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特許7150017パイルやジャケットを係留するためのシステム、及び対応する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】パイルやジャケットを係留するためのシステム、及び対応する方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/52 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
E02D27/52 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020521886
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2018078190
(87)【国際公開番号】W WO2019076865
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】17306426.2
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509167338
【氏名又は名称】ソレタンシュ フレシネ
【氏名又は名称原語表記】SOLETANCHE FREYSSINET
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ダニエル・ルボン
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ・カリー
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-022610(JP,U)
【文献】特開平06-108462(JP,A)
【文献】西独国特許出願公告第01212005(DE,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22-13/10
27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状スリーブ(2)と受容構造体(H;P)との間に液体状態で導入されたセメント(C)又は他の結合剤を凝結する際に、前記管状スリーブ(2)を前記受容構造体(H;P)の内部に保持するためのシステムにおいて、
前記システムが、
前記管状スリーブ(2)に取り付けられている少なくとも1つの展開可能構造体(4)であって、前記管状スリーブ(2)が前記受容構造体(H;P)に挿入可能とされる非動作構成から、前記管状スリーブ(2)が前記受容構造体(H;P)に固定されている動作構成に変形可能とされる少なくとも1つの前記展開可能構造体(4)と、
前記管状スリーブ(2)に挿入するための少なくとも1つの対応するツール(1)であって、前記展開可能構造体(4)が前記非動作構成から前記動作構成に移行するように前記展開可能構造体(4)に作用するように構成されている少なくとも1つの対応する前記ツール(1)と、
を備えており、
前記ツール(1)の動作の結果、前記展開可能構造体(4)が、展開状態において前記受容構造体の内面に接触し、
少なくとも1つの前記展開可能構造体(4)が、前記管状スリーブ(2)が前記受容構造体(H;P)の所定位置に位置している場合に前記展開可能構造体(4)が前記受容構造体(H;P)の底部より前記受容構造体(H;P)の開口部に近接するように、前記管状スリーブ(2)に位置決めされていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記展開可能構造体(4)が、前記管状スリーブ(2)に取り付けられている複数の可動要素(41)を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムが、前記管状スリーブ(2)の底部を保持するために、前記管状スリーブ(2)の中間高さより下方の下側部分に位置決めされている付加的な展開可能構造体を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ツールが、第1の隆起部を備えており、
前記展開可能構造体が、対応する第2の隆起部であって、前記ツールが前記展開可能構造体に対して所定の角度位置に配設されるように、前記ツールが前記管状スリーブに導入される際に、前記第1の隆起部と干渉するように構成されている前記第2の隆起部を備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の隆起部が、クラウン要素(22;140,150)を備えており、
前記クラウン要素それぞれが、前記展開可能構造体の案内部材それぞれに係合するためのノッチ(28;144,156)に向かって収束している縁部(27;142,159)を具備する開口部を有していることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記クラウン要素(140,150)について、案内クラウン要素(150)が、短い周方向長さを有する中間クラウン要素(140)と交互に配置されており、
前記案内クラウン要素(150)が、下向き方向に分岐しているレール(152)を備えており、
前記レール(152)の周方向長さが、前記ツールが前記管状スリーブ(2)に挿入されている場合に一方のレールのみが前記展開可能構造体に接触するように、前記可動要素(41)同士の間の角度ピッチより短く、
前記一方のレール(152)が、他方のレールより長い周方向長さを有していることを特徴とする請求項2に従属する場合の請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ツールが、動作時に前記ツール(1)を前記管状スリーブ(2)の内側に保持するためのクランプ機構を備えていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記クランプ機構が、関節式連結構造体の長手方向軸線に沿った収縮力を径方向外向きの展開力に変換するために変形可能とされる前記関節式連結構造体を備えていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ツール(1)が、アーム(130)が回動可能に配設されているコラム(111)を備えており、
前記アーム(130)がそれぞれ、前記展開可能構造体に作用させるための中央シリンダ(180)と、前記ツール(1)を前記管状スリーブ(2)の内側に保持するための少なくとも1つの他のシリンダ(181)とに当接していることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記クラウン要素(140,150)が、前記アーム(130)それぞれの一方の端部に回動可能に配設されており、
