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特許7149954プラズマガン用のニュートロードスタックの最適化された冷却
<図1>
  • 特許-プラズマガン用のニュートロードスタックの最適化された冷却 図1
  • 特許-プラズマガン用のニュートロードスタックの最適化された冷却 図2A
  • 特許-プラズマガン用のニュートロードスタックの最適化された冷却 図2B
  • 特許-プラズマガン用のニュートロードスタックの最適化された冷却 図2C
  • 特許-プラズマガン用のニュートロードスタックの最適化された冷却 図2D
  • 特許-プラズマガン用のニュートロードスタックの最適化された冷却 図2E
  • 特許-プラズマガン用のニュートロードスタックの最適化された冷却 図3
  • 特許-プラズマガン用のニュートロードスタックの最適化された冷却 図4
  • 特許-プラズマガン用のニュートロードスタックの最適化された冷却 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】プラズマガン用のニュートロードスタックの最適化された冷却
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/28 20060101AFI20220930BHJP
   H05H 1/32 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H05H1/28
H05H1/32
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019550629
(86)(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 US2018022373
(87)【国際公開番号】W WO2018170090
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】62/472,202
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モルツ、ロナルド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホウリー、デイブ
(72)【発明者】
【氏名】コルメナレス、ホセ
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-007944(JP,A)
【文献】特開2009-076435(JP,A)
【文献】特表2015-513764(JP,A)
【文献】特表2016-514200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0185366(US,A1)
【文献】米国特許第7717703(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/28
H05H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマガンのニュートロードであって、
外周面と内孔とを有する円板形状の本体と、
前記外周面に開いた凹部として前記円板形状の本体に形成された複数の冷却流路と
を備える、ニュートロード。
【請求項2】
前記複数の冷却流路が正方形である、請求項1に記載されたニュートロード。
【請求項3】
前記複数の冷却流路が、幅が深さの8倍よりも大きい平坦状断面を有する、請求項1に記載されたニュートロード。
【請求項4】
前記複数の冷却流路が、前記外周面から下方に延びる深さと、前記深さに対して垂直な底辺によって画定され、前記複数の冷却流路に対する底辺対深さの比が、1:1から8:1までの範囲にある、請求項1に記載されたニュートロード。
【請求項5】
前記複数の冷却流路を流れる水の平均流速が、8.0m/秒未満であり、かつ1.0m/秒超、2.0m/秒超および3.0m/秒超のうちのいずれかであるように前記複数の冷却流路が構成されている、請求項1に記載されたニュートロード。
【請求項6】
請求項1に記載されたニュートロードを複数有するニュートロードスタックを備える、プラズマガン。
【請求項7】
前記ニュートロードスタックにおける隣接するニュートロード同士が電気的に絶縁されている、請求項6に記載されたプラズマガン。
【請求項8】
前記隣接するニュートロード同士の間に配置された絶縁層をさらに備える、請求項7に記載されたプラズマガン。
【請求項9】
前記隣接するニュートロード同士の間に配置された遮水体を形成するシール層をさらに備える、請求項7に記載されたプラズマガン。
【請求項10】
前記隣接するニュートロード同士の間に形成された気体間隙をさらに備える、請求項7に記載されたプラズマガン。
【請求項11】
