(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】内燃機関用点火装置
(51)【国際特許分類】
F02P 15/10 20060101AFI20220930BHJP
F02P 3/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
F02P15/10 301C
F02P3/00 B
(21)【出願番号】P 2020547744
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2018036053
(87)【国際公開番号】W WO2020065855
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000174426
【氏名又は名称】日立Astemo阪神株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】内勢 義文
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157541(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/006487(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/060935(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 1/00-3/12、7/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火制御手段からの点火信号のオン・オフによって点火コイルへの通電制御を行うことで、点火コイルの二次側に放電エネルギーを与えて点火プラグに火花放電を起こさせる内燃機関用点火装置において、
前記点火コイルは、点火信号がオンで行われる主一次電流の通電により順方向の磁束量が増加し、点火信号がオフになって主一次電流を遮断することにより順方向の磁束量が減少する主一次コイルと、該主一次コイルに対する通電遮断以降の放電期間内に重畳電流を流すことにより、順方向と逆の遮断方向に磁束を発生させる副一次コイルと、一端側が点火プラグと接続され、前記主一次コイルと副一次コイルの磁束変化が作用して放電エネルギーが与えられる二次コイルと、を有し、
前記副一次コイルへの通電・遮断を行うと共に、副一次コイルへの通電量を変えることで、遮断方向の磁束量を変化させる副一次コイル通電スイッチ手段と、
前記主一次コイルへの通電遮断と同時に前記副一次コイル通電スイッチ手段を動作させて、副一次コイルへの重畳電流供給を開始すると共に、時間経過に伴って重畳電流を増加させるように前記副一次コイル通電スイッチ手段を動作させる重畳制御手段と、を備え
、
前記重畳制御手段は、点火信号のオンで電荷をショートし、点火信号がオフとなった放電開始と共に充電を開始するコンデンサを備え、充電開始後におけるコンデンサの電荷蓄積状態を指標として、時間経過に伴う重畳電流の増加制御を行うことを特徴とする内燃機関用点火装置。
【請求項2】
前記点火コイルの二次側に流れる二次電流を検出する二次電流検出手段と、
前記二次電流検出手段の検出値が所定の重畳促進条件を満たすことに基づいて、前記重畳制御手段による重畳電流の増加を促進させる重畳促進手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火装置。
【請求項3】
前記重畳促進手段は、前記二次電流検出手段により検出された二次電流検出値と、二次電流を維持するために重畳電流の増加を促進する指標として予め定めた増加促進基準値とを対比し、検出された二次電流値が増加促進基準値を越えないことを重畳促進条件として用いることを特徴とす
る請求項2に記載の内燃機関用点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両に搭載される内燃機関用の点火装置に関し、特に、複数の一次コイルを使用して点火プラグに放電を起こす内燃機関用点火装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両搭載の内燃機関として、燃費改善のために直噴エンジンや高EGRエンジンが採用されているが、これらのエンジンは着火性があまり良くないため、点火装置には高エネルギー型のものが必要になる。そこで、古典的な電流遮断原理により点火コイル一次側から点火コイル二次側に放電エネルギーを与えることに加え、もう一つの一次コイルに通電して二次側へ与えるエネルギーを重畳的に高める重ね放電型点火装置を、本件発明者は提案している。(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の点火装置は、点火コイルの一次電流を遮断することで二次側に発生する数Kvの高圧電圧により、点火プラグの放電間隙に絶縁破壊を起こし、点火コイルの二次側に放電電流を流し始めた後に、もう一つの一次コイルに一次電流を流す。もう一つの一次コイルへの通電で生じる磁束の向きは、一次コイルの通電遮断で磁束が減少する向きと同じである。