前記ツールが、
摺動リング(112)と、
前記摺動リング(112)を前記コラム(111)に沿って移動させるための少なくとも1つのシリンダ(120)と、
前記クラウン要素(140,150)それぞれを前記摺動リング(112)に接続している平行バー(163,164)であって、前記摺動リング(112)を前記コラム(111)に沿って変位させることによって、前記クラウン要素が前記ツールの長手方向軸線に対して略平行な向きを維持している状態で、前記アームが前記クラウン要素と共に回動される、前記平行バー(163,164)と、
を備えていることを特徴とする請求項5に従属する場合の請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のシステムによって、管状スリーブ(2)を受容構造体(H;P)に係留させるための方法において、
a)非動作構成において前記管状スリーブ(2)に取り付けられている展開可能構造体によって、前記管状スリーブ(2)を前記受容構造体(H;P)に導入するステップと、
b)前記管状スリーブ(2)を前記受容構造体(H;P)に固定するために、ツール(1)によって、前記展開可能構造体を展開するステップと、
c)前記受容構造体(H;P)に導入されたセメント(C)又は他の結合剤を凝結させるステップと、
d)前記ツール(1)を取り外すステップと、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記ツールが、収縮状態において前記管状スリーブに導入されており、
前記方法が、前記ツールを前記管状スリーブに保持するために、前記ツールを展開するステップをステップa)とステップb)との間に備えていることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記展開可能構造体が、展開状態において前記受容構造体の内面に接触しており、
コンクリート又は他の結合剤が、前記管状スリーブの外面と前記受容構造体の内面との間に導入されることを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記受容構造体が、基礎穴(H)とされることを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記展開可能構造体が、展開状態において、前記基礎穴(H)の内部で前記管状スリーブと前記基礎穴(H)の内面との間に延在しているケーシングに接触しており、
コンクリート又は他の結合剤が、前記管状スリーブと前記ケーシングとの間に導入されることを特徴とする請求項13に従属しない請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記受容構造体が、アンカーパイル(P)とされることを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記管状スリーブが、アンカーパイルのスリーブとされることを特徴とする請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記管状スリーブ(2)が、ジャケット脚部(J)のスリーブとされることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、前記セメント(C)又は前記他の結合剤を収容するための空間(340)の境界を軸線方向において形成するために、前記管状スリーブ(2)と前記アンカーパイル(P)との間において、膨張可能なシール(310,320)を膨張させるステップを備えていることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ツール(1)が、前記管状スリーブの減少した直径を有する頸部(2a)を通じて導入されることを特徴とする請求項11~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底設置のために利用されるアンカーパイル又はジャケット、及びアンカーパイル又はジャケットを係留するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の洋上風力発電所は、海底に係留された基礎パイル又はジャケットによって支持された大径の塔の上に、ナセルと当該ナセルに取り付けられているロータとを具備する風力タービンを利用している。
【0003】
ジャケットは、通常、例えば従動パイルのようなアンカーパイルを利用することによって海底に係留された3つ又は4つの脚部を有する格子状構造体の内部の塔である。
【0004】
パイルの係留を実現するための様々な手法が、土壌の地質的性質に応じて開発されている。
【0005】
可能な土壌であれば、アンカーパイルは、海底の最終深度位置に至るまで振動又はインパクト駆動される。
【0006】
しかしながら、例えば岩石のような非常に硬質な材料が存在する場合には、これら従来に基づく手法の技術は適当ではなく、適切な洋上掘削設備を利用することによって海底に基礎穴を開け、その後にパイルを挿入し、セメント又は他の結合剤によって当該パイルを基礎穴に固定する必要があった。
【0007】
このような手法を利用するには、セメント又は他の結合剤を凝結させる際にパイルを固定する必要があった。従来技術では、このような固定は、コンクリート又は他の結合剤を凝結させるために必要な時間に亘って、海底に敷設された安定化構造体によって実施されていた。このような安定化構造体は、海底が一様でなく深海にある場合には据付困難であり、据付に対するコストが嵩んでいた。
【0008】
さらに、パイルが大径の管状スリーブを有する場合には、例えば少なくとも1又は2m以上(例えば、一部の洋上風力発電機では4又は8m)、振動やハンマーなどの従来の技術は、パイルを固定するのに適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術に基づく安定化構造体の利用を回避すること、及び、パイル又はジャケット、特に大径パイルを水中の土壌に係留するための改善された解決策を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、管状スリーブ、特にアンカーパイル又はジャケット脚部のスリーブと受容構造体、例えば基礎穴又はアンカーパイルとの間に液体状態で導入されたセメント又は他の結合剤が凝結する際に、管状スリーブを受容構造体の内部に保持するためのシステムにおいて、管状スリーブに取り付けられている少なくとも1つの展開可能構造体であって、管状スリーブが受容構造体に挿入可能とされる非動作構成から、管状スリーブが受容構造体に固定されている動作構成に変形可能とされる少なくとも1つの展開可能構造体と、管状スリーブに挿入するための少なくとも1つの対応するツールであって、展開可能構造体が非動作構成から動作構成に移行するように展開可能構造体に作用するように構成されている少なくとも1つの対応するツールと、を備えているシステムによって、当該目的を実現することできる。
