(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】皮膚洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20220930BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2020556647
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036203
(87)【国際公開番号】W WO2020100409
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2018215865
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 学
(72)【発明者】
【氏名】川田 純平
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-520258(JP,A)
【文献】特開2018-162227(JP,A)
【文献】特開2015-000855(JP,A)
【文献】米国特許第05225186(US,A)
【文献】特開2017-039660(JP,A)
【文献】特開2018-020997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラブ剤を含有する皮膚洗浄剤組成物であって、
前記スクラブ剤は、トリ脂肪酸(C14-26)グリセリル、脂肪酸(C14-26)ポリグリセリル、およびテトラ脂肪酸(C14-26)ペンタエリスチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸エステルを含み、
皮膚洗浄剤組成物100質量%中の前記スクラブ剤の含有量が0.4~20質量%であり、
前記スクラブ剤100質量%中の前記脂肪酸エステルの含有量が55質量%以上であり、
前記スクラブ剤の平均粒子径が100~1700μmである皮膚洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに高級脂肪酸および/またはその塩を含有し、皮膚洗浄剤組成物100質量%中の高級脂肪酸および/またはその塩の含有量が5.0~40質量%である、請求項1記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらにグリセリンおよび非イオン性界面活性剤を含有する、請求項1
または2記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の皮膚洗浄剤組成物と容器とを備え、
前記皮膚洗浄剤組成物が前記容器内に充填されている皮膚洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の洗浄に用いられる皮膚洗浄剤組成物、および該組成物が容器内に充填された皮膚洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮膚上の汚れを除去する効果や、適度に皮膚を刺激するマッサージ効果を期待して、スクラブ剤を配合した皮膚洗浄剤組成物が提供されている。用いられるスクラブ剤としては、上記した効果に優れた効果を発揮するポリエチレン末、クルミ殻粒、結晶性セルロース等のスクラブ剤が汎用されている。
【0003】
しかしながら、これら汎用スクラブ剤では、皮膚上の汚れを除去する効果や、皮膚上をマッサージする効果に優れる反面、配合する粒子の大きさや量次第では、洗浄時に不快な皮膚刺激を与えたり、異物感が生じてしまうといった欠点があり、洗浄後の肌にツルツルした感触や、スベスベした感触を付与する効果に劣ってしまうという問題がある。
【0004】
近年、前記の課題を解決するため、種々のスクラブ剤が提案されているが、新たな課題が浮上している。例えば、プラスチックスクラブは、安価であり、さまざまな形状や添加成分による改質で肌あたりをコントロールできるが、近年の海洋汚染の原因のマイクロプラスチックビーズに該当し、環境負荷が高く使用しにくい状況である。生分解性の高いセルローススクラブやアンズ殻等を砕いた天然スクラブは、不定形であり硬さもコントロールできないため、肌あたりをコントロールすることが困難である。また、高融点パラフィンをビーズ状にしたスクラブは、球状で固く、スクラブ感(肌あたり)のコントロールの観点からは満足のいくものではない。
【0005】
特許文献1には、少なくとも50重量%水素添加ヒマシ油を含有する洗浄体を含有する皮膚洗浄剤が開示されている。しかしながら、洗浄時に皮膚接触した際の感触が強く、不快な皮膚刺激を与えるという観点では改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、洗浄時に不快な皮膚刺激がなく心地よく、かつ汚れ落ち効果に優れる皮膚洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、所定の脂肪酸エステルを含有するスクラブ剤を配合することにより、洗浄時に不快な皮膚刺激がなく心地よく、汚れ落ち効果に優れた皮膚洗浄剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は
