(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/90 20130101AFI20220930BHJP
【FI】
A61F2/90
(21)【出願番号】P 2021577635
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032691
(87)【国際公開番号】W WO2022085313
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2020176275
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520409877
【氏名又は名称】株式会社T.G.Medical
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】正林 康宏
(72)【発明者】
【氏名】三木 康平
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-512213(JP,A)
【文献】特開2018-057856(JP,A)
【文献】特開2009-178545(JP,A)
【文献】特開2021-115482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル内に挿入され、血管内において前記カテーテルから押し出されて血管を拡張するために用いられるステントであって、
枠形に配置されたストラットからなる複数の第1セルが周方向に敷き詰められ且つ中心軸方向に連続する第1ステント本体と、
枠形に配置されたストラットからなる複数の第2セルが周方向に敷き詰められ且つ中心軸方向に連続しており、前記第1ステント本体に内挿さ
れる第2ステント本体と、
を備え、
前記第1ステント本体に前記第2ステント本体が内挿された状態において、前記第1セルの空孔部分に、前記第2セルの交差部分が配置されており、
前記第1ステント本体と前記第2ステント本体は
、拡径した状態において、径方向で密着しており且つ互いに連結されて
おらず、
前記第1ステント本体の近位側の端部と前記第2ステント本体の近位側の端部とは、プッシャワイヤに分離不能に接続されているステント。
【請求項2】
カテーテル内に挿入され、血管内において前記カテーテルから押し出されて血管を拡張するために用いられるステントであって、
枠形に配置されたストラットからなる複数の第1セルが周方向に敷き詰められ且つ中心軸方向に連続する第1ステント本体と、
枠形に配置されたストラットからなる複数の第2セルが周方向に敷き詰められ且つ中心軸方向に連続しており、前記第1ステント本体に内挿される第2ステント本体と、
を備え、
前記第1ステント本体に前記第2ステント本体が内挿された状態において、前記第1セルの空孔部分に、前記第2セルの交差部分が配置されており、
前記第1ステント本体と前記第2ステント本体は
、拡径した状態において、径方向で密着しており且つ互いに連結されておらず、
前記第1ステント本体の近位側の端部と前記第2ステント本体の近位側の端部は、プッシャワイヤの軸線方向において異なる位置に接続されているステント。
【請求項3】
カテーテル内に挿入され、血管内において前記カテーテルから押し出されて狭窄又は閉塞された血管を拡張するために用いられるステントであり、前記ステントの近位側の端部にプッシャワイヤが接続されており、前記プッシャワイヤの前進及び後退操作により前記ステントの血管内での一時的留置及び回収が行われる回収型のステントであって、
枠形に配置されたストラットからなる複数の第1セルが周方向に敷き詰められ且つ中心軸方向に連続する第1ステント本体と、
枠形に配置されたストラットからなる複数の第2セルが周方向に敷き詰められ且つ中心軸方向に連続しており、前記第1ステント本体に内挿される第2ステント本体と、
を備え、
前記第1ステント本体に前記第2ステント本体が内挿された状態において、前記第1セルの空孔部分に、前記第2セルの交差部分が配置されており、
前記第1ステント本体と前記第2ステント本体は、径方向において互いに連結されて
おらず、
前記第1ステント本体の近位側の端部と前記第2ステント本体の近位側の端部とは、前記プッシャワイヤに接続されているステント。
【請求項4】
前記第1ステント本体に前記第2ステント本体が内挿された状態において、前記第2ステント本体は、前記第1ステント本体を径方向の外側に向けて押圧している、
請求項1~
3のいずれかに記載のステント。
【請求項5】
前記第1セルの空孔部分に前記第2セルの交差部分が配置されている構成において、1つの前記第1セルの空孔部分に1つの前記第2セルの交差部分が配置される、
請求項1~
3のいずれかに記載のステント。
【請求項6】
前記第1ステント本体に前記第2ステント本体が内挿された状態において、前記第1ステント本体と前記第2ステント本体とが重なり合った部分の表面の単位面積当たりにおいて非空孔部分の占める割合は、5~50%である、
請求項1~
3のいずれかに記載のステント。
【請求項7】
複数の前記第1セルは、周方向に対して傾斜する環方向において、1組の第1ストラットと、前記1組の第1ストラットと間隔を空けて配置される1つの第1ストラットとを備え、
複数の前記第2セルは、周方向に対して傾斜する環方向において、1組の第2ストラットと、前記1組の第2ストラットと間隔を空けて配置される1つの第2ストラットとを備える、
請求項1~
3のいずれかに記載のステント。
【請求項8】
複数の前記第1セルは、周方向に対して傾斜する環方向において、略S字形の第1交差部分において接続され、
