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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】中継衛星及びデータ中継方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/118 20130101AFI20220930BHJP
   B64G 1/66 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H04B10/118
B64G1/66 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021215075
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2022-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518236960
【氏名又は名称】株式会社ワープスペース
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 健彦
(72)【発明者】
【氏名】関 正徳
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-103820(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109781635(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/118
B64G 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球局と通信する通信部と、
前記地球局から受信した衛星との通信要求に応じて前記衛星にビーコン光を送信し、前記ビーコン光を検出した前記衛星からの応答信号を受信する光信号送受信部と、
前記応答信号の受信に基づいて、前記衛星との衛星間光通信を確立する光通信部と、
前記衛星間光通信により前記衛星から受信したデータを前記通信部を用いて前記地球局へ中継する通信制御部と、
を有し、
前記光通信部は、予め決定された通信スケジュールに基づいて衛星間光通信を実行し、かつ、前記地球局から衛星との通信要求を受信した場合には、前記通信スケジュールに優先して、前記衛星と衛星間光通信を確立する中継衛星。
【請求項2】
前記ビーコン光は、前記中継衛星の識別情報と前記衛星の識別情報とを含む所定の明滅パターンを有する、請求項に記載の中継衛星。
【請求項3】
前記光信号送受信部は、所定の明滅パターンを有するビーコン光を送信する、請求項又はに記載の中継衛星。
【請求項4】
地球局と通信する通信部と、
前記地球局から受信した衛星との通信要求に応じて前記衛星にビーコン光を送信し、前記ビーコン光を検出した前記衛星からの応答信号を受信する光信号送受信部と、
前記応答信号の受信に基づいて、前記衛星との衛星間光通信を確立する光通信部と、
前記衛星間光通信により前記衛星から受信したデータを前記通信部を用いて前記地球局へ中継する通信制御部と、
を有し、
前記光通信部は、予め決定された通信スケジュールに基づいて衛星間光通信を実行し、かつ、前記地球局から衛星との通信要求を受信した場合には、前記通信スケジュールにおける空き時間を利用して、前記衛星と衛星間光通信を確立する中継衛星。
【請求項5】
前記ビーコン光は、前記中継衛星の識別情報と前記衛星の識別情報とを含む所定の明滅パターンを有する、請求項4に記載の中継衛星。
【請求項6】
前記光信号送受信部は、所定の明滅パターンを有するビーコン光を送信する、請求項4又は5に記載の中継衛星。
【請求項7】
地球局から受信した衛星との通信要求に応じて前記衛星にビーコン光を送信し、
前記ビーコン光を検出した前記衛星からの応答信号を受信し、
前記応答信号の受信に基づいて、前記衛星と衛星間光通信を確立し、
前記衛星間光通信により前記衛星から受信したデータを前記地球局へ中継
前記確立することは、予め決定された通信スケジュールに基づいて衛星間光通信を実行し、かつ、前記地球局から衛星との通信要求を受信した場合には、前記通信スケジュールにおける空き時間を利用して、前記衛星と衛星間光通信を確立する、
中継衛星が実行するデータ中継方法。
【請求項8】
地球局から受信した衛星との通信要求に応じて前記衛星にビーコン光を送信し、
前記ビーコン光を検出した前記衛星からの応答信号を受信し、
前記応答信号の受信に基づいて、前記衛星と衛星間光通信を確立し、
前記衛星間光通信により前記衛星から受信したデータを前記地球局へ中継し、
前記確立することは、予め決定された通信スケジュールに基づいて衛星間光通信を実行し、かつ、前記地球局から衛星との通信要求を受信した場合には、前記通信スケジュールに優先して、前記衛星と衛星間光通信を確立する、
中継衛星が実行するデータ中継方法。
【請求項9】
予定された通信スケジュールに基づいて衛星間光通信を実行し、
地球局から受信した衛星との通信要求を受信した場合に、前記予定された通信スケジュールにない即応通信を行う時間を決定し、
前記通信要求に応じて前記衛星にビーコン光を送信し、
前記ビーコン光を検出した前記衛星からの応答信号を受信し、
前記応答信号の受信に基づいて、前記衛星との衛星間光通信を確立し、
前記時間内に前記衛星間光通信により前記衛星からデータを受信し、
前記データを前記地球局へ中継する、
中継衛星が実行するデータ中継方法。
【請求項10】
地球局と通信する通信部と、
衛星にビーコン光を送信し、前記ビーコン光を検出した前記衛星から応答信号を受信する光信号送受信部と、
予定された通信スケジュールに基づいて、前記応答信号に応じて前記衛星と衛星間光通信を行う光通信部と、
前記衛星間光通信により衛星からデータを受信し、前記データを前記通信部を用いて前記地球局へ中継する通信制御部と、
を備え、
前記光信号送受信部は、前記地球局から受信した前記衛星との通信要求に応じて、前記衛星に前記ビーコン光を送信し、
前記光通信部は、さらに、前記通信要求に応じて、前記予定された通信スケジュールにない即応通信を行う時間を決定し、前記時間において前記衛星との衛星間光通信を確立する、
中継衛星。
【請求項11】
予定された通信スケジュールに基づいて衛星間光通信を実行し、
地球局から受信した衛星との通信要求を受信した場合に、前記予定された通信スケジュールに優先して即応通信を行う時間を決定し、
前記通信要求に応じて前記衛星にビーコン光を送信し、
前記ビーコン光を検出した前記衛星からの応答信号を受信し、
前記応答信号の受信に基づいて、前記衛星との衛星間光通信を確立し、
前記時間内に前記衛星間光通信により前記衛星からデータを受信し、
前記データを前記地球局へ中継する、
中継衛星が実行するデータ中継方法。
【請求項12】
地球局と通信する通信部と、
衛星にビーコン光を送信し、前記ビーコン光を検出した前記衛星から応答信号を受信する光信号送受信部と、
予定された通信スケジュールに基づいて、前記応答信号に応じて前記衛星と衛星間光通信を行う光通信部と、
前記衛星間光通信により衛星からデータを受信し、前記データを前記通信部を用いて前記地球局へ中継する通信制御部と、
を備え、
前記光信号送受信部は、前記地球局から受信した前記衛星との通信要求に応じて、前記衛星に前記ビーコン光を送信し、
前記光通信部は、さらに、前記通信要求に応じて、前記予定された通信スケジュールに優先して即応通信を行う時間を決定し、前記時間において前記衛星との衛星間光通信を確立する、
