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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】機械式駐車装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20220930BHJP
   E04H 6/14 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
E04H6/18 601F
E04H6/14 601H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021064343
(22)【出願日】2021-04-05
(62)【分割の表示】P 2016217427の分割
【原出願日】2016-11-07
(65)【公開番号】P2021101097
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】小菅 稔久
(72)【発明者】
【氏名】弘胤 謙治
(72)【発明者】
【氏名】滝口 弘二
(72)【発明者】
【氏名】濱田 浩史
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-048533(JP,A)
【文献】特開2009-102903(JP,A)
【文献】II 製造者の取組,「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き,2016年09月,13~30頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出庫部と、前記入出庫部に連通する入出庫口と、前記入出庫口を開閉する扉と、車両の入出庫処理に伴って前記入出庫部で動作する機械とを備えた機械式駐車装置において、
前記入出庫部に、特定エリアが設定され、
前記特定エリアに向けて前記入出庫部の照明光とは異なる色の光を照射する光照射手段と、
前記入出庫口の前記扉が開状態から閉状態とされた後、前記機械の動作が開始されるとき、前記光照射手段に光照射の開始指令を与える制御部と、
を備え、
前記特定エリアは、前記入出庫部で動作する機械と接触する可能性が生じる危険エリアと、前記入出庫部で動作する機械との接触を回避可能な退避エリアと、であり、
前記光照射手段が前記危険エリアに照射する光の色は、前記光照射手段が前記退避エリアに照射する光の色と異なる、
ことを特徴とする機械式駐車装置。
【請求項2】
前記光照射手段は、プロジェクタである、
請求項1記載の機械式駐車装置。
【請求項3】
前記特定エリアは、前記入出庫部の床に設定される、
請求項1記載の機械式駐車装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記機械の動作が開始される前に、前記光照射手段に光照射の開始指令を与える、
請求項1記載の機械式駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入出庫部で車両に乗降する形式の機械式駐車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置には、エレベータ方式、垂直循環方式などの形式のものがある。
【0003】
これらの機械式駐車装置では、建屋の内部に、入出庫部が設けられ、建屋の壁面には入出庫部に連通する入出庫口が設けられている。入出庫口には開閉式の扉が設けられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
この種の機械式駐車装置では、入出庫に際して、操作盤で入出庫のための起動操作が行われると、パレットの搬送に関連する機械が動き始め、呼び出された対象のパレットが、格納棚のような格納個所から入出庫部に搬送される。
【0005】
入庫の場合は、呼び対象のパレットは空のパレットとなり、この空のパレットが入出庫部に到着すると、入出庫口の扉が開く。この状態で、利用者は、車両を入出庫口から入出庫部に乗り入れて、空パレットの上に車両を停止させる。次いで、利用者は、車両から降りて、入出庫口を通って入出庫部から退出する。
【0006】
一方、出庫の場合は、呼び対象のパレットは車両が搭載されたパレットとなり、このパレットが入出庫部に到着すると、入出庫口の扉が開く。この状態で、利用者は、入出庫口から入出庫部に入り、パレット上の車両に乗車し、車両を運転して入出庫口から入出庫部の外へ出る。
【0007】
その後、操作盤で扉閉の操作が行われると、機械式駐車装置では、検知器により入出庫部内に人が残っていないかの確認が行われた後、入出庫口の扉が閉じられる。
