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特許7149972シラジット(SHILAJIT)の使用による筋肉の増強および修復の促進と、コラーゲンおよび関係するタンパク質に関連する障害の処置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】シラジット(SHILAJIT)の使用による筋肉の増強および修復の促進と、コラーゲンおよび関係するタンパク質に関連する障害の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/10 20150101AFI20220930BHJP
   A61K 31/366 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 31/74 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A61K35/10
A61K31/366
A61K31/74
A61K33/00
A61P1/02
A61P17/00
A61P19/00
A61P19/02
A61P21/00
A61P27/02
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P19/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020000192
(22)【出願日】2020-01-06
(62)【分割の表示】P 2017518118の分割
【原出願日】2015-10-01
(65)【公開番号】P2020073552
(43)【公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-02-04
(31)【優先権主張番号】62/059,072
(32)【優先日】2014-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505208444
【氏名又は名称】ナトレオン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】セン,チャンダン,ケイ.
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/068252(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/047292(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0136595(US,A1)
【文献】韓国特許第10-2012-0097262(KR,B1)
【文献】特表2017-530980(JP,A)
【文献】Nawaf Yousef Labban,SHILAJIT, A NOVEL REGULATOR OF BONE/CARTILAGE HEALING,2013年
【文献】Phytother. Res.,2013年,Vol.28,pp.475-479
【文献】J. Ethnopharmacol.,2011年,Vol.136,pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/10
A61K 31/00-33/44
A61K 8/362
A61K 8/49
A61K 8/96
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物中の骨格筋においてコラーゲン合成を誘導する非治療的方法であって、前記非治療的方法が、それを必要とする前記哺乳動物に有効量のシラジットを経口投与するステップを備え、
前記哺乳動物の体が、新しいコラーゲンならびに任意選択的にテネイシン、デコリン、エラスチン、ミオフェルリン、フィブリリンおよびフィブロネクチンからなる群から選択される1つもしくは複数のタンパク質を合成し、
前記シラジットが、0.3%以上のジベンゾ-α-ピロン、色素タンパク質にコンジュゲートした10.0%以上のジベンゾ-α-ピロン、ジベンゾ-α-ピロン核を有する50%以上のフルボ酸、1ppm未満の鉛、1ppm未満の砒素および0.1ppm未満の水銀を含み、
骨格筋におけるコラーゲン合成の誘導および前記1つもしくは複数のタンパク質が、運動にともない相乗的に増大する
ことを特徴とする非治療的方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記哺乳動物はヒトであり、コラーゲン合成の誘導は筋肉の増強および再生を向上させることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、シラジットは、3-ヒドロキシ-ジベンゾ-α-ピロン、3,8-ジヒドロキシ-ジベンゾ-α-ピロン、ジベンゾ-α-ピロン色素タンパク質、フミン酸、ジベンゾ-α-ピロン核を有するフルボ酸およびミネラルを含む化学組成を有することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記哺乳動物はヒトであり、かつシラジットの用量はヒトにおいて1日約20mg~約2000mgであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、シラジットの用量はヒトにおいて1日約100mg~約500mgであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記哺乳動物はヒトであり、前記ヒトは、21~70歳の健常ヒト成人であって、25~35の範囲のボディマスインデックスを有することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、コラーゲン合成および/または前記1つもしくは複数のタンパク質の誘導は、TNXB、DCN、MYOF、COL1A1、COL1A2、COL3A1、MIR3606、COL5A2、COL6A3、COL14A1、ELN、FBN1およびFN1からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子の発現増加により特徴づけられることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記1つまたは複数の遺伝子の発現の変化は、少なくとも約1.1倍であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記1つまたは複数の遺伝子の発現の変化は、約1.5倍よりも大きいことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記哺乳動物はヒトであり、前記経口投与するステップは、運動とともに少なくとも4週間の期間行われることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記経口投与するステップは、前記ヒトに1日あたり少なくとも500mgのシラジットを経口投与するステップを備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラジット(Shilajit);その個々の化学成分、たとえば3-ヒドロキシ-ジベンゾ-α-ピロン、3,8-ジヒドロキシ-ジベンゾ-α-ピロン、ジベンゾ-α-ピロン色素タンパク質、フミン酸、フルボ酸および40超のミネラル;またはこれらの組み合わせの使用により、コラーゲン合成を促進し、それによって筋肉の増強および修復と、ヒトを含む哺乳動物の体内の皮膚、軟骨、結合組織、筋肉、血管組織、骨および歯の健康とを向上させること、および/またはヒトを含む哺乳動物の体内の皮膚、軟骨、結合組織、筋肉、血管組織、骨および歯の疾患の処置することに関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、強固な三重らせん状に巻き付き合った3本のタンパク質鎖からなる、体の主要な構造タンパク質である。この独特の構造により、コラーゲンは鋼より引張強さが大きい。体内のタンパク質の約33パーセントはコラーゲンである。このタンパク質は組織および器官を支持し、これらの構造体を骨に結合する。実際に、骨もカルシウムおよびリンなどの特定の元素と組み合わされたコラーゲンからなる。コラーゲンは、細胞の形状および分化の支持に貢献する、細胞を取り囲む構造スキャホールドを与えるうえで重要な役割を果たしている。網目のようなコラーゲンネットワークは細胞と結合し合って、細胞が発生して機能し、そして組織および骨が治癒する支持的フレームワークまたは環境を整える。
【0003】
コラーゲンは、細長いフィブリルの形態で、大部分は腱、靭帯および皮膚などの線維組織に見られる。コラーゲンは、角膜、軟骨、骨、血管、腸、椎間板および歯の象牙質にも豊富である。筋肉組織では、コラーゲンは筋内膜の主要成分として働く。コラーゲンは筋肉組織の1~2パーセントであり、強い腱筋の重量の6パーセントを占める。コラーゲンを作る最も一般的な細胞は、線維芽細胞である。
【0004】
コラーゲンの型:
コラーゲンは、体中の多くの場所に生じる。体内のコラーゲンの90パーセント超はI型である。これまで、28型のコラーゲンが同定され、記載されている。最も一般的な5つの型は、以下である:
・ コラーゲンI:皮膚、腱、血管結紮部、器官、骨(骨の有機部分の主な成分);
・ コラーゲンII:軟骨(軟骨の主な成分);
・ コラーゲンIII:細網組織(細網線維の主な成分)、コラーゲンIと並んで多く見られる;
・ コラーゲンIV:基底板、上皮から分泌される基底膜の層を形成する;および
