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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ブレーキ液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/40 20060101AFI20220930BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20220930BHJP
   F04B 1/14 20200101ALI20220930BHJP
【FI】
B60T8/40 C
B60T17/00 D
F04B1/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021515309
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 IB2020052904
(87)【国際公開番号】W WO2020217114
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2019080964
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】仁張 勉
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127202(JP,A)
【文献】国際公開第2019/145829(WO,A1)
【文献】米国特許第6328388(US,B1)
【文献】実開昭63-104168(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/40
B60T 17/00
F04B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数系統の液圧回路(28,30)の液圧を制御するブレーキ液圧制御装置(20)であって、
モータ(96)及びポンプエレメント(80)を備えた圧力供給ユニット(90)と、
前記圧力供給ユニット(90)に接続された油路及び前記複数系統の液圧回路(28,30)の液圧を調節する制御弁(34,36,54,58)を備えた液圧ブロック(130)と、を備え、
前記圧力供給ユニット(90)は、
ステータ(97)及びロータ(98)を有する前記モータ(96)と、
前記ロータ(98)の回転軸の軸線方向に対して傾斜して配置された斜板(125)と、
前記モータ(96)の回転により駆動される複数のポンプ部(44)を有する前記ポンプエレメント(80)とを備え、
前記ポンプエレメント(80)の少なくとも一部が前記ロータ(98)の内部に配置される、
ことを特徴とする、ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記ポンプエレメント(80)は、
前記液圧ブロック(130)側から前記ロータ(98)に設けられた凹部(98a)又は孔部に挿入されて組付けられ、
前記ポンプ部(44)のピストン(151)は、
前記凹部(98a)又は孔部内に配置された前記斜板(125)に当接する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記圧力供給ユニット(90)は、
前記液圧ブロック(130)の一の側面(130a)に取り付けられ、
前記ポンプエレメント(80)は、
作動油が導入される導入路(169)及び前記作動油を吐出する吐出路(179)を有し、
前記導入路(169)及び前記吐出路(179)は、前記液圧ブロック(130)の前記一の側面(130a)に対向する面に開口する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記圧力供給ユニット(90)の前記導入路(169)と前記液圧ブロック(130)の油路との接続部の周囲、及び、前記圧力供給ユニット(90)の前記吐出路(179)と前記液圧ブロック(130)の油路との接続部の周囲に、それぞれシールリング(202a,202b)を備える、
ことを特徴とする、請求項3に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
前記圧力供給ユニット(90)と前記液圧ブロック(130)との間に、ダンパ部材(200)が介在する、
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
それぞれの前記ポンプ部(44)は、
前記モータ(96)の回転に伴って前記回転軸の軸線方向と略平行に往復移動するピストン(151)と、
