式(I)のものが挙げられ、
【0037】
【化1】
【0038】
式中、U及びWは、-COH、-CO、-COR、-CSR、-CSOR、-COSR、-CONH、-CONHR、-CONR 、水素、ハロゲン及び場合によっては置換されたC~Cアルキルから独立に選択され、又はUとWは一緒に、それ自体場合によっては置換されていてもよいラクトン、無水物又はイミド環を形成し、任意選択の置換基は、ヒドロキシ、-COH、-CO、-COR、-CSR、-CSOR、-COSR、-CN、-CONH、-CONHR、-CONR 、-OR、-SR、-OCR、-SCOR及び-OCSRから独立に選択され、
Vは、水素、R、-COH、-CO、-COR、-CSR、-CSOR、-COSR、-CONH、-CONHR、-CONR 、-OR、-SR、-OCR、-SCOR及び-OCSRから選択され、
又は各Rは、場合によっては置換されたアルキル、場合によっては置換されたアルケニル、場合によっては置換されたアルキニル、場合によっては置換されたアリール、場合によっては置換されたヘテロアリール、場合によっては置換されたカルボシクリル、場合によっては置換されたヘテロシクリル、場合によっては置換されたアリールアルキル、場合によっては置換されたヘテロアリールアルキル、場合によっては置換されたアルキルアリール、場合によっては置換されたアルキルヘテロシクリル、場合によっては置換されたアルキルヘテロアリール、及び場合によっては置換されたポリマー鎖から独立に選択される。
【0039】
又は各Rは、場合によっては置換されたC~C22アルキル、場合によっては置換されたC~C22アルケニル、場合によっては置換されたC~C22アルキニル、場合によっては置換されたC~C18アリール、場合によっては置換されたC~C18ヘテロアリール、場合によっては置換されたC~C18カルボシクリル、場合によっては置換されたC~C18ヘテロシクリル、場合によっては置換されたC~C24アリールアルキル、場合によっては置換されたC~C18ヘテロアリールアルキル、場合によっては置換されたC~C24アルキルアリール、場合によっては置換されたC~C12アルキルヘテロシクリル、場合によっては置換されたC~C18アルキルヘテロアリール、及び場合によっては置換されたポリマー鎖から独立に選択することもできる。ポリマー鎖の例としては、ポリアルキレンオキシド、ポリアリーレンエーテル及びポリアルキレンエーテルから選択されるものが挙げられる。
【0040】
一実施形態においては、Rは、場合によっては置換されたC~Cアルキルから独立に選択することができる。
【0041】
モノエチレン性不飽和モノマーの例としては、無水マレイン酸、N-アルキルマレイミド、N-アリールマレイミド、フマル酸ジアルキル及び環化重合性モノマー、アクリル酸及びメタクリル酸エステル、アクリル及びメタクリル酸、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びメタクリロニトリル、これらのモノマーの混合物、並びにこれらのモノマーと別のモノマーの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0042】
有用なモノエチレン性不飽和モノマーの他の例としては、以下が挙げられる。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(すべての異性体)、メタクリル酸ブチル(すべての異性体)、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリロニトリル、アルファ-メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(すべての異性体)、アクリル酸ブチル(すべての異性体)、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(すべての異性体)、メタクリル酸ヒドロキシブチル(すべての異性体)、メタクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリエチレングリコール、無水イタコン酸、イタコン酸、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル(すべての異性体)、アクリル酸ヒドロキシブチル(すべての異性体)、アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、アクリル酸トリエチレングリコール、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-エチロールメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-エチロールアクリルアミド、ビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノスチレン(すべての異性体)、アルファ-メチルビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノアルファ-メチルスチレン(すべての異性体)、p-ビニルベンゼンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸トリブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピルから選択される機能的メタクリラート、アクリラート及びスチレン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール及びそれらの組合せ。このリストは網羅的なものではない。
【0043】
重合性モノマー組成物は、更に、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の架橋モノマーを含む。架橋モノマーの少なくとも2個のエチレン性不飽和基の各々が重合可能であることは言うまでもない。2個の重合可能なエチレン性不飽和基を有することによって、当業者は、架橋モノマーがポリマービーズのポリマーマトリックス分子構造内に架橋点を与えることを理解されたい。
【0044】
一実施形態においては、架橋モノマーは、少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する。これらの3個のエチレン性不飽和基の各々も重合可能である。
【0045】
本発明に従って使用される架橋モノマーの重要な特徴は、少なくとも2個のエチレン性不飽和基が少なくとも4個の連続した非環式原子によって分離されていることである。架橋モノマーが少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する場合、少なくとも3個のエチレン性不飽和基の各々は、4個の連続した非環式原子によって少なくとも分離されている。
【0046】
エチレン性不飽和基が少なくとも「4個の連続した非環式原子」によって分離されるとは、エチレン性不飽和基間の原子結合性において、直列に連結された少なくとも4個の非環式原子が存在しなければならないことを意味する。「非環式原子」とは、環構造の一部を形成しない原子を意味する。非環式原子の性質に関する特別な限定はない。例えば、連続した非環式原子は、炭素原子、窒素原子、酸素原子又はそれらの組合せを含むことができる。
【0047】
一実施形態においては、少なくとも2個のエチレン性不飽和基は、少なくとも5個、又は少なくとも6個、又は少なくとも7個の非環式原子によって分離されている。
【0048】
架橋モノマーが少なくとも3個のエチレン性不飽和基を含む場合、少なくとも3個のエチレン性不飽和基は、少なくとも4個、又は少なくとも5個、又は少なくとも6個、又は少なくとも7個の非環式原子によって各々分離されている。
【0049】
更なる一実施形態においては、架橋モノマーは、非環式架橋モノマーである。
【0050】