【0011】
本発明は、多数の利点を提供する。
【0012】
展開可能構造体は、水流又はパイルに接続された任意の構造体が環境負荷をパイルに作用させるにも関わらず、コンクリート又は他の結合剤を凝結させる際に、パイル又はジャケット脚の移動を効率的に防止する。
【0013】
さらに、基礎穴又は他の受容構造体の周りの土壌が一様でない場合であっても、当該固定を容易に実現することができる。外部の安定化構造体を据え付ける必要が無いからである。
【0014】
ツールは、パイル又はジャケット脚部に容易に挿入され、セメント又は他の結合剤が凝結された後に引き出されるので、当該ツールは、アンカーパイル又はジャケット脚部を係留するために迅速に再利用可能とされる。
【0015】
パイル又はジャケット脚部を運搬する船舶は、短時間であれば現場に停泊することができるので、風力発電所の据付に関する全体コストを著しく低減させることができる。さらに、ツールは、容易に取り外し可能であり、重負荷装置を必要としない。
【0016】
ツールを取り外した後であっても、展開可能構造体は所定位置に残されるが、弊害をもたらす集中荷重を誘発し且つ長期的には展開可能構造体を損傷させる可能性があるハードスポットを構成しない。
【0017】
ツールは、パイル又はジャケット脚部の様々な内径に適合するように構成されているので、当該ツールの再利用は、さらに容易になる。
【0018】
本発明の例示的な実施例では、展開可能構造体が、スリーブに取り付けられている複数の可動要素を備えている。好ましくは、可動要素は、ツールが取り外された後であっても、又はツールが失われた後であっても管状スリーブの所定位置に留まることができる。しかしながら、可動要素の構造が非常に単純であるので、可動要素のコストは比較的低い。可動要素は、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、良好には少なくとも4つ、さらに良好には6つ配設されている。少なくとも3つの可動要素を利用することが、基礎穴又は他の受容構造体の中心にパイルを位置決めすることに貢献する。
【0019】
好ましくは、可動要素は、管状スリーブに対して滑動するように取り付けられている。可動要素はそれぞれ、最初に、ツールによって所定の力が可動要素に作用した場合に可動要素を自由にするように構成されている可融性の接続(例えば小さいピン)によって固定される。
【0020】
好ましくは、少なくとも1つの展開可能構造体が、径方向に方向づけられている案内部材であって、スリーブの内面に取り付けられている案内部材を備えており、可動要素は、案内部材の内部で滑動するように案内部材それぞれに嵌入している指状部材(ロッドとも呼称される)を備えている。指状部材は、土壌又は他の受容構造体の内面に接触するようになっている自身の端部において、対応するパッドを備えている。管状スリーブは、案内部材の周りにおいて補剛されている。
【0021】
好ましくは、展開可能構造体は、スリーブが基礎穴又は他の受容構造体の所定位置に配置されている場合に、展開可能構造体が自身の底部より受容構造体の開口部に近接するように、スリーブに位置決めされている。展開可能構造体は、土壌表面から又は受容構造体の頂端部から短い距離で、例えば2メートルより近く、さらに良好には1メートルより近く配置されている。
【0022】
通常の構成では、展開可能構造体は、基礎穴の底部若しくは受容構造体の底部に堅固に載置されるか、又は土壌中で駆動されるので、展開可能構造体をスリーブの底部に配設する必要は無い。
【0023】
しかしながら、パイルのスリーブの軸受が基礎穴の底部又は他の受容構造体の底部において移動する恐れがある程度に緩みすぎた場合には、スリーブの下部に配置されている同様の展開可能構造体を追加することができる。展開可能構造体は両方とも、同様のプロセスでスリーブに据え付けされ、同様のツールで動作可能とされる。スリーブの底端部の近傍に配置されている展開可能構造体を動作させるための展開可能構造体が、最初に導入される。このような状況においては、下側の展開可能構造体を動作させるためのツールの収縮の範囲は、ツールが降下する際にツールが上側の展開可能構造体を通過するのに十分な大きさとされる。
【0024】
従って、システムが、スリーブの底部を保持するために、スリーブの中間高さより下方の下側部分に位置決めされている付加的な展開可能構造体を備えている場合がある。
【0025】
好ましくは、ツールが、第1の隆起部を備えており、展開可能構造体が、対応する第2の隆起部であって、ツールが展開可能構造体に対して所定の角度位置(方位角位置)に配設されるように、ツールが管状スリーブに導入される際に、第1の隆起部と干渉するように構成されている第2の隆起部を備えている。
【0026】
第1の隆起部が、クラウン要素を備えており、クラウン要素それぞれが、展開可能構造体の案内部材それぞれに係合するためのノッチに向かって収束している縁部を有している。収束している縁部は、ツールを管状スリーブに挿入する際に案内部材と当接し、ノッチを案内部材に案内する。従って、ツールは、自身の回り止めの端部において、パイル又はジャケット脚部の管状スリーブの内部に方位角的に位置決めされている。
【0027】
クラウン要素それぞれが、好ましくはツールの長手方向軸線を中心とする弧状の形状とされる。
【0028】
ツールが、動作時にツールを管状スリーブの内側に保持するためのクランプ機構を備えている。セメント又は他の結合剤を凝結させる際にスリーブを基礎穴の中心に位置決めし、スリーブを垂直に維持することができる点において、ツールが様々な押圧力で指状部材に作用することができるように、ツールをスリーブの内側に保持することは優位である。
【0029】
クランプ機構が、関節式連結構造体の長手方向軸線に沿った収縮力を径方向外向きの展開力に変換するための変形可能な関節式連結構造体を備えている。
【0030】
