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特許7150047針鉄鉱を含むリチウム二次電池用正極及びこれを備えたリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】針鉄鉱を含むリチウム二次電池用正極及びこれを備えたリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20220930BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220930BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220930BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020554884
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2020001638
(87)【国際公開番号】W WO2020166870
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0016498
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スンフン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ドンジュン・イ
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】韓国特許第10-1541014(KR,B1)
【文献】特許第5113975(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/054803(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/13
H01M 4/38
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質、導電材及びバインダーを含むリチウム二次電池用正極であって、前記リチウム二次電池用正極はリチウム-硫黄電池用の正極であり、
前記正極は、ロッド形状の1次粒子が凝集して形成される2次粒子である針鉄鉱を含み、
前記2次粒子である針鉄鉱は、ウニ状の針鉄鉱であり、
前記ウニ状の針鉄鉱の含量は、正極における活物質、導電材及びバインダーを含むベース固形分100質量部に対して1質量部ないし15質量部であり、
前記正極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一面に、活物質、導電材、バインダー及びウニ状の針鉄鉱を含んで形成された電極活物質層とを含み、
前記電極活物質層の気孔度は60%ないし75%である、リチウム二次電池用正極。
【請求項2】
前記針鉄鉱の含量は、リチウム二次電池の正極に含まれるベース固形分100質量部に対して1ないし10質量部であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項3】
前記ロッド形状は直径が10ないし50nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項4】
前記ロッド形状は、長さ50ないし500nmであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項5】
前記針鉄鉱は平均粒径が500nmないし5μmであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項6】
前記活物質は硫黄‐炭素複合体であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項7】
前記硫黄‐炭素複合体は、硫黄‐炭素複合体100質量部を基準にして硫黄の含量が60質量部ないし80質量部であることを特徴とする請求項に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項8】
前記電極活物質層の気孔度は65%ないし70%であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項9】
正極、負極、これらの間に介在された分離膜及び電解質を含み、
前記正極は、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極であるリチウム二次電池。
【請求項10】
前記リチウム二次電池はリチウム‐硫黄電池であることを特徴とする請求項に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針鉄鉱を正極添加剤で含むリチウム二次電池用正極及びこれを備えて初期放電容量及び寿命特性が改善されたリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は、2019年2月13日付韓国特許出願第10‐2019‐0016498号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
【背景技術】
【0003】
二次電池は1回のみ放電可能な一次電池と違い、持続的な充電及び放電が可能な電気貯蔵器具であって、1990年代以後携帯用電子機器の重要電子部品として位置付けられた。特に、リチウムイオン二次電池は1992年日本ソニー(Sony)社によって常用化された以来、スマートフォン、デジカメ、ノートパソコンなどのような携帯用電子機器の核心部品として情報化時代をリードしてきた。
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池はその活用領域をもっと広げながら清掃機、電動工具の電源と電気自転車、電気スクーターのような分野に使われる中型電池から、電気自動車(electric vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle;HEV)、プラグ‐インハイブリッド電気自動車(Plug‐in hybrid electric vehicle;PHEV)、各種ロボット及び大型電力貯蔵装置(Electric Storage System;ESS)のような分野に使われる大容量電池に至るまで速いスピードで需要を増やしている。
【0005】