・ コラーゲンV:細胞表面、毛髪および胎盤。
【0005】
体内でのコラーゲンの役割:
コラーゲンは、下記に詳述するように皮膚、結合組織、腱、骨および軟骨の健康の維持に極めて重要な役割を果たすため、健康にとって重要である。
【0006】
皮膚の健康:コラーゲンは、皮膚の健康に重要な役割を果たす。コラーゲンIおよびコラーゲンIIIは、他の型のコラーゲンと比較して高い比率でヒト皮膚において形成され、正常な皮膚組織において互いに一定比率で維持される。コラーゲンIは、皮膚におけるコラーゲンの約70パーセントであり、コラーゲンIIIは皮膚におけるコラーゲンの約10パーセントであり、コラーゲンIV、V、VIおよびVIIはそれぞれ皮膚において微量のコラーゲンである。コラーゲンは皮膚の張りおよび弾性を維持する。コラーゲン加水分解物の形態のコラーゲンは、皮膚の水分を保持する。年齢と共に体内のコラーゲンの量が減少し、たるみ、縦じわ、しわ、張力および弾性の不足、ならびに創傷治癒プロセスの遅延が生じる。
【0007】
創傷治癒:コラーゲンは、結合組織の極めて重要なタンパク質であり、瘢痕の修復および形成により創傷治癒において重要な役割を果たす。年齢に伴う創傷治癒の遅延は、コラーゲンの合成障害および分解の増加により引き起こされる。
【0008】
骨:骨の有機部分の約95%は、コラーゲン、主にコラーゲンIでできている。硬いミネラルと柔軟なコラーゲンとの組み合わせにより、骨は脆くなりすぎずに軟骨より硬くなっている。コラーゲンメッシュと水との組み合わせにより、筋運動中に関節内の骨の端部の衝撃を緩和する強く滑りやすいパッドが関節に形成される。
【0009】
軟骨、腱、靭帯:細長いフィブリルの形態のコラーゲンは主に、腱および靭帯などの線維組織に見られる。コラーゲンは、組織を支持するため体に使用される柔軟で伸縮性のあるタンパク質であり、よって軟骨、腱および靭帯の維持に不可欠な役割を果たす。正常な腱は、密集したコラーゲン線維束で構成されかつ腱鞘に囲まれた、軟質な線維性結合組織からなる。軟骨の主要成分はコラーゲンIIである。
【0010】
筋肉:筋肉組織では、コラーゲンは、筋内膜の主要成分として働く。
【0011】
歯組織:象牙質および歯髄の有機部分はコラーゲン、主にコラーゲンI、加えて少量のコラーゲンIIIおよびVからなる。セメント質に見られる主なコラーゲンはコラーゲンIであり、歯根膜ではコラーゲンI、III、およびXIIである。
【0012】
基底膜:上皮基底膜はコラーゲンIVおよびVIIからなる。
【0013】
コラーゲン関連障害:
コラーゲン関連障害は、生合成、構築、翻訳後修飾、分泌、または正常なコラーゲン産生に関与する他の過程に影響を与える遺伝子欠損または栄養障害から起こるのが最も一般的である。様々なコラーゲン関連障害について以下に記載する。
【0014】
コラーゲンIの突然変異により引き起こされる常染色体優性障害にオステオゲンセス不全症がある。オステオゲンセス不全症では骨が脆弱になり、結合組織が不規則に走行する。一部の症例は軽度であることもあるが、重症例は致死的であり得る。軽症例は、コラーゲンIのレベルが低いことを特徴とする一方、重症例はコラーゲンの構造異常を特徴とする。
【0015】
軟骨異形成症は、コラーゲンIIの突然変異により引き起こされると考えられる骨格障害であり、継続的な調査努力の対象である。
【0016】
エーラスダンロス症候群は、結合組織に変形が起こる。この障害では異なる10型が知られており、その一部は動脈の破裂を特徴とし、よって致死的である。エーラスダンロス症候群の各型は、異なる突然変異、たとえば、この症候群の4型はコラーゲンIIIの突然変異により引き起こされる。
【0017】
アルポート症候群は、通常X染色体連鎖優性遺伝子としてだけでなく、常染色体優性遺伝子および常染色体劣性遺伝子の両方としても遺伝的に受け継がれ得る。アルポート症候群に罹患している人は、腎臓および眼の不調、ならびに小児期または青年期に難聴を経験する。
【0018】
骨粗鬆症は、遺伝的に伝えられるよりむしろ加齢に伴い認められ、皮膚および骨のコラーゲンのレベルの減少と関連している。コラーゲンの何らかの減少に対抗するため、骨粗鬆症の可能な処置として成長ホルモン注射が研究されている。
【0019】
Knobloch症候群は、コラーゲンXVIII遺伝子の突然変異により引き起こされる。Knobloch症候群に罹患している患者は、脳組織の突出および網膜の変性を呈する。Knobloch症候群に罹患している家族構成員の1人または複数人は、遺伝的素因があるため家族構成員自身Knobloch症候群を発症するリスクが高い。
【0020】
コラーゲンの分解および産生の減少:
年齢と共にコラーゲンは分解し、コラーゲンの産生が減少する。その結果、皮膚に小じわおよびしわが現れる。皮膚はまた、その弾性を失い、たるむ。コラーゲンは、既存のコラーゲンの分解の減少および新しいコラーゲンの産生の増加により維持することができる。コラーゲンの分解は、(a)皮膚をUVA線およびUVB線から保護すること;(b)太陽光に過剰にあたることを回避すること;(c)フリーラジカル対策のため抗酸化剤を含む食事をとること;(d)新しいコラーゲンの産生を促進するビタミンCを摂取すること;(e)コラーゲン刺激ペプチドを補充すること;および(f)体が新しいコラーゲンを産生する固有能力を増大させることにより減少させることができる。
【0021】
本発明の意義を理解するため、筋肉および結合組織におけるいくつかのタンパク質の簡単な説明が求められる。
【0022】
テネイシンXBは、テネイシンファミリー、テネイシンX(TN-X)のメンバーであり、ヘキサブラキオン様タンパク質(hexabrachion-like protein)とも呼ばれる。テネイシンXBは、皮膚、関節および筋肉を含む結合組織に発現する糖タンパク質である。ヒトではテネイシンXBは、TNXB遺伝子によりコードされる。
【0023】
デコリンは結合組織の成分であり、コラーゲンIフィブリルに結合し、マトリックスアセンブリーにおいて役割を果たし、DCN遺伝子によりコードされる。デコリンは、フィブリル形成に影響を与え、さらにフィブロネクチン、トロンボスポンジン、補体成分C1q、上皮増殖因子受容体(「EGFR」)およびトランスフォーミング増殖因子β(「TGF-β」)と相互作用するようである。デコリンは、TGF-β1の活性を増強あるいは阻害することが示されている。デコリンの主な機能は、細胞周期における制御に関係する。デコリンは、内皮細胞のオートファジーの制御に関与し、血管新生を阻害する。この過程は、PEG 3と呼ばれる腫瘍抑制因子遺伝子のレベルの増加をもたらす、血管内皮細胞増殖因子受容体(「VEGFR2」)との高親和性相互作用に媒介される。デコリンは近年、マイオカインとして確認された。この役割において、デコリンは、ミオスタチンとの結合により筋肉肥大を促進する。
【0024】
ミオフェルリン(myoferlin)は、MYOF遺伝子によりコードされたヒトのタンパク質である。骨格筋は、筋芽細胞のシンシチウムへの融合により発生しかつ維持される、多核のシンシチウムである。ミオフェルリンは、筋芽細胞に高発現しかつ筋芽細胞の筋管との効率的な融合に必要とされる、複数のC2ドメインを含む膜アンカー型タンパク質である。よって、ミオフェルリンは、筋肉の増強および再生において重要な役割を果たす。
【0025】
前記のように、28型のコラーゲンが存在する。コラーゲンI、IIおよびIIIが最も多く見られる型である。COL1A1遺伝子は、プロα1(I)鎖と呼ばれるコラーゲンIの成分を作る。この鎖は、別のプロα1(I)鎖、さらにプロα2(I)鎖(COL1A2遺伝子により作られる)と組み合わさってI型プロコラーゲンの分子を形成する。これらロープ状の三本鎖プロコラーゲン分子は、細胞外で酵素により処理される。これらの分子は処理されたならば、自らを整えて、細胞周囲のスペースで互いに架橋する細長いフィブリルとなる。架橋により非常に強い成熟コラーゲンI線維が形成される。
【0026】
COL1A2遺伝子は、大部分の結合組織に見られる線維性コラーゲン、コラーゲンIの鎖の1つをコードする。この遺伝子の突然変異は、骨形成不全症、エーラスダンロス症候群、特発性骨粗鬆症および非定型マルファン症候群と関連している。しかしながら、この遺伝子の突然変異と関連している症状は、α-1コラーゲンIの遺伝子の突然変異より重症度が低い傾向がある。α-2の方が豊富でないためである。
【0027】
COL2A1遺伝子は、コラーゲンIIのプロα1(II)鎖の産生の指令を出すヒト遺伝子である。この遺伝子は、軟骨および眼の硝子体液に見られる線維性コラーゲン、コラーゲンIIのα-1鎖をコードする。この遺伝子の突然変異は、軟骨無発生症、軟骨異形成症、早期発症型家族性変形性関節症、先天性SED、Langer-Saldino型軟骨無発生症、Kniest異形成、Stickler症候群I型およびStrudwick型脊椎骨端骨幹端異形成と関連している。さらに、コラーゲンIIのC-プロペプチドであるカルシウム結合タンパク質、プロセシングコンドロカルシンの異常も軟骨異形成症と関連している。COL2A1遺伝子では2つの転写物が同定されている。結合組織に構造および強度を加えるコラーゲンIIは主に、眼球(硝子体)、内耳および脊椎の椎間板の中央部(髄核)を満たすゼリー状の物質、軟骨に見られる。3本のプロα1(II)鎖は、絡み合ってロープ状の三本鎖プロコラーゲン分子を形成する。これらのプロコラーゲン分子は、細胞内で酵素により処理されなければならない。これらの分子は処理されたならば、細胞から放出され、自らを整えて、細胞周囲のスペースで互いに架橋する細長いフィブリルとなる。架橋により非常に強い成熟コラーゲンII線維が形成される。
【0028】