少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する適切な架橋モノマーの例としては、エチレングリコールジメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラート、メチレンビスアクリルアミド、トリエチレングリコールジアクリラート及びトリエチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジアクリラート及びエチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート及びジエチレングリコールジメタクリラート、グリセロールジアクリラート及びグリセロールジメタクリラート、1,3-ブタンジオールジアクリラート及び1,3-ブタンジオールジメタクリラート、1,3-プロパンジオールジアクリラート及び1,3-プロパンジオールジメタクリラート、1,3-ペンタンジオールジアクリラート及び1,3-ペンタンジオールジメタクリラート、1,4-ブタンジオールジアクリラート及び1,4-ブタンジオールジメタクリラート、ヘキサメチレングリコールジアクリラート及びヘキサメチレングリコールジメタクリラート、デカメチレングリコールジアクリラート及びデカメチレングリコールジメタクリラート、2,2-ジメチロールプロパンジアクリラート及び2,2-ジメチロールプロパンジメタクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート及びトリプロピレングリコールジメタクリラート、2,2-ジ(p-ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリラート及び2,2-ジ(p-ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリラート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジアクリラート及び2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジアクリラート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、並びにそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0051】
少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する適切な架橋モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ペンタエリスリトールトリアクリラート、ペンタエリスリトールトリメタクリラート、グリセロールトリアクリラート、グリセロールトリメタクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリラート、ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートトリアクリラート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシル化トリメチロールプロパントリメタクリラート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリメタクリラート、エトキシル化グリセロールトリアクリラート、エトキシル化グリセロールトリメタクリラート、プロポキシル化グリセロールトリアクリラート、プロポキシル化グリセロールトリメタクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリメタクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールトリアクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールトリメタクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリラート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリラート及びそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0052】
少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する適切な架橋モノマーとしては、エトキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)トリメチロールプロパントリメタクリラート、プロポキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)トリメチロールプロパントリアクリラート、プロポキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)トリメチロールプロパントリメタクリラート、エトキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)グリセロールトリアクリラート、エトキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)グリセロールトリメタクリラート、プロポキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)グリセロールトリアクリラート、プロポキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)グリセロールトリメタクリラート、エトキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)ペンタエリスリトールトリアクリラート、エトキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)ペンタエリスリトールトリメタクリラート、プロポキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)ペンタエリスリトールトリアクリラート、プロポキシル化(3、6、9、12、15、18又は20)ペンタエリスリトールトリメタクリラート、エトキシル化(4、5、8又は16)ペンタエリスリトールテトラアクリラート、エトキシル化(4、5、8又は16)ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、プロポキシル化(4、5、8又は16)ペンタエリスリトールテトラアクリラート、プロポキシル化(4、5、8又は16)ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、及びそれらの組合せも挙げられるが、それらに限定されない。
【0053】
当業者は、上記アルコキシル化部分の後の括弧内の数(単数又は複数)が繰り返しアルコキシ基の数を指すことを理解されたい。
【0054】
本発明による使用に適切な架橋モノマーのタイプの更なる説明として、架橋モノマーのトリメチロールプロパントリアクリラートとジビニルベンゼンを比較することが好都合であろう。すなわち、トリメチロールプロパントリアクリラートは、7個の非環式原子によって各々分離された3個のエチレン性不飽和基を有する。それに対して、ジビニルベンゼンは、環式原子によってのみ分離された2個のエチレン性不飽和基を有する架橋モノマーである。したがって、ジビニルベンゼンなどの架橋モノマーは、本発明による使用に適切な架橋モノマーの範囲外である。
【0055】
一実施形態においては、本発明のプロセスに従って使用される重合性モノマー組成物は、ジビニルベンゼンを含まない。それに対応して、別の一実施形態においては、本発明に係るポリマービーズのポリマーマトリックスは、ジビニルベンゼンの重合モノマー残基を含まず、取り込まない。
【0056】
重合性モノマー組成物に加えて、分散相は、固体粒子材料も含む。分散相が分散有機相として記述される場合、有機相も、固体粒子材料を含む、又はそれを通して固体粒子材料を分布させたことを理解されたい。
【0057】
一実施形態においては、固体粒子材料は、固体粒子材料の非存在下で有するよりも高い密度を有するポリマービーズを生成するタイプである。密度の増加したポリマービーズを用意することによって、それらの沈降時間が有利なことに減少し、処理される水試料からポリマービーズをより簡単に分離することができる。その場合、固体粒子材料は、加重剤と記述することができ、ポリマービーズの急速な沈降を促進する助けになる。
【0058】
こうした実施形態によれば、使用される固体粒子材料は、一般に、固体粒子材料の非存在下のポリマービーズの密度よりも高い密度を有する材料である。固体粒子材料は、一般に、ポリマービーズの調製に使用される液体のいずれにも不溶であり、一般に、生成したポリマービーズが接触し得るどんな液体にも不溶である。
【0059】
適切な固体粒子材料の例としては、チタニア、ジルコニア、重晶石、スズ石、シリカ、アルミノケイ酸塩、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、硫化亜鉛、及び重金属の他の酸化物、硫化物、硫酸塩、炭酸塩が挙げられるが、それらに限定されない。
【0060】
一実施形態においては、固体粒子材料は、磁性材料である。
【0061】
本明細書では「磁性」という用語は、それを一時的又は恒久的に磁化可能にする物質の性質を示すものとし、したがって常磁性である性質を含む。したがって、「磁性粒子」又は「磁性固体粒子材料」という表記は、この物質が、既に磁化された状態でなければ、少なくとも磁化可能であることを含意する。