例示的な実施例では、クランプ機構は、上側プラットフォームと、上側プラットフォームに対して移動可能とされる底部プラットフォームと、上側プラットフォーム及び底部プラットフォームを互いに対して接近させるように移動させる収縮力を作用させるための少なくとも1つのシリンダと、一組の二重関節アームであって、それぞれが一方の端部において一方のプラットフォームに接続されており、且つ、他方の端部において連結構造体に接続されている二重関節アームとを備えている。これにより、連結構造体が、シリンダの動作によって上側プラットフォーム及び底部プラットフォームが互いに接近するように移動された場合に、外方に移動する。このような少なくとも1つのシリンダは、好ましくは管状スリーブの軸線方向についてのシリンダとされる。
【0031】
クラウン要素は、連結構造体に装着されている。連結構造体それぞれには、クランプ機構が動作している場合に保持力を管状スリーブの内面に伝達させるための圧力パッドが装着されている。圧力パッドは、底部ノッチのうち対応する底部ノッチを形成している。
【0032】
ツールは、プラットフォームを滑動させるためのコラム(例えば、3つのコラム)を備えている。
【0033】
ツールには、展開可能構造体に作用させるためのシリンダを具備するコア部材が装着されている。好ましくは、これらシリンダは径方向シリンダ及び水平方向シリンダとされる。コア部材は、コラムを支持している。
【0034】
ツールは、上述の指状部材と同数のシリンダを、少なくとも3つのシリンダを、良好には6つのシリンダを備えている。
【0035】
変形例では、クラウン要素について、案内クラウン要素が、短い周方向長さを有する中間クラウン要素と交互に配置されており、案内クラウン要素が、下向き方向に分岐しているレールを備えており、レールの周方向長さが、ツールが管状スリーブに挿入されている場合に一方のレールのみが展開可能構造体に接触するように、可動要素同士の間の角度ピッチより短く、一方のレールが、他方のレールより長い周方向長さを有している。
【0036】
典型的な実施例では、ツールは、アームを回動可能に接続するためのコラムを備えており、アームは、展開可能構造体に作用させるための中央シリンダと、ツールをスリーブの内側に保持するための少なくとも1つの他のシリンダとに当接している。アームそれぞれには、2つの側部シリンダが中央シリンダの側方それぞれにおいて装着されている。これら側部シリンダは、ツールがスリーブの内側に保持されている場合に側部シリンダがスリーブに対して略垂直に方向づけられるように、アームの長手方向軸線に対して方向づけられている。
【0037】
クラウン要素それぞれが、アームそれぞれの一方の端部において回動可能に接続されている。
【0038】
ツールが、
摺動リングと、
摺動リングをコラムに沿って移動させるための少なくとも1つのシリンダと、
クラウン要素それぞれを摺動リングに接続している平行バーであって、摺動リングをコラムに沿って変位させることによって、クラウン要素がツールの長手方向軸線に対して略平行な向きを維持している状態で、アームがクラウン要素と共に回動される、平行バーと、
を備えている。
【0039】
上述のように、管状スリーブが、アンカーパイルのスリーブ、特にマルチパイルアンカー構造体のモノパイルアンカーパイル又はアンカーパイルとされる場合がある。変形例では、スリーブはジャケット脚部のスリーブとされる。
【0040】
特にスリーブがジャケット脚部のスリーブである場合には、システムが、スリーブと受容構造体との間に挿置されていると共にセメント又は他の結合剤を収容するための空間の境界を形成している、上側シール及び下側シールを備えている。これらシールは、好ましくは膨張可能なシールであって、スリーブがアンカーパイルに導入されると膨張可能とされる。
【0041】
本発明のさらなる目的は、ツールを挿入するためのスリーブに取り付けられている展開可能構造体に作用させるための、上述のように定義されたツールである。
【0042】
このようなツールは、本発明におけるシステムのツールとして、上述のように定義された機能の全部又は一部を備えている。
【0043】
本発明のさらなる目的は、上述のシステムによって、管状スリーブ、特にパイル又はジャケット脚部のスリーブを基礎穴又は他の受容構造体、特に海底土壌に掘削された基礎穴又は従動パイルのようなアンカーパイルに係留するための方法であって、
a)非動作構成において管状スリーブに取り付けれている展開可能構造体によって、管状スリーブを受容構造体に導入するステップと、
b)管状スリーブを受容構造体に固定するために、ツールによって、展開可能構造体を展開するステップと、
c)受容構造体に導入されたセメント又は他の結合剤を凝結させるステップと、
d)ツールを取り外すステップと、
を備えている。
【0044】
好ましくは、ツールが、収縮状態において管状スリーブに導入されており、当該方法が、好ましくは管状スリーブの内側においてツールを展開する結果として、ツールを管状スリーブに保持するためにツールを展開するステップを、ステップa)とステップb)との間に備えている。
【0045】
ツールが管状スリーブの内側において展開されることによって、その結果として保持が実現される。
【0046】
ツールの動作の結果として、展開可能構造体は、展開状態において、基礎穴又は他の受容構造体の内面に接触する。
【0047】
例えば、展開可能構造体は、最初にパイルの周りにおいて土壌に接触し、当該パイルを基礎穴の中心に位置決めし、当該パイルを目標位置に、例えば垂直に維持するように展開される。接触圧力は、パイルを所定位置に維持しつつ大きくなる。次に、コンクリート又は他の結合剤が、管状スリーブの外側と基礎穴の内面との間に導入される。
【0048】
変形例では、展開可能構造体が、展開状態において、管状スリーブと基礎穴の内面との間で、基礎穴の内部で延在しているケーシングに接触しており、コンクリート又は他の結合剤が、管状スリーブとケーシングとの間に、及びケーシングと基礎穴の内面との間に導入される。
【0049】
本発明はまた、基礎穴の第一段階でそのようなケーシングを固定するために使用され得る。そのような場合、ケーシングは、パイルの1つと同一の少なくとも1つの展開可能構造体を備えていてもよい。次いで、基礎穴のケーシングを固定するために使用されるセメント又は他の結合剤の凝結後、ツールを除去し、パイルをケーシングに挿入し、ツールをパイルに戻す。
【0050】
特に受容構造体がアンカーパイルであり、スリーブがジャケット脚部のスリーブである場合には、当該方法は、セメント又は他の結合剤を収容するための空間の境界を軸線方向において形成するために、スリーブとアンカーパイルとの間において膨張可能なシールを膨張させるステップを備えている。
【0051】
特にスリーブがアンカーパイルのスリーブである場合には、ツールが、管状スリーブの減少した直径を有する頸部を通じて導入される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明におけるツールの第1の実施例の斜視図である。