【0008】
入出庫口の扉を閉じた後は、機械式駐車装置では、操作盤で次の起動操作が行われたとき、あるいは、設定されたタイミングで、パレットの搬送に関連する機械が動き始め、入出庫部のパレットが格納個所へ搬送されて格納される。
【0009】
したがって、機械式駐車装置の入出庫部は、入出庫口が扉開の状態では、人が立ち入って車両への乗降を行う乗降室となると共に、入出庫口が扉閉の状態のときには、パレットの搬送に関連する機械の動作が生じる領域となる。パレットの搬送に関連して入出庫部で生じる機械の動作とは、たとえば、入出庫部に備えたターンテーブルによるパレットの旋回の動作や、入出庫部と格納個所との間で車両を搬送するケージやリフトなどの搬送装置(搬器)の動作や、ターンテーブルや搬送装置の動作と干渉する個所の可動式プラットホームの移動、等である。
【0010】
そのため、万一、入出庫部に人が残っている状態で入出庫口の扉が閉じられてしまい、機械の動作が開始されてしまうと、入出庫部内の人は、入出庫部で動作する機械に接触する可能性が生じる。
【0011】
また、機械式駐車装置のメンテナンス時には、メンテナンスの作業者が入出庫部に入っている状態で、入出庫部での機械動作を行うことがある。
【0012】
そこで、機械式駐車装置では、入出庫部の床に、入出庫部で動作する機械の動作範囲として、たとえば、ターンテーブルによるパレットの旋回範囲について、その外縁を黄色のペイントで表示することが行われるようになってきている。また、機械式駐車装置では、入出庫部で動作する機械の動作範囲と重なることがなく、よって、動作する機械との接触を回避することが可能な場所を、緑色のペイントで表示することが行われるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2016-128648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、入出庫部の床のペイントによる表示は、常時存在しているものであるため、注意をあまり引かない。すなわち、利用者は、入出庫部に立ち入るときには、ペイントによる表示を毎回目にするため、見慣れてしまい、目立ちにくいというのが実状である。
【0015】
したがって、従来は、入出庫口の扉が閉じられたときに入出庫部に残された人に対しては、入出庫部の内部の視覚情報に特別な変化は生じない状態のまま、機械動作が開始されてしまう、というのが実状である。
【0016】
そこで、本発明は、車両の入出庫処理に伴って入出庫部で機械の動作が開始されるときには、該機械の動作開始前に、入出庫部内での視覚情報に変化を与えて、入出庫部で動作する機械と接触する可能性が生じる領域や、入出庫部で動作する機械との接触を回避可能な場所を明示することができる機械式駐車装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、課題を解決するために、入出庫部と、前記入出庫部に連通する入出庫口と、前記入出庫口を開閉する扉と、車両の入出庫処理に伴って前記入出庫部で動作する機械とを備えた機械式駐車装置において、前記入出庫部に、特定エリアが設定され、前記特定エリアに向けて前記入出庫部の照明光とは異なる色の光を照射する光照射手段と、前記入出庫口の前記扉が開状態から閉状態とされた後、前記機械の動作が開始されるとき、前記光照射手段に光照射の開始指令を与える制御部と、を備え、前記特定エリアは、前記入出庫部で動作する機械と接触する可能性が生じる危険エリアと、前記入出庫部で動作する機械との接触を回避可能な退避エリアと、であり、前記光照射手段が前記危険エリアに照射する光の色は、前記光照射手段が前記退避エリアに照射する光の色と異なる構成を有する機械式駐車装置とする。
【0020】
前記光照射手段は、プロジェクタである。
また、前記特定エリアは、前記入出庫部の床に設定される。
さらに、前記制御部は、前記機械の動作が開始される前に、前記光照射手段に光照射の開始指令を与える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、車両の入出庫処理に伴って入出庫部で機械の動作が開始されるときには、該機械の動作開始前に、入出庫部内での視覚情報に変化を与えて、入出庫部で動作する機械と接触する可能性が生じる領域や、入出庫部で動作する機械との接触を回避可能な場所を明示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】機械式駐車装置の第1実施形態を示す概略図である。
図2図1の機械式駐車装置の入出庫部を示す平面図である。
図3図1の機械式駐車装置の光表示手段の制御部を示す概略図である。