中継衛星。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーザ衛星、中継衛星、衛星システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球局とユーザ衛星(例えば、観測衛星、通信衛星など)とは、中継衛星を介し通信することが可能である。このような中継衛星を介した地球局とユーザ衛星との間の通信では、ユーザ衛星と中継衛星とは、衛星間通信によりデータをやりとりしている。このような衛星間通信において、ユーザ衛星と中継衛星とが光通信によって衛星間通信を行う衛星間光通信の利用が検討されている。
【0003】
これまで検討されている衛星間光通信では、中継衛星とユーザ衛星との間の通信は、異なる軌道を周回する中継衛星とユーザ衛星との間の位置関係に応じて事前に設定されたスケジュールに従って行われる。典型的な衛星間光通信では、中継衛星は、予め計画されたスケジュールに従って所定の時間帯に所定のユーザ衛星と通信接続を確立し、当該ユーザ衛星との間でデータを送受信する。具体的には、スケジューリングにより定められた時間帯の始めに、中継衛星はまず、通信相手のユーザ衛星を送信先とするビーコン光を送信する。当該ユーザ衛星が当該ビーコン光を受信すると、通信相手となるユーザ衛星は、ビーコン光の送信元の中継衛星との間で通信接続を確立する。通信接続の確立後、中継衛星とユーザ衛星とは、光通信を利用してデータを送受信する。送受信対象のデータがなくなると、あるいは、スケジューリングにより定められた時間帯が終わると、中継衛星とユーザ衛星とは通信接続を解放し、当該通信を終了する。
【0004】
衛星間光通信では、空間光通信技術が適用可能である。例えば、特開2001-203641号公報は、空間光通信において補足追尾及び指向が可能な空間光伝送装置について開示している。また、特開2016-100855号公報は、自由空間光通信においてデータと制御情報とを重畳して伝送する送受信装置について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-203641号公報
【文献】特開2016-100855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の衛星間通信によると、中継衛星と地球観測衛星などのユーザ衛星とは、各衛星の運用事業者間による事前の通信計画(以下、通信スケジュールまたはスケジューリングなどと呼ぶ)により予め設定された時間帯だけしか通信を実行することができず、通信機会に関するフレキシビリティを欠いている。したがって、例えば、地震などの災害発生時など特定のイベントが発生した場合に、ユーザ衛星の運用事業者はそのイベント発生に即応して、迅速にユーザ衛星による観測データを取得したいが、予め設定されたスケジュールでしか所望のユーザ衛星と通信することができないという課題がある。
【0007】
上記問題点に鑑み、本開示の1つの課題は、衛星間光通信において予め決定された通信計画にない通信機会をオンデマンドで設定することにより、フレキシブルな通信を実現するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、地球局と通信する通信部と、前記地球局から受信した衛星との通信要求に応じて前記衛星にビーコン光を送信し、前記ビーコン光を検出した前記衛星からの応答信号を受信する光信号送受信部と、前記応答信号の受信に基づいて、前記衛星との衛星間光通信を確立する光通信部と、前記衛星間光通信により前記衛星から受信したデータを前記通信部を用いて前記地球局へ中継する通信制御部と、を有し、前記光通信部は、予め決定された通信スケジュールに基づいて衛星間光通信を実行し、かつ、前記地球局から衛星との通信要求を受信した場合には、前記通信スケジュールに優先して、前記衛星と衛星間光通信を確立する中継衛星に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、予め通信計画されていない通信機会をオンデマンドで設定することにより、衛星間光通信において、フレキシブルに即応性のある通信を実現するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施例によるユーザ衛星と中継衛星とを示す概略図である。
図2】本開示の一実施例による地球局と衛星との通信可能範囲を示す概略図である。
図3】本開示の一実施例による中継衛星を介した地球局とユーザ衛星との通信を示す概略図である。
図4】本開示の一実施例による通信確立手順を示す概略図である。
図5】本開示の一実施例によるユーザ衛星及び中継衛星のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6】本開示の一実施例によるユーザ衛星の機能構成を示すブロック図である。
図7】本開示の一実施例による輝点に関する情報を格納するテーブルを示す図である。
図8】本開示の一実施例による輝点に関する情報を格納するテーブルを示す図である。
図9】本開示の一実施例による輝点に関する情報を格納するテーブルを示す図である。
図10】本開示の一実施例による輝点の特定を示す概略図である。
図11】本開示の一実施例による輝点に関する情報を格納するテーブルを示す図である。
図12】本開示の一実施例による即応通信用のスロットの割当てを示す概略図である。
図13】本開示の一実施例による即応通信用のスロットの割当てを示す概略図である。
図14】本開示の一実施例による中継衛星の機能構成を示すブロック図である。
図15】本開示の一実施例によるオンデマンド通信処理を示すフローチャートである。
図16】本開示の一実施例による輝点抽出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。
【0012】
後述される実施例では、地球局、中継衛星及びユーザ衛星から構成される衛星システムが開示される。以下の実施例は、衛星システムにおける中継衛星とユーザ衛星との間の衛星間光通信に関して説明されるが、本開示は、必ずしもこれに限定されず、任意の2つの衛星間の衛星間光通信に適用可能である。
【0013】
[衛星システム]
図1に示されるように、衛星システム10は、地球局50、ユーザ衛星100及び中継衛星200を有する。ユーザ衛星100と中継衛星200とは、例えば、異なる軌道上で地球を周回している。例えば、ユーザ衛星100が観測衛星である場合、複数のユーザ衛星100を利用して地球上の観測対象エリアを観測できるように、これらのユーザ衛星100が所定の配置(衛星コンステレーション)で地球を周回しても良い。
【0014】
ユーザ衛星100は、限定することなく、観測衛星、通信衛星など、所定の高度の軌道上で地球を周回する所定の機能を備えた人工衛星である。
【0015】
中継衛星200は、限定することなく、ユーザ衛星100より高い高度の軌道上で地球を周回し、地球上の地球局50とユーザ衛星100との間のデータ送受信のための中継局として機能する。典型的には、中継衛星200は、複数のユーザ衛星100をカバーし、所望のユーザ衛星100と通信する。例えば、ユーザ衛星は低軌道(LEO:Low Earth Orbit)を周回し、その高度は、例えば、地表から20km~2,000kmの高度に位置する。例えば、中継衛星200は中高度軌道(MEO:Medium Earth Orbit)を周回し、その高度は、例えば、地表から1,000km~約36,0000kmの高度に位置する。
【0016】