〔1〕スクラブ剤を含有する皮膚洗浄剤組成物であって、前記スクラブ剤は、トリ脂肪酸(C14-26)グリセリル、脂肪酸(C14-26)ポリグリセリル、およびテトラ脂肪酸(C14-26)ペンタエリスチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸エステルを含み、前記スクラブ剤の平均粒子径が100~1700μmである皮膚洗浄剤組成物、
〔2〕さらに高級脂肪酸および/またはその塩を含有し、皮膚洗浄剤組成物100質量%中の高級脂肪酸および/またはその塩の含有量が5.0~40質量%である、〔1〕記載の皮膚洗浄剤組成物、
〔3〕皮膚洗浄剤組成物100質量%中のスクラブ剤の含有量が0.4~20質量%である、〔1〕または〔2〕記載の皮膚洗浄剤組成物、
〔4〕スクラブ剤100質量%中の前記脂肪酸エステルの含有量が50質量%以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物、
〔5〕スクラブ剤の総量中において、50~90質量%の前記脂肪酸エステルおよび10~50質量%の融点が50℃以上の油脂成分からなる溶融混合物を含有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物、
〔6〕さらにグリセリンおよび非イオン性界面活性剤を含有する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物、
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物と容器とを備え、前記皮膚洗浄剤組成物が前記容器内に充填されている皮膚洗浄剤、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、洗浄時に不快な皮膚刺激がなく心地よく、かつ汚れ落ち効果に優れる皮膚洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る皮膚洗浄剤組成物は、所定のスクラブ剤を必須の成分として含有する。また、高級脂肪酸および/またはその塩、グリセリン、非イオン性界面活性剤を任意成分として含むことが好ましい。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0012】
本実施形態に係る皮膚洗浄剤組成物に含有される上記各成分の含有量は、それぞれ、化粧料組成物中の合計の含有量が100質量%以下となるように、記載の範囲内から適宜選択することができる。
【0013】
(スクラブ剤)
本実施形態に係る皮膚洗浄剤組成物に含まれるスクラブ剤は、トリ脂肪酸(C14-26)グリセリル、脂肪酸(C14-26)ポリグリセリル、およびテトラ脂肪酸(C14-26)ペンタエリスチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸エステルを必須の成分として含有する。前記の脂肪酸エステルを含むスクラブ剤を含有することにより、優れたスクラブ効果を発揮させるとともに、使用時に不快な皮膚刺激や異物感がなく使用感に優れた効果を発揮させることができる。
【0014】
本明細書において「トリ脂肪酸(C14-26)グリセリル」とは、炭素数14~26の脂肪酸とグリセリンのトリエステルを意味し、「脂肪酸(C14-26)ポリグリセリル」とは、炭素数14~26の脂肪酸とポリグリセリンのエステルを意味し、「テトラ脂肪酸(C14-26)ペンタエリスチル」とは、炭素数14~26の脂肪酸とペンタエリストールのテトラエステルを意味する。これらの脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数は16~22が好ましく、18~22がより好ましい。
【0015】
トリ脂肪酸(C14-26)グリセリルとしては、例えば、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル(トリベヘニン)等が挙げられ、トリベヘン酸グリセリルが好ましい。
【0016】
脂肪酸(C14-26)ポリグリセリルとしては、例えば、ミリスチン酸ポリグリセリル、パルミチン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル、オレイン酸ポリグリセリル、ベヘン酸ポリグリセリル等が挙げられ、ステアリン酸ポリグリセリルおよびベヘン酸ポリグリセリルが好ましい。
【0017】
テトラ脂肪酸(C14-26)ペンタエリスチルとしては、例えば、テトラミリスチン酸ペンタエリスチル、テトラパルミチン酸ペンタエリスチル、テトラステアリン酸ペンタエリスチル、テトラオレイン酸ペンタエリスチル、テトラベヘン酸ペンタエリスチル等が挙げられ、テトラステアリン酸ペンタエリスチルが好ましい。
【0018】