しかし、現在まで出ている二次電池の中で最も優れる特性を有するリチウム二次電池も電気自動車、PHEVのような輸送機構に活発に使われるには幾つかの問題点があり、その中で最大の問題点は容量の限界である。
【0006】
リチウム二次電池は基本的に正極、電解質、負極などのような素材で構成され、その中で正極及び負極素材が電池の容量(capacity)を決めるので、リチウムイオン二次電池は正極と負極の物質的な限界によって容量に制約を受ける。特に、電気自動車、PHEVのような用途に使用される二次電池は一回充電した後で最大限に長く使わなければならないので、二次電池の放電容量がとても重要視される。電気自動車の販売に最大の制約点として指摘されるのは、1回充電した後で走行できる距離が一般ガソリンエンジン自動車より非常に短いという点である。
【0007】
このようなリチウム二次電池の容量限界は、多くの努力にもかかわらずリチウム二次電池の構造及び材料の制約によって完全な解決が難しい。よって、リチウム二次電池の容量問題を根本的に解決するためには既存の二次電池の概念を飛び越える新概念二次電池の開発が要求される。
【0008】
リチウム‐硫黄電池は既存のリチウムイオン二次電池の基本原理であるリチウムイオンの層状構造の金属酸化物及び黒鉛への挿入/脱離(intercalation)反応によって決まる容量限界を飛び越え、遷移金属の代替及び費用節減などができる新しい高容量、低価電池システムである。
【0009】
リチウム‐硫黄電池は、正極でリチウムイオンと硫黄の変換(conversion)反応(S+16Li+16e→8LiS)から出る理論容量が1,675mAh/gに至って、負極はリチウム金属(理論容量:3,860mAh/g)を使って電池システムの超高容量化が可能である。また、放電電圧は約2.2Vなので、理論的に正極、負極活物質の量を基準にして2,600Wh/kgのエネルギー密度を示す。これは層状構造の金属酸化物及び黒鉛を使用する常用リチウム二次電池(LiCoO/graphite)のエネルギー理論的エネルギー密度である400Wh/kgよりも6倍ないし7倍ほど高い数値である。
【0010】
リチウム‐硫黄電池は2010年頃ナノ複合体の形成を通じて電池性能が画期的に改善できることが知られた以来、新しい高容量、環境にやさしい性質、低価のリチウム二次電池として注目され、現在、次世代電池システムとして世界中で集中的な研究が行われている。
【0011】
現在まで明らかになったリチウム‐硫黄電池の主な問題点の一つは、硫黄の電気伝導度が5.0×10‐14S/cmほどで不導体に近いため電極で電気化学反応が容易ではなく、とても大きい過電圧によって実際の放電容量及び電圧が理論に及ばない点である。初期研究者らは、硫黄とカーボンの機械的なボールミーリングやカーボンを利用した表面コーティングのような方法で性能を改善しようとしたが、さほど実効はなかった。
【0012】
電気伝導度によって電気化学反応が制限される問題を効果的に解決するためには、他の正極活物質の一つであるLiFePOの例のように(電気伝導度:10‐9ないし10‐10S/cm)粒子の大きさを数十ナノメートル以下の大きさに減らして伝導性物質で表面処理する必要があるが、このために様々な化学的(ナノサイズの多孔性炭素ナノ構造体、あるいは金属酸化物構造体へのmelt impregnation)、物理的方法(high energy ball milling)などが報告されている。
【0013】
もう一つのリチウム‐硫黄電池と係わる主要問題点は、放電途中で生成される硫黄の中間生成体であるリチウムポリスルフィド(lithium polysulfide)の電解質への溶解である。放電が進められるにつれ硫黄(S)はリチウムイオンと連続的に反応してS→Li→(Li)→Li→Li2→LiSなどでその相(phase)が連続的に変わるようになるが、その中で硫黄が長く並んだチェーン形態であるLi、Li(リチウムポリスルフィド)などは、リチウムイオン電池で使われる一般的な電解質で容易に溶解される性質がある。このような反応が発生すれば可逆正極容量が大きく減るだけでなく、溶解されたリチウムポリスルフィドが負極へ拡散して様々な副反応(side reaction)を起こすようになる。
【0014】
リチウムポリスルフィドは、特に、充電過程中にシャトル反応(shuttle reaction)を起こすが、これによって充電容量がずっと増加するようになって充放電効率が急激に低下する。最近、このような問題を解決するために様々な方法が提示されたが、大きくは、電解質を改善する方法、負極の表面を改善する方法、正極の特性を改善する方法などに分けることができる。
【0015】
電解質を改善する方法は、新規組成の機能性液体電解質、高分子電解質、イオン性液体(ionic liquid)など新しい電解質を使用してポリスルフィドの電解質への溶解を抑制したり、粘度などの調節を通じて負極への分散速度を制御してシャトル反応を最大限に抑制する方法である。
【0016】
負極表面に形成されるSEIの特性を改善してシャトル反応を制御する研究が活発に行われているが、代表的にLiNOのような電解質添加剤を投入してリチウム負極の表面にLiNO、LiSOなどの酸化膜を形成して改善する方法、リチウム金属の表面に厚い機能型SEI層を形成する方法などがある。
【0017】
最後に、正極の特性を改善する方法は、ポリスルフィドの溶解を防ぐことができるように正極粒子の表面にコーティング層を形成したり、溶解されたポリスルフィドを取ることができる多孔性物質を添加する方法などがあるが、代表的に伝導性高分子で硫黄粒子が入っている正極構造体の表面をコーティングする方法、リチウムイオンが伝導される金属酸化物で正極構造体の表面をコーティングする方法、リチウムポリスルフィドを多量吸収することができる比表面積が広くて気孔が大きい多孔性金属酸化物を正極に添加する方法、炭素構造体の表面にリチウムポリスルフィドを吸着することができる作用基(functional group)を付着する方法、グラフェンあるいはグラフェンオキシドなどを利用して硫黄粒子を包む方法などが提示された。
【0018】
このように努力してはいるが、このような方法は多少複雑なだけでなく、活物質である硫黄を入れることができる量が制限されるという問題がある。よって、このような問題を複合的に解決し、リチウム二次電池の性能を改善するための新しい技術の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】韓国登録特許第10‐0482279号(2005年03月31日)、「酸化鉄ナノ粉末及びその製造方法」