前記ピストン(151)の一部を収容し、ブレーキ液が導入される収容室(153)と、
前記収容室(153)からブレーキ液を吐出する吐出弁(180)と、を有する、
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数系統の液圧回路の液圧を制御するブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を液圧回路で制御してブレーキ制御を行うブレーキ液圧制御装置が知られている。ブレーキ液圧制御装置は、例えば、二輪車であれば前輪用及び後輪用の2系統、四輪車であれば前輪用及び後輪用の2系統あるいはそれぞれ対角に位置する前輪及び後輪を組とする2系統の液圧回路を備える。
【0003】
ブレーキ液圧制御装置は、開閉自在の調整弁、調整弁と連動して動作するポンプエレメント及びポンプエレメントを駆動する電動モータ等を備えている。ブレーキ液圧制御装置は、電子制御されて自動的に動作し、ブレーキ液圧回路内の液圧を増減させることで車輪に発生する制動力を制御する。
【0004】
例えば、ポンプエレメントは、モータ軸に設けられた偏心カムに当接して偏心カムの回転により往復移動するピストンを有する。ポンプエレメントは、ピストンの往復移動に伴って吸入弁を介してブレーキ液を吸入し、吐出弁を介してブレーキ液を吐出する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-205686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、従来のブレーキ液圧制御装置では、油路が形成された液圧ブロックに対して、調整弁、ポンプエレメント及び電動モータ等のすべての部品が個別に組付けられている。これらの部品は、それぞれ音振(NVH)の発生源となり得ることから、それぞれの部品に対してダンパを設ける等の音振対策を取る必要がある。また、液圧ブロックに対して個々の部品を組み付けると、ブレーキ液圧制御装置の外形が大きくなって、車両に対する搭載性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、音振対策を簡易にし、かつ、外形を小型化することが可能なブレーキ液圧制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある観点によれば、複数系統の液圧回路の液圧を制御するブレーキ液圧制御装置は、モータ及びポンプエレメントを備えた圧力供給ユニットと、圧力供給ユニットに接続された油路及び複数系統の液圧回路の液圧を調節する制御弁を備えた液圧ブロックと、を備え、圧力供給ユニットは、ステータ及びロータを有するモータと、ロータの回転軸の軸線方向に対して傾斜して配置された斜板と、モータの回転により駆動される複数のポンプ部を有するポンプエレメントとを備え、ポンプエレメントの少なくとも一部がロータの内部に配置されたブレーキ液圧制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、ブレーキ液圧制御装置の音振対策を簡易にし、かつ、外形を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキ用油圧回路を示す回路図である。
図2】同実施形態に係るブレーキ液圧制御装置を示す模式図である。
図3】同実施形態に係る圧力供給モジュールを示す断面図である。
図4】同実施形態に係るポンプエレメントの外観を示す斜視図である。
図5】同実施形態に係るポンプエレメントの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<1.ブレーキ用油圧回路>
図1を参照して、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置20を適用可能なブレーキ用油圧回路1の構成例について説明する。
【0013】
本実施形態に係るブレーキ用油圧回路1は、倍力装置を用いずに運転者によるブレーキペダル10の踏力を増幅してホイールシリンダに伝達するブレーキシステムに適用されている。図1に示したブレーキシステムは四輪車用のブレーキシステムである。ただし、ブレーキ用液圧回路1は、倍力装置を用いて運転者によるブレーキペダル10の踏力を増幅してホイールシリンダに伝達するブレーキシステムに適用されてもよい。
【0014】
ブレーキペダル10は、車両を制動する場合に運転者によって踏み込み操作が行われる。運転者のブレーキ要求を入力可能な要素であれば、ブレーキペダル10の操作要素に置き換えられてもよい。
【0015】
