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特許7149966気体状の媒体を制御するための比例弁、および燃料電池構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】気体状の媒体を制御するための比例弁、および燃料電池構造
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/36 20060101AFI20220930BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
F16K1/36 Z
F16K31/06 305V
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019568006
(86)(22)【出願日】2018-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2018060581
(87)【国際公開番号】W WO2018233912
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2019-12-09
(31)【優先権主張番号】102017210351.5
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】グリューンベルガー・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】マーゲル・ハンス-クリストフ
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特許第2605927(JP,B2)
【文献】特開2005-282837(JP,A)
【文献】特開昭52-9122(JP,A)
【文献】特表2007-524050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
F16K 31/00-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を制御するための比例弁(100)であって、
可動の閉止部材(301)と、前記閉止部材(301)に配置された第1のばね(302)とを含み、前記第1のばね(302)は第1のばね力を閉止方向へ前記閉止部材(301)に対して及ぼすためにセットアップされ、
アクチュエータ(200)を含み、前記アクチュエータ(200)は第1のばね力と反対方向を向く前記閉止部材(301)に対する調整可能な力を提供するためにセットアップされ、
前記閉止部材(301)は通過開口部(102)を運動によって閉鎖および開放するためにセットアップされる、そのような比例弁において、前記比例弁(100)は、
前記閉止部材(301)の端部に配置された閉鎖部材(305)を含み、
第2のばね(304)を含み、前記第2のばね(304)は第2のばね力を前記閉鎖部材(305)に対して及ぼすためにセットアップされ、第2のばね力は第1のばね力と反対方向に作用し、
流入室(401)と前記閉止部材(301)は前記通過開口部(102)の第1の側に配置され、流出室(402)は前記第1の側と反対を向くほうの前記通過開口部(102)の第2の側に構成され、前記流入室(401)と前記流出室(402)は前記通過開口部(102)を介して相互に接続可能であり、
前記流出室(402)に配置され、一端がスプリングワッシャ(308)に支持される前記第2のばね(304)は、支持構造(303)を介して前記閉鎖部材(305)の中央を押圧することを特徴とする比例弁。
【請求項2】
前記閉止部材(301)は前記通過開口部(102)の領域に構成された弁座(103)を閉止または解放するために構成されることを特徴とする、請求項1に記載の比例弁(100)。
【請求項3】
前記閉止部材(301)と前記閉鎖部材(305)は第1のばね力と第2のばね力によって互いに接するように配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の比例弁(100)。
【請求項4】
第1のばね力は数値的に第2のばね力よりも大きいことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の比例弁(100)。
【請求項5】
第2のばね力は前記弁座で最大限発生する閉止力よりも大きく、該最大限発生する閉止力は前記水素の流体圧からもたらされることを特徴とする、請求項に記載の比例弁(100)。
【請求項6】