図4】機械式駐車装置の第2実施形態を示す概略図である。
図5図4の機械式駐車装置の入出庫部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0024】
[第1実施形態]
図1乃至図3は、機械式駐車装置の第1実施形態として、本発明の機械式駐車装置を、入出庫部でパレットを旋回させるターンテーブルを備えたエレベータ方式の機械式駐車装置に適用した例を示すものである。
【0025】
図1はエレベータ方式の機械式駐車装置の一例を示す概略切断側面図である。図2は、図1のエレベータ方式の機械式駐車装置における入出庫部の概略平面図である。図3は光表示手段の制御部を示す概略図である。
【0026】
ここで、エレベータ方式の機械式駐車装置の基本的な構成について説明する。
【0027】
エレベータ方式の機械式駐車装置1は、図1図2に一例を示すように、建屋2内の前後方向の中央部分に昇降路7を備え、昇降路7には、平面形状が矩形状としてある搬器としてのケージ3が昇降できるように設置されている。ケージ3には、長手方向の両端側の各2個所に、吊り部材4を介して4本のワイヤロープ5の各一端側が接続されている。各ワイヤロープ5の各他端側は、建屋2の上部に設置されて、ワイヤロープ5を巻き取り可能な昇降装置6に接続されている。これにより、エレベータ方式の機械式駐車装置1では、昇降装置6を運転して、ワイヤロープ5の巻き取りと繰り出しとを行うことで、ケージ3を昇降させることができる。
【0028】
昇降路7を挟んで相対する建屋2の両側部には、車両の格納個所としての格納棚8が、所定の間隔で上下方向に複数設置されている。
【0029】
ケージ3には、図2に示すように、長手方向の中央部分に、ターンテーブル9が設置されている。ターンテーブル9は、ケージ3の上面に載置されるパレット10を持ち上げ下げすることができると共に、持ち上げた状態のパレット10を旋回させることができるようにしてある。
【0030】
建屋2の下部位置には、車両を乗り入れて利用者が乗降する乗降室となる入出庫部11が設けられている。入出庫部11における昇降路7の真下となる位置には、図1に示すようにピット12が設けられている。ケージ3は、ピット12内に下降させることで、ケージ3の上面に載置されたパレット10が入出庫部11の床面と同様の高さ位置に配置可能となる。なお、図示しないが、入出庫部11やケージ3には、入出庫部11に利用者が立ち入るときに入出庫部11の床がフラットになるようにするための可動式のプラットホームを備えていてもよい。
【0031】
建屋2の前側壁2aの下部位置には、入出庫部11に連通していて、車両を入出庫させる入出庫口13が設けられている。入出庫口13には、扉14が開閉可能に設けられている。
【0032】
前側壁2aの外側で入出庫口13に近い位置には、操作盤15が設置されている。操作盤15は、利用者が機械式駐車装置の起動操作と、扉閉操作を行うためのものである。なお、操作盤15には、非常停止スイッチや、その他の機能を備えていてもよいことは勿論である。
【0033】
更に、図1図2に示すように、前側壁2aの内側には、入出庫口13の上辺よりも高い位置に、入出庫部11を照明する照明器具16が設けられている。照明器具16は、入出庫部11を照明することができれば、建屋2の内側の任意の位置に設けられていてもよい。この照明器具16による入出庫部11の照明光は、白色光とされている。
【0034】
本実施形態では、エレベータ方式の機械式駐車装置1は、図2に示すように、入出庫部11の床11aに、危険領域17と退避場所18とが設定されている。更に、エレベータ方式の機械式駐車装置1は、光表示手段(光照射手段)として、図1図2に示すように、危険領域17に光照射を行うプロジェクタ19と、退避場所18に光照射を行うプロジェクタ20とを備え、且つ図3に示すように各プロジェクタ19,20を制御する制御部21を備えた構成とされている。
【0035】
危険領域17は、入出庫部11で動作する機械と接触する可能性が生じる領域である。本実施形態では、図2に示すように、危険領域17は、入出庫部11で動作する機械の動作範囲と重なる個所として、ターンテーブル9によるパレット10の旋回範囲と重なる個所、および、ケージ3の動作範囲と重なる個所に設定されている。なお、入出庫部11に図示しない可動式のプラットホームが備えられている場合は、該可動式プラットホームと重なる個所も、危険領域17に設定される。
【0036】
図示しないが、入出庫部11の床11aには、危険領域17の外縁をペイント、たとえば、黄色のペイントで表示した構成とすることが、より好ましい。これは、プロジェクタ19による光照射を行っていない状態のときにも危険領域17を明瞭に示すためである。
