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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】改良型磁気クラッチアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H02K 49/10 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
H02K49/10 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019569970
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 GB2018051734
(87)【国際公開番号】W WO2018234812
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】1709945.8
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519110696
【氏名又は名称】インテリテック プロプライエタリ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュラケートスキ、ヴィクトール
(72)【発明者】
【氏名】モストヴォイ、アレクザンダー
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-513077(JP,A)
【文献】特表2016-512945(JP,A)
【文献】特開2011-139625(JP,A)
【文献】米国特許第6252317(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0271971(US,A1)
【文献】特表2017-526324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気クラッチアセンブリであって、
a)円周方向に離間して固定された複数の空芯ステータコイルユニットと、
b)i.駆動リングであって、駆動リングの複数の対応する円周部分が任意の時点で前記コイルユニットの各々の内部に受け入れられるように適切に寸法決めされている駆動リングと、
ii.前記駆動リングと同心であり、前記複数のステータコイルユニットの外側に配置され、機械的負荷に接続可能な従動リングと、
iii.円周方向に離間した複数の対の永久磁石であって、前記対の各々は、前記駆動リングに備えられた第1の永久磁石と、前記従動リングに備えられた、前記第1の永久磁石とは反対の磁化方向の第2の永久磁石とからなり、前記駆動リングと前記従動リングとが磁気的に結合し同期して回転できることを確実にする、複数の対の永久磁石と、
iv.前記従動リングに備えられた円周方向に離間した複数のオフセット磁石ユニットであって、前記オフセットユニットの各々は、磁化方向が、隣接する従動リング磁石の磁化方向に対して角度的にオフセットされた少なくとも1つの永久磁石を備える、複数のオフセット磁石ユニットと
を備えるローターと、
c)前記ステータコイルユニットの各々に電磁場を誘導するための励磁電流を制御可能に供給し、前記駆動リングの前記永久磁石の各々の磁場と相互作用して前記ローターの回転を開始させ、同時に前記駆動リングの前記永久磁石が前記ステータコイルの各々の内部に順次導入されるように構成された電気制御ユニットと
を備え、
前記オフセット磁石ユニットと前記第2の永久磁石とは、前記従動リング上で周方向に離間しており、
前記オフセット磁石の各々の湾曲する磁力線が、異なる方向に湾曲している前記隣接する従動リング磁石の磁力線と重なり、前記隣接する従動リング磁石の前記磁力線と、対応する空芯ステータコイルユニットの前記誘導された電磁場との間の相互作用から通常生じる寄生逆起電力の発生を抑制するように、前記オフセット磁石の各々は、前記隣接する従動リング磁石に対して十分に角度的にオフセットされている、磁気クラッチアセンブリ。
【請求項2】
前記オフセット磁石の各々は、45度~125度の範囲の角度だけ前記隣接する従動リング磁石に対して角度的にオフセットされている、請求項1に記載の磁気クラッチアセンブリ。
【請求項3】
前記オフセット磁石の各々は、実質的に90度に等しい角度だけ前記隣接する従動リング磁石に対して角度的にオフセットされている、請求項2に記載の磁気クラッチアセンブリ。
【請求項4】