前記アクチュエータ(200)は磁気コイル(201)と磁気アーマチュア(202)を含み、前記磁気アーマチュア(202)は前記閉止部材(301)と固定的に結合され、前記磁気アーマチュア(202)は前記磁気コイル(201)によってストローク運動可能であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の比例弁(100)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の比例弁(100)を有している燃料電池構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体状の媒体を制御するための比例弁、および燃料電池構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、たとえば水素などの気体状の媒体を制御するための比例弁が記載されている。ニードルとして構成される閉止部材が閉止ばねと結合される。磁気コイルとアーマチュアとを含むアクチュエータを通じて、ニードルが通過開口部を開放および閉止するように可動に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102010043618号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、気体状の媒体を制御するための比例弁、および燃料電池構造を前提とする。
【0005】
請求項1に記載の比例弁の利点は、製造時の公差要求を、比例弁の密閉性に犠牲を払うことなく低減することができるので、低コストな具体化が可能になることにある。このように、良好なシート密閉性およびこれに伴ってガス調量における高い信頼度と安全性、ならびに好都合な弁製作を可能にすることができる。
【0006】
このことは、可動の閉止部材と、閉止部材に配置された第1のばねとを含む、気体状の媒体を、特に水素を制御するための請求項1に記載の比例弁によって実現される。第1のばねは、第1のばね力を閉止方向へ閉止部材に対して及ぼすためにセットアップされる。さらに比例弁はアクチュエータを含み、アクチュエータは、第1のばね力と反対方向を向く調整可能な力を提供するためにセットアップされる。閉止部材は、通過開口部を運動によって閉止および開放するためにセットアップされる。請求項1に記載の比例弁は、閉止部材の端部に配置された閉鎖部材を含むことを特徴とする。さらにこの比例弁は第2のばねを含み、第2のばねは閉鎖部材に配置され、第2のばねは第2のばね力を閉鎖部材に対して及ぼすためにセットアップされ、第2のばね力は第1のばね力と反対方向に作用することを特徴とする。
【0007】
1つの利点は、通過開口部の確実な閉止が第1のばね力と第2のばね力の設計に依存することにあり、それぞれのばねの製作およびこれに伴ってばね力の設計を高い精度で行うことができる。すなわち、確実な閉止はそれぞれのばねの力の差に依存し、絶対的な力に依存するのではない。さらに別の利点は、第2のばねが開放方向に作用し、そのようにして、閉止部材と閉鎖部材が互いに分離するのを防止することにあり、このことが特に関心の対象となるのは、閉止部材と閉鎖部材が互いに固定的に結合されるのではなく、互いに分離されて施工される場合である。閉止部材と閉鎖部材の分離された施工の利点は、閉鎖部材と閉止部材の間の運動が可能なので、閉鎖部材を弁座と平行にアライメントできることにある。このように、閉鎖部材は閉止部材と弁座の間に公差があるときでも平行にアライメントすることができ、良好な密閉性が実現される。第2のばねの配置からもたらされる別の利点は、比例弁の摩耗が低減され、それに伴って比例弁の耐用寿命を延ばせることにある。
【0008】
別の実施形態では、閉止部材は、通過開口部の領域に構成される弁座を閉止または解放するために構成されていてよい。1つの利点は、そのようにして供給圧力の上昇時に弁座の密閉性を保証できることにある。
【0009】
別の実施形態では、閉止部材と閉鎖部材は第1のばね力と第2のばね力によって互いに接するように配置される。1つの利点は、閉止部材と閉鎖部材の結合が簡易化されることにある。なぜならば、閉止部材と閉鎖部材を別個のコンポーネントとして施工することができ、互いに固定的に結合されるのでなく、第1のばね力と第2のばね力によって互いに固定されるからである。さらに、それによって十分な密閉性の実現のための精度を落とすことなく、比例弁の構造に関わる公差要求を下げることができる。別の利点は、結果として生じるばね力の改善された調整可能性がそのようにして可能になることである。
【0010】
別の実施形態では、第1のばね力は数値的に第2のばね力よりも高くなっていてよい。1つの利点は、通過開口部が基本状態のときに、すなわちアクチュエータが通電されていないときに閉止され、そのようにしてガスが通過開口部を通過できないことにある。
【0011】
別の実施形態では、第2のばね力は、供給圧力と貫流とによってもたらされる、最大限発生する弁座での閉止力よりも大きく選択することができる。それにより、弁座がどのような動作条件のときでも確実に開くことを保証できるという利点がある。
【0012】
別の実施形態では、閉鎖部材は支持構造を含むことができ、第2のばねは支持構造を介して閉鎖部材と作用結合される。1つの利点は、そのようにして閉鎖部材への第2のばねの配置が簡単な仕方で具体化され、さらには、第2のばね力が第1のばね力と反対方向に作用することを可能にすることができることにある。
【0013】
別の実施形態では、閉鎖部材はカップ状に構成されていてよい。このようにして第2のばねが、第1のばね力と反対方向に作用する第2のばね力を閉鎖部材に対して及ぼすことができるという利点がある。1つの利点は、そのようにして第2のばねを省スペースに配置することができ、そのようにして比例弁のコンパクト性を高めることができることにある。