スクラブ剤100質量%中の前記脂肪酸エステルの含有量は、適度なスクラブ効果を発揮させる観点から、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。また、脂肪酸エステルの含有量の上限は特に制限されず、100質量%、すなわちトリ脂肪酸(C14-26)グリセリル、脂肪酸(C14-26)ポリグリセリル、およびテトラ脂肪酸(C14-26)ペンタエリスチルからなる群から選ばれる少なくとも1種のみからなるスクラブ剤としてもよく、トリ脂肪酸(C14-26)グリセリルのみからなるスクラブ剤、脂肪酸(C14-26)ポリグリセリルのみからなるスクラブ剤、およびテトラ脂肪酸(C14-26)ペンタエリスチルのみからなるスクラブ剤としてもよい。好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
【0019】
スクラブ剤には、任意成分として、水添ヒマシ油、パラフィンワックス、カルナウバワックス、キャンディラワックス、ポリエチレンワックス等の油脂成分、結晶セルロース粉末、セルロース粒子等の汎用スクラブ剤等を含有してもよい。前記油脂成分としては、融点が50℃以上の油脂成分が好ましく、スクラブの硬さや崩壊性を変更でき、その結果肌あたりを調整することができるという理由で、融点が50℃以上の水添ヒマシ油がより好ましい。これらの任意成分の含有量は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10~50質量%、20~50質量%、30~50質量%、40~50質量%の範囲とすることができる。また、スクラブ剤中に、前記脂肪酸エステル(好ましくは、トリベヘン酸グリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル、ベヘン酸ポリグリセリル、およびテトラステアリン酸ペンタエリスチルからなる群から選ばれる少なくとも1種)および融点が50℃以上の油脂成分(好ましくは、水添ヒマシ油)からなる溶融混合物を含有することも好ましい態様して挙げられる。なかでも、前記脂肪酸エステル(好ましくは、トリベヘン酸グリセリルおよび/またはテトラステアリン酸ペンタエリスチル)および融点が50℃以上の油脂成分(好ましくは、水添ヒマシ油)のみからなる溶融混合物であるスクラブ剤が特に好ましい。
【0020】
スクラブ剤の平均粒子径は、100μm以上であり、200μm以上が好ましく、300μm以上がより好ましい。また、該平均粒子径は、1700μm以下であり、1000μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましい。スクラブ剤の平均粒子径を上記の範囲内とすることにより、使用時に不快な皮膚刺激や異物感がなく、最適なスクラブ効果を発揮させることができ、また汚れ落ちも維持することができる。
【0021】
本実施形態に係る皮膚洗浄剤組成物100質量%中のスクラブ剤の含有量は、適度なスクラブ効果および汚れ落ちの観点から、0.4質量%以上が好ましく、0.8質量%以上がより好ましく、3.0質量%以上がさらに好ましい。また、不快な皮膚刺激を抑制する観点からは、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。なお、スクラブ剤の含有量は、スクラブ剤中の必須成分である脂肪酸エステルとその他の任意成分との合計含有量を示す。
【0022】
スクラブ剤は、肌負担の少なさの観点から球状が好ましい。
【0023】
スクラブ剤は、成分を混合してから造粒してもよく、成分の一部を造粒してから混合ししてもよい。例えば、前述の必須の成分を2種以上用いる場合、溶融させた各成分を混合した混合溶融物を造粒することでスクラブ剤としてもよいし、造粒した各成分を混合することでスクラブ剤としてもよい。任意成分として前記油脂成分を用いる場合も、溶融させた必須の成分および任意成分を混合した混合溶融物を造粒することでスクラブ剤としてもよいし、造粒した各成分を混合することでスクラブ剤としてもよい。また、任意成分として結晶セルロース粉末、セルロース粒子等の溶融が不可能または困難な成分を用いる場合は、造粒した必須の成分および任意成分を混合することでスクラブ剤としてもよい。
【0024】
成分を混合してから造粒することにより、スクラブの硬さや崩壊性を変更でき、その結果肌あたりを調整することが可能となる。また、成分の一部を造粒してから混合する場合、異なる性質の粒子の混合等により、肌あたりを調整することが可能となる。
【0025】
(高級脂肪酸および/またはその塩)
前記のスクラブ剤はアルカリ耐性を有することから、皮膚洗浄剤組成物に高級脂肪酸および/またはその塩を配合することで、汚れ落ち効果をさらに向上させることができる。本実施形態に係る皮膚洗浄剤組成物に含まれる高級脂肪酸および/またはその塩は、皮膚洗浄剤組成物の性状等に応じて、適宜選択して用いることができる。
【0026】