【0037】
退避場所18は、入出庫部11で動作する機械との接触を回避可能な場所である。本実施形態では、図2に示すように、退避場所18は、ターンテーブル9によるパレット10の旋回範囲、および、ケージ3の動作範囲のいずれからも設定された距離で離れた場所として、入出庫部11の床11aの4隅に設定されている。
【0038】
図示しないが、入出庫部11の床11aには、退避場所18をペイント、たとえば、緑色のペイントで表示した構成とすることが、より好ましい。これは、プロジェクタ20による光照射を行っていない状態のときにも退避場所18を明瞭に示すためである。
【0039】
プロジェクタ19は、危険領域17の全体に、照明器具16による照明とは異なる色の光、たとえば、赤色の光を照射するものである。図2では、赤色の光が照射された部分をドットのハッチングで示してある。
【0040】
更に、図1図2に示すように、プロジェクタ19は、パレット10に車両が載置されている状態であっても、車両の周囲の危険領域17に車両の影によって照射光の届かない部分が生じないように、入出庫部11の側壁の複数個所に設けられている。図1図2では、入出庫部11の前側壁2a、後側壁2b、左側壁2cおよび右側壁2dの内側に、プロジェクタ19が設けられた構成を示してある。
【0041】
プロジェクタ20は、退避場所18に、照明器具16による照明とは異なる色であって、且つプロジェクタ19の照射光の色とも異なる色の光、たとえば、緑色の光を照射するものである。図2では、緑色の光が照射された部分を斜線のハッチングで示してある。
【0042】
図1図2では、入出庫部11の前側壁2aの内側における左右両側と、後側壁2bの内側における左右両側に、各退避場所18に個別に光照射を行うプロジェクタ20を備えた構成を示している。
【0043】
なお、プロジェクタ19とプロジェクタ20は、連続して光を照射するものでもよいが、視覚情報の変化をより大きくするためには、点滅(明滅)するものであってもよい。
【0044】
制御部21は、プロジェクタ19およびプロジェクタ20からの光照射による危険領域17および退避場所18の光表示の開始と停止とを制御するためのものである。
【0045】
制御部21は、入出庫口13の扉14が閉じられた後、少なくとも入出庫部11で最初に機械の動作が開始される時点よりも設定された時間前の時点、たとえば、10秒前の時点で、プロジェクタ19およびプロジェクタ20に、光表示を開始する指令を与える機能を備えている。
【0046】
また、入出庫口13の扉14が閉じられた後、入出庫部11での機械の動作が時間をおいた複数回に分けて行われる場合は、制御部21は、各回の機械動作が開始される時点よりも前記設定時間前の時点で、プロジェクタ19およびプロジェクタ20に、光表示を開始する指令を与える機能を備えていてもよい。
【0047】
そのため、制御部21は、図3に示すように、入出庫処理に伴う入出庫口13の扉14への開閉の作動指令と、入出庫部11で機械であるターンテーブル9やケージ3の昇降装置6に運転指令を与える制御装置22と連携するようにしてある。
【0048】
制御装置22は、入出庫口13の扉14を閉じた状態で、ターンテーブル9やケージ3の昇降装置6に運転指令を発するときには、その運転指令を発する時点から前記所定時間前となる時点で、制御部21に、運転指令を発することに関する情報を送る。制御部21は、この情報を制御装置22から受けると、プロジェクタ19とプロジェクタ20に、光表示の開始指令を与える機能を備えている。
【0049】
これにより、エレベータ方式の機械式駐車装置1では、入出庫口13の扉14が閉じられた状態で、入出庫処理に伴って入出庫部11でターンテーブル9によるパレット10の旋回動作や、ケージ3の昇降動作が行われるときには、それらの動作が開始される時点から前記設定時間前の時点で、危険領域17には、プロジェクタ19から赤色の光または赤色の点滅する光が照射される。また、退避場所18には、プロジェクタ20から緑色の光または緑色の点滅する光が照射される。
【0050】
制御部21は、入出庫部11における機械の動作が終了すると、あるいは、入出庫部11における機械の動作が開始してから設定された経過時間が経過すると、プロジェクタ19とプロジェクタ20への光表示を終了する指令を発する機能を備えている。
【0051】
なお、制御部21は、制御装置22と別体のものとして示したが、制御装置22に機能の1つとして組み込まれた構成としてもよい。
【0052】
図2における符号23は、入出庫部11に配置されたパレット10上に車両を乗り入れるときに、車両の位置を確認するために使用する反射鏡である。
【0053】
