(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】新規なCIP2Aバリアント及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20220930BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20220930BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220930BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220930BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220930BHJP
C07K 14/82 20060101ALI20220930BHJP
C07K 16/32 20060101ALI20220930BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220930BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20220930BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20220930BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
G01N33/68
G01N33/50 P
G01N33/53 M
G01N33/53 D
G01N33/574 A
C07K14/82
C07K16/32
C12Q1/686 Z
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6813 Z
(21)【出願番号】P 2020527797
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 FI2018050844
(87)【国際公開番号】W WO2019097122
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-07-17
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513323128
【氏名又は名称】トゥルン イリオピスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メケレ、エレオノーラ
(72)【発明者】
【氏名】ウェステルマルク、ユッカ
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-519710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0070837(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0115599(US,A1)
【文献】Clinical Cancer Research,2009年,Vol.15, No.16,pp.5092-5100
【文献】Molecular Biology of the Cell ,2013年,Vol.24,pp.1638-1648
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/12
C07K 14/00-16/32
C12Q 1/68-1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、CIP2Aの単離されたポリペプチドバリアント、又は
ii)配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、アミノ酸546~558によって形成される領域外の配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ配列番号2に示されるCIP2Aのポリペプチドバリアントのがんバイオマーカーとしての機能特性を保持するアミノ酸配列を含む、CIP2Aの単離されたポリペプチドバリアント。
【請求項2】
配列番号1のヌクレオチド1636~1674によって定義される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、請求項
1に記載のポリペプチド
バリアント。
【請求項3】
配列番号1に示される核酸配列、又は配列番号1のヌクレオチド1636~1674によって定義される領域外の配列番号1と少なくとも
95%の配列同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、請求項1
又は2に記載のポリペプチド
バリアント。
【請求項4】
請求項
1又は
3に定義されるCIP2Aのポリペプチドバリアントをコードする単離されたCIP2Aポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号1のヌクレオチド1636~1674によって定義される核酸配列を含む、請求項
4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
cDNAである、請求項
4又は
5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
cDNAである、請求項1又は
2に定義されるポリペプチドをコードする単離されたCIP2Aポリヌクレオチド。
【請求項8】
3’UTRをさらに含む、請求項
4から
7のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
配列番号1に示される核酸配列、又は配列番号1のヌクレオチド1636~1674によって定義される領域外の配列番号1と少なくとも
95%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項
4から
8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
がんバイオマーカーとして
の、請求項
4から
9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項11】
がんが、リンパ系がん及び固形がんからなる群から選択される、請求項
10に記載の使用。
【請求項12】
リンパ系がんが、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択される、請求項
11に記載の使用。
【請求項13】
固形がんが、扁平上皮がん(SCC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、胃がん、肝がん、子宮頸がん、食道がん、膀胱がん、腎がん及び膵がんからなる群から選択される、請求項
11に記載の使用。
【請求項14】
全生存期間の減少を含む予後不良のバイオマーカーとしての、請求項
10から
13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
エピトープが、配列番号2のアミノ酸546~558に対応する又は重複する配列から選択される5~20個の連続アミノ酸を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリペプチド
バリアントに特異的に結合する抗CIP2Aバリアント抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
配列番号26~44のいずれか一つに示される配列からなる、
請求項4から9のいずれか一項に記載のCIP2Aのポリペプチドバリアントをコードするポリヌクレオチドを検出するための、オリゴヌクレオチド
プローブ。
【請求項17】
検出可能な標識を含
む、請求項
16に記載のオリゴヌクレオチド
プローブ。
【請求項18】
請求項
4から
9のいずれか一項に記載のCIP2Aのポリペプチドバリアントをコードするポリヌクレオチドの少なくとも一部を特異的に増幅するプライマー対であって、配列番号1のヌクレオチド1635~1983、1636~1674又は1675~1983によって形成される配列に包含される又は該配列と重複する標的配列と特異的にハイブリダイズする3’プライマーを含む、上記プライマー対。
【請求項19】
配列番号1のヌクレオチド1~1634によって形成される配列に包含される標的配列と特異的にハイブリダイズする5’プライマーを含む、請求項
18に記載のプライマー対。
【請求項20】
プライマーが、10~40個のヌクレオチド長を有する、請求項
18又は
19に記載のプライマー対。
【請求項21】
がんを予後判定、検出、スクリーニング、診断又は監視することにおいてに使用するための、患者からの試料中の請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリペプチド
バリアントの発現レベル又は請求項
4から
9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを提供する方法であって、該患者からの試料中の請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリペプチド
バリアントの発現レベル又は請求項
4から
9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドの発現レベルを測定するステップを含む、上記方法。
【請求項22】
前記発現レベルを測定するステップが、核酸増幅を実施することを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
前記増幅が、請求項
18から
20のいずれか一項に記載のプライマー対を使用して実施される、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
前記発現レベルを測定するステップが、前記ポリヌクレオチドを請求項
16又は17に記載のオリゴヌクレオチド
プローブとハイブリダイズすることを含む、請求項
21から
23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記発現レベルを測定するステップが、前記試料中の請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリペプチド
バリアントへの請求項
15に記載の抗体の結合を検出することを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項26】
前記がんが、AML、CML及びPLMを含むリンパ系がん、並びに扁平上皮がん(SCC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、胃がん、肝がん、子宮頸がん、食道がん、膀胱がん、腎がん及び膵がんを含む固形がんからなる群から選択される、請求項
21から
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
対照の発現と比較した前記ポリペプチド
バリアント又はポリヌクレオチドの発現レベルの増加が予後不良を示す、請求項
21から
26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
AMLと診断された対象が幹細胞療法を含む治療法の対象となることを示すための方法であって、
対象からの生体試料を、請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリペプチド
バリアント又は請求項
4から
9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドに特異的に結合する試薬と接触させるステップと;
上記結合に基づいてポリペプチド
バリアント又はポリヌクレオチドの発現レベルを測定するステップと;
測定された発現レベルを対照と比較することによって、測定されたポリペプチド
バリアント又はポリヌクレオチドの発現レベルが試料中で増加しているかどうかを判定するステップと;
該発現レベルが増加している場合、前記AMLと診断された対象が幹細胞療法を含む治療法の対象となることを示すステップと
を含む、上記方法。
【請求項29】
前記対照がCIP2A又はハウスキーピング遺伝子である、請求項
27又は
28に記載の方法。
【請求項30】
臨床試料中の請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリペプチド
バリアントの存在を検出するためのイムノアッセイであって、
前記試料を請求項
15に記載の抗体と接触させるステップと;
抗体の特異的結合があれば、定性的又は定量的に該抗体の特異的結合を検出するステップと
を含む上記イムノアッセイ。
【請求項31】
前記試料を、請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリペプチド
バリアントに特異的に結合するが、そのエピトープが請求項
15に記載の抗体のエピトープとは異なるさらなる抗体と接触させて、サンドイッチ免疫複合体を形成するステップと、免疫複合体の存在があれば、該免疫複合体の存在を定性的又は定量的に検出するステップとを含む、請求項
30に記載のイムノアッセイ。
【請求項32】
前記試料を、CIP2Aのポリペプチドに特異的に結合するが、そのエピトープが配列番号4のアミノ酸546と905との間にあるさらなる抗体と接触させて、第2のサンドイッチ免疫複合体を形成するステップと、第2の免疫複合体の存在があれば、定性的又は定量的に該第2の免疫複合体の存在を検出するステップとを含む、請求項
30又は
31に記載のイムノアッセイ。
【請求項33】
2つのサンドイッチ免疫複合体の比が決定される、請求項
32に記載のイムノアッセイ。
【請求項34】
生体試料中の請求項
4から
9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドの存在を検出するための方法であって、
a)試料を請求項
16又は17に記載のオリゴヌクレオチド
プローブと接触させるステップと;
b)オリゴヌクレオチド
プローブの特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップと
を含む、上記方法。
【請求項35】
a)の前に、請求項
18から
20のいずれか一項に記載のプライマー対を使用して
、請求項4~9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを増幅するステップを含む、請求項
34に記載の方法。
【請求項36】
生体試料中の請求項
4から
9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドの存在を検出するための方法であって、
a)試料を請求項
18から
20のいずれか一項に記載のプライマー対と接触させるステップと;
b)核酸増幅を実施するステップと;
c)ステップb)で得られたアンプリコンを、請求項
16又は17に記載のオリゴヌクレオチド
プローブで定性的又は定量的に検出するステップと
を含む、上記方法。
【請求項37】
請求項
15に記載の抗体を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリペプチド
バリアントのレベルを測定するためのキット。
【請求項38】
請求項
16又は17に記載のオリゴヌクレオチド
プローブ及び/又は請求項
18から
20のいずれか一項に記載のプライマー対を含む、請求項
4から
9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドのレベルを測定するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ながん関連バイオマーカー及びその様々な用途に関する。より具体的には、本発明は、NOCIVAとして表されるCIP2Aの新規なスプライスバリアント、ならびに同バリアントに特異的なプローブ、増幅プライマー及び抗体などの結合体に関する。上記スプライスバリアントに基づいてがんを検出及び予後判定する種々の方法、ならびに上記方法に使用するためのキットも提供される。これに限定されないが、本発明は、特に急性骨髄性白血病(AML)などのリンパ系がんに関する。
【背景技術】
【0002】
急性骨髄性白血病(AML)は、成人に発症する最も一般的な急性白血病である。AMLの発生率は、年間10万人当たり新規2~3例である。AMLは、正常な造血を破壊する不均質なクローン性血液悪性腫瘍であり、最も進行性の高いがん型の1つである。AMLの最初の根治療法は1970年代から80年代に開発され、これより前は、AML患者は、わずか3か月という暗い予後であった。2010年代では、60~65歳未満のAML患者の50%が完全寛解を得ることができる。
【0003】
AMLの遺伝的多様性の理解の進歩により、AML症例内の予後サブグループの特定が可能になった。AMLサブタイプの分類はまた、治療戦略を最適化し、治療関連死亡率及び再燃リスクを低下させるために、臨床的に関連する。予後良好リスクカテゴリーの患者は化学療法で治療され、これにより患者の最大70%が完全寛解に移行できる。あるいは、適切である予後が中程度及び予後不良の患者の治療は、同種幹細胞移植であり、これは依然として危険な手技であり、多くの起こり得る合併症があり、死亡率が30%である。移植に関連する副作用は、数週間から数ヶ月続く短期的なもの、又は数年もしくは生涯続き得る長期的なものもあり得る。