コラーゲンIIIα-1は、COL3A1遺伝子によりコードされる。コラーゲンIIIα-1は、頻繁にコラーゲンIと結合して皮膚、肺および血管系などの伸張性のある結合組織に見られる線維性コラーゲンである。
【0029】
COL5A2遺伝子は、少量の線維性コラーゲンの1つのα鎖をコードする。線維性コラーゲン分子は、1つまたは複数の種類のα鎖からなり得る3量体である。コラーゲンVは、コラーゲンIを含む組織に見られ、コラーゲンIとVと両方からなる異型の線維の構築を制御するようである。この遺伝子産物はコラーゲンXIと密接に関連しており、コラーゲンVおよびXIのコラーゲン鎖は、組織特異的な鎖の組み合わせにより単一のコラーゲン型を構成することが可能である。
【0030】
COL6A3遺伝子は、大部分の結合組織に見られるビーズ状フィラメントコラーゲン、コラーゲンVIの3つのα鎖の1つα3鎖をコードする。コラーゲンVIのα3鎖は、α1鎖および2鎖よりかなり大きい。この大きさの相違は主に、すべてのα鎖のアミノ末端球状ドメインに見られる、von Willebrand因子A型ドメインに類似したサブドメイン数の増加による。これらのドメインは、細胞外マトリックス(「ECM」)タンパク質に結合すること(このコラーゲンのマトリックス成分の組織化における重要性を説明する相互作用)が示されている。
【0031】
COL14A1遺伝子は、断続性三重らせんを有する線維付随性コラーゲン(「FACIT:fibril-associated collagens with interrupted triple helices」)コラーゲンファミリーのメンバー、コラーゲンXIVのα鎖をコードする。コラーゲンXIVはフィブリル表面と相互作用し、フィブリル形成の制御に関与する。
【0032】
エラスチンは、弾性があり、かつ体内の多くの組織が伸長または収縮後にその形状を回復できるようにする結合組織のタンパク質である。エラスチンは、皮膚が突かれるまたはつままれたとき、その元の位置に戻るのを助ける。エラスチンはまた、脊椎動物の体内の重要な耐荷重性組織であり、機械的エネルギーを蓄えなければならない場所に使用される。ヒトでは、エラスチンはELN遺伝子によりコードされる。
【0033】
フィブリリンは、結合組織に見られる弾性線維の形成に不可欠な糖タンパク質である。フィブリリンは、線維芽細胞によりECMに分泌され、エラスチンの沈着の足場となると思われる不溶性ミクロフィブリルに組み込まれる。フィブリリンは、遺伝子FBN1によりコードされる。
【0034】
フィブロネクチンは、インテグリンと呼ばれる膜スピニング受容体タンパク質に結合するECMの高分子量糖タンパク質である。インテグリンと同様に、フィブロネクチンはコラーゲン、フィブリンおよびヘパリン硫酸プロテオグリカン(たとえばシンデカン)などのECM成分に結合する。フィブロネクチンは、細胞の接着、増殖、遊走および分化において主要な役割を果たし、創傷治癒および胚発生などのプロセスに重要である。
【0035】
上記に参照した遺伝子の突然変異は、1つまたは複数のコラーゲン関連障害の原因となると考えられる。
【0036】
ECMは、骨格筋の発生、維持および再生に不可欠である。C.A.Buck & A.F.Horwitz,Cell surface receptors for extracellular matrix molecules,3 ANNU.REV.CELL BIOL.179(1987);P.P.Purslow,The structure and functional significance of variations in the connective tissue within muscle,133 COMP.BIOCHEM.PHYSIOL.A MOL.INTEGR.PHYSIOL.947(2002)。ECMは主に、糖タンパク質、コラーゲンおよびプロテオグリカンからなる。ECMは筋肉のマクロ組織にも関与し、線維を束にして束を筋束にし、筋肉構造を腱膜および腱と融合させる。加えて、ECMは、メカノトランスダクションに不可欠な役割を果たすと考えられ、力を側方に線維から腱およびその逆に伝える。G.M.Fomovsky et al.,Contribution of extracellular matrix to the mechanical properties of the heart,48 J.MOL.CELL CARDIOL.490(2010);P.P.Purslow & J.A.Trotter,The morphology and mechanical properties of endomysium in series-fibred muscles:variations with muscle length,15 J.MUSCLE RES.CELL MOTIL.299(1994);S.F.Street,Lateral transmission of tension in frog myofibers:a myofibrillar network and transverse cytoskeletal connections are possible transmitters,114 J.CELL PHYSIOL.346(1983)。ECMの機械的強度および弾性は、その機能性にとって決定的に重要である。ECMは、収縮の負荷に耐えるのに十分強くなければならない一方、外部から印加される歪みによる断裂を防ぐのに十分な弾性がなければならない。P.P.Purslow,supra,133 COMP.BIOCHEM.PHYSIOL.A MOL.INTEGR.PHYSIOL.at 947。これらの特性は、年齢および疾患と共に変化し、ECMの慢性的変化は、筋肉機能を障害するようである。R.L.Lieber et al.,Inferior mechanical properties of spastic muscle bundles due to hypertrophic but compromised extracellular matrix material,28 MUSCLE NERVE 464(2003);L.Zhou & H.Lu,Targeting fibrosis in Duchenne muscular dystrophy,69 J.NEUROPATHOL.EXP.NEUROL.771(2010)。骨格筋は、様々な生理的要求に適応するため、その機能特性、構造特性および代謝特性を制御すべく大きな可塑性を示す。McGeeらは、1回の運動後にヒト骨格筋におけるHDAC特異的阻害パターンおよびヒストンアセチル化の変化を検出した。S.L.McGee et al.,Exercise-induced histone modifications in human skeletal muscle,587 J.PHYSIOL.5951(2009)。
【0037】
身体運動は本質的に健常生活習慣に寄与し、リスク低下と、予後改善と、癌のほか心血管障害、代謝障害および神経変性障害を含むいくつかの一般的疾患の医学的処置に特有の副作用の減少とにつながる。I.M.Lee et al.,Effect of physical inactivity on major non-communicable diseases worldwide:an analysis of burden of disease and life expectancy,380 LANCET 219(2012);D.Schmid & M.F.Leitzmann,Association between physical activity and mortality among breast cancer and colorectal cancer survivors:a systematic review and meta-analysis,25 ANN.ONCOL.1293(2014)。たとえば、短期運動トレーニングは、代謝疾患の進行をある程度抑制し、一方、身体活動の増加を組み込んだ生活習慣介入は依然として代謝疾患の一次予防アプローチである。実際、定期的運動を食事介入と組み合わせると、II型糖尿病(「T2DM」)およびサルコペニアの処置において薬剤介入がよりうまくいく。W.C.Knowler et al.,Reduction in the incidence of type 2 diabetes with lifestyle intervention or metformin,346 N.ENG.J.MED.393(2002);S.E.Borst,Interventions for sarcopenia and muscle weakness in older people,33 AGE AGEING 548(2004)。定期的運動を採用する利点は以前から知られているが、分子生物学者は近年、運動に対する適応応答を調整するシグナル伝達経路のネットワークおよび制御分子を明らかにした。Schmid & Leitzmann,supra at 1293;O.Mathieu-Costello & R.T.Hepple,Muscle structural capacity for oxygen flux from capillary to fiber mitochondria,30 EXERC.SPORT SCI.REV.80(2002)。運動トレーニングにより誘導される適応は、骨格筋の血液分布を豊富にし、運動中の筋肉内の酸素の流れやすさを促進する重要な手段であることが認められる。Schmid & Leitzmann,supra at 1293;Mathieu-Costello & Hepple,supra at 80。運動は、様々な組織のECMに直接影響を与えることが知られている。運動は、運動中のラットの心臓におけるコラーゲンパターンを変化させることが報告されている。H.B.Kwak,Aging,exercise,and extracellular matrix in the heart,9 J.EXERC.REHABIL.338(2013)。