このため、通電遮断による一次コイルの磁束変化と、もう一つの一次コイルへの通電による発生磁束が、二次コイルに作用することとなる。すなわち、二次コイルには、通常の一次電流遮断による磁束変化よりも大きな磁束変化が作用するので、二次側に発生する磁束を加速させ、二次電流を重畳できる。事実、重ね放電型の点火装置によると、点火プラグに比較的大きな放電エネルギーを得ることができるため、燃料への着火性が向上し、ひいては燃費も向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された重ね放電型点火装置は、もう一つの一次コイルへの通電量や通電時間を変えることで、二次側へ与える重畳エネルギーを調整できるものの、その調整を自動的に行う機能を備えていない。例えば、もう一つの一次コイルに流れる電流をフィードバック制御により希望の電流が流れるように調整すれば、もう一つの一次コイルへの通電制御を自動的に最適化できる。また、二次電流の状態によって、もう一つの一次コイルに流れる電流を増加させたり、逆に減少させたりして、二次電流を好適に保つ様にフィードバック制御を行うことでも、もう一つの一次コイルへの通電制御を自動的に最適化できる。
【0006】
しかしながら、このような自動制御の機能を内燃機関用点火装置へ実装する場合、制御ユニットが大型化したり、装置自体が高コスト化したりという問題が生じる。制御ユニットが大型化してしまうと、狭小な車両内での搭載場所を別途確保する必要が生じてしまうので、車体の設計から見直さなければならない場合もある。また、制御ユニットが高コストになってしまうと、それだけ車両価格を上げなければならず、市場競争力を担保できない可能性もある。そのため、もう一つのコイルへの通電制御を自動的に最適化する機能を、複雑な回路で構成したり、複雑なアルゴリズムに基づくコンピュータ制御で実現したりしても、市場へ提供し難くなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、点火プラグに発生した火花放電による着火性を必要十分に向上させる自動制御機能を、大型化・高コスト化させずに搭載できる内燃機関用点火装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、内燃機関用点火装置は、点火制御手段からの点火信号のオン・オフによって点火コイルへの通電制御を行うことで、点火コイルの二次側に放電エネルギーを与えて点火プラグに火花放電を起こさせる内燃機関用点火装置において、前記点火コイルは、点火信号がオンで行われる主一次電流の通電により順方向の磁束量が増加し、点火信号がオフになって主一次電流を遮断することにより順方向の磁束量が減少する主一次コイルと、該主一次コイルに対する通電遮断以降の放電期間内に重畳電流を流すことにより、順方向と逆の遮断方向に磁束を発生させる副一次コイルと、一端側が点火プラグと接続され、前記主一次コイルと副一次コイルの磁束変化が作用して放電エネルギーが与えられる二次コイルと、を有し、前記副一次コイルへの通電・遮断を行うと共に、副一次コイルへの通電量を変えることで、遮断方向の磁束量を変化させる副一次コイル通電スイッチ手段と、前記主一次コイルへの通電遮断と同時に前記副一次コイル通電スイッチ手段を動作させて、副一次コイルへの重畳電流供給を開始すると共に、時間経過に伴って重畳電流を増加させるように前記副一次コイル通電スイッチ手段を動作させる重畳制御手段と、を備える。
【0009】
また、上記の内燃機関用点火装置において、前記重畳制御手段は、点火信号のオンで電荷をショートし、点火信号がオフとなった放電開始と共に充電を開始するコンデンサを備え、充電開始後におけるコンデンサの電荷蓄積状態を指標として、時間経過に伴う重畳電流の増加制御を行う構成でも良い。
【0010】
また、上記の内燃機関用点火装置において、前記点火コイルの二次側に流れる二次電流を検出する二次電流検出手段と、前記二次電流検出手段の検出値が所定の重畳促進条件を満たすことに基づいて、前記重畳制御手段による重畳電流の増加を促進させる重畳促進手段と、を備える構成でも良い。
【0011】
また、上記の内燃機関用点火装置において、前記重畳促進手段は、前記二次電流検出手段により検出された二次電流検出値と、二次電流を維持するために重畳電流の増加を促進する指標として予め定めた増加促進基準値とを対比し、検出された二次電流値が増加促進基準値を越えないことを重畳促進条件として用いる構成でも良い。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の内燃機関用点火装置によれば、副一次コイル通電スイッチ手段と重畳制御手段とによって、副一次コイルへの重畳電流を適切に制御できるので、点火プラグに発生した火花放電による着火性を必要十分に向上させられる。また、副一次コイル通電スイッチ手段と重畳制御手段は、耐熱性および耐ノイズ性の良いディスクリート部品を用いた比較的単純な構造で実現できるので、内燃機関用点火装置自体を小型化・低コスト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る内燃機関用点火装置の概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る内燃機関用点火装置の要部における波形を示した波形図である。