【0062】
固体磁性粒子材料をポリマービーズに組み入れると、有利なことに、処理される水の連続流を含む用途にそれらを使用可能にすることができる。いかなる剪断力(sheer)も適用されない状態で、ポリマービーズ中の磁性粒子間の引力は、それらを急速に凝集、沈降させ、より要求の厳しいプロセス条件下でビーズを容易に分離可能にする。
【0063】
ポリマービーズに磁性を持たせるために、分散相は、磁性を持つ任意の固体粒子材料を含むことができる。こうした材料の例としては、γ酸化鉄(マグヘマイトとしても知られるγFe)、マグネタイト(Fe)、二酸化クロム、他の金属酸化物、及びネオジム又はサマリウム及び他の希土類材料に基づくものなど、より新奇な磁性材料、例えば、サマリウム-コバルト又はネオジム鉄ホウ化物が挙げられるが、それらに限定されない。マグヘマイトは、安価であるので好ましい。磁性粒子は、磁化されても、されなくてもよい形で分散相中に含むことができる。
【0064】
適切な常磁性材料としては、モンモリロナイト、ノントロナイト、黒雲母、菱鉄鉱、黄鉄鉱などの鉄含有鉱物、アルミニウム及び銅が挙げられるが、それらに限定されない。
【0065】
固体粒子材料の粒径は、プロセス中に形成されるポリマービーズの粒径の約1/10までのサイズとすることができる。これより大きい固体粒子は、ポリマービーズ全体に均一に分散させることが困難であり得る。より好ましくは、固体粒子は、サブミクロン(例えば、0.1μm)~約50μm、例えば、約0.05μm~約10μm、又は約0.05μm~5μm、又は約0.05μm~1μmのサイズである。
【0066】
固体粒子材料を分散相に分散させる分散剤を使用する必要がある場合もある。分散剤は、分散相の液滴中に粒子を分散させ、それによって分散相中の粒子の安定な分散物(又は懸濁物)を形成するように作用する。分散剤は、ポリマービーズのそのように形成されたポリマーマトリックス全体に粒子のほぼ均一な分布を促進するようにも作用する。粒子をこのように分布させることによって、粒子がビーズの外面にのみ位置する場合に起こり得る、使用中のポリマービーズからの粒子の侵食の問題が回避され、又は少なくとも軽減される。
【0067】
一実施形態においては、分散相は、したがって、更に、固体粒子材料を分散相全体に分散させる分散剤を含む。それに対応して、更なる一実施形態においては、ポリマービーズのポリマーマトリックスは、それを通して分散剤を分布させた。
【0068】
固体粒子材料を分散させるのに適切な分散剤は、一般に、粒子の表面に対して良好な結合親和性を有し、好ましくは、粒子の表面に化学的又は物理的に結合可能であるべきである。分散剤は、一般に、重合性モノマー組成物及びそのように形成されたポリマーマトリックスに相溶又は可溶でもある。
【0069】
一実施形態においては、分散剤は、重合性モノマー組成物のモノマーと反応して、そのように形成されたポリマーマトリックスに共有結合する。それに対応して、更なる一実施形態においては、ポリマービーズのポリマーマトリックスは、それに共有結合した分散剤を有する。その場合、分散剤は、ポリマーマトリックス全体に単に分布するのではなく、ポリマーマトリックスの一部を形成する。
【0070】
ポリマーマトリックスと共有結合を形成する分散剤の使用は、ポリマービーズ全体に粒子をほぼ均一に分布させるだけでなく、粒子は、有利なことに、ポリマーマトリックスに共有結合した分散剤を介してビーズ内でより効果的に結合する。その場合、粒子がポリマービーズから溶脱する問題を回避することができ、又は少なくとも軽減することができる。
【0071】
分散剤の選択は、一般に、使用される特別な粒子材料及び重合性モノマー組成物に依存する。当業者は、ビーズの調製に使用される特定の試薬を考慮して、適切な分散剤を容易に選択することができるはずである。
【0072】
分散相中で固体粒子材料を分散させるのに適切な分散剤の例としては、Byk Chemieによって商品名Disperbyk(登録商標)162、Disperbyk163、Disperbyk164、Disperbyk166及びDisperbyk167で販売されているものなどのアミンブロックコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。適切であることが判明した別のタイプの分散剤としては、ポリエーテルホスファート及び改質ポリウレタンが挙げられる。別の適切な分散剤としては、Lubirzol製Solsperse20000、Solsperse24000、Solsperse32000、Solsperse38500、Solsperse46000、Solsperse82500及びSolsperse55000、Huntsmanによって販売されているTeric(登録商標)305及びAlkanate(登録商標)40PF、Cognisによって販売されているCrafol(登録商標)AP12、AP60及びAP69、BASFによって販売されているEFKA PU 4063、Kusumoto Chemicalsによって販売されているDisparlin DA-375、Henkelによって販売されているDisponil(登録商標)AEP8100及びAEP5300、並びにRhodiaによって販売されているRhodafac(登録商標)及びPE501(登録商標)が挙げられる。
【0073】
固体粒子材料は、一般に、重合性モノマー組成物の重量に基づいて、10~300重量%、例えば20~100重量%(同基準)の量で添加される。存在するときには、分散相中に固体粒子材料を分散させるのに使用される分散剤は、一般に、固体粒子材料の重量に基づいて、0.1~30重量%の量、例えば1~10重量%の量で添加される。
【0074】
分散相は、更に、非ポリマーポロゲンを含み、ポリマーポロゲンを含まない。
【0075】
ポロゲンは、当該技術分野において、内部及び表面マクロ多孔性を付与するのに使用される。ポリマービーズのこうした多孔性を増進すると、ビーズの総表面積が増加し、それは、ある種の混入物を水から除去するビーズの効率を向上させることができる。
【0076】
ポロゲンは、好都合には、非ポリマー又はポリマーとして分類することができる。ポリマーポロゲンは、重合プロセスによって製造され、モノマーの重合残基に基づく分子構造を有する。非ポリマーポロゲンは、一般に、ポリマーポロゲンよりも低い分子量を有し、重合プロセスによって製造されず、モノマーの重合残基に基づく分子構造を持たない。
【0077】
ポロゲンは、重合性モノマー組成物内の重合反応に関与しない不連続領域を与えることによって機能する。重合が生じ、ポリマーマトリックスが形成されると、ポロゲンは、部分的又は完全に除去され、それによってビーズの構造中に孔又は空隙を残すことができる。
【0078】
非ポリマーポロゲンは、一般に、例えば清浄化ステップによって、ポリマービーズ構造から完全に洗い流すことができるが、一部のポリマーポロゲンは、少なくともそれらの高分子量のために、そのように形成されたポリマービーズ中に持続的に捕捉され得る。
【0079】
汚染物質を水から除去するポリマービーズは、非ポリマーポロゲン、ポリマーポロゲン及びそれらの組合せを用いて調製された。
【0080】
例えば、国際公開第1996/007675号は、架橋モノマーとしてのジビニルベンゼンと組み合わせて非ポリマーポロゲンを用いて調製されたポリマービーズを開示する。
【0081】
国際公開第2014/032092号は、ポリマーポロゲン及び本明細書に記載のものと類似の架橋モノマーを用いて調製されたポリマービーズを開示する。ポリマーポロゲンと組み合わせた架橋モノマーの使用は、国際公開第1996/007675号に開示されたものに比べて汚染物質を水から除去する性質が改善された独特のくぼみのある表面を有するポリマーポロゲンが捕捉されたポリマービーズを与えると言われる。
【0082】
驚くべきことに、本発明に従って調製されたポリマービーズは、国際公開第96/07675号又は国際公開第2014/032092号に開示されたポリマービーズに比べて改善された耐摩耗性などの改善された機械的性質及び/又は汚染物質を水から除去する改善された能力を示すことができる。理論に拘泥するものではないが、非ポリマーポロゲンと組み合わせ、ポリマーポロゲンと組み合わせずに、特定の架橋モノマーを使用すると、驚くべきことに耐摩耗性及び/又は水からのDOCなどの汚染物質の除去を促進する特別なモルフォロジーをポリマービーズのポリマーマトリックスに付与すると考えられる。これらのポイントの更なる考察については、下記実施例の項で記述する。
【0083】