【0038】
加齢した皮膚の弾性および張りを向上させるため、および関節健康の向上のため、経口摂取用のほか局所適用用に市場で入手できる種々のコラーゲンサプリメントが存在する。しかしながら、これらのサプリメントは有効性が疑わしい場合がある。タンパク質であるコラーゲンは経口摂取時に消化されるものであり、かつコラーゲンの分子サイズは大きいので皮膚に浸透できない可能性があるためである。よって、体が新しいコラーゲンを産生する能力を高めるための方法は、非常に有用性があると考えられる。
【0039】
「Moomiyo」とも呼ばれるシラジットは、ヒマラヤ山脈の高地に見られ、紀元前3500年まで遡る伝統的なインドの医学体系アーユルヴェーダ(Ayurveda)の「奇跡の薬(wonder medicines)」の1つと考えられている。シラジットは、アーユルヴェーダの医学大系において最も重要な成分の1つと見なされており、アダプトゲンとしても使用される。S.Ghosal et al.,Shilajit I:chemical constituents,65 J.PHARM.SCI.772(1976);C.Velmurugan et al.,Evaluation of safety profile of black shilajit after 91 days repeated administration in rats,2 ASIAN PAC.J.TROP.BIOMED.210(2012)。シラジットは、アーユルヴェーダにおいて「maharasa」(超活力剤(super-vitalizer))と見なされている。シラジットは、腐植岩と、岩石鉱物と、海洋生物および微生物代謝物と混合された岩層により圧縮された有機物とからなる。シラジットは、夏の間に岩が熱くなると1000~5000メートルに及ぶ高地のヒマラヤ山脈の岩から黒い塊としてしみ出る。C.Velmurugan et al.,supra at 210。シラジットは、その主な成分としてのフルボ酸(「FA」)と共にジベンゾ-α-ピロン(「DBP」)およびDBP色素タンパク質、フミン酸ならびに40超のミネラルを含む。
【0040】
Natreon Inc.の特許成分、PrimaVie(登録商標)は、栄養補助食品用途の精製および標準化されたシラジット抽出物である。米国特許第6,869,612号明細書および同第6,440,436号明細書。調査から、PrimaVie(登録商標)シラジットは、エネルギー、再活性化およびアンチエイジングを促進するための作用を標的としていることが示される。PrimaVie(登録商標)シラジットは、高レベルのジベンゾ-α-ピロンおよびジベンゾ-α-ピロン色素タンパク質と共に60パーセント以上のフルボ酸および等価物を有するように標準化される。シラジット由来のフルボ酸複合体はFAと共に、還元形および酸化形の両方の、コア核としての酸素化DBPおよびアシル化DBPを含む天然に存在する低および中分子量化合物と、部分構造単位としての脂質との集合体である。よって、シラジットの有効成分は、DBPおよび関連する代謝物と、小ペプチド(非タンパク質アミノ酸を構成する)と、一部の脂質と、キャリア分子と、FAとを含む。Ghosal et al.,supra at 772;H.Meena et al.,Shilajit:A panacea for high-altitude problems,1 INT’L J.AYURVEDA RES.37(2010);S.Ghosal et al.,Shilajit Part 7-Chemistry of Shilajit,an immunomodulatory ayurvedic rasayana,62 PURE APPL.CHEM.(IUPAC)1285(1990);S.Ghosal et al.,The core structure of Shilajit humus,23 SOIL BIOL.BIOCHEM.673(1992)。
【0041】
シラジットは、多様な臨床状態に対してアーユルヴェーダで広く使用される。何世紀にもわたり、ヒマラヤおよび隣接する地域の孤立した村に住む人々は、糖尿病に伴う問題を予防および対処するため、シラジットを単独または他の植物薬と組み合わせて使用してきた。Tiwari,V.P.et al.,An interpretation of Ayurvedica findings on Shilajit,8 J.RES.INDIGENOUS MED.57(1973)。さらに、抗酸化剤であるシラジットは、細胞毒性酸素ラジカルにより誘導される膵島細胞の損傷を予防する。Bhattacharya S.K.,Shilajit attenuates streptozotocin induced diabetes mellitus and decrease in pancreatic islet superoxide dismutase activity in rats,9 PHYTOTHER.RES.41(1995);Bhattacharya S.K.,Effects of Shilajit on biogenic free radicals,9 PHYTOTHER.RES.56(1995);およびGhosal,S.,et al.,Interaction of Shilajit with biogenic free radicals,34B INDIAN J.CHEM.596(1995)。糖尿病におけるグルコース、脂肪およびタンパク質の代謝障害は、高脂血症の発症に至ることが提唱されてきた。ある研究では、シラジットは、ラットの脂質プロファイルにおいて著しく有益な作用を発揮した。Trivedi N.A.,et al.,Effect of Shilajit on blood glucose and lipid profile in alloxan-induced diabetic rats,36 INDIAN J.PHARMACOL.373(2004)。シラジットの経口補充は、強制水泳試験のモデルのアルビノマウスにおいて生理的エネルギー状態を著しく向上させたS.Bhattacharya et al.,Beneficial effect of processed Shilajit on swimming exercise induced impaired energy status of mice,1 PHARMACOLOGY ONLINE 817(2009)。
【0042】
上記で論じたように、シラジットは様々な病気の処置に使用されている。シラジットは運動能力向上薬としても推奨される。電解質および抗酸化剤としての機能に加えて、FAは、植物およびヒトを含む動物の生体システムにおいて多くの重要な作用、たとえば(a)ミネラルおよび栄養素のバイオアベイラビリティーの向上;(b)重金属を含む有毒物質の解毒;および(c)免疫機能の向上を誘発することが報告されている。
【0043】
さらに、シラジットのDBPは、ミトコンドリア内の電子伝達に関与し、それによってより多くのATPの産生を促進してエネルギーの増加をもたらすとの仮説も立てられている。S.Bhattacharya et al.,Shilajit dibenzo-α-pyrones:Mitochondria targeted antioxidants,2 PHARMACOLOGY ONLINE 690(2009)。よって、シラジットは、数ある有利な量の中で特にエネルギーを増加させることが分かる。
【0044】
しかしながら、下記のように、コラーゲンを含む哺乳動物の組織および器官の健康の維持に対する、コラーゲン関連障害の処置に対する、または筋肉の増強および再生に対するシラジットまたはその成分の有用性は、完全に新規なものであり、ヒトを含む哺乳動物にとって極めて大きな価値がある。よってシラジットのそうした使用が求められている。
【発明の概要】
【0045】
本発明は、シラジットの投与によってコラーゲンおよび関連タンパク質の合成に関与する遺伝子を上方制御し、それによって皮膚、軟骨、腱、結合組織、筋肉、血管組織、骨および歯の健康の向上に役立つことにより、体がコラーゲンを産生する能力を高めるそうした方法を提供する。こうしたシラジットの有効性は、全体としてのシラジット、もしくはその個々の成分:フルボ酸、3-OH-ジベンゾ-α-ピロン、3,8-ジヒドロキシ-ジベンゾ-α-ピロン、ジベンゾ-α-ピロン色素タンパク質、フミン酸および40超のミネラル、またはこれらの成分の2つ以上の組み合わせに起因し得る。シラジットはまた、2,300μmol TE/gのORAC値を有する抗酸化剤でもあり、この特性は、その有効性にも寄与し得る。
【0046】
本発明の目的は、新しいコラーゲンおよび/または関連タンパク質を合成するようにヒトの体を含む哺乳動物の体を誘導し、それによって皮膚、結合組織、筋肉、軟骨、骨および歯などのコラーゲンを含む組織および器官のすべての健康を増進させるため、筋肉の増強および再生を向上させるため、および/またはコラーゲン関連障害を処置するため、シラジットもしくはその個々の成分またはこれらの成分の2つ以上の組み合わせを使用する方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋の脂質プロファイル、具体的にはコレステロールおよびHDLコレステロールに対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。
