(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】基板
(51)【国際特許分類】
C04B 35/117 20060101AFI20220930BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20220930BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C04B35/117
G02B5/00 B
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2020535795
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2019030932
(87)【国際公開番号】W WO2020032035
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2018149443
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清田 諭史
(72)【発明者】
【氏名】和多田 一雄
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 剛久
(72)【発明者】
【氏名】真宮 正道
(72)【発明者】
【氏名】四方 邦英
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-113197(JP,A)
【文献】特開平03-113842(JP,A)
【文献】特開2010-067629(JP,A)
【文献】特開2003-264107(JP,A)
【文献】特開2002-263606(JP,A)
【文献】特開昭49-030408(JP,A)
【文献】実開平04-093878(JP,U)
【文献】特開平07-012650(JP,A)
【文献】特開2006-182595(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101265106(CN,A)
【文献】特開2014-080362(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008651(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/196709(WO,A1)
【文献】特開2016-114498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
G02B 5/00
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlをAl
2O
3に換算した酸化アルミニウムの含有量が90質量%以上であり、組成式がTiO
2-x(1≦x<2)として示されるチタンの酸化物を含み、Fe、Ni、Co、MnおよびCrの合計の含有量が
86質量ppm以上260質量ppm以下であ
り、
TiO
2-x
が1.5質量%以上1.7質量%以下であり、
250nm-2500nmの波長における領域の反射率の最大値Rmaxが14.56%以上22.44%以下であり、
250nm-2500nmの波長における領域の反射率の最大値Rmaxと最小値Rminとの差ΔRが6.18%以上13.68%以下である酸化アルミニウム質セラミックスからなる基板。
【請求項2】
車載光学機器用である請求項
1に記載の基板。
【請求項3】
試験機器用である請求項
1に記載の基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、黒色セラミックスの組成の一例として、Al2O3、Si、Ti、Mn、Fe、Crなどが記載されており、黒色にするための着色材として、Fe、Cr、Co、Mn、Ni、Cuなどが使われることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の基板は、組成式がTiO2-x(1≦x<2)として示されるチタンの酸化物を含む酸化アルミニウム質セラミックスからなり、Fe、Ni、Co、MnおよびCrの合計の含有量が260質量ppm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る基板を備えるランプ装置であって車両の右前方に搭載されるランプ装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すランプ装置内に配置された第1センサモジュールの構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る基板を備えるヘッドアップディスプレイの構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る基板を備える試験装置の構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す試験装置の可動部および熱源部の構成を示す側面図である。
【
図6】
図6は、実施例における反射率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<基板>
以下、本開示の実施形態に係る(回路)基板について詳細に説明する。
本実施形態の基板は、組成式がTiO2-x(1≦x<2)として示されるチタンの酸化物を含む酸化アルミニウム質セラミックスからなり、Fe、Ni、Co、MnおよびCrの合計の含有量が260質量ppm以下である。このような構成によれば、広い波長範囲にわたって反射率が低くなる。また、チタンの酸化物の紫外線(UV)吸収効果によって日光による劣化を抑制することができ、基板に実装される部材を保護することができるので、長期使用が可能となる。さらに、日光を浴びるとチタンの酸化物の光触媒効果が発現して基板に実装される部材の汚れを除去することができ、防汚効果も得られるので、長期使用が可能となる。以下、本実施形態の基板の構成について具体的に説明する。