地球局50は、中継衛星200と通信する通信局である。図示された例では、地球局50は、地上に設置されているが、本開示による地球局50は、これに限定されず、例えば、成層圏等に構築された非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)の通信局であってもよい。地球局50は、例えば、中継衛星運用事業者30及びユーザ衛星運用事業者40とインターネットなどのネットワーク20を介し通信接続されうる。中継衛星200を介しユーザ衛星100から取得した情報は、インターネットを介し中継衛星運用事業者30及び/又はユーザ衛星運用事業者40にわたされる。
【0017】
図2に示されるように、地球局50によるユーザ衛星との通信範囲は、地球局50の可視範囲によって規定される。図示された例において、地球局50は、通信可能領域に存在するユーザ衛星100_2とは通信可能である一方、通信不可領域に存在するユーザ衛星100_1とは通信不可である。
【0018】
一方、図3に示されるように、地球局50は、通信可能領域に存在する中継衛星200を利用して、中継衛星200を介し通信不可領域に存在するユーザ衛星100_1と通信することが可能になる。
【0019】
[本開示の概略]
中継衛星200を介した地球局50とユーザ衛星100との間の通信は、予め設定されたスケジューリングに基づいて行われていた。スケジューリングは、例えば、中継衛星システムの基準時刻における所定の時刻から24時間分のスケジューリング情報が事前に決定される。中継衛星200とユーザ衛星100の運用事業者30,40は、そのスケジューリング情報を中継衛星200とユーザ衛星100にそれぞれ事前に送信する。しかしながら、ユーザ衛星運用事業者40は、事前のスケジューリングによりユーザ衛星100に付与された通信時間帯以外においてもユーザ衛星100と通信することを所望するかもしれない。例えば、世界各地で起こる地震や津波などの災害発生時やテロなど、事前に予測が困難な特定のイベントが発生した場合に、ユーザ衛星運用事業者40がそのイベント発生に即応して、通常の観測データ取得タイミングよりも短時間でユーザ衛星100による観測データを取得したいケースが考えられる。以下の実施例では、予めスケジューリングされた通信計画にない任意のタイミングで、オンデマンド方式により中継衛星200を介しユーザ衛星100と地球局50が即応性のある通信を実現するための技術が開示される。
【0020】
具体的には、ユーザ衛星運用事業者40が、予めスケジューリングされた通信時間以外の時間帯においてユーザ衛星100との通信を所望する場合、ユーザ衛星運用事業者40からの通信要求を受けた中継衛星運用事業者30は、地球局50を介して当該ユーザ衛星100と通信可能な位置にある中継衛星200に当該ユーザ衛星100に対する通信要求を送信する。中継衛星200は、地球局50から当該通信要求を受信すると、ユーザ衛星100が周回する軌道上にビーコン光を送信する。当該ビーコン光は、例えば、中継衛星200の識別子と通信相手のユーザ衛星100の識別子とが符号化されたパルス形式の光信号であってもよい。以下で詳細に説明されるように、カメラ等の撮像装置によって宇宙空間を撮像するユーザ衛星100は、撮像した画像フレームからビーコン光を検出すると、検出したビーコン光の明滅パターンを解析する。そして、解析結果に基づき中継衛星200から自らが通信相手として要求されていると判定すると、当該ユーザ衛星100は、予めスケジューリングされた通信時間以外の時間帯であっても、ビーコン光の送信元の中継衛星200との通信接続を確立し、中継衛星200との通信を開始する。
【0021】
例えば、図4に示されるように、地球局50は、ユーザ衛星100_3と通信することを所望し、ユーザ衛星100_3との通信のための通信要求を中継衛星200に送信する。中継衛星200は、ユーザ衛星100_3を検出するためのビーコン光をユーザ衛星100_1~100_4(以降、ユーザ衛星100と総称されうる)の軌道上に送信する。例えば、ビーコン光は、中継衛星200が持つユーザ衛星100の軌道予測データから予測したユーザ衛星100の位置に向けて送出され、予測された位置を含む広範な範囲をカバーするように相対的に指向性の低い光から構成される。例えば、ビーコン光は、中継衛星200の識別子と通信相手として要求されたユーザ衛星100_3の識別子とが符号化されたパルス信号として構成されてもよい。
【0022】
ユーザ衛星100_3は、中継衛星200からのビーコン光を検出すると、ビーコン光に符号化された中継衛星200の識別子と要求されている通信相手の識別子とを抽出する。ユーザ衛星100_3は、抽出した通信相手の識別子が自らの識別子と一致するか判定する。本例では、ユーザ衛星100_3の識別子がビーコン光に含まれているため、ユーザ衛星100_3は、自らが通信相手として要求されていると判断し、中継衛星200との通信確立手順に移行する。所定の通信確立手順に従ってユーザ衛星100_3と中継星200との間の通信接続が確立されると、ユーザ衛星100_3と中継衛星200とは、相対的に指向性の高い通信光によってデータを送受信する。また、ビーコン光は、中継衛星200の識別子を含まない特定の点滅パターンであっても良く、その場合、ビーコン光を検出したユーザ衛星100は、点滅パターンからビーコン光が所定の中継衛星から送出されたものであることを判別してもよい。
【0023】
これにより、地球局50は、所望のタイミングで中継衛星200を介し所望のユーザ衛星100と通信することが可能になり、予め設定された時間帯のみ通信が可能な従来技術と比較して、フレキシブルに即応性のある通信を実現することができる。
【0024】
ここで、ユーザ衛星100及び中継衛星200は、例えば、図5に示されるようなハードウェア構成を有してもよい。すなわち、ユーザ衛星100及び中継衛星200はそれぞれ、コマンド&データハンドリング系101、ミッション系102、通信系103、機構・熱構造系104、姿勢制御系105及び電源系106を有する。
【0025】
コマンド&データハンドリング系101は、受信したコマンドを処理すると共に、当該衛星の状態データ、ミッションデータなどを処理する。例えば、コマンド&データハンドリング系101は、データ処理用の処理回路を有し、当該処理回路を利用して、後述される各種機能部を実現する。
【0026】
ミッション系102は、各衛星に特有の機能(ミッション)を実現する。例えば、当該衛星が地球観測衛星である場合、ミッション系102は、センサとデータ処理装置などから構成されうる。また、当該衛星が通信衛星である場合、ミッション系102は、データ中継用のアンテナ、通信機器などから構成されうる。
【0027】
通信系103は、地球局50からの指令(コマンド)を受信すると共に、衛星の状態、衛星による観測データ、テレメトリなどを地球局50に送信する通信機器、アンテナなどから構成されうる。また、ユーザ衛星100の通信系103は、衛星の周囲を撮像するカメラを有し、宇宙空間などの非地上領域を撮像すると共に、衛星間光通信のためのビーコン光及び通信光を受光する。例えば、カメラは常時、所定のフレームレート(例えば、30fps)で衛星の周囲の非地上領域を撮像し、撮像した非地上領域の画像フレームをコマンド&データハンドリング系101などににわたす。また、カメラは、より広範な範囲を撮像できるように、円周魚眼レンズなどの全天球レンズを備えてもよい。
【0028】
機構・熱構造系104は、衛星本体、太陽電池パネルなどの可動展開物、及び衛星内温度の安定化及び排熱を行う機構から構成される。
【0029】
姿勢制御系105は、衛星の位置及び/又は姿勢を測定するセンサ、衛星の高度及び/又は姿勢を変える推進器などから構成され、衛星の軌道上の位置及び/又は姿勢を制御する。
【0030】