前記オフセット磁石の各々は、前記対応するステータコイルユニットと半径方向に整列している、請求項1に記載の磁気クラッチアセンブリ。
【請求項5】
前記オフセット磁石の各々は、トルク発生に関与するために、半径方向に整列する前記ステータコイルユニットの隣接面から5mm未満の距離だけ半径方向に分離されている、請求項4に記載の磁気クラッチアセンブリ。
【請求項6】
前記ステータコイルユニットの各々は、中央シャフトに対して半径方向に対称に配置されており、前記中央シャフトから動力を抽出可能になっている、請求項1に記載の磁気クラッチアセンブリ。
【請求項7】
前記対応するステータコイルユニットから半径方向に離間した円周方向に離間した複数の追加のオフセット磁石をさらに含み、前記追加のオフセット磁石の各々の湾曲する磁力線が、異なる方向に湾曲している前記所与の従動リング磁石の磁力線と重なり、前記オフセット磁石と前記追加のオフセット磁石の両方の集合的な影響により寄生逆起電力の発生を抑制するように、前記追加のオフセット磁石の各々は、所与の従動リング磁石に対して十分に角度的にオフセットされている、請求項6に記載の磁気クラッチアセンブリ。
【請求項8】
前記複数の追加のオフセット磁石は、前記中央シャフトを取り囲んで接続されるハブに接続されている、請求項7に記載の磁気クラッチアセンブリ。
【請求項9】
前記駆動リングおよび従動リングは、前記中央シャフトと同軸である、請求項6に記載の磁気クラッチアセンブリ。
【請求項10】
前記従動リングと前記中央シャフトとを相互接続する動力取り出し接続部をさらに備える、請求項6に記載の磁気クラッチアセンブリ。
【請求項11】
前記動力取り出し接続部は、前記従動リングから前記中央シャフトまで半径方向に延在する複数の円周方向に離間した直線要素で構成される、請求項10に記載の磁気クラッチアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石によるカップリングの分野に関するものである。具体的には、本発明は、発生する逆起電力のレベルを低減させながら、2つの回転リング間の直接的または間接的な機械的接続なしに2つの回転リングの動きを制御するように設計された改良型磁気クラッチアセンブリに係るものである。
【背景技術】
【0002】
2つの回転リング間の空隙を横切る力およびトルクの摩耗および接触のない伝達を提供するためのいくつかの永久磁石による磁気カップリングが、先行技術から知られている。各々のリングには一組の永久磁石が搭載されており、動作位置では、一方の組のすべてのN極が他方の組のすべてのS極に動作可能に近接している。これにより、駆動リングと従動リングは、永久磁石の力によって結合され、同期して回転し、従動リングに接続されたシャフトなどの動力取り出し要素からトルクを生成し、それによって磁気クラッチとして機能することができる。
【0003】
本発明の発明者らは、例えば、同じ出願人による特許文献1および特許文献2によって教示されるように、誘導電磁場によって磁気クラッチの駆動リングを回転させることを提案した。これは、ローターの磁石が動いているときに誘導される磁束の変動に起因する寄生逆起電力(EMF)を低減するように構成される。
【0004】
特許文献1は、複数の円周方向に分離された永久磁石と、ローターの周囲を取り囲み、永久磁石が通過できる空隙部分で構成される円周方向に離間する複数の固定ステータコイルとで構成される円形ローターを含むブラシレスDCモータを開示する。ステータコイルを励磁すると電磁場が誘導され、誘導電磁場が各々の永久磁石の磁場と相互作用するとローターの回転が開始される。ローターは、ギア式動力伝達手段に接続される。
【0005】
特許文献2は、上面図がU字型構造で側面図が二重C字型構造の複数のコイルを含むステータを有する同様のモータを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際出願公開第2013/140400号
【文献】英国特許第1605744.0号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、磁気的に結合された駆動リングおよび従動リングからなるローターの電磁誘導回転中、従動リングの各々の永久磁石の磁場はまた、ステータコイルと相互作用して追加のトルク低減逆起電力を生成する。他方、従動リングの永久磁石は、対応するステータコイルの外部にいつでも配置される。この追加的に生成された逆起電力は、特許文献1および特許文献2の装置によって実現された逆起電力の低減を妨げる。