以上の構成としてある本実施形態の機械式駐車装置によれば、車両の入出庫処理を行うときには、入出庫部11で機械の動作が開始される前に、入出庫部11内の視覚情報に変化を与えて、危険領域17と退避場所18とを明示することができる。
【0054】
したがって、万一、入出庫口13の扉14が閉じられたときに入出庫部11に取り残された人がいた場合は、その人に対して、危険領域17は赤い光で示し、退避場所18は緑色の光で示すことができる。
【0055】
たとえば、JISZ9103の安全色の規格にあるように、赤色は禁止や危険を示す色であり、緑色は安全状態を示す色である。このような、赤色は危険、緑色は安全という認識は、一般的にも普及していると考えられる。
【0056】
そのため、入出庫口13の扉14が閉じられたときに入出庫部11に取り残された人は、赤色で示されている危険領域17から離れて、緑色で示されている退避場所18に入るようにすれば、入出庫処理に伴って入出庫部11で動作する機械との接触を回避することができる。
【0057】
なお、プロジェクタ19は、危険領域17へ赤色の光を照射するときに、たとえば、「赤色の部分から出てください」などの、赤色の光で示される危険領域17からの退出を促すメッセージを、危険領域17へ投影する機能を備えるようにしてもよい。
【0058】
同様に、プロジェクタ20は、退避場所18へ緑色の光を照射するときに、たとえば、「緑色の部分に入ってください」などの、緑色の光で示される退避場所18に入ることを促すメッセージを、退避場所18へ投影する機能を備えるようにしてもよい。
【0059】
更には、入出庫部11では、プロジェクタ19から危険領域17へ赤色の光を照射するときに、図示しない音声出力手段により、たとえば、「赤色の部分から出てください」などのメッセージを音声で出力するようにしてもよい。また、入出庫部11では、プロジェクタ20から退避場所18へ緑色の光を照射するときに、図示しない音声出力手段により、たとえば、「緑色の部分に入ってください」などのメッセージを音声で出力するようにしてもよいことは勿論である。
【0060】
更に、本実施形態では、入出庫部11の床11aにおける危険領域17と退避場所18とを照明器具16による照明光とは異なる色の光で表示する光表示手段として、プロジェクタ19およびプロジェクタ20を用いるようにしてあるので、床11aは、特別な機器を設ける必要はない。よって、本実施形態の機械式駐車装置は、既存の機械式駐車装置に本発明を適用するのに好適なものとすることができる。
【0061】
[第2実施形態]
図4および図5は、機械式駐車装置の第2実施形態として、本発明の機械式駐車装置を、垂直循環方式の機械式駐車装置に適用した例を示す。
【0062】
図4は垂直循環方式の機械式駐車装置の一例を示す概略切断正面図である。図5は、図4の垂直循環方式の機械式駐車装置における入出庫部の概略平面図である。
【0063】
なお、図4および図5において、第1実施形態に示したものと同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0064】
ここで、垂直循環方式の機械式駐車装置の基本的な構成について説明する。
【0065】
垂直循環方式の機械式駐車装置1aは、図4図5に一例を示すように、建屋2の下部位置に、車両を乗り入れて利用者が乗降する入出庫部11が設けられている。
【0066】
建屋2の前側壁2aの下部位置には、入出庫部11に連通していて、車両を入出庫させる入出庫口13が設けられている。入出庫口13には、扉14が開閉可能に設けられている。
【0067】
建屋2の内部には、建屋上部に配したスプロケット(図示せず)と、建屋下部に配したスプロケット24との間に無端状に掛け回されたチェーン25と、チェーン25の周方向に設定された間隔で取り付けられたアタッチメント26と、アタッチメント26に吊り下げられたケージ27と、ケージ27に保持されたパレット28とを備えた構成とされている。
【0068】
更に、建屋2の上部には、上部側のスプロケット(図示せず)を介してチェーン25を循環駆動する図示しない駆動装置が設けられている。これにより、垂直循環方式の機械式駐車装置1aでは、駆動装置を運転して、チェーン25を循環させることで、ケージ27を建屋2内で上下方向に循環移動させることができる。
【0069】
垂直循環方式の機械式駐車装置1aでは、チェーン25の最下端部と対応する位置までケージ27を下降させると、そのケージ27に保持されているパレット28の上面が、入出庫部11の床11aと同レベルに配置されるようにしてある。この状態で、入出庫部11では、ケージ27に保持されているパレット28への車両の乗り入れと乗り出しを行うことができる。
【0070】