【文献】韓国公開特許第10‐2015‐0091280号(2017年1月4日)、「リチウム硫黄電池及びこの製造方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ここで、本発明ではリチウム二次電池の正極側で発生するリチウムポリスルフィド湧出の問題を解消し、電解液との副反応を抑制するために、リチウム二次電池の正極にウニ状(urchin shape)の針鉄鉱(goethite)を導入した結果、前記問題を解決してリチウム二次電池の電池性能を向上させることができることを確認して本発明を完成した。
【0021】
よって、本発明の目的は、リチウムポリスルフィドによる問題を解消することができるリチウム二次電池用正極添加剤を提供することにある。
【0022】
また、本発明の別の目的は、前記正極を備えて電池の初期放電容量及び寿命特性が向上されたリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するために、本発明は、
活物質、導電材及びバインダーを含むリチウム二次電池用正極であって、
前記正極はロッド形状の1次粒子が凝集して形成される2次粒子である針鉄鉱を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0024】
本発明の一具体例は、前記針鉄鉱の含量がリチウム二次電池正極に含まれるベース固形分100重量部に対して1ないし15重量部である。
【0025】
本発明の一具体例は、ロッド形状の直径が10ないし50nmである。
【0026】
本発明の一具体例は、ロッド形状の長さが50ないし500nmである。
【0027】
本発明の一具体例は、2次粒子が放射状の針状突出型の構造を有する。
【0028】
本発明の一具体例は、前記針鉄鉱の平均粒径が500nmないし5μmである。
【0029】
本発明の一具体例は、前記活物質が硫黄‐炭素複合体である。
【0030】
本発明の一具体例は、前記硫黄‐炭素複合体が硫黄‐炭素複合体100重量部を基準にして硫黄の含量が60ないし80重量部である。
【0031】
本発明の一具体例は、前記正極が集電体及び前記集電体の少なくとも一面に形成された 電極活物質層を含み、
前記電極活物質層の気孔度は60ないし75%である。
【0032】
また、本発明は、
上述した正極;負極;これらの間に介在された分離膜及び電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0033】
本発明の一具体例は、前記二次電池がリチウム‐硫黄電池である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によるウニ状の針鉄鉱をリチウム二次電池の正極に適用すれば、リチウム二次電池の充放電時に発生するリチウムポリスルフィドを吸着してリチウム二次電池の正極の反応性を増加させ、電解液との副反応を抑制する。
【0035】
前記針鉄鉱を含む正極が備えられたリチウム二次電池は、硫黄の容量低下が発生しないため高容量電池を具現することが可能であり、硫黄を高ローディングで安定的に適用可能なだけでなく、電池のショート、発熱などの問題がないので電池安定性が向上される。同時に、正極に含まれる針鉄鉱がウニ状を有することによって電極に十分な気孔が形成され、これによって電解液の含浸が容易であり、電池の充、放電効率が高くて寿命特性が改善される利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の製造例1による針鉄鉱の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示すものである。
図2】本発明の製造例1による針鉄鉱の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示すものである。
図3】本発明の製造例2による針鉄鉱の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示すものである。
図4】本発明の製造例3によるレピドクロサイトの走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示すものである。
図5】本発明の製造例1による針鉄鉱のX‐線回折分析(XRD)結果を示すものである。
図6】本発明の製造例2による針鉄鉱のX‐線回折分析(XRD)結果を示すものである。
図7】本発明の製造例3によるレピドクロサイトのX‐線回折分析(XRD)結果を示すものである。
図8】本発明の製造例1及び2による針鉄鉱が含まれたリチウム二次電池正極の模式図である。
図9】本発明の実施例及び比較例によるリチウム二次電池の放電容量測定結果を示す。
図10】本発明の実施例及び比較例によるリチウム二次電池の寿命特性測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように添付の図面を参照して詳しく説明する。しかし、本発明は幾つか異なる形態で具現されてもよく、本明細書に限定されない。
【0038】
本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味で限定して解釈してはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0039】
本明細書で使われている用語「複合体(composite)」とは、2つ以上の材料が組み合わせされて物理的、化学的に互いに異なる相(phase)を形成しながら、より有効な機能を発現する物質を意味する。
【0040】
本発明は、従来のリチウム二次電池用正極の短所を補完し、リチウムポリスルフィド(polysulfide)の溶解及びシャトル現象による電極の持続的反応性低下問題及び放電容量減少問題などが改善されたリチウム二次電池用正極を提供する。
【0041】
具体的に、本発明で提供するリチウム二次電池用正極は、活物質、導電材及びバインダーを含み、正極添加剤としてウニ状(urchin shape)針鉄鉱(Goethite、α‐FeOOH)をさらに含むことを特徴とする。
【0042】
特に、前記ウニ状の針鉄鉱は、本発明でリチウム二次電池の正極に含まれてリチウムポリスルフィドを吸着することで、リチウムポリスルフィドが負極に伝達されてリチウム二次電池の寿命を減少させることを減らすことができ、リチウムポリスルフィドによって減少した反応性を抑制することで、前記正極が含まれたリチウム二次電池の放電容量増加と電池寿命を向上させることができる。
【0043】
<ウニ状(urchin shape)針鉄鉱及びこの製造方法>