【
図3】第2実施形態に係る内燃機関用点火装置の概略構成図である。
【
図4】第2実施形態に係る内燃機関用点火装置の要部における波形を示した波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、第1実施形態に係る内燃機関用点火装置1を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1に示す内燃機関用点火装置1は、内燃機関の気筒毎に設けられる1つの点火プラグ2に放電火花を発生させる点火コイルユニット10、この点火コイルユニット10の動作タイミングを指示する点火信号Si等を適宜なタイミングで出力する点火制御手段としての内燃機関駆動制御装置3、車両バッテリ等の直流電源4、直流電源4の供給電圧VB+をVBoost+に昇圧する昇圧手段5等で構成される。なお、点火コイルユニット10に供給するVBoost+は、直流電源4から生成する場合に限定されるものではなく、別途、所要電圧の直流電源を設けておき、VBoost+を点火コイルユニット10へ供給しても良い。
【0016】
また、本実施形態に示す内燃機関用点火装置1においては、点火制御手段としての機能が、自動車の内燃機関を統括的に制御する内燃機関駆動制御装置3に含まれるものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ECUといった通常の内燃機関駆動制御装置3が有している点火信号生成機能によって生成された点火信号を受けて、適宜な制御信号を生成し、点火コイルユニット10へ制御信号を出力する点火制御装置を別途設けるようにしても構わない。
【0017】
点火コイルユニット10は、点火コイル11や制御基板等を所要形状のケース12に収納して一体構造としたユニットである。このケース12の適所には、高圧端子121とコネクタ122を設けてあり、高圧端子121を介して点火プラグ2を接続すると共に、第1~第5接続端子122a~122eを備えるコネクタ122を介して、内燃機関駆動制御装置3や直流電源4等と接続する。
【0018】
点火コイル11は、主一次コイル111a(例えば、114ターン)と副一次コイル111b(例えば、20ターン)に生ずる磁束を二次コイル112(例えば、9348ターン)に効率良く作用させるものである。例えば、高透磁性材料で形成したセンターコア113を取り巻くように主一次コイル111aおよび副一次コイル111bを配置し、更にその外側に二次コイル112を配置した構造である。
【0019】
主一次コイル111aの一方端は、コネクタ122の第1接続端子122aを介して直流電源4と接続され、電源電圧VB+(例えば、12V)が印加される。主一次コイル111aの他方端は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いた点火スイッチ13のコレクタに接続される。点火スイッチ13のエミッタはコネクタ122の第5接続端子122eを介して接地点GNDに接続される。二次コイル112の一方端は高圧端子121を介して点火プラグ2と接続され、他方端はコネクタ122の第5接続端子122eを介して接地点GNDに接続される。なお、二次コイル112から接地へ至る間の線路には、二次コイル112から接地点GNDに向かって順方向となる整流素子D1(例えば、接地側にカソードを、二次コイル112側にアノードをそれぞれ接続したダイオード)を設け、二次電流I2の流路方向を規制する。
【0020】
放電サイクルの適宜なタイミングで内燃機関駆動制御装置3より出力される点火信号Siは、コネクタ122の第4接続端子122dを介して、点火コイルユニット10内の点火スイッチ13のゲートに入力される。そして、点火信号Siが点火スイッチ13のゲートに入力されると(例えば、点火信号Siの信号レベルがLからHに変わると)、点火スイッチ13がオンになり、主一次コイル111aの非給電側端部が接地点GNDに接続される。これにより、主一次コイル111aには、給電側から接地側に向かう主一次電流I1が流れ始め、主一次電流I1の流量は増加してゆき、主一次電流I1aの流量に応じて発生する通電磁束の磁束量が磁界のエネルギーとして蓄積される。なお、点火コイル11の二次側には、二次コイル112や接続配線等の微少なコンデンサ成分により電気エネルギーが蓄積される。
【0021】
上記のようにエネルギーが蓄積された後、主一次コイル111aへの通電が所定の点火タイミングで遮断されると、高圧の起電力が二次コイル112に生じて点火プラグ2の放電ギャップ間に火花放電が発生し、気筒燃焼室内の混合気に着火する。このとき、主一次コイル111aには、通常の主一次電流I1aとは逆向きの電流を流そうとする逆起電力が生ずる。この逆起電力が点火スイッチ13のコレクタ-エミッタ間に印加されると、点火スイッチ13が故障したり、点火スイッチ13の劣化を早めたりする危険性がある。そこで、点火スイッチ13と並列にバイパス線路14を設けると共に、このバイパス線路14の接地点側から点火コイル11側に向かって順方向となる整流素子D2(例えば、点火スイッチ13のコレクタ側にカソードを、点火スイッチ13のエミッタ側にアノードをそれぞれ接続したダイオード)を設けた。