前記複数のニュートロードの各々が同数の冷却流路を有し、前記冷却流路が軸線方向に並ぶように前記複数のニュートロードが配置されている、請求項7に記載されたプラズマガン。
【請求項12】
前記隣接するニュートロード同士の間に形成された周方向冷却流路をさらに備える、請求項11に記載されたプラズマガン。
【請求項13】
前記複数のニュートロードが、互いに物理的に離間しながら、物理的な力で互いに締め付けられている、請求項6に記載されたプラズマガン。
【請求項14】
プラズマガンのニュートロードを形成する方法であって、内孔を有する円板形状の本体の外周面に開いた複数の水冷流路を形成するステップを含む、方法。
【請求項15】
前記複数の水冷流路を流れる水の平均流速が、8.0m/秒未満で、かつ1.0m/秒超、2.0m/秒超および3.0m/秒超のうちのいずれかであるように前記複数の水冷流路を構成する、請求項14に記載された方法。
【請求項16】
内孔を有する少なくとも1つの他の円板形状の本体の外周面内または外周面上に複数の水冷流路を形成するステップと、
前記円板形状の本体と前記少なくとも1つの他の円板形状の本体とを、前記内孔に沿って同軸上に並べるステップとをさらに含む、請求項14に記載された方法。
【請求項17】
前記円板形状の本体と、隣接する前記少なくとも1つの他の円板形状の本体とを電気的に絶縁するステップをさらに含む、請求項16に記載された方法。
【請求項18】
前記円板形状の本体と、隣接する前記少なくとも1つの他の円板形状の本体とを、絶縁層、気体間隙およびシール部材のうちの少なくとも1つによって分離する、請求項17に記載された方法。
【請求項19】
前記円板形状の本体と前記少なくとも1つの他の円板形状の本体のそれぞれが、同数の水冷流路を有しており、前記円板形状の本体と前記少なくとも1つの他の円板形状の本体を同軸上に並べ、前記円板形状の本体の前記水冷流路と前記少なくとも1つの他の円板形状の本体の前記水冷流路とを軸線方向に並べるステップをさらに含む、請求項16に記載された方法。
【請求項20】
同軸上に並べられた前記円板形状の本体と前記少なくとも1つの他の円板形状の本体とを一緒に締め付け、前記プラズマガンのニュートロードスタックを形成するステップをさらに含む、請求項16に記載された方法。
【請求項21】
請求項1に記載されたニュートロードを複数有するカスケード型プラズマガンを形成する方法であって、
前記複数のニュートロードを並べて、隣接するニュートロード同士を電気的に絶縁してニュートロードスタックを形成するステップと、
前記ニュートロードスタックの軸線方向に締め付け力をかけて、前記ニュートロードスタックを前記カスケード型プラズマガン内に配置するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は具体的には、カスケード型プラズマガンに関するものであり、とりわけカスケード型プラズマガンでの利用に最適化されたニュートロードに係るものである。
【背景技術】
【0002】
カスケード型プラズマガンは、電圧を大きくプラズマアークを安定化させることが可能になるので、安定したガン出力が得られるという利点がある。このプラズマガンの欠点は、プラズマアークが比較的長いニュートロードスタック内を進むことで生じる排熱によって熱損失が大きくなり、ニュートロードスタックの実効長が制限されることにある。長いスタックを使用することにより熱損失が大きくなり、高電圧および安定したアークという利点が相殺される。必要とされるのは、ニュートロードスタックに熱損傷を与えることなく熱損失を抑え、冷却を最適化する構造である。
【0003】
現行のニュートロードスタックは、プラズマボア(孔部)にできるだけ近接させて同心円状に配置した複数のドリル孔を利用し、ニュートロード、絶縁体または密封用Oリングに損傷を与えるであろう熱を取り除いている。プラズマボア内でのプラズマ温度は20,000Kを超えることがあり、部品損傷を防ぐためには、スタックの冷却は必要不可欠である。
【0004】
従来のプラズマガンのノズルの冷却設計、すなわち冷却水流路または水冷孔は、通常、プラズマガンのボアに対してできるだけ近接させて配置してボア材料の温度を可能な限り低くして損傷を防いでいる。この設計は、有効な冷却方法としてニュートロードの設計にも使われていた。
【0005】
熱的に最適化されたプラズマガンノズルに関する近年の発明、例えば特許文献1(国際出願PCT/US2013/076603号)によれば、流路をプラズマガンのボアから離して銅材料で熱を移動させ、平均温度を上昇させるがピーク温度を低下させることによりノズル冷却を変更できることが分かった。また、冷却水流路の断面を小さくすることで冷却水の速度を上げ、プラズマノズルのボアに沿った平均温度を上昇させるものの、プラズマガンのノズルに妥当な温度を維持するのに十分な効果的冷却を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2014/120357号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の具体例は、ニュートロードスタックの冷却を最適化し、スタックの最高温度またはピーク温度を下げ、同時に冷却水への熱損失を低減させるための構造及び方法に関するものである。