【0004】
AMLの分子生物学に関する理解の進歩にもかかわらず、患者の最大半数では完全寛解が発生するが、多くの患者にとっては、再燃が一般に予想され、予後は暗い。したがって、現在の臨床課題は、予想される予後に従ってAML患者をよりよく層別化することである。特に、現在のリスク群分類で好ましい予後の患者と判断されているが、標準的な化学療法では治癒できず、直ちに幹細胞移植に向けるべき患者を検出するための、より感度の高い診断方法を開発することが有用であり得る。
【0005】
したがって、AML予後及び最小限の残存病変監視のための新たな臨床及び分子マーカーが必要である。日常的な臨床診断の一部として、AML患者の試料は、AMLに特徴的な融合遺伝子及び突然変異についてPCRで検査される。しかしながら、予後不良についてAMLのWHO分類の背後にある遺伝子異常の全てが知られているわけではなく、実際、AML患者の半数についてのみ、関連する分子遺伝学的PCR検査が利用可能である。したがって、AML患者のための治療戦略を設計及び最適化するために使用することができる新たな遺伝的変化を特定する明確な医学的ニーズがある。
【0006】
プロテインホスファターゼ2A(PP2A)は、三量体(A-B-Cサブユニット)腫瘍抑制因子複合体である。がん細胞では、PP2Aの腫瘍抑制活性が阻害される。しかしながら、PP2A複合タンパク質は、全てのがん型でかなり低頻度で突然変異する。代わりに、がんにおけるPP2A阻害の最も一般的な様式は、CIP2A、SET及びPME1などのPP2A阻害剤タンパク質の過剰発現であるようである。CIP2A過剰発現は、十数種を超えるヒト固形がん型で患者予後不良と関連している(Khanna及びPimanda、2015)。SETはヒトAMLで過剰発現されることが知られている(Cristobal Iら、2010)。
【0007】
AMLなどのリンパ系がんを含むがんを予後判定するためのさらなるマーカーが依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、がんの診断及び予後判定の種々の態様のための手段及び方法を提供することである。この目的は、独立請求項に明言されていることを特徴とする配置によって達成される。いくつかの好ましい実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0009】
本発明は、少なくとも部分的には、がん細胞が潜在的に異なる機能を有するCIP2Aの異なるアイソフォームを発現し得ることを明らかにする試験に基づいている。CIP2Aの新規なアイソフォームが特定される。
【0010】
したがって、一態様では、本発明は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、NOCIVAと命名されるCIP2Aの単離されたポリペプチドバリアントを提供する。いくつかの実施形態では、上記ポリペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列の少なくとも一部を含む、又はアミノ酸546~558によって形成される領域外の配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むもしくはからなる。いくつかのさらなる実施形態では、ポリペプチドが、配列番号1のヌクレオチド1636~1674によって定義される核酸配列を含む、又はCIP2Aのイントロン13の部分にインフレームでC末端結合したCIP2Aのエクソン1~13を含むポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかのなおさらなる実施形態では、ポリペプチドが、配列番号1に示される核酸配列、又は配列番号1のヌクレオチド1636~1674によって定義される領域外の配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含む又はからなるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0011】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする、単離されたCIP2Aポリヌクレオチドバリアント、好ましくはcDNAバリアントを提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが、配列番号1のヌクレオチド1636~1674によって定義される核酸配列を含む。いくつかのさらなる実施形態では、ポリヌクレオチドが、CIP2Aのイントロン13の一部にインフレームでC末端結合したCIP2Aのエクソン1~13を含む。いくつかのなおさらなる実施形態では、ポリヌクレオチドが3’UTRをさらに含む。いくつかのなおさらなる実施形態では、ポリヌクレオチドが、配列番号1に示される核酸配列の少なくとも一部を含む、又は配列番号1のヌクレオチド1636~1674によって定義される領域外の配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むもしくはからなる。
【0012】
がんバイオマーカーとしての本ポリペプチド又はポリヌクレオチドの使用も提供される。いくつかの実施形態では、上記がんが、リンパ系がん及び固形がんからなる群から選択される。いくつかのさらなる実施形態では、上記リンパ系がんが、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択され;固形がんが、扁平上皮がん(SCC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、胃がん、肝がん、子宮頸がん、食道がん、膀胱がん、腎がん及び膵がんからなる群から選択される。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、本発明によるポリペプチドに特異的に結合する抗CIP2A変異抗体、すなわち抗NOCIVA抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0014】
なおさらなる態様では、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするプローブなどのオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドが、配列番号1のヌクレオチド1635~1983によって形成される配列に包含される又は重複する標的配列と特異的にハイブリダイズする。いくつかのさらなる実施形態では、オリゴヌクレオチドが、配列番号1のヌクレオチド1635~1983、1636~1674又は1675~1983によって形成される配列の8~40個、好ましくは15~35個、より好ましくは20~30個の連続ヌクレオチドとハイブリダイズする。
【0015】
なおさらなる態様では、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドの少なくとも一部を特異的に増幅するプライマー対を提供する。いくつかの実施形態では、プライマー対が、配列番号1のヌクレオチド1635~1983、1636~1674又は1675~1983によって形成される配列に包含される又は重複する標的配列と特異的にハイブリダイズする3’プライマーを含む。いくつかの実施形態では、プライマー対が、配列番号1のヌクレオチド1~1634によって形成される配列に包含される標的配列と特異的にハイブリダイズする5’プライマーを含む。
【0016】
がんを予後判定、検出、スクリーニング、診断又は監視する方法も提供される。上記方法は、対象からの試料中の本発明によるポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現レベルを測定するステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法が、例えば本発明によるプライマー対による核酸増幅、及び/又は本ポリヌクレオチドを本発明によるオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることを伴う。あるいは、本方法は、本発明による抗体を使用することを伴い得る。本方法はまた、例えば、次世代シーケンシング、RNAインサイチューハイブリダイゼーション、及び質量分析による定量的標的プロテオミクス、例えば選択的反応モニタリング(SRM)、SWATH及びマスサイトメトリーからなる群から選択される技術を使用して行われ得る。
【0017】
一態様では、本発明は、AMLと診断された対象に治療を割り当てる方法を提供する。本方法は、対象からの生体試料を、本発明によるポリペプチド又はポリヌクレオチドに特異的に結合する試薬と接触させるステップと;上記結合に基づいて上記ポリペプチド又は上記ポリヌクレオチドの発現レベルを測定するステップと;上記発現レベルを対照と比較することによって、決定された上記ポリペプチド又は上記ポリヌクレオチドの発現レベルが試料中で増加しているかどうかを測定するステップと;上記発現が増加している場合、幹細胞療法を含む治療法を割り当てるステップとを含む。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、臨床試料中の本発明によるポリペプチドの存在を検出するためのイムノアッセイを提供する。イムノアッセイは、試料を本発明による抗体と接触させるステップと;抗体の特異的結合があれば、定性的又は定量的に検出するステップとを含む。
【0019】
なおさらなる態様では、本発明は、生体試料中の本発明によるポリヌクレオチドの存在を検出する方法を提供する。本方法は、a)試料を本発明によるオリゴヌクレオチドと接触させるステップと;b)オリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップとを含む。いくつかの実施形態では、本方法が、a)の前に、本発明によるプライマー対を使用して、上記ポリヌクレオチドを増幅するステップを含み得る。
【0020】
なおさらなる態様では、本発明は、生体試料中の本発明によるポリヌクレオチドの存在を検出する方法を提供する。本方法は、a)試料を本発明によるプライマー対と接触させるステップと;b)核酸増幅を実施するステップと;c)ステップb)で得られたアンプリコンを、本発明によるオリゴヌクレオチドで定性的又は定量的に検出するステップとを含む。
【0021】
また、本発明によるポリペプチドのレベルを測定するためのキットであって、本発明による抗体を含むキット;ならびに本発明によるポリヌクレオチドのレベルを測定するためのキットであって、本発明によるオリゴヌクレオチド及び/又は本発明によるプライマー対を含むキットも提供される。
【0022】
本発明の他の目的、態様、実施形態、詳細及び利点は、以下の図面、詳細な説明、例及び従属請求項から明らかになるだろう。
【0023】
以下で、本発明を、添付の図面を参照して好ましい実施形態によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A~
図1Dは、新規なCIP2A mRNAバリアントの特定を示している。
【
図1A】RACE-PCRで特定されたCIP2A mRNAアイソフォームの概略図である。3つのCIP2A mRNAバリアントが見つかった。NOCIVA mRNAは、CIP2Aイントロン番号13からの代替エクソンを含んでいるので、ユニークで以前は未知であったコード配列を形成する。非翻訳領域(5’UTR又は3’UTR)を点で示し、NOCIVAのユニークな代替エクソンを垂直ライニングで示し、NOCIVA特異的3’UTRを灰色勾配の破線で示す。
【
図1B】元のCIP2A mRNA配列とは異なる特徴を有するNOCIVA mRNAの3’末端を示す図である。CIP2AとNOCIVA mRNAとの間の共有ヌクレオチド配列には下線を付している。NOCIVAタンパク質は、545個のN末端CIP2Aアミノ酸及びC末端上に13個のユニークなアミノ酸(太字)を含む。終止コドンをアスタリスクで示す。NOCIVA mRNAは、3’UTR(配列番号1の1675~2010)及びポリアデニル化シグナル(配列番号1の1962~1967のAATAAA)も含む。ポリアデニル化シグナル及びポリ(A)テールをボックスで示す。配列番号1の部分的核酸配列及び配列番号2の部分的アミノ酸配列が示されている。
【
図1C】いくつかの細胞株からのNOCIVA特異的mRNA配列発現を検証するための確認RT-PCRの結果を示す図である。NTCはテンプレートなしの対照(non-template control)の略称である。得られたバンドを抽出し、特異的NOCIVA mRNAの存在を配列決定によって確認した。
【
図1D】KIAA1524遺伝子からのNOCIVA mRNA形成を例示し、KIAA1524の核酸配列(配列番号89)の一部を示す図である。CIP2Aエクソン13及びエクソン14を下線で示す。通常の文字をエクソン13と14との間のイントロン配列に使用する。太字はNOCIVA mRNAが産生されるイントロン領域である(配列番号1のヌクレオチド1635~1983に対応)。太字配列は、エクソン13と14との間のイントロン配列の一部でもある。
図2A~
図2Eは、正常な及びがん性の細胞及び組織試料中のNOCIVA及びCIP2A mRNA発現を示している。
【
図2A】患者由来のケラチノサイト(Ker)及び扁平上皮がん(SCC)細胞における2つの異なるプライマープローブセットを用いてqPCRによって測定されたNOCIVA mRNA発現を示す図である。b-アクチン及びGAPDHをハウスキーピング遺伝子として使用し、Ker 45B細胞におけるmRNA発現レベルを値1として定義した。
【
図2B】正常組織パネル(Human MTCパネルI&II、Clontech)でのNOCIVA、CIP2Ae13(すなわち、エクソン13とハイブリダイズする5’プライマー及びエクソン14とハイブリダイズする3’プライマーを使用して決定されるCIP2A)及びCIP2Ae20(すなわち、エクソン20とハイブリダイズする5’プライマー及びエクソン21とハイブリダイズする3’プライマーを使用して決定されるCIP2A)のmRNA発現を示す図である。b-アクチン及びGAPDHをハウスキーピング遺伝子として使用した。
【
図2C】
図2Bの正常組織試料中のNOCIVAとCIP2Ae13のmRNA発現の比を示す図である。
【
図2D】指示されるAML及びCML細胞株中のNOCIVA及びCIP2Ae20 mRNA発現を示す図である。AML:急性骨髄性白血病;CML:慢性骨髄性白血病。Hela、UT-7及びMCF7は、ここでは固形ヒトがんを表す。
【
図2E】
図2Aのケラチノサイト及びSCC細胞中の平均発現と比較した、患者由来の診断用AML試料中のNOCIVA mRNA発現を示す図である。
図3A~
図3Bは、診断用リンパ系試料中のNOCIVA mRNA過剰発現を例示している。
【
図3A】0値として定義された正常な骨髄試料と比較した、CIP2A又はNOCIVA mRNAの過剰発現又は過少発現を伴う93種の診断用ヒトAML試料の分布を示すウォーターフォールプロットである。b-アクチン及びGAPDHをハウスキーピング遺伝子として使用した。
【
図3B】正常な骨髄試料と比較した、指示される遺伝子の過剰発現を示す93種の診断用AML患者試料の割合を示す図である。FC>2:過剰発現が2倍超である試料の割合。
図4A~
図4Fは、AML患者材料の統計及び臨床的相関を示す。
【
図4A】表で定義されるリスク群に応じた臨床フォローアップ情報を含む患者材料の分布を示す図である。生存率とは、フォローアップ時間後の生存患者を指す(03/17、中央フォローアップ5.4年)。
【
図4B】多変量解析における患者の診断年齢及びリスク群と全生存期間の統計的相関を示す図である。
【
図4C】試験した患者集団における指示されるマーカーの発現とリスク群の相関を示す図である。CIP2A mRNA発現もNOCIVA mRNA発現も、リスク群間で統計学的に異ならない(p値を括弧内に示す)。
【
図4D】多変量解析において、高いNOCIVA発現が短い全生存期間と有意に関連していることを示す図である。
【
図4E】低又は高に分割したNOCIVA発現レベルによる、AML患者の全生存期間のカプラン・マイヤープロットを示す図である。中央値は、カットオフ値として機能する。
【
図4F】多変量解析において、高いNOCIVA/CIP2Ae13比が短い全生存期間と有意に関連していることを示す図である。
【
図5】NOCIVA特異的抗体が正しいサイズ(およそ90kDa)の組換えGST-NOCIVAタンパク質を検出するが、組換えCIP2Aフラグメントを検出しないことを示す図である。NOCIVA-ブロッキングペプチドでシグナルをブロックすることができる。
【
図6】PCR又はqPCRを用いてNOCIVA特異的配列を検出するためのオリゴ設計の非限定的な例の概略図である。破線は、通常のCIP2A mRNA配列の終わりとNOCIVA特異的mRNA配列の始まりを示す。
【数1】
プライマー、
【数2】
インターカレートプライマー、
【数3】