【0007】
酸化アルミニウム質セラミックスとは、セラミックスを構成する全成分100質量%のうち、AlをAl2O3に換算した酸化アルミニウムの含有量が90質量%以上であるセラミックスのことである。また、組成式がTiO2-x(1≦x<2)として示されるチタンの酸化物とは、酸化チタン(TiO2)が還元されたものである。チタンの酸化物の結晶相は、ルチル型酸化チタンであってもよい。また、Fe、Ni、Co、MnおよびCrの合計の含有量は、170質量ppm以下であってもよい。
【0008】
本実施形態の基板は、比較的広い波長範囲の光に対して反射率が十分に低い黒色を呈する。具体的には、CIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が48以下であり、クロマティクネス指数a*、b*がそれぞれ-2以上5以下、-10以上0以下である。CIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*の値、クロマティクネス指数a*およびb*の値は、JIS Z 8722:2009に準拠して求めることができる。例えば、分光色差計(日本電色工業(株)製NF777またはその後継機種)を用い、測定条件としては、光源をCIE標準光源D65、視野角度を2°に設定すればよい。
【0009】
本実施形態の基板は、波長250nm~2500nmにわたる反射率の最大値Rmaxが24%以下であり、最大値Rmaxと最小値Rminとの差であるΔRが15.3%以下である。すなわち、本実施形態の基板は、波長250nm~2500nmの範囲において、反射率が低く、照射光に対する反射光の光強度の波長分布のばらつきが小さい。本実施形態の基板は、このように広い波長範囲にわたって反射率が一様に低くなっている。
【0010】
本実施形態の基板において、組成式がTiO2-x(1≦x<2)として示されるチタンの酸化物の含有量は、セラミックスを構成する全成分100質量%のうち、例えば、0.5質量%以上4質量%以下である。チタンの酸化物の含有量が前述した範囲であるときには、彩度が十分に抑制された反射率の低い黒色の色味とすることができるとともに、室温(5~35℃)における体積固有抵抗が109Ω・m以上の電気的絶縁性を有する。また、より絶縁性を高めるという観点からは、本実施形態の基板の体積固有抵抗は、例えば、200℃にて108Ω・m以上であってもよい。通常、温度が高くなると体積固有抵抗は低下するが、本実施形態の基板は、200℃の高温においても絶縁性を有する。ここで、体積固有抵抗は、JIS C 2141:1992に準拠して求めることができる。なお、体積固有抵抗の上限値は、特に限定されない。
【0011】
基板は、チタン酸アルミニウムを含んでいなくてもよい。このような構成を満たすときには、酸化アルミニウムに対する線膨張係数の差が大きいチタン酸アルミニウムが基板中に存在しないことから、昇温および冷却が繰り返されても微小なクラックが発生しにくい。基板がチタン酸アルミニウムを含んでいるか否かは、X線回折装置(XRD)を用いて得られるX線チャートを、JCPDSカード(No.00-041-0258)と照合すればよい。
【0012】
本実施形態の基板は、Fe、Ni、Co、MnおよびCrの合計の含有量が260質量ppm以下、すなわちCr単独の含有量が最大でも260質量ppmである。アルミナにCrを含有させた際には、波長が700nm以上780nm未満の領域の光(以降、短波長領域光ともいう)や、波長が780nm以上1590nm未満の領域の光(以降、長波長領域光ともいう)の反射率が大きくなりやすいが、本実施形態の基板は、Crの含有量が少ないことから、短波長領域および長波長領域における反射率が小さい。
【0013】
基板においてCrの含有量が40質量ppm以下であれば、比較的広い波長範囲の光に対する反射率が十分に低くなる。
【0014】
また、基板におけるFeの含有量が100質量ppm以下であれば、変色による反射率の増加をより抑制することができるため、可視光線領域および(近)赤外線領域での反射率がより低くなる。
【0015】
また、基板における、Niの含有量が10質量ppm以下、Coの含有量が5質量ppm以下またはMnの含有量が100質量ppm以下であれば、機械的強度や電気特性の変化が小さくなる。
【0016】
基板は、酸化アルミニウムの結晶粒子同士を結合する粒界相に、珪素、カルシウムおよびマグネシウムの酸化物を含んでいてもよい。ここで、珪素、カルシウムおよびマグネシウムの酸化物の含有量の合計は、セラミックスを構成する全成分100質量%のうち、例えば、2質量%以上4質量%以下である。また、珪素、カルシウムおよびマグネシウムの酸化物の含有量の合計を100質量%としたとき、カルシウムの酸化物およびマグネシウムの酸化物の含有量はそれぞれ10質量%以上30質量%以下であり、残部が珪素の酸化物であってもよい。珪素、カルシウムおよびマグネシウムの酸化物の含有量が上記範囲である場合、基板は、室温における体積固有抵抗が1011Ω・m以上か、または1012Ω・m以上となる。
【0017】
なお、基板におけるチタンの酸化物の結晶相は、XRDによって同定することができ、xの値については、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて求めればよい。
【0018】