【0022】
一方、主一次コイル111aと同様に、鉄心113を介して二次コイル112に磁界を作用させることが可能な副一次コイル111bは、その一方端がコネクタ122の第2接続端子122bを介して昇圧手段5と接続され、昇圧電源VBoost+が供給される。VBoost+の給電線路には、副一次コイル通電スイッチ手段15と整流素子D3を設ける。整流素子D3は、副一次コイル通電スイッチ手段15から副一次コイル111bに向かって順方向となる(例えば、ダイオードのカソードを副一次コイル111b側に、アノードを副一次コイル通電スイッチ手段15側にそれぞれ接続する)ように設ける。これにより、副一次電流I1b(以下、重畳電流という)の流路方向が規制され、副一次コイル通電スイッチ手段15側へ逆向きの電流が流れることを阻止できる。副一次コイル111bの他方端は、コネクタ122の第5接続端子122eを介して接地点GNDに接続される。
【0023】
副一次コイル通電スイッチ手段16は、副一次コイル111bへの通電・遮断を行うと共に、副一次コイル111bへの通電量を変えることで、遮断方向(主一次コイル111aの通電磁束を減じる方向)に生じる重畳磁束の磁束量を変化させることができる。このようなスイッチングと流量制御の機能は、種々の回路構造で実現できるが、本実施形態では、パワーMOS-FETを用いた第1スイッチ素子151とnpn型バイポーラトランジスタを用いた第2スイッチ素子152で構成した例を示す。なお、通電磁束と重畳磁束の向きを逆にするためには、主一次コイル111aと副一次コイル111bの巻回方向を逆向きにするか、主一次コイル111aへの給電方向と副一次コイル111bへの給電方向を逆向きにしておけば良い。
【0024】
上述した副一次コイル通電スイッチ手段15の動作は、重畳制御手段16の制御によって行う。重畳制御手段16は、主一次コイル111aへの通電遮断と同時に副一次コイル通電スイッチ手段15を動作させて、副一次コイル111bへの重畳電流供給を開始させる。その後の時間経過に伴って、重畳制御手段16は、副一次コイル111bに流れる重畳電流I1bを増加させるように、副一次コイル通電スイッチ手段15の動作を制御する。重畳制御手段16による副一次コイル通電スイッチ手段15の制御は、副一次コイル通電制御信号Scによって行う。このような副一次コイル通電制御信号Scの生成機能は、種々の回路構造で実現できるが、本実施形態では、第1コンパレータ161とコンデンサCと第3スイッチ素子162を用いて構成した例を示す。なお、重畳制御手段15では、重畳電流I1bの流量を利用するため、副一次コイル111bからコネクタ122へ至る間の流路に抵抗R1を介挿し、この電圧変化を重畳電流検出信号線17によって取得できる構造とした。
【0025】
次に、副一次コイル通電手段15の回路について説明する。第1スイッチ素子151のソースはVBoost+の給電側に、第1スイッチ素子151のドレインは副一次コイル111b側(正確には、整流素子D3のアノード側)にそれぞれ接続してある。よって、第1スイッチ素子151のゲートに、ゲートしきい値電圧以上の電圧が印加されると、第1スイッチ素子151がオンとなって、副一次コイル111bへVBoost+が供給される。また、第1スイッチ素子151は、ゲート-ソース間電圧を上げることによって、大きなドレイン電流を流すことができるので、ゲートへの印加電圧を上げることにより、重畳電流I1bを増加させることができる。
【0026】
第1スイッチ素子151の給電側には、給電線と接地線を繋ぐ線路を形成し、該線路中に抵抗R2と第2スイッチ素子152を設けてある。そして、抵抗R2と第2スイッチ素子152との間の電位が第1スイッチ素子151のゲート入力となる。npn型バイポーラトランジスタを用いた第2スイッチ素子152のコレクタは抵抗R2側に、エミッタは接地側に接続してあるので、ベースへの入力電流に応じてエミッタ-コレクタ間電流を制御できる。すなわち、第2スイッチ素子152がオフの時には、第1スイッチ素子151のベースは、電源ラインと同電位であるため、第1スイッチ素子151はオフとなり、重畳電流I1bは流れない。第2スイッチ素子152がオンになって、第1スイッチ素子151のベースにベースしきい値電圧以上の電位になると、第1スイッチ素子151はオンとなり、重畳電流I1bが流れ始める。更に、第2スイッチ素子152のエミッタ-コレクタ間電流を大きくすると、抵抗R2による電圧降下分が減少し、第1スイッチ素子151のベースに印加される電圧が高くなり、第1スイッチ素子151のドレイン電流を大きくできる。すなわち、重畳電流I1bを増加させることができる。
【0027】
以上のように、本実施形態の副一次コイル通電スイッチ手段15によれば、第2スイッチ素子152のベースに副一次コイル通電制御信号Scを入力することで、重畳電流I1bのオン・オフおよび流量制御が可能となる。
【0028】