プローブ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、NOCIVAと命名されるPP2A(CIP2A又はKIAA1524)のがん性阻害剤の新規なバリアントを提供する。mRNAレベルでは、バリアントが、KIAA1524遺伝子のエクソン13と14との間のイントロンの一部にC末端融合したCIP2Aのエクソン1~13を含む。このようにして形成されたNOCIVA転写産物は、ユニークで以前は未知の配列であり、イントロン配列は、先行するCIP2A mRNA配列を含むコードフレーム内にあり、13個のアミノ酸に対応する40ヌクレオチドの後に、古典的な終止コドン(翻訳終止)TAAが続く。3つの主要な非翻訳領域(3’UTR)は、翻訳終止コドンの直後に続くmRNAのセクションであり、3’UTR内の調節領域は、mRNAのポリアデニル化、翻訳効率、局在化及び安定性に影響を及ぼすことができる。NOCIVAの潜在的な3’UTRは、ポリ(A)テールと呼ばれるいくつかのアデニン残基の付加をmRNA転写産物の終わりに向けるAATAAA配列を含むおよそ350ヌクレオチドからなる。したがって、NOCIVA遺伝子産物は、C末端に13個の新たなアミノ酸(NNKNTQEAFQVTS;配列番号3)を有する切断型CIP2Aタンパク質をコードする。重要なことに、この13aaペプチド配列は、Blast相同性検索に基づくヒトプロテオームの既知のタンパク質配列と一致しない。配列番号1に示される核酸配列は、NOCIVA mRNAの相補的DNA(cDNA)配列を表し、NOCIVAポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号2に示される。配列番号3は、配列番号2のアミノ酸546~558に対応する。明確にするために、NOCIVA mRNA配列中の目的の構造を、配列番号1のそれぞれのNOCIVA DNA/cDNA配列を参照して示す。
【0026】
NOCIVA特異的mRNA(配列番号1のヌクレオチド1635~2010、長さ376nt)は、以下の構造を含む:
・ポリAテールを含まないNOCIVA特異的イントロンmRNA配列:配列番号1のヌクレオチド1635~1983(350nt);
・新規なNOCIVAペプチド(13アミノ酸)をコードするNOCIVA mRNA配列:配列番号1のヌクレオチド1636~1674(39nt);
・3’UTR:配列番号1のヌクレオチド1675~2010(335nt);
・ポリAテールを含まない3’UTR:配列番号1のヌクレオチド1675~1983(310nt);
・ポリAテール:配列番号1のヌクレオチド1984~2010;及び
ポリアデニル化シグナル:配列番号1のヌクレオチド1962-1967。
【0027】
ユニークなNOCIVA配列の最初のヌクレオチド(配列番号1のヌクレオチド1635)は、新規なNOCIVAペプチドに先行する最後のアミノ酸の変化をもたらさないが、これはNOCIVA mRNAにまだ特異的であることに留意すべきである。
【0028】
NOCIVAポリペプチド及び配列番号1~3に記載される配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド(但し、NOCIVAの機能的特性を保持している)も含まれる。
【0029】
上記を考慮して、NOCIVAポリペプチド及びポリペプチドは、その保存的配列バリアントを包含する。ポリペプチドに関して、「保存的配列バリアント」という用語は、当技術分野で周知の類似のアミノ酸(例えば、類似のサイズ及び類似の電荷特性を有するアミノ酸)によるアミノ酸置換から生じ、当のポリペプチドの生物学的特性を有意には変化させないアミノ酸配列修飾を指す。アミノ酸の欠失及び付加も熟慮される。ポリヌクレオチドに関連して、「保存的配列バリアント」という用語は、コードされたポリペプチドの生物学的特性を有意には変化させないヌクレオチド配列改変を指す。保存的ヌクレオチド配列バリアントには、遺伝暗号の変性及びサイレント突然変異から生じるバリアントが含まれる。ヌクレオチド置換、欠失及び付加も熟慮される。
【0030】
本明細書で使用される場合、2つの配列間の配列同一性%は、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要があるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数×100)。配列の比較及び2つの配列間の同一性%の決定は、当技術分野で利用可能な数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。これは、アミノ酸配列と核酸配列の両方に当てはまる。
【0031】
いくつかの実施形態では、NOCIVAポリペプチドが、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NOCIVAポリペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列又はその保存的配列バリアントを含む。いくつかの実施形態では、NOCIVAポリペプチドが、アミノ酸546~558によって形成される領域外の配列番号2と少なくとも80%の配列同一性(又は上に示される任意の他の%配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み得る。換言すれば、配列の変動にもかかわらず、このようなNOCIVAバリアントは、依然として、配列番号3に示されるアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸546~558に対応する)を含む。このようなNOCIVAバリアントは、NOCIVAポリペプチドの機能的特性を保持するべきである。一定のNOCIVAバリアントが配列番号2のNOCIVAポリペプチドの機能的特性を保持しているかどうかは、日常的な実験によって行うことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、NOCIVAポリペプチドが、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NOCIVAポリペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列又はその保存的配列バリアントを含む。いくつかの実施形態では、NOCIVAポリペプチドが、アミノ酸546~558によって形成される領域外の配列番号2と少なくとも80%の配列同一性(又は上に示される任意の他の%配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み得る。換言すれば、配列の変動にもかかわらず、このようなNOCIVAバリアントは、依然として、配列番号3に示されるアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸546~558に対応する)を含む。このようなNOCIVAバリアントは、NOCIVAポリペプチドの機能的特性を保持するべきである。一定のNOCIVAバリアントが配列番号2のNOCIVAポリペプチドの機能的特性を保持しているかどうかは、日常的な実験によって行うことができる。
【0033】
NOCIVAは正常なヒト組織で非常に低レベルでのみ発現されるが、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性白血病(CML)などの種々のがんの細胞で発現される。したがって、NOCIVAは、mRNAレベル又はタンパク質レベルのいずれかで利用することができる新規ながん関連バイオマーカーである。本開示はいくつかのリンパ系がん、すなわちAML、CML及び急性前骨髄球性白血病(APL)に焦点を当てているが、NOCIVAは白血病などの血液がんのマーカーとしてだけでなく、それだけに限らないが、HNSCCなどの扁平上皮がん(SCC)、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、胃がん、肝がん、子宮頸がん、食道がん、膀胱がん、腎がん及び膵がんを含む固形がんのマーカーとしても利用され得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「血液がん」という用語は、血液、骨髄又はリンパ節に発症する悪性腫瘍を指す。血液がんは、発症する細胞の種類に応じて、白血病、リンパ腫及び骨髄腫と呼ばれる。リンパ腫は、リンパ球から発生する血液がんの群である。形質細胞骨髄腫としても知られる多発性骨髄腫は、形質細胞のがんである。
【0035】
本明細書で使用される場合、「白血病」という用語は、造血組織、通常は骨髄で始まり、白血球に発症するがんである。白血病は、発症する白血球の種類(骨髄性又はリンパ性)によって分類され得る。白血病の非限定的な例としては、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性前骨髄球性白血病(APL)及びこれらのサブグループが挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」及び「マーカー」という用語は互換的であり、見かけ上健康な対象、又は同じがんを有するが疾患の予後が異なる対象などの、対照の対象から採取された同等の試料と比較して、がんを有する対象から採取された試料中に異なって存在する分子を指す。
【0037】
患者の試料中のNOCIVAの測定は、疑われるがん又はそのサブタイプのありそうな存在、非存在又は予後と相関させることができる情報を提供する。NOCIVAの測定は、疑われるがん型又はそのサブタイプに関連する他のマーカーのアッセイの前、アッセイと同時、又はアッセイの後に実施することができる。これはまた、がん又はそのサブタイプの存在、非存在又は予後が最終的に決定されないが、さらなる診断検査が正当化される場合を含むことを意味する。このような実施形態では、方法それ自体ががん又はそのサブタイプの存在、非存在又は予後を決定するわけではないが、さらなる診断検査が必要である、又は有益となることを示し得る。したがって、NOCIVAは、上記がん又はそのサブタイプの存在、非存在又は予後の最終決定のために、1つ又は複数の他の診断方法又はマーカーと組み合わせて使用され得る。このような他の診断方法及びマーカーは、当業者に周知である。AMLに関して、このような他のマーカーには、それだけに限らないが、WT1、EVI1及びSETが含まれる。
【0038】
したがって、NOCIVAは、診断目的だけでなく、例えば、予後、予測、患者のグループ化又は層別化、経時的ながん進行の監視、起こり得るがんの寛解、再発又は再燃の監視、治療法選択、及び治療の監視にも使用され得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「予後」という用語は、疾患のありそうな経過又は臨床成績を指し、「予知する」及び「予後判定する」という表現は、疾患の将来の経過の予測を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「予後良好」という用語は、一定期間の疾患のありそうな好ましい経過を指す。例えば、疾患の中央成績と比較した場合の、「全生存期間の延長」、「無病生存期間の延長」、「無再発生存期間の延長」及び「無増悪生存期間の延長」が、予後良好の非限定的な例である。当の血液がん及び実施形態に応じて、予後良好は、例えば、診断後1年超、2年超、3年超、4年超又は5年超生存する少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の見込みを指し得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「予後不良」という用語は、一定期間の疾患のありそうな好ましくない経過を指す。例えば、疾患の中央成績と比較した場合の、「全生存期間の減少」、「無病生存期間の減少」、「無再発生存期間の減少」及び「無増悪生存期間の減少」が、予後不良の非限定的な例である。当の血液がん及び実施形態に応じて、予後不良は、例えば、診断後1年超、2年超、3年超、4年超又は5年超生存する60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満又は10%未満の可能性を指し得る。
【0042】
血液がんと診断された対象の予後不良の可能性などの、疾患の一定の臨床成績は、試験期間にわたる2つの実験アームにおける瞬間的リスクの比を指す「ハザード比」(HR)などの確率として表され得る。これは、任意の所与の時点での点推定を表す。
【0043】
したがって、予後不良に関して、例えば、特定のバイオマーカーレベルについてのHRリスク推定が1より大きい場合、これは、この特定のバイオマーカーレベルを有する対象が、特定のバイオマーカーレベルを有さない対象よりも予後不良のリスクが高いことを示す。対照的に、特定のバイオマーカーレベルについてのHRリスク推定が1未満である場合、これは、この特定のバイオマーカーレベルを有する対象が、特定のバイオマーカーレベルを有さない対象と比較して予後不良のリスクが低いことを示す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「95%信頼区間」(95%CI)という用語は、母集団の真の平均を含むのが95%確実であり得る値の推定範囲を指し、推定範囲は試料データの所定のセットから計算される。一般に、95%CIは、HRの精度を推定するために使用される。広いCIはHRの精度が低レベルであることを示し、狭いCIはHRの精度が高いことを示す。
【0045】
本明細書に記載される多変量解析(Cox比例ハザードモデル)により、NOCIVA発現レベルと臨床成績との間の統計学的に有意な関連が明らかになり、結果としてNOCIVA負荷が高い患者は、NOCIVA負荷が低い患者よりも全生存期間が短くなった(p=0.0205、HR:1.511;
図4D)。興味深いことに、このような関連はCIP2Aでは観察されなかった。実際、CIP2Aをバイオマーカーレベルとして使用した場合の全生存期間についてのHRリスク推定は1未満であり(p=0.0775、HR:0.173;
図4D)、CIP2A負荷が低い患者よりも、CIP2A負荷が高い患者について短い全生存期間のリスクが低下していることを示している。
【0046】
特に、NOCIVA mRNAの発現は、例えばHartmut Dohnerらによる「成人におけるAMLの診断及び管理:国際専門家パネルからの2017年ELN勧告(Diagnosis and management of AML in adults:2017 ELN recommendations from an international expert panel)」に記載されるAMLリスク群分類に依存するように見えないので、NOCIVA決定は、適切な治療手順を選択する際の臨床的意思決定を実質的に助けることができる。例えば、AMLを有する対象におけるNOCIVAの発現増加は、短い全生存期間、及びこのような対象を当技術分野で周知の治療様式である即時幹細胞移植に向けることが有益であり得ることを示す。他方、NOCIVAの発現が増加していないAML患者は化学療法のみで治療することで十分であるだろう。したがって、NOCIVAは、対象を予後不良又は予後良好の群に層別化する、ならびに対象を様々な治療様式のために層別化するために使用され得る。
【0047】
上記に従って、本発明は、AMLと診断された対象に治療を割り当てる方法であって、対象から得られた生体試料を、本NOCIVAポリペプチド又はポリヌクレオチドに特異的に結合する試薬(本明細書に提供される結合体など)と接触させるステップと;上記発現を関連対照と比較することによって、上記ポリペプチド又は上記ポリヌクレオチドの発現が上記試料中で増加しているかどうかを測定するステップと:上記発現が増加している場合、例えば幹細胞療法を含む治療法を割り当てるステップとを含む方法を提供する。
【0048】
本発明は、個々の患者のケアだけでなく、臨床試験のための患者のより良い選択及び層別化にも利点を提供する。例えば、NOCIVAの発現レベルに基づいてグループ化されたがん患者を、新たな医療手順又は薬物などの効率的な新たな個別化された治療ツールの開発を目的とした臨床研究に使用し得る。
【0049】
上記に従って、治療に対する反応の分析及び予測を、以下のコホートのいずれかで行うことができる:治療レジメンに有利に反応するコホート、治療レジメンに有利に反応しないコホート、治療レジメンに有意に反応するコホート、治療レジメンに有意には反応しないコホート、及び治療レジメンに不利に反応するコホート(例えば、1つ又は複数の副作用を示す)。これらのコホートは単なる例として提供され、他のコホート又はサブコホートを分析してもよい。したがって、対象をNOCIVA発現レベルについて決定して、彼/彼女が治療レジメンに有利にもしくは有意に反応するか、治療レジメンに有利にもしくは有意に反応しないか、又は治療レジメンに不利に反応するかどうかを予測することができる。対象ががん治療に積極的に反応する可能性が高い場合、上記対象をそれに応じて治療することができる。他方、対象ががん治療に否定的に反応する可能性が高い(すなわち、正の効果を示さない、又は有害副作用を示す)場合、一連の代替治療を適用することができる。
【0050】