【0014】
別の実施形態では、通過開口部のほうを向いている閉鎖部材の面に弾性部材が配置されていてよい。それにより、閉じた状態のときに閉鎖部材が通過開口部をわずかな圧着力ですでに封止することを実現できるという利点があり、それによりガスが通過開口部を通り抜けることができない。このようにして、正確なガス調量を可能にすることができる。
【0015】
別の実施形態では、流入室と閉止部材が通過開口部の第1の側に配置されていてよく、第1の側と反対を向くほうの通過開口部の第2の側に流出室が構成されていてよく、流入室と流出室は通過開口部を介して相互に接続可能である。1つの利点は、そのようにして流入室のガスが閉止力のために寄与し、そのようにして、特に基本状態のとき閉鎖部材による通過開口部の封止にあたってサポートをするように作用することにある。このようにして、比例弁の密閉性と確実性を高めることができる。
【0016】
別の実施形態では、閉鎖部材と閉止部材の接触個所を中高に施工することができる。1つの利点は、それによって角度公差の補償を改善できるということにある。このようにして、比例弁の密閉性と確実性を高めることができる。
【0017】
別の実施形態では、アクチュエータは磁気コイルと磁気アーマチュアとを含むことができ、磁気アーマチュアは閉止部材と固定的に結合され、磁気アーマチュアは磁気コイルによってストローク運動可能である。1つの利点は、そのようにして開放ストロークを無段階に調整することにある。なぜならば、第1および第2のばね力がフックの法則に従ってそれぞれのばねの撓みと比例し、そのようにしてガス調量を調整できるからである。
【0018】
燃料電池への水素供給を制御するための比例弁を有する燃料電池構造は、ガス調量の確実な調整を可能にすることができ、そのようにして、ガス調量を燃料電池の需要に合わせて確実に適合化できるという利点がある。別の利点は、燃料電池のアノード経路における少ない圧力変動、および比例弁の静かな動作である。
【0019】
本発明の実施例を図面に示し、以下の記述において詳しく説明する。それぞれの図面の同じ符号は、同一または同一作用の部材を表している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1のばねと第2のばねとを含む、第1の実施例に基づく比例弁を示す断面図である。
図2】閉止部材と閉鎖部材の間の中高に施工された接触個所を有する、第2の実施例に基づく比例弁を示す断面図である。
図3】比例弁を有する燃料電池構造の簡略化した構造である。
図4】第3の実施例に基づく比例弁の断面を示す部分図である。
図5】第4の実施例に基づく比例弁の断面を示す部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、気体状の媒体を、特に水素を制御するための比例弁100の断面が第1の実施例に基づいて示されている。この比例弁100は、可動の閉止部材301と、閉止部材301に配置された第1のばね302とを含んでおり、第1のばね302は第1のばね力を閉止方向409へ閉止部材301に対して及ぼす。第1のばね302は、ここでは圧縮コイルばねとして構成されている。第1のばね302は閉止部材301の第1の端部に配置されており、第1のばね302は他方の端部をもってバルブハウジング104に支持されている。バルブハウジング104は、ここでは比例弁100の全体を取り囲む。第1の端部と反対を向くほうの閉止部材301の端部には、閉鎖部材305が配置されている。さらに比例弁100は、アクチュエータ200を含んでいる。アクチュエータ200と閉止部材301はバルブハウジング104の中に配置されている。アクチュエータ200は、第1のばね力と反対方向を向く調整可能な力を閉止部材301に対して提供するためにセットアップされている。閉止部材301は、通過開口部102を運動によって閉鎖および開放するためにセットアップされている。
【0022】
アクチュエータ200は、図1に示す実施例では、閉止部材301と固定的に結合された磁気アーマチュア202と、磁気コイル201とを含んでいる。磁気アーマチュア202は、磁気コイル201によってストローク運動可能である。磁気アーマチュア202は少なくとも部分的に磁気コイル201の内部に配置される。磁気アーマチュア202は、ここでは円筒状に構成されている。閉止部材301はここではロッド状に構成されており、ロッド状の閉止部材301は磁気アーマチュア202を通って磁気アーマチュア202の対称軸411に沿って延びるとともに、対称軸411に対して平行にストローク運動可能である。
【0023】