図2図1に表わすツールの、上方から見た斜視図である。
図3】本発明における展開構造体の一例を具備する、パイルの管状スリーブの部分図である。
図4】ツールが管状スリーブの所定位置に配置されている場合における、ツールと展開可能構造体との協働を表わす。
図5A】ツールの動作を表わす概略的なシーケンスである。
図5B】ツールの動作を表わす概略的なシーケンスである。
図5C】ツールの動作を表わす概略的なシーケンスである。
図5D】ツールの動作を表わす概略的なシーケンスである。
図5E】ツールの動作を表わす概略的なシーケンスである。
図5F】ツールの動作を表わす概略的なシーケンスである。
図5G】ツールの動作を表わす概略的なシーケンスである。
図6】本発明におけるツールの第2の実施例の、上方から見た斜視図である。
図7図6に表わすツールの、下方から見た斜視図である。
図8A図6及び図7に表わすツールの収縮構成を表わす。
図8B図6及び図7に表わすツールの展開構成を表わす。
図9A】ツールが管状スリーブの所定位置に配置されている場合における、図6及び図7に表わすツールと展開可能構造体との協働を表わす。
図9B】ツールが管状スリーブの所定位置に配置されている場合における、図6及び図7に表わすツールと展開可能構造体との協働を表わす。
図10図6及び図7に表わすツールの中間クラウン要素単独の、外側から見た斜視図である。
図11図6及び図7に表わすツールの中間クラウン要素単独の、内側から見た斜視図である。
図12図6及び図7に表わすツールの案内クラウン要素単独の、ツールの外側から見た斜視図である。
図13図6及び図7に表わすツールの案内クラウン要素単独の、ツールの内側から見た斜視図である。
図14図6及び図7に表わす中央コラムの斜視図である。
図15図6及び図7に表わすツールの下側摺動リングの、上方から見た斜視図である。
図16図6及び図7に表わすツールの下側摺動リングの、下方から見た斜視図である。
図17図6及び図7に表わすツールの補剛アームの、上方から見た斜視図である。
図18図6及び図7に表わすツールの補剛アームの、下方から見た斜視図である。
図19図6及び図7に表わすツールの圧力パッド単独の、ツールの外側から見た斜視図である。
図20図6及び図7に表わすツールの圧力パッド単独の、ツールの内側から見た斜視図である。
図21A】ツールのクラウン要素を展開可能構造体のピンに対して位置決めすることを表わす発展形態である。
図21B】ツールのクラウン要素を展開可能構造体のピンに対して位置決めすることを表わす発展形態である。
図22】管状スリーブを基礎穴の内側に部分的に保持することを表わす斜視図である。
図23】管状スリーブを基礎穴の内側に部分的に保持することを表わす斜視図である。
図24】ツールをスリーブに導入することを表わす。
図25】本発明におけるシステムによってジャケット脚部を従動パイルに係留することを表わす。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1及び図2は、例えばモノパイルやマルチパイル構造体の一のパイルのようなパイルの管状スリーブに挿入する前における、本発明の例示的なツール1を表わす。
【0054】
ツール1は、管状スリーブの内側においてツール1を保持するように構成されているクランプ機構10を備えている。クランプ機構10は、クランプ機構10が管状スリーブに収縮状態で挿入可能とされるようにツール1を径方向に展開させることができる。クランプ機構10は、所定位置に位置する場合に、状スリーブを堅固に係止するように展開し、管状スリーブの内部に固定される。
【0055】
図4に最良に表わすように、クランプ機構10は、ツール1の長手方向軸線に対して平行に延在している複数のコラム11、例えば3つのコラム11と、コラム11に沿って滑動可能とされる頂部プラットフォーム12及び底部プラットフォーム13とを備えている。
【0056】
ツール1は、頂部プラットフォーム12と底部プラットフォーム13との間における中間位置に配置されており、コラム11が、頂部プラットフォーム12及び底部プラットフォーム13を貫通して延在している。コラム11は、コラム11を平行に保持している頂底端部部材39において終端している。
【0057】
頂部プラットフォーム12は、垂直方向シリンダ15を介してコア部材20に接続されており、底部プラットフォーム13は、垂直方向シリンダ16を介してコア部材20に接続されている。垂直方向シリンダ15,16は、所望の力を発生させることができる任意の種類のシリンダである。垂直方向シリンダ15,16は、好ましくは液圧式シリンダとされる。2つの垂直方向シリンダ15、好ましくは3つの垂直方向シリンダ15と、2つの垂直方向シリンダ16、好ましくは3つの垂直方向シリンダ16とが配設されている。
【0058】
アーム17は、一方の端部において頂部プラットフォーム12に回動可能に接続されており、他方の端部において連結部材18に回動可能に接続されている。アーム19は、一方の端部において底部プラットフォーム13に回動可能に接続されており、他方の端部において連結部材18に回動可能に接続されている。
【0059】
ツール1は、図示の如く、6つの連結部材18を備えており、連結部材18それぞれが、一組の平行な底部アーム19に接続されており、且つ、一組の平行な頂部アーム17に接続されている。
【0060】
頂部アーム17及び底部アーム19は、連結部材18とコラム11によって案内される頂部プラットフォーム12及び底部プラットフォーム13と共に、関節式連結構造体を形成している。関節式連結構造体は、頂部プラットフォーム12と底部プラットフォーム13との間の距離を減少させるための収縮力が垂直方向シリンダ15,16によって作用される場合に、径方向外方に展開可能とされる。
【0061】
圧力パッド21は、ツール1の展開の際に管状スリーブ2に接触し且つツール1を管状スリーブ2の内部に保持するための連結部材18に装着されている。
【0062】
また、連結部材18は、圧力パッド21の側部それぞれにおいて延在しているクラウン要素22を装着している。
【0063】
図1から理解されるように、クラウン要素22それぞれが、管状スリーブ2の内面の曲率より僅かに大きい曲率を有している一組の弧状プレート36によって形成されている。図4に表わすように、弧状プレート36は、一連の骨組バー29によって保持されており、骨組バー29は、対応する隣り合う連結部材18によって支持されている。また、骨組バー29は、圧力パッド21を保持している。圧力パッド21は、ツール1の底部に向かって開口しているノッチ28を備えている。
【0064】