複数の前記第2セルは、周方向に対して傾斜する環方向において、略S字形の第2交差部分において接続される、
請求項
7に記載のステント。
【請求項9】
複数の前記第1セルが前記第1交差部分において接続される環方向と、複数の前記第2セルが前記第2交差部分において接続される環方向とは、径方向において線対称となる、
請求項
8に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の管腔を拡張するために用いられるステントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心血管、脳血管、末梢血管等において、血管内腔がプラーク等により狭窄或いは閉塞され、虚血が発生した血管内腔を拡張することによって病変部位の開通性を確保する治療が行われている。例えば、カテーテル内に収納したステントやバルーンを病変部位で展開するカテーテル治療が知られている。このようなカテーテル治療に用いられるステントの一例として、内部に中心軸から放射線状に延びる複数のストラットを設けたステントが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血管内腔の拡張に留置型のステントを用いた場合、ステントの留置後に血管内で再狭窄や再閉塞が発生したり、血栓症等の合併症となったりするおそれがある。一方、血管内腔の拡張にバルーンを用いた場合、一時的に血管が閉鎖されるため、特に遠位側の血管において血管梗塞が発生するおそれがある。また、拡張時間の制限や治療後における狭窄病変の残留、再狭窄等が懸念される。更には、バルーンにより拡張された血管が直線状になることで、血管の損傷や周辺血管の穿通枝等、断裂や梗塞による出血性の合併症を引き起こすおそれがある。
【0005】
上記特許文献1のステントのように、回収型のステントであれば、一時的に血管内に留置した後で回収することにより、血液の開通性を確保しつつ、上記のような様々な合併症のリスクを低減することができる。しかし、狭窄した血管をより均一に拡張するために、ステントの表面積を増加させると、ステントの曲げ剛性が高くなり過ぎて、血管構造への形状追従性が低下する。また、ステントの表面積(セルの空孔面積を除いた面積)を増加させると、ステントの体積が大きくなるため、縮径したステントを径の細いカテーテル内に収納しにくくなる。上記特許文献1のステントは、内部に複数のストラットが設けられるため、単に表面積を増加させた場合、形状追従性及び縮径性が大幅に低下することが考えられる。
【0006】
本発明の目的は、表面積が大きく且つ血管構造への形状追従性及び縮径性に優れたステントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カテーテル内に挿入され、血管内において前記カテーテルから押し出されて血管を拡張するために用いられるステントであって、枠形に配置されたストラットからなる複数の第1セルが周方向に敷き詰められ且つ中心軸方向に連続する第1ステント本体と、枠形に配置されたストラットからなる複数の第2セルが周方向に敷き詰められ且つ中心軸方向に連続しており、前記第1ステント本体に内挿される第2ステント本体と、を備え、前記第1ステント本体に前記第2ステント本体が内挿された状態において、前記第1セルの空孔部分に、前記第2セルの交差部分が配置されており、前記第1ステント本体と前記第2ステント本体は、径方向において互いに連結されていないステントに関する。
【0008】
上記第1ステント本体に上記第2ステント本体が内挿された状態において、前記第2ステント本体が、前記第1ステント本体を径方向の外側に向けて押圧している構成としてもよい。
【0009】
上記第1セルの空孔部分に上記第2セルの交差部分が配置されている構成において、1つの前記第1セルの空孔部分に1つの前記第2セルの交差部分が配置される構成としてもよい。
【0010】
上記第1ステント本体に上記第2ステント本体が内挿された状態において、前記第1ステント本体と前記第2ステント本体とが重なり合った部分の表面の単位面積当たりにおいて非空孔部分の占める割合は、5~50%であってもよい。
【0011】
複数の前記第1セルは、周方向に対して傾斜する環方向において、1組の第1ストラットと、前記1組の第1ストラットと間隔を空けて配置される1つの第1ストラットとを備え、複数の前記第2セルは、周方向に対して傾斜する環方向において、1組の第2ストラットと、前記1組の第2ストラットと間隔を空けて配置される1つの第2ストラットとを備える構成としてもよい。
【0012】
複数の前記第1セルは、周方向に対して傾斜する環方向において、略S字形の第1交差部分において接続され、複数の前記第2セルは、周方向に対して傾斜する環方向において、略S字形の第2交差部分において接続される構成としてもよい。
【0013】
複数の前記第1セルが前記第1交差部分において接続される環方向と、複数の前記第2セルが前記第2交差部分において接続される環方向とは、径方向において線対称となるように構成してもよい。
【0014】
前記第1ステント本体の近位側の端部と前記第2ステント本体の近位側の端部は、プッシャワイヤの軸線方向において異なる位置に接続されていてもよい。
【0015】
前記第1ステント本体と前記第2ステント本体との間に被覆膜を備えていてもよい。
【0016】
前記第1ステント本体と前記第2ステント本体との少なくとも一方には、造影性の高い素線が螺旋状に巻き付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表面積が大きく且つ血管構造への形状追従性及び縮径性に優れたステントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態のステント1の模式的な側面図である。