本明細書において「高級脂肪酸」とは、直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の高級脂肪酸を意味する。該高級脂肪酸の炭素数は、皮膚洗浄剤組成物の粘性や洗浄力を確保する観点から、8以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。また、皮膚洗浄剤組成物の水馴染みや高温安定性の低下を防止する観点からは、22以下が好ましく、20以下がより好ましく、18以下がさらに好ましい。さらに、泡立ちや泡質をより向上させる観点から、炭素数が12~14の脂肪酸を含有することが好ましい。
【0027】
高級脂肪酸の具体例としては、例えば、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、イソカプリル酸、イソペラルゴン酸、イソカプリン酸、イソウンダカン酸、イソラウリン酸、イソトリデシル酸、イソミリスチン酸、イソペンタデシル酸、イソパルミチン酸、イソマルガリン酸、イソステアリン酸、イソノナデカン酸、イソアラキン酸、イソヘンエイコサン酸、およびイソベヘン酸等が挙げられる。高級脂肪酸の他の具体例としては、例えば、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、綿実油等の植物性油脂;魚油および牛脂等の動物性油脂が挙げられる。
【0028】
本明細書において「高級脂肪酸塩」とは、前記の高級脂肪酸の少なくとも一部(一部または全部)をアルカリ剤でケン化または中和した化合物を意味する。高級脂肪酸塩を用いる場合には、高級脂肪酸とアルカリ剤とから高級脂肪酸塩を得た後に、他の成分と配合してもよく、高級脂肪酸とアルカリ剤とを配合することで、組成物中で高級脂肪酸塩としてもよい。なお、このような高級脂肪酸塩は、高級脂肪酸石鹸とも呼ばれる。
【0029】
アルカリ剤は、中和剤として用いることができる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリ;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、イソプロパノールアミン、モルホリン、アルギニン等の有機アルカリが挙げられる。入手が容易であり、かつ取り扱い性に優れる観点からは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびトリエタノールアミンが好ましい。
【0030】
高級脂肪酸および/またはその塩は、泡立ちをより一層良好にする観点から、直鎖状の高級脂肪酸および/またはその塩を含むことが好ましい。一方、起泡性および組成物の安定性をより一層高める観点からは、分岐状の高級脂肪酸および/またはその塩を含んでいてもよい。
【0031】
高級脂肪酸および/またはその塩は、洗浄力をより一層高め、組成物の安定性をより一層高め、組成物中でのシリカの分散状態をより一層良好に維持する観点からは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびそれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸およびそれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
【0032】
前記で列挙された高級脂肪酸および/またはその塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。高級脂肪酸および/またはその塩としては、高級脂肪酸のみを含んでいてもよく、高級脂肪酸塩のみを含んでいてもよく、高級脂肪酸と高級脂肪酸塩の双方を含んでいてもよい。
【0033】
皮膚洗浄剤組成物100質量%中の高級脂肪酸および/またはその塩の含有量(高級脂肪酸と高級脂肪酸塩との合計の含有量)は、洗浄力、泡立ち、泡質、および粘度を確保する観点から、5.0質量%以上が好ましく、8.0質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、肌荒れや水馴染みの低下を防止する観点からは、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
本実施形態に係る皮膚洗浄剤組成物中に高級脂肪酸および/またはその塩を含有する場合は、皮膚洗浄剤組成物をクリーム状にし、かつ適度な粘性を得る観点から、グリセリンおよび非イオン性界面活性剤を併用することが好ましい。
【0035】
グリセリンを含有する場合の皮膚洗浄剤組成物100質量%中の含有量は、10.0質量%以上が好ましく、15.0質量%以上がより好ましく、17.0質量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、40.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以下がより好ましく、30.0質量%以下がさらに好ましい。
【0036】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテルポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられ、モノステアリン酸グリセリンが好ましい。これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