図2図2は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋の脂質プロファイル、具体的にはLDLコレステロールおよび総コレステロールに対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。
図3図3は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋の脂質プロファイル、具体的にはnon-HDLコレステロールおよびトリグリセリドに対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。
図4図4は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋の血漿クレアチンキナーゼ、ミオグロビンおよび血漿グルコースに対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。
図5図5は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のコラーゲンCOL1A1およびCOL1A2遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の、12週間の補充後の作用を示す。
図6図6は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のコラーゲンCOL5A2およびCOL6A3遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の、12週間の補充後の作用を示す。
図7図7は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のコラーゲンCOL14A1遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の、12週間の補充後の作用を示す。
図8図8は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のFN1およびTNXB遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の、12週間の補充後の作用を示す。
図9図9は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のMYOFおよびDCN遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の、12週間の補充後の作用を示す。
図10図10は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のELN遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の、12週間の補充後の作用を示す。
図11図11は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のFBN1遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の、12週間の補充後の作用を示す。
図12図12は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のHSD17B11遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の、12週間の補充後の作用を示す。
図13図13は、本発明の一実施形態における、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のHSD17B6遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の、12週間の補充後の作用を示す。
図14図14は、RP-C 18カラムを用いたPrimaVie(登録商標)シラジットの高速液体クロマトグラム(HPLC)を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の一実施形態では、組織および器官の健康を増進させる、筋肉の増強および再生を向上させる、および/またはコラーゲン関連障害を処置する方法は、1日約20ミリグラムから約2000ミリグラムの用量のシラジットをヒト被験者に投与することを含む。
【0049】
本発明の代替の実施形態では、組織および器官の健康を増進させる、筋肉の増強および再生を向上させる、および/またはコラーゲン関連障害を処置する方法は、1日約100ミリグラムから約500ミリグラムの用量のシラジットをヒト被験者に投与することを含む。
【0050】
シラジットが、新しいコラーゲンを産生するようにヒトの体を誘導するかどうかを判定するため、ヒト臨床研究を行った。本研究は、12週間の総研究期間内で過体重/クラス1肥満ヒト被験者の群を対象に、ヒト骨格筋適応に対するシラジット補充および運動トレーニングの作用を判定することを目的とした。本研究の仮説は、シラジットの経口補充が骨格筋のECM関連遺伝子の発現に影響を与えるということ、さらに経口摂取がトレッドミル運動トレーニングと相乗的に作用して骨格筋遺伝子の発現に好ましい影響を及ぼすということであった。
【0051】
1.材料および方法:
被験品、PrimaVie(登録商標)シラジットカプセル、250mgは、Natreon、Inc.,2D Janine Place,New Brunswick,NJ 08901から提供された。本カプセルは、NFグレードである賦形剤としてゼラチン、微結晶性セルロース、クロスカルメロース、ヒュームド二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムを含んでいた。
【0052】
1.1 PrimaVie(登録商標)シラジットの高速液体クロマトグラム(HPLC)解析
PrimaVie(登録商標)シラジットは、精製および標準化されたシラジットであり、0.3%以上のDBP、10.0%以上のDBP色素タンパク質、およびDBPコア核を有する50%以上のFAを含み、重金属を1ppm未満の鉛、1ppm未満の砒素および0.1ppm未満の水銀に低下させるプロセスにより製造される。品質管理は、高速液体クロマトグラム(HPLC)により行われる。HPLC解析は、Waters社製515ポンプ、Waters社製フォトダイオードアレイ検出器(PDA)モデル2996、Waters社製ポンプコントローラモジュールおよびEmpowerソフトウェア(バージョン1)を備えたWaters社製HPLC装置を用いて周囲条件下で行った。サンプル(20μL)は、20μLループを装着したRheodyne社製インジェクターによって注入した。化合物は、0.8mL/minの流速、移動相水:アセトニトリル:o-リン酸[67:32:01v/v/v]を用いてC18逆相(Lichocart(登録商標)カラム(250mm×4mm i.d.、5μm粒子;カラム番号331303、Darmstadt、Germany))で分離した。溶離液のUV吸光度は、240nmの波長でモニターした。精製されたPrimaVie(登録商標)シラジットのHPLCプロファイルおよびクロマトグラフ条件を図14に示す。
【0053】
1.2 研究の被験者および実験デザイン:
Western Institutional Review Boards(「WIRB」)は、本研究のプロトコル(clinicaltrials.gov NCT02026414)および材料を承認した。すべての被験者が本研究の参加前に書面で同意した。
【0054】
過体重/クラス1肥満(ボディマスインデックス[BMI]:25~35)成人(21~70歳)健常ヒト被験者は、男女共に本研究に参加できることとした。参加者に血液サンプル採取の前に一晩絶食するように依頼した。食事または運動において、自己申告による何らかの逸脱があれば記録した。CVD関連障害の管理/処置のため以下の薬剤:ステロイド(プレドニゾン等)、β遮断薬、ヒドロクロロチアジド、スタチン類(クレストール、リピトール等)、アスピリンおよびACE阻害剤のいずれか1つを使用した場合、被験者を本研究から除外した。妊婦のほか治療上免疫不全状態にあった人も本研究から除外した。本研究に参加した被験者の人口統計学的データを表1に提示する。試験デザインには、初回のベースライン来院後、12週間の研究期間中に3回の追跡調査来院が設定された。第1の追跡調査来院は、患者にサプリメントを投与してから8週間後とした。第2の追跡調査来院は、第1の追跡調査来院に続く4週間の補充および運動後とし、第3の追跡調査来院は、同じ日の30分の運動後とした。各来院時に、50mLの血液、5mmの筋生検、ならびに年齢、性別、身長、体重、BMI、血圧および脈拍を含む人口統計学的情報を得た。表1を参照されたい。
【0055】
【0056】
1.3 補充レジメントおよびコンプライアンス:
各被験者に、本研究に組み入られた最初の8週間1日2回250mgのPrimaVie(登録商標)シラジット(Natreon,Inc.)を投与した。本研究の最後の4週間、被験者は250mgのPrimaVie(登録商標)シラジット(Natreon,Inc.)サプリメントを1日2回服用しながら、トレッドミル運動(最大心拍数の70~75%の運動20分に加え5分のウォーミングアップ運動および5分のクールダウン運動、1日合計30分間、週3日)も終了した。すべての被験者が、3回の追跡調査来院および1回のベースライン来院を含む合計12週間の本研究に参加した。
【0057】
1.4 安全性モニタリング:
臨床研究スタッフから報告された、ダイエタリーサプリメントに直接関連する有害作用はなかった。