したがって、本発明は、上に示される目的のための種々の方法又はアッセイを提供する。これらの方法又はアッセイは、当の対象から得られた試料中のNOCIVA発現レベルの決定を伴う。本明細書で使用される場合、「NOCIVAの発現レベルを測定する」という用語、及び任意の対応する表現は、mRNA、cDNA又はタンパク質の量に基づいてNOCIVAを定量化又は半定量化することを指す。「レベル」という用語は、「量」及び「濃度」という用語と互換的であり、絶対量又は相対量を指すことができる。NOCIVA発現を測定することは、NOCIVAの非存在又は存在を定性的に測定することも含み得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、NOCIVAの相対発現レベルが、NOCIVA発現と、以前から知られているCIP2A形態、すなわちエクソン1~21を有するCIP2Aの発現の相対比に基づき得る。CIP2Aの発現レベルは、例えば、エクソン13(CIP2Ae13)、エクソン16(CIP2Ae16)又はエクソン20(すなわち、CIP2Ae20)の発現レベルに基づいて決定され得る。好ましくは、NOCIVAとCIP2Aの相対発現比は、同じ細胞におけるNOCIVAとCIP2Aの発現レベルを測定することに基づく。いくつかの実施形態では、CIP2Ae13が、エクソン13とハイブリダイズする5’プライマー及びエクソン14とハイブリダイズする3’プライマーを使用することによって決定され;CIP2Ae16が、エクソン16とハイブリダイズする5’プライマー及びエクソン17とハイブリダイズする3’プライマーを使用することによって決定され;CIP2Ae20が、エクソン20とハイブリダイズする5’プライマー及びエクソン21とハイブリダイズする3’プライマーを使用することによって決定される。
【0052】
いくつかのさらなる実施形態では、NOCIVAの発現レベルが、同じ細胞における、NOCIVAの発現レベルと適切なハウスキーピング遺伝子の発現レベルとの間の相対比として決定され得る。適切なハウスキーピング遺伝子の非限定的な例としては、GAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)、ACTB(アクチン、β)、RRN18S(18SリボソームRNA)、PGK1(ホスホグリセリン酸キナーゼ1)、PPIA(ペプチジルプロリルイソメラーゼA(シクロフィリンA))、RPL13A(リボソームタンパク質L13a)、RPLP0(リボソームタンパク質、ラージ、P0)、B2M(β-2-ミクログロブリン)、YWHAZ(チロシン3-モノオキシゲナーゼ/トリプトファン5-モノオキシゲナーゼ活性化タンパク質、ζポリペプチド)、SDHA(コハク酸デヒドロゲナーゼ)、TFRC(トランスフェリン受容体(p90、CD71))、ALAS1(アミノレブリン酸、δ-、シンターゼ1)、GUSB(グルクロニダーゼ、β)、HMBS(ヒドロキシメチルビランシンターゼ)、HPRT1(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1)、TBP(TATAボックス結合タンパク質)及びTUBB(チューブリン、βポリペプチド)が挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましいハウスキーピング遺伝子が、GAPDH及びACTBを含む。
【0053】
検出されたNOCIVA発現レベルが、がん又はその予後を示すかどうかを決定するためには、これを関連対照と比較するべきである。対照レベルが分かると、決定又は検出されたNOCIVAレベルをそれと比較することができ、標準的な統計学的方法を使用して差の有意性を評価することができる。いくつかの実施形態では、決定されたNOCIVAレベルと対照レベルとの間の統計学的に有意な差が、がん又はそのサブグループ(例えば、予後又は治療に対する予想される反応に基づくサブグループ)の存在を示す。いくつかのさらなる実施形態では、対照と比較する前に、NOCIVAレベルを標準的な方法を使用して正規化する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「対照」という用語は、多くの異なる種類の対照を指し得る。例えば、「陰性対照」又は「正常対照」は、同じ対象の非がん性組織から、又は見かけ上健康な個体もしくは見かけ上健康な個体のプールから得られた試料から決定される、単独で又は別のマーカーもしくは対照と比較した、NOCIVAの対照レベルを意味する。「陽性対照」は、例えば、同じ対象のがん性組織、又は目的のがんと診断された個体もしくは以前がんと診断された個体のプールから得られた試料を意味し得る。当のがん又はそのサブグループの存在、非存在又は予後を示す所定の閾値も、対照、すなわち「閾値対照」として使用され得る。したがって、閾値は、正常な非がん性細胞におけるNOCIVAの発現レベルを指す、見かけ上健康な個体のプールから得られた陰性対照値であり得る;又は、閾値は、がん性組織中のNOCIVAの発現レベルを指す、がんを有する個体のプールから得られた陽性対照値であり得る。
【0055】
「内部対照」は、CIP2Aの発現レベル及び/又はNOCIVAの発現レベルと同じ細胞から決定された1つ又は複数の適切なハウスキーピング遺伝子の発現レベルを指し得る。換言すれば、内部対照は、分析される試料中のNOCIVAを定量化することを可能にするローディング対照を意味し得る。内部対照の例、換言すれば「ローディング対照」又は「定量対照」には、ハウスキーピング遺伝子及びハウスキーピングタンパク質が含まれる。NOCIVAの量は、CIP2Aの別の形態などの「対照バイオマーカー」と比較して測定することもできる。「対照比」は、NOCIVAと任意の選択された対照の関係、例えば、NOCIVAとCIP2Aの別の形態の比を意味する。
【0056】
いくつかの好ましい実施形態では、CIP2Ae20などのCIP2Aの別の形態を対照として使用して、NOCIVAの決定された発現レベルをCIP2Ae20の決定された発現レベルと比較して、NOCIVA発現とCIP2Ae20の発現の比を得る。次いで、上記得られた比を、上記所定の閾値と比較して、患者のがん状態を推定する。
【0057】
適切な対照又は閾値を決定するための統計学的方法は、当業者には容易に明らかであるだろう。対照又は閾値は、必要に応じて、同じ年齢群、人口統計学の特徴及び/又は疾患状態等の対象の試料から決定されたかもしれない。陰性対照又は閾値は、当のがん又はそのサブタイプを発症していない単一の個体に由来し得る、又は2人以上のこのような個体からプールされた値であり得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「見かけ上健康な」という用語は、当のがんもしくはそのサブタイプの徴候を示さず、したがって、当の上記がんもしくはそのサブタイプを発症していないと考えられる、及び/又は当の上記がんもしくはそのサブタイプを発症しないと予測される個体又は個体のプールを指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。この用語には、それだけに限らないが、家畜、ペット及びスポーツ用動物などの飼育動物などの哺乳動物が含まれる。このような動物の例としては、ネコ及びイヌなどの肉食動物、ならびにウマなどの有蹄動物が挙げられる。したがって、本発明は、ヒト医学と獣医学の両方に適用され得る。本明細書では、「対象」、「患者」及び「個体」という用語が互換的である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、NOCIVA発現レベルを測定する対象から得られた生体試料又は臨床試料を指す。典型的には、試料は、がん性組織又はがん性であると疑われる組織の試料である。白血病などの血液がんの場合、試料は、例えば生検又は穿刺によって得られた血液試料又は骨髄試料であり得る。試料は、パラフィン包埋組織試料であってもよい。血液試料の例としては、全血試料、血清試料、血漿試料、分画もしくは非分画末梢血単核球(PBMC)の試料、又は他の精製された血液細胞型の試料が挙げられる。
【0061】
「試料」という用語は、それだけに限らないが、細胞集団などの試料の一定の成分についての遠心分離、濾過、沈殿、透析、クロマトグラフィー、試薬による処理、洗浄又は濃縮を含む、その調達後に適切な方法で操作又は処理された試料も含む。
【0062】
本明細書で使用される場合、「発現増加」という用語は、関連対照と比較した試料中のバイオマーカーの量の増加を指す。上記増加は、当技術分野で知られている標準的な方法に従って、定性的及び/又は定量的に測定することができる。試料中のバイオマーカーの量又はレベルが、例えば、対照試料中の同じバイオマーカー(NOCIVA)又は対照バイオマーカー(例えば、CIP2Aもしくはハウスキーピング遺伝子)の対照値又は量の少なくとも約1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、9倍、倍倍、10倍、20倍又は30倍である場合、発現が増加している。いくつかの実施形態では、「発現増加」という用語は、関連、好ましくは陰性対照のレベル又は量と比較した、バイオマーカーのレベル又は量の統計学的に有意な増加を指す。陰性対照と比較した発現増加は、対象が予後不良である、又はそのリスクが高いことを示す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「発現が増加していない」という用語は、分析される試料と関連対照の両方で本質的に同じであるバイオマーカーの発現レベルを指す。陰性対照と比較して発現が増加していないとは、対象が予後不良でない、又はそのリスクがないことを示す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「発現減少」という用語は、関連対照と比較した試料中のバイオマーカーの量の減少を指す。上記減少は、当技術分野で知られている標準的な方法に従って、定性的及び/又は定量的に測定することができる。試料中のバイオマーカーの量又はレベルが、例えば、対照試料中の同じバイオマーカー又は対照バイオマーカー(例えば、CIP2Aもしくはハウスキーピング遺伝子)の対照値又は量の少なくとも約1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、9倍、倍倍、10倍、20倍又は30倍低い場合、発現が減少している。いくつかの実施形態では、「発現減少」という用語は、関連対照のレベル又は量と比較した、バイオマーカーのレベル又は量の統計学的に有意な減少を指す。陽性対照と比較した発現減少は、対象が予後不良でない、又はそのリスクがないことを示し得る。
【0065】
がんについて診断される、がんについて予後判定される、がん進行について監視される、起こり得るがんの寛解、再発もしくは再燃について監視される、治療法の選択を受ける、治療に対する反応について監視される、又は関連するがん関連の目的のためにグループ化もしくは層別化される対象から得られた試料中のNOCIVAの発現レベルの決定は、この目的に適したいずれかの利用可能な又は将来の手段によって測定することができる。上記決定は、当技術分野で周知のように、様々な分子レベル、好ましくはmRNA、cDNA又はタンパク質レベルで実行され得る。本発明は、いかなる決定技術にも限定されない。したがって、異なる実施形態では、NOCIVAの発現について生体試料又は臨床試料を分析するための様々な手段又はこれらの組み合わせが使用され得る。
【0066】
一態様では、本発明は、NOCIVAを特異的に認識するが、CIP2Aの他の形態、すなわちエクソン13を超えるエクソンを含むCIP2A mRNAによってコードされるCIP2Aポリペプチドを認識しない抗NOCIVA抗体を提供する。したがって、本抗NOCIVA抗体の好ましいエピトープは、配列番号2のアミノ酸546~558によって形成される配列に対応する又は重複する配列の5~20個の連続アミノ酸を含むポリペプチドを含む。
【0067】
提供される抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、組換え抗体、一本鎖抗体、又は機能的抗体フラグメント、例えばFab、Fab’、F(ab’)2又はFvであり得、これらの全てが「抗体」という用語に包含される。
【0068】
本発明による抗NOCIVA抗体は、種々の技術又はこれらの任意の適切な組み合わせによって得ることができる。例えば、抗体は、伝統的な免疫化方法、CDRグラフト、インビトロタンパク質発現、無細胞タンパク質発現、無細胞翻訳もしくは無細胞タンパク質合成によって産生され得る、又は例えばファージディスプレイに基づく戦略を使用することによって、組換え発現ライブラリーから得られえる。機能的抗体フラグメント及び一本鎖抗体は、当技術分野で周知にように、組換えDNA技術によって、又はインタクト免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的分離によって産生され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、本抗NOCIVA抗体が、精製、単離、固定化及び/又は検出を容易にする1つ又は複数のペプチド又は小タンパク質タグにコンジュゲートもしくは他の方法で付着され得る、又はこれとの融合体として産生され得る。精製又は固定化の目的に適したアフィニティータグの非限定的な例としては、ポリヒスチジンタグ(Hisタグ)、ヘマグルチニンタグ(HAタグ)、グルタチオンSトランスフェラーゼタグ(GSTタグ)及びビオチンタグが挙げられる。適切な検出タグには、GFPなどの蛍光タンパク質、及び発色基質との接触時に着色生成物を生成する酵素タグが含まれる。適切な酵素タグの非限定的な例としては、アルカリホスファターゼ(AP)及び(西洋ワサビ)水素ペルオキシダーゼ(HRP)が挙げられる。また、ビオチン、アビジン及びストレプトアビジンなどの他のタグを検出目的で使用することもできる。これらは、酵素、フルオロフォア又は他のレポーター分子にコンジュゲートしたビオチン/アビジン/ストレプトアビジン結合タンパク質で検出することができる。このような検出可能及び/又は固定化可能な抗NOCIVA抗体を産生するための手段及び方法は、当技術分野で容易に利用可能である。
【0070】
本抗NOCIVA抗体は、上記で設定された任意の目的のためにタンパク質レベルでNOCIVA発現を検出するために使用され得る。これは、それだけに限らないが、下記の方法及びアッセイを含む当技術分野で利用可能な任意の適切な技術を使用することによって達成され得る。NOCIVAは細胞内タンパク質であるため、上記方法及びアッセイは、当技術分野で周知の手段及び方法によって、細胞を溶解もしくは破壊すること、細胞膜を透過処理すること、又はタンパク質を単離することを含み得る。
【0071】
一般に、タンパク質レベルでNOCIVA発現のレベルを測定することは、上記決定を必要とする対象から得られた試料を、結合体がNOCIVAと特異的に相互作用するが、そのアミノ酸配列が配列番号4に示される完全長CIP2Aとは相互作用しない条件下で、NOCIVAポリペプチドを特異的に認識する抗体などの結合体と接触させることと;上記相互作用(あれば)を検出することとを含み;上記相互作用の存在又は程度は、上記試料中のNOCIVAの存在又はNOCIVA発現のレベルと相関する。タンパク質レベルでNOCIVA発現を測定するのに適した抗体及びそのフラグメントの代替となる結合体には、それだけに限らないが、オリゴヌクレオチド又はペプチドアプタマー、受容体、及び生物学的に相互作用するタンパク質が含まれる。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、生体試料又は臨床試料中のNOCIVA発現を検出及び分析するためのイムノアッセイであって、NOCIVAに特異的に結合する抗体を用意するステップと;好ましくは透過処理又は破壊した細胞を含む試料を抗体と接触させるステップと;試料中のNOCIVAに結合した抗体の複合体の存在を検出するステップとを含むイムノアッセイを提供する。所望であれば、抗体を試料と接触させる前に、抗体を固体支持体に固定して、複合体の洗浄及びその後の検出を容易にすることができる。試料を抗NOCIVA抗体とインキュベートした後、混合物を洗浄し、形成された抗体-NOCIVA複合体を検出することができる。これは、例えば、検出可能な抗体、すなわち検出可能に標識された抗体、又は酵素で標識された抗体を使用し、複合体を検出試薬、すなわち酵素の基質とインキュベートすることによって達成することができる。あるいは、例えば、第2の標識された抗体を使用して、形成された抗体-NOCIVA複合体を検出する間接アッセイを使用して、NOCIVAを検出することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、NOCIVAの発現レベルが、非競合アッセイ形式を使用して決定され得る。試薬過剰アッセイ、サンドイッチアッセイ、イムノメトリックアッセイ(immunometric assay)又は2サイトアッセイ(two-site assay)としても知られている非競合イムノアッセイは、一般に、抗原の異なるエピトープを標的とする2つの抗体の使用を伴い、一方の抗体は抗原捕捉、他方は検出のための標識を行う。好ましくは、第1の抗体が本抗NOCIVA抗体であり、第2の抗体が配列番号2のアミノ酸1~545によって形成される配列内のエピトープを標的とするものである。このような第2の抗体は、CIP2AとNOCIVAの両方に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の抗体が捕捉抗体として使用され、第2の抗体が検出抗体として使用される。いくつかの他の実施形態では、第1の抗体が検出抗体として使用され、第2の抗体が捕捉抗体として使用される。当業者であれば、単独で又はCIP2Aの別の形態もしくは任意の他の対照に関連して、NOCIVAの存在、非存在又はレベルを測定するための結合アッセイを確立することが十分に実施し得る。したがって、抗体-NOCIVA複合体の形成は、いくつかの十分認識されている非競合免疫学的結合アッセイのいずれかを使用して測定することができる。有用なアッセイには、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの酵素免疫アッセイ(EIA);時間分解免疫蛍光アッセイ(TR-IFMA)などの蛍光免疫吸着アッセイ(FIA);化学発光イムノアッセイ(CLIA)及び放射免疫アッセイ(RIA)が含まれる。