ブレーキペダル10は、ピストンロッド11に接続されている。ピストンロッド11には、当該ピストンロッド11の軸方向変位量であるストローク量を検出するためのストロークセンサ8が設けられている。
【0016】
リザーバタンク16は、液圧を発生させる流体としての作動油を保持する。リザーバタンク16は、マスタシリンダ14に接続され、作動油をマスタシリンダ14内に供給する。
【0017】
マスタシリンダ14は、プライマリピストン12a及びセカンダリピストン12bを進退動可能に保持する。図1に示したマスタシリンダ14は、タンデム型のマスタシリンダ14であり、プライマリピストン12a及びセカンダリピストン12bにより画定された二つの圧力室13a,13bを有する。
【0018】
プライマリピストン12aは、ピストンロッド11の先端に設けられている。セカンダリピストン12bは、圧力室13aに配置されたコイルスプリング15aを介してプライマリピストン12aに接続されている。圧力室13bには、セカンダリピストン12bに接続されたコイルスプリング15bが配置されている。例えば、二つのコイルスプリング15a,15bのばね力は同一となっている。
【0019】
二つの圧力室13a,13bのそれぞれの容量は、ピストンロッド11のストローク量に応じて変化する。二つの圧力室13a,13aは、それぞれ液圧回路28,30に接続されている。ブレーキペダル10の操作により、ピストンロッド11を介してプライマリピストン12a及びセカンダリピストン12bが押圧されて、液圧回路28,30に作動油が移動する。
【0020】
ブレーキ液圧制御装置20は、同一の構成を有する二つの液圧回路28,30を含む。一方の液圧回路28には、マスタシリンダ14の一方の圧力室13aから作動油が供給される。他方の液圧回路30には、マスタシリンダ14の他方の圧力室13bから作動油が供給される。
【0021】
本実施形態に係るブレーキ用油圧回路1は、それぞれの液圧回路28,30により車両の対角の位置にある一つの前輪及び一つの後輪を組として油圧を制御する、いわゆるX型配管方式に構成されている。
【0022】
図1に示した例では、右前輪(FR)の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38a及び左後輪(RL)の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38bには、液圧回路28を介して作動液が供給される。また左前輪(FL)の液圧ブレーキ22cのホイールシリンダ38c及び右後輪(RR)の液圧ブレーキ22dのホイールシリンダ38dには、液圧回路30を介して作動液が供給される。
【0023】
なお、ブレーキシステムはX型配管方式に限られない。また、ブレーキシステムは四輪車用のブレーキシステムに限られず、二輪車用あるいはそれ以外の車両のブレーキシステムであってもよい。
【0024】
本実施形態に係るブレーキ用油圧回路1では、液圧回路30は液圧回路28と同様の構成を有している。以下、液圧回路28について説明し、液圧回路30の説明を省略する。
【0025】
マスタシリンダ14の圧力室13aから作動油が供給される液圧回路28は、複数の電磁弁を備える。電磁弁は、常閉型でリニア制御可能な回路制御弁36と、常閉型でオンオフ制御される吸入制御弁34と、常開型でリニア制御可能な増圧弁58a,58b(以下、特に区別を要しない場合には増圧弁58と総称する。)と、常閉型でオンオフ制御される減圧弁54a,54b(以下、特に区別を要しない場合には減圧弁54と総称する。)とを含む。
【0026】
液圧回路28は、モータ96により駆動されるポンプ部44を備える。また、液圧回路28は、アキュムレータ71及びダンパ73を備える。
【0027】
回路制御弁36は、マスタシリンダ14と増圧弁58a,58bとの間を連通又は遮断する。吸入制御弁34は、マスタシリンダ14とポンプ部44の吸引側との間を連通又は遮断する。回路制御弁36及び吸入制御弁34の駆動は、図示しない電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により制御される。
【0028】
回路制御弁36は、チェック弁40を備えたバイパス流路41を有する。チェック弁40は、マスタシリンダ14側から右前輪の液圧ブレーキ22a及び左後輪の液圧ブレーキ22b側へのバイパス流路41を介して作動油の移動を可能にする。一方、チェック弁40は、右前輪の液圧ブレーキ22a及び左後輪の液圧ブレーキ22b側からマスタシリンダ14側へのバイパス流路41を介した作動油の移動を不可能にする。
【0029】
チェック弁40は、例えば回路制御弁36の故障に起因して回路制御弁36が閉弁状態となったときに、マスタシリンダ14側から右前輪の液圧ブレーキ22a及び左後輪の液圧ブレーキ22b側への作動油の移動を保障する。