【0058】
1.5 血液サンプリングおよび検査法:
すべてのベースライン来院および追跡調査来院において、末梢静脈血をヘパリンチューブに採取し、直ちに氷上に移して脂質プロファイル、グルコース、クレアチンキナーゼ(「CK」)および血清ミオグロビンのレベルを評価した。脂質プロファイルの中で総コレステロール(「HDL」)、高密度リポタンパク質コレステロール(「HDL-C」)、低密度リポタンパク質コレステロール(「LDL-C」)およびトリグリセリドのレベル、calculated LDLコレステロールおよびnon-HDLコレステロールのレベルを、標準的な臨床脂質プロファイルを用いて測定し、クレアチンキナーゼ、グルコースおよび血清ミオグロビンの試験を、Ohio State University Wexner Medical Center Clinical Laboratoriesで製造者の指示に従い行った。本研究においては、全血を4227RCF、4℃で3分間遠心して血漿を分離した。血漿をアリコートに分け、さらなる解析のため-80℃で保管した。
【0059】
1.6 筋生検材料の採取
生検部位:外側広筋または腓腹筋。生検材料は、生検部位への局所麻酔薬の適用後、12ゲージSenoRx、超音波定位Encor Probe(BARD Encor Ultra、乳房生検システム;AZ,USA)を有する100~120V、50~60Hz、600VA生検器を用いて認定医が採取した。筋サンプルは、mRNAの発現プロファイリングおよびRT-PCRに使用した。
【0060】
1.7 GeneChipプローブアレイ解析
異なる期間の筋サンプルで差次的に発現する遺伝子のセットを同定するため、RNA抽出、ターゲット標識、GeneChipプローブアレイ解析を、Affymetrix Human Transcriptome Array2.0を用いて行った。簡単に説明すると、GeneChip IVT Labeling Kit(Affymetrix,Santa Clara,CA)のインビトロ転写(「IVT」)反応を使用してRNAサンプルからビオチン化cRNAを得た。サンプルをハイブリダイズし、アレイを洗浄し、ストレプトアビジンフィコエリトリンで染色して遺伝子アレイスキャナー(Affymetrix)でスキャンした。データ取得および画像処理にはGene Chip Operating Software(「GCOS」、Affymetrix)を利用した。生データは、Genespring GX(Agilent,Santa Clara CA)を用いて解析した。データの追加処理は、dChipソフトウェア(Harvard University)を用いて行った。データ正規化にはGC-RMA(Gene Spring GX、Agilent,Santa Clara,CA)を使用した。差次的発現遺伝子を、2標本t検定を用いて同定し、有意水準をp<0.05に設定し、偽発見率にはBenjamin Hochberg補正を用いた。有意に上方制御された遺伝子を、Database for Annotation,Visualization,and Integrated Discovery(「DAVID」、NIAID、NIH)、および遺伝子オントロジー(「GO」)を用いて機能解析に供した。ECM関連遺伝子を、シラジット補充後に変化した主要なクラスターとした同定した(表4)。選択した差次的発現候補遺伝子を、リアルタイム定量PCRを用いて検証した(図4~6)。
【0061】
1.8 リアルタイム定量PCRを用いたマイクロアレイ結果のバリデーション
リアルタイムPCRを行って、マイクロアレイにより明らかになった候補mRNAを検証した。選択した遺伝子のレベルを、二本鎖DNA結合色素SYBR Green-Iを用いてリアルタイムPCRによりアッセイした。GAPDHを標準ハウスキーピング遺伝子として使用した。
【0062】
1.9 データ解析
統計的手法:
全14の遺伝子発現(ΔΔCT)値が隣接する時点で共に異なるかどうかを調べるため、多変量線形回帰を使用した。異なる時点で5つの比較を行った。多変量回帰から、1つのp値を有する遺伝子ごとに差の推定と共にその95%信頼区間が得られ、全14遺伝子のΔΔCT値が隣接する時点で共に異なったかどうかを調べられる。多変量回帰は、本研究に28の個々の比較を行う検出力がなかったため使用した。多変量正規性は、標準化正規確率プロットを用いてチェックした。正規型でない値があった場合、自然対数を用いてそれらを変換した。新しい多変量線形回帰モデルを用いて、患者の脂質/グルコース/筋損傷マーカーの値が隣接する時点で共に異なっていたかどうかをチェックした。脂質/グルコース/筋損傷マーカーの値を、3時点ごとに平均および標準偏差を用いてまとめた。解析はすべて、Stata 13.1,StataCorp,College Station,TXを用いて行った。
【0063】
2.結果
2.1 PrimaVie(登録商標)シラジット補充後のグルコース、脂質プロファイル、クレアチンキナーゼおよび血清ミオグロビンのレベルの変化:
脂質プロファイルの測定から、ベースライン来院において観察されたレベルと比較して8週間のPrimaVie(登録商標)シラジット補充後に、平均コレステロール値、平均HDLコレステロール値、平均calculated LDLコレステロール値、平均総コレステロール/HDL値、平均non-HDLコレステロール値およびトリグリセリド値を何ら有意に変化させることなく、良好な忍容性が示された(図2、表2および3)。加えて、運動を伴う12週間の補充期間後および同じ日の30分の最後の運動後の脂質プロファイルレベルは、ベースライン来院および8週間の来院において観察されたレベルと比較して変わらなかった(図2、表2および3)。さらに、どの追跡調査来院時にも、他の変数、たとえば血糖と、クレアチンキナーゼおよび血清ミオグロビンのレベルを含む筋損傷マーカーとに有害な変化は観察されなかった(図3、表2および3)。
【0064】
【0065】
【0066】
2.2 PrimaVie(登録商標)シラジット補充後の骨格筋のマイクロアレイ解析
補充および運動に応答したmRNA発現プロファイルの変化を判定するため、各来院において筋サンプルを採取し、RNA抽出、ターゲット標識およびGeneChipデータ解析を、前述のようにAffymetrix Human Transcriptome Array2.0を用いて行った。8週間のPrimaVie(登録商標)シラジット補充後に骨格筋サンプルにおいてベースライン来院と比較して高度に発現した遺伝子を選択してさらに研究を行った。表4は、8週間のPrimaVie(登録商標)シラジット補充においてベースライン来院と比較して筋肉で上方制御された上位12遺伝子を示す。それら有意に上方制御された遺伝子は、テネイシンXB(TNXB)、デコリン(DCN)、ミオフェルリン(MYOF)、コラーゲン(COL)(I型、II型、III型、V型、VI型、XIV型)、エラスチン(ELN)、フィブリリン1(FBN1)およびフィブロネクチン1(FN1)である(表4)。
【0067】
【0068】
2.3 リアルタイム定量PCRを用いたマイクロアレイ結果のバリデーション
マイクロアレイを用いたmRNA定量の正確性を検証するため、上記の上方制御されたECM関連遺伝子、加えてHSD17B11およびHSD17B6遺伝子を、RT-PCRを用いて再調査した。マイクロアレイ結果と一致して、RT-PCR結果からも、ベースライン来院と比較して8週間のPrimaVie(登録商標)シラジット補充後(図4~6および表5)の、および8週間の来院と比較して運動を伴う12週間の補充後(最後の運動の前および後)(図4~6および表5)の筋サンプルにおけるそれらのECM関連遺伝子の発現の有意な変化が明らかになった。
【0069】
【0070】
3.考察および結論
骨格筋は、体内で最大の代謝的に活性な組織であり、体重の約40%を占める。骨格筋は、その収縮および代謝プロファイルが異なる不均一な筋肉線維からなる適応性の組織である。本研究は、8週間の補充後、運動を伴う追加の4週間の補充後、および同じ日の30分の運動後に、健常な過体重/クラス1肥満のヒト被験者の骨格筋における血中脂質組成の変化のほか、クレアチンキナーゼ、血清ミオグロビンなどの筋損傷マーカー、および血糖の変化を判定するために計画された。肥満症は、トリアシルグリセロールおよび脂肪酸代謝物、たとえばセラミド、ジアシルグリセロールおよび長鎖アシルCoAとして筋肉に蓄積する循環脂質(FFA、トリグリセリド)の増加により特徴づけられることは、以前から十分に確立されていた。HDLコレステロールレベルが他の代謝パラメーター、たとえばトリグリセリドおよびLDLコレステロールのレベルと関連していることも観察されていた。一方、本研究では、健常な過体重/クラス1肥満のヒト被験者の血中脂質プロファイルの変化が、8週間のPrimaVie(登録商標)シラジット補充後のほか、その後の運動を伴う4週間の補充後も、同じ日の30分の最後の運動後も報告されないことから、PrimaVie(登録商標)シラジット補充は骨格筋に対して有害作用がないことが示唆された。ホスホクレアチン(「PCr」)は、エネルギー需要が急速に変動する組織における1つの主要なATP補給源である。この供給には、クレアチン(「Cr」)およびADPがそれぞれPCrおよびATPに可逆的にリン酸化されるクレアチンキナーゼ(「CK」)反応が介在する。ATPレベルの空間的および時間的緩衝装置として機能するPCr-CK系は、哺乳動物骨格筋において高レベルの細胞内総クレアチンを必要とする。よって、クレアチンキナーゼが減少すると、骨格筋内のATP形成が妨げられる可能性がある。高い細胞内クレアチン濃度は、内因性産生と外部からの食事摂取との組み合わせ、その後の血管からのクレアチンの細胞内取り込みにより達成される。本研究では、血清クレアチンキナーゼレベルの変化が、健常な過体重/クラス1肥満のヒト被験者において最初の8週間の補充後、次の運動を伴う4週間の補充、および30分の運動後の第3の追跡調査来院で観察されなかったことから、骨格筋の完全性を維持するうえでPrimaVie(登録商標)シラジットの重要な役割を示す証拠が示される。ミオグロビンは主に骨格筋または心筋に存在し、その濃度が高いためOの貯蔵が可能であり、さらに心筋および骨格筋のOの拡散を促進する。4回の来院後のヒト被験者の血清ミオグロビンレベルが変化しないことからは、重度の低酸素下の骨格筋に酸素レベルを維持するうえで考えられるPrimaVie(登録商標)シラジットの役割も示される。これらのパラメーターに加えて、我々は、健常な過体重/クラス1肥満のヒト被験者においてすべての来院時に血糖レベルが影響されないことも認めた。これらを総合すると、本データから、PrimaVie(登録商標)シラジットは健常ヒトボランティアの骨格筋において生理機能の忍容性が良好であり、正常な全身グルコース代謝、ホメオスタシスおよび筋肉完全性を維持することが示唆される。