次に、重畳制御手段16の回路について説明する。第1コンパレータ161は、オープンコレクタ方式のコンパレータを用いる。オープンコレクタ方式のコンパレータは、出力VoutのHレベル電圧を任意に設定できるので、抵抗R3を介して入力される重畳信号Spでプルアップ電圧を設定する。重畳信号Spは、内燃機関駆動制御装置3から供給され、コネクタ122の第3接続端子122cを介して点コイルユニット10へ入力されるものである。第1コンパレータ161の出力Voutは、副一次コイル通電スイッチ手段15における第2スイッチ素子152のベース入力となる。すなわち、第1コンパレータ161の出力電圧に応じて、第2スイッチ素子152への供給電流を変化させることができるので、第1コンパレータ161の出力に応じた副一次コイル通電制御信号Scが生成される。
【0029】
また、内燃機関駆動制御装置3からの重畳信号Spは、そのオン・オフによって重畳制御の開始と終了を指示するものであるから、重畳信号Spがオフのときに、副一次コイル通電制御信号Scにより副一次コイル通電スイッチ手段15が動作させてはいけない。すなわち、重畳信号Spが入力される(例えば、信号レベルがLからHに変わる)タイミング以降に副一次コイル通電制御信号Scを出力し、重畳信号Spが停止する(例えば、信号レベルがHからLに変わる)タイミングで副一次コイル通電制御信号Scを確実に停止させなければならない。この点についても、オープンコレクタ方式のコンパレータを用い、重畳信号Spをプルアップ電圧としている第1コンパレータ161であれば、問題ない。重畳信号Spがオフのときは、第1コンパレータ161の論理がHであっても出力VoutはLになるから、副一次コイル通電スイッチ手段15を動作させるような副一次コイル通電制御信号Scが生成されることはない。
【0030】
第1コンパレータ161の反転入力Vin(-)には、重畳電流検出信号線17を介して、重畳電流に応じた電圧信号が入力される。一方、第1コンパレータ161の非反転入力Vin(+)には、増加指標信号線163から重畳電流I1bを増加させる指標となる信号が入力される。この増加指標信号線163には、電源電圧VB+を抵抗R4aと抵抗R4bで分圧した電圧が印加され、この電圧でコンデンサCが充電される。すなわち、コンデンサCの蓄積電荷がゼロであれば、増加指標信号線163の電位はゼロになり、時間経過に伴ってコンデンサCに電荷が蓄積されて行くと増加指標信号線163の電位は上がる。なお、コンデンサCの充放電特性により、必ずしも点火信号Siがオンの間に全電荷を放出してゼロ電位になるわけではないし、コンデンサCが充電電圧(抵抗R4aと抵抗R4bの分圧比に応じた電圧)に達する定常状態まで充電する必要はなく、時間経過に対する電荷蓄積の直線性が良い範囲で使うことが望ましい。
【0031】
コンデンサCの充電特性に応じた電荷蓄積特性線を指標として、第1コンパレータ161の出力電圧を変化させることができれば、副一次コイル111bへの重畳電流供給を開始した後、徐々に重畳電流I1bを増加させて行くことができる。かくするためには、所要のタイミングでコンデンサCを放電(電荷をショート)させ、重畳制御開始のタイミングでコンデンサCを充電可能にする機能と、充電開始後におけるコンデンサの電荷蓄積状態を副一次コイル通電制御信号Scに反映させる機能が必要である。
【0032】
本実施形態では、コンデンサCの充放電タイミングを制御するために、点火信号Siと第3スイッチ素子162を用いる。第3スイッチ素子162としては、npn型バイポーラトランジスタを用い、エミッタを増加指標信号線163に、コレクタを接地点GNDに接続する。そして、点火信号Siが第3スイッチ素子162のゲートに入力される(例えば、信号レベルがLからHになる)と、第3スイッチ素子162がオンになるので、増加指標信号線163が接地電位に落ち、コンデンサCの放電が行われる。その後、点火信号Siが停止する(例えば、信号レベルがHからLになる)と、第3スイッチ素子162がオフになるので、抵抗R4aと抵抗R4bの分圧比に応じた電圧でコンデンサCの充電が開始される。
【0033】
また、本実施形態では、オープンコレクタ方式のコンパレータを第1コンパレータ161に用いることで、充電開始後におけるコンデンサCの電荷蓄積状態を副一次コイル通電制御信号Scに反映させる機能を実現した。第1コンパレータ161の非反転入力である増加指標信号(コンデンサCの蓄積状態を反映した電圧信号)と反転入力である重畳電流検出信号とが共に同程度の値(但し、増加指標信号≧重畳電流検出信号)であれば、両信号の電位差が小さくなる。非反転入力と反転入力の電位差が小さいと、コンパレータ出力の論理レベルがLからHに変わるまでの立ち上がり時間が長くなる。すなわち、コンデンサCの充放電特性、増加指標信号線163への印加電圧、重畳電流検出信号線17の信号検出レベル等を適宜に設定することで、重畳信号Spのオン時間幅に第1コンパレータ161の立ち上がり時間を対させることができる。そして、第1コンパレータ161の出力Voutが徐々に高くなると、副一次コイル通電制御信号Sc(第2スイッチ素子152のベース電流)も徐々に高くなるので、副一次コイル通電スイッチ手段15による重畳電流の増加制御を実現できる。
【0034】
次に、内燃機関用点火装置1における要部の波形を示した