電源系106は、衛星において使用される電力を制御及び管理する。例えば、電源系106は、太陽電池で発電された電力をバッテリに充電したり、衛星内の各系に必要とされる電力を供給する。
【0031】
しかしながら、上述したハードウェア構成は単なる一例であり、本開示によるユーザ衛星100及び中継衛星200は、他の何れか適切なハードウェア構成により実現されてもよい。また、上述した各系へのグルーピングは単なる一例であり、他のグルーピングによってユーザ衛星100及び中継衛星200のハードウェア構成が説明されてもよい。例えば、衛星のミッションに応じて同一の機器・機構が異なる系に分類されてもよい。例えば、中継衛星200は、光通信によるデータ中継を主たるミッションとするため、光通信機(例えば、カメラ、光伝送装置など)及びデータ中継機器は、ミッション系102に分類されてもよい。他方、ユーザ衛星100は、地球観測などをミッションとするため、観測用の各種センサとデータ処理装置などがミッション系102に分類され、中継衛星200との光通信機(例えば、カメラ、光伝送装置など)は、通信系103に分類されてもよい。
【0032】
[ユーザ衛星]
次に、図6を参照して、本開示の一実施例によるユーザ衛星100を説明する。図6は、本開示の一実施例によるユーザ衛星100の機能構成を示すブロック図である。
【0033】
図6に示されるように、ユーザ衛星100は、光信号取得部110、画像処理部120、ビーコン光検出部130及び光通信部140を有する。各機能部は、上述した系の何れか又は組み合わせによって実現されうる。
【0034】
光信号取得部110は、中継衛星200が地球局50から受信した通信要求に応じて送信したビーコン光を撮像する。本実施例では、中継衛星200は、地球局50からの通信要求に応答して、地球局50によって要求されたユーザ衛星100の軌道上にビーコン光を送信する。光信号取得部110は、ユーザ衛星100に到来する光信号を観測し、観測された光信号を取得する。例えば、光信号取得部110は、ユーザ衛星100が地球上からの高度が低い低高度軌道(LEO:Low Earth-Orbit)を周回し、中継衛星200が相対的により高度の高い軌道を周回している場合には、光信号取得部110は、宇宙空間などの非地上領域を伝送する光信号を含む画像を撮像する。ここでの宇宙空間は、地球及び他の天体に属さない空間領域として定義されてもよく、大気圏より外側の空間領域を表しうる。例えば、ユーザ衛星100のカメラのレンズは、当該ユーザ衛星100を管轄する中継衛星200に向けられるよう制御されており、光信号取得部110は、所定のフレームレートで非地上領域を撮像する。本実施例では、地球局50がユーザ衛星100と任意のタイミングで通信可能となるように、光信号取得部110は、常時非地上領域を撮像し、中継衛星200からのビーコン光の到来を観測してもよい。光信号取得部110は、撮像した非地上領域の画像フレームを画像処理部120に転送する。
【0035】
画像処理部120は、撮像された画像フレームにおける輝点を抽出する。具体的には、画像処理部120は、光信号取得部110から取得した各画像フレームに対してノイズ低減、コントラスト調整などの前処理を実行する。
【0036】
衛星用の高感度カメラでは、バックグラウンドにノイズが入りやすく、ノイズが星やビーコン光と誤認されるおそれがある。例えば、画像処理部120は、ノイズ低減のために画像フレームに対して時間アベレージング処理及び/又は空間アベレージング処理を実行してもよい。また、画像処理部120は、背景と検知対象の輝点とを良好に分離できるよう画像フレームの輝度を適切なレベルに調整するためのコントラスト(オフセット・ゲイン)調整を実行してもよい。
【0037】
このように前処理を実行した後、画像処理部120は、前処理された各画像フレームからビーコン光候補として輝点を抽出する。例えば、画像処理部120は、各画像フレームに対して二値化を実行し、画像フレームをバックグラウンドの画素とバックグラウンドより高い輝度の画素との二値画像に変換してもよい。二値化の閾値は、星やビーコン光などの輝点とバックグラウンドとを適切に分離可能な輝度レベルに設定される。その後、画像処理部120は、二値画像において高輝度画素のかたまり(輝点)を抽出し、抽出した輝点をビーコン光候補としてラベル付けする。ラベル付けされた輝点(bright spot)は、例えば、それの面積(画素数)、縦・横のサイズ、重心画像、円形度などの各種特徴量と関連付けて保持される。例えば、抽出された各輝点と特徴量とは、図7に示されるようなテーブル形式で保持されてもよい。図7に示されるテーブルでは、当該画像フレームにおいてN個の輝点が抽出されている。ビーコン光候補である各輝点には、固有のラベル番号(1~N)が付与されている。
【0038】
次に、画像処理部120は、抽出された各輝点に対して特徴量に基づくフィルタリングを実行する。例えば、抽出された輝点には、太陽、月、衛星構造物、ゴーストなどが含まれている可能性がある。これらの輝点は有意に大きな面積を有しているため、画像処理部120は、閾値以上の面積を有する輝点を除去してもよい。また、ビーコン光として考えられる面積以外の輝点を除去してもよい。ビーコン光が所定の画素数以上として検出されうる場合、当該画素数未満の輝点は、ノイズである可能性が高いと判断され、除去されてもよい。また、ビーコン光の輝点は円形又は円形に近い形状をとると考えられるため、所定の閾値未満の円形度の輝点は、除去されてもよい。このようなフィルタリングによって、画像処理部120は、二値画像から抽出された高輝度画素の輝点からビーコン光候補を抽出することができる。抽出されたビーコン光候補は、例えば、図8に示されるようなテーブル形式で保持されてもよい。図8に示されるテーブルでは、フィルタリングの結果としてM個(M<N)の粒子が、ビーコン光候補として残っている。
【0039】
次に、画像処理部120は、ビーコン光候補から星を除去する。すなわち、上述したように抽出されたビーコン光候補には、ビーコン光だけでなく、ユーザ衛星100から観測される星も含まれうる。中継衛星200から送信されるビーコン光は所定の明滅パターンを有し、撮像された画像フレーム系列において明滅パターンに対応して輝点が明滅しうる。一方、星は、特定の明滅パターンで明滅する可能性は低く、星に対応する輝点は、各画像フレームにわたって存在すると考えられる。このため、画像処理部120は、フィルタリングされた画像フレーム系列において明滅する輝点をビーコン光候補として抽出し、星と考えられる毎画像フレームに存在する輝点と区別する。
【0040】
例えば、画像処理部120は、以下の手順に従ってビーコン光候補の輝点と星の輝点とを区別してもよい。まず、画像処理部120は、図8に示されるテーブルを図9に示されるような輝点追尾テーブルに変換する。ここで、図8のラベル番号は、輝点追尾テーブルの追跡番号に置換される。そして、輝点の追跡状態を示す状態と、粒子の判別状態(星、ビーコン光候補など)を示す種別とが、輝点追尾テーブルに追加される。ここで、状態は、初期的には未定に設定される。
【0041】
そして、画像処理部120は、衛星システム10の基準時刻におけるt時点の画像フレームと(t-1)時点の画像フレームとの輝点追尾テーブルを参照して、重心座標が近い輝点、例えば、重心座標間の距離が所定の閾値未満である輝点を同一輝点と判断してもよい。追跡番号i(i=1~N)が付与された輝点のt時点における重心座標をPi(t)とすると、例えば、画像処理部120は、t時点の画像フレームと(t-1)時点の画像フレームとを比較して、第1の判定対象となるt時点の画像フレームにおける輝点P1(t)と(t-1)時点の画像フレームにおける輝点P1(t-1)との同一性を判定する際、判定対象の輝点P1(t)とP1(t-1)とが、図10Aに示される位置関係にあった場合、すなわち、輝点P1(t-1)から半径Rの範囲内に輝点P1(t)があった場合、2つの輝点P1(t),P1(t-1)は同一の輝点であると判定する。ここで、半径Rは、撮像部110に設定されている画像取得のフレームレートに基づき同一輝点とみなされうる適切な値に設定される。また、半径Rは、輝点の種別(例えば、星、ビーコン光候補など)に応じて異なる値に設定されてもよい。