本発明に従って使用することができる非ポリマーポロゲンの例としては、トルエン、ベンゼンなどの芳香族化合物、ブタノール、イソオクタノール、シクロヘキサノール、ドデカノール、イソアミルアルコール、第三級アミルアルコール、メチルイソブチルカルビノールなどのアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、n-ヘプタン、イソオクタンなどの飽和炭化水素、ジクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化溶媒、及びフタル酸ジオクチル、アジピン酸ジブチルなどの可塑剤、並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0084】
本発明に従って使用されないポリマーポロゲンの例としては、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(酢酸ビニル コ-マレイン酸又はフマル酸(fumric acid)及びエステル)、脂肪アルコールエトキシラート、脂肪アルコールアルコキシラート、アルコールアルコキシラート、脂肪酸アトキシラート(athoxylates)、ヒマシ油エトキシラート、脂肪アミンエトキシラート、アルキルフェノールエトキシラート、アルキルエトキシカルボン酸、及びそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0085】
非ポリマーポロゲンは、一般に、使用される非ポリマーポロゲンとモノマーの総量に対して、約10重量%~約60重量%の量で、又は約15重量%~約60重量%の量で、又約20重量%~約50重量%の量で使用される。
【0086】
本発明によれば、非ポリマーポロゲンは、いかなるポリマーポロゲンとも併用されない。
【0087】
分散相中の成分は、一般に、均質混合物を形成する。換言すれば、少なくとも重合性モノマー組成物、固体粒子材料及び非ポリマーポロゲンが十分に混合される。
【0088】
分散物を用意した後、本発明のプロセスは、重合性モノマー組成物を重合して、ポリマービーズを形成するステップを含む。重合は、モノマーの反応を開始するラジカル開始剤の存在を必要とし得る。その場合、フリーラジカル開始剤を分散相中に含むこともできる。当業者は、使用される開始剤が、存在する重合性モノマーの性質に依存することを理解されたい。単なる例として、適切な開始剤としては、アゾイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル及びt-ブチルヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0089】
使用される開始剤の量は、一般に、存在する重合性モノマーの総重量に基づいて計算して、0.01~5重量%、より好ましくは0.10~1%の範囲である。
【0090】
本発明のプロセスは、従来の懸濁重合技術によって行うことができる。その場合、連続相における(重合されるモノマーを含む)分散相の分散物は、一般に、例えば有機相と水相を混合し、生成した混合物に剪断力をかけることによって得られる。分散物にかけられた剪断力を調節して、分散相の液滴サイズを制御することができる。分散相の液滴が重合してポリマービーズを生成するので、分散物にかけられた剪断力がポリマービーズの粒径を主として制御する。
【0091】
一般に、ポリマービーズは、約10~約500ミクロンの範囲内、又は例えば約30~約1,000ミクロンの範囲内、又は約100~約300ミクロンの範囲内の粒径を有するように制御される。
【0092】
連続相における分散相の安定な分散が確立されると、分散物を所望の反応温度に加熱することによって重合反応を開始することができる。重合反応がほぼ完了するまで、分散物を所望の反応温度で保持することができる。
【0093】
重合反応を行う際に、モノマーは、一般に、所望の用途に適したポリマービーズを与えるように選択される。例えば、使用するモノマーに応じて、生成したポリマービーズは、ポリマービーズをイオン交換樹脂として機能できるようにする酸又はアミン基を含むことができ、これらの官能基は、1種以上の官能性モノマーの重合残基によって直接供給される。
【0094】
アミン官能性をビーズに直接導入することができる官能性モノマーとしては、ジメチルアミノエチルメタクリラート、アミノプロピルアクリルアミド及びメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びメタクリルアミド、ビニルピリジン、並びに有機可溶性ジアリルアミン又はビニルイミダゾール塩が挙げられるが、それらに限定されない。
【0095】
酸官能性をビーズに直接導入することができる官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸及びエタクリル酸が挙げられるが、それらに限定されない。
【0096】
あるいは、重合が完了すると、生成したポリマービーズは、ポリマービーズをイオン交換樹脂として機能できるようにする官能基を与える後続の処理を必要とし得る。使用される特定の処理プロセスは、処理されるポリマービーズの組成に依存する。処理プロセスは、ビーズ上に存在する官能基をイオン交換基に変換する1種以上の化合物とポリマービーズを反応させるステップ、又はイオン交換基をビーズに導入する1種以上の化合物とビーズ上の官能基を反応させるステップを含むことができる。
【0097】
ビーズ上の官能基がイオン交換基に変換される処理プロセスにおいては、官能基をアミン若しくは酸基、又はそれらの塩、又は第四級アンモニウム基に変換することができる。適切な官能基と反応物の種々の組合せをこの目的のために使用することができ、その性質は当業者に知られている。その場合、ビーズ上の官能基はアミド又はエステル基であることが好ましく、アミド又はエステル基は、アミド又はエステル官能性モノマーによってポリマービーズに導入されることが好ましい。
【0098】
例示的なアミド官能性モノマーとしては、N-ビニルホルムアミド又はN-メチル-N-ビニルアセトアミドが挙げられるが、それらに限定されない。アミド基は、加水分解、ホフマン分解又はホウ化水素還元によってアミン基に容易に変換することができる。加水分解は、好ましい技術である。例えば、N-ビニルホルムアミド又はN-メチル-N-ビニルアセトアミドモノマー単位中のアミド基を加水分解によってアミン基に変換することができる。アミン基は、塩又は第四級アンモニウム基に容易に変換することができる。
【0099】
例示的なエステル官能性モノマーとしては、アクリル酸‐メチル、‐エチル又は‐ブチルが挙げられるが、それらに限定されない。エステル基は、加水分解によって弱酸基に容易に変換することができる。例えば、アクリル酸‐メチル、‐エチル又は‐ブチルモノマー単位のエステル基を加水分解によって弱酸基に変換することができる。
【0100】
ビーズ上の官能基がイオン交換基をビーズに導入する官能基を含む1種以上の化合物と反応するプロセスにおいては、1種以上の化合物は、好ましくはアミン又は第四級アンモニウム基を導入する。適切な官能基と反応化合物の種々の組合せをこの目的のために使用することができ、その性質は当業者に知られている。
【0101】
その場合、ビーズ上の官能基としては、ハロゲン、エポキシド、エステル及びアミドが挙げられるが、それらに限定されない。こうした官能基は、適切な官能性モノマーによってポリマービーズに導入することができる。この目的のための例示的な官能性モノマーとしては、塩化ビニルベンジル、メタクリル酸グリシジル、(上で定義された)アクリル酸又はメタクリル酸エステル又はアミドが挙げられるが、それらに限定されない。こうした官能基は、アミン又は第四級アンモニウム基を導入する化合物と反応することができる。適切な反応化合物としては、アミン、ジアミン及びポリアミン化合物並びにそれらのそれぞれの塩が挙げられるが、それらに限定されない。
【0102】
アミン又は第四級アンモニウム基を導入するための好ましい化合物としては、ピペリジン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、3-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン及びそれらのそれぞれの塩が挙げられるが、それらに限定されない。
【0103】
重合が完了した後、非ポリマーポロゲンは、ポリマービーズのポリマーマトリックスの空隙/孔内に残る可能性がある。ポリマービーズからの非ポリマーポロゲン残留物及び他の反応残留物の除去を容易にするために、ビーズを清浄化プロセスに供することが望ましい場合もある。これは、一連の洗浄ステップ及び/又はビーズの水蒸気ストリッピングによって行うことができる。
【0104】
ポリマービーズを清浄化する一方法は、以下のステップを含む。
(a)ポリマービーズを大過剰の水に添加し、撹拌し、沈降させた後、ビーズを上清から分離する、
(b)ステップ(a)を数回繰り返す、