また、アルミニウム、珪素、カルシウム、マグネシウムおよびチタンをそれぞれ酸化物に換算した含有量は、蛍光X線分析装置(XRF)またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置(ICP)を用いて、各元素の含有量を求め、それぞれAl2O3、SiO2、CaO、MgOおよびTiO2-x(1≦x<2)に換算することで求められる。Fe、Ni、Co、MnおよびCrの含有量は、グロー放電質量分析装置(GDMS)を用いて求めればよい。
【0019】
また、基板を形成する酸化アルミニウム質セラミックスは安価であり、酸化チタンの含有量が0.1質量%未満の高純度かつ高価な酸化アルミニウム質セラミックスの誘電率と同等の高い誘電率を得ることができる。
【0020】
本実施形態の基板は、スキューネスRskの平均値が0.04以上0.45以下である部分を有していてもよい。基板がこのような部分を有しているときには、反射率が低くなる。なお、基板におけるすべてのスキューネスRskの平均値が0.04以上0.45以下であってもよい。
【0021】
また、本実施形態の基板は、クルトシスRkuの平均値が4.1以上6.5以下である部分を有していてもよい。基板がこのような部分を有しているときには、反射率が低くなる。なお、基板におけるすべてのクルトシスRkuの平均値が4.1以上6.5以下であってもよい。
【0022】
さらに、本実施形態の基板は、算術平均粗さRaの平均値が1μm以上2μm以下である部分を有していてもよい。基板がこのような部分を有しているときには、反射率が低くなる。なお、基板におけるすべての算術平均粗さRaの平均値が1μm以上2μm以下であってもよい。
【0023】
スキューネスRsk、クルトシスRkuおよび算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2001に準拠し、例えば、レーザー顕微鏡((株)キーエンス社製(VK-9510))を用いて求めることができる。測定条件は、測定モードをカラー超深度、測定倍率を400倍、測定範囲を698μm×522μm、測定ピッチを0.05μm、λs輪郭曲線フィルタを2.5μm、λc輪郭曲線フィルタを0.08mmとし、上記測定範囲8箇所から得られる測定値の平均値を、スキューネスRsk、クルトシスRkuおよび算術平均粗さRaのそれぞれの平均値とすればよい。
【0024】
また、酸化アルミニウム質セラミックスは遮光面を備え、遮光面のCIE1976L*a*b*色空間における色差Δ*Eabが4.5以下であってもよい。
【0025】
色差Δ*Eabは、色調感のばらつきを示す指標であり、以下の式(1)で示される。
ΔE*ab=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2 (1)
(ΔL*は、遮光面の第1測定対象点の明度指数L1*と第2測定対象点の明度指数L2*との差、Δa*は遮光面の第1測定対象点のクロマティクネス指数a1*と第2測定対象点の明度指数a2*との差、Δb*は遮光面の第1測定対象点のクロマティクネス指数b1*と第2測定対象点の明度指数b2*との差である。)
【0026】
色差Δ*Eabが上記範囲であると、遮光面の色調感のばらつきが低減して、そのばらつきを視認しにくくなるので、商品価値が向上する。
【0027】
また、遮光面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*の変動係数が0.02以下(但し、0を除く)であってもよい。
【0028】
明度指数L*の変動係数が上記範囲であると、遮光面が繰り返し光の照射を受けても変色しにくい状態になっているので、経時変化がしにくい。ここで、遮光面の明度指数L*の平均値は、例えば、48以下である。
【0029】
なお、遮光面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*の値、クロマティクネス指数a*およびb*の値は、上述した方法と同じ方法で求めることができる。
【0030】
また、酸化アルミニウム質セラミックスは、開気孔を有し、開気孔の円相当径の歪度が0.1以上2以下であってもよい。
【0031】
開気孔の円相当径の歪度が0.1以上であると、開気孔の円相当径の分布が小さい方に傾き、浮遊する金属粉や白色系の明色を呈する紛体が開気孔に侵入しにくくなるので、遮光面の色調感のばらつきが低減し、商品価値が向上する。
【0032】
開気孔の円相当径の平均値は、例えば、4μm以上6μm以下である。また、開気孔の気孔率は、3面積%以上6面積%以下である。
【0033】
開気孔の円相当径および気孔率を求めるには、まず、平均粒径D50が3μmのダイヤモンド砥粒を用いて鋳鉄製定盤にて保持部材を研磨した後、平均粒径D50が0.5μmのダイヤモンド砥粒を用いて錫定盤にて研磨して、測定面を得る。
【0034】
そして、光学顕微鏡を用いて、倍率を100倍として、CCDカメラで、測定面のうち、平均的な部分を選択して撮影する。次に、撮影した画像のうち、1範囲当りの面積が2.27×102μmである範囲を4カ所設定して、画像解析ソフト(例えば、三谷商事(株)製、Win ROOF)を用いて解析することによって、開気孔の円相当径および気孔率を得ることができる。なお、解析するに当たり、開気孔の円相当径の閾値は、0.8μmとし、0.8μm未満の円相当径は解析の対象とはしない。
【0035】
そして、開気孔の円相当径の歪度は、Excel(登録商標、Microsoft Corporation)に備えられている関数SKEWを用いて求めればよい。
【0036】
基板の形状は、特に限定されるものではなく、実装する部材に応じて所望の形状を採用することができる。
【0037】
(基板の製造方法)
次に、本実施形態の基板の製造方法の一例を説明する。