【0008】
本発明の目的は、ステータコイルとの電磁誘導相互作用により駆動リングが回転可能であるが、従来技術の装置よりも逆起電力がかなり低い磁気クラッチアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の他の目的および利点は、説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【0010】
本発明は、
円周方向に離間して固定された複数の空芯ステータコイルユニットと、
ローターであって、
駆動リングであって、駆動リングの複数の対応する円周部分が任意の時点でコイルユニットの各々の内部に受け入れられるように適切に寸法決めされている駆動リングと、
駆動リングと同心であり、複数のステータコイルユニットの外側に配置され、機械的負荷に接続可能な従動リングと、
円周方向に離間した複数の対の永久磁石であって、対の各々は、駆動リングに備えられた第1の永久磁石と、従動リングに備えられた、第1の永久磁石とは反対の磁化方向の第2の永久磁石とからなり、駆動リングと従動リングが磁気的に結合し同期して回転できることを確実にする、複数の対の永久磁石と、
従動リングに備えられた円周方向に離間した複数のオフセット磁石ユニットであって、オフセットユニットの各々は、磁化方向が、隣接する従動リング磁石の磁化方向に対して角度的にオフセットされた少なくとも1つの永久磁石を備える、複数のオフセット磁石ユニットと
を備えるローターと、
ステータコイルユニットの各々に電磁場を誘導するための励磁電流を制御可能に供給し、駆動リングの永久磁石の各々の磁場と相互作用してローターの回転を開始させ、同時に駆動リングの永久磁石がステータコイルの各々の内部に順次導入されるように構成された電気制御ユニットと
を備えた磁気クラッチアセンブリを提供する。
【0011】
オフセット磁石の各々の湾曲する磁力線が、異なる方向に湾曲している隣接する従動リング磁石の磁力線と重なり、隣接する従動リング磁石の磁力線と、対応する空芯ステータコイルユニットの誘導された電磁場との間の相互作用から通常生じる寄生逆起電力の発生を抑制するように、オフセット磁石の各々は、隣接する従動リング磁石に対して十分に角度的にオフセットされる。
【0012】
一態様では、オフセット磁石の各々は、対応するステータコイルユニットと半径方向に整列している。オフセット磁石の各々は、トルク生成に関与するために、半径方向に整列するステータコイルユニットの隣接面から5mm未満の距離だけ半径方向に分離できる。
【0013】
一態様では、磁気クラッチアセンブリは、対応するステータコイルユニットから半径方向に離間した円周方向に離間した複数の追加のオフセット磁石をさらに含み、オフセット磁石の各々の湾曲する磁力線が、異なる方向に湾曲している所与の従動リング磁石の磁力線と重なり、オフセット磁石と追加のオフセット磁石の両方の集合的影響により寄生逆起電力の発生を抑制するように、追加のオフセット磁石の各々は、与の従動リング磁石に対して十分に角度的にオフセットされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る、本発明の磁気クラッチアセンブリの概略平面図である。
図2図1の磁気クラッチアセンブリの上部からの斜視図であり、固定底板を示しているが、外側リングなしで図示される。
図3図1の磁気クラッチアセンブリの内側リングの垂直断面図である。
図4図1の磁気クラッチアセンブリの上部からの斜視図であり、動力取り出し接続部を示す。
図5】本発明の一実施形態に係る、図1の磁気クラッチアセンブリと共に使用するための電気制御ユニットのアーキテクチャの概略図であり、外側リングなしで示されている。
図6図1の磁気クラッチアセンブリの一部の拡大図であり、内側リングおよび外側リングなしで示され、オフセット磁石とステータコイルユニットとの間の近接を示す。
図7図1の磁気クラッチアセンブリの概略平面図であり、空芯ステータコイルユニットなしで、動的状態で示される。
図8】本発明の別の一実施形態に係る、磁気クラッチアセンブリの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
導入として、本発明の磁気クラッチアセンブリは、2つの同心回転リング、第1の駆動リング、および機械的負荷に接続され、機械的負荷に電力を供給する第2の従動リングを含むローターを含む。両方のリングは、円周方向に間隔を離間する複数の永久磁石を有し、駆動リングと従動リングの対応する磁石は、同期して回転するために反対の磁化方向を備えることによって磁気的に結合できる。