(c)場合によっては、水洗浄ビーズをアルコール(例えば、エタノール)中に分散させる、
(d)ビーズをアルコールから分離し、乾燥させる。
【0105】
あるいは、ポリマービーズをまず水蒸気ストリッピングに供し、次いで上で概説したように洗浄することができる。
【0106】
したがって、一態様においては本発明は、それを通して固体粒子材料を分布させた多孔質ポリマーマトリックスを含むポリマービーズであって、ポリマーマトリックスが(i)(a)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー及び(b)少なくとも4個の連続した非環式原子によって分離された少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の架橋モノマーの重合モノマー残基を含み、ポリマーマトリックスが、非ポリマーポロゲンを含み、ポリマーポロゲンを含まない、ポリマービーズを提供する。
【0107】
そのように形成されたポリマービーズを清浄化ステップ(単数又は複数)に供した後、残った非ポリマーポロゲンを除去することができる。
【0108】
その場合、本発明は、更に、それを通して固体粒子材料を分布させた多孔質ポリマーマトリックスを含むポリマービーズであって、ポリマーマトリックスが(i)(a)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー及び(b)少なくとも4個の連続した非環式原子によって分離された少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の架橋モノマーの重合モノマー残基を含み、ポリマーマトリックスがポロゲンを含まない、ポリマービーズを提供する。
【0109】
疑念を回避するために、「重合モノマー残基」を含むポリマーマトリックスとは、特定のモノマーが重合してポリマーマトリックスを形成し、したがって重合モノマー残基がそのポリマーマトリックスの分子構造の少なくとも一部を構成することを意味する。換言すれば、ポリマーマトリックスは、(i)その分子構造の少なくとも一部として、(a)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー及び(b)少なくとも4個の連続した非環式原子によって分離された少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の架橋モノマーの重合モノマー残基を示す。
【0110】
本発明に係るポリマービーズは、したがって、多孔質ポリマーマトリックスで形成され、ポリマーマトリックス自体は、(i)その分子構造の一部として(a)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー及び(b)少なくとも4個の連続した非環式原子によって分離された少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の架橋モノマーの重合モノマー残基を示し、(ii)それを通して固体粒子材料を分布させる。
【0111】
一実施形態においては、ポリマービーズは、イオン交換能力を有し、又は反応するとイオン交換能力を与える。その場合、ポリマーマトリックスは、ポリマービーズのイオン交換サイトを供給する、又は反応時に供給する、官能基を有する1種以上の官能性モノマーの重合モノマー残基を含む(又はから形成される)。
【0112】
1種以上の官能性モノマーの重合モノマー残基は、実際には、少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー及び/又は少なくとも1種の架橋モノマーの重合モノマー残基とすることができる。
【0113】
本発明は、水溶液(例えば、水)を処理する方法であって、本発明の、又は本発明に従って調製された、ポリマービーズと前記水溶液を接触させるステップを含む方法も提供する。水溶液の処理は、DOCなどの混入物の除去を含むことができる。その場合、DOCは、ポリマービーズの表面に吸着され、ポリマービーズを水溶液から除去するとDOCも水溶液から除去される。
【0114】
本発明は、更に、イオンを水溶液から分離する方法であって、本発明の、又は本発明に従って調製された、イオン交換能力を有するポリマービーズと溶液を接触させるステップを含む方法も提供する。その場合、イオンは、ポリマービーズの表面に吸着され、ポリマービーズを水溶液から除去するとイオンも水溶液から分離される。
【0115】
ポリマービーズは、吸着混入物/イオンと一緒に、水溶液から容易に分離することができ、それによって精製水溶液が残る。ポリマービーズは固体粒子材料を含むので、水溶液からのそれらの分離は、例えば、より急速な沈降を可能にする高い密度を有するビーズによって、促進することができる。あるいは、ポリマービーズは、磁性固体粒子材料を含むことができ、それらはビーズの磁気特性を利用して溶液から分離することができる。例えば、剪断力の非存在下で、ビーズは、磁気引力によって凝集し、精製溶液から沈降することができる。あるいは、それらは、湿式高強度磁気分離機又は磁気ドラム分離機又は類似の装置で分離することができる。
【0116】
水溶液から分離することができるアニオンの例としては、フミン酸塩及びフルボ酸塩、クロム酸塩、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩(arsenita)、セレン酸塩、亜セレン酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、硝酸塩、溶存有機窒素などの溶存有機物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0117】
水溶液から分離することができるカチオンの例としては、カドミウム、亜鉛などの遷移金属イオン及びカルシウム、マグネシウムなどの金属イオンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0118】
本発明に係るポリマービーズは、望ましくない混入物を水溶液から除去するのに使用するのに特に適している。
【0119】
本発明は、したがって、DOCを水溶液から除去する方法であって、(i)本発明の、又は本発明に従って調製された、ポリマービーズと前記水溶液を接触させるステップ、及び(ii)ポリマービーズをその上に吸着したDOCと一緒に水溶液から除去して、それによってDOCを水溶液から除去するステップを含む方法も提供する。
【0120】
本発明は、したがって、イオンを水溶液から除去する方法であって、(i)本発明の、又は本発明に従って調製された、イオン交換ポリマービーズと前記水溶液を接触させるステップ、及び(ii)除去すべきイオンとイオン交換したポリマービーズを溶液から除去するステップを含む、方法でもある。
【0121】
本発明に係るポリマービーズは、有利なことに、国際公開第96/07675号又は国際公開第2014/032092号に従って調製されたものなどの従来のポリマービーズに比べて、電荷密度を約10~20%高くすることができる。
【0122】
本発明に係るポリマービーズは、有利なことに、優れた耐摩耗性を示し、それによって、例えば望ましくない混入物を水溶液から除去する応用中にそれらの摩耗を最小限にする。
【0123】
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)及び分岐鎖アルキル基(イソプロピル、tert-ブチル、イソブチルなど)を含めた飽和脂肪族基を含む。一部の実施形態においては、「アルキル」とは直鎖アルキルを指す。xが1~5であり、yが2~12である「Cx~yアルキル」という表現は、指定数の炭素原子を含むアルキル基(直鎖又は分岐鎖)を指す。例えば、C1~2アルキルという表現は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert-ブチル及びイソブチルを含むが、それらに限定されない。「アルキレン」という用語は、二価のアルキル基を指す。
【0124】
一実施形態においては、直鎖又は分岐鎖アルキルは、12個以下の炭素原子を有する(すなわち、C1~12)。一部の実施形態においては、直鎖又は分岐鎖アルキルは、8個以下の炭素原子を有する(すなわち、C1~8)。
【0125】
「アルケニル」という用語は、上記アルキルと長さ及び可能な置換が類似した、ただし少なくとも1個の二重結合を含む、不飽和脂肪族基を含む。
【0126】
例えば、「アルケニル」という用語は、直鎖アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなど)及び分岐鎖アルケニル基を含む。一部の実施形態においては「アルケニル」とは直鎖アルケニルを指す。ある実施形態においては、直鎖又は分岐鎖アルケニル基は、12個以下の炭素原子をその骨格に有する(例えば、直鎖の場合C~C12、分岐鎖の場合C~C12)。C~C12という用語は、2~12個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。「アルケニレン」という用語は、二価のアルケニル基を指す。