【
図2】
図1に示すステント1の模式的な斜視図である。
【
図3A】第1ステント本体10を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図3B】第2ステント本体20を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図3C】第1実施形態のステント1を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図4A】単体の第1ステント本体10の外径D1を説明する図である。
【
図4B】単体の第2ステント本体20の外径D2を説明する図である。
【
図5】第1ステント本体10に第2ステント本体20を内挿する手順を説明する図である。
【
図7】ステント1を屈曲させた場合の内部の状態を説明する図である。
【
図8A】第2実施形態の第1ステント本体110を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図8B】第2実施形態の第2ステント本体120を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図8C】第2実施形態のステント1Aを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図9A】第3実施形態の第1ステント本体210を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図9B】第3実施形態の第2ステント本体220を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図9C】第3実施形態のステント1Bを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図10A】第2実施形態のステント1Aを血管内で拡張させた場合の断面図である。
【
図10B】第3実施形態のステント1Bを血管内で拡張させた場合の断面図である。
【
図11】第4実施形態のステント1Cの模式的な斜視図である。
【
図12A】第4実施形態の第1ステント本体310を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図12B】第4実施形態の第2ステント本体320を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図12C】第4実施形態のステント1Cを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図13】第5実施形態のステント1Dの模式的な斜視図である。
【
図14A】第5実施形態の第1ステント本体410を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図14B】第5実施形態の第2ステント本体420を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図14C】第5実施形態のステント1Dを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図15】第6実施形態のステント1Eの模式的な斜視図である。
【
図16A】第6実施形態の第1ステント本体510を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図16B】第6実施形態の第2ステント本体520を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図16C】第6実施形態のステント1Eを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図17A】ステント1の近位側の端部とプッシャワイヤ2とを第1の接続形態で接続した構成を模式的に示す側面図である。
【
図18A】ステント1の近位側の端部とプッシャワイヤ2とを第2の接続形態で接続した構成を模式的に示す側面図である。
【
図19A】ステント1の近位側の端部とプッシャワイヤ2とを第3の接続形態で接続した構成を模式的に示す側面図である。
【
図20】ステント1の遠位側の端部と遠位端シャフト3とを第1の接続形態で接続した構成を模式的に示す側面図である。
【
図21】ステント1の遠位側の端部と遠位端シャフト3とを第1の接続形態で接続した他の構成を模式的に示す側面図である。
【
図22】ステント1の遠位側の端部と遠位端シャフト3とを第4の接続形態で接続した構成を模式的に示す側面図である。
【
図23】ステント1の遠位側の他の構成を模式的に示す側面図である。
【
図24】第11実施形態のステント1Fの模式的な側面図である。
【
図26】第1ステント本体10のストラット11に造影性の高い素線31を疎に巻き付けた例を示す模式図である。
【
図27】第1ステント本体10のストラット11に造影性の高い素線31を密に巻き付けた例を示す模式図である。
【
図28】ステント1に造影性の高い素線31を第1の形態で巻き付けた例を示す模式図である。
【
図29】ステント1に造影性の高い素線31を第2の形態で巻き付けた例を示す模式図である。
【
図30】第13実施形態のステント1Gの模式的な斜視図である。
【