カスケード型プラズマガンの熱的に最適化されたニュートロードスタックの設計および実施方法が提供され、これにより、冷却水への熱損失が低減され、同時にスタックのピーク温度が最小化される。冷却を最適化することにより、熱損失を大きくすること無く、より長いニュートロードスタックの使用が可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この点に関しては、冷却水流路をプラズマガンのボアから離す技術、すなわちニュートロードの銅材料によって熱を移動させ、平均温度を上昇させるがピーク温度を低下させる技術をカスケード型プラズマガンのニュートロードスタックに応用することで、ガンに悪影響を与えることなく冷却特性が改善されることを本発明者らは見出した。
【0009】
本発明の具体例は、外周面および内孔を有する円板状本体、およびその外周面内または外周面上に形成された複数の冷却流路を備えるプラズマガンのニュートロードを対象とする。
【0010】
具体例によれば、複数の冷却流路は正方形にできる。他の具体例によれば、複数の冷却流路は、その幅が深さの8倍よりも大きい平坦状形状を有することができる。また、具体例においては、複数の冷却流路は、外周面から下方に延びる深さと、深さに対して垂直な底辺によって画定される。複数の冷却流路の底辺対深さの比は、1:1から8:1までの範囲である。
【0011】
具体例によれば、複数の冷却流路を流れる水の平均流速が8.0m/秒未満、かつ1.0m/秒超、2.0m/秒超および3.0m/秒超のうちのいずれかになるように複数の冷却流路が構成される。
【0012】
本発明の具体例は、上記のニュートロードを複数有するニュートロードスタックを備えるプラズマガンをも対象とする。
【0013】
具体例によれば、ニュートロードスタックにおける隣接するニュートロード同士は、互いに電気的に絶縁される。プラズマガンは、隣接するニュートロード同士の間に配置された絶縁層をさらに備えてもよい。具体例においては、プラズマガンは、隣接するニュートロード同士の間に配置される遮水体としてのシール層をさらに備えることができる。他の具体例においては、プラズマガンは、隣接するニュートロード同士の間に形成された気体間隙をさらに備えることができる。他の具体例によれば、複数のニュートロードの各々が同数の冷却流路を有し、この冷却流路が軸線方向に並ぶように複数のニュートロードを配置することができる。また、隣接するニュートロード同士の間に周方向冷却流路を形成することができる。
【0014】
本発明の具体例によれば、複数のニュートロードが、物理的に離間しながら、物理的な力で互いに締め付けられていてもよい。
【0015】
本発明の具体例は、内孔を有する円板形状の本体の外周面内または外周面上に複数の冷却水流路を形成するステップを備える、プラズマガンのニュートロードの形成方法をも対象とする。
【0016】
具体例によれば、複数の水冷流路を流れる水の平均流速が、8.0m/秒未満、かつ1.0m/秒超、2.0m/秒超および3.0m/秒超のうちのいずれかになるように複数の水冷流路が構成される。他の具体例においては、この方法は、内孔を有する少なくとも1つの他の円板形状の本体の外周面内または外周面上に複数の水冷流路を形成するステップと、円板状本体と少なくとも1つの他の円板形状の本体とを、内孔に沿って同軸上に並べるステップとをさらに備えることができる。具体例においては、この方法は、円板形状の本体と少なくとも1つの他の円板形状の本体のうちで隣接するものとを電気的に絶縁するステップをさらに備えることができる。他の具体例においては、円板形状の本体と少なくとも1つの他の円板形状の本体のうちで隣接するものとを、少なくとも絶縁層、気体間隙、またはシール部材によって分離することができる。具体例においては、円板形状の本体と少なくとも1つの他の円板形状の本体のそれぞれは、同数の水冷流路を有してもよく、さらにこの方法は、円板形状の本体と少なくとも1つの他の円板形状の本体を同軸上に並べ、円板形状の本体と少なくとも1つの他の円板形状の本体の水冷流路を軸線方向に並べるステップを備えることができる。他の具体例においては、この方法は、同軸上に並べられた円板形状の本体と少なくとも1つの他の円板形状の本体とを一緒に締め付け、プラズマガンのニュートロードスタックを形成するステップをさらに備えることができる。
【0017】
本発明のさらに他の具体例によれば、上記のニュートロードを複数有するカスケード型プラズマガンを形成する方法は、複数のニュートロードを並べてニュートロードスタックを形成し、ニュートロードスタックにおける隣接するニュートロード同士を電気的に絶縁するステップと、ニュートロードスタックを、ニュートロードスタックの軸線方向にクランプ力によりカスケード型プラズマガンに配置するステップとを備える。