クラウン要素22それぞれが、ノッチ28に向かって収束している傾斜縁部27を有している。
【0065】
図4に表わすように、コア部材20は、径方向において軸線方向Xに対して垂直にそれぞれ延在している水平方向シリンダ30を保持している。水平方向シリンダ30は、好ましくは液圧式シリンダとされる。好ましくは、6つの水平方向シリンダ30が、互いから60°の角度で離隔して配置されている。
【0066】
水平方向シリンダ30は、対応するノッチ28の底部から下方に所定距離で離隔して延在しているロッド37を有している。
【0067】
図4は、ツール1が挿入されようとしているパイルの管状スリーブ2の上側部分を表わす。本発明では、管状スリーブ2は、ツール1と協働するように構成されている展開可能構造体4を支持している。
【0068】
展開可能構造体4は、それぞれの案内部材42に係止されている一連の径方向に方向つけられている指状部材41を備えている。図3に最良に表わすように、案内部材42はそれぞれ、管状スリーブ2に作られている対応する穿孔6と位置合わせされた状態で、管状スリーブ2の壁に固定されている管によって構成されている。指状部材41はそれぞれ、ロッド37によって押圧された場合に、関連する管の内部において外部に向かって滑動可能とされる。管状スリーブ2は、ツール1の利用の際に負荷に耐えるように適切に補剛されている。指状部材41はそれぞれ、指状部材41を外部に向かって押し出すために所定の適度な力が必要とされるように、案内部材42の内部において所定位置に保持されている。指状部材41は、ロッド37の作用によって破壊される可融性の一時的な固定要素締結要素、例えばピンとされる。
【0069】
図示の実施例では、展開可能構造体4は、互いから60°の角度で離隔して方向づけられている6つの指状部材41を有しており、ツール1は、6つの圧力パッド21を具備する6つのクラウン要素22を有している。
【0070】
管状スリーブ2は、一般に、例えば鋼のような金属から作られており、案内部材42は、金属製であって、溶接によって管状スリーブ2に固定されている。
【0071】
指状部材41は、自身の遠位端に、土と接触するための拡大ヘッド46を備えている。
【0072】
ノッチ28は、案内部材42の外径と略同一とされる直径を有する半円状の底部を有している。従って、ツール1は、管状スリーブ2の内部において高精度で自動的に位置決めされる前に、粗く方向づけられる。位置決めの終了時に、水平方向シリンダ30それぞれが、対応する指状部材41と対面している。
【0073】
パイルを係留するための作業手順について、図5A図5Gを参照しつつ説明する。
【0074】
最初に、パイルを受容するための円筒状の基礎穴が海底に掘削される。
【0075】
次に、図5Aに表わすように、管状スリーブ2が基礎穴Hに挿入され、水上艦に搭載された巻上機を利用することによって、ツール1が管状スリーブ2の内部に収縮状態で導入される。
【0076】
ツール1を導入する際に、ノッチ28は、傾斜縁部27によって案内部材42に向かって案内される。これにより、ツール1は、指状部材41に対して方向づけられる。図5Bに表わすように、ツール1の導入終了時には、圧力パッド21が案内部材42に抗して載置されている一方、指状部材41は収縮状態とされる。
【0077】
次に、垂直方向シリンダ15,16は、頂部プラットフォーム12及び底部プラットフォーム13を互いに対して接近させるように、且つ、頂部アーム17及び底部アーム19を管状スリーブ2に向かうように回動させるように機能する。
【0078】
圧力パッド21は、関節式連結構造体が展開されることによって、管状スリーブ2の内面に接触するので、これによりツール1は、図5Cに表わすように、シリンダ30の作動可能な管状スリーブ2の内側に保持される。
【0079】
ツール1を管状スリーブ2の内部に保持することによって、ツール1がパイルの中心にセンタリングされる。
【0080】
次に、図5Dに表わすように、水平方向シリンダ30は、指状部材41を基礎穴内面Sに対して押圧するように動作される。指状部材41に作用する圧力は、指状部材41が土に接触するまで、最初は中程度とされる。次に、水平方向シリンダ30はそれぞれ、パイルを基礎穴の中心にセンタリングするように、且つ、にパイルの長手方向軸線を垂直に(又は他の任意の所望の位置に)維持するように独立して制御される。その後に、水平シリンダ30によって指状部材41に作用される圧力は、管状スリーブ2が基礎穴の内部において所望の位置に固定されるように制御される。指状部材41は、海流がパイルに作用させる横方向力に一層容易に耐えられるように、好ましくは基礎穴の開口部に比較的接近して配設されている。
【0081】
図5Eに表わすように、コンクリートC又は他の任意の結合剤が、基礎穴Hの内側且つ管状スリーブ2の周囲の環状空間に注入される。
【0082】
指状部材41によって管状スリーブ2が固定されることによって、コンクリート又は他の結合剤は良好な状態で凝結される。
【0083】
凝結後、水平方向シリンダ30は、図5Fに表わすように収縮され、垂直方向シリンダ15,16は、図5F及び図5Gに表わすようにツール1を収縮させるために展開される。
【0084】
次に、ツール1は、(図5Gに表わすように)管状スリーブ2から引き離され、他のパイルで再利用される。
【0085】
図示しない変形例では、ツール1は2回使用される。すなわち、ツール1は、最初に管状スリーブ2に関連して上述した展開可能構造体に類似している展開可能構造体を具備する管状ケーシングを係留するために、次に管状スリーブ2を当該管状ケーシングの内部に係留するために利用される。管状ケーシングを係留する際に、コンクリート又は他の結合剤が、基礎穴の内部に配設された管状ケーシングの周りに注入される。
【0086】
図示しない変形例では、他のツール1と他の展開可能構造体4とが、パイルの底部に近い下側セクションにおいて管状スリーブを保持及び固定するために使用される。
【0087】
本発明は、開示された実施例に限定される訳ではない。例えば、展開可能構造体又はツールが変更されても良い。
【0088】
垂直方向円筒体又は水平方向円筒体の数量が異なっても良い。
【0089】
展開可能構造体は、指状部材を案内するための別の手段を備えている場合がある。例えば、ブッシュが、指状部材を案内するために、管42の内部に導入される。
【0090】
ツールは、様々な深さで、様々な直径のパイルと共に動作される。パイルは、任意の構造体を支持しており、本発明は、風力発電機を支持するパイルに限定される訳ではない。例えば、パイルは、水力発電機を支持している。
【0091】
本発明におけるツール1の変形例について、図6図23を参照しつつ説明する。
【0092】