【0042】
また、画像処理部120は、t時点の画像フレームと(t-1)時点の画像フレームとを比較して、第2,3の判定対象となるt時点の画像フレームにおける輝点P2(t),P3(t)と(t-1)時点の画像フレームにおける輝点P2(t-1),P3(t-1)とが、図10Bに示される位置関係にあることを検出する。輝点P3(t-1)から半径Rの範囲内には1つの輝点P3(t)しか存在しない一方、輝点P2(t-1)から半径Rの範囲内には2つの輝点P2(t),P3(t)が存在する。この場合、画像処理部120はまず、輝点P3(t-1)から半径Rの範囲内にある輝点P3(t)を輝点P3(t-1)と同一の輝点と判定し、輝点P2(t-1)から半径Rの範囲内にある他方の輝点P2(t)を輝点P2(t-1)と同一の輝点と判定してもよい。しかしながら、本開示の輝点の同一性判定は、必ずしもこれに限定されず、例えば、画像処理部120は、近隣粒子の移動方向の傾向から輝点P2(t-1),P2(t)を同一の輝点と判定してもよい。
【0043】
さらに、画像処理部120は、直前の画像フレームにおいて種別が判定されている輝点については、当該種別を維持してもよい。また、画像処理部120は、現在の画像フレームにおいて検出された輝点のうち直前の画像フレームの何れの輝点とも関連付けができなかった輝点を、新たに出現した輝点と判定してもよい。しかしながら、画像処理部120は、この時点では当該輝点の種別を判定することはできないことに留意されたい。
【0044】
このようにして画像処理部120がビーコン光候補の輝点を抽出すると、抽出された輝点はビーコン光検出部130により処理される。
【0045】
ビーコン光検出部130は、抽出した輝点の明滅状態に基づいて、地球局50から通信要求を受信した中継衛星200から送信されたビーコン光を検出する。本実施例では、中継衛星200は、地球局50からの通信要求に応答して、地球局50によって要求されたユーザ衛星100の軌道上にビーコン光を送信する。ビーコン光検出部130は、画像処理部120によってビーコン光候補として抽出された輝点が、当該ユーザ衛星100を送信先とするビーコン光であるか判定する。例えば、直前の画像フレームにおいて存在せず、現在の画像フレームにおいて存在する輝点は、明滅中のビーコン光、新たなビーコン光、デブリの反射による光の強弱変化、新たに見え始めた星又はノイズとして分類されうる。ビーコン光検出部130は、当該輝点が以前の画像フレームにおいて検出済みであって、追尾中の輝点に対応するか判定する。当該輝点がそのような輝点に対応するものでない場合、ビーコン光検出部130は、当該輝点を新たに出現した輝点(ビーコン光候補)と分類してもよい。
【0046】
具体的には、ビーコン光検出部130はまず、ビーコン光候補出現検出を実行する。例えば、ビーコン光検出部130は、抽出された輝点に対して、直前の画像フレームの輝点追尾テーブルを参照して、当該輝点が追尾中の点滅している輝点であるか、又は新規に出現した輝点であるか判定する。ビーコン光検出部130は、図11に示されるような輝点追尾テーブルを保持してもよい。この輝点追尾テーブルは、各輝点に対して、現在の画像フレームにおける輝点の有無を示す輝点有無と、当該粒子の存在が確認された時刻を示す輝点確認時刻とを有する。なお、輝点追尾テーブル上で追跡番号が存在しない輝点のデータについては、新たな輝点の出現検出と同様に、異なる画像フレーム間の輝点相互の距離が計算され、当該距離が経過時間から想定される移動範囲内にある場合、既に存在する追跡番号の輝点と同一の輝点と判定され、輝点追尾テーブルが更新される。そして、ビーコン光検出部130は、輝点追尾テーブルに該当しない輝点を新たなビーコン光候補と判定する。
【0047】
次に、ビーコン光検出部130は、ビーコン光候補の点滅監視を実行する。例えば、ビーコン光検出部130は、ビーコン光候補の輝点の明滅の有無を監視し、監視結果に基づいて当該輝点の種別を判別する。すなわち、ビーコン光検出部130は、一定のパターンで明滅する輝点をビーコン光と判定し、その他の輝点をビーコン光候補から除外する。
【0048】
具体的には、ビーコン光検出部130は、一定時間消えなかった輝点を星と判定し、ビーコン光候補から除外する。また、ビーコン光検出部130は、一定時間消えたまま再び出現しなかった輝点を存在しなくなったと判定し、当該輝点を輝点追尾テーブルから削除する。また、ビーコン光検出部130は、輝度レベルが一定間隔で変化する輝点に対して、後述されるビーコン光判定を実行する。また、ビーコン光検出部130は、輝度レベル変化が異なる周期を有したり、又はランダムである場合、輝点追尾テーブルから削除することなく、当該輝点の種別を不明として再設定してもよい。
【0049】
次に、ビーコン光検出部130は、ビーコン光の判定を実行する。具体的には、ビーコン光検出部130は、輝度レベルが一定間隔で変化する輝点に対して、当該輝点の明滅パターンを復号化して読み取り、明滅パターンとして符号化されている中継衛星200の識別子と、通信相手として要求されているユーザ衛星100の識別子とを抽出する。抽出した2つの識別子が、当該ユーザ衛星100を管轄する中継衛星200の識別子と当該ユーザ衛星100の識別子とに一致する場合、ビーコン光検出部130は、当該ビーコン光候補が自衛星向けのビーコン光であると判定し、中継衛星200と通信接続を確立するよう光通信部140に指示する。他方、抽出した2つの識別子が、当該ユーザ衛星100を管轄する中継衛星200の識別子及び/又は当該ユーザ衛星100の識別子に一致しない場合、ビーコン光検出部130は、当該ビーコン光候補は自衛星向けのビーコン光でないと判定する。
【0050】
なお、ビーコン光検出部130は更に、ビーコン光消滅監視を実行してもよい。具体的には、ビーコン光検出部130は、ビーコン光判定後に輝点の追跡を継続し、輝点が一定時間消滅していることを検出すると、当該追跡を終了する。例えば、上述したビーコン光点滅監視と同様に、ビーコン光検出部130は、一定時間消えたまま再出現しなかったビーコン光を輝点追尾テーブルから削除する。
【0051】
光通信部140は、検出したビーコン光に基づいて、ビーコン光を送信した中継衛星200との衛星間光通信を確立する。具体的には、検出されたビーコン光が自衛星に対する通信要求であることをビーコン光検出部130が検出すると、光通信部140は、中継衛星200との通信確立手順を開始する。例えば、光通信部140は、受信した通信要求に対する応答を示す光信号を中継衛星200に送信し、中継衛星200とユーザ衛星100との間で予め規定された通信確立手順に従って通信接続を確立する。通信接続を確立すると、光通信部140は、通信光を使用して中継衛星200と衛星間光通信を実行する。なお、何らかの理由で通信を確立できなかった場合は、既定回数リトライを実行し、その状態は中継衛星200から地球局50に送信され、中継衛星運用事業者30によりモニタされる。規定回数のリトライ後に通信の確立に失敗した場合は、その旨をユーザ衛星運用事業者40に通知するなどの対応を行う。
【0052】