【0016】
本明細書で言及されるように、「磁化方向」は、相対的なN‐S配置を考慮に入れながらそのN極とS極との間に延在する永久磁石の軸の方向である。
【0017】
駆動リングが運動を発生する機械装置に接続される従来技術の磁気クラッチアセンブリとは対照的に、本発明のローターは、駆動リングの周囲を囲む、円周方向に離間して固定された複数の空芯ステータコイルと相互作用することにより回転させられる。ステータコイルを励磁すると電磁場が誘導され、誘導電磁場は本発明の駆動リングの各々の永久磁石の磁場と相互作用してローターの回転を開始させる。駆動リングの永久磁石が各々のステータコイルの内部に連続的に導入されながら、ローターは回転を続け、伝達システムへの機械的接続による摩擦損失を受けることなくトルクを生成する。ステータコイルを使用する例示的なモータ構造は、同じ出願人による特許文献1に記載されている。
【0018】
上述のように、従動リングの各々の永久磁石の磁場はまた、ローターの回転中にステータコイルと連続的に相互作用して、駆動リングの回転する永久磁石とステータコイルの相互作用から生じる磁束の変化の結果生じる逆起電力に加えて、逆起電力の追加の発生源を生成する。
【0019】
駆動リングの永久磁石と磁気的に結合している永久磁石から角度的にオフセットされた永久磁石であるオフセット磁石を従動リングに提供することによって従動リングの永久磁石に関連する逆起電力の追加の発生源に対抗することがここで見出される。それが本発明の目的である。
【0020】
ここで図1を参照する。図1に、本発明の一実施形態に係る、全体が符号15で示された本発明の磁気クラッチアセンブリを平面図で概略的に示す。
【0021】
磁気クラッチアセンブリ15は、半径方向に離間する内側リング3および外側リング6を含み、これらは同心であり、中央シャフト15と同軸である。円周方向に離間する永久磁石1が、内側リング3に固定して取り付けられるか、またはそうでなければ内側リング3を備える。円周方向に離間する永久磁石5は、外側リング6に固定して取り付けられるか、またはそうでなければ外側リング6を備える。永久磁石1および5は、そのSN極がリングの円周に接するように向けられている。各々のリング上の円周方向に離間する永久磁石の数は、リングの直径に応じて、例えば3~12個の磁石に変えてもよい。
【0022】
内側リング3の磁石1と対応する外側リング6の磁石5からなる対は、反対の磁化方向で配置され、2つのリングが磁気的に結合され、それらが同期して回転することを保証する。一対の第1の磁石の磁化方向がその対の第2の磁石の磁化方向と反対である限り、極の相対的な向き、すなわちN極が回転方向を指しているか、またはS極が回転方向を指しているかは重要ではない。磁石の対は、円周方向に同一の間隔によって離間されるように示されているが、本発明では、円周方向に同じ間隔ではない間隔で離間される場合にも適用可能であることが理解されるであろう。
【0023】
内側リング3は、その周囲が、円周方向に離間して固定された複数の空芯ステータコイルユニット2(例えば、ソレノイド)によって囲まれているので、駆動リングとして示されている。しかしながら、本発明は、外側リング6が駆動リングであり、複数のステータコイルユニット2が外側リング6の周囲を取り囲むようにも適用可能であることが理解されるであろう。ステータコイルユニット2に電圧が印加されると、電磁場が誘導され、誘導電磁場が内側リング3の近くの永久磁石1の磁場と相互作用すると、ローターの回転が開始され、印加電圧の極性に応じて、永久磁石がコイルユニットに引き寄せられるか、またはコイルユニットから反発する。
【0024】
複数の円周方向に離間して固定された空芯ステータコイルユニット2は、動力を引き出せる中央シャフト7に関して放射状対称に配置されている。各々のステータコイルユニットの軸線または長さは、シャフト7と外側リング6との間の線に沿って放射状に延在する。各々のコイルユニット2の空芯は、内側リング3のものよりも大きい半径方向寸法を有し、電磁場が誘導されるとリングが各々のコイルユニット2の空芯を通過できる。ステータコイルユニット2の数は、概して所与のリング上の磁気的に結合された永久磁石の数に等しいが、必ずしもその必要はない。
【0025】
ステータコイルユニット2の制御された励磁中、駆動内側リング3は、複数の円周方向に離間したローラ4によってシャフト7と同軸の円形経路に沿って付勢される。例えば、摩擦低減ローラ4が、各々のステータコイルユニット2と隣接する永久磁石1との間に配置されるが、ローラ、ステータコイル、永久磁石のその他の配置もまた想定される。