【0074】
使用するアッセイの種類に応じて、第1の抗体もしくは第2の抗体のいずれか、又は両方を、それだけに限らないが、光学剤、例えば種々の有機及び/又は無機小分子と種々の蛍光タンパク質及びその誘導体を含む蛍光標識、燐光標識、化学発光標識及び発色標識;γ線、陽電子、βもしくはα粒子、又はX線を放出する放射性核種などの放射性標識、ならびにアルカリホスファターゼ(AP)及び(西洋ワサビ)水素ペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素を含む群から選択される検出可能な標識とコンジュゲート又は他の方法で会合することができる。上記会合は、例えば共有結合を介して直接的、又は例えば二次結合剤、キレート剤もしくはリンカーを介して間接的であることができる。検出可能な薬剤を抗体にコンジュゲート又は他の方法で会合するための技術は周知であり、抗体標識キットは数十の供給元から市販されている。抗体の一方又は両方はまた、組換え技術により、検出可能な標識又は検出タグを有する融合タンパク質として発現され得る。
【0075】
非競合イムノアッセイのいくつかの実施形態では、検出抗体が検出可能に標識される。いくつかの他の実施形態では、検出抗体が、検出可能な標識を含むさらなる抗体によって認識される。いくつかのさらに他の実施形態では、検出抗体が、検出可能な標識を含むさらなる抗体によって認識可能なタグを含む。いくつかのさらなる実施形態では、検出抗体及び上記さらなる抗体が、例えば感度を向上させるため、同じ標識で標識される。いくつかの他の実施形態では、検出抗体及び上記さらなる抗体が、異なる標識で標識される。
【0076】
本発明によるイムノアッセイは、ラテラルフローアッセイなどの固相イムノアッセイ、及び例えばマイクロタイタープレート、スティック、カード、アレイ、センサー、ビーズ又はマイクロビーズの形態の、ガラス、プラスチック、セラミック、金属などの固体表面、又は紙などの繊維状もしくは多孔質材料上で行われる従来のサンドイッチアッセイを含む。上記固相イムノアッセイは、不均一系であっても均一系であってもよい。不均一系アッセイでは、遊離抗原又は抗体が、例えば洗浄によって、形成された免疫複合体から物理的に分離されるが、多くの形態のバイオセンサーを含む均一系アッセイでは、このような分離は必要ではない。
【0077】
本均一系イムノアッセイは、固相アッセイ形式に限定されず、溶液中で行われる均一系イムノアッセイも包含する。このような溶液中イムノアッセイは、固定化ステップも洗浄ステップも必要とされず、それらを実施するのを単純かつ容易にするため、特に有利である。したがって、いくつかの実施形態では、イムノアッセイが液体ベースの均一系イムノアッセイである。
【0078】
上記のイムノアッセイのいずれかを、同じ試料中のCIP2Aの別の形態の発現レベルを測定するためのさらなるイムノアッセイと組み合わせて使用することができる。このような実施形態では、NOCIVAの決定された発現レベルを、CIP2Aの決定された発現レベルと比較して、NOCIVA発現とCIP2A発現の比を得る。上記比を測定することは、上に示されるいずれかの目的のために使用され得る。いくつかの実施形態では、関連対照のそれと比較した、NOCIVAとCIP2Aの比の増加が、予後不良を示す。
【0079】
上記目的に適した抗体には、CIP2Aを特異的に認識するが、NOCIVAを特異的に認識しないものが含まれる。このような抗体のエピトープは、エクソン13のC末端にある。換言すれば、エピトープが、配列番号4のアミノ酸546と905との間にある。CIP2Aの発現レベルが非競合イムノアッセイによって決定される場合、使用される第2の抗体は、配列番号4のアミノ酸領域1~545(NOCIVAのアミノ酸領域1~545に対応する、配列番号2)を標的とするものであり得る。このような第2の抗体は、CIP2AとNOCIVAの両方に特異的に結合する。
【0080】
タンパク質レベルでのNOCIVAの発現レベルを測定するための適切な方法のさらなる例としては、従来のウエスタンブロットアッセイ、ドットブロットアッセイ及び免疫組織化学に基づくアッセイ形式が挙げられる。さらに、例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)などのフローサイトメトリーを、抗体-NOCIVA複合体を検出するために使用することができる。さらに、タンパク質レベルでNOCIVAの発現レベルを測定するのに適した技術には、選択的反応モニタリング(SRM)、SWATH及びユニークなペプチドに基づくがん細胞試料からのマスサイトメトリーなどのMSベースの検出方法が含まれる。また、このような実施形態では、本方法が、NOCIVAの発現レベルをCIP2Aの発現レベルと比較するステップを含み得る。
【0081】
さらなる態様では、本発明は、例えば本明細書に開示される方法によって、核酸レベルでNOCIVA発現を測定するのに使用するための核酸結合体を提供する。このような結合体は、NOCIVA mRNA又はcDNAに特異的なプローブ、ならびにNOCIVAの特異的増幅のためのプライマーを含む。
【0082】
核酸レベルでNOCIVAの発現を測定するのに特に適した領域には、ポリAテールを含まないNOCIVA特異的配列(配列番号1のヌクレオチド1635~1983);新規なNOCIVAペプチドをコードする配列(配列番号1のヌクレオチド1636~1674);及びポリAテールを含まない3’UTR(配列番号1のヌクレオチド1675~1983)が含まれる。
【0083】
NOCIVA-mRNAの存在/非存在及び/又は量を決定するための1つの好ましい実施形態は、
a)対象から得られ、NOCIVA mRNAを含むことが疑われる生体試料を用意するステップと;
b)場合により、例えば、ランダム又はポリTプライマー又は配列特異的プライマーを使用して、mRNAのcDNAへの逆転写を実施するステップと;
c)場合により、もしあれば、上記試料中のNOCIVA特異的DNAを増幅するステップと;
d)上記作業に適したいずれかの選択された方法で、mRNA、cDNA又は増幅されたDNAなどのNOVICA特異的配列を検出するステップと
を含み、
ステップc)及びd)は別々に又は同時に実施することができる。
【0084】
他のヒトmRNAと比較してほとんどの部分でユニークであるNOCIVA mRNAの配列のために、多くの代替のオリゴヌクレオチド設計を本方法に使用することができる。当業者であれば、NOCIVAに特異的である、あるいは、例えば、NOCIVA及びCIP2Aのいくつかの他の形態を分離及び/又は定量化することができるアッセイを容易に設計することができる。
【0085】
このようなオリゴヌクレオチド、特にプローブを使用する適用可能な方法には、核酸の集合、例えば固体表面に付着したDNAスポットであるマイクロアレイが含まれる。各DNAスポットは、プローブ又は捕捉プローブとして知られる特異的DNA配列のオリゴヌクレオチドを含む。これらは、高ストリンジェンシー条件下で試料中の標的cDNA、mRNA又はcRNA(アンチセンスRNAとも呼ばれる)をハイブリダイズするために使用される遺伝子又は他のオリゴヌクレオチド(DNAもしくはLNA要素など)の短いセクションからなることができる。プローブ-標的ハイブリダイゼーションは、例えばフルオロフォア-、銀-又は化学発光-標識された標的核酸を検出して、試料中の相対存在量を測定することによって、検出及び/又は定量化することができる。いくつかのアレイ型では、表面結合プローブ-標的核酸相互作用を定量可能なシグナルに変換することができる認識要素(トランスデューサー)を組み込むことができる。利用可能ないくつかの様々な型のトランスデューサーの中で、特に電気化学的又は光学的検出に基づくトランスデューサーが当技術分野で一般的である。他の核酸分析方法と同様に、両型のセンサーは、標識フリー又は標識使用として実行することができ、洗浄の要件に基づいて不均一系アッセイ形式と均一系アッセイ形式に分割することもできる。
【0086】
1つの適切な用途は、DNAマイクロアレイのバリエーションであるNanoStringのnCounter技術である。これは、分子「バーコード」及び顕微鏡画像を使用して、1つのハイブリダイゼーション反応で最大数百ものユニークな転写産物を検出及びカウントする。それぞれの色分けされたバーコードが、目的の遺伝子に対応する単一の標的特異的プローブに付着している。いくつかの実施形態では、NanoStringなどのアレイベースの技術の使用が、NOCIVA発現を検出するために有益である。プローブとして本明細書に記載される任意のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを、他の実施形態でプライマーとして使用してもよく、逆もまた同様である。より一般的には、本発明は、NOCIVAポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド、すなわち、NOCIVA mRNA又はcDNAに相補的なポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを提供する。本NOCIVA特異的結合体は、当技術分野で周知のように、ならびに
図6及び表2に例示されるように設計され得る。NOCIVAを検出するのに適したプローブの非限定的な例としては、配列番号26~44に示される配列を含む又はからなるプローブが挙げられる。
【0087】
本NOCIVA特異的オリゴヌクレオチドは、酵素合成又は固相合成などの当技術分野で知られている任意のオリゴヌクレオチド合成方法によって生成することができる。固相合成を実行するための機器及び試薬は、例えば、Applied Biosystemsから市販されている。このような合成のための他の手段も使用することができる;オリゴヌクレオチドの実際の合成は、十分に当業者の能力の範囲内であり、確立された方法論を介して達成することができる。
【0088】
本発明はまた、本明細書に開示される核酸結合体又は標的核酸配列の相補的配列に関する。「相補的」という用語は当技術分野で周知であり、標的モチーフ配列中の核酸塩基アデニン(A)が対応する結合単位中で核酸塩基チミン(T)によって表される、又はその逆のワトソンクリック塩基対形成を意味する。したがって、標的モチーフ中の核酸塩基シトシン(C)は、対応する結合単位中で核酸塩基グアニン(G)によって表される、又はその逆である。換言すれば、例えば5’-T-T-C-A-G-3’に対する相補的配列は3’-A-A-G-T-C-5’である。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される核酸結合体がプライマーである。本明細書で使用される場合、「プライマー」という用語は、適切な条件下で標的配列にアニーリング(ハイブリダイズ)することができ、それによってDNA合成の開始点として役立つことができる二本鎖領域を作り出すことができるオリゴヌクレオチドを指す。本明細書で使用される場合、「プライマー対」という用語は、本明細書では、任意の利用可能な増幅技術、好ましくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって選択された核酸配列を増幅する際に一緒に使用される一対のオリゴヌクレオチドを指す。好ましくは、逆転写PCR(RT-PCR)をmRNA試料に行うべきである。他の種類の増幅方法には、それだけに限らないが、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、核酸配列ベースの増幅、転写媒介増幅、RNA技術のシグナル媒介増幅、ローリングサークル増幅、ループ媒介増幅、複数置換増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、単一プライマー等温増幅又は環状ヘリカーゼ依存性増幅が含まれる。当技術分野で一般に知られているように、プライマーは、選択された条件下でそれらの相補的配列に結合するように設計される。プライマー対は、5’プライマー、すなわち、「順方向プライマー」及び3’プライマー、すなわち、「逆方向プライマー」を含む。
【0090】
本オリゴヌクレオチドプライマーは、使用される特定のアッセイ形式に応じて、任意の適切な長さであり得る。典型的には、オリゴヌクレオチドプライマーが、10~40個、好ましくは15~35個より好ましくは20~30個のヌクレオチド長を有し、選択された核酸増幅システムに特に適するように適合され得る。当技術分野で一般的に知られるように、オリゴヌクレオチドプライマーは、その標的配列とのハイブリダイゼーションの融点(すなわち、融解温度、Tm)を考慮することによって設計することができる。非常に短いオリゴヌクレオチドでさえも十分に高い溶融温度が達成されるように、溶融温度を上げるための多くの方法が存在する。これらの方法には、例えば、ロックド核酸(LNA)又はマイナーグルーブバインダー(MGB)技術などの修飾ヌクレオチドの使用が含まれる。
【0091】
核酸アッセイでNOCIVA特異性を提供する方法がいくつか存在する。PCRなどの少なくとも2つのプライマーを使用するいくつかの実施形態では、ペプチドコード領域が試料中に存在する場合にのみ、NOCIVA特異的アンプリコンの産生がもたらされるように、少なくとも3’プライマーが、NOCIVAタンパク質のユニークなC末端領域、すなわち配列番号1のヌクレオチド1635~1674によって形成されるペプチドコードイントロン領域をコードする配列の少なくとも一部と特異的にアニーリング又はハイブリダイズするよう設計される。あるいは、3’プライマーが、完全長NOCIVA特異的核酸(ポリAテールを含まない)の別の部位又はNOCIVAの3’UTRに特異的に設計されている場合にも、同様の特異性が達成される、すなわち、これが、配列番号1のヌクレオチド1635~1983又は1675~1983によって形成される又はこれらと重複する配列の少なくとも一部と特異的にアニーリング又はハイブリダイズし得る。これは、タンパク質には存在しないが、NOCIVA mRNAのヌクレオチド配列がほとんどの部分でNOCIVAにユニークであるためである。あるいは、3’プライマーはまた、ペプチドコード領域とNOCIVAの3’UTRの境界と重複する配列番号1の配列と特異的にアニーリング又はハイブリダイズし得る。換言すれば、3’プライマーは、配列番号1のヌクレオチド1675~1983によって形成される配列に包含される、又はその中にある、又は重複する標的領域にハイブリダイズする。これに関連して、「に包含される」という用語は、プライマーが上記ヌクレオチドによって形成される配列全体とハイブリダイズするのではなく、標的配列に対応するその部分配列とハイブリダイズすることを意味する。この定義は、プライマーだけでなく、プローブなどの他の結合体にも適用する。
【0092】
プライマー対のNOCIVA特異性が3’プライマーによって提供されることで十分であるので、NOCIVAポリヌクレオチドに沿った5’プライマーのアニーリング部位をより自由に設計することができる。したがって、5’プライマーを、少なくとも部分的にNOCIVAとCIP2Aによって共有される核酸配列、すなわち、配列番号1のヌクレオチド1~1634に包含される核酸配列とハイブリダイズするように設計することができる。あるいは、5’プライマーはNOCIVA特異的であり得る、すなわち、配列番号1のヌクレオチド1635~1983によって形成されるイントロン領域の一部、配列番号1のヌクレオチド1636~1674によって形成されるNOCIVAペプチドコード配列の一部、配列番号1のヌクレオチド1675~1983によって形成されるNOCIVAの3’UTR領域の一部、又はNOCIVAのペプチドコード領域と3’UTRの重複する領域と特異的にアニーリング又はハイブリダイズするよう設計され得る。
【0093】
より一般的に言えば、本発明は、NOCIVAの特異的増幅のためのプライマー対を提供し、少なくとも3’-プライマーがNOCIVA特異的である、すなわち、完全長イントロン領域に完全に又は部分的に対応する配列番号1の部分配列、ペプチドコードイントロン領域、又は3-UTRイントロン領域(それぞれ、配列番号1のヌクレオチド1635~1983、1636~1674又は1675~1983)とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、5’プライマーと3’プライマーの両方がNOCIVA特異的である。いくつかの他の実施形態では、5’-プライマーが、NOCIVAとCIP2Aによって共有される配列の少なくとも一部と特異的にアニーリング又はハイブリダイズする配列、すなわち、配列番号1のヌクレオチド1~1634によって形成される配列を含む。典型的には、イントロンNOCIVA配列、すなわち、配列番号1のヌクレオチド1635~1983のみを標的とするように設計された場合に、アンプリコンの長さが約50ヌクレオチド~約350ヌクレオチドとなるように、プライマーが設計される。換言すれば、核酸増幅アッセイに使用する場合、プライマーは、約50~約350ヌクレオチドで変動する長さの増幅産物を産生する。