【0030】
増圧弁58a及び減圧弁54aは、右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38aに連通する管路に設けられている。増圧弁58a及び減圧弁54aは、右前輪の液圧ブレーキ22aの制御に用いられる。増圧弁58b及び減圧弁54bは、左後輪の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38bに連通する油路に設けられている。増圧弁58b及び減圧弁54bは、左後輪の液圧ブレーキ22bの制御に用いられる。増圧弁58a,58b及び減圧弁54a,54bの駆動は、図示しないECUにより制御される。
【0031】
増圧弁58aは、回路制御弁36と右前輪の液圧ブレーキ22aとの間に設けられている。増圧弁58aは、リニア制御可能になっており、マスタシリンダ14及び回路制御弁36側から右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38a側への作動油の流量を連続的に調整する。
【0032】
増圧弁58aは、チェック弁60aを備えたバイパス流路61aを有する。チェック弁60aは、右前輪の液圧ブレーキ22a側からマスタシリンダ14及び回路制御弁36側へのバイパス流路61aを介した作動油の移動を可能にする。一方、チェック弁60aは、マスタシリンダ14及び回路制御弁36側から右前輪の液圧ブレーキ22a側へのバイパス流路61aを介した作動油の移動を不可能にする。
【0033】
チェック弁60aは、例えば、増圧弁58aの故障に起因して増圧弁58aが閉弁状態となったときに、右前輪の液圧ブレーキ22a側からマスタシリンダ14及び回路制御弁36側へのバイパス流路61aを介した作動油の移動を保障する。
【0034】
減圧弁54aは、全開及び全閉のみに切換可能な電磁弁である。減圧弁54aは、右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38aとアキュムレータ71との間に設けられている。減圧弁54aは、開弁状態で右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38aに供給された作動油をアキュムレータ71に供給することにより減圧する。アキュムレータ71は、減圧弁54a,54bを介して供給される作動油の圧力に応じて容積を変化させながら作動油を蓄積又は放出する。
【0035】
なお、減圧弁54aは、断続的に開閉を繰り返すことにより、右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38aからアキュムレータ71に流れる作動油の流量を調節することができる。
【0036】
増圧弁58bは、回路制御弁36と増圧弁58aとを接続する管路と、左後輪の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38bとの間に設けられている。増圧弁58bは、リニア制御可能になっており、マスタシリンダ14、回路制御弁36、増圧弁58a及び右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38a側から左後輪の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38b側への作動油の流量を連続的に調整する。
【0037】
増圧弁58bは、チェック弁60bを備えたバイパス流路61bを有する。チェック弁60bは、左後輪の液圧ブレーキ22b側からマスタシリンダ14及び回路制御弁36側へのバイパス流路61bを介した作動油の移動を可能にする。一方、チェック弁60bは、マスタシリンダ14及び回路制御弁36側から左後輪の液圧ブレーキ22b側へのバイパス流路61bを介した作動油の移動を不可能にする。
【0038】
チェック弁60bは、例えば、増圧弁58bの故障に起因して増圧弁58bが閉弁状態となったときに、左後輪の液圧ブレーキ22b側からマスタシリンダ14及び回路制御弁36側へのバイパス流路61bを介した作動油の移動を保障する。
【0039】
減圧弁54bは、全開及び全閉のみに切換可能な電磁弁である。減圧弁54bは、左後輪の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38bとアキュムレータ71との間に設けられている。減圧弁54bは、開弁状態で左後輪の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38bに供給された作動油をアキュムレータ71に供給することにより減圧する。