【0038】
まず、酸化アルミニウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムおよび酸化チタンの各粉末を準備する。
【0039】
炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムおよび酸化珪素の粉末の含有量の合計は、上記粉末の合計100質量%のうち、例えば、6.5質量%以上12.9質量%以下である。そして、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムおよび酸化珪素の粉末の含有量は、これら粉末の合計100質量%のうち、炭酸カルシウムの粉末の含有量は17.8質量%以上53.4質量%以下であり、水酸化マグネシウムの粉末の含有量は14.4質量%以上43.2質量%以下であり、残部が酸化珪素の粉末である。
特に、水酸化マグネシウムの含有量は、酸化チタンの含有量の30質量%以上44質量%以下であるとよい。水酸化マグネシウムの含有量が上記範囲であると、後述する還元処理で生じやすいアノーサイトおよびムライトの生成が抑制される。アノーサイトやムライトは酸化アルミニウムに対して平均線膨張率が異なっているため、これらの化合物の生成が抑制されると、繰り返して加熱および冷却に曝される環境で基板が用いられてもクラックが生じにくくなる。
【0040】
酸化チタンの粉末の含有量は、酸化アルミニウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムおよび酸化チタンの各粉末の合計100質量%のうち、例えば、0.5質量%以上4質量%以下であり、残部が酸化アルミニウムの粉末である。
【0041】
そして、これら粉末をバレルミル、回転ミル、振動ミル、ビーズミル、アジテーターミル、アトマイザー、アトライターなどの粉砕機によって湿式混合して粉砕し、スラリーを得る。なお、上記粉砕にあたっては、溶媒、この溶媒100質量部に対して1質量部以上1.5質量部以下のポリビニルアルコール(PVA)などの有機結合剤、溶媒100質量部に対して0.1質量部以上0.5質量部以下の分散剤を併せて粉砕機内に投入する。次に、得られたスラリーを脱磁処理した後、噴霧乾燥して、顆粒を得る。脱磁処理によって、強磁性金属であるFe、NiおよびCoが除去される。
【0042】
また、基板におけるFe、Ni、Co、MnおよびCrの含有量は、粉砕機に用いられるステンレス製部材の磨耗の影響を受ける。長期間の使用によって磨耗するステンレス製部材は、例えば、表面に不動態膜を形成しやすいチタン製部品に置換するか、TiN、TiCN、TiC、TiAlN、TiAlCN、TiAlOなどのチタン系の膜あるいは非晶質硬質炭素(DLC)をステンレス製部材の表面に被覆すればよい。脱磁処理に加え、このようなステンレス製部材の置換あるいは被覆により、Fe、Ni、Co、MnおよびCrの合計の含有量が260質量ppm以下である基板を得ることができる。
【0043】
そして、この顆粒を用いて乾式加圧成形法、あるいは、冷間等方圧加圧法(CIP)により成形した後に切削加工を施して成形体を得る。その後、得られた成形体を大気(酸化)雰囲気中、温度を1500℃以上1700℃以下として所定時間保持して焼成することによって焼結体を得ることができる。
ここで、開気孔の平均気孔径の歪度が0.1以上2以下である基板を得るには、成形圧を、例えば、1500MPa以上4000MPa以下にすればよい。
【0044】
なお、焼成後においては、研削加工を行なってもよい。また、必要に応じて振動バレル研磨機を用いて、研磨材、振動数および研磨時間を調整した研磨を行なって、所定の表面性状としてもよい。
【0045】
そして、上述した方法によって得られた焼結体を、還元雰囲気として、例えば、窒素:水素の比率が87~90体積%:10~13体積%である混合ガス中において、1300℃以上1400℃以下の温度で1時間以上2時間以下保持することによって、本実施形態の基板を得ることができる。
遮光面のCIE1976L*a*b*色空間における色差Δ*Eabが4.5以下である基板を得るには、酸化チタンの粉末の含有量を、酸化アルミニウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムおよび酸化チタンの各粉末の合計100質量%のうち、1.8質量%以上3質量%以下とし、1330℃以上1400℃以下の温度で1時間以上2時間以下保持すればよい。
遮光面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*の変動係数が0.02以下(但し、0を除く)である基板を得るには、酸化チタンの粉末の含有量を、酸化アルミニウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムおよび酸化チタンの各粉末の合計100質量%のうち、1.8質量%以上3質量%以下とし、1350℃以上1400℃以下の温度で1時間以上2時間以下保持すればよい。
【0046】
上述した本実施形態の基板は、可視光線領域および(近)赤外線領域の反射率が低く、しかも、長期使用が可能であることから、例えば、光路周辺に配置することができ、車載光学機器などに用いることができる。
【0047】
<車載光学機器>
次に、本実施形態の基板を備える車載光学機器の一例として、ランプ装置およびヘッドアップディスプレイを例に挙げて、図面を用いて順に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な構成のみを簡略化して示したものである。したがって、本開示の車載光学機器は、参照する図に示されていない任意の構成を備え得る。また、図中の構成の寸法は、実際の構成の寸法および寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0048】