【0094】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明のプライマー対が、NOCIVA特異的イントロン配列のみ、すなわち、配列番号1のヌクレオチド1635~1983によって定義される配列の少なくとも一部を増幅する。このような実施形態では、プライマー対の3’-プライマーが、配列番号1のヌクレオチド1635~1983、1635~1674又は1675~1983によって形成される配列の10~40個、好ましくは15~35個、より好ましくは20~30個の連続ヌクレオチドと特異的にハイブリダイズし、5’-プライマーが、配列番号1のヌクレオチド1635~1983、1635~1674又は1675~1983によって形成される配列の10~40個、好ましくは15~35個、より好ましくは20~30個の連続ヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする。
【0095】
いくつかの他の実施形態では、アンプリコンがNOCIVAとCIP2Aによって共有される配列、すなわち、配列番号1のヌクレオチド1~1634によって形成される配列中の1つ又は複数のヌクレオチドに及ぶように、本発明のプライマー対が、配列番号1のヌクレオチド1635~1983によって定義されるNOCIVA特異的配列の一部のみを増幅する。このような実施形態では、プライマー対の少なくとも3’プライマーが、配列番号1のヌクレオチド1635~1983、1635~1674又は1675~1983によって形成される配列の10~40個、好ましくは15~35個、より好ましくは20~30個の連続ヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする。さらなる実施形態では、5’プライマーが、配列番号1のヌクレオチド1~1984、1~1635、1635~1983、1635~1674又は1675~1983によって形成される配列の10~40個、好ましくは15~35個、より好ましくは20~30個の連続ヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする。このような実施形態の多くでは、5’プライマー及び3’プライマーによって産生されるアンプリコンの長さが、約50~約2000、好ましくは約60~約1000、より好ましくは約70~約500、さらにより好ましくは、約75~約250ヌクレオチドと異なる。適切な5’プライマー及び3’プライマーのいくつかの非限定的な例は、表2に示され、配列番号5~25に示される配列からなる群から選択される5’プライマー、及び/又は配列番号45~65に示される配列からなる群から選択される3’プライマーが挙げられる。当業者であれば、両増幅プライマー、及び場合により1つ又は複数のプローブを所望のフレームに適合させるためのスペース要件を考慮に入れて、概説される実施形態のいずれかに従ってプライマーを設計することが十分に可能である。
【0096】
高い増幅効率が追求される多くの実施形態では、プライマー対の5’プライマー及び3’プライマーが、適合性の融解温度(Tm)、例えば、7℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは4℃未満、最も好ましくは3℃未満、理想的には3℃~0℃の間だけ異なる融解温度を有する。
【0097】
プライマー及びプローブなどのNOCIVA特異的オリゴヌクレオチドを設計する際に考えられるオフターゲッティングを考慮するための手段及び方法、ならびにNOCIVAの検出アッセイは、当技術分野で容易に利用可能である。使用するオリゴヌクレオチドの組み合わせ又はアッセイが、全体として、NOCIVA発現の信頼できる検出を可能にするのに十分なNOCIVA特異性を提供していれば十分である。
【0098】
増幅産物を検出するために使用される技術に応じて、プライマーは、検出のためにプローブが必要とされないように検出可能であり得る。あるいは、インターカレート標識(intercalating label)(例えば、SYBR Green)を使用することができる。融解曲線分析と組み合わせると、インターカレート標識を使用して、プローブを使用する必要なく、わずかな差であってもアンプリコンを検出及び識別することができる。本発明の例示的な実施形態では、NOCIVAとCIP2Aの両方に共通の5’プライマーを、その一方が各配列に特異的な2つの3’プライマーと組み合わせて、使用し得る。
【0099】
上記に従って、核酸レベルでのNOCIVAの発現を、核酸増幅を用いる又は用いない任意の適切な方法を使用して測定することができる。例えば、NOCIVA mRNAを、最初に逆転写酵素の助けを借りてその相補的cDNAに変換し、引き続いて例えば、それだけに限らないが、リアルタイムPCRとしても知られる定量的PCR(qPCR)を含む逆転写酵素PCR(RT-PCR)によってDNA増幅することができる。発現されたNOVICA mRNAポリヌクレオチド又は増幅産物又はその特性の存在、非存在又は濃度を、当技術分野で利用可能な方法に従って、例えばNOCIVA特異的捕捉又は検出プローブを使用することによって評価することができる。選択した方法に応じて、逆転写ステップ及び/又は核酸増幅ステップを用いて又は用いないで、核酸レベルでNOVICAの発現を測定するのに適したさらなる潜在的な方法には、それだけに限らないが、RNase保護アッセイ、分子ビーコンベースオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイ、オリゴヌクレオチドプローブ及び/又はインターカレート標識と組み合わせた融解曲線分析、ゲル電気泳動分析、サザンブロット法、DNAマイクロアレイ及びRNAマイクロアレイなどのマイクロアレイ、直接プロービング、ならびにシグナル蓄積アッセイが含まれる。
【0100】
したがって、いくつかの実施形態では、結合体が、本発明の種々の態様で利用することができるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは、プローブが、NOCIVAのユニークな配列領域、すなわちKIAA1524遺伝子のエクソン13と14との間のイントロン領域(配列番号1の核酸1635~1984に対応する)に完全に又は部分的に対応する配列又はその相補物と特異的にハイブリダイズする一本鎖ポリヌクレオチドである。本発明はまた、上に示される配列に相補的な配列にハイブリダイズするプローブを包含する。いくつかの実施形態では、プローブが、上記ユニークな配列領域全体に相補的ではなく、その一部のみに相補的である配列を含む、又はからなり得る。換言すれば、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、上記イントロン領域の少なくとも一部と重複する又はこれを含む核酸配列とハイブリダイズするように設計することができる。
【0101】
本NOCIVA特異的プローブは、長さが異なっていてもよい。当業者であれば、NOCIVAの発現レベルを測定するために適用される技術に適切又は最適である長さを有するプローブを容易に設計することができる。例えば、プローブの標的特異的部分は、8~40個、好ましくは15~35個、より好ましくは20~30個のヌクレオチド長を有し得る。いくつかの実施形態では、プローブが、当業者に明らかである中程度~厳しいハイブリダイゼーション条件下で、NOCIVAに特異的にハイブリダイズするが、以前から知られているCIP2Aアイソフォームにはハイブリダイズしない。したがって、このようなプローブは、NOCIVAのユニークなイントロン領域を含む又は少なくとも部分的にこれに重複する領域に特異的にハイブリダイズし、そのイントロン領域は350ヌクレオチド長であり、配列番号1のヌクレオチド1635~1983に対応する。このようなプローブは、例えば、どの発現又は増幅産物が存在するかに関係なく、NOCIVA特異的配列のみが検出される実施形態に有用である。
【0102】
他のいくつかの実施形態では、プローブが、NOCIVA特異的配列に先行する領域、すなわち、既知のCIP2Aアイソフォームにも少なくとも部分的に存在し、配列番号1のヌクレオチド1~1634のヌクレオチドに対応する領域とハイブリダイズ又は重複する。このようなプローブは、例えば、以前から知られているCIP2Aアイソフォーム及びNOCIVAが別々の反応ウェルで増幅され、例えば、定量化の理由のために、好ましくは同じ又は本質的に同様のプローブで検出される実施形態で有用である。このようなプローブはまた、例えばプローブの標的配列が存在する実施形態で有用である、すなわち、分析される試料がNOCIVA-ポリヌクレオチドを含んでいる場合にのみ、増幅産物が分析に利用可能である。
【0103】
なおさらなる実施形態では、少なくとも2つのプローブが使用され、一方が配列番号1のヌクレオチド1635~1983に対応するイントロンNOCIVA領域と特異的にハイブリダイズ又は重複し、他方が配列番号1のヌクレオチド1~1634に対応する全てのCIP2Aアイソフォームに共通の領域と特異的にハイブリダイズ又は重複する。このようなプローブは、例えば、異なるCIP2Aアイソフォームの増幅及び検出が多重化反応で実施される実施形態で有用である。このようなアッセイでは、例えば、エクソン1~13、14~19及び/又は20~21をカバーする領域に追加又は代替のプローブを設計することもできる。
【0104】
適切なプローブのいくつかの非限定的な例を表2に示す。
【0105】
本NOCIVA特異的プローブを本プライマー対の使用を伴う方法で使用する場合、いくつかの実施形態では、その溶融温度が、使用されるプライマー対の融解温度と適合するようにプローブを設計することが有利となり得る。
【0106】
本発明のNOCIVA特異的オリゴヌクレオチド、すなわちプライマー及び/又はプローブは、例えば、当業者に明らかであるように、修飾骨格、非天然ヌクレオシド間結合、及び/又は1つもしくは複数の塩基修飾もしくは置換を含むものを含む。さらに、プローブの化学組成は、例えば、DNA、RNA、ロックド核酸(LNA)もしくはペプチド核酸(PNA)であってもよい、又はこれらは、DNA、RNA、LNA、PNAもしくは他の核酸類似体の任意の数のモノマーを含む混合ポリマーで構成されてもよい。さらに、プローブは、マイナーグルーブバインディング(MGB)プローブとして構築されてもよい。
【0107】
上記に従って、本発明は、核酸レベルでNOCIVAの発現レベルを測定する方法を提供する。このような方法は、例えば、上記決定を必要とし、試料から得られるNOCIVA mRNA又は単離NOCIVA mRNAを含むことが疑われる対象からの試料を、NOCIVA mRNA又はNOCIVA特異的核酸アッセイ増幅産物と特異的に相互作用するプローブなどのオリゴヌクレオチド結合体と、結合体が上記意図した標的と特異的にハイブリダイズする条件下で接触させるステップと;ハイブリダイゼーション複合体があれば検出するステップとを含み、上記ハイブリダイゼーション複合体の存在は、上記試料中のNOCIVA mRNAの存在と相関する。
【0108】
ハイブリダイゼーション複合体の検出は、当技術分野で利用可能な任意の適切な方法によって行うことができる。いくつかのアッセイ方法では、ハイブリダイゼーション複合体を、ハイブリダイズしていない核酸から物理的に分離し(例えば、1つ又は複数の洗浄ステップを使用して過剰な標的mRNA/cDNA、プローブ、又は両方を洗い流すことにより)、次いで、複合体に結合した検出可能な標識を検出する。しかしながら、より頻繁には、ハイブリダイズした分子とハイブリダイズしていない分子の物理的な分離が必要とされない場合、均一系検出を使用する。核酸増幅アッセイでは、均一系検出を、増幅後の別のステップとして、すなわち、均一系エンドポイント検出を使用して実施することができる。アンプリコンの蓄積は、qPCRタイプの方法を使用して、増幅アッセイ中に均一に監視することもできる。種々の均一系検出方法は、プローブ使用形式と非プローブ使用形式にさらに分類することができる。
【0109】
検出可能な標識は、当技術分野で標準的に使用されている放射性、蛍光、生物学的又は酵素的タグ又は標識を指す。検出可能な標識を、オリゴヌクレオチドプローブ又は標的ポリヌクレオチドのいずれかにコンジュゲートすることができる。当業者に自明であるように、特定の検出可能な標識の選択は、それをプローブ又は標的配列に結合する様式、ならびに検出に使用される技術を指示する。本発明は、特定の核酸配列を検出するために標識の使用に特に依存しないが、このような標識は、検出の感度又は特異性を向上し、アッセイの多重化を単純化することによって有益となり得る。さらに、検出可能な標識は自動化をよりよく可能にし得る。
【0110】
インターカレート色素(例えば、SYBR Green)を使用して、PCRなどの核酸増幅反応中に目的のDNAフラグメントの増幅を検出することができる。インターカレーションは、適切なサイズ及び化学的性質のリガンドがDNAの平面塩基対の間に位置すると生じる。これらのリガンドは、主に多環式、芳香族及び平面であるので、しばしば適切な核酸染色を行う。蛍光強度は増幅中にそれぞれ増加し、別個のオリゴヌクレオチドプローブを必要とすることなくリアルタイムで測定することができる。
【0111】
当業者に理解されるように、種々の対照及び添加剤を使用してハイブリダイゼーションアッセイの精度を向上することができる。例えば、試料をハイブリダイゼーションの前に無関係のプローブとハイブリダイズさせる、及び/又はRNAse Aで処理して、誤ったハイブリダイゼーションを評価する、又は非特異的もしくは望ましくない効果を防止することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、上記の検出方法が、容易に入手可能である、又は当技術分野で入手可能な手段及び方法を使用して設計することができるCIP2A特異的プライマー及び/又はプローブを使用することによって、CIP2Aの発現レベルを検出するステップを含み得る。NOCIVAの発現レベルをCIP2Aの発現レベルと比較することができ、NOCIVAの発現増加は予後不良を示す。
【0113】
いくつかの実施形態では、NOCIVAの発現を測定することが、配列決定技術によって実施される。この目的に適した多数の方法が当技術分野で記載されており、それだけに限らないが、従来のサンガー法及び次世代シーケンシング(NGS)技術が含まれる。本実施形態は、いかなるブランド化技術にも限定されない。
【0114】
NOCIVAの存在又は量が存在する場合、配列決定によって検出する、本発明のいくつかの実施形態により使用するのに適した代表的な商用プラットフォームは、Illuminaの合成による配列決定(SBS)技術、特にTruSeq(登録商標)技術である。TruSeq(登録商標)技術を適用するには、目的の領域の上流及び下流にハイブリダイズする2つのオリゴヌクレオチドプローブを設計及び合成する必要がある。各プローブは、ユニークな標的特異的配列及びユニバーサルアダプター配列を含む。伸長-ライゲーション反応を使用して2つのプローブを合体し、共通の末端を有する新たなテンプレート分子のライブラリーを作成する。次いで、アダプターがライゲーションされたDNAをPCR増幅に供し、両端にインデックス及びシーケンスプライマーを付加する。次いで、成長中のDNA鎖に組み込まれる単一塩基の検出を可能にする可逆的ターミネーターに基づく方法を利用して、MiSeq(登録商標)シーケンサーなどの任意の適切な機器によって配列決定を実施することができる。
【0115】
本配列決定目的に適した機器の非限定的な例としては、MiSeq(商標)、NExtSeq500(商標)及びHiSeq(商標)(例えば、HiSeq(商標)2000及びHiSeq(商標)3000)などのIllumina(登録商標)シーケンサー、ならびにIon Torrent(商標)シーケンサー及びIon Proton(商標)シーケンサーなどのLife Technologiesのシーケンサーが挙げられる。これらの機器のいずれかを利用するには、適切な配列決定技術及び化学を使用する必要があることを理解すべきである。
【0116】
NGS技術に関連するいくつかの実施形態では、NOCIVAバリアントmRNAの検出が、Illumina HiSeq(商標)3000プラットフォーム、150bpの読み取り長及びペアエンドライブラリーで実施されるものなどのディープシーケンシングで可能である。
【0117】
NGSベースの技術のいくつかの実施形態では、使用される第1のプローブが、配列番号1のヌクレオチド1~1634に包含される核酸配列、すなわちKIAA1524のエクソン1~13に対応し、NOCIVAとCIP2Aによって共有される領域にハイブリダイズするが、使用される第2のプローブが、NOCIVAに特異的な核酸配列、すなわち、本出願の他の場所でより詳細に記載されるユニークなイントロン領域又は3’UTRのいずれかにハイブリダイズする。
【0118】
NOCIVAの発現レベルを検出するのに適した他の方法には、それだけに限らないが、RNAscope(登録商標)(Advanced Cell Diagnostics、ACD)及びViewRNA(商標)(Invitrogen)などのRNAインサイチューハイブリダイゼーション技術が含まれる。
【0119】