【0071】
これは、健常な過体重/クラス1肥満のヒトボランティアを対象にPrimaVie(登録商標)シラジット補充後のECM関連遺伝子の発現の変化を系統的に評価する最初の研究である。本研究では、マイクロアレイ結果およびRT-PCR結果から、8週間のPrimaVie(登録商標)シラジット補充、運動を伴うさらなる4週間の補充、および同じ日の30分の運動の後、骨格筋において様々な型のコラーゲン、エラスチン、テネイシンXB、デコリン、ミオフェルリン、フィブリリン、フィブロネクチン1、HSD17B11およびHSD17B6を含む様々なECM成分のmRNA発現の上昇が明らかになった。コラーゲンは、皮膚の張りおよび弾性を維持する。コラーゲンIおよびIIIは、他の型と比較して高い比率でヒト皮膚において形成され、正常な皮膚組織において互いに一定の比率で維持される。コラーゲンIは、皮膚におけるコラーゲンの約70パーセントであり、コラーゲンIIIは、皮膚におけるコラーゲンの約10パーセントであり、コラーゲンIV、V、VIおよびVIIはそれぞれ皮膚において微量のコラーゲンである。コラーゲン加水分解物の形態のコラーゲンは、皮膚の水分を保持する。加齢に伴う体内のコラーゲンの量の減少により、たるみ、縦じわおよびしわ、張力および弾性の不足、ならびに創傷治癒プロセスの遅延が生じる。これまでの研究から、COL1A2、COL3A1およびCOL5A1の遺伝子発現の増加が創傷治癒における細胞増殖およびECMの活発なリモデリングに有用であることが証明された。よって、本研究におけるコラーゲン発現の増加から、アンチエイジングにおけるPrimaVie(登録商標)シラジットの潜在的な役割が示唆される。コラーゲンは主要構造を与えるが、他のECM成分も骨格筋適応において重要な役割を果たす。小型ロイシンリッチプロテオグリカンであるデコリンも、筋形成に伴い集合した筋線維を支持する筋周膜のコラーゲン線維の形成および安定化に寄与している。ミオフェルリンは、筋発生の過程で特に融合を起こしている筋芽細胞で高発現する。さらに、フィブロネクチンは、創傷修復の初期において暫定肉芽組織の合成を補助する極めて重要なタンパク質である。ミクロフィブリルの1種、フィブリリンも、骨格筋のECMにおいて極めて重要な構造要素の1つである。フィブリリンは、結合組織に広く分布することが分かっており、組織特異的構造に組織化されると報告されている。さらに、ミクロフィブリル束は互いに平行に配向し、エラスチン線維と高度に共局在していた。もう1つのECM成分、テネイシンXは、コラーゲンの機械的特性を決定する。さらに、ミオフェルリンは、血管内皮細胞増殖因子受容体-2(VEGFR-2)のリサイクリングを制御することが示されている。ミオフェルリンタンパク質のレベルは成人骨格筋では通常低く、健常筋線維にはほとんど存在しない。ミオフェルリンレベルが増加すると、損傷した筋線維の修復を待ち望む単核のミオフェルリン陽性筋芽細胞の集積が起こることが以前に観察されており、ミオフェルリンは筋再生において重要であることが示唆される。
【0072】
本研究におけるマイクロアレイおよびRT-PCRの結果を合わせると、骨格筋の発生/再生において積極的な役割を果たすことが以前に示されたこれらのECM関連遺伝子の高発現が示され、かつPrimaVie(登録商標)シラジット補充が、成人の健常な過体重/クラス1肥満のヒト被験者の骨格筋の完全性および弾性を維持することにより、ECMの強化において重要な役割を果たすことが強く提言された。
【0073】
表1から、シラジットは、コラーゲンおよび他の関連タンパク質の合成を担う遺伝子、特にほぼ5倍上方制御されたコラーゲンIα-1、Iα-2およびIIIα-1を有意に上方制御したことは明らかである。コラーゲンVα-2、VIα-3およびXIVα-1の遺伝子は1.6~3倍上方制御された。本研究で組織サンプルを採取した骨格筋はコラーゲンIIを含まないため、本研究ではコラーゲンIIの上方制御は見られなかった。
【0074】
テネイシン、ミオフェルリン、デコリン、エラスチン、フィブリリンおよびフィブロネクチンをコードする遺伝子も上方制御された。
【0075】
すべての結果が統計学的に有意であり、p値は0.006~0.05の範囲であった。結果を図1~14に示す。
【0076】
図1は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋の脂質プロファイルに対する、PrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。値は平均値±SEM(n=16)である。*はベースラインと比較してP<0.05を示す。CHOL、コレステロール;HDL、高密度リポタンパク質;LDL、低密度リポタンパク質。ベースライン来院において観察されたレベルと比較して、8週間のPrimaVie(登録商標)シラジット補充後の平均コレステロール値、平均HDLコレステロール値、平均calculated LDLコレステロール値、平均総コレステロール/HDL値、平均non-HDLコレステロール値およびトリグリセリド値に変化はなかった。加えて、運動を伴う12週間の補充期間後の脂質プロファイルレベルは、平均ベースライン来院において観察されたレベルと比較して変わらなかった。
【0077】
図2は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋の脂質プロファイルに対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。値は平均値±SEM(n=16)である。*はベースラインと比較してP<0.05を示す。CHOL、コレステロール;HDL、高密度リポタンパク質;LDL、低密度リポタンパク質。ベースライン来院中に観察されたレベルと比較して8週間のPrimaVie(登録商標)シラジット補充後に平均コレステロール値、平均HDLコレステロール値、平均calculated LDLコレステロール値、平均総コレステロール/HDL値、平均non-HDLコレステロール値およびトリグリセリドに変化はなかった。加えて、運動を伴う12週間の補充期間後の脂質プロファイルレベルも、平均ベースライン来院中に観察されたレベルと比較して変わらなかった。
【0078】
図3は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋の脂質プロファイルに対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。値は平均値±SEM(n=16)である。*はベースラインと比較してP<0.05を示す。CHOL、コレステロール;HDL、高密度リポタンパク質。ベースライン来院中に観察されたレベルと比較して8週間のPrimaVie(登録商標)シラジット補充後の平均コレステロール値、平均HDLコレステロール値、平均calculated LDLコレステロール値、平均総コレステロール/HDL値、平均non-HDLコレステロール値およびトリグリセリドに変化はなかった。加えて、運動を伴う12週間の補充期間後の脂質プロファイルレベルは、平均ベースライン来院中に観察されたレベルと比較して変わらなかった。
【0079】
図4は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋の血漿クレアチンキナーゼ、ミオグロビンおよび血漿グルコースに対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。値は平均値±SEM(n=16)である。*はベースラインと比較してP<0.05を示す。ベースライン来院と比較して運動を伴う最初の8週間の補充および12週間の補充時後の血糖、クレアチンキナーゼおよび血清ミオグロビンのレベルに有害な変化は、観察されなかった。
【0080】
図5は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋の異なるコラーゲン遺伝子の発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。筋生検材料のCOL1A1およびCOL1A2のmRNA発現レベルを、RT-PCRを用いて測定した。PrimaVie(登録商標)補充(250mgの1日2回投与)の作用を、全来院:8週間の補充、運動を伴う12週間の補充(最後の運動プログラムの直前および直後)の期間中に測定した。データは平均値±SEM(n=16)である;ベースライン来院と比較して*p<0.05。COL1A1、コラーゲンIα1;COL1A2、コラーゲンIα2。RT-PCR結果から、ベースライン来院と比較して運動を伴う12週間のPrimaVie(登録商標)補充後の筋サンプルにおいてCOL1A1、COL1A2、COL5A2、COL6A3およびCOL14A1の高発現が示された。総合すると、骨格筋の発生/再生において積極的な役割を果たすことが以前に示されたこれらの遺伝子の高発現、およびRT-PCRを用いたバリデーションから、PrimaVie(登録商標)補充は筋肉適応/再生において重要な役割を果たすことが強く提言される。