【0018】
本発明のその他の好適な具体例及び利点は、本開示及び添付の図面を参照することで明らかになろう。 以下の発明を実施するための形態では、本発明な具体例の非限定的な例を添付の図面を参照して説明する。図面における同様の参照番号は同様の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】公知のカスケード型プラズマガン用の従来のニュートロード。
図2A】本発明の具体例による最適化されたニュートロード。
図2B】本発明の具体例による最適化されたニュートロード。
図2C】本発明の具体例による最適化されたニュートロード。
図2D】本発明の具体例による最適化されたニュートロード。
図2E】本発明の具体例による最適化されたニュートロード。
図3図2に示す最適化されたニュートロードを複数含む、ニュートロードスタックの一具体例の断面図。
図4図3の具体例による最適化されたニュートロードスタックの外周面。
図5】本発明の他の具体例による最適化されたニュートロード。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に記載する詳細は、本発明の具体例を例示および説明するためのものであり、本発明の原理や概念の説明として、最も有用で分かり易いものとなるようにした。さらに言えば、本発明の基本的理解に必要な以上に本発明の構造を詳しく示してはおらず、添付の図面とともに本明細書により、本発明の複数の形態が実際にどのように具現化されるかが当業者には明らかである。
【0021】
冷却の最適化をさらに強化するため、ニュートロードスタックのハウジングは、ニュートロードの冷却流路と同様に配置された、返流水用の冷却流路をも備えることができる。
【0022】
図1は、既存のカスケード型プラズマガンの従来のニュートロード10を示す断面図である。図から明らかなように、このニュートロードにおける冷却は、中央プラズマボア14の周囲にボア14に近接する形で配置された24個の孔12によってもたらされている。
【0023】
従来のニュートロード10とは対照的に、図2A図2Eは、本発明の具体例によるニュートロード20の複数の図を示す。これらの図においては、12個の軸線方向の冷却流路22が、ニュートロード20の本体から凹み、中央プラズマボア24を囲むニュートロード20の外周面26の方向に開放されている。これに関して、これらの軸線方向に貫通する凹部が外側に延びて、外周面26の一部をそれぞれ含む複数の突出部21を画定しており、これにより外周面26が円周方向に途切れる形となっている。ニュートロード20の第1の側、すなわち図2Aの斜視図に示す右側、及び図2Cの平面図に示す側においては、隆起部23が、突出部21の右側面より下方に位置する陥凹面25から軸線方向に延在している。ニュートロード20の第2の側、すなわち図2Bの斜視図に示す左側、及び図2Dの平面図に示す側においては、隆起部27が面29から軸線方向に延在している。面29は、突出部21の左側面と同一平面上にあってもよい。図2Eはニュートロード20の側面図であり、隆起部23、27がそれぞれ突出部21の右側面、左側面を超えて軸線方向に延びている様子を示している。また、図2A図2Eに示す非限定的な具体例においては、冷却流路22の側壁が互いに平行であることが好ましいという点を除き、ニュートロードの形状が概ね歯車状である。また、図2C及び図2Dの平面図においては、冷却流路22の形状は略正方形であり、凹部の幅が凹部の深さとほぼ等しくなっている。なお、凹部の幅は、凹部の深さの範囲に渡って一定であることが好ましい。
【0024】
非限定的な例として説明するが、図2C及び図2Dの平面図で見た場合、突出部21の間に画定される流路22、換言すればニュートロードの本体から凹み外周面26の方向に開いた流路22は、流路22の面積を定める深さと幅を有している。非限定的な例においては、各流路22は、底辺幅0.125インチ(3.175mm)×深さ0.097インチ(2.464mm)の寸法を有することができ、この場合、全面積が0.1476平方インチ(95.22mm2)となる。例えば毎分22リットルの水流量で稼働させた場合、流路を流れる水の平均流速は3.8m/秒となる。また、当然ながら、形成される冷却流路の寸法や形状は、目的とする冷却効果を達成するために具体例によって変更され、流路を流れる水の平均流速は8.0m/秒未満となる。しかし、上記のとおり、これらの流路の数値は例示のためのものであり、突出部21の間に形成される冷却流路22、換言すればニュートロード20の外周面26より下方に凹部を形成するように配置され、外周面26の方向に開いた冷却流路22の数と大きさは、ガンに損傷を与えるレベルの温度を回避するために必要な水の流量によって変わる。更なる例として説明すると、流路22は、流路22の深さが流路22の幅と実質的に等しくなるような略正方形の形状に形成できる。流路22の幅は一定であることが好ましい。また、略正方形の流路においては、流路の底辺となる幅と外周面から下方に延びる深さの比が約1:1であるが、冷却流路の幅対深さの比は、1:1から8:1までの範囲で変化してもよい。