例えば、中継衛星200の通信スケジュールは、所定のスロット単位で行われており、1つのスロットには固定の通信時間が割り当てられる。この固定の通信時間は、例えば、10分であってもよいし、10分より短い又は長い固定時間であってもよい。地球局50から通信要求を受信すると、中継衛星200は、受信した通信要求において指定されたユーザ衛星100との即応(オンデマンド)通信用にNスロットを確保する。ここで、確保されるスロット数Nは、地球局50からの通信要求に含まれてもよい。そして、中継衛星200は、指定されたユーザ衛星100にビーコン光を送信する際、当該ユーザ衛星100の識別子と共に、スロット数Nを示す情報をビーコン光に符号化する。あるいは、衛星システム10において即応通信用のスロット数Nがデフォルト設定されてもよい(例えば、N=1など)。この場合、地球局50から中継衛星200への通信要求及び中継衛星200からユーザ衛星100へのビーコン光には、確保すべきスロット数Nを含む必要はない。
【0053】
指定されたユーザ衛星100は、ビーコン光を受信、検出及び復号化すると、復号化したビーコン光に基づいて即応通信用のスロット数Nを認識し、このスロット数Nに対応する時間内において中継衛星200と即応通信が可能になる。なお、Nスロット期間内における即応通信の終了タイミングは、ユーザ衛星100から中継衛星200に所定の通信終了シーケンス(エンドシーケンス)を送信することによって通知されてもよい。
【0054】
ここで、地球局50から通信要求を受信した中継衛星200は、即応通信を実行する場合、事前に指示された通信スケジュールを調整する必要がある。中継衛星200は、例えば、以下の方法によって通信スケジュールを調整してもよい。
1)事前に指示された通信スケジュール内に空きスロットがある場合、中継衛星200は、最も早期のタイミングで利用可能な空きスロットにおいて即応通信を実行してもよい。ただし、Nスロットの即応通信には、N個の空きスロットが必要とされる。例えば、図12Aに示されるように、中継衛星200は、空きスロットのうち最も早期のタイミングの空きスロットを利用して、即応通信を開始してもよい。
2)即応通信用の空きスロットが事前の通信スケジュールにおいて予め確保され、中継衛星200は、確保されている空きスロットのうち最も早期のタイミングの空きスロットにおいて即応通信を実行してもよい。ここで、1回の通信要求において可能な即応通信用のスロット数Nは、予め確保されている空きスロット数以下に制限される。例えば、図12Bに示されるように、即応通信用の空きスロットが確保されるよう通信スケジュールが事前に設定され、中継衛星200は、確保された空きスロットのうち最も早期のタイミングの空きスロットを利用して、即応通信を開始してもよい。
3)中継衛星200は、事前のスケジューリングにより他の通信が予定されているスロットにおける通信をキャンセルし、指定されたユーザ衛星100との即応通信を実行する。ここで、キャンセルされるスロット数は、通信要求に含まれるスロット数Nに依存する。例えば、通信スケジュールが、図13Aに示されるようスケジューリングしている場合、中継衛星200は、図13Bに示されるように、事前に他の通信をスケジューリング済みスロットの一部(この例では2スロット分)の通信をキャンセルして即応通信用のスロットに再割り当てし、即応通信を開始してもよい。
【0055】
なお、上述したような画像処理部120及びビーコン光検出部130による輝点抽出からビーコン光判定までの処理は、必ずしも上述したものに限定されず、他の何れか適切な処理によって実現されてもよい。
【0056】
例えば、輝点の出現検出について、輝点の画像が画像フレーム間でほとんど動かない場合、現在の画像フレームと直前の画像フレームとの差分を抽出することによって、画像の変化が小さい星や衛星構造物の反射をキャンセルすることができる一方、新たに出現した輝点や消滅した輝点が画像上に現れる。従って、当該輝点が直線の画像フレームに存在せず、現在の画像フレームに存在する場合、新たな輝点が出現したか、又は明滅する輝点が再点灯したと判定できる。また、直前の画像フレームに存在せず、現在の画像フレームに存在する場合、当該輝点は消滅したか、又は明滅する輝点が消灯したと判定できる。
【0057】
具体的には、画像処理部120は、現在の画像フレームと直前の画像フレームとに対して画像間演算を実行し、これらの画像フレームの差分画像を取得する。差分画像には、各画素の輝度レベルの差分が表される。輝度レベルの差分がゼロである場合、画像処理部120は、当該画素を中間輝度に変換し、出現した輝点はより明るく、消えた輝点はより暗くなるよう当該画素の輝度を変換してもよい。あるいは、絶対値を輝度レベルに変換してもよい。この場合、出現した輝点と消えた輝点との区別ができないが、消えた輝点はすでに追跡されているため、当該区別は可能である。差分画像を二値化することによって、星や衛星構造物を除外する処理を省くことができる。
【0058】
あるいは、星とビーコン光との画像フレーム系列における移動速度の相違を利用して、ビーコン光が検出されてもよい。この場合、輝点の最初の出現を抽出できなかったとしても、ビーコン光候補を抽出することができる。
【0059】
あるいは、中継衛星200の軌道情報とユーザ衛星100の位置及び姿勢とに基づいて、中継衛星200が存在しうる領域が関心領域(Region Of Interest:ROI)として設定され、ビーコン光検出部130は、当該ROI領域内でのみビーコン光候補を検出してもよい。例えば、ビーコン光検出部130は、新たな輝点の出現が検出されると、当該輝点の位置がROI内である場合、当該輝点を中継衛星200からのビーコン光候補と判定してもよい。このため、画像処理部120が新たな輝点の出現を検出すると、ビーコン光検出部130は、中継衛星200が存在しうるROI領域を計算し、当該出現位置がROI内に含まれる場合、当該輝点をビーコン光候補と判定する。あるいは、画像処理部120は、予めROI領域を計算し、当該ROI領域内のみで輝点を抽出するようしてもよい。
【0060】
[中継衛星]
次に、図14を参照して、本開示の一実施例による中継衛星200を説明する。図14は、本開示の一実施例による中継衛星200の機能構成を示すブロック図である。
【0061】
図14に示されるように、中継衛星200は、通信部210、光信号送受信部220、光通信部230及び通信制御部240を有する。各機能部は、上述した系の何れか又は組み合わせによって実現されうる。
【0062】
通信部210は、地球局50と通信する。例えば、中継衛星200が地球局50の通信可能領域にある間、通信部210は、地球局50と信号をやりとりする。例えば、通信部210は、地球局50からユーザ衛星100との中継のための通信スケジュールを受信すると共に、ユーザ衛星100との即応(オンデマンド)通信のための通信要求を受信する。
【0063】
光信号送受信部220は、地球局50から受信したユーザ衛星100との通信要求に応じてユーザ衛星100にビーコン光を送信し、ビーコン光を検出したユーザ衛星100からの応答信号を受信する。具体的には、通信部210が地球局50からユーザ衛星100との即応通信のための通信要求を受信すると、光信号送受信部220は、当該ユーザ衛星100にビーコン光を送信する。例えば、ビーコン光は、通信接続確立後に送信される通信光より指向性の低い光信号であってもよい。これにより、ビーコン光は、通信光より相対的に広い領域に送信され、ユーザ衛星100は、ビーコン光を受信することが容易になる。また、ユーザ衛星100が全天球レンズを備えたカメラを有する場合、中継衛星200から送信されるビーコン光をより容易に受信することが可能になる。
【0064】