本発明による正極添加剤である針鉄鉱は、好ましくはFeCl・6HOとNaを反応させて製造することができる。前記反応はNaBHまたはヒドラジン(hydrazine)などの強力な還元剤を利用せずとも穏やかな条件で反応させることができる長所がある。
【0044】
一具現例として、前記ウニ状の針鉄鉱は0.1ないし0.3MのNa水溶液に0.04ないし0.08MのFeCl・6HOを反応させて製造することができる。Na水溶液とFeCl・6HOを混合すれば、反応して直ぐ溶液が黒を帯びるようになり、反応が徐々に進められながら数十秒後に黄色を帯びるオレンジ色へと色が変わるようになる。
【0045】
前記反応は、例えば、2.5℃/分の昇温速度にして60ないし80℃で4ないし8時間行われてもよい。反応が終結した後、反応収得物を減圧フィルターして分離し、これを水とエタノールを利用して順次洗浄する。以後、十分な空気が流入されるようにして80℃で6ないし12時間乾燥させ、ウニ状の針鉄鉱を製造することができる。
【0046】
<リチウム二次電池用正極>
本発明は、活物質、導電材及びバインダーを含むリチウム二次電池用正極であって、前記ウニ状(urchin shape)針鉄鉱を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0047】
この時、リチウム二次電池の正極は、正極集電体上に活物質、導電材及びバインダーを含むベース固形粉が位置したものであってもよい。
【0048】
前記集電体では、導電性に優れるアルミニウム、ニッケルなどを使用することが好ましい。
【0049】
一具現例として、前記活物質、導電材、及びバインダーを含むベース固形分100重量部を基準にしてウニ状の針鉄鉱を1ないし15重量部含むことができ、好ましくは1ないし10重量部を含むことができる。前記数値範囲の下限値未満の場合は、ポリスルフィドの吸着効果が微々たるものであり、上限値を超える場合は電極の単位重さ当たりエネルギー密度が減ることがあり、電極内で必要以上の気孔が形成されて単位体積当たりエネルギー密度が減ることがあるので、前記範囲内で適切に調節する。
【0050】
前記針鉄鉱は本発明で提示する製造方法によって製造された針鉄鉱を使用することができる。
【0051】
図1及び2は、前記製造方法によって製造された針鉄鉱(α‐FeOOH)の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示し、前記製造方法によって製造されたウニ状の針鉄鉱が製造されたことを確認することができる。前記ウニ状の針鉄鉱は、直径が10ないし50nmで、長さが50ないし500nmのロッド形状(rod shape)の1次粒子が凝集されてなる結晶性の2次粒子であってもよく、その平均粒径が500nmないし5μmであってもよい。前記ウニ状は、まるでウニの表面のようにロッド形状の1次粒子の少なくともある一つの地点を中心にして凝集され、外部に向けて伸びた放射状の針状突出型構造を意味してもよく、その平均粒径は外部に向けて伸びた針状突出部のある一つの最外郭地点から水平の反対方向に伸びた他の針状突出部の最外郭地点までの長さを測定したものであってもよい。
【0052】
このようなウニ状の針鉄鉱は、活物質、導電材及びバインダーなどとスラリーを形成して集電体上にコーティングされることができるが、コーティング時の圧力によってもウニ状は破壊されずに維持されるので、コーティング層である活物質層内の気孔分布を非偏在化することができる。ウニ状の針鉄鉱を通じて確保された気孔を基点にして電解液などが再拡散されることがあるので、活物質層の全体気孔度は同一でも、電池性能を改善するための気孔効率を高めることができる。
【0053】
図8は前記1次粒子であるロッド形状の針鉄鉱と、これらが凝集して形成される2次粒子であるウニ状の針鉄鉱が含まれたリチウム二次電池の正極模式図を示す。図8を見ると、ロッド形状の針鉄鉱が正極に含まれる場合、これらが束化されたり電極材とともにパッキングされることによって電解液に露出する表面積が減ることに対して、ウニ状の針鉄鉱は2次構造で起因する気孔によって電解液含浸性に優れ、電池の充放電過程でリチウムポリスルフィドの転換を促進する長所がある。
【0054】
図5は前記の製造方法によって製造されたウニ状針鉄鉱のX‐線回折分析(XRD)データ結果を示す。図5のX‐線回折分析結果、2θ=21.223゜、33.241゜、34.700゜、36.055゜、36.649゜、39.984゜、41.186゜、53.237゜、59.023゜で有効ピークが検出されたことを通じて結晶性針鉄鉱が合成されたことを確認することができる。
【0055】
一方、本発明の正極を構成するベース固形分の中で、活物質では硫黄元素(Elemental sulfur、S)、硫黄系化合物またはこれらの混合物を含むことができ、前記硫黄系化合物は具体的に、Li(n=1)、有機硫黄化合物または硫黄‐炭素複合体((C:x=2.5~50、n=2)などであってもよい。
【0056】
本発明によるリチウム二次電池用正極は、好ましくは硫黄‐炭素複合体の活物質を含むことができ、硫黄物質は単独では電気伝導性がないので導電材と複合して使用することができる。本発明による針鉄鉱の添加は、このような硫黄‐炭素複合体構造の維持に影響を及ぼさない。
【0057】
本発明による硫黄‐炭素複合体の炭素は多孔性構造であるか比表面積が高くて、当業界で通常使われるものであれば、いずれもかまわない。例えば、前記多孔性炭素材では、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)などの炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であってもよいがこれに制限されず、その形態は球形、棒型、針状、板状、チューブ型またはバルク型で、リチウム二次電池に通常使われるものであれば制限されずに使われることができる。
【0058】
前記活物質は好ましくはベース固形分100重量部の中で50ないし95重量部を構成するようにし、より好ましくは85重量部内外にすることができる。もし、活物質が前記範囲未満で含まれると電極の反応を十分に発揮しがたく、前記範囲超過で含まれても、その他導電材及びバインダーの含量が相対的に不足して十分な電極反応を発揮しにくいので、前記範囲内で適正含量を決めることが好ましい。
【0059】