非イオン性界面活性剤を含有する場合の皮膚洗浄剤組成物100質量%中の含有量は、5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。また、非イオン性界面活性剤の含有量の下限値は、製剤の安定性が担保できる限り特に制限されないが、0.05質量%以上が好ましい。
【0038】
(その他の成分)
本実施形態に係る皮膚洗浄剤組成物は、上述した成分に加えて、キレート剤、グリセリン以外の多価アルコール、非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤、酸化防止剤、増粘剤、清涼剤、シリコーン類、ビタミン類、動植物エキス、抗炎症剤、粉体類、パール化剤、着色剤、各種香料、防腐剤、殺菌剤、pH調整剤、および溶剤等を配合してもよい。
【0039】
キレート剤としては、例えば、エデト酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、シクロヘキサンジアミン五酢酸、グリシン、セリン、アラニン、リジン、シスチン、チロシン、メチオニン、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、エリソルビン酸、コハク酸、フマル酸、ピルビン酸、サリチル酸、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ピロリン酸塩、トリポリリン酸、ポリリン酸、およびオルトリン酸、並びにこれらの塩等が挙げられ、エデト酸およびその塩が好適に用いられる。
【0040】
キレート剤を含有する場合の皮膚洗浄剤組成物100質量%中の含有量は、キレート剤を配合することによる効果が十分に得られるという観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、1.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。
【0041】
グリセリン以外の多価アルコールとしては、化粧品原料として用いられている公知の保湿剤を使用することができる。多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グルコース、マルトース、マルチトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、および1,2-オクタンジオール等が挙げられる。前記の多価アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレン酢酸エーテル塩、アルキルアシルグルタミン酸塩、アルキルアシルグリシン塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸塩酸等のアニオン界面活性剤;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等のカチオン界面活性剤;アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン、アルキルヒドロキシエチルベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0043】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、天然ビタミンE、エリソルビン酸、オルトトリルビグアナイド、チオジプロピオン酸ジラウリル、パラヒドロキシアニソール、およびフィチン酸等が挙げられる。
【0044】
増粘剤としては、例えば、アラビアガム、トラガントガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、およびカゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルセルロース、ポリアミド樹脂等の合成高分子化合物等が挙げられる。
【0045】
清涼剤としては、例えば、l-メントール、カンファ、およびl-メンチルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0046】
溶剤としては、例えば、水や、エタノール等のアルコール類が挙げられる。
【0047】
(皮膚洗浄剤組成物の他の詳細)
本実施形態に係る皮膚洗浄剤組成物の性状としては、例えば、液状、ペースト状、ジェル状、クリーム状、および泡状等が挙げられる。なかでも、経時的な保管安定性に優れるという観点から、ペースト状またはクリーム状であることが好ましい。
【0048】
本実施形態に係る皮膚洗浄剤組成物の用途としては、例えば、固形石鹸、ボディーシャンプー、ハンドソープ、および洗顔料等が挙げられるが、洗浄後に、さらさら感に優れており、さらさら感を長期間持続でき、かつテカリを抑えることができることから、洗顔料として使用することが好ましい。洗顔料としては、例えば、洗顔液、洗顔フォーム、および洗顔クリーム等が挙げられる。
【0049】
(皮膚洗浄剤)