図31A】第13実施形態の第1ステント本体610の一部を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図31B】第13実施形態の第2ステント本体620の一部を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図31C】第13実施形態のステント1Gの一部を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図32A】第14実施形態の第1ステント本体310を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図32B】第14実施形態の第2ステント本体320を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図32C】第14実施形態のステント1Hを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図33A】第15実施形態の第1ステント本体310を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図33B】第15実施形態の第2ステント本体320を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図33C】第15実施形態のステント1Jを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図34A】第16実施形態の第1ステント本体310を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図34B】第16実施形態の第2ステント本体320を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【
図34C】第16実施形態のステント1Kを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るステントの実施形態について説明する。なお、本明細書に添付した図面は、いずれも模式図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。また、図面においては、部材の断面を示すハッチングを適宜に省略する。
本明細書等において、形状、幾何学的条件、これらの程度を特定する用語、例えば、「直交」、「方向」等の用語については、その用語の厳密な意味に加えて、ほぼ直交しているとみなせる程度の範囲、概ねその方向とみなせる範囲を含む。本明細書等においては、軸線方向(中心軸方向)LDにおいて、施術者に近い近位側をLD1側、施術者から離れた遠位側をLD2側とし、軸線方向LDと直交する方向を径方向RDとして説明する。また、本明細書等においては、セルが敷き詰められる方向を周方向(周方向OD)として説明する。周方向には、径方向RDのほか、径方向RDに対して傾斜する方向が含まれる。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のステント1の模式的な側面図である。
図2は、
図1に示すステント1の模式的な斜視図である。
図3Aは、第1実施形態の第1ステント本体10の一部を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図3Bは、第1実施形態の第2ステント本体20の一部を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図3Cは、第1実施形態のステント1の一部を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図4Aは、単体の第1ステント本体10の外径D1を説明する図である。
図4Bは、単体の第2ステント本体20の外径D2を説明する図である。
図5は、第1ステント本体10に第2ステント本体20を内挿する手順を説明する図である。
図6は、
図1のs1-s1線断面図である。
【0021】
第1実施形態及び他の実施形態に示す図面においては、第1ステント本体10と第2ステント本体20とを区別し易くするため、第1ステント本体10のストラットを黒地で示し、第2ステント本体20のストラットを白地で示す。また、本明細書等において、「セル」とは、メッシュパターンを形成するワイヤ状の材料で囲まれた部分をいう。「セル」には、ステント本体において形状や大きさが同一である形態のほか、形状や大きさが異なる形態も含まれる。「ストラット」とは、前記ワイヤ状の材料からなる細長い帯状の部分をいう。本明細書等では、セルの開口を「空孔部分」、隣接するセルのストラット同士が接続又は重なり合った部分を「交差部分」ともいう。交差部分のうち、ストラット同士が交差する点部分を「交点部分」ともいう。交差部分は、ある程度の範囲(面積)を有していてもよい。交差部分に、複数の交点部分が含まれていてもよい。
【0022】
第1実施形態のステント1は、例えば、カテーテル(不図示)内に収納(挿入)され、血管内腔においてカテーテルから外部に押し出されて展開することにより、狭窄又は閉塞された血管を拡張する用途において使用される。
図1及び
図2に示すように、ステント1は、拡径した状態において、略円筒形状となるように構成されている。図示していないが、ステント1は、縮径した状態において、細長い円筒形状となる。また、ステント1は、近位側LD1の端部にプッシャワイヤ2が接続され、遠位側LD2の端部に遠位端シャフト3が接続されている。ステント1の近位側の端部とプッシャワイヤ2との接続方法としては、例えば、溶接、UV接着、銀ロウの浸潤等が挙げられるが、一般的な医療機器に使用されている接続方法であれば、特に制限されない。なお、ステント1の近位側の端部とプッシャワイヤ2との接続形態については、後述する。