【0040】
なお、減圧弁54bは、断続的に開閉を繰り返すことにより左後輪の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38bからアキュムレータ71に流れる作動油の流量を調節することができる。
【0041】
ポンプ部44は、モータ96により駆動されて作動油を吐出する。モータ96の駆動は、図示しないECUにより制御される。なお、ポンプ部44の数は一つに限られない。
【0042】
ポンプ部44の吐出側は、回路制御弁36と増圧弁58a,58bとを接続する管路に接続されている。ポンプ部44の吐出側にはダンパ73が設けられている。ダンパ73は、液圧回路28内の作動油の流量の変化に伴う振動あるいは振動音を低減する機能を有する。
【0043】
回路制御弁36と増圧弁58a,58bとを接続する管路と、ダンパ73との間には、可変絞り31とチェック弁32とが設けられている。可変絞り31は、ダンパ73を介して供給されてくる作動油の流量を調整する。チェック弁32は、ダンパ73側から回路制御弁36と増圧弁58a,58bとを接続する管路側への作動油の移動を可能にする一方、その逆方向への作動油の移動を不可能にする。
【0044】
減圧弁54a,54bとポンプ部44の吸引側とを接続する管路にはチェック弁69が設けられている。チェック弁69は、減圧弁54a,54b側からポンプ部44の吸引側への作動油の移動を可能にする一方、その逆方向への作動油の移動を不可能にする。
【0045】
マスタシリンダ14の圧力室13aに連通する管路には第1の圧力センサ24が設けられている。第1の圧力センサ24は、圧力室13a内の圧力(マスタシリンダ圧)を検出する。右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38aに連通する管路には第2の圧力センサ26が設けられている。第2の圧力センサ26は、ホイールシリンダ圧を検出する。なお、第2の圧力センサ26は、左後輪の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38bに連通する管路に設けられていてもよい。
【0046】
なお、マスタシリンダ14の圧力室13bから作動油が供給される他方の液圧回路30は、左前輪の液圧ブレーキ22c及び右後輪の液圧ブレーキ22dを制御する。液圧回路30は、上記の液圧回路28の説明における右前輪の液圧ブレーキ22aのホイールシリンダ38aを左前輪の液圧ブレーキ22cのホイールシリンダ38cに置き換え、左後輪の液圧ブレーキ22bのホイールシリンダ38bを右後輪の液圧ブレーキ22dのホイールシリンダ38dに置き換える以外、液圧回路28と同様に構成される。
【0047】
<2.ブレーキ液圧制御装置の全体構成>
図2に示すように、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置20は、圧力供給ユニット90及び液圧ブロック130を備える。液圧ブロック130には、図示しない回路制御弁、吸入制御弁、増圧弁、減圧弁、圧力センサ、アキュムレータ及びダンパ等を備えるとともに、これらの部品を接続する複数の油路を備える2系統の液圧回路が形成されている。圧力供給ユニット90は、モータ96と、2つのポンプ部44を有するポンプエレメント80とを備え、液圧ブロック130の一の側面130aに取り付けられる。
【0048】
モータ96及び2つのポンプ部44は、それぞれ高速で動作するために音振の発生源となり得る。ブレーキ液圧制御装置20は、音振の発生源となり得るモータ96及びポンプエレメント80を一体化させた圧力供給ユニット90が、液圧ブロック130に取り付けられて構成される。圧力供給ユニット90と液圧ブロック130との間には、例えば円環状の弾性ゴムからなるダンパ部材200が介在しており、圧力供給ユニット90で発生する振動が液圧ブロック130に伝達されにくくなっている。つまり、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置20では、1つのダンパ部材200によって、モータ96と2つのポンプ部44の音振対策が図られている。
【0049】
<3.圧力供給モジュール>
図3図5を参照して、圧力供給ユニット90の構成例を具体的に説明する。図3は、圧力供給ユニット90の断面図である。図4は、ポンプエレメント80の斜視図であり、図5は、ポンプエレメント80の断面図である。図5は、図4に示すポンプエレメント80のI-I断面の断面図であり、図3も、対応する位置における圧力供給ユニット90の断面図である。
【0050】