【0025】
図3は、ニュートロードハウジング38内の好適なニュートロードスタック30の断面図である。ニュートロードスタック30は、図2に示す複数の最適化されたニュートロード20を含み、ニュートロード20は、同軸に積み重ねられている。図4は、図3の別の図であり、積み重ねられたニュートロード20の外周面を含め、ニュートロードスタックハウジング38の断面図内にある構成要素の外周面26を示している。図に示す具体例においては、ニュートロードスタック30の左側から見た場合、図2のニュートロード20を例えば第2、第3及び第4の位置に配置することができる。しかし、個々のニュートロード20は互いに分離された状態、例えば電気的に絶縁され、物理的に離された状態にあり、隣接するニュートロード20がニュートロードスタック30において互いに接触しないようになっている。また、ニュートロードハウジング38は例えばプラスチックで形成することができ、同様に、ニュートロードスタック30の隣接するニュートロード20間の絶縁を維持する。
【0026】
図3に示すとおり、複数のニュートロード20が中央プラズマボア24に沿って同軸上に並べられることにより、ニュートロードスタック30が形成される。有利なかつ非限定的な一具体例においては、図4に示すとおり、ニュートロードスタック30の各ニュートロード20は同数の冷却流路を有し、冷却流路22が軸線方向に並ぶようにニュートロード20を配置できる。ニュートロード20は、ニュートロードスタック30において互いに分離されているため、隣接するニュートロード20の間にセパレーターとして絶縁体36を配置できる。絶縁体36は、例えば窒化ホウ素であり、隆起部23より内周側に配置させ、かつニュートロードスタック30の中央プラズマボア34に向かって内周方向に延在させることができる。具体例によっては、ニュートロードスタック30の中央プラズマボア34内において、個々のニュートロード20の中央プラズマボア24と絶縁体36との間の段差を滑らかにすることができる。差し込み図300において具体的に示されるように、絶縁体36は適度に厚く、第1ニュートロード20の隆起部23および隣接ニュートロード20の隆起部27の互いに対向する面の間に、約0.030インチ(0.76mm)の空気間隙、または気体間隙322を形成するようになっている。また、隆起部23より外周側では、Oリングのようなシール材320を、隣接するニュートロード20同士の対向する面の間に配置し、空気間隙または気体間隙322を保護することができる。シール材320を構成する材料は、例えば、シリコン、VITON(登録商標)のような合成ゴム、BUNA-Nのようなニトリルゴム、またはニュートロードスタック30の領域内での温度に耐え得る他の水封材料である。シール材320の配置によって、冷却水が冷却流路から内周方向に向かって空気間隙または気体間隙322に侵入することを防止できる。
【0027】
図示の具体例においては、冷却水孔35を有する大径ディスク31と冷却流路37を有するエンドピース33との間に、ニュートロードスタック30を配置できる。冷却流路37は、ブラインド流路、すなわち一方の端部が閉じられている流路であってもよい。有利かつ非限定的な具体例においては、ディスク31が冷却水孔35を複数有しており、その数は、各ニュートロード20の冷却流路22の数およびエンドピース33の冷却流路37の数に一致する。冷却水孔35、冷却流路22及び冷却流路37は、図4に示すように、軸線方向に揃えて配置できる。また、複数のニュートロード20の外周面26を含む径方向に延在する部分は、軸線方向において互いに離間しているため、複数の周方向冷却流路32がニュートロードスタック30に形成される。また、ディスク31の大径部分によって、例えば螺子、ボルト、クランプによりディスク31をハウジング38に固定できるだけでなく、ディスク31、積み重ねられたニュートロード20、及びエンドピース33をまとめて付勢することもできる。隣接するニュートロード同士の対向面に対してシール材320を適切に密着させて、望ましい水封構造を得るのは十分な付勢であることが有利である。当然ながら具体例よっては、ニュートロードスタック30が有する図2の最適化されたニュートロードの数は、上記よりも多くても少なくてもよい。また、ニュートロードスタックハウジング38も、その外周部内またはその外周部上に同様の冷却流路を有することができる。
【0028】