【0023】
プッシャワイヤ2は、ステント1を移動させる際に、施術者により操作される部材である。施術者は、プッシャワイヤ2の近位側LD1に連結された操作部(不図示)を介してプッシャワイヤ2を押し込んだり、引き込んだりすることにより、カテーテル内又は血管内において、ステント1を前進させたり、後退させたりすることができる。施術者は、プッシャワイヤ2を前進させたり、後退させたりすることにより、ステント1を病変部位に一時的に留置したり、回収したりすることができる。遠位端シャフト3は、X線透過の画像において、ステント1の遠位側X2の位置を確認するための目印となる部材であり、例えば、その全体又はその一部が造影性の高い素材により形成される。造影性の高い素材とは、X線等の放射線が不透過又は放射線の透過率が低い素材をいう。なお、遠位端シャフト3は、例えば、プッシャワイヤ2と同じ素材で構成されていてもよい。
【0024】
ステント1は、第1ステント本体10と、第2ステント本体20と、を備えている。第1ステント本体10は、ステント1の外側に配置される略円筒形状の構造体である。第2ステント本体20は、第1ステント本体10の内側に配置される略円筒形状の構造体である。ステント1は、第1ステント本体10に第2ステント本体20が内挿された二層構造のステントとして構成されている。第1ステント本体10に第2ステント本体20が内挿された状態において、第1ステント本体10と第2ステント本体20は、径方向において互いに連結されていない。詳細には、第1ステント本体10と第2ステント本体20は、プッシャワイヤ2を介して、又は、遠位端シャフト3を介して連結されているが、プッシャワイヤ2と遠位端シャフト3との間においては、連結されていない。そのため、ステント1は、第1ステント本体10と第2ステント本体20を、それぞれ同一層上で独立して変形させることができる。
【0025】
また、後述するように、第1実施形態のステント1は、第1ステント本体10よりも外径の大きな第2ステント本体20を、縮径した状態で第1ステント本体10に内挿することにより作製される。これにより、ステント1において、内挿された第2ステント本体20は、第1ステント本体10を径方向RDの外側に常に押圧した状態となる。したがって、ステント1は、第1ステント本体10と第2ステント本体20とがそれぞれ同一層上で独立して変形できる状態を維持しつつ、第1ステント本体10と第2ステント本体20とをより強固に密着させることができる。
【0026】
図1に示すように、ステント1の近位側LD1において、第1ステント本体10及び第2ステント本体20の端部は、プッシャワイヤ2の側に向かうにつれて徐々に縮径され、プッシャワイヤ2と接続されている。同様に、ステント1の遠位側LD2において、第1ステント本体10及び第2ステント本体20の端部は、遠位端シャフト3の側に向かうにつれて徐々に縮径され、遠位端シャフト3と接続されている。
【0027】
第1ステント本体10は、
図3Aに示すように、枠形に配置されたストラット11からなる複数の外セル(第1セル)12が、径方向(周方向)RDに敷き詰められている。また、第1ステント本体10において、径方向RDに敷き詰められた複数の外セル12は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第1ステント本体10は、枠形に配置されたストラット11からなる複数の外セル12が径方向RDに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。外セル12には、空孔部分13が形成されている。また、隣接する外セル12同士は、交点部分14において接続されている。
【0028】
第2ステント本体20は、
図3Bに示すように、枠形に配置されたストラット21からなる複数の内セル(第2セル)22が、径方向(周方向)RDに敷き詰められている。また、第2ステント本体20において、径方向RDに敷き詰められた複数の内セル22は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第2ステント本体20は、枠形に配置されたストラット21からなる複数の内セル22が径方向RDに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。内セル22には、空孔部分23が形成されている。また、隣接する内セル22同士は、交点部分24において接続されている。
【0029】
図3A及び
図3Bに示すように、第1実施形態のステント1において、第1ステント本体10を構成する外セル12と、第2ステント本体20を構成する内セル22は、一例として、同じ大きさ、形状、配置となるように構成されている。すなわち、第1実施形態において、
図3Aに示す第1ステント本体10のメッシュパターンと、
図3Bに示す第2ステント本体20のメッシュパターンは、実質的に同じパターンとなる。なお、第1ステント本体10のメッシュパターンと、第2ステント本体20のメッシュパターンは、異なっていてもよい。
【0030】