図3に示すように、圧力供給ユニット90は、液圧ブロック130の一の側面130aに取り付けられている。液圧ブロック130への圧力供給ユニット90の固定方法は、圧力供給ユニット90で発生する振動を減衰させ得る方法であれば特に限定されない。例えば、圧力供給ユニット90のハウジング91にフランジ部分を設けて、ダンパとしての弾性ゴムを介在させつつ、当該フランジ部分にボルトを貫通させて液圧ブロック130に固定させてもよい。
【0051】
圧力供給ユニット90は、ハウジング91、モータ96及びポンプエレメント80を備える。ハウジング91は、円柱形状の内部空間である収容部91aを有し、当該収容部91aにモータ96及びポンプエレメント80が収容されている。
【0052】
モータ96は、ステータ97及びロータ98を備える。ステータ97は、円環状に形成されて、ハウジング91の収容部91aの内周面に沿って取り付けられている。ロータ98は、ステータ97の内径側に配置されて、軸周りに回転可能に軸支される。ロータ98は、少なくとも液圧ブロック130側に開口した凹部98aを有する。以下、回転軸の延在方向を軸方向という。
【0053】
ロータ98の軸方向の一端側(図3の上側)には軸部材101が設けられ、当該軸部材101は、図示しない軸受けを介してハウジング91の突設部92内に支持されている。また、ロータ98の軸方向の他端側(図3の下側)は、軸受け94を介してハウジング91に支持されている。軸部材101は、ロータ98の凹部98a内に延びており、凹部98a内の軸部材101の先端側には、回転部材123が固定されている。回転部材123のポンプエレメント80側を向く面は軸方向に対して傾斜するように形成されている。回転部材123は、ロータ98とともに軸回転する。回転部材123は、軸部材101ではなく、ロータ98に直接固定されていてもよい。
【0054】
回転部材123のポンプエレメント80側を向く面には、軸受け125を介して斜板125が配置されている。斜板125の、回転部材123側とは反対側の面は、ポンプエレメント80の2つのピストン151により支持される。斜板125は、ロータ98の軸回転に伴って回転することはないが、回転部材123の軸回転に伴い、軸方向に対して傾いた回転部材123の面に合わせて傾斜方向が変化する。ロータ98の回転に合わせて斜板125自体が回転するように構成されてもよいが、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置20の構成例では、斜板125自体は回転しないことから、斜板125とピストン151との摩擦による斜板125あるいはピストン151の摩耗を低減することができる。
【0055】
ポンプエレメント80は、ハウジングカバー93に形成された中央孔93aを介して、液圧ブロック130側から、ロータ98に設けられた凹部98a内に挿入されて組付けられている。ポンプエレメント80は、ハウジングに固定されており、ロータ98とともに回転することがない。ポンプエレメント80の少なくとも一部が凹部98a内に配置されていればよく、ポンプエレメント80のすべてが凹部98a内に配置されていてもよい。ポンプエレメント80は、軸周りに180度間隔で配置された2つのポンプ部44を有する。
【0056】
図4及び図5に示すように、ポンプエレメント80は、ポンプボディ159に組付けられた2つのポンプ部44を有する。2つのポンプ部44は、同一の構成を有する。以下、1つのポンプ部44を説明する。
【0057】
ポンプボディ159は、作動油が流れる油路として、導入路169及び吐出路179を備える。また、ポンプボディ159は、導入路169を介して作動油が導入される収容室153を備え、収容室153には、ピストン151が軸方向に沿って往復移動自在に配置されている。ピストン151は、ピストンスプリング155によって、収容室153の容積が拡大する方向へと付勢されている。
【0058】
導入路169の途中には、吸入弁161が設けられている。吸入弁161は、弁体165、弁座部材163及び弁スプリング167を備える。弁座部材163は、作動油の通過孔163aを有し、当該通過孔163aは、弁体165によって開閉される。弁体165は、弁スプリング167によって、弁座部材163に押し付けられている。吸入弁161は、液圧ブロック130側から収容室153側へと作動油を通過させる一方向弁として構成されている。
【0059】
吐出路179の途中には、吐出弁171が設けられている。吐出弁171は、弁体175、弁座部材173及び弁スプリング177を備える。弁座部材173は、作動油の通過孔173aを有し、当該通過孔173aは、弁体175によって開閉される。弁体175は、弁スプリング177によって、弁座部材173に押し付けられている。吐出弁171は、収容室153側から液圧ブロック130側へと作動油を通過させる一方向弁として構成されている。