とりわけ、ツール1は、クランプ機構10に関連して上述したツール1と相違する。
【0093】
図示の如く、ツール1は、好ましくは円状の断面を有するシリンドリカル状本体113を有している中央コラム111を備えており、シリンドリカル状本体113には、(図15及び図16に単独で示す)下側リング112が滑動可能に取り付けられている。
【0094】
摺動リング112は、好ましくは自身の外周に配設されている中実コア116を備えており、中実コア116は、垂直方向リブ及び水平方向リブを有している。以下に詳述するように、ツール1の他の構成部品のための結合を支持するように機能する。コア116が中実であるので、圧縮負荷に対して一層良好な抵抗を提供すると共に、変形を制限することに貢献する。
【0095】
中央コラム111は、自身の上端部において、昇降穴116を具備する上側プラットフォーム115に装着されている。
【0096】
垂直方向シリンダ120は、図8Aに表わす下側位置と図8Bに表わす上側位置との間において摺動リング112を移動させるように摺動リング112に作用するために、中央コラム111に沿って設けられている。
【0097】
垂直方向シリンダ120は、好ましくは液圧式シリンダとされる。垂直方向シリンダ120は、自身の下側端部において摺動リング112に接続されており、自身の上側端部において上側プラットフォーム115に接続されている。垂直方向シリンダ120の行程は、2000mm~3000mmの範囲とされ、例えば役2850mmである。垂直方向シリンダ120それぞれの力は、約20トンである。
【0098】
図14に表わすように、垂直方向シリンダ120の本体はそれぞれ、一組のカラー118,119によって、中央コラム111に沿って固定された状態で保持されている。
【0099】
クランプ機構10は、補剛アーム130を備えており、補剛アーム130の一方の端部132が、上側プラットフォーム115に近接して中央コラム111に設けられている継手131に回動可能に接続されている(図17及び図18に単独で表わす)。
【0100】
補剛アーム130の他方の端部は、クラウン要素140又は150それぞれを取り付けるための継手133、例えばダブルフランジ型の継手を備えている。
【0101】
図6及び図7から理解されるように、ツール1は、3つの案内クラウン要素150を備えている。案内クラウン要素150がツール1の長手方向軸線を中心として回る場合に、案内クラウン要素150は中間クラウン要素140と角度的に交互に配置されている。
【0102】
図11及び図13から理解されるように、クラウン要素140又は150はそれぞれ、自身の内面に、当該クラウン要素を対応する補剛アーム130の継手133に回動可能に取り付けるための上側継手161を備えている。
【0103】
一組の平行な接続バー163,164はそれぞれ、クラウン要素140,150の下側継手168及び中間継手162を、摺動リング112の継手173,172に接続している。
【0104】
クラウン要素140又は150はそれぞれ、継手161,162,168をそれぞれ具備する2つの内部リブ174,175を備えている。従って、クラウン要素140又は150はそれぞれ、合計4つの接続バー、すなわち2つのバー163及び2つのバー164を介して、摺動リング112に接続されている。
【0105】
接続バー163,164はそれぞれ、対応するクラウン要素と摺動リングとから成る平行四辺形を形成しており、当該平行四辺形は、摺動リング112が中央コラム111に沿って滑動し且つ補剛アーム130が中央コラム111に対して回動する場合に、当該クラウン要素を同一の垂直姿勢で強制的に移動させる。
【0106】
補剛アーム130はそれぞれ、以下に詳述する展開可能構造体に作用するように構成されている中央シリンダ180と、管状スリーブ2の内面に対してツール1を保持するように構成されている2つの側部シリンダ181とに装着されている。一組の平行なロッド184が、補剛アーム130を装着した一組の対応するガイド188(とりわけ図17に表わす)に嵌入される結果として、側部シリンダ181は、対応する補剛アーム130に滑動可能に取り付けられているパッド183(図19及び図20に表わす)に作用する。
【0107】
中央シリンダ180の行程は約400mmとされる。中央シリンダ180それぞれの力は約160トンである。
【0108】
このパッド183は、側部シリンダが動作する場合に少なくとも200mm、例えば約300mm進行する。側部シリンダ181の行程は約300mmとされる。側部シリンダ181それぞれの力は約80トンである。
【0109】
図9A及び図9Bに表わすように、側部シリンダ181は、管状スリーブ2の内面に対して略垂直に方向づけられるように、対応する補剛アーム130の長手方向軸線に対して非零の角度を形成する方向に移動する。
【0110】
補剛アーム130はそれぞれ、自身の径方向内側端部に、ストッパ38を備えている(とりわけ図17及び図18に表わす)。ストッパ138は、上側プラットフォーム115と継手131との間で中央コラム111に固定されている、対応するストッパ117に当接するように位置決めされている。これにより、摺動リング112が中央コラム111上の上側進行端に到達した場合に、補剛アーム130が略水平に配置されるようになっている。
【0111】
案内クラウン要素150は、中間クラウン要素140より大きい、ツールの長手方向軸線を中心とする周方向長さ(angular extension)を有している。
【0112】
案内クラウン要素150はそれぞれ、底部に向かって分岐する一組のレール152を備えている。レール152の底縁部159は、案内クラウン要素150の大部分に亘って延在している中央ノッチ156に向かって収束する。
【0113】
中間クラウン要素140は、中央ノッチ144に向かって収束する底縁部142を有する。
【0114】
図11及び図13に表わすように、クラウン要素140,150は、様々な補剛リブによって内面において補剛されている外側シールド145,155を備えている。
【0115】
図21A及び図21Bに表わすように、レール152は、展開可能構造体に対するツール2の2つの相違する相対的な角度位置について、ツール1が管状スリーブ2に向かって下方に移動する際に展開可能構造体の指状部材41を捕捉するように構成されている。
【0116】
これら図面から理解されるように、レール152の遠位端部同氏の角度的間隔、すなわち2つの連続する指状部材41の間の角度ピッチが60°より僅かに小さいので、一方の指状部材41が、ツール1が管状スリーブ2に向かって下方に移動する際に、一方のレール152に接触する。
【0117】