また、光信号送受信部220は、通信要求に指定されたユーザ衛星100の識別子と中継衛星200の識別子とをビーコン光に符号化し、これらの識別子を示すビーコン光をユーザ衛星100に送信してもよい。例えば、光信号送受信部220は、符号化された情報を示す所定の明滅パターンを有するビーコン光を送信してもよい。ビーコン光を受信すると、ユーザ衛星100は、受信したビーコン光が自衛星宛てのものであるか判定し、ビーコン光が自衛星宛てのものである場合、中継衛星200に応答信号を送信する。この応答信号には、ユーザ衛星100の識別子と中継衛星200の識別子とが符号化され、中継衛星200は、受信した応答信号が自衛星宛ての応答信号であるか否か判定することができる。
【0065】
また、光信号送受信部220は、指定されたユーザ衛星100にビーコン光を送信する際、スロット数Nを示す情報をビーコン光に更に符号化してもよい。例えば、中継衛星200の通信スケジュールは、所定のスロット単位で行われており、1つのスロットには固定の通信時間が割り当てられる。この固定の通信時間は、例えば、10分であってもよいし、10分より短い又は長い固定時間であってもよい。
【0066】
光通信部230は、応答信号の受信に基づいて、ユーザ衛星100との衛星間光通信を確立する。具体的には、ユーザ衛星100からビーコン光に対する応答信号を受信すると、光通信部230は、中継衛星200とユーザ衛星100との間で予め規定された通信確立手順に従って通信接続を確立する。通信接続を確立すると、光通信部230は、通信光を使用してユーザ衛星100と衛星間光通信を実行する。
【0067】
地球局50から通信要求を受信すると、光通信部230は、前述のとおり、受信した通信要求において指定されたユーザ衛星100との即応(オンデマンド)通信用にNスロットを確保する。ここで、確保されるスロット数Nは、地球局50からの通信要求に含まれてもよい。あるいは、衛星システム10において即応通信用のスロット数Nがデフォルト設定されてもよい(例えば、N=1など)。この場合、通信要求は、確保すべきスロット数Nを含む必要はない。
【0068】
光通信部230は、即応通信を実行する場合、事前に指示された通信スケジュールを調整する必要がある。光通信部230は、上述したような方法によって通信スケジュールを調整してもよい。
1)事前に指示された通信スケジュール内に空きスロットがある場合、光通信部230は、最も早期のタイミングで利用可能な空きスロットにおいて即応通信を実行してもよい。
2)即応通信用の空きスロットが指示される通信スケジュールにおいて予め確保され、光通信部230は、確保されている空きスロットのうち最も早期のタイミングの空きスロットにおいて即応通信を実行してもよい。
3)光通信部230は、スケジューリング済みのスロットにおける通信をキャンセルし、当該スロットにおいて即応通信を実行する。
【0069】
通信制御部240は、衛星間光通信によりユーザ衛星100から受信したデータを通信部210を用いて地球局50へ中継する。具体的には、光通信部230がユーザ衛星100からデータを受信すると、通信制御部240は、受信したデータを地球局50に送信するよう通信部210に指示する。ここで、地球局50への送信タイミングは、ユーザ衛星100からのデータの受信直後であってもよい。あるいは、ユーザ衛星100から受信したデータが一時的にバッファリングされ、通信制御部240は、以降の適切なタイミングでバッファリングされたデータを地球局50に送信するよう通信部210に指示してもよい。
【0070】
[ビーコン光検出処理]
次に、図15を参照して、本開示の一実施例によるオンデマンド通信処理を説明する。当該オンデマンド通信処理は、上述したユーザ衛星100によって実行される。
【0071】
図15は、本開示の一実施例によるオンデマンド通信処理を示すフローチャートである。
【0072】
図15に示されるように、ステップS101において、ユーザ衛星100は、地球局50から受信した通信要求に応じて中継衛星200から送信されたビーコン光を撮像する。具体的には、ユーザ衛星100は、所定のフレームレートでユーザ衛星100の周囲の宇宙空間などの非地上領域を撮像し、画像フレーム系列を取得する。ここで、ユーザ衛星100は、中継衛星200からのビーコン光を広範な撮像範囲から抽出できるように、全天球レンズを利用して非地上領域を撮像してもよい。
【0073】
ステップS102において、ユーザ衛星100は、撮像された画像フレームにおける輝点を抽出する。具体的には、ユーザ衛星100は、各画像フレームに対してノイズ低減、フィルタリング等の前処理を実行し、画像フレームにおけるビーコン光候補となる輝点を抽出する。このとき、ユーザ衛星100は、抽出した輝点の面積、重心座標、サイズ、円形度などの各種特徴量を算出してもよい。
【0074】
より詳細には、ユーザ衛星100は、図16に示されるような輝点抽出処理を実行してもよい。図16に示されるように、ユーザ衛星100は、ステップS201において、画像フレームを前処理する。具体的には、ユーザ衛星100は、取得した各画像フレームに対してノイズ低減、コントラスト調整などの前処理を実行し、バックグラウンドノイズなどを除去してもよい。例えば、ユーザ衛星100は、画像フレームに対して時間アベレージング処理及び/又は空間アベレージング処理を実行してもよい。また、ユーザ衛星100は、背景と検知対象の輝点とを良好に分離できるよう画像フレームの輝度を適切なレベルに調整するためのコントラスト(オフセット・ゲイン)調整を実行してもよい。
【0075】
ステップS202において、ユーザ衛星100は、ビーコン光候補として輝点を抽出し、抽出された輝点の特徴量を格納する。例えば、ユーザ衛星100は、各画像フレームに対して二値化を実行し、画像フレームをバックグラウンドの画素とバックグラウンドより高い輝度の画素との二値画像に変換してもよい。二値化の閾値は、星やビーコン光などの輝点とバックグラウンドとを適切に分離可能な輝度レベルに設定される。さらに、ユーザ衛星100は、二値画像において輝点を抽出し、抽出した輝点をビーコン光候補としてラベル付けする。ラベル付けされた輝点(bright spot)は、例えば、それの面積(画素数)、縦・横のサイズ、重心画像、円形度などの各種特徴量と関連付けて、図7に示されるようなテーブル形式により保持されてもよい。
【0076】
ステップS203において、ユーザ衛星100は、抽出された各輝点に対して特徴量に基づくフィルタリングを実行する。例えば、抽出された輝点には、太陽、月、衛星構造物、ゴーストなどが含まれている可能性がある。これらの輝点は有意に大きな面積を有しているため、ユーザ衛星100は、閾値以上の面積を有する輝点を除去してもよい。また、ビーコン光として考えられる面積以外の輝点を除去してもよい。ビーコン光が所定の画素数以上として検出されうる場合、当該画素数未満の輝点は、ノイズである可能性が高いと判断され、除去されてもよい。また、ビーコン光の輝点は円形又は円形に近い形状をとると考えられるため、所定の閾値未満の円形度の輝点は、除去されてもよい。このようなフィルタリングによって、ユーザ衛星100は、二値画像から抽出された高輝度画素の輝点からビーコン光候補を抽出することができる。抽出されたビーコン光候補は、例えば、図8に示されるようなテーブル形式で保持されてもよい。
【0077】
ステップS204において、ユーザ衛星100は、ビーコン光候補から星を除去する。例えば、ユーザ衛星100は、フィルタリングされた画像フレーム系列において明滅する輝点をビーコン光候補として抽出し、星と考えられる毎画像フレームに存在する輝点と区別することによって、ビーコン光候補から星を除去してもよい。このようにして、ビーコン光候補を抽出すると、ユーザ衛星100は、ステップS103に移行し、抽出した輝点の明滅状態に基づいてビーコン光候補からビーコン光を抽出する。