一具現例において、前記硫黄‐炭素複合体は硫黄‐炭素複合体100重量部を基準にして硫黄の含量が60ないし80重量部であってもよく、好ましくは70ないし75重量部であってもよい。もし硫黄の含量が60重量部未満の場合は相対的に硫黄‐炭素複合体の炭素材含量が多くなり、炭素の含量が増加することによって比表面積が増加してスラリー製造時にバインダー添加量を増加させなければならない。バインダー添加量の増加は結局電極の面抵抗を増加させ、電子移動(electron pass)を防ぐ絶縁体の役目をして電池性能を低下することができる。硫黄の含量が80重量部を超過する場合、炭素材と結合できなかった硫黄または硫黄化合物がそれらどうしで集まったり、炭素材表面に再湧出されて電子を受けにくくなって、電極反応に直接参加しがたくなることがあるので前記範囲で適切に調節する。
【0060】
本発明の正極を構成するベース固形分の中で前記導電材は、電解質と正極活物質を電気的に連結して電子が集電体(Current collector)から硫黄まで移動する経路の役目をする物質であって、電池に化学的変化を引き起こさずに多孔性及び導電性を有するものであれば特に限定されない。例えば、KS6のような黒鉛系物質;スーパーP(Super‐P)、カーボンブラック、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックのようなカーボンブラック;フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独または混合して使用することができる。
【0061】
前記導電材は、好ましくはベース固形分100重量部の中で1ないし10重量部を構成するようにし、好ましくは5重量部内外にすることができる。もし、電極に含まれる導電材の含量が前記範囲未満であれば電極内で反応できない硫黄が増加し、結局、容量減少を起こすようになり、前記範囲超過であれば高効率放電特性と充、放電サイクル寿命に悪影響を及ぼすようになるので、上述した範囲内で適正含量を決めるのが好ましい。
【0062】
ベース固形分として前記バインダーは正極を形成するベース固形分のスラリー組成物を集電体によく付着するために含む物質であって、溶媒によく溶解され、正極活物質と導電材との導電ネットワークをよく構成することができる物質を使用する。特に制限しない限り当該業界で公知された全てのバインダーを使用することができ、好ましくは、ポリ(ビニル)アセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリエチレンオキシド、架橋結合されたポリエチレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデンのコポリマー(商品名:Kynar)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリビニルクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリスチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリジメチルシロキサンのようなシロキサン系、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブチジエンゴム、スチレン‐イソプレンゴムを含むゴム系バインダー、ポリエチレングリコールジアクリレートのようなエチレングリコール系及びこれらの誘導体、これらのブランド、これらの共重合体などが使われることができるが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記バインダーは、電極に含まれるベース組成物100重量部の中で1ないし10重量部を構成するようにし、好ましくは5重量部内外にすることができる。もし、バインダー樹脂の含量が前記範囲未満であれば正極の物理的性質が低下して正極活物質と導電材が脱落することがあるし、前記範囲超過であれば正極で活物質と導電材の割合が相対的に減少して電池容量が減少されることがあるので、上述した範囲内で適正含量を決めるのが好ましい。
【0064】
上述したように針鉄鉱及びベース固形分を含む正極は通常の方法によって製造されることができる。例えば、正極活物質に溶媒、必要に応じてバインダー、導電材、分散剤を混合及び撹拌してスラリーを製造した後、これを金属材料の集電体に塗布(コーティング)して圧縮した後、乾燥して正極を製造することができる。
【0065】
例えば、前記正極スラリーを製造する時、先ず、針鉄鉱を溶媒に分散した後で得られた溶液を活物質、導電材及びバインダーとミキシングして正極を形成するためのスラリー組成物を得る。以後、このようなスラリー組成物を集電体上にコーティングした後、乾燥して正極を完成する。この時、必要に応じて電極密度を向上させるために、集電体に圧縮成形して製造することができる。前記スラリーをコーティングする方法で制限はなく、例えば、ドクターブレードコーティング(Doctor blade coating)、ディップコーティング(Dip coating)、グラビアコーティング(Gravure coating)、スリットダイコーティング(Slit die coating)、スピンコーティング(Spin coating)、コンマコーティング(Comma coating)、バーコーティング(Bar coating)、リバースロールコーティング(Reverse roll coating)、スクリーンコーティング(Screen coating)、キャップコーティング(Cap coating)方法などを行って製造することができる。
【0066】
この時、前記溶媒では正極活物質、バインダー及び導電材を均一に分散させることができることはもとより、針鉄鉱を容易に溶解できるものを使用する。このような溶媒では水系溶媒として水が最も好ましく、この時、水は2次蒸溜したDW(Distilled Water)、3次蒸溜したDIW(Deionzied Water)であってもよい。ただし、必ずこれに限定することではなく、必要な場合、水と容易に混合できる低級アルコールが使われることができる。前記低級アルコールでは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びブタノールなどがあり、好ましくはこれらは水と一緒に混合して使われることができる。
【0067】
一具現例として前記正極は、集電体及び前記集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層を含み、前記電極活物質層は、活物質、導電材、バインダー及び本発明によるウニ状の針鉄鉱を含み、前記電極活物質層の気孔度は60ないし75%であってもよく、具体的に65ないし75%、好ましくは65ないし70%であってもよい。