【0081】
図6は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋の異なるコラーゲン遺伝子の発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。筋生検材料のCOL5A2およびCOL6A3のmRNA発現レベルを、RT-PCRを用いて測定した。PrimaVie(登録商標)補充(250mgの1日2回投与)の作用を、全来院:8週間の補充、運動を伴う12週間の補充(最後の運動プログラムの直前および直後)の期間中に測定した。データは平均値±SEM(n=16)である;ベースライン来院と比較して*p<0.05。COL5A2、コラーゲンVα2;COL6A3、コラーゲンVIα3。RT-PCR結果から、ベースライン来院と比較して運動を伴う12週間のPrimaVie(登録商標)補充後の筋サンプルにおいてCOL1A1、COL1A2、COL5A2、COL6A3およびCOL14A1の高発現が示された。総合すると、骨格筋の発生/再生において積極的な役割を果たすことが以前に示されたこれらの遺伝子の高発現、およびRT-PCRを用いたバリデーションから、PrimaVie(登録商標)補充は、筋肉適応/再生において重要な役割を果たすことが強く提言される。
【0082】
図7は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋の異なるコラーゲン遺伝子の発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。筋生検材料のCOL14A1のmRNA発現レベルを、RT-PCRを用いて測定した。PrimaVie(登録商標)補充(250mgの1日2回投与)の作用を、全来院:8週間の補充、運動を伴う12週間の補充(最後の運動プログラムの直前および直後)の期間中に測定した。データは平均値±SEM(n=16)である;ベースライン来院と比較して*p<0.05。COL14A1、コラーゲンXIVα1。RT-PCR結果から、ベースライン来院と比較して運動を伴う12週間のPrimaVie(登録商標)補充後の筋サンプルのCOL1A1、COL1A2、COL5A2、COL6A3およびCOL14A1の高発現が示された。総合すると、骨格筋の発生/再生において積極的な役割を果たすことが以前に示されたこれらの遺伝子の高発現、およびRT-PCRを用いたバリデーションから、PrimaVie(登録商標)補充は、筋肉適応/再生において重要な役割を果たすことが強く提言される。
【0083】
図8は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のFN1およびTNXB遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。筋生検材料のFN1およびTNXBのmRNA発現レベルを、RT-PCRを用いて測定した。PrimaVie(登録商標)補充(250mgの1日2回投与)の作用を、来院:8週間の補充、運動を伴う12週間の補充(最後の運動プログラムの直前および直後)の期間中に測定した。データは平均値±SEM(n=16)である;ベースライン来院と比較して*p<0.05。FN、フィブロネクチン;TNXB、テネイシンXB。
【0084】
図9は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のMYOFおよびDCN遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。筋生検材料のMYOFおよびDCNのmRNA発現レベルを、RT-PCRを用いて測定した。PrimaVie(登録商標)補充(250mgの1日2回投与)の作用を、来院:8週間の補充、運動を伴う12週間の補充(最後の運動プログラムの直前および直後)の期間中に測定した。データは平均値±SEM(n=16)である;ベースライン来院と比較して*p<0.05。MYOF、ミオフェルリン;DCN、デコリン。
【0085】
図10は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のELN遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。筋生検材料のELNのmRNA発現レベルを、RT-PCRを用いて測定した。PrimaVie(登録商標)補充(250mgの1日2回投与)の作用を、全来院:8週間の補充、運動を伴う12週間の補充(最後の運動プログラムの直前および直後)の期間中に測定した。データは平均値±SEM(n=16)である;ベースライン来院と比較して*p<0.05。ELN、エラスチン。
【0086】
図11は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のFBN1遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。筋生検材料のFBN1のmRNA発現レベルを、RT-PCRを用いて測定した。PrimaVie(登録商標)補充(250mgの1日2回投与)の作用を、全来院:8週間の補充、運動を伴う12週間の補充(最後の運動プログラムの直前および直後)の期間中に測定した。データは平均値±SEM(n=16)である;ベースライン来院と比較して*p<0.05。FBN1、フィブリリン。
【0087】
図12は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のHSD17B11遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。筋生検材料のHSD17B11のmRNA発現レベルを、RT-PCRを用いて測定した。PrimaVie(登録商標)補充(250mgの1日2回投与)の作用を、全来院:8週間の補充、運動を伴う12週間の補充(最後の運動プログラムの直前および直後)の期間中に測定した。データは平均値±SEM(n=16)である;ベースライン来院と比較して*p<0.05。HSD17B11、ヒドロキシステロイド(17β)デヒドロゲナーゼ11。
【0088】
図13は、体を動かすことの少ない肥満予備群から肥満のヒトの骨格筋のHSD17B6遺伝子発現に対するPrimaVie(登録商標)シラジット補充の作用を示す。筋生検材料のHSB17B6のmRNA発現レベルを、RT-PCRを用いて測定した。PrimaVie(登録商標)補充(250mgの1日2回投与)の作用を、全来院:8週間の補充、運動を伴う12週間の補充(最後の運動プログラムの直前および直後)の期間中に測定した。データは平均値±SEM(n=16)である;ベースライン来院と比較して*p<0.05。HSD17B6、ヒドロキシステロイド(17β)デヒドロゲナーゼ6。
【0089】
図14は、RP-C 18カラムによるPrimaVie(登録商標)シラジットの高速液体クロマトグラム(HPLC)である。フルボ酸(FA)t:2.0~3.0min;ジベンゾクロモタンパク質(DCP)t:3.0~5.8min;3,8-(OH)-ジベンゾ-α-ピロンt:9.07min;3-OH-ジベンゾ-α-ピロンt:26.02min。
【0090】
よって、本発明は、シラジットもしくはその個々の成分またはそれらの成分の2つ以上の組み合わせを使用して、ヒトの体を含む哺乳動物の体を、新しいコラーゲンを合成するように誘導し、それによって皮膚、結合組織、筋肉、軟骨、眼、骨および歯などコラーゲンを含むすべての組織および器官の健康を増進させる、筋肉の増強および再生を向上させる、および/またはコラーゲン関連障害を処置する方法を提供する。
【0091】
本発明の実施形態に使用される製品は、当該産業の標準的な賦形剤および製剤技術を用いて錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、咀嚼剤、グミ剤、経皮剤、注射剤等を含む栄養補助食品または医薬品剤形に製剤化してもよい。本発明の実施形態に使用される製品は、哺乳動物に固形剤形で経口投与しても、あるいは非経口もしくは経皮投与で投与してもよい。
【0092】
前述の明細書では本発明についてその特定の実施形態との関連で記載し、説明を目的として多くの詳細を提示してきたが、本発明は追加の実施形態の影響を受けやすいこと、および本明細書に記載の詳細の一部は本発明の基本的な原理を逸脱することなく、かなり異なってもよいことが当業者には明らかとなるであろう。
【0093】
本明細書に引用する参考文献はすべて、参照によりその全体を援用する。本発明は、精神またはその本質的な特性を逸脱することなく他の特定の形態で実施してもよく、したがって、本発明の範囲を示すものとして、前述の明細書でなく、添付の特許請求の範囲を参照されたい。
図1
図2
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図10
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図14