(ランプ装置)
以下の説明では、ランプ装置が車両の右前方に搭載される構成を例にとって説明するが、本開示のランプ装置は、その機能を奏する限り、車両の右前方に搭載される構成に限定されない。
【0049】
図1に示すように、本開示の実施形態に係るランプ装置20は、車両の進行方向に位置する透光カバー21と、透光カバー21の反対側に位置するハウジング22と、透光カバー21およびハウジング22によって囲まれる灯室23の内部にそれぞれ位置する、前照灯24と、第1センサモジュール25と、第2センサモジュール26と、を備えている。
【0050】
前照灯24は、レンズおよびリフレクタの少なくともいずれかを含む光学系部品を備えている。前照灯24から出射された光は、透光カバー21を透過して車両の右前方を照明する。ランプ装置20は、このような前照灯24を備えていることから、ヘッドライトとして機能する。
【0051】
第1センサモジュール25は、第1基板251(支持部材)を備えている。第1基板251は、第1可視光カメラ252、第1LiDAR(Light Detection and Ranging)センサ253、第1遮光部材254(遮蔽部材)を支持しており、さらに
図2に示すように、制御部255、通信部256および給電部257を支持している。第1基板251は、第1可視光カメラ252、第1LiDARセンサ253、制御部255、通信部256および給電部257を含むセンサ回路を実装する基板である。すなわち、検出方法が異なる複数のセンサ(第1可視光カメラ252および第1LiDARセンサ253)、これらのセンサを包囲する筒状の中空部材である第1遮光部材254、およびこれらのセンサを動作させる回路が、第1基板251上にモジュール化されている。
【0052】
図1に示すように、第1可視光カメラ252は、車両の右側を撮影する。すなわち、第1可視光カメラ252は、車両の右側の情報を検出するセンサである。
【0053】
図2に示すように、第1LiDARセンサ253は、赤外光を出射する発光部253aおよび赤外光が車両の右側に存在する物体に当たってはね返った反射光を検出する受光部253bを備えている。
【0054】
第1LiDARセンサ253は、ある方向へ赤外光を出射した後、物体からの反射光を検出するまでの時間に基づいて、物体までの距離を求めることができる。また、距離の測定値を検出位置と関連付けて集積、解析することにより、物体の形状に係る情報を得ることができる。また、出射光と反射光の波長の相違に基づいて、反射に関連付けられた物体の材質などの情報を得ることができる。さらに、反射光の反射率の相違に基づいて、対象物の色(路面における白線など)に係る情報を得ることができる。すなわち、第1LiDARセンサ253は、第1可視光カメラ252とは異なる方法で車両の右側の様々な情報を得ることができる。
【0055】
なお、
図1に示すように、第1センサモジュール25は、第1基板251に結合された第1アクチュエータ258(調節機構の一例)を備えている。第1アクチュエータ258は、車両に対する第1基板251の位置および姿勢の少なくともいずれかを調節する。
【0056】
また、第2センサモジュール26は、第2基板261を備えている。第2基板261は、第2可視光カメラ262、第2LiDARセンサ263、ミリ波レーダ264、およびこれらを包囲する筒状の中空部材である第2遮光部材265を支持しており、いずれも図示しない制御部、通信部および給電部をさらに支持している。
【0057】
第2可視光カメラ262および第2LiDARセンサ263の各機能は、それぞれ第1可視光カメラ252および第1LiDARセンサ253の各機能と同じなので、その説明を省略する。
【0058】
ミリ波レーダ264は、ミリ波を発信する発信部およびミリ波が少なくとも車両の右前方に存在する物体に当たってはね返った反射波を受信する受信部を備えている。ミリ波の周波数は、例えば、24GHz、26GHz、76GHzまたは79GHzである。
【0059】
ミリ波レーダ264は、ある方向へ赤外光を出射した後、物体からの反射光を検出するまでの時間に基づいて、物体までの距離を求めることができる。また、距離の測定値を検出位置と関連付けて集積、解析することにより、物体の動きに係る情報を得ることができる。すなわち、ミリ波レーダ264は、第2可視光カメラ262または第2LiDARセンサ263とは異なる方法で車両の右前方の情報を得ることができる。
【0060】
なお、第2センサモジュール26は、第2基板261に結合された第2アクチュエータ266(調節機構の一例)を備えている。第2アクチュエータ266は、車両に対する第2基板261の位置および姿勢の少なくともいずれかを調節する。
【0061】
また、ランプ装置20は、灯室23の外部に位置する信号処理部27を備えている。信号処理部27は、第1アクチュエータ258を駆動する第1駆動信号271および第2アクチュエータ266を駆動する第2駆動信号272を出力するように構成されている。第1駆動信号271は、第1アクチュエータ258の位置および姿勢の少なくともいずれかを、また、第2駆動信号272は、第2アクチュエータ266の位置および姿勢の少なくともいずれかを調節する情報を含んでいる。
【0062】
そして、ランプ装置20においては、第1センサモジュール25の第1基板251および第2センサモジュール26の第2基板261の少なくともいずれかが、上述した本実施形態の基板からなる。本実施形態の基板は、上述のとおり、広い波長範囲にわたって反射率が低いことから、投影像のノイズを低減することができる。また、チタンの酸化物のUV吸収効果によって日光による劣化を抑制することができ、基板に実装される部材(可視光カメラ、LiDARセンサ、遮光部材、制御部、通信部および給電部など)を保護することができるので、長期使用が可能となる。さらに、日光を浴びるとチタンの酸化物の光触媒効果が発現して基板に実装される部材の汚れを除去することができ、防汚効果も得られるので、長期使用が可能となる。