【0068】
本発明において、用語「気孔度(porosity)」は、ある構造体において総体積に対して気孔が占める体積の割合を意味し、その単位で%を使い、空隙率、多孔度などの用語と相互交換して使用することができる。
【0069】
本発明において、前記気孔度の測定は特に限定されず、本発明の一実施例によって例えばBET(Brunauer‐Emmett‐Teller)測定法または水銀浸透法(Hg porosimeter)によって大きさ(micro)及びメソ細孔体積(meso pore volume)を測定することができる。
【0070】
もし前記電極活物質層の気孔度が60%に及ばない場合は、活物質、導電材及びバインダーを含むベース固形分の充填度が高すぎて活物質の間にイオン電度及び/または電気伝導を示すことができる十分な電解液が維持されず、電池の出力特性やサイクル特性が低下することがあるし、電池の過電圧及び放電容量減少がひどくなって本発明によるウニ状の針鉄鉱を含むことによる効果がまともに発現されない問題がある。気孔度が75%を超過して高すぎる気孔度を有する場合、集電体と物理的及び電気的連結が低くなって接着力が低下し、反応し難くなる問題があり、高くなった気孔度を電解液が充填されて電池エネルギー密度が低くなることがある問題があるので、前記範囲で適切に調節する。本発明の一具現例によれば、前記気孔度はホットプレス法、ロールプレス法、板プレス法及びロールラミネート法からなる群から選択される方法によって行うことができる。
【0071】
<リチウム二次電池>
一方、本発明は、
正極、負極、これらの間に介在された分離膜及び電解質を備えるが、前記正極は前述した正極であることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
【0072】
この時、前記負極、分離膜及び電解質はリチウム二次電池に使用されてもよい通常の物質で構成されることができる。
【0073】
具体的に、前記負極は活物質としてリチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵(Intercalation)または放出(Deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を使用することができる。
【0074】
前記リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵または放出することができる物質は、たとえば結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。また、前記リチウムイオン(Li)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、チタンナイトレートまたはシリコンであってもよい。また、前記リチウム合金は、例えば、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al及びSnからなる群から選択される金属の合金であってもよい。
また、前記負極は負極活物質とともに選択的にバインダーをさらに含むことができる。前記バインダーは、負極活物質のペースト化、活物質間の相互接着、活物質と電流集電体との接着、活物質の膨脹及び収縮に対する緩衝効果などの役目をする。具体的に、前記バインダーは前述したのと同様である。
【0075】
また、前記負極は、負極活物質及びバインダーを含む負極活性層を支持するための電流集電体をさらに含むこともできる。前記電流集電体は、具体的に銅、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されることができ、前記合金ではアルミニウム‐カドミウム合金が使用されることができる。その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子、または伝導性高分子などが使われることもできる。
【0076】
また、前記負極はリチウム金属の薄膜であってもよい。
【0077】
前記分離膜は正極と負極を互いに分離または絶縁させながら、これらの間にリチウムイオンの輸送ができるようにする物質を使用するが、通常リチウム二次電池で分離膜で使われるものであれば特に制限されずに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低い抵抗を有しながら電解質の含湿能力に優れるものが好ましい。
【0078】
より好ましくは、前記分離膜物質では多孔性で非伝導性または絶縁性の物質を使用することができ、たとえばフィルムのような独立的な部材であるか、または正極及び/または負極に加えられたコーティング層を使用することができる。
【0079】
具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用することができ、または通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用することができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0080】
前記電解質は、リチウム塩を含有する非水系電解質であってリチウム塩と電解液で構成され、電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質及び無機固体電解質などが使われる。
【0081】
前記リチウム塩は、非水系有機溶媒に容易に溶解される物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiB(Ph)4、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSOCH、LiSOCF、LiSCN、LiC(CFSO、LiN(CFSO、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、イミドからなる群から一つ以上であってもよい。
【0082】
前記リチウム塩の濃度は、電解質混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解された塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウムバッテリー分野に公知された他の要因のような様々な要因によって、0.2~2M、好ましくは0.6~2M、より好ましくは0.7~1.7Mであってもよい。もし、リチウム塩の濃度が前記範囲未満であれば電解質の伝導度が低くなって電解質性能が低下することがあるし、前記範囲超過であれば電解質の粘度が増加してリチウムイオン(Li)の移動性が減少されることがあるので、前記範囲内で適正濃度を選択することが好ましい。