【0127】
「アルキニル」という用語は、上記アルキルと長さ及び可能な置換が類似した、ただし少なくとも1個の三重結合を含む、不飽和脂肪族基を含む。例えば、「アルキニル」という用語は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなど)及び分岐鎖アルキニル基を含む。一部の実施形態においては「アルキニル」とは直鎖アルキニルを指す。ある実施形態においては、直鎖又は分岐鎖アルキニル基は、12個以下の炭素原子をその骨格に有する(例えば、直鎖の場合C~C12、分岐鎖の場合C~C12)。C~C12という用語は、2~12個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。「アルキニレン」という用語は、二価のアルキニル基を指す。
【0128】
「カルボシクリル」という用語は、非芳香族単環式、多環式、縮合又は共役炭化水素残基のいずれか、好ましくはC3~20(例えば、C3~10又はC3~8)を含む。環は、飽和、例えば、シクロアルキルとすることができ、又は1個以上の二重結合(シクロアルケニル)及び/又は1個以上の三重結合(シクロアルキニル)を有することができる。特に好ましいカルボシクリル部分は、5、6員又は9~10員環構造である。適切な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロオクタテトラエニル、インダニル、デカリニル及びインデニルが挙げられる。カルボシクリル基は、本明細書に定義された1個以上の任意選択の置換基で場合によっては置換することができる。「カルボシクリレン」という用語は、二価の形のカルボシクリルを表すものとする。「シクロアルキル」という用語は、飽和環状脂肪族基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)を含む。C3~6シクロアルキルという用語は、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを含むが、それらに限定されない。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造中に4~7個の炭素原子を有し、より好ましくは環構造中に5又は6個の炭素を有する。本明細書では「ヘテロシクロアルキル」という用語は、1個以上の環内ヘテロ原子を含むシクロアルキル基を指す。同様に、シクロアルケニル基は、その環構造中に3~8個の炭素原子を有することができ、より好ましくは環構造中に5又は6個の炭素を有する。
【0129】
「ヘテロ原子」という用語は、炭素又は水素以外の任意の元素の原子を含む。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄及びリンである。特に好ましいヘテロ原子は、窒素及び酸素である。
【0130】
「アミン」又は「アミノ」という用語は、当該技術分野において一般に理解されるように、分子又は部分又は官能基に広く適用されると理解すべきであり、第一級、第二級又は第三級であり得る。「アミン」又は「アミノ」という用語は、窒素原子が少なくとも1個の炭素又は水素に共有結合した化合物を含む。
【0131】
本明細書では「場合によっては置換された」という用語は、一般に、基上の水素原子が非水素基で置換された場合を指す。任意選択の置換基が明示された場合などの文脈上他の意味に解すべき場合を除き、任意選択の置換基の例を以下に詳述する。任意の場合によっては置換された基は、1、2、3個又はそれ以上の任意選択の置換基を有することができる。
【0132】
一部の実施形態においては、任意選択の置換基は、場合によっては置換されたC1~6アルキル;場合によっては置換されたC6~10アリール;場合によっては置換されたC2~8ヘテロシクリル;ハロゲン;-OH;-NH;-NO;-SONH;-COOH;-COO(C1~6アルキル);-NHCOO(C1~6アルキル);-NH-COR、式中、RはH又はC1~6アルキルである;-NR、式中、RはH又はC1~6アルキルであり、RはH又はC1~6アルキルである;-C(O)NR、式中、RはH又はC1~6アルキルであり、RはH、C1~6アルキルである;-C(O)R、式中、RはH又はC1~6アルキルである;又はY-Q、式中、
Yは、-O-、-NH-、-N(C1~6アルキル)-、-NHSO-、-SONH-、-NHCONH-、-NHCON(C1~6アルキル)-、-S(O)-、式中、qは0、1又は2である、-C(O)NH-、-C(O)N(CH)-、-NHC(O)-、-C(O)-、-NHC(NH)NH-から選択され、又は存在せず、
Qは、場合によっては置換されたC6~10アリール、場合によっては置換された5~10員C1~9ヘテロアリール、場合によっては置換された3~10員C1~9ヘテロシクリル、場合によっては置換されたC3~10シクロアルキル、場合によっては置換されたC1~6アルキル、場合によっては置換されたC1~6アルキルアシル、場合によっては置換されたC2~6アルケニル、場合によっては置換されたC2~6アルキニル、及び水素から選択される、
から選択される。
【0133】
別の実施形態においては、任意選択の置換基は、場合によっては置換されたC1~6アルキル;場合によっては置換されたC6~10アリール;ハロゲン、-OH;-NH;-COOH;-COO(C1~6アルキル);-NR、式中、RはH又はC1~6アルキルであり、RはH又はC1~6アルキルである;-NH-COR、式中、RはH又はC1~6アルキルである;-C(O)NR、式中、RはH又はC1~6アルキルであり、RはH、C1~6アルキルである;C(O)R、式中、RはH又はC1~6アルキルである;又はY-Q、式中、
Yは、-O-、-NH-、-N(C1~6アルキル)-、-NHCONH-、-S-、-C(O)NH-、-C(O)N(CH)-、-NHC(O)-、-C(O)-、-NHC(NH)NH-から選択され、又は存在せず、
Qは、-OHで場合によっては置換されたC6~10アリール、5~10員C1~9ヘテロアリール、3~10員C1~9ヘテロシクリル、C3~10シクロアルキル、C1~6アルキル、C1~6アルキルアシル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、及び水素から選択される、
から選択される。
【0134】
「アミド(amide)」、「アミド(amido)」又は「アミノカルボニル」という用語は、カルボニル又はチオカルボニル基の炭素に結合した窒素原子を含む化合物又は部分を含む。
【0135】
「アリール」という用語は、芳香族単環式(例えば、フェニル)又は多環式基(例えば、三環式、二環式、例えば、ナフタレン、アントリル、フェナントリル)を指す。アリール基は、多環(例えば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)を形成するように、芳香族ではない脂環式又は複素環と縮合又は架橋することもできる。
【0136】
本明細書では「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個の環が芳香族であり、O、N及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含む、一般に各環が最高7原子の単環式又は二環式環を表す。この定義の範囲内のヘテロアリール基としては、ベンズイミダゾール(さもなければ、ベンゾイミダゾールとして知られる)、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル(pyrrazolyl)、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、インドイル(indoiyl)、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンなどが挙げられるが、それらに限定されない。下記複素環の定義と同様に、「ヘテロアリール」は、任意の窒素含有ヘテロアリールのN酸化物誘導体も含むと理解される。ヘテロアリール置換基が二環式であって、1個の環が非芳香族であり、又はヘテロ原子を含まない場合には、結合は、それぞれ芳香環、又はヘテロ原子を含む環を介すると理解される。
【0137】