図21A及び図21Bから理解されるように、一方のレール152が、他方のレール152、例えば左側のレールより短いので、両方のレール152が、同時に指状部材41それぞれに接触することはない。
【0118】
図6及び図7に表わすツール1は、図1図2、及び図4を参照して説明したツール1と同様の方法で使用可能とされる。
【0119】
ツール1は、展開可能構造体を具備する管状スリーブ2の内部で掲揚される。ツール1は、この挿入の際に、図8A図9A、及び図24に表わす収縮構成とされる。
【0120】
管状スリーブ2は、図24に表わすように、自身の上側端部において減少した直径を有する頸部2aを呈している。それにも関わらず、ツール1の外径は、頸部2aを通過するのに十分小さい。
【0121】
例えば、図9Aに表わす直径R1~R3は、例示のみを目的として付与される以下の値に相当する。
-R1(収縮位置におけるツールの外径)は、5500mm~6000mm、例えば約5600mmとされる。
-R2(管状スリーブ2の内径)は、7000mm~8000mm、例えば約7600mmとされる。
-R3(基礎穴の内径)は、8200mm~9000mm、例えば約8400mmとされる。
【0122】
管状スリーブ2の頸部2aは、収縮構成において、ツール1の外径R1より僅かに大きい内径R4を有している。例えば、R4-R1の範囲は100mm~200mm、例えば約150mmとされる。
【0123】
図8B及び図9Bに表わすように、クランプ機構10は、依然として展開可能構造体の上方に配置された状態で、ツール1を展開構成に変更するために動作する。
【0124】
垂直方向シリンダ120は、摺動リング112を中央コラム111に沿って上方に移動させるように動作する。これにより、補剛アーム130が接続バー163,164によって押圧されるので、補剛アーム130が上方に回動される。
【0125】
ツール1の展開状態では、ツール1の外径R1´が、例えば少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%大きくなり、R1´は、差分R2-R1´が50mm~150mmの間の範囲、例えば約100mmとなる大きさとされる。
【0126】
ツール1がさらに降下(hoisted down)された場合には、指状部材41はレール152と係合する。これらレールの傾斜は、ツール1を指状部材41に対して回動させ、ノッチ144,156に侵入させるのに十分な高さを有している。
【0127】
指状部材41とこれらノッチとの係合によって、中央シリンダ180はそれぞれ、指状部材41それぞれと位置合わせされる。
【0128】
図22に表わすように、側部シリンダ181は、ツール1を管状スリーブ2の内側に保持するために、パッド183を径方向外方に移動させるように動作する。
【0129】
図23に表わすように、ツール1が管状スリーブ2の内部に固定されると、中央シリンダ180は、基礎穴の内面に当接するまで、指状部材41を径方向外方に押圧するように動作する。
【0130】
中央シリンダ180によって押圧されている所定の指状部材41について、反荷重が、管状スリーブ2を介して、2つの正反対のパッド183に適用される。
【0131】
コンクリート又はセメントグラウト又は他の結合剤が、管状スリーブ2がツール1によって維持されている状態で、管状スリーブ2と基礎穴との間の間隙に注入される。
【0132】
コンクリート又はセメントグラウト又は他の結合剤が凝結された場合に、中央シリンダ180は収縮される。その後に、側部シリンダ181が収縮される。ツール1は表面から揚重され、垂直方向シリンダ120は摺動リング112を下方に移動させるように動作する。
【0133】
接続バー163,164の重量が、補剛アーム130及びクラウン要素140,150の重量と共に、補剛アーム130を下方に回動させ、収縮位置に復帰させることに貢献する。
【0134】
ツール1は、完全に収縮されると、パイルから外れて昇降される。
【0135】
本発明は、基礎穴である受容構造体にスリーブを係留させることに限定される訳ではない。
【0136】
また、図25に表わすように、受容構造体は、既に海底に係留されているパイルのような係留構造体、例えば従動パイルPとされる。
【0137】
パイル25は、任意の既知の方法で固定されていても、本発明に従って固定されていても良い。
【0138】
図25に表わす実施例では、管状スリーブ2は、ジャケット脚部Jの一部分とされ、本発明の他の例示的な実施例を参照して上述した展開可能構造体4を備えている。
【0139】
ツール1は、収縮状態において経路Wに沿って挿入される。経路Wは、図示の如く非直線的であって、少なくとも1つの転向を含んでいる。
【0140】
膨脹可能なシール310,320は、管状スリーブ2と係留アンカーパイルPとの間に位置決めされており、ツール1が動作した場合に展開可能構造体4の指状部材41が展開する環状空間340の境界を軸線方向において形成している。
【0141】
ジャケット脚部Jを係留するために、ツール1は、上述の方法と同様の方法で動作し、展開可能構造体4と協働するまで収縮構成で挿入されている。
【0142】
次に、ツール1が、当該ツールを管状スリーブ2の内側に保持し、アンカーパイルPを固定するように動作する。シール310,320が動作し、セメント又は他の結合剤が環状空間340に注入される。ツール1は、セメント又は他の結合剤が凝結されるまで所定の位置に維持され、その後に取り外される。
【符号の説明】
【0143】
1 ツール
2 管状スリーブ
4 展開可能構造体
10 クランプ機構
11 コラム
12 頂部プラットフォーム
13 底部プラットフォーム
15 垂直方向シリンダ
16 垂直方向シリンダ
17 (頂部)アーム
18 連結部材
19 (底部)アーム
20 コア部材
21 圧力パッド
22 クラウン要素
27 傾斜縁部
28 ノッチ
30 水平方向シリンダ
36 弧状プレート
39 頂底端部部材
41 指状部材
42 案内部材
111 中央コラム
112 下側リング(摺動リング)
113 シリンドリカル状本体
115 上側プラットフォーム
116 中実コア
117 ストッパ
118 カラー
119 カラー
120 垂直方向シリンダ
130 補剛アーム
131 継手
132 (補剛アーム130の)一方の端部
133 継手
138 ストッパ
140 クラウン要素
144 ノッチ
150 クラウン要素
156 ノッチ
161 上側継手
162 中間継手
163 接続バー
164 接続バー
172 継手
173 継手
180 中央シリンダ
181 側部シリンダ
183 パッド
310 シール
320 シール
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25