図2に基づき、重畳制御を行わない場合の回路動作と、重畳制御を行う場合の回路動作を説明する。
【0035】
まず、重畳制御を行わない点火サイクルについて説明する。点火信号Siがオンになって主一次コイル111aへの通電が開始されると、主一次電流I1aが流れ始める。このとき、点火信号Siがオンになることで、第3スイッチ素子162がオンになるので、コンデンサCの電荷がショートされ、第1コンパレータ161の非反転入力Vin(+)の入力電位はLに落ちる。その後、点火信号Siがオフになって主一次コイル111aへの通電が遮断されると、二次コイル112に放電エネルギーが与えられ、点火プラグ2に火花放電が生じて二次電流I2が流れ始める。点火信号Siがオフになったとき、第3スイッチ素子162もオフになるので、コンデンサCの充電が開始されるが、重畳信号Spはオフのままであり、第1コンパレータ161の出力VoutはLのままである。すなわち、重畳信号Spがオフのままであれば、重畳制御は行われないので、点火プラグ2の放電開始後に点火コイル二次側へ重畳的にエネルギーが与えられることは無く、主一次コイル111aにおける順方向の磁束減少に伴って二次電流I2も減少して行く。
【0036】
一方、重畳制御を行う点火サイクルでは、点火信号Siのオフと同時に重畳信号Spをオンにする。重畳信号Spがオンになると、第1コンパレータ161の出力にプルアップ電圧が与えられるので、副一次コイル通電制御信号Scが立ち上がる。なお、重畳信号Spがオンになった直後、コンデンサCは放電状態であり、副一次コイル111bには重畳電流I1bが流れていないので、第1コンパレータ161の出力VoutはLであるが、第2スイッチ素子152のベースには、ベースしきい値電圧を超えるベース電流が供給されるように、抵抗R3の値を設定しておく。したがって、重畳信号Spがオンになった直後から第1スイッチ素子151もオンとなり、副一次コイル111bへの電源供給が実行され、重畳電流I1bが流れ始める。
【0037】
重畳信号Spがオンになって重畳電流I1bが流れ始めると、時間経過に伴ってコンデンサCの充電量は徐々に増加し、重畳電流検出信号線17より検出される重畳信号も徐々に増加する。第1コンパレータ161の非反転入力と反転入力の両信号は共に徐々に増加して行くので、電位差が一気に開くことは無いため、第1コンパレータ161の出力がLからHにかわるまでの立ち上がり時間が長くなる。このため、副一次コイル通電制御信号Scは一気にマックスまで上昇せず、徐々に上昇して行くこととなる。その結果、第2スイッチ素子152のベース電流が徐々に上昇し、第2スイッチ素子152のコレクタ-エミッタ間電流も徐々に増加するので、第1スイッチ素子151のドレイン電流も徐々に増加する。すなわち、本実施形態では、ディスクリート部品で比較的安価かつ小型に構成できる副一次コイル通電スイッチ手段15および重畳制御手段16を用いることで、重畳電流I1bを徐々に増加させる制御を実現できる。また、重畳電流I1bが徐々に上昇することで、回帰的に第1コンパレータ161の反転入力となる重畳電流検出信号も徐々に上昇することとなり、コンデンサCの電荷蓄積特性線に追随する特性線を得ることができ、立ち上がり時間の遅延化を維持できる。
【0038】
上記のような副一次コイル通電スイッチ手段15と重畳制御手段16を用い、重畳電流I1bを徐々に増加させる制御を行うと、二次コイル112に作用する磁束の変化量が好適に保持されるので、二次側に発生する起電圧を高いまま維持することができる。すなわち、主一次コイル111aへの電流遮断後に順方向磁束が遮断方向に減ぜられる磁束変化は、時間経過と共に減少するが、遮断方向の重畳磁束を徐々に増やすように重畳電流I1bを副一次コイル111bに流すことで、磁束変化の減少を補完するのである。このような重畳制御を行えば、重畳信号Spで指示された期間は、二次コイル112に対して同程度の磁束変化が作用する状態を維持できるので、二次電流I2を高い値に保つことができ、点火プラグ2に発生した火花放電による着火性を必要十分に向上させられる。
【0039】
次に、第2実施形態に係る内燃機関用点火装置1′を、添付図面に基づいて詳細に説明する。上述した第1実施形態の内燃機関用点火装置1と同一の構成には、同一符号を付して、説明を省略する。
【0040】
第2実施形態の内燃機関用点火装置1′では、点火プラグ2に発生した火花放電による着火性を必要十分に向上させるため、二次電流I2を高く保つ制御を自動で行う構成を設けたものである。かくするためには、指標となる二次電流I2を検出する機能と、副一次コイル通電スイッチ手段15に働きかけて重畳電流I1bの流量増加を促進させる機能が必要である。
【0041】
点火コイル11の二次側に流れる二次電流I2を検出する機能(二次電流検出手段)は、二次電流I2の流路適所(例えば、整流素子D1のカソード側と第5接続端子122eとの間)に介挿した抵抗R5と、この電圧変化を取得する二次電流検出信号線18から成る。一方、副一次コイル通電スイッチ手段15に働きかけて重畳電流I1bの流量を促進させる機能として、重畳促進手段19を設けた。重畳促進手段19は、種々の回路構造で実現できるが、本実施形態では、第2コンパレータ191と第4スイッチ素子192を用いて構成した例を示す。