【0063】
また、ランプ装置20は、光路周辺の基板として、前照灯24の光源素子(LEDなど)を実装する光源素子実装基板を備えている。そして、ランプ装置20においては、光源素子実装基板が、本実施形態の基板からなる。言い換えれば、本実施形態の基板は、ヘッドライトの光源素子用であってもよい。このような構成によれば、本実施形態の基板の低い反射率によって迷光を除去できるので、光路上における余計な反射または散乱を少なくすることができ、投影像のノイズを低減することができる。また、チタンの酸化物の光触媒効果によって光源素子周辺の汚れを防止して長期にわたって輝度を維持することもできる。
【0064】
ランプ装置20は、光路周辺の基板として、第1可視光カメラ252におけるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを実装するCMOS実装基板を備えている。そして、ランプ装置20においては、CMOS実装基板が、本実施形態の基板からなる。言い換えれば、本実施形態の基板は、車載カメラ用であってもよい。このような構成によれば、本実施形態の基板の可視光線領域および(近)赤外線領域における低い反射率によって投影像のノイズを低減することができる。また、チタンの酸化物の光触媒効果によってCMOSイメージセンサ付近の汚れを防止して感度を維持することもできる。
【0065】
ランプ装置20は、光路周辺の基板として、第1LiDARセンサ253の受光部253bにおける受光素子を実装する受光素子実装基板を備えている。そして、ランプ装置20においては、受光素子実装基板が、本実施形態の基板からなる。言い換えれば、本実施形態の基板は、LiDAR用であってもよい。このような構成によれば、本実施形態の基板の近赤外線領域における低い反射率によってノイズを低減することができ、その結果、第1LiDARセンサ253の検知性能が高まる。また、チタンの酸化物の光触媒効果によって受光素子の汚れを防止して感度を維持することもできる。
【0066】
なお、ランプ装置20は、第2可視光カメラ262および第2LiDARセンサ263についても、上述した第1可視光カメラ252および第1LiDARセンサ253と同様の基板を備えている。そして、ランプ装置20においては、第2可視光カメラ262および第2LiDARセンサ263における基板が、本実施形態の基板で構成されていてもよい。
【0067】
(ヘッドアップディスプレイ)
図3に示すように、本開示の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ30は、画像を投影する側から順に、車載プロジェクターモジュール31と、反射ミラー32と、マイクロレンズアレイ33と、凸レンズ34と、コンバイナー35と、を備えている。
【0068】
車載プロジェクターモジュール31は、矢印a方向に画像を投影する。また、車載プロジェクターモジュール31は、光学、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ユニットと、光学、MEMSユニットに収容されるRGB光源モジュールと、を備えている。
【0069】
反射ミラー32は、車載プロジェクターモジュール31から投影された画像をマイクロレンズアレイ33に向けて反射させる。マイクロレンズアレイ33は、中間像スクリーンとして機能する。凸レンズ34は、マイクロレンズアレイ33に隣接しているとともに、コンバイナー35の側に凸であって、フィールドレンズとして機能する。コンバイナー35は、凸レンズ34によって拡大された画像をドライバーの目に向けて反射させる。
【0070】
なお、マイクロレンズアレイ33および凸レンズ34は、レンズ保持部材36によって保持されている。すなわち、ヘッドアップディスプレイ30は、マイクロレンズアレイ33および凸レンズ34を保持するレンズ保持部材36を備えている。
【0071】
ここで、ヘッドアップディスプレイ30は、上述した構成に加えて次のような構成をさらに備えている。すなわち、ヘッドアップディスプレイ30は、光路周辺の基板として、RGB光源モジュールの光源素子を実装する光源素子基板を備えている。そして、ヘッドアップディスプレイ30においては、光源素子基板が、本実施形態の基板からなる。言い換えれば、本実施形態の基板は、ヘッドアップディスプレイ用であってもよい。このような構成によれば、本実施形態の基板の広い波長範囲にわたる低い反射率によって投影像のノイズを低減することができる。また、チタンの酸化物の光触媒効果による防汚効果によって長期使用が可能となる。
【0072】
<試験機器>
本実施形態の基板は、試験機器にも用いることができる。試験機器の一例として、
図4などに示す試験装置を例に挙げて説明する。
図4は、本開示の実施形態に係る基板を備える試験装置の構成を示す部分断面図である。
【0073】
試験装置40は、パッケージに収納された半導体デバイス41を昇温した状態で、半導体デバイス41の静特性、動特性等を計測する装置である。
【0074】
試験装置40は、搬送機構(図示しない)により半導体デバイス41を載置部42まで搬入したり、載置部42から半導体デバイス41を搬出したりするように構成されている。
【0075】