本明細書では「複素環」又は「ヘテロシクリル」という用語は、O、N及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含む、5~10員芳香族又は非芳香族複素環を意味するものとし、二環式基を含む。したがって、「ヘテロシクリル」は、上記ヘテロアリール、並びにそのジヒドロ及びテトラトヒドロ(tetrathydro)類似体を含む。「ヘテロシクリル」の更なる例としては、以下、すなわち、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドイイル(indoiyl)、インドラジニル(indolazinyl)、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフタピリジニル(naphthpyridinyl)、オキシラニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾイイン(isoxazoiine)、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリト(quinolyt)、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4-ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン-2-オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル及びテトラヒドロチエニル並びにこれらのN酸化物が挙げられるが、それらに限定されない。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子又はヘテロ原子を介して起こり得る。本明細書では「ヘテロシクロアルキル」とは、飽和ヘテロシクリル基を指す。一部の実施形態においては、ヘテロシクロアルキル基は、1個以上のOH及び/又はCHOHで場合によっては置換される。こうした基の一例は、単糖リボースである。本明細書では「アルキルヘテロシクリル」とは、ヘテロシクリル基に結合したアルキル基を指す。
【0138】
「アシル」という用語は、アシルラジカル(CHCO-)又はCHCHCHCO-などのカルボニル基を含む化合物及び部分を含む。
【0139】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子に共有結合した置換及び非置換アルキル、アルケニル及びアルキニル基を含む。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ(イソプロポキシ)、プロポキシ、ブトキシ及びペントキシ基が挙げられ、シクロペントキシなどの環式基を含むことができる。
【0140】
「カルボニル」又は「カルボキシ」という用語は、酸素原子に二重結合で連結された炭素を含む化合物及び部分、並びにそれらの互変異性型を含む。カルボニルを含む部分の例としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物などが挙げられる。「カルボキシ部分」又は「カルボニル部分」という用語は、アルキル基がカルボニル基に共有結合した「アルキルカルボニル」基、アルケニル基がカルボニル基に共有結合した「アルケニルカルボニル」基、アルキニル基がカルボニル基に共有結合した「アルキニルカルボニル」基、アリール基がカルボニル基に共有結合した「アリールカルボニル」基などの基を指す。さらに、この用語は、1個以上のヘテロ原子がカルボニル部分に共有結合した基も指す。例えば、この用語は、例えば、アミノカルボニル部分、(窒素原子がカルボニル基の炭素に結合した、例えばアミド)、酸素と窒素原子の両方がカルボニル基の炭素に結合したアミノカルボニルオキシ部分(例えば、「カルバマート」とも称される)などの部分を含む。さらに、アミノカルボニルアミノ基(例えば、尿素)は、ヘテロ原子(例えば、炭素原子だけでなく、窒素、酸素、硫黄など)に結合したカルボニル基の別の組合せも含む。さらに、ヘテロ原子は、1個以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アシルなどの部分で更に置換することができる。
【0141】
「チオカルボニル」又は「チオカルボキシ」という用語は、硫黄原子に二重結合で連結された炭素を含む化合物及び部分を含む。「チオカルボニル部分」という用語は、カルボニル部分に類似した部分を含む。例えば、「チオカルボニル」部分は、アミノ基がチオカルボニル基の炭素原子に結合したアミノチオカルボニルを含み、さらに、別のチオカルボニル部分は、オキシチオカルボニル(炭素原子に結合した酸素)、アミノチオカルボニルアミノ基などを含む。
【0142】
「エステル」という用語は、カルボニル基の炭素に結合した酸素原子に結合した炭素又はヘテロ原子を含む化合物及び部分を含む。「エステル」という用語は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなどのアルコキシカルボキシ基を含む。アルキル、アルケニル又はアルキニル基は、上で定義したとおりである。
【0143】
「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」という用語は、-OHを有する基を含む。
【0144】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含む。一部の実施形態においては、ハロゲンとは、フッ素又は塩素を指す。
【0145】
「ポリシクリル」又は「多環式」という用語は、隣接する2個の環に2個以上の炭素が共通である、2個以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又はヘテロシクリル)を有する部分を含み、例えば、環は「縮合環」である。非隣接原子を介して連結された環は、「架橋」環と呼ばれる。
【0146】
本発明の化合物のすべてが、各原子の原子価を満足させる必要性に応じて、隣接原子間の結合及び/又は水素を更に含むことを理解されたい。すなわち、二重結合及び/又は水素原子が、一般に、以下のタイプの原子の各々に以下の全結合数を与えるように追加される:炭素:4個の結合、窒素:3個の結合、酸素:2個の結合、及び硫黄:2、4又は6個の結合。本明細書に記載の一般式の変数に与えられる定義は、標準の有機化学の定義及び知識、例えば、原子価則に合致する分子構造をもたらすことも理解されたい。
【0147】
なお、本発明の化合物の一部の構造は、不斉炭素原子を含む。したがって、こうした不斉から生じる異性体(例えば、すべての鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、又はラセミ体)が本発明の範囲に含まれることを理解されたい。こうした異性体は、古典的な分離技術及び立体化学的に制御された合成によってほぼ純粋な形で得ることができる。さらに、本願において考察する構造並びに他の化合物及び部分もそれらのすべての互変異性体を含む。本明細書に記載の化合物は、当該技術分野で公知の合成戦略によって得ることができる。
【0148】
本発明を以下の非限定的実施例に関連して更に記述する。
【実施例
【0149】
実施例1-(新しい樹脂):
ポリマービーズを本発明のプロセスに従って以下の原料を用いて調製した。
1.水:その中で有機相が分散し、次いで反応する連続相。
2.Gosenhol(登録商標)GH20:有機相を水中で液滴として分散させるポリビニルアルコールの形の高分子量ポリマー分散剤(すなわち、それはポリマーポロゲンではない)。
3.シクロヘキサノール:モノマーの溶媒であり、ポリマーの非溶媒であるポロゲン。それは、樹脂ビーズにおける空隙及び内部孔の形成を促進する。
4.Disperbyk163:それは、アミンブロックコポリマーからなる高分子量湿潤分散剤である(すなわち、それはポリマーポロゲンではない)。
5.γ酸化鉄。これは、樹脂ビーズに磁性を持たせる磁性酸化物である。
6.TMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリラート):これは、ビーズを架橋するモノマーである。
7.GMA(メタクリル酸グリシジル):これは、それをビーズ中に取り込むために最初に重合されるモノマーであり、次いでそれは、四級化されて、第四級アンモニウム基をビーズ中に配置し、それによってイオン交換サイトを形成する。
8.Vazo(登録商標)67:これは、混合物を50℃以上に加熱したときに重合を開始する触媒である。
9.トリメチルアミン塩酸塩:これは、メタクリル酸グリシジルのエポキシ基と反応して、第四級アンモニウムイオン交換サイトを形成するアミンである。塩酸塩は、使用するアミンをより中性pHにするものである。
【0150】