さらに、内極204が部分的に磁気コイル201の内部に収容されており、外極205がバルブハウジング104と磁気コイル201の間に配置され、それによってプランジャ形アーマチュアを形成する。スペーサブッシュ部材203が磁気コイル201の内部に配置されていて、これにより内極204が、磁気コイル201の内部まで延びるバルブハウジング区域104’と結合される。バルブハウジング区域104’は、図1では中空円筒状に構成されている。内極204と、磁気コイル201の内部まで延びるバルブハウジング区域104’とは、磁気アーマチュア202のための案内部としての役目を果たす。スペーサブッシュ部材203は非磁性材料で、たとえば非磁性金属で構成されるのが好ましい。バルブハウジング104と内極204は、スペーサブッシュ部材203とともにアーマチュア室405を区切り、その中に磁気アーマチュア202が配置されている。内極204は、アーマチュア室405と反対を向く側で、バルブハウジング104とともにばね室401を包囲し、その中に第1のばね302が配置されている。ばね室400は第1の通路406を介してアーマチュア室405と接続され、アーマチュア室405は第2の通路407を介して流入室401と接続されている。第1の通路406と第2の通路407は、ばね室400、アーマチュア室405、および流入室401の間の圧力補償を可能にする。
【0024】
図1の比例弁100は、閉鎖部材305に配置された第2のばね304を含んでいる。図1に示す実施例では、閉鎖部材305は支持構造303を含んでおり、第2のばね304は支持構造303を介して閉鎖部材305と作用結合されている。閉鎖部材305は図1ではカップ状に構成されており、支持構造303は閉鎖部材305の環状の突出部を形成し、これに第2のばね304が支持される。閉止部材301と閉鎖部材305の対称軸411は同一である。閉鎖部材305と第2のばね304は、図1では比例弁100の流入室401の中に配置されており、流入室401は、図1に示す実施例では、バルブハウジング104とノズル体101とによって区切られる。流入室401は通過開口部102を介して流出室402と接続可能である。比例弁100の周囲と流入室401との間で開口部として構成された流入通路408を介して、ガスを、たとえば水素を、流入方向403で周囲から流入室401の中へ入れることができる。閉鎖部材305が通過開口部102を解放すると、ガスが流出方向404で流入室401から流出室402の中へ流れることができる。図1では流出室402は、部分的にバルブハウジング104に収容されるノズル体101によって区切られる。その代替または補足として、流出室402が少なくとも部分的にバルブハウジング104によって区切られていてもよい。流入室401のほうを向いている通過開口部102の側に、弁座103が構成されている。図1では、弁座103は平形弁座としてノズル体101に設けられており、閉鎖部材305とノズル体101の間に図1では弾性部材306が配置されている。図4に詳細図として示している別の実施例では、密閉性を高めるために弾性部材306に高くなったシールエッジが設けられる。
【0025】
第1のばね302は、第1のばね力を閉止方向409で閉止部材301に対して及ぼすためにセットアップされている。第1のばね302は、一方では第1の端部をもってバルブハウジング104に支持されて、第1のばね力を閉止部材301に伝達する。他方では、第1のばね302はその第2の端部をもって閉止部材301に支持される。図1では、閉止部材301と第1のばね302の間にばね板300が追加的に配置されている。ばね板300は、第1のばね302の第1のばね力を閉止部材301に伝達することができる。第1のばね302は閉止部材301およびこれに伴って閉鎖部材305を、閉止方向409すなわち弁座103に向かう方向に作用する第1のばね力によって付勢する。閉鎖部材305は、流入通路408を通って流れ込むガスにより、別の力によって同じく閉止方向409へ付勢される。第2のばね304は、第1のばね力と反対方向に作用する第2のばね力を閉鎖部材305に対して及ぼす。第1のばね302の第1のばね力と、第2のばね304の第2のばね力はフックの法則に従ってストローク依存的である。閉止部材301に対しては、第1のばね力と第2のばね力の差に依存する力が作用し、この力の差はばねの撓みに対して線形である。第2のばね304は、図1では、閉鎖部材305を開放方向410の力によって付勢する。第1のばね302と第2のばね304は、これらが閉止部材301と閉鎖部材305を相互に押圧することによって、閉止部材301と閉鎖部材305の結合のために作用する。このようにして、たとえば閉止部材301と閉鎖部材305を別々に製造し、閉止部材301と閉鎖部材305の間の固定的な結合を省略することが可能である。ばね力とバルブダイナミクスが相応に設計されていれば、比例弁100の作動時に各コンポーネントが分離するのを回避することができ、このことは摩耗の問題を防止する。たとえば、第1のばね力は数値的に第2のばね力よりも大きくなっていてよく、それにより、比例弁100が基本状態にあるとき通過開口部102が閉鎖され、磁気コイル201が通電されたときに初めて開く。その代替または補足として第2のばね力は、供給圧力と貫流とによってもたらされる、最大限発生する弁座103での閉止力よりも大きく選択することができる。供給圧力は流入室401の圧力に相当する。それにより、どのような動作条件のもとでも弁座103が確実に開くことを保証することができる。
【0026】