上記に従って、本発明は、それだけに限らないが、それを必要とする対象のがんを予後判定、検出、スクリーニング、診断又は監視することを含む、上に示されるいずれかの目的のための方法であって、上記対象から得られた試料を、本NOCIVAポリペプチド又はNOCIVAポリヌクレオチドに特異的に結合する試薬と接触させるステップと;上記試薬の結合に基づいて、上記ポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現レベルを測定するステップと;決定された発現レベルを関連対照と比較するステップとを含み;上記ポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現増加は予後不良を示す方法を提供する。典型的には、上記試薬が、本発明によるNOCIVA特異的結合体、例えば抗NOCIVA抗体又は少なくとも1つのNOCIVA特異的オリゴヌクレオチド、例えばプローブ及び/又はプライマー対である。
【0120】
さらなる態様では、本発明は、上に示されるいずれかの目的のために、生体試料又は臨床試料中のNOCIVAの発現レベルを検出するためのキットを提供する。好ましくは、キットが、NOCIVA特異的結合体、例えば抗NOCIVA抗体又は少なくとも1つのNOCIVA特異的オリゴヌクレオチド、例えばプローブ及び/又はプライマー対を含む。いくつかの実施形態では、結合体が、検出可能な標識を含み得る。当業者であれば、NOCIVAの発現レベルの決定を行うための所望の技術に応じて、キットに含まれるべき任意のさらなる試薬を容易に測定することができる。したがって、キットは、例えばイムノアッセイ、例えばELISA、ウエスタンブロット、免疫組織化学アッセイ、核酸増幅アッセイ、シグナル増幅アッセイ、インサイチューRNAハイブリダイゼーションアッセイ、質量分析アッセイ又は配列決定アッセイを実施するための少なくとも1つの試薬をさらに含み得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、適切な対照試薬又は試料又は閾値がキットに含まれ得る。キットはまた、本開示の方法のいずれかを実施するためのコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータ可読媒体を含み得る。
【0122】
技術が進歩するにつれて、本発明の概念を種々の方法で実施することができることは、当業者に自明である。本発明及びその実施形態は、下記の例に限定されず、特許請求の範囲内で変化し得る。
【0123】
実験部
材料及び方法
3’RACE及び5’RACE
Macherey-Nagel NucleoSpin RNA IIキットで抽出した全RNAをRACE実験のテンプレートとして使用した。3’末端と5’末端の両方のcDNA増幅のために、Invitrogen 3’RACE(カタログ番号183743-019)及び5’RACE(カタログ番号18374-058)キットを製造元のプロトコルに従って使用した。複数の遺伝子特異的プライマー(GSP)を設計し、cDNA末端の適切なCIP2A関連増幅に使用した。増幅した配列をアガロースゲルに泳動し(予測フラグメントサイズに結合した割合)、切断し、DNA抽出し(NucleoSpin(登録商標)Gel及びPCR Clean-up、Macherey-Nagel)、分析用にDNA配列決定した。シーケンシングプライマーを、GSPの下流になるように設計した。
【0124】
RNA単離及びcDNA合成
全RNAを、細胞株又は抽出された単核細胞(患者の骨髄試料)の細胞ペレットから単離した。細胞株からの全RNAをNucleoSpin RNA IIキット(Macherey-Nagel)で抽出し、患者の試料から、E.Z.N.A.(登録商標)全RNAキットI(OMEGA bio-tek)を使用して、製造元の指示に従って単核細胞からの全RNAを単離した。単離後、NanoDrop装置(ND-1000;NanoDrop Technologies)を使用してRNA濃度を測定した。
【0125】
出発材料として1μgの全RNAを使用して、全ての試料についてのcDNA合成を実施した。M-MLV逆転写酵素、Rnase(H-)(M3682、Promega)、ランダムプライマー(C1181、Promega)、RNasinリボヌクレアーゼ阻害剤(N2511、Promega)及びdNTPミックス(それぞれ10mM、番号R0192、Thermo Scientific)を使用して、細胞株のcDNAを合成した。SuperScript III逆転写酵素(18080093、Invitrogen)、ランダムプライマー(C1181、Promega)、RiboLock(tm)リボヌクレアーゼ阻害剤(番号EO0381、Thermo scientific)及びdNTPミックス(100mM、BIO-39028、Bioline)を使用して、患者試料のcDNAを合成した。温度及び体積を含むRT反応を、酵素の製造元の指示に従って実施した。
【0126】
定量的リアルタイムPCR
各遺伝子特異的アッセイのプライマーを、可能であれば、ゲノムDNAの増幅を回避するために、異なるエクソン配列に配置されるように設計した。各反応のプライマー濃度は300nM、プローブ濃度は200nMであった。qPCR反応の特異性を、アガロースゲル電気泳動及び融解曲線分析によって検証した。予想されるサイズの1つのバンド及び単一ピークがそれぞれ必要であった。製造元の指示に従って、KAPA PROBE FAST qPCRキット(Kapa Biosystems)及び7900 HT FastリアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher)を使用して、標的cDNAの増幅を実施した。定量的リアルタイムPCRを以下の条件下で実行した:95℃で10分間、引き続いて95℃で15秒と60℃で1分間の45サイクル。相対遺伝子発現データを、SDSソフトウェア(バージョン2.4.1、Applied Biosystems)による2^-ΔΔC(t)方法を使用して、内因性ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びβアクチンの発現レベルに正規化した。結果は、少なくとも2つの独立した実験及び2つの技術的複製の平均から導出した。
【0127】
CIP2A e13アッセイのプライマー及びプローブの配列は、順方向cagtctggactgagaatattattgga(配列番号23)、逆方向ggcattgtttgctgctatacttt(配列番号66)、プローブtccactgc(配列番号42)であった。CIP2A e20アッセイのプライマー及びプローブの配列は、順方向gaacagataagaaaagagttgagcatt(配列番号67)、逆方向cgaccttctaattgtgcctttt(配列番号68)、プローブcttcctcc(配列番号69)であった。bアクチンアッセイのプライマー及びプローブの配列は、順方向tcacccacacrgtgcccatctacgc(配列番号70)、逆方向cagcggaaccgctcattgccaatgg(配列番号71)、プローブatgccctcccccatgccatcctgcgt(配列番号72)であった、GAPDHアッセイのプライマー及びプローブの配列は、順方向acccactcctccacctttga(配列番号73)、逆方向ttgctgtagccaaattcgttgt(配列番号74)、プローブacgaccact-ttgtcaagctcatttcctggt(配列番号75)であった。EVI1アッセイのプライマー及びプローブの配列は、順方向AGTGCCCTGGAGATGAGTTG(配列番号76)、逆方向TTTGAGGCTATCTGTGAAGTGC(配列番号77)、プローブCCCCAGTGAGGTATAA-AGAGGA(配列番号78)であった。WT1アッセイのプライマー及びプローブの配列は、順方向GGGCGTGTGACCGTAGCT(配列番号79)、逆方向CGCTATTCGCAATCA-GGGTTA(配列番号80)、プローブAGCACGGTCACCTTCGACGGG(配列番号81)であった。PME1アッセイのプライマー及びプローブの配列は、順方向acaggtttgcagaacccatc(配列番号82)、逆方向ggacagcaggtcactaacagc(配列番号83)、プローブtccagtgt(配列番号84)であった。ARPP19アッセイのプライマー及びプローブの配列は、順方向cagagggagcactatgtctgc(配列番号85)、逆方向gcttttaattttgcttcttctgct(配列番号86)、プローブユニバーサルプローブライブラリー(UPL)番号68であった。TIPRLアッセイのプライマー及びプローブの配列は、順方向catgatgatccacggcttc(配列番号87)、逆方向tcagggagagatggcatatgta(配列番号88)、プローブUPL番号81であった。使用したSETアッセイは、SET5-6-3、AIY9AXG、Applied Biosystemsであった。
【0128】
タンパク質の発現及び精製
ヒトCIP2Aの切断型ドメイン(1~560、1~330、561~905)及び完全長NOCIVAを、N末端GSTタグ及びその間にTEV切断部位を有するpGEX‐4T1ベクター(GE Healthcare)にクローニングした。全ての構築物を、LB培地で増殖させた大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞(Novagen)で過剰発現させた。細菌細胞を、OD600が0.5~0.7に達するまで37℃で培養し、次いで、0.2mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって16℃で一晩誘導した。細菌ペレットを回収し、超音波処理によって溶解した。GST融合タンパク質を、グルタチオンセファロース4Bカラム(GE17-0756-01、GE Healtcare)によって精製した。試料の純度を、SDS-PAGE及びクーマシーブリリアントブルーによる染色を使用して検証した。
【0129】
抗体
以下の抗体を使用した:マウスモノクローナル抗CIP2A(sc-80659、Santa Cruz);マウスモノクローナル抗ヌクレオリンC23(sc-17826、Santa Cruz)、4’6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、Life Technologies)、ECL HRP結合二次抗体(GE Healthcare)、Alexa Fluorコンジュゲート二次抗体(488抗ウサギ、594抗マウス、Life Technologies)。
【0130】
ウエスタンブロット
タンパク質抽出物を、変性条件下でSDS-PAGEを使用して分離し(4~20%Mini-PROTEAN TGX Gels)、PVDF膜(Bio-Rad Laboratories)に移した。膜を5%ミルク-TBST(トリス緩衝生理食塩水及び0.1%Tween 20)でブロッキングし、指示された一次抗体と4℃で一晩インキュベートし、次いで、ECL HRP結合二次抗体(GE Healthcare)とRTで1時間インキュベートした。ECL Plusウエスタンブロット試薬(GE Healthcare)を膜に添加し、フィルムを現像した。
【0131】
免疫染色
細胞を4%PFAにより室温で5分間固定し、洗浄し、PBS中0.2%Triton X-100+30%ウマ血清で15分間透過処理し、PBS中30%ウマ血清で室温で30分間ブロッキングした。細胞を洗浄し、次いで、PBS中30%ウマ血清に希釈した指示される一次抗体(1:100)で4℃で一晩染色した。次いで、細胞を洗浄し、Alexaコンジュゲート二次抗体(1:200)及び4’6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、核染色、1:10000)PBS中30%ウマ血清と室温で1時間インキュベートした。細胞の光学フィールドを、Zeiss Zeiss AxioVert 200M(Carl Zeiss)倒立蛍光顕微鏡で画像化した。
【0132】
免疫組織化学
組織材料を、標準的な組織学の慣例に従って調製した、すなわち、緩衝ホルマリン(pH7.0)に固定し、パラフィンブロックに包埋した。免疫組織化学(IHC)を3μmに切断した切片に実施した。抗原回復のために、組織切片を、電子レンジ中、クエン酸緩衝液(Dako REAL Target Retrieval Solution、S2031、Dako、Glostrup、デンマーク)で2回、それぞれ7分間処理した。IHCをLab Vision Autostainer 480(Thermo-Fisher Scientific、Fremont、CA、米国)を使用して行い、シグナルを、色素原としてジアミノベンジジンを用いて、製造元のプロトコル(DPVB+110HRP;Immunovision Technologies、Vision Biosystems、Norwell、MA、米国)に従って、PowerVision+ポリマーキットを適用して検出した。NOCIVA特異的抗体(2つ別個、ウサギポリクローナル、Biogenes)を1:2000の希釈で適用した。
【0133】
統計解析
統計解析及び比較を、JMP Pro 12プログラムを使用して実施した。連続変数を記述統計(中央値、四分位範囲及び範囲)によって要約し、頻度及び百分率をカテゴリーデータについて計算した。連続変数の場合、独立した試料間の比較にはマン・ホイットニーのU検定を使用し、対応のあるデータにはウィルコクソンの順位和検定を使用した。全生存期間関数をカプラン・マイヤー推定法によって推定し、群間の比較にはログ・ランク検定を使用した。多変量解析を実施して、遺伝子発現レベル(中央値より下又は上)と応答(OSについて死亡vs生存、再燃について再燃vs非再燃)の関係を調べた。全ての試験を、5%有意水準で両側とした。
【0134】
新規なCIP2AスプライシングバリアントNOCIVAの特定
CIP2Aの潜在的なmRNAバリアントを特定するために、cDNA末端PCRアッセイ(3’RACE及び5’RACE)の迅速な増幅を、ヒト細胞株mRNA試料に使用した。結果として、RT-PCR及び配列決定によりさらに検証した3つのCIP2A mRNAバリアントを特定した(
図1A)。1つのバリアント形態はCIP2Aエクソン1~19のみを含み、もう1つのバリアント形態はエクソン1~21を含んでいたが、3’UTRを欠いていた。NOCIVAと命名される新たなmRNA配列が特定され、これはエクソン13と14との間のイントロンの一部にC末端融合したCIP2Aのエクソン1~13を含んでいた。
図1Dは、選択的スプライシングによるKIAA1524遺伝子からのNOCIVA mRNA形成を示している。KIAA1524遺伝子エクソン13とエクソン14(
図1D中下線)の間のイントロン領域(
図1D中太字)は、スプライシング機構によって代替エクソンとみなされ、エクソン13の端に付着している。プレmRNAを処理してmRNAを成熟させた後、ポリ(A)テールをNOCIVA転写産物の3’末端に付着させる。よって、NOCIVA転写産物は、ユニークで、以前は未知の配列を形成した(
図1A及び
図1B)。興味深いことに、NOCIVA特異的イントロン配列はコーディングフレーム内にあり、CIP2A mRNA配列が先行し、13アミノ酸に対応する40ヌクレオチドの後に、古典的終止コドンTAAが続く(
図1B)。NOCIVAの潜在的3´UTRは、およそ350ヌクレオチド、引き続いてAATAAA配列、及び古典的ポリA配列からなる。したがって、NOCIVA遺伝子産物は、C末端に13個の新たなアミノ酸(NNKNTQEAFQVTS)を有する切断型CIP2Aをコードする(
図1B)。重要なことに、この13aaペプチド配列は、Blast相同性検索に基づくヒトプロテオームの既知のタンパク質配列と一致しない(表1)。NOCIVA発現についての検証PCRを、NOCIVAのユニークなC末端部分をコードするmRNAに特異的なプライマーを使用して、複数の細胞株で行った(
図1C)。その後、ゲルからの正しいサイズのバンドを配列決定して、PCR産物がNOCIVA mRNA産物を表すことを確認した。
【表1】
【0135】
がん細胞におけるNOCIVA発現
正常組織及びがん性組織におけるNOCIVA mRNAバリアントの発現を試験するために、正常細胞及びがん性細胞のパネルで2つのNOCIVA特異的プライマー-プローブセット(表2のプライマーとプローブのペア16及び17)を使用してqPCRを行った。患者由来のケラチノサイト(Ker)試料を、正常組織のモデルとして使用し、頭頸部扁平上皮がん(SCC)細胞試料を、がん性組織のモデルとして使用した。以前に、CIP2AがHNSCC試料で有意に過剰発現されることが示されており、その高発現はヒトHNSCCの患者の予後不良と相関している(Ventelaら、2015)。興味深いことに、NOCIVA発現も、Kerと比較してSCC試料における有意に上昇した発現を示した(
図2A)。
【0136】
次に、正常なヒト組織cDNAのパネルでCIP2A及びNOCIVAの発現を評価した(Human MTCパネルI&II、Clontech、カタログ番号636742&636743)。特に、CIP2Ae13、CIP2Ae20及びNOCIVA PCRプライマーを、発現レベルの潜在的な差が技術的なPCRアッセイ関連の理由による可能性を排除して、同様の増幅効率をもたらすよう最適化した。公開された証拠と一致して(Ventelaら、2012)、CIP2Aは、精巣を除く正常なヒト組織のほとんどで低レベルで発現されていた(