第1実施形態と同様に、前側壁2aの外側で入出庫口13に近い位置には、操作盤15が設置されている。
【0071】
また、図4図5に示すように、前側壁2aの内側には、入出庫口13の上辺よりも高い位置に、入出庫部11を照明する照明器具16が設けられている。照明器具16は、入出庫部11を照明することができれば、建屋2の内側の任意の位置に設けられていてもよい。この照明器具16による入出庫部11の照明光は、白色光とされている。
【0072】
本実施形態では、垂直循環方式の機械式駐車装置1aは、図5に示すように、入出庫部11の床11aに、危険領域17aと退避場所18aとが設定されている。
【0073】
危険領域17aは、入出庫部11で動作する機械と接触する可能性が生じる領域である。本実施形態では、入出庫部11で動作する機械は、図4に示すように、スプロケット24の下半部の外周側で左右方向に移動しながら上下方向に移動するケージ27である。
【0074】
そのため、本実施形態では、このケージ27の左右方向の動作範囲と重なる個所の床11aに、図5に示すように危険領域17aが設定されている。
【0075】
図示しないが、入出庫部11の床11aには、危険領域17aの外縁をペイント、たとえば、黄色のペイントで表示した構成とすることが、より好ましい。これは、プロジェクタ19による光照射を行っていない状態のときにも危険領域17aを明瞭に示すためである。
【0076】
退避場所18aは、入出庫部11で左右方向に動作するケージ27との接触を回避可能な場所である。本実施形態では、図5に示すように、退避場所18aは、危険領域17aより前側壁2a側となる個所と、危険領域17aよりも後側壁2b側となる個所で且つ反射鏡23を避けた左右の二個所に設定されている。
【0077】
図示しないが、入出庫部11の床11aには、退避場所18aをペイント、たとえば、緑色のペイントで表示した構成とすることが、より好ましい。これは、プロジェクタ20による光照射を行っていない状態のときにも退避場所18aを明瞭に示すためである。
【0078】
本実施形態における光表示手段は、第1実施形態と同様に、危険領域17aに光照射を行うプロジェクタ19と、退避場所18aに光照射を行うプロジェクタ20とを備えた構成とされている。
【0079】
プロジェクタ19は、危険領域17aの全体に、照明器具16による照明とは異なる色の光、たとえば、赤色の光を照射するものである。図2では、赤色の光が照射された部分をドットのハッチングで示してある。
【0080】
更に、図5に示すように、プロジェクタ19は、パレット10に車両が載置されている状態であっても、車両の周囲の危険領域17aに車両の影によって照射光の届かない部分が生じないように、入出庫部11の側壁の複数個所に設けられている。図5では、入出庫部11の前側壁2a、後側壁2b、左側壁2cおよび右側壁2dの内側に、プロジェクタ19が設けられた構成を示してある。
【0081】
プロジェクタ20は、退避場所18aに、照明器具16による照明とは異なる色であって、且つプロジェクタ19の照射光の色とも異なる色の光、たとえば、緑色の光を照射するものである。図5では、緑色の光が照射された部分を斜線のハッチングで示してある。
【0082】
図5では、入出庫部11の前側壁2aの内側における左右両側と中央部、後側壁2bの内側における左右両側に、退避場所18aに光照射を行うプロジェクタ20を備えた構成を示している。
【0083】
なお、プロジェクタ19とプロジェクタ20は、連続して光を照射するものでもよいが、視覚情報の変化をより大きくするためには、点滅(明滅)するものであってもよい。
【0084】
プロジェクタ19とプロジェクタ20は、第1実施形態と同様の制御部21(図3参照)に接続されている。
【0085】
本実施形態では、制御部21は、入出庫口13の扉14が閉じられた後、ケージ27の動作が開始される時点よりも設定された時間前の時点、たとえば、10秒前の時点で、プロジェクタ19およびプロジェクタ20に、光表示を開始する指令を与える機能を備えている。
【0086】
以上の構成により、垂直循環方式の機械式駐車装置1aでは、入出庫口13の扉14が閉じられた状態で、入出庫処理に伴って入出庫部11でケージ27の動作が行われるときには、それらの動作が開始される時点から前記設定時間前の時点で、危険領域17aには、プロジェクタ19から赤色の光または赤色の点滅する光が照射される。また、退避場所18aには、プロジェクタ20から緑色の光または緑色の点滅する光が照射される。
【0087】
制御部21は、入出庫部11におけるケージ27の動作が終了すると、あるいは、入出庫部11におけるケージ27の動作が開始してから設定された経過時間が経過すると、プロジェクタ19とプロジェクタ20への光表示を終了する指令を発する機能を備えている。