【0042】
重畳促進手段19は、二次電流検出手段の検出値が所定の重畳促進条件を満たすことに基づいて、重畳制御手段16による重畳電流の増加を促進させるものである。かかる制御を行う場合、二次電流I2が低下して良好な着火性を維持できなくなる状態を回避するために重畳電流I1bの増加を促進させるか否かを判断するための条件として、重畳促進条件の設定が必要である。例えば、重畳制御を行っている期間中、二次電流I2が所定の基準値よりも低い場合に、重畳制御手段16から出力される副一次コイル通電制御信号Scの増加率を上げてやれば、副一次コイル通電スイッチ手段15により重畳電流I1bの増加率も高められる。
【0043】
そこで、第2コンパレータ191の非反転入力Vin(+)に二次電流検出手段により検出された二次電流検出値(二次電流検出信号線18の信号電圧)を入力し、反転入力Vin(-)に増加促進基準値を入力する。増加促進基準値は、二次電流I2を基準値以上に維持するために重畳電流の増加を促進する指標として予め定めた値である、二次電流検出値に対応した電圧値を用いる。本実施形態では、電源電圧VB+を抵抗R5aと抵抗R5bで分圧した電圧を増加促進基準値として用い、抵抗R5aと抵抗R5bの間に接続された増加促進基準信号線193を介して、第2コンパレータ191の反転入力Vin(-)に入力する。かくすれば、二次電流検出値をと増加促進基準値との比較結果が、第2コンパレータ191の出力Voutとして得ることができる。なお、第2コンパレータ191は、オープンコレクタ方式のコンパレータを用いるものとし、電源電圧VB+が抵抗R8を介して入力されるプルアップ電圧を、出力VoutのHレベル電圧に設定する。
【0044】
第4スイッチ素子192は、例えば、pnp型のバイポーラトランジスタを用いる。第4スイッチ素子192のエミッタは、コネクタ122の第1接続端子122aを介して直流電源4と接続し、電源電圧VB+が印加される。第4スイッチ素子192のコレクタは、抵抗R6を介して重畳制御手段16の増加指標信号線163に接続され、抵抗R6と抵抗R4bの分圧比に応じた電圧信号(増加促進信号Su)がコンデンサCに印加される。このとき、抵抗R6の抵抗値を抵抗R4aの抵抗値よりも低く設定しておけば、抵抗R6を介して増加指標信号線163に印加される電圧の方が、抵抗R4aを介して増加指標信号線163に印加される電圧よりも高くなる。すなわち、「抵抗R4a>抵抗R6」に設定しておけば、第4スイッチ素子192がオンになったとき、増加指標信号線163に高い電圧が印加されることとなり、コンデンサCの充電速度を上げることができる。
【0045】
第4スイッチ素子192のベースには、抵抗R8を介して第2コンパレータ191の出力Voutが入力される。第2コンパレータ191の出力VoutがHのとき、第4スイッチ素子192のベース電流が流れないため、第4スイッチ素子192はオフとなり、増加促進信号Suが重畳制御手段16に供給されることは無い。一方、第2コンパレータ191の出力VoutがLになると第4スイッチ素子192のベース電流が流れ、第4スイッチ素子192がオフとなり、増加促進信号Suが重畳制御手段16に供給される。
【0046】
かく構成した重畳促進手段19においては、二次電流検出値が増加促進基準値以下のとき(もしくは、満たないとき)、増加促進信号Suを重畳制御手段16に供給するので、コンデンサCの電荷蓄積速度が速められ、重畳電流I1bの増加が促進される。これにより、副一次コイル111bに生ずる重畳磁束が増加して、二次コイル112に作用する磁束変化が大きくなるので、点火コイル二次側の起電力が高まり、二次電流I2を高い値に保つことが可能となる。一方、二次電流検出値が増加促進基準値に満たないとき(もしくは、以下のとき)、重畳促進手段19は増加促進信号Suを重畳制御手段16へ供給しないので、コンデンサCの電荷蓄積速度が速められることはない。すなわち、本実施形態の重畳促進手段19では、二次電流検出値が増加促進基準値以下であること(もしくは、満たないこと)を重畳促進条件として用い、重畳促進条件を満たすことに基づいて、重畳制御手段16による重畳電流の増加を促進させるように制御するのである。
【0047】
次に、内燃機関用点火装置1′における要部の波形を示した
図4に基づき、重畳制御を行わない場合の回路動作と、重畳制御を行う場合の回路動作を説明する。
【0048】
まず、重畳制御を行わない点火サイクルについて説明する。点火信号Siがオンになって主一次コイル111aへの通電が開始されると、主一次電流I1aが流れ始める。このとき、点火信号Siがオンになることで、第3スイッチ素子162がオンになるので、コンデンサCの電荷がショートされ、第1コンパレータ161の非反転入力Vin(+)の入力電位はLに落ちる。このとき、二次電流I2は流れていないので、重畳促進手段19における第2コンパレータ191の出力VoutはLとなるため、第4スイッチ手段192がオンとなり、重畳促進信号Suが出力されている。しかしながら、第3スイッチ素子162がオンになっているため、増加指標信号線163は接地電位となり、コンデンサCが重畳促進信号Suによって充電されることは無い。