【0083】
前記非水系有機溶媒はリチウム塩をよく溶解させることができる物質であって、好ましくは1,2‐ジメトキシエタン、1,2‐ジエトキシエタン、1,2‐ジブトキシエタン、ジオキソラン(Dioxolane、DOL)、1,4‐ジオキサン、テトラヒドロフラン、2‐メチルテトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ブチルエチルカーボネート、エチルプロパノエート(EP)、トルエン、キシレン、ジメチルエーテル(dimethyl ether、DME)、ジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(Triethylene glycol monomethyl ether、TEGME)、ジグライム、テトラグライム、ヘキサメチルリン酸トリアミド(hexamethyl phosphoric triamide)、ガンマブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、N‐メチルピロリドン、3‐メチル‐2‐オキサゾリドン、酢酸エステル、酪酸エステル及びプロピオン酸エステル、ジメチルホルムアミド、スルホラン(SL)、メチルスルホラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルフェート、エチレングリコールジアセテート、ジメチルスルファイト、またはエチレングリコールスルファイトなどの非プロトン性有機溶媒が使われることができ、これらの中で一つまたは2つ以上の混合溶媒の形態で使われることができる。
【0084】
前記有機固体電解質としては、好ましくはポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(Agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使われることができる。
【0085】
本発明の無機固体電解質では、好ましくは、LiN、LiI、LiNI、LiN‐LiI‐LiOH、LiSiO、LiSiO‐LiI‐LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO‐LiI‐LiOH、LiPO4‐LiS‐SiSなどのLiのチッ化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使われることができる。
【0086】
前述したリチウム二次電池の形態は特に制限されず、例えば、ゼリー‐ロール型、スタック型、スタック‐フォールディング型(スタック‐Z‐フォールディング型を含む)、またはラミネーション‐スタック型であってもよく、好ましくはスタック‐フォールディング型であってもよい。
【0087】
このような前記正極、分離膜、及び負極が順次積層された電極組立体を製造した後、これを電池ケースに入れた後、ケースの上部に電解液を注入してキャッププレート及びガスケットで密封して組み立ててリチウム二次電池を製造する。
【0088】
前記リチウム二次電池は、形態によって円筒状、角形、コイン型、ポーチ型などで分類されることができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分けることができる。これらの電池の構造と製造方法は、この分野に広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0089】
上述したように構成される本発明によるリチウム二次電池は、針鉄鉱を含むことでリチウム二次電池の充放電時に発生するリチウムポリスルフィドを吸着してリチウム二次電池正極の反応性が増加し、それが適用されたリチウム二次電池は放電容量と寿命特性を増加させる効果を持つ。
【0090】
以下、実施例などを通じて本発明をより詳しく説明するが、以下の実施例などによって本発明の範囲と内容が縮小されたり制限されて解釈することはできない。また、以下の実施例を含む本発明の開示内容に基づくと、具体的に実験結果が提示されていない本発明を通常の技術者が容易に実施できることは自明であり、このような変形及び修正が添付された特許請求範囲に属することも当然である。
【0091】
<製造例1 ウニ状(urchin shape)針鉄鉱の製造>
DIW(deionized water)100mlにNaSO 1.2g及びNa 2.0g(それぞれAldrich社)を投入して溶液(1)を製造し、エタノール100mlにFeCl・6HO 2.02g(Aldrich社)を投入して溶液(2)を製造した。
【0092】
前記製造した溶液(1)に溶液(2)を投入して混合溶液が瞬間的に黒に変化することを確認し、数十秒後、混合溶液が黄色を帯びるオレンジ色に変わることを確認した。
【0093】
前記混合溶液を2.5℃/分の昇温速度で撹拌して70℃で6時間反応させ、反応終了後、DIWとエタノールを利用して洗浄した。
【0094】
以後、80℃のコンベクションオーブンで十分な空気が流入されるようにし、8時間乾燥してウニ状の針鉄鉱を収得した。
【0095】
<製造例2 ロッド形状(rod shape)針鉄鉱の製造>
0.3MのN・HO(Aldrich社、純度98%以上)に0.05MのFe(NO・9HO(Aldrich社、純度98%以上)を50秒間混合した。以後、80℃で400rpmで2時間前記混合溶液を撹拌した。以後、これをろ過紙で濾過した後、十分な空気が流入されるようにして80℃で8時間乾燥させ、ロッド形状の針鉄鉱(α‐FeOOH)を収得した。
【0096】
<製造例3 レピドクロサイトの製造>
0.3MのNaBH(TCL社、純度>95%)に0.05MのFe(NO・9HO(Aldrich社製、純度98%以上)を50秒間混合した。以後、25℃の常温で400rpmで40分間前記混合溶液を撹拌し、反応が進められる間、水素気体が発生することを確認した。以後、これをろ過紙で濾過した後、十分な空気が流入されるようにして80℃で8時間乾燥させ、レピドクロサイト(γ‐FeOOH)を収得した。
【0097】
<実施例1 ウニ状(urchin shape)の針鉄鉱が添加された正極を含むリチウム二次電池の製造>