【0026】
図2に示すように、ステータコイルユニット2およびローラ4の各々は固定底板9に取り付けられる。固定底板9は、図示のように円形にできる。
【0027】
永久磁石1は内側リング3に接続され、内側リング3から鉛直方向に延在して、ステータコイルユニット2の空芯への連続的な導入を容易にする。あるいは、永久磁石1は他の適切な方法で内側リング3に固定されるか、または提供される。ステータコイルユニット2の各々は直線構成を有する、すなわち、2つの長方形の垂直方向のプレートがハウジングの対応する円周方向の端部を画定し、複数の異なる方向の支持要素がプレートを相互接続し、その周りを磁場を生成するためのコイルが巻かれ、同様の形状の空芯内に相補的な直線状永久磁石1を収容するように示されているが、他の形状もまた本発明の範囲内である。外側リングの永久磁石5は、内側リングの永久磁石1と同じ断面、または任意の他の所望の断面を有してもよく、また、外側リングに接続され、外側リングから鉛直方向に延びてもよい。
【0028】
あるいはまた、永久磁石は、対応するリングと一体に形成されてもよい。
【0029】
内側リング3の断面を図3に示す。内側リング3を底板9の上方の一定の高さに保持するために、内側リング3の外面14には、連続的かつ半径方向内方に形成された凹部16(例えば、ノッチ)が形成されている。中心軸線19から凹部16の外壁までの内側リング3の半径方向寸法は、直径方向に対向するローラ4間の間隔に等しい。したがって、ローラ4によって内側リング3に加えられる半径方向の圧力は、後者が静止しているか、または回転しているときの両方とも、底板9の上方に内側リング3を支持するのに十分である。外側リングは内側リング3と磁気的に結合しているため、電圧供給が終了しても、外側リングも、適切に底板9の上方の一定の高さに保持される。
【0030】
図4に示すように、複数の半径方向に延在するスポーク8により、外側リング6が、シャフト7を取り囲んで接続されたハブ12に接続され、シャフト7からの動力取り出しを容易にする。他の動力伝達要素または動力取り出し要素も使用できる。
【0031】
ステータコイルユニット22を制御可能に励磁し、それにより内側リング3を駆動するための電気システムを図5に概略的に示さす。ステータコイルユニット32は管状構成を有するように示されるが、他の構成であってもよく、各々のステータコイルユニットに印加される電圧の極性とレベルを各瞬間に決定する(好ましくは、限定されないが、電子タイプの)スイッチ33のシステムを介してDC電源に電気的に接続されている。スイッチは、コンポーネント(好ましくは、関連するソフトウェアを備えたマイクロコントローラ36)により制御され、そのソフトウェアは各々のコイルユニット32に印加されるDC極性を(例えば、コイルユニット32へのDC接続を反転することにより)、ならびに平均DCレベルを(例えば、パルス幅変調(PWM)を使用してDC電源電圧を印加することにより)各瞬間に決定する。各瞬間における内側リング3の角度位置は、センサシステム34(例えば、光学センサまたはホール効果センサ)によって検出される。センサ出力はコントローラに送られ、コントローラはローターの状態(すなわち、角度位置、速度、および加速度)に応じてスイッチを操作する。
【0032】
コイルユニット32が励磁されると、内側リングの近くの永久磁石1は円形経路に沿って移動する。磁石は、巻線内の電流の流れの方向、および磁石の方向(N-SまたはS-S)を決定する所与のコイルユニットに関連付けられたスイッチの極性に応じて、励磁コイルユニット32の空芯に向かって引き込まれるか、空芯から押し出される。同様に、スイッチの状態は、センサによって検出されたローターの角度位置に基づいて、コントローラによって毎回決定される。スイッチのシステム全体の適切な同時操作シーケンスの下で、いずれかの回転方向に内側リングを連続的に滑らかに回転させることができる。
【0033】
再び図1を参照すると、回転中にステータコイルユニット2の空芯内に永久磁石1が一時的に入ることにより生じる磁束の変化により、寄生逆起電力が発生する。逆起電力の他の発生源は、外側リング6の所与の永久磁石5に関連付けられた磁場と、所与の永久磁石5が瞬間的に位置するステータコイルユニット2に関連付けられたステータコイルユニット2の外側への誘導電磁場との相互作用から生じる。たとえ所与の永久磁石5がステータコイルユニット2の外部に位置していても、N極からS極に曲がる磁力線が空芯を通るので、誘導電磁場と相互作用して追加の逆起電力を生成する。