載置部42は、半導体デバイス41を載置する載置台44を備え、載置台44はその下側から収縮自在なコイルバネ43によって支持されている。載置台44に載置された半導体デバイス41は上方から(矢印A方向)押圧されると、コイルバネ43が収縮して半導体デバイス41は載置台44ととともに下方に移動する。載置台44および半導体デバイス41が下方に移動すると、半導体デバイス41の各端子と、計測回路46に接続されているコンタクトピン45とが接触して、電気的に接続する。なお、端子が大きい場合に備え、半導体デバイス41の上方からの押圧を受け止める弾性部材を含む補助端子47がコンタクトピン45を保持する板状部材48上に設けられている。また、半導体デバイス41の温度を計測する赤外線温度センサS1が載置台44に装着されている。
【0076】
載置台44は交換可能である。また、コンタクトピン45および補助端子47は板状部材48と合わせて交換可能であり、半導体デバイス41に応じてこれらを交換して、様々な半導体デバイス41の静特性、動特性等を計測することができる。
【0077】
可動部49は、載置部42の上方に設けられている。可動部49は、可動機構により上下方向への移動が可能であり、半導体デバイス41のパッケージの上面に当接して半導体デバイス41を上方から押圧するとともに、半導体デバイス41を昇温する。可動部49は、半導体デバイス41の各端子をコンタクトピン45に押し付けるための押圧部材59を有する。半導体デバイス41の特性を計測する場合、まず、半導体デバイス41を載置台44に載置し、可動部49を下方に移動させ、半導体デバイス41を上方から押圧する。そして、半導体デバイス41の各端子を押圧部材59で押圧して、各端子をコンタクトピン45を介して計測回路46に接続する。そして、この状態で、可動部49の上方に設置された熱源部51によって半導体デバイス41を加熱して半導体デバイス41の静特性、動特性等を計測する。半導体デバイス41の計測が終了すると加熱を中止し、可動部49を上方に移動して半導体デバイス41は搬出される。
【0078】
図5は、
図4に示す試験装置の可動部および熱源部の構成を示す側面図である。熱源部51は、鉛直方向の中央部にヒートシンク52を、ヒートシンク52の上方に、冷却用ファン53をそれぞれ有しており、ヒートシンク52および冷却用ファン53によって熱源部51の異常な温度上昇が抑制される。
【0079】
また、熱源部51は、ヒートシンク52の下方に、並列に配置された直管式のハロゲンランプ54を備えており、ハロゲンランプ54から放出された赤外線は、半導体デバイス41を昇温する。また、各ハロゲンランプ54は、リフレクタ55を備えている。リフレクタ55は、可動部49側に向かって赤外線を放射する放物面鏡により形成され、放物面の焦点にハロゲンランプ54が配置される。このような配置により熱源部51は、可動部49に向かってほぼ平行に赤外線を放射することができる。また、ハロゲンランプ54が並列に配置されていることにより、矢印で示すように広い範囲に亘って略平行に赤外線を照射することができる。赤外線の平行な照射により、固定されている熱源部51に対して可動部49を移動しても、後述する熱伝導部材58に入射する赤外線の温度分布はほとんど変化しないので、試験装置40は、半導体デバイス41の静特性、動特性を変動要因の少ない状態で計測することができる。
【0080】
熱源部51は、平面視した場合の半導体デバイス41より大きな領域に赤外線を照射可能に、また、半導体デバイス41を設定する温度に昇温可能に、ハロゲンランプ54の定格、大きさおよび並列に配置する数が設定されている。
【0081】
ハロゲンランプ54およびリフレクタ55は、赤外線を照射する側が開口するケース56の内部に収納されている。このような構成であると、赤外線の漏洩が防止され、熱効率が向上する。試験装置40は、さらにこのケース56の上部にヒートシンク52を備えている。
【0082】
集光ドーム57は、ケース56を下方から覆うように設けられており、熱源部51からの赤外線を反射して熱伝導部材58に集光する。また、板状の熱伝導部材58は、集光ドーム57の下方側であって、半導体デバイス41に対向する位置に設けられている。熱伝導部材58は、熱源部51からの赤外線によって直射され、昇温する。また、可動部49による下方への移動により、熱伝導部材58は半導体デバイス41の上面に接触して、半導体デバイス41を昇温する。
【0083】
半導体デバイス41は、放熱性を向上させるために、パッケージの上面から電極が露出しているものもある。電極が露出する半導体デバイス41に金属等の導電性を有する熱伝導部材を接触させると、半導体デバイス41が損傷したり、半導体デバイス41の特性を正しく測定したりすることができなくなる。
【0084】
このような場合に備え、熱伝導部材58は、赤外線の照射により効率良く半導体デバイス41を昇温させることができる絶縁体、すなわち、本開示の基板であるとよい。
【0085】
そして、熱伝導部材58は、半導体デバイス41の上端面の形状、大きさに応じて適宜設計される。このように設計することによって、試験装置40は、熱伝導部材58からの熱伝導に係る損失が低減され、半導体デバイス41を効率良く昇温させることができる。
【0086】
本開示の基板を熱伝導部材58として備えた試験装置40は、半導体デバイス41を損傷させることなく、半導体デバイス41の特性を正しく測定することができる。
【0087】
以上、本開示に係る実施形態について例示したが、本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることはいうまでもない。
【0088】
例えば、上述した実施形態では、基板が車載光学機器用および試験機器用である場合を例にとって説明したが、本実施形態の基板は、車載光学機器用および試験機器用に限定されるものではなく、他の用途にも使用することができる。他の用途としては、例えば、電子機器、医療・理化学機器などが挙げられる。具体例を挙げると、例えば、CTスキャンなどの医療機器、透過型電子顕微鏡(TEM)などの分析装置などが挙げられる。なお、基板の用途は、例示したものに限定されない。