先ず、溶媒として水に前記製造例1で製造された針鉄鉱を投入するベース固形分(活物質、導電材及びバインダー)に総重量(100重量部)に対して10重量部針鉄鉱を投入して溶解した。以後、得られた溶液に対して、ベース固形分総100重量部、つまり、活物質で硫黄‐炭素複合体(S/C 7:3)を88重量部、導電材でデンカブラックを5重量部、バインダーでスチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR/CMC 7:3)7重量部を投入してミキシングし、正極スラリー組成物を製造した。
【0098】
次いで、前記製造されたスラリー組成物を集電体(Al Foil)上にコーティングし、50℃で12時間乾燥して正極を製造した。この時、ローディング量は3.5mAh/cmで、電極(集電体を除いた活物質層)の孔隙率(porosity)は70%にした。前記電極の孔隙率は正極活物質層に含まれた硫黄‐炭素複合体、導電材、バインダー及び針鉄鉱の混合比より加重平均で真密度(true density)を計算し、ロールプレス圧延過程を経た正極の厚さと重さを測定して算出した。
【0099】
以後、上述したように製造された正極、負極、分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池のコインセルを下記のように製造した。具体的に、前記正極は14phi円形電極で打ち抜いて使用し、ポリエチレン(PE)分離膜は19phi、150μmリチウム金属は負極で16phiに打ち抜いて使用した。
【0100】
<比較例1 針鉄鉱が添加されていない正極を含むリチウム二次電池の製造>
正極に針鉄鉱を投入しないことを除いては、実施例1と同様に行った。
【0101】
<比較例2 ロッド形状(rod shape)の針鉄鉱が添加された正極を含むリチウム二次電池の製造>
前記製造例1で製造されたウニ状の針鉄鉱の代わりに前記製造例2で製造されたロッド形状の針鉄鉱をベース固形分100重量部に対して10重量部投入したことを除いては、実施例1と同様に製造した。
【0102】
<比較例3 レピドクロサイトが添加された正極を含むリチウム二次電池の製造>
前記製造例1で製造されたウニ状の針鉄鉱の代わりに前記製造例3で製造されたレピドクロサイトをベース固形分100重量部に対して10重量部投入したことを除いては、実施例1と同様に製造した。
【0103】
<実験例1 SEM(Scanning Electron Microscope)分析>
製造例1ないし2で製造された針鉄鉱及び製造例3で製造されたレピドクロサイトに対してSEM分析(Hitachi社のS‐4800FE‐SEM)を実施した。
【0104】
図1及び2は、それぞれ製造例1で製造された針鉄鉱に対するSEMイメージで、図3は製造例2で製造した針鉄鉱に対するSEMイメージで、図4は製造例3で製造したレピドクロサイトに対するSEMイメージである。
【0105】
図1及び2を参照すれば、倍率をそれぞれ20k、35kにしてSEM分析を行った結果、ロッド形状の針鉄鉱1次粒子が凝集して形成された平均粒径500nm ないし5μmの「ウニ状(urchin shape)」の針鉄鉱が生成されたことを確認することができた。
【0106】
図3を参照すれば、倍率を50kにしてSEM分析を行った結果、「ロッド形状(rod shape)」の針鉄鉱が生成されたことを確認することができた。
【0107】
図4を参照すれば、倍率を50kにしてSEM分析を行った結果、「板状」のレピドクロサイトが生成されたことを確認することができた。
【0108】
<実験例2 XRD(X‐ray Diffraction)分析>
製造例1ないし2で製造された針鉄鉱及び製造例3で製造されたレピドクロサイトに対してXRD分析(Bruker社のD4Endeavor)を実施した。
【0109】
図5は製造例1で製造された針鉄鉱、図6は製造例2で製造された針鉄鉱に対するXRD分析結果で、図7は製造例3で製造したレピドクロサイトに対するXRD分析結果を示すグラフである。
【0110】
図5及び6のX‐線回折分析結果、2θ=21.223゜、33.241゜、34.700゜、36.055゜、36.649゜、39.984゜、41.186゜、53.237゜、59.023゜で有効ピークが検出され、図7のX‐線回折分析結果、2θ=14.1±0.1゜、27.0±0.1゜、36.3±0.1゜及び46.9±0.1゜で有効ピークが検出され、それぞれ針鉄鉱とレピドクロサイトのXRDピークを確認することができ、これによって製造例1ないし3で純粋な相の結晶性針鉄鉱とレピドクロサイトが製造されたことが分かった。
【0111】
<実験例3 リチウム二次電池の放電容量比較実験>
正極材の種類によるリチウム二次電池の初期放電容量を実験するため、下記表1に記載されたようにリチウム二次電池の正極及び負極を構成した後、放電容量を測定した。
【0112】
この時、測定電流は0.1C、電圧範囲1.8ないし2.5Vにし、その結果を図9で示す。
【0113】
【表1】
【0114】
図9に示すように、比較例1による電池に比べてウニ状の針鉄鉱を含む実施例1及びレピドクロサイトを含む比較例2による電池の場合が電池の過電圧が改善され、初期放電容量がさらに増加したことを確認することができた。
【0115】
したがって、リチウム二次電池用正極に針鉄鉱またはレピドクロサイトを含む場合、いずれもリチウム二次電池の初期放電容量増加及び過電圧改善に効果があることが分かった。
【0116】
<実験例4 リチウム二次電池の寿命特性比較実験>
正極材の種類によるリチウム二次電池の寿命特性を実験するため、前記表1のようにリチウム二次電池の正極及び負極を構成した後、サイクルによる放電容量を測定し、その結果を図10に示す。測定は0.1C/0.1C(充電/放電)3cycles、0.2C/0.2C 3cycles後、0.3C/0.5Cを繰り返して実施した。
【0117】
図10に示すように、正極に針鉄鉱またはレピドクロサイトを含む実施例1及び比較例2のリチウム二次電池の場合、0.1C、0.2C及び0.5C区間の放電容量がもっと高く、寿命特性も向上されたことが分かった。
【0118】
また、実施例1の電池の場合、ロッド形状の針鉄鉱が凝集して形成されたウニ状の2次粒子の気孔生成特性によって電解液が含浸される空間を充分に確保し、電池の充放電過程で生成されるリチウムポリスルフィドを吸着して電池の反応性を増加させた結果、リチウム二次電池の放電容量効果に優れると同時に、比較例2による電池に比べて寿命特性がさらに向上されたことを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10