【0060】
導入路169及び吐出路179は、それぞれ液圧ブロック130の一の側面130aに対向する面に開口部169a,179aを有する。導入路169及び吐出路179は、それぞれ液圧ブロック130に形成された油路に連通する(図3を参照。)。当該開口部169a,179aの周囲には、シールリングが配置される溝部157a,157bが形成されている。図3に示すように、圧力供給ユニット90が液圧ブロック130に取り付けられた状態で、ポンプエレメント80と液圧ブロック130とによって挟持される。これにより、導入路169及び吐出路179を流れる作動油が油路から漏れ出すことが防止される。シールリング202a,202bの位置を規定する溝は、液圧ブロック130側に設けられていてもよい。
【0061】
<4.動作例>
本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置20の動作例を説明する。
【0062】
ESPあるいはABSの作動指令が電子制御ユニットに入力されると、電子制御ユニットは、モータ96を駆動する。モータ96が駆動されると、ロータ98が軸周りに回転する。これに伴って、斜板127の傾斜方向が変化する。このため、ポンプエレメント80に備えられたそれぞれのポンプ部44のピストン151は、ロータ98が一回転する間に、収容室153内を一回往復移動する。
【0063】
このとき、斜板127の傾斜方向の変化に伴い、ピストン151がピストンスプリング155によって付勢されて先端側に移動し、収容室153の容積が拡大する。これにより、収容室153内の液圧が低下し、吐出弁171が閉じられる一方で吸入弁161が開弁して収容室153に作動油が導入される。
【0064】
さらに、斜板127の傾斜方向が変化して、ピストンスプリング155の付勢力に抗してピストン151が押されると、収容室153の容積が小さくなる。これにより、収容室153内の液圧が上昇し、吸入弁161が閉じられる一方で吐出弁171が開弁して収容室153から作動油が吐出される。
【0065】
モータ96の回転に伴って、ポンプ部44は、作動油の吸入及び吐出を繰り返す。斜板125の傾斜角度に応じてピストン151のストローク量が変化することから、斜板125の傾斜角度を調節することにより、ポンプ部44からの作動油の吐出量を設定することができる。なお、2つのポンプ部44は、180度間隔で配置されているために、作動油の吸入及び吐出は逆位相となる。
【0066】
電子制御ユニットは、このようにしてポンプ部44から作動油を吐出させつつ、増圧弁58及び減圧弁54等を制御して、それぞれの車輪38に発生するブレーキ液圧を制御する。
【0067】
<5.効果>
以上説明した本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置20は、音振の発生源となり得るモータ96とポンプエレメント80とを圧力供給ユニット90として一体化して液圧ブロック130に取り付けられている。このため、モータ96とポンプエレメント80に対する音振対策を共通のダンパ部材200により構成することができる。
【0068】
また、ブレーキ液圧制御装置20は、モータ96のロータ98に形成された凹部98a内にポンプエレメント80の少なくとも一部が挿入されて構成される。したがって、モータ96及びポンプエレメント80をユニット化する際に、軸方向のサイズが大きくなることを抑制することができるとともに、液圧ブロック130にポンプエレメント80が設けられない分、液圧ブロック130を小型化することができる。したがって、ブレーキ液圧制御装置20の全体の外形を小型化することができる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0070】
また、上記実施形態では四輪車に搭載されるブレーキ液圧制御装置を例に採って説明しているが本発明はかかる例に限定されず、モータサイクル等の二輪車その他の乗り物に搭載されるブレーキ液圧制御装置であってもよい。また、上記実施形態では2系統の液圧回路を備えたブレーキ液圧制御装置を例に採って説明したが、ブレーキ液圧回路は、3系統以上の液圧回路を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
20…ブレーキ液圧制御装置、28,30…液圧回路、34…吸入制御弁、36…回路制御弁、44…ポンプ部、54…減圧弁、58…増圧弁、80…ポンプエレメント、90…圧力供給ユニット、96…モータ、97…ステータ、98…ロータ、130…液圧ブロック、200・ダンパ部材、202a,202b…シールリング
図1
図2
図3
図4
図5