【0034】
有利なことに、この追加の逆起電力は、外側リング6に円周方向に離間した複数のオフセット永久磁石10を設けることにより、最小化または完全に除去することができる。対応するステータコイルユニット2と半径方向に整列することができる各々のオフセット磁石10は、1つ以上(例えば、図示されるように3つ)の個別の磁石を有し、その磁化方向は、互いに磁気的に結合されている磁石1および5の磁化方向に対して角度相殺(オフセット)されている。オフセット磁石10は、磁気的に結合された従動リング磁石5に比較的近いため、オフセット磁石10の磁力線を従動リング磁石5の磁力線と重ね合わせて、従動リング磁石5に由来する追加の逆起電力の影響を抑えることができる。
【0035】
駆動リング磁石1、従動リング磁石5、およびオフセット磁石10は、上向きまたは下向きにかかわらず、対応するリング体に接続されて、そこから鉛直に突出するようにでき、あるいはまた、2つの隣接するアーチ型スペーサーの間に配置されて、対応するリング構造体と同一平面上にあってもよい。スペーサーまたは連続リング構造体は、強磁性材料または鉄などの高透磁率材料で作られ、回転磁石の磁場およびスペーサーの磁場と、ステータコイルの誘導電磁場との相互作用に起因する磁束の変化を低減させることができる。専用のロボット装置を使用して、ローターの周囲に沿ってスペーサーを正確に位置決めし、磁気誘導反発力に打ち勝つことができる。
【0036】
図示のとおり、オフセット磁石10の磁化方向が、従動リング磁石5の磁化方向から90度の角度だけ角度的にオフセットされる場合、優れた逆起電力抑制が実現できる。それにも関わらず、オフセット磁石10が従動リング磁石5の磁化方向から90度未満、例えば75~90度または45~75度の間の角度、または90度を超える、例えば90~125度の角度で角度的にオフセットされる場合にも、驚くほど効果的な逆起電力抑制が可能になる。
【0037】
オフセット永久磁石10は、追加のトルクの生成にも有利に寄与する。図6に示すとおり、各々のオフセット磁石10が、瞬間的にステータコイルユニット2と半径方向に整列しているステータコイルユニット2の半径方向外側面23から半径方向に離れている距離Dが5mm未満の場合、オフセット磁石10の磁場は、面23から半径方向外側に延在するステータコイルユニット2によって生成される電磁場の一部と相互作用することができる。オフセット磁石10の磁場とステータコイルユニット2によって生成される電磁界との間のこの相互作用は、従動リングに作用する追加のトルクの発生源である。
【0038】
図7に示すとおり、外側リング6が接続されている負荷の影響により、磁気クラッチ15の回転中、外側リング6の永久磁石5は、磁気結合される内側リング3の対応する永久磁石1から円周方向にミスアライメント(誤整列)される。この動的状態は、磁気クラッチ15が静止しており、永久磁石5が磁気的に結合される対応する永久磁石1と円周方向に整列しているときの静的状態とは対照的である。
【0039】
ミスアライメントの間、磁石1および5の相対的位置は、リング5および6の円周に対して接線方向に準線形にシフトする。最終的に、磁石1および5は、図示されるように円周オフセットhに達し、これは安定しており、実質的に変化しない。オフセットhは、負荷による反対の力に依存する。適切な条件下では、hは、外側の従動リング6を内側の駆動リング3と共に回転させるのに必要な力に正比例して増加するであろう。
【0040】
対象範囲において、オフセットhは力伝達にほぼ正比例し、hが大きすぎない限り、駆動リング3は従動リング6を、リング3と6との間の物理的接触の発生なしに推進することができることが提示されるであろう。hの大きさが磁石1と5の間のギャップの幅に近づくと、伝達される力が低下する。駆動リング3が従動リング6に加えることのできる最大の力は、永久磁石の強度と幾何学的形状、磁石の数、ならびに2つのリング3と6の間のギャップに依存するであろう。
【実施例1】
【0041】
逆起電力抑制
オフセット磁石によって提供される逆起電力抑制の効果が、外側リングの直径が400mmとなるように構成された2つの同心かつ半径方向に離間した磁気結合リングを含むローターを有する本発明の教示に係る磁気クラッチアセンブリを含む試験装置で研究された。内側リングの周囲を囲む1つの空芯ステータコイルユニットが使用された。
【0042】