図5は、別の好適な具体例によるニュートロード50を示す。この具体例においては、ニュートロード50は、その外周部56内および外周部56の周囲に形成された8個の平坦状冷却流路52を有する。非限定的な例として説明すると、ニュートロード50の外周部56に形成された平坦状流路52は、幅0.200インチ(5.08mm)×深さ0.0225インチ(0.572mm)の寸法であり、全面積は0.032平方インチ(20.65mm2)となる。例えば毎分9リットルの水の流量で稼働させた場合、流路を流れる水の平均流速は6.4m/秒となる。また、形成される冷却流路の寸法や形状は、目的とする冷却効果を達成するために具体例によって変更されことが理解され、流路を流れる水の平均流速は8.0m/秒未満となることが理解される。しかし、上記のとおり、これらの流路の数値は例示のためのものであり、冷却流路の数と大きさは、ガンに損傷を与えるレベルの温度を回避するために必要な水の流量によって変わる。
【0029】
具体例によれば、ニュートロードスタックは、例えば図2A及び図5に示すように、最適化された各ニュートロードの外周に配置された水冷流路を備えることができる。流路の断面積は、水の流速を大きくできるように設計でき、例えば1.0m/秒超、好ましくは2.0m/秒超、より好ましくは3.0m/秒超である。しかし、水流速は8.0m/秒未満とする。各流路は、ニュートロード20の最外周部において冷却水流量を最大化するために、図2A図2Eに示すような略正方形の形状から図5に示すような細長く平坦な形状まで、様々な形状に形成することができる。また、流路は、各ニュートロードの外周部において冷却水流量を最大化するために、三角形状の断面を有するように形成して配置してもよい。冷却流路の数、大きさ及び形状は、ガンに損傷を与えるレベルの温度を回避するために必要な水の流量によって変わる。この設計においては、ニュートロードスタックにおけるニュートロードの総数や、ニュートロードスタックにおける各ニュートロードの厚さに関しての制限はない。実際のところ、本発明の具体例による最適化されたニュートロードを用いることで、冷却による熱損失を制限して、ニュートロードスタックを長くすることができる。
【0030】
なお、具体例は、上記の具体的な冷却流路の底辺対深さの比に限定されるものではない。冷却流路の底辺対深さの比は、最大で1:1として高く延びた半円状の断面から略正方形の断面の冷却流路まで形成でき、あるいは8:1よりも大きくしてより平坦な断面を形成してもよく、または1:1から8:1までの範囲のいずれの比率に設定してもよい。したがって、底辺対深さの比は、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、またはこれらの間のいずれの比率であってもよいし、それらに限定されない。
【0031】
複数のニュートロード50によって構成されたニュートロードスタックを備えたプラズマガンにおいては、既知のCFD(数値流体力学)ソフトウェアでプラズマガン内の水の流れを算出すると、毎分8.1リットルの流量の場合、ニュートロードスタック内の平均の流速は3.2m/秒を超えることが分かった。
【0032】
図3に示すニュートロードスタック30を用いて構成したシングルアーク・カスケード型プラズマガンを、全体として同様な設計の従来のプラズマガンと比較試験を行なった。後者は、水冷フィンまたは水冷流路を利用してプラズマノズルを冷却する長いノズルを有していた。試験結果によれば、本発明の具体例によるニュートロードスタック30を使用したガンは、従来の方法で冷却されたノズルよりも、熱効率が10%増加した。別の試験では、従来のニュートロードスタックをプラズマガンに備えると6%~10%の熱効率の減少が見られた。更に別のテストでは、プラズマガンの従来のニュートロードスタックの長さを2倍にすると熱効率が20%減少した一方で、最適化されたニュートロード20を加えてニュートロードスタック30の長さを大きくすると熱効率の減少が大幅に抑えられた。後者による熱効率の減少は、従来のニュートロードスタックによる熱効率の減少の約2分の1未満であった。さらに、ニュートロードスタック30の耐久テストでは、同スタックを200時間以上使い続けた後でも熱的悪影響は見られなかった。
【0033】
なお、これまで挙げた例は単に説明のためのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明を好適な具体例に基づいて説明したが、本明細書で用いた文言は説明のためのものであり、限定するためのものではない。本発明の態様においては、現在記載されている添付の特許請求の範囲内で、または補正があれば補正後の特許請求の範囲内で、本発明の範囲や原理から逸脱することなく変更が可能である。また、本発明を特定の手段、材料及び具体例とともに説明したが、本発明はここで開示した詳細事項に限定されない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲内にあるもののような、全ての機能上同等な構造、方法及び使用を包含する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5