本実施形態に係る皮膚洗浄剤は、容器と、該容器内に充填されている前記の皮膚洗浄剤組成物とを備える。
【0050】
容器としては、例えば、ポンプ容器、エアゾール容器、およびチューブ容器等が挙げられ、チューブ容器が好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は、特記しない限り、有効成分の配合量であり、「質量%」で表す。
【0052】
以下、実施例および比較例において用いた各種材料をまとめて示す。
スクラブ剤1:トリベヘニン(平均粒子径:約400μm、真球状)
スクラブ剤2:トリベヘニン/水添ヒマシ油(融点87℃)=55:45(平均粒子径:約400μm、溶融混合物を造粒、真球状)
スクラブ剤3:テトラステアリン酸ペンタエリスチル/水添ヒマシ油(融点87℃)=55:45(平均粒子径:約400μm、溶融混合物を造粒、真球状)
スクラブ剤4:ベヘン酸ポリグリセリル-2(平均粒子径:約300μm、真球状)
スクラブ剤5:ステアリン酸ポリグリセリル-2(平均粒子径:約300μm、真球状)
スクラブ剤6:水添ヒマシ油(250~850μmの粒子を81%含有(メッシュパス)、真球状)
スクラブ剤7:ポリエチレン末(297~841μmの粒子を47%含有(メッシュパス)、不定形で角がある)
スクラブ剤8:セルロース粒子(平均粒子径:約400μm、不定形で角がある)
ラウリン酸:オレオソリューションズ社製のEdenor C12-99 MY
ミリスチン酸:オレオソリューションズ社製のEdenor C14-99 MY
パルミチン酸:オレオソリューションズ社製のEdenor C16-98 MY
ステアリン酸:オレオソリューションズ社製のEdenor C18-98 MY
ラウリン酸アミドプロピルベタイン:新日本理化(株)製のリカビオンB-300
キレート剤:アクゾノーベル社製のディゾルビンNA-X(エデト酸四ナトリウム四水塩)
【0053】
(実施例および比較例)
表1に示した組成(配合量)に従い、実施例1~11および比較例1~5の皮膚洗浄剤用組成物を調製後、30g容量のチューブ容器にそれぞれ充填し、下記評価を行った。
【0054】
<使用感の評価>
男性官能評価パネル10名により、実施例および比較例で得られた各試料を用いて洗顔剤の態様で下記使用試験を行い、使用感の評価を行った。
【0055】
顔全体を40℃の温水で十分に濡らした後、手の平に試料1gを取り、少量の温水で泡立てた後、顔全体に塗布し手の平で擦るように30秒間洗顔を行い、その後40℃の温水で十分に洗い流してもらった。評価は、洗顔時の「スクラブ感」および「肌あたりのよさ」について評価を行い、下記評価基準に従って官能評価した。なお、評価は、最も人数の多く得られた評価結果を各試料の成績とした。
【0056】
スクラブ感の評価基準
A(優れる):スクラブ(粒子)の存在を強く感じる。
B(良好):スクラブ(粒子)の存在を明確に感じるが、Aよりは少ない。
C(不良):スクラブ(粒子)の存在をほとんど感じない。
【0057】
肌あたりのよさの評価基準
A(優れる):不快な刺激および/または異物感をほとんど感じない。
B(良好):不快な刺激および/または異物感を少し感じるが、許容できる範囲。
C(不良):不快な刺激(痛み)および/または異物感を感じる。
【0058】
<スクラブ安定性の評価>
30g容量チューブ容器充填品を、40℃で1カ月保管し、チューブから試料約1g吐出し、スクラブ感を評価した。評価は前記の「使用感の評価」と同様の方法により洗顔することにより行った。なお、評価は、最も人数の多く得られた評価結果を各試料の成績とした。
【0059】
スクラブ安定性の評価基準
A(安定):スクラブ感の変化なし。
B(良好):スクラブ感に若干の変化があるが、許容できる範囲。
C(不安定):スクラブ感が大きく悪化する、またはスクラブ剤がその他の成分に悪影響を及ぼす。
【0060】
【0061】
表1の結果より、所定の脂肪酸エステルを含有するスクラブ剤を配合した本発明の皮膚洗浄剤組成物は、洗浄時に不快な皮膚刺激がなく心地よく、かつ汚れ落ち効果に優れることがわかる。なお、比較例5についてはスクラブ剤を配合していないため、「スクラブ効果」および安定性の評価は行わなかった。
【0062】
処方例1
グリセリン 20.0質量%
ラウリン酸 4.0質量%
ミリスチン酸 9.0質量%
パルミチン酸 6.0質量%
ステアリン酸 10.0質量%
スクラブ剤(トリベヘニン/水添ヒマシ油=55/45、平均粒子径:約400μm、溶融混合物を造粒) 10.0質量%
水酸化カリウム 5.3質量%
PEG-8 4.0質量%
ソルビトール 2.0質量%
ステアリン酸グリセリル 2.0質量%
メントール 0.1質量%
スクラブ剤(ベントナイト) 0.1質量%
スクラブ剤(セルロース) 0.1質量%
EDTA-4Na 0.05質量%
香料 0.5質量%
水 残部
合計 100質量%
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、洗浄時に不快な皮膚刺激がなく心地よく、かつ汚れ落ち効果が良好な皮膚洗浄剤組成物として利用できる。