【0089】
以下、実施例を挙げて本開示を詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0090】
まず、酸化アルミニウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムおよび酸化チタンの各粉末を準備した。
【0091】
なお、酸化アルミニウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムおよび酸化チタンの各粉末の含有量は、基板である焼結体を構成する成分が表1に示す値になるように調整した。
【0092】
そして、これら粉末をバレルミルで湿式混合して粉砕し、スラリーを得た。なお、粉砕にあたっては、溶媒、溶媒100質量部に対して1.25質量部のポリビニルアルコール(PVA)、溶媒100質量部に対して0.3質量部の分散剤も併せて粉砕機内に投入した。次に、得られたスラリーを脱磁処理によって、基板におけるFe、Ni、Co、MnおよびCrの合計の含有量が表1に示す値になるように調整した後、噴霧乾燥して、顆粒を得た。なお、粉砕機に用いるステンレス製部材には、予めTiN膜を被覆した後、粉末を粉砕した。
【0093】
そして、顆粒を用いて冷間等方圧加圧法(CIP)により成形した後に切削加工を施して成形体を得た。その後、得られた成形体を大気(酸化)雰囲気中、温度を1570℃として2時間保持することによって焼結体を得た。次に、振動バレル研磨機を用いて、焼結体の表面を研磨した。
【0094】
そして、上述した方法によって得られた焼結体を還元雰囲気中(窒素:水素の比率が88.5体積%:11.5体積%の混合ガス)、1350℃の温度で1時間30分保持することによって、試料No.1~4を得た。
【0095】
得られた各試料につき、XRDを用いて同定を行なった。なお、TiO2-xにおけるxの値は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて求めた。また、各試料を構成する元素の含有量をXRFを用いて求め、それぞれ同定された成分に換算した。さらに、微量成分であるFe、Ni、Co、MnおよびCrの含有量は、グロー放電質量分析装置(GDMS)を用いて求めた。これらの結果を表1に示す。なお、各試料は、表1に示されていない成分として、不可避不純物を含んでいる。
【0096】
また、各試料につき、250nm~2500nmの波長における領域の反射率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製、V-670)を用いて求め、その測定値をグラフとして
図6に示した。また、各試料の上記領域における反射率の最小値Rminおよび最大値RmaxからΔRを算出した。反射率の最小値Rmin、最大値RmaxおよびΔRを表1に示す。
【0097】
ここで、反射率の測定に用いる積分球ユニットはISN-723、基準光源は、波長が250nm~360nmにおける領域を重水素ランプ、波長が360nm~2500nmにおける領域をハロゲンランプとし、測定条件は、測定モードを全反射率、データ取込間隔を1.0nm、UV/Visバンド幅を5.0nm、NIRバンド幅を20.0nmとした。
【0098】
【0099】
表1および
図6に示すとおり、試料No.1~3は、試料No.4よりもRmaxおよびΔRの値が小さかった。この結果より、組成式がTiO
2-x(1≦x<2)として示されるチタンの酸化物を含む酸化アルミニウム質セラミックスからなり、Fe、Ni、Co、MnおよびCrの合計の含有量が260質量ppm以下であれば、波長250nm~2500nmの範囲において、反射率が低く、照射光に対する反射光の光強度の波長分布のばらつきが小さいことがわかった。
【0100】
特に、試料No.1は、上記領域の反射率の差ΔRが6.2%であることから、上述のような使用では、より好適である。
【0101】
各試料につき、室温(20℃)における体積固有抵抗をJIS C 2141:1992に準拠して求めた。測定結果は、以下のとおりである。
試料No.1:1011Ω・m
試料No.2:1012Ω・m
試料No.3:1012Ω・m
試料No.4:1010Ω・m
【0102】
なお、表1に示す成分の試料毎の合計は100質量%になっていないが、表1に示す成分以外の成分は、不可避不純物である。
【符号の説明】
【0103】
20 ランプ装置
21 透光カバー
22 ハウジング
23 灯室
24 前照灯
25 第1センサモジュール
251 第1基板
252 第1可視光カメラ
253 第1LiDARセンサ
253a 発光部
253b 受光部
254 第1遮光部材
255 制御部
256 通信部
257 給電部
258 第1アクチュエータ
26 第2センサモジュール
261 第2基板
262 第2可視光カメラ
263 第2LiDARセンサ
264 ミリ波レーダ
265 第2遮光部材
266 第2アクチュエータ
27 信号処理部
271 第1駆動信号
272 第2駆動信号
30 ヘッドアップディスプレイ
31 車載プロジェクターモジュール
32 反射ミラー
33 マイクロレンズアレイ
34 凸レンズ
35 コンバイナー
36 レンズ保持部材
40 試験装置
41 半導体デバイス
42 載置部
43 コイルバネ
44 載置台
45 コンタクトピン
46 計測回路
47 補助端子
48 板状部材
49 可動部
51 熱源部
52 ヒートシンク
53 冷却用ファン
54 ハロゲンランプ
55 リフレクタ
56 ケース
57 集光ドーム
58 熱伝導部材
59 押圧部材