水(2333g)を5リットル反応器に充填し、撹拌機及び窒素パージを開始した。次に、GosenholGH20(5g)を添加し、水相を80℃に加熱した。水を加熱し、分離混合タンクに充填する間、撹拌機を回した。Disperbyk163(33g)とγ酸化鉄(240g)とシクロヘキサノールの第1の部分(280g)を一緒に添加し、20分間分散させて、磁性酸化物を十分に分散させた。GMA(440g)、TMPTMA(130g)及び残りのシクロヘキサノール(120g)及びVazo67(1.85g)を次いで添加し、混合物を更に5分間撹拌した後、それを加熱水相に添加した。生成した分散物を次いで撹拌し、80℃で2時間保持した。窒素パージを停止し、トリメチルアミン塩酸塩(450g、55%w/w)の混合物を添加し、次いで混合物を撹拌し、80℃で更に3時間保持した。混合物を次いで冷却し、生成したポリマービーズを純水又はエタノールで洗浄した。
【0151】
比較例1-((PP)樹脂):
これらのポリマービーズを以下の原料を用いて本発明のプロセスとは異なって調製した。
1.水:その中で有機相が分散し、次いで反応する連続相。
2.Gosenhol(登録商標)GH20:高分子量ポリマー界面活性剤、有機相を水中で液滴として分散させるポリビニルアルコール。
3.シクロヘキサノール:モノマーの溶媒であり、ポリマーの非溶媒であるポロゲン。それは、樹脂ビーズにおける空隙及び内部孔の形成を促進する。
4.SurfonicPOA-17R2:くぼみのある表面の形成を促進するポリマーポロゲン。
5.Disperbyk163:それは、アミンブロックコポリマーからなる高分子量湿潤分散剤である。
6.γ酸化鉄。これは、樹脂ビーズに磁性を持たせる磁性酸化物である。
7.TMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリラート):これは、ビーズを架橋するモノマーである。
8.GMA(メタクリル酸グリシジル):これは、それをビーズ中に取り込むために最初に重合されるモノマーであり、次いでそれは、四級化されて、第四級アンモニウム基をビーズ中に配置し、それによってイオン交換サイトを形成する。
9.Vazo(登録商標)67:これは、混合物を50℃以上に加熱したときに重合を開始する触媒である。
10.トリメチルアミン塩酸塩:これは、メタクリル酸グリシジルのエポキシ基と反応して、第四級アンモニウムイオン交換サイトを形成するアミンである。塩酸塩は、使用するアミンをより中性pHにするものである。
【0152】
水(2333g)を5リットル反応器に充填し、撹拌機及び窒素パージを開始した。次に、GosenholGH20(5g)を添加し、水相を80℃に加熱した。水を加熱し、分離混合タンクに充填する間、撹拌機を回した。Disperbyk163(33g)とγ酸化鉄(240g)とシクロヘキサノールの第1の部分(280g)を一緒に添加し、20分間分散させて、磁性酸化物を十分に分散させた。GMA(440g)、TMPTMA(130g)及びSurfonicPOA-17R2(120g)及びVazo67(1.85g)を次いで添加し、混合物を更に5分間撹拌した後、それを加熱水相に添加した。生成した分散物を次いで撹拌し、80℃で2時間保持した。窒素パージを停止し、トリメチルアミン塩酸塩(450g、55%w/w)の混合物を添加し、次いで混合物を撹拌し、80℃で更に3時間保持した。混合物を次いで冷却し、生成したポリマービーズを純水で洗浄した。
【0153】
比較例2-(古い樹脂):
ポリマービーズを実施例1の方法で調製した。ただし、DVB-55(ジビニルベンゼン)を架橋剤として使用し、シクロヘキサノールのみをポロゲンとして使用した。
【0154】
実施例2-水試料からのDOC混入物除去
DOCを種々の水試料(米国の異なる地域の試料A、B及びC)から除去するジャーテストを実施例1並びに比較例1及び2で作製したポリマービーズ試料(樹脂)を用いて行った。
【0155】
ジャーテストを以下のように行った。樹脂2mlを測定し、これを処理される水1.2Lに添加した。溶液をBoltacジャーテスト装置を用いて30分間撹拌した。樹脂を次いで水から分離し、水をUV/可視分光計を用いてUV254で測定した。吸光度変化をDOC除去率として示した。
【0156】
結果を表1に示す。
【0157】
【表1】
【0158】
新しい樹脂を用いた水源AのDOC除去率は、古い樹脂よりも最高17%良好であり(同じBVに対して)、PP樹脂よりも6%良好であった。
【0159】
新しい樹脂を用いた水源BのDOC除去率は、古い樹脂よりも最高96%良好であり(同じBVに対して)、PP樹脂例よりも3%良好であった。
【0160】
新しい樹脂を用いた水源CのDOC除去率は、比較の古い樹脂よりも200%以上良好であり(同じBVに対して)、PP樹脂試料よりも4%良好であった。
【0161】
表1の結果を図4にグラフで表す。
【0162】
実施例3-水試料からのDOC混入物除去
DOCを(北ニュージーランドのある地域から得られた)水試料から除去する(上で概説した)ジャーテストを実施例1及び比較例2で作製したポリマービーズ試料(樹脂)を用いて行った。
【0163】
結果を表2に示す。
【0164】
【表2】
【0165】
新しい樹脂を用いたNZ水のDOC除去率は、古い樹脂よりも9~10%良好であった(対応するBVに対して)。
【0166】
実施例4-オーストラリア水試料からのDOC除去比較
指定樹脂5mlを原水試料1リットルに添加し、180rpmで15分間混合した。これを繰り返して、種々のBVTRを得た。比較DOC除去を0.45um濾過上清試料についてUV254で測定し、除去%として表した。その結果を下表3に示し、図5にグラフで表す。
【0167】
【表3】
【0168】
実施例5-モルフォロジー及び機械的評価
走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)
得られたビーズのSEM(走査型電子顕微鏡)写真を図1に示す。SEM写真は、1umサイズまでの少数の孔を有する中程度に平滑な表面を示す。
【0169】
得られたビーズのSEM(走査型電子顕微鏡)写真を図2に示す。SEM写真は、最高10umのサイズの大きい孔及び亀裂を有する極めてくぼみのある表面を示す。
【0170】
得られたビーズのSEM写真を図3に示す。SEM写真は、直径最高1umの孔を有する極めて平滑な表面を示す。
【0171】
動的機械分析(DMA:Dynamic mechanical analysis)
DMA分析をDMA Q800(TA instrument、USA)を用いて行った。応力速度を2N.min-1に設定し、温度を25℃で維持した。凍結乾燥ビーズ試料床の寸法を直径15mm及び厚さ1.5~1.8mm、総試料重量100±5mgに設定した。弾性率Eを初期変形範囲における線形の依存性の傾きから求めた。
【0172】
結果を表4に示す。
【0173】
【表4】
【0174】
DMA分析のデータによれば、(本発明に係る)新しい樹脂は、他の2つの試料(比較)よりも機械的に堅く、弾力がある。新しい樹脂の跡は、それらが加工中に摩耗しにくいと判明した点で、そのデータを支持するものである。
【0175】
Brunauer Emmett Teller(BET)表面積
樹脂ビーズの表面積をAutosorb IQ機器(Quantachrome、USA)を用いてBETによって測定した。凍結乾燥試料を分析前に100℃で9時間脱気した。2回のBET測定の平均値を表5に報告する。
【0176】
【表5】
【0177】
BETデータによれば、3つの試料は異なる表面積を有し、それは、各試料が異なる特有のモルフォロジーを有することを示している。
【0178】
孔径分布、密度汎関数理論(DFT:Density Functional Theory)法
古い樹脂及び新しい樹脂の孔径分布をAutosorb IQ機器(Quantachrome、USA)を用いてDFT法によって計算した。結果を表6及び7に要約する。
【0179】
【表6】
【0180】
【表7】
【0181】
DFTデータによれば、2つの試料は異なる孔径分布を有し、それは、各試料が異なる特有のモルフォロジーを有することを示している。
【0182】
本明細書において先行刊行物(又はそれから得られる情報)、又は既知である事項を参照することは、その先行刊行物(又はそれから得られる情報)又は既知の事項が、本明細書が関係する事業分野における常識の一部を形成することを認めた、又は承認した、又はどんな形でも示唆したとは解釈されず、解釈すべきでもない。
【0183】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という語及び「含む(comprises、comprising)」などの変形は、示した整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むが、他の整数又はステップも整数又はステップの群も排除しないことを意味すると理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5