【0088】
したがって、本実施形態の垂直循環方式の機械式駐車装置1aによっても、第1実施形態のエレベータ方式の機械式駐車装置1と同様の効果を得ることができる。
【0089】
なお、前記各実施形態では、光表示手段を、危険領域17,17aに赤色の光の照射を行うプロジェクタ19と、退避場所18,18aに緑色の光の照射を行うプロジェクタ20とを備える構成とした例を示した。
【0090】
これに対し、光表示手段は、危険領域17,17aと、退避場所18,18aとにそれぞれ照明器具16の照明光とは異なる色の光を照射することができれば、危険領域17,17aに照射する光の色は、赤色でなくてもよく、退避場所18,18aに照射する光の色は、緑色でなくてもよい。また、危険領域17,17a、および、退避場所18,18aには、全体に均一な光ではなく、たとえば、縞模様や、移動を促す方向に向いた矢印のようなパターンを表示するようにしてもよい。
【0091】
また、光表示手段は、危険領域17,17aと、退避場所18,18aとにそれぞれ照明器具16の照明光とは異なる色の光を照射することができれば、危険領域17,17aと、退避場所18,18aとを個別にレーザ光で走査する装置など、プロジェクタ19,20以外の光照射器具を使用してもよい。
【0092】
更に、光表示手段は、入出庫部11の床11aにおける危険領域17,17aと退避場所18,18aに設定された部分を、照明器具16による照明光とは異なる色の光で表示することができるようにしてあれば、前記床11aの所定部分にLEDやその他の発光部材を設置した構成としてもよい。
【0093】
また、本発明は、前記各実施形態のみに限定されるものではない。
【0094】
たとえば、本発明を適用する機械式駐車装置として、第1実施形態では、ケージ3にターンテーブル9を備えたエレベータ方式の機械式駐車装置1を示し、第2実施形態では、垂直循環方式の機械式駐車装置1aを示した。これに対し、本発明は、ケージではなく入出庫部にターンテーブルを備えた形式や、ターンテーブルを備えていない形式のエレベータ方式の機械式駐車装置、ターンテーブルを備えた形式の垂直循環方式の機械式駐車装置に適用してもよい。更に、建屋2内に車両を乗り入れて利用者が乗降する入出庫部11と、入出庫部11に連通する入出庫口13と、入出庫口13を開閉する扉14とを備え、且つ入出庫口13の扉14が閉じている状態で入出庫部11で動作する機械を有する形式の機械式駐車装置であれば、平面往復方式や、水平循環方式や、多層循環方式など、エレベータ方式および垂直循環方式以外の方式の機械式駐車装置に、本発明は適用してもよい。
【0095】
更に、本発明の機械式駐車装置は、エレベータ方式の機械式駐車装置として、入出庫部からケージ(リフト)などの搬送機械で車両のみを搬送し、搬送先で車両をパレットやトレイに載せ替えて格納棚に格納する形式の機械式駐車装置に適用してもよい。
【0096】
入出庫部11で動作する機械は、機械式駐車装置の形式や入出庫部の構成に応じて、パレット10を旋回させるターンテーブル9、ケージ3やケージ27のような搬送装置、可動式プラットホーム以外のものを含んでいてもよいことは勿論である。
【0097】
機械式駐車装置は、入出庫部11が設けられる入出庫階は、建屋2の下部に限られるものではなく、建屋2の上下方向の中間部に入出庫部11が設けられていてもよい。更に、たとえば、地下式の機械式駐車装置の場合は、地下に構築された建屋の上部に入出庫部11が設けられていてもよい。
【0098】
また、前記各実施形態では、プロジェクタ19,20による照明を開始させるタイミングの一例として、入出庫部11で機械が動作する時点の10秒前という時間設定を例示したが、これに限定されるものではなく、たとえば、5秒前や、その他任意の時間に設定してもよいことは勿論である。
【0099】
本発明の機械式駐車装置は、前記各実施形態で示したように、危険領域17,17aと退避場所18,18aの双方を光表示手段で明示することが好ましいが、危険領域17,17aと退避場所18,18aのいずれか一方のみを光表示手段で明示する構成を採用してもよい。
【0100】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0101】
3 ケージ(入出庫部で動作する機械)
9 ターンテーブル(入出庫部で動作する機械)
11 入出庫部
13 入出庫口
14 扉
17,17a 危険領域(領域)
18,18a 退避場所(場所)
19 プロジェクタ(光表示手段)
20 プロジェクタ(光表示手段)
21 制御部
27 ケージ(入出庫部で動作する機械)
図1
図2
図3
図4
図5