【0049】
その後、点火信号Siがオフになって主一次コイル111aへの通電が遮断されると、二次コイル112に放電エネルギーが与えられ、点火プラグ2に火花放電が生じて二次電流I2が流れ始める。点火信号Siがオフになったとき、第3スイッチ素子162もオフになるので、コンデンサCの充電が開始される。このとき、非常に大きな二次電流I2が流れ、重畳促進手段19における第2コンパレータ191の出力VoutはHとなるため、第4スイッチ手段192がオフとなり、重畳促進信号Suがオフとなる。したがって、コンデンサCは、高圧の重畳促進信号Suによって充電されず、抵抗R4aを介して印加される電圧によって充電されることとなる。しかしながら、重畳信号Spがオフのままであるから、副一次コイル通電制御信号Scは出力されないので、重畳制御が行われることはない。よって、点火プラグ2の放電開始後に点火コイル二次側へ重畳的にエネルギーが与えられることは無く、主一次コイル111aにおける順方向の磁束減少に伴って二次電流I2も減少して行く。
【0050】
一方、重畳制御を行う点火サイクルでは、点火信号Siのオフと同時に重畳信号Spをオンにする。重畳信号Spがオンになると、第1コンパレータ161の出力にプルアップ電圧が与えられるので、副一次コイル通電制御信号Scが立ち上がる。なお、放電開始直後は重畳促進信号Suがオフとなるため、放電状態のコンデンサCは、抵抗R4を介して印加される電圧によって充電され、その蓄積電荷状態を指標とする副一次コイル通電制御信号Scが出力される。したがって、重畳信号Spがオンになった直後から、副一次コイル通電スイッチ手段15による副一次コイル111bへの電源供給が実行され、重畳電流I1bが流れ始める。
【0051】
重畳信号Spがオンになって重畳電流I1bが流れ始めると、時間経過に伴ってコンデンサCの充電量は徐々に増加し、重畳電流検出信号線17より検出される重畳信号も徐々に増加する。しかしながら、二次電流I2が次第に低下して、二次電流検出値が増加促進基準値に達する(あるいは、未満になる)と、重畳促進条件が成立するので、重畳促進手段19は重畳促進信号Suがオンにする。これにより、コンデンサCは重畳促進信号Suの電圧で充電されるようになるので、抵抗R4を介して印加される電圧によって充電されていたときよりも電荷蓄積速度が上がる。そして、コンデンサCの蓄積電荷状態を指標とする副一次コイル通電制御信号Scの上昇率が上がり、副一次コイル通電スイッチ手段15による重畳電流I1bの増加率も上がるので、点火コイル二次側へ与える放電エネルギーも増大し、二次電流I2の低減が抑制される。
【0052】
その後、二次電流I2が上昇して、再び重畳促進条件が成立しなくなると、重畳促進手段19は重畳促進信号Suがオフにし、コンデンサCの電荷蓄積速度を通常時に戻す。これにより、点火コイル二次側へ与える放電エネルギーは低下し、二次電流I2の上昇が抑制される。その後、二次電流I2が低下して、再び重畳促進条件が成立すると、重畳促進手段19は重畳促進信号Suをオンにし、コンデンサCの電荷蓄積速度を高める。これにより、点火コイル二次側へ与える放電エネルギーは増大し、二次電流I2の低減が抑制される。すなわち、重畳信号Spがオンの間には、重畳促進手段19が機能することで、二次電流I2が高くなりすぎたり低くなり過ぎたりすることを自動で制御できる。なお、コンデンサCの蓄積電荷が増えて、重畳促進信号Suの電圧に近づくと、時間経過に対する蓄積電荷量の直線性が悪くなる。このため、重畳信号Spがオンになってからの時間経過が長くなり、コンデンサCの充電電圧が重畳促進信号Suの印加電圧に近づくと、コンデンサCの電荷蓄積速度を高め難くなり、重畳促進機能を発揮できなくなる可能性がある。この点を考慮して、重畳信号Spによる重畳時間に適するように、コンデンサCや重畳促進信号等を設定しておくことが望ましい。
【0053】
上記のような重畳促進手段19を用い、重畳電流I1bの増加を促進させたり、通常の増加状態へ戻したりする制御を行うと、二次コイル112に作用する磁束の変化量を好適に保持できるので、二次側に発生する起電圧を高いまま維持することができる。すなわち、本実施形態の内燃機関用点火装置1′によれば、点火プラグ2に発生した火花放電による着火性を必要十分に向上させるために、二次電流I2を高い値に保ちつつも、過度に二次電流I2を上昇させて、電力消費を高めてしまうことを抑制できる。しかも、重畳促進手段19は、第2コンパレータ191や第4スイッチ素子192といったディスクリート部品で比較的安価かつ小型に構成できる
【0054】
以上、本発明に係る内燃機関用点火装置の実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない範囲で、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。
【符号の説明】
【0055】
1 内燃機関用点火装置(第1実施形態)
11 点火コイル
111a 主一次コイル
111b 副一次コイル
112 二次コイル
15 副一次コイル通電スイッチ手段
16 重畳制御手段
2 点火プラグ
3 内燃機関駆動制御装置
4 直流電源