インダクタンスを40μHにするために、6μΩの電気抵抗を有するコイルを50mm間隔で配置し、直線状ステータコイルハウジングの対応する円周方向端部に位置する2つの鉛直配向プレートを相互接続する支持要素の周りに20回均等に巻いた。空芯のサイズは50×70×80mmであった。
【0043】
各々が50×50×80mmの大きさである6つの等間隔の永久磁石が各々のリングに取り付けられ、一方、内側リングに取り付けられた磁石は、外側リングに取り付けられた対応する磁石と半径方向に整列され、その磁石に磁気的に結合された。外側リングに取り付けられた磁石は、内側リングに取り付けられた対応する磁石から22mmの距離だけ半径方向に離間された。
【0044】
スイッチ接続導体37(図5)を介して異なる個別のレベルで電圧をコイルに供給して、ローターを対応する速度で回転させ、その値を光電センサおよびオシロスコープで測定し、表Iに掲載した。各々の対応する速度に対して発生した逆起電力(BEMF)を測定して、これもまた表Iに掲載した。
【表1】
【0045】
次に、それぞれサイズが50×50×20mmである6つの追加の永久磁石を、対応する磁気結合された磁石から円周方向に30度離れるように外側リングに取り付け、外側リングに取り付けられた磁石の磁化方向に対して90度だけ角度的にオフセットした。
【0046】
異なる個別のレベルでコイルに電圧を供給して、追加のオフセット磁石を備えたローターを表Iに挙げた同じ速度で回転させた。各々の対応する速度に対して発生した逆起電力(BEMF)を測定し、表IIに掲載した。実証されたように、BEMFは22~26%の範囲の値が削減された。
【表2】
【実施例2】
【0047】
追加のトルク生成
オフセット磁石によってローターに提供される追加のトルク生成の効果は、実施例1に記載された同じ試験装置で研究した。
【0048】
ローターに対応する速度で回転させるために、異なる個別のレベルでスイッチ接続導体37(図5)を介してコイルに電流を供給した。オフセット磁石なしで提供されたローターによって生成されたトルクは、ドイツのゲルンスバッハのBurster Praezisionsmesstechnik Gmbh&Co.製のトルクセンサモデル8645によって測定し、各々の電流レベルについて表IIIに掲載した。
【0049】
次に、6個のオフセット磁石が単一のステータコイルユニットの半径方向外側の面と半径方向に整列したときに、6個のオフセット磁石が単一のステータコイルユニットの半径方向外側の面から2~5mmの範囲の距離だけ半径方向に離れるように、6個のオフセット磁石を外側リングに接続し、その後、同じ個別のレベルの電流をコイルに供給し、生成されたトルクの対応するレベルを測定し、表IVに掲載した。実証されたように、オフセット磁石の使用の結果として生成されたトルクは、9.3~11.5%の範囲の値だけ増加した。
【表3】

【表4】
【0050】
図8は、本発明の別の一実施形態に係る磁気クラッチアセンブリ25を示す。磁気クラッチアセンブリ25は、図1の磁気クラッチアセンブリ15と同一であるが、別の組のオフセット磁石20が追加されている。複数の追加のオフセット磁石20は、オフセット磁石20が対応するステータコイルユニット2と整列し、対応するステータコイルユニット2からわずかに離間するように中央シャフトを取り囲んで中央シャフトに接続されるハブ12に接続される。したがって、単一の従動リング磁石5に対する逆起電力抑制は、オフセット磁石10とオフセット磁石20の両方の集合的影響によって可能になる。
【0051】
追加のオフセット磁石20はまた、ステータコイルユニット2の半径方向内側の面から5mm未満の距離だけ半径方向に分離されるように構成することができ、追加のオフセット磁石20は、ステータコイルユニット2と瞬間的に半径方向に整列される。各々の追加のオフセット磁石20の磁場は、ステータコイルユニットから外側および半径方向内側に延在するステータコイルユニット2によって生成される電磁場の一部と相互作用することができる。追加のオフセット磁石20の磁場とステータコイルユニット2によって生成される電磁場との間のこの相互作用は、従動リングに作用する追加のトルク源となる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を例示のために説明したが、本発明は、多くの修正、変形、および適応により、また特許請求の範囲を超えることなく当業者の範囲内にある多数の均等物または代替解決策を使用して実施できることは明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8