【0078】
ステップS103において、ユーザ衛星100は、抽出した輝点の明滅状態に基づいて、地球局50から通信要求を受信したことに応答して中継衛星200から送信されたビーコン光を検出する。本実施例では、例えば、予めスケジューリングされた以外の時間帯において、地球局50がユーザ衛星100との通信を所望したとき、地球局50は、ユーザ衛星100に対する通信要求を中継衛星200に送信する。地球局50から当該通信要求を受信すると、中継衛星200は、指定されたユーザ衛星100との通信接続を確立するため、当該ユーザ衛星100の軌道上にビーコン光を送信する。例えば、ビーコン光は、中継衛星200の識別子と当該ユーザ衛星100の識別子とを示す明滅するパルス信号であってもよい。ユーザ衛星100は、前処理された画像フレーム系列から明滅する輝点をビーコン光候補として抽出し、抽出した輝点の明滅パターンに含まれる識別子と当該ユーザ衛星100の識別子とが一致する場合、明滅する輝点が当該ユーザ衛星100に対するビーコン光であると判断する。
【0079】
ステップS104において、ユーザ衛星100は、検出したビーコン光に基づいて、ビーコン光を送信した中継衛星200との衛星間光通信を確立する。具体的には、ユーザ衛星100は、衛星システム10において予め規定されている通信確立手順に従って、中継衛星200との通信接続を確立し、確立した通信接続を介し通信光を送受信して衛星間光通信を実行する。
【0080】
上述した実施例によると、ユーザ衛星100と中継衛星200とは、予めスケジューリングされている通信時間帯だけでなく、任意の時間帯において衛星間光通信を実行することができる。すなわち、地球局50から受信した任意の時点における通信要求に応じて、中継衛星200を介して所望のユーザ衛星100が取得したデータを地球局50へ転送することが可能である。
【0081】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1)
地球局から受信した通信要求に応じて中継衛星から送信されたビーコン光を撮像する光信号取得部と、
撮像された画像フレームにおける輝点を抽出する画像処理部と、
前記抽出した輝点の明滅状態に基づいて、前記ビーコン光を検出するビーコン光検出部と、
前記検出したビーコン光に基づいて、前記中継衛星との衛星間光通信を確立する光通信部と、
を有する衛星。
(付記2)
前記光信号取得部は、全天球レンズを備えたカメラを含む、付記1に記載の衛星。
(付記3)
前記ビーコン光は、前記中継衛星の識別情報と前記衛星の識別情報とを含む所定の明滅パターンを有する、付記1又は2に記載の衛星。
(付記4)
前記ビーコン光検出部は、前記抽出した輝点が所定の明滅パターンを有すると判定すると、前記輝点が前記中継衛星からのビーコン光であると判定する、付記1から3の何れか一項に記載の衛星。
(付記5)
地球局と、
衛星と、
前記地上局と前記衛星とを中継する中継衛星と、
を有し、
前記衛星は、
前記地球局から受信した通信要求に応じて前記中継衛星から送信されたビーコン光を撮像する光信号取得部と、
撮像された画像フレームにおける輝点を抽出する画像処理部と、
前記抽出した輝点の明滅状態に基づいて、前記ビーコン光を検出するビーコン光検出部と、
前記検出したビーコン光に基づいて、前記中継衛星との衛星間光通信を確立する光通信部と、
を有する、衛星システム。
(付記6)
地球局から受信した通信要求に応じて中継衛星から送信されたビーコン光を撮像するステップと、
撮像された画像フレームにおける輝点を抽出するステップと、
前記抽出した輝点の明滅状態に基づいて、前記ビーコン光を検出するステップと、
前記検出したビーコン光に基づいて、前記中継衛星との衛星間光通信を確立するステップと、
を含む、衛星が実行するビーコン光検出方法。
(付記7)
地球局と通信する通信部と、
前記地球局から受信した衛星との通信要求に応じて前記衛星にビーコン光を送信し、前記ビーコン光を検出した前記衛星からの応答信号を受信する光信号送受信部と、
前記応答信号の受信に基づいて、前記衛星との衛星間光通信を確立する光通信部と、
前記衛星間光通信により前記衛星から受信したデータを前記通信部を用いて前記地球局へ中継する通信制御部と、
を有する中継衛星。
(付記8)
前記ビーコン光は、前記中継衛星の識別情報と前記衛星の識別情報とを含む所定の明滅パターンを有する、付記7に記載の中継衛星。
(付記9)
前記光信号送受信部は、所定の明滅パターンを有するビーコン光を送信する、付記7又は8に記載の中継衛星。
(付記10)
前記光通信部は、予め決定された通信スケジュールに基づいて衛星間光通信を実行し、かつ、前記地球局から衛星との通信要求を受信した場合には、前記通信スケジュールにおける空き時間を利用して前記衛星と衛星間光通信を確立する、付記7に記載の中継衛星。
(付記11)
前記光通信部は、予め決定された通信スケジュールに基づいて衛星間光通信を実行し、かつ、前記地球局から衛星との通信要求を受信した場合には、前記通信スケジュールに優先して、前記衛星と衛星間光通信を確立する、付記7に記載の中継衛星。
(付記12)
地球局から受信した衛星との通信要求に応じて前記衛星にビーコン光を送信するステップと、
前記ビーコン光を検出した前記衛星からの応答信号を受信するステップと、
前記応答信号の受信に基づいて、前記衛星と衛星間光通信を確立するステップと、
前記衛星間光通信により前記衛星から受信したデータを前記地球局へ中継するステップと、
を含む、中継衛星が実行するデータ中継方法。
(付記13)
予め決定された通信スケジュールに基づいて衛星間光通信を実行するステップと、
地球局から受信した衛星との通信要求を受信した場合には、前記通信要求に応じるための即応通信時間を確保するステップと、
前記通信要求に応じて前記衛星にビーコン光を送信するステップと、
前記ビーコン光を検出した前記衛星からの応答信号を受信するステップと、
前記応答信号の受信に基づいて、前記衛星との衛星間光通信を確立するステップと、
前記即応通信時間内に前記衛星間光通信により前記衛星からデータを受信するステップと、
前記データを前記地球局へ中継するステップと、
を含む、中継衛星が実行するデータ中継方法。
【0082】
以上、本開示の実施例について詳述したが、本開示は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 衛星システム
50 地球局
100 ユーザ衛星
110 光信号取得部
120 画像処理部
130 ビーコン光検出部
140 光通信部
200 中継衛星
210 通信部
220 光信号送受信部
230 光通信部
240 通信制御部
【要約】
【課題】衛星間光通信における予めスケジューリングされた通信計画にない通信機会をオンデマンドで設定することにより、フレキシブルに即応性のある通信を実現するための技術を提供することである。
【解決手段】本開示の一態様は、地球局から受信した通信要求に応じて中継衛星から送信されたビーコン光を撮像する光信号取得部と、撮像された画像フレームにおける輝点を抽出する画像処理部と、前記抽出した輝点の明滅状態に基づいて、前記ビーコン光を検出するビーコン光検出部と、前記検出したビーコン光に基づいて、前記中継衛星との衛星間光通信を確立する光通信部と、を有する衛星に関する。
【選択図】図15
図1
図2
図3
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