比例弁100によるガスの調量は、磁気コイル201への通電によって行われる。基本状態のとき、すなわち磁気コイル201が通電されていないとき、弁座103は第2のばね304により第2のばね力で開放方向410へ付勢されるとともに、閉止部材301を介して第1のばね力で閉止方向409へ付勢される。第1のばね302の第1のばね力が、閉止方向409に作用するその他の空気圧の力と合わせて、開放方向410に作用する第2のばね力よりも大きいとき、弁座103は閉じたまま保たれる。磁気コイル201が通電されると、磁気アーマチュア202が磁気コイル201の磁場によって開放方向410へ動く。磁気アーマチュア202に対する、およびこれに伴って閉止部材301に対する力は、第1のばね力に抗して開放方向410へ作用し、それにより閉鎖部材305では開放方向410の力が勝り、したがって通過開口部102と弁座103が解放される。磁気アーマチュア202のストローク運動は、磁気コイル201の電流強さの調整によって制御することができる。このとき電流強さが上昇すると、増大する開放ストロークが実現されて、より多くのガスが流入室401から通過開口部102を通って流出室402へ誘導される。電流強さが低下すると、開放ストロークも縮小する。通電が終了すると、第1のばね302と流入室401の供給圧力に基づいて弁座103が閉じる。
【0027】
図2には、別の実施例に基づく比例弁100の断面が示されている。図1の比例弁100とは異なり、閉止部材301と閉鎖部材305の間の接触個所307が中高に構成されている。
【0028】
図3には、燃料電池501への水素供給を制御するための比例弁100を有する可能な燃料電池構造500の簡略な構造が示されている。燃料電池構造500はアノード領域504とカソード領域506とを含んでいる。さらに燃料電池構造500は、ここでは水素である気体状の媒体が中に蓄えられたタンク502を含んでいる。流入配管502を介して、気体状の媒体がタンク502から、バルブハウジング104にある開口部として具体化される流入通路408を通って比例弁100の流入室401の中へ、たとえば図1および2に示すように案内される。通過開口部102を介して、気体状の媒体を噴射ポンプ503のノズル体101に案内することができ、そこから燃料電池501のアノード領域504に供給することができる。
【0029】
比例弁100により、開放ストロークを調整することで、比例弁100を通る気体状の媒体の流量を制御することができる。開放ストロークの調整は、制御ユニット505により、比例弁100の磁気コイル201での電流強さを調整することで行われる。開放ストロークの量は電流強さに依存する。それにより、燃料電池501へのガス供給の必要性に即した調整を行うことができる。
【0030】
図5は、別の実施例に基づく比例弁100の断面の部分図を示している。この実施例は第2のばね304の構造に関して、図1に示す実施例と相違する。図5に示す実施例では、第2のばね304が下流側に、すなわち流出室403に配置されている。支持構造303は、ここでは円板状の部材303’’と結合ピン303’とを含んでいる。結合ピン303’は、第1の端部で閉鎖部材305に当接するとともに、第2の端部で円板状の部材303’’と結合されている。結合ピン303’は閉鎖部材405に中心で当接する。第2のばね力は開放方向410に作用する。第2のばね304は、支持構造303と反対を向くほうの第2のばね304の側に配置されたスプリングワッシャ308に支持されており、円板状の部材303’’に対して、およびこれに伴って結合ピン303’に対して押圧をし、結合ピンが開放方向410の力を閉鎖部材405に伝達する。それにより、ばね力が中央で閉鎖部材305に導入され、それにより開放時の閉鎖部材305の変位ないし傾動を回避することができる。スプリングワッシャ308は、閉鎖部材305と反対を向くほうのノズル体101の側に配置されている。スプリングワッシャ308は第2のばね力の調整を可能にする。そのためにスプリングワッシャ308は、図5に示すように、ねじ山308’を備えていてよい。その代替または補足として、スプリングワッシャ308に目盛を刻印することができる。そのためにスプリングワッシャ308には、測定用キャリパによって支持構造303に達するために、中央の穴が配置されている。第2のばね304への良好なアクセス性により、そのために簡単な仕方で第2のばね304の調整を、たとえばねじ山308’や目盛の刻印工程によって具体化することができる。それによりコンポーネント公差を低減することができる。さらに、そのようにして第1のばね302を、すなわち閉止をするばねを、調整可能ではない設計形態を具体化することができる。公差を補償するために、ばねのうち少なくとも1つを調整可能であるのがよいので、このことを第2のばね304の調整を通じて行うことができる。
【符号の説明】
【0031】
100 比例弁
102 通過開口部
103 弁座
200 アクチュエータ
201 磁気コイル
202 磁気アーマチュア
301 閉止部材
302 第1のばね
303 支持構造
304 第2のばね
305 閉鎖部材
306 弾性部材
307 接触個所
401 流入室
402 流出室
図1
図2
図3
図4
図5