図2B)。興味深いことに、CIP2Aを特異的に増幅するがNOCIVAを増幅しないCIP2Aエクソン13プライマー(CIP2Ae13)は、CIP2Aエクソン20プライマー(CIP2Ae20)よりも著しく高い発現レベルを示した。CIP2Aと比較して、NOCIVAは正常なヒト組織全体で非常に低レベルの発現を示した(
図2B)。
【0137】
NOCIVA mRNAは全てのヒト正常組織で非常に低レベルで発現されたが、NOCIVA発現とCIP2A e13発現の相関により、NOCIVA発現がCIP2Aに対して比較的豊富な組織の分析が容易になった。分析した組織のうち、白血球が最高のNOCIVA/CIP2Ae13比を示した(
図2C)。したがって、正常組織とがん性組織との間で既に観察された差(
図2A)が他のがん型に関連するかどうかを調べるために、次に、リンパ系がんである急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び急性前骨髄球性白血病(APL)に焦点を当てた。特に、固形ヒトがんUT-7(HNSCC)、MCF-7(乳がん)及びHeLa(子宮頸がん)を表すがん細胞株と比較して、多くのAML細胞株だけでなく、CML細胞株もNOCIVA mRNAの明らかに高い発現を示した(
図2D)。さらに興味深いことに、UT-7よりも高いレベルでNOCIVAを発現したAML及びCML細胞株はまた、CIP2Ae20よりも比較的高いNOCIVAの発現を示した(
図2D)。実際、CIP2Ae20よりも高いNOCIVAの発現は、UT-7細胞でもある程度観察された。これらの結果は、AML及びCMLを含むリンパ系がんが、NOCIVAの発現が増加し、臨床的に関連し得るがん型からなることを明らかにしている。したがって、発がん性形質転換時に、完全長CIP2Aと比較してNOCIVAコード代替転写産物の発現を増加させるスプライシングスイッチがあると仮定する。AMLにおけるNOCIVAの過剰発現を検証するために、AML診断患者の骨髄試料の小コホートを分析し、それらのNOCIVAレベルをケラチノサイト又はHNSCC細胞の平均発現と比較した。特に、AML患者試料の6/8が、HNSCC細胞から見られる平均レベルよりも明らかに高いNOCIVAの発現を示した(
図2E)。
【0138】
ヒトリンパ系診断試料におけるNOCIVA過剰発現
AML患者試料におけるNOCIVA及びCIP2A mRNAの状態をさらに検証するために、診断AML患者の骨髄試料のより大きな試料パネルでqPCRを使用した。試料パネルは、2000年1月~2010年7月の間に収集し、18~65歳の、トゥルク大学中央病院(TYKS)で初発AML又は二次性AMLと診断された合計93人の患者からなる。ここで説明する試料収集と発現プロファイリングの両方について、有効な倫理的許可が得られた。各試料の発現正規化のためのハウスキーピング遺伝子としてGAPDH及びb-アクチンを使用した。AMLにおける過剰発現の程度を推定するために、AML試料におけるNOCIVAとCIP2A e20の両方の発現を、市販の正常な骨髄(BM)対照試料(Clontech)におけるこれらの遺伝子のレベルに正規化した。CIP2A及びNOCIVAに加えて、既知のAMLマーカーであるWT1とEVI1の発現、及び以前にAMLに関連付けられた他のPP2A阻害剤タンパク質、SETについて試料を分析した(Cicconeら、2015)。ほぼ全ての患者が正常な骨髄試料と比較して低レベルのCIP2Ae13又はCIP2Ae20を発現したが、AML試料の合計78%がNOCIVAの過剰発現を示した(
図3A及び
図3B)。正常な骨髄試料の2倍を超えるNOCIVA過剰発現を示す患者の割合は68%であった。WT1、EVI1及びSETは、公開された文献に一致する発現パターンを示した。
【0139】
ヒトAML診断試料におけるNOCIVA発現の臨床的関連性
上記で分析した93人の患者のうち、80人の患者の臨床フォローアップ情報が利用可能であった。その遺伝的プロファイルに基づく臨床的に使用されるリスク群へのこれらの患者の分布を
図4Aに提示する。全生存期間(OS)についての多変量解析では、診断年齢、及び中程度(リスク群2)リスク群と有害(リスク群3)リスク群の両方が、短い患者の生存期間と有意に相関していた(
図4B)。次に、NOCIVA、CIP2Ae13、CIP2Ae20、WT1、EVI1又はSETの発現がリスク群と関連するかどうかを評価した。全てのリスク群間の差と比較した場合、唯一の統計学的に有意な関連性がEV1発現で見られた(
図4C)。これらのデータは、NOCIVA発現が現在使用されているAMLリスク群分類と独立していることを示している。重要なことに、高いNOCIVA発現は、多変量解析の短いOSと有意に相関し、ハザード比がEVI1の発現よりも高かった(1.511対1.265)(
図4D)。代わりに、非常に興味深いことに、低いCIP2Ae13発現は、ハザード比0.173でより良好な患者の生存期間の境界の有意な予測因子であった(
図4D)。NOCIVA mRNA発現レベルを中央値と比較して高と低の2つの群に分けて使用した患者の全生存期間のカプラン・マイヤー分析では、NOCIVAの高発現患者も有意に短い生存期間を示した(
図4E、p=0.022)。最後に、高いNOCIVAは短いOSと関連しているが、低いCIP2Ae13はむしろ良好なOSと関連しているように見えるため、高いNOCIVA/CIP2Ae13比が短いAML患者のOSを予測する新規な診断マーカーとして機能することができるかどうかを試験した。
図4Fに示されるように、これはNOCIVA/CIP2Ae13比が多変量解析で短いOSと統計学的に非常に有意な関連を示した場合に当てはまる。
【0140】
Primer3Plus、IDT PrimerQuest Tool及びRoche Assay Design Centerを使用して、
図6に例示される一般的なラインに従って、NOCIVA特異的cDNAの増幅及び検出のためのプライマーとプローブ配列の様々なセットを設計した。設計はPrimer3Plusの提案を利用して手動で行った、又は使用したオリゴヌクレオチド設計プログラムによって推奨された。融解温度を、アッセイの設計中にプログラムによって計算した。アッセイを、主にqPCR設定で使用されるように設計したが、伝統的なPCRのための追加のアッセイもPrimer3Plusで設計した。プライマーを、典型的には70~150bpの産物を増幅するように設計した。典型的には、プライマー長を18~23bp、プライマーTmを58~62℃、プライマーGC%を30~80、プライマー対の最大Tm差を3℃に設定した。典型的には、プローブ長を18~27bp、オリゴTmを60~68℃、オリゴGC%を20~80に設定した。マイナーグルーブバインディング(MGB)又はロックド核酸(LNA)プローブを設計する場合、化学修飾がプローブTmを68~70℃近くに上昇させるように、プローブのTmを60℃に近いと計算した。MGBアッセイ設計はPrimer3Plusを使用して手動で行い、LNAアッセイ設計はRoche Design Centreによって自動的に行った。Roche Design Centreは、設計にRocheのユニバーサルプローブライブラリーを使用する。各アッセイ設計の配列、融解温度及びプローブ化学の詳細を表2に示す。
【表2】
【0141】
CIP2Aエクソン16アッセイの開発及びNOCIVA/CIP2Ae16比に基づく既存の結果の再評価
CIP2Aを、エクソン16(CIP2Ae16)の存在に基づいてNOCIVAと識別することができる。この目的のために、以下に記載されるアッセイを開発する。Life Technologies製のCIP2Aエクソン16、Hs00405413_m1用のTaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイはすでに存在しており、これも同じ試料材料で試験する。あるいは又はさらに、CIP2Aを、上記の例に記載されるように、CIP2Ae13又はCIP2Ae20に基づいてNOCIVAと識別することができる。
【0142】
RNeasyミニキット(Qiagen)を使用して全RNAを単離する。cDNAを、SuperScriptIII逆転写酵素(Invitrogen)を使用して、製造元の指示に従って合成する。CIP2A e16の発現の定量化を、TaqMan Gene Expression Assay(Applied Biosystems)を使用して実施する。グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ及びβアクチンを内部対照として使用する。KAPA PROBE FAST qPCRキットを、qPCR反応に使用し、QuantStudio(商標)12K FlexリアルタイムPCRシステムをプレート分析に使用する。PCR反応サイクル:1:95℃ 10分、2:95℃ 15秒、3:60℃ 1分;ステップ2~3を45回繰り返す。相対遺伝子発現データの分析を、Thermo Fisher Cloudソフトウェアによる2-ΔΔCT法を使用して実施する。遺伝子を、その発現値が、正常なBM対照試料の分析によって定義される(Clontech、Human Bone Marrow total rna)各遺伝子について確立されたカットオフ値(平均+3 s.d.)よりも高い又は低い場合、脱制御されているとみなす。
【0143】
慢性骨髄性白血病細胞及び他の血液悪性腫瘍におけるNOCIVA Taqman
Roche Design Centreで設計されたTaqMan遺伝子発現アッセイを使用して、他の血液悪性腫瘍及び確立された細胞株(慢性骨髄性白血病を含む)におけるNOCIVA遺伝子発現の発現の定量化を実施する。融解曲線及び増幅効率分析によってアッセイを検証する。RNeasyミニキット(Qiagen)を使用してモノクローナル細胞抽出物から全RNAを単離する。cDNAを、SuperScriptIII逆転写酵素(Invitrogen)を使用して、製造元の指示に従って合成する。グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ及びβアクチンを内部対照として使用する。KAPA PROBE FAST qPCRキットを、qPCR反応に使用し、QuantStudio(商標)12K FlexリアルタイムPCRシステムをプレート分析に使用する。PCR反応サイクル:1:95℃ 10分、2:95℃ 15秒、3:60℃ 1分;ステップ2~3を45回繰り返す。相対遺伝子発現データの分析を、Thermo Fisher Cloudソフトウェアによる2-ΔΔCT法を使用して実施する。遺伝子を、その発現値が、正常なBM対照試料の分析によって定義される(Clontech、Human Bone Marrow total rna)各遺伝子について確立されたカットオフ値(平均+3 s.d.)よりも高い又は低い場合、脱制御されているとみなす。
【0144】
固形がんのNOCIVAを検出するためのインサイチュー技術
RNAscope(登録商標)(Advanced Cell Diagnostics、ACD)及びViewRNA(商標)(Invitrogen)を含むRNAインサイチューハイブリダイゼーション技術を、種々のホルマリン固定固形がん細胞株及びホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料(少なくとも乳房、前立腺、HNSCC)で、製造元の指示に従って、NOCIVA及びCIP2A検出について試験する。CIP2A及びNOCIVA検出用の同様の試料の以前のqPCR分析に基づいて、陰性及び陽性の生物学的対照を選択する。製造元の指示に従って、技術的対照を実験設定に含める。ACD及びInvitrogenに、CIP2A及びNOCIVA mRNAインサイチュー検出用の新規なプローブ設計について連絡をする。ACD及びInvitrogenが、CIP2A及びNOCIVA検出用のインサイチューハイブリダイゼーションプローブを設計及び製造する。受け取った読出しの分析を、製造元の指示に従って調べる。
【0145】
NOCIVA特異的抗体の作製
BioGenes GmbHによるNOCIVA特異的ペプチドNNKNTQEAFQVTS(配列番号3)に対してウサギを免疫化することにより、2つのNOCIVA特異的抗体を作製した。ペプチド合成(純度少なくとも80%、HPLC及びMSによる品質管理)の際に、担体タンパク質との指向されたコンジュゲーションのために、追加のN末端システインをNOCIVA特異的ペプチドに付加した。
【0146】
単一特異性IgG抗体を、アフィニティーマトリックスとしてCNBr活性化Sepharose(商標)を用いたNOCIVAペプチド(配列番号3)抗原カラムを使用したアフィニティークロマトグラフィーによって、免疫後血清から精製した。
【0147】
アフィニティー精製した抗体の特異性を、細菌で発現された組換えタンパク質(
図5)、ならびに細胞内で過剰発現されたGFP-NOCIVA融合タンパク質で試験した。同様に配列番号3で構成されるブロッキングペプチドを対照として使用した。両抗体は、細菌によって産生された組換え精製GST-NOCIVA(
図5)とHela細胞で過剰発現されたGFP-NOCIVAの両方を検出した(データは示さず)。重要なことに、NOCIVA抗体は特異的であり、組換えCIP2Aフラグメントのいずれも認識しなかった(
図5)。
【0148】
固形ヒトがん組織試料における診断免疫組織化学のためのNOCIVA特異的抗体の使用
診断用免疫組織化学(IHC)について上記のように作製されたNOCIVA特異的抗体の適用性を試験及び最適化した。信頼できる検出結果のために、適切なIHC方法を選択することが重要である。頭頸部扁平上皮がん及び乳がん組織からのパラフィン包埋試料からなる組織マイクロアレイ(TMA)を、NOCIVA特異的ペプチドに対して作製された抗体で染色した。
【0149】
標識ストレプトアビジンビオチン(LSAB)技術は、いくつかの抗原発現に対する感受性を有さず、その代わりにポリマーシステム又はチラミン増幅の使用が必要となり得る。pH6とpH9の熱誘導エピトープ回復(heat induced epitope retrieval)(HIER)緩衝液を2つの希釈/濃度での抗体のインキュベーションと合わせて比較すると、どの組み合わせがさらに検討に値するかが最初に示される。試験する他のバリエーションには、HIERの温度と時間、抗体の希釈/濃度の範囲、及び一次抗体インキュベーションが含まれる。研究活動領域と臨床活動領域の両方の組織コレクションの大部分が中性緩衝ホルムアルデヒドを利用しているので、代替固定液を調査することができるが、適用できるのは少数の試料群のみである。また、技術のバリエーションに体系的にアプローチし、検証全体で同じ試薬バッチを使用し、標準化されたレポートテンプレートを使用して染色結果を記録するように注意が払わされる。
【0150】
診断用IHC使用のための新たな抗体の検証及び最適化に日常的に使用されるアプローチに加えて、NOCIVA枯渇細胞を、発明者らの実験室で最近開発された細胞溶解物マイクロアレイ(CMA)形式の特異性対照として使用する。NOCIVA枯渇細胞は、この設定で陰性生物学的対照として役立つ。陽性対照は、NOCIVA検出用の同様の組織試料の事前のウエスタンブロット分析に基づいて選択する。研究目的のために、NOCIVA特異的抗体も試験し、その性能を種々の組織及び細胞溶解物試料(乳房、前立腺及びHNSCC試料を含む)で検証して、NOCIVAがバイオマーカーとして機能する全ての使用適応症(がん型)を評価する。
【0151】
血液がんと固形がんの両方での診断用FACS分析のためのNOCIVA特異的抗体の使用
上記のように作製されたNOCIVA特異的抗体を、診断用蛍光活性化セルソーティング(FACS)に使用するために検証及び最適化する。この目的のために、診断時に新たに収集した末梢血及び骨髄試料中のNOCIVAを測定するプロトコルを開発して予測値を調査する。試料調製を、FACS分析用の血液患者試料を取り扱うためのTYKSlabのプロトコルに従って行う。血液試料の典型的なFACSプロトコルでは、細胞を500μlの2%パラホルムアルデヒドに再懸濁し、37℃で10分間固定し、氷上で1分間冷却する。遠心分離(770g、3分)によって細胞を回収し、500μlの90%メタノールを添加した後、試料を短時間ボルテックスし、氷上で30分間インキュベートする。次いで、細胞を洗浄し(リン酸緩衝生理食塩水及び0.5%ウシ血清アルブミンを含有する1mlのインキュベーション緩衝液で完全に)、回収し、25μlのインキュベーション緩衝液に再懸濁する。この後、試料を室温で10分間インキュベートする。抗体を最終濃度30μg/mlになるように添加し、ボルテックスし、室温で40分間インキュベートする。試料を2回洗浄し、フルオレセイン標識した二次抗体Alexa Fluor 488(10μg/ml)に再懸濁し、暗所中室温で30分間インキュベートする。次いで、フローサイトメトリー(FACScalibur又は類似)を使用して、2回洗浄した細胞を、データ分析用のcellquest proソフトウェア(又は類似)で分析する。試料中に存在するNOCIVAタンパク質のレベルを、幾何平均蛍光強度(MFI)-対照試料のMFI値として決定する。NOCIVA枯渇細胞は、この設定でも陰性生物学的対照として役立つ。陽性対照は、NOCIVA検出用のAML試料の事前のウエスタンブロット分析に基づいて選択する。研究目的で、NOCIVA特異的FACSも試験し、その性能を種々の固形がん細胞株及び組織試料(乳房、前立腺及びHNSCC試料を含む)で検証する。
【配列表】