図3Cに示すように、ステント1において、第1ステント本体10と第2ステント本体20は、外セル12(第1ステント本体10)の空孔部分13に、内セル22(第2ステント本体20)の交点部分24が配置されるように重ねられている。具体的には、外セル12の空孔部分13に内セル22の交点部分24が配置されている構成において、1つの外セル12の空孔部分13に1つの内セル22の交点部分24が配置されるように重ねられている。各ステント本体のメッシュパターンを上記のように重ねることにより、ステント全体でメッシュパターンの密度が高くなるため、ステント1の表面積をより大きくすることができる。第1実施形態のステント1において、第1ステント本体10と第2ステント本体20とが重なり合った部分の表面の単位面積当たりにおいて非空孔部分の占める割合は、5~50%である。
【0031】
一方、
図4A及び
図4Bに示すように、第1実施形態において、単体の第1ステント本体10の外径D1と、単体の第2ステント本体20の外径D2との関係は、D1<D2となるように設定される。そのため、
図5に矢印で示す手順に従って、第1ステント本体10よりも外径の大きな第2ステント本体20を縮径して第2ステント本体20Aとし、これを第1ステント本体10に内挿すると、第2ステント本体20の自己の拡張力により、第1ステント本体10の内側に第2ステント本体20が密着した二層構造のステント1を作製することができる。なお、
図5では、理解を容易にするため、各ステント本体において、周方向に敷き詰められた環状のセル列のみを示している。
【0032】
上記のようにして作製されたステント1において、第1ステント本体10及び第2ステント本体20は、
図6に示すように、上述した第2ステント本体20の自己の拡張力により、径方向RDにおいて互いに隙間なく密着した状態となる。そのため、ステント1の軸線方向LD(
図1参照)において、第1ステント本体10と第2ステント本体20の位置が相対的にずれてしまう不具合が起こりにくい。
【0033】
第1実施形態において、縮径した状態で第1ステント本体10に内挿された第2ステント本体20は、それ自体が自己拡張体(弾性体)となる。そのため、第2ステント本体20は、第1ステント本体10を、径方向RDの外側に向けて常に押圧した状態となる。したがって、第1ステント本体10と第2ステント本体20とが径方向において互いに連結されていなくても、第1ステント本体10と第2ステント本体20とをより強固に密着させることができる。また、ステント1は、第1ステント本体10と第2ステント本体20とが径方向において互いに連結されていないため、第1ステント本体10と第2ステント本体20が、それぞれ同一層上で独立して変形できる状態を維持することができる。更に、二層構造となるステント1は、外側の第1ステント本体10の拡張力と、内側の第2ステント本体20の拡張力とが加算された拡張力を有する。そのため、同じ表面積であっても、一層構造のステントよりも拡張力を大きくすることができる。
【0034】
ステント1(第1ステント本体10、第2ステント本体20)を構成する材料としては、材料自体の剛性が高く、生体適合性が高い材料が好ましい。このような材料としては、例えば、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、白金、金、銀、銅、鉄、クロム、コバルト、アルミニウム、モリブデン、マンガン、タンタル、タングステン、ニオブ、マグネシウム、カルシウム又はこれらを含む合金が挙げられる。ステント1は、特にニッケルチタン(Ni-Ti)合金のような超弾性特性を有した材料から形成されていることが好ましい。第1ステント本体10及び第2ステント本体20のメッシュパターンは、例えば、上記材料からなる略円筒形状のチューブをレーザ加工することにより作製することができる。
【0035】
また、ステント1の材料として、PE、PP等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネイト、ポリエーテル、ポリメチルメタクリレート等の合成樹脂材料を用いることもできる。更に、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリεカプロラクトン等の生分解性樹脂(生分解性ポリマー)を用いることもできる。これらの中でも、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、白金、金、銀、銅、マグネシウム又はこれらを含む合金が望ましい。合金としては、Ni-Ti合金、Cu-Mn合金、Cu-Cd合金、Co-Cr合金、Cu-Al-Mn合金、Au-Cd-Ag合金、Ti-Al-V合金、マグネシウムとZr、Y、Ti、Ta、Nd、Nb、Zn、Ca、Al、Li、Mn等との合金等が挙げられる。ステント1の材料としては、上記以外にも、非生分解性樹脂を用いることができる。このように、ステント1は、生体適合性を有するものであれば、どのような材料で形成してもよい。
【0036】
また、ステント1は、薬剤を含んでいてもよい。ここで、ステント1が薬剤を含むとは、薬剤が溶出し得るように、ステント1が薬剤を放出可能に担持していることをいう。薬剤は限定されないが、例えば、生理活性物質を用いることができる。生理活性物質としては、内膜肥厚を抑制する薬剤、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症剤、抗炎症剤、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイド及びカロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、血管平滑筋増殖抑制薬、抗炎症薬、インターフェロン等が挙げられ、これらの薬剤の複数を用いることもできる。
【0037】
第1ステント本体10及び第2ステント本体20を、例えば、超弾性合金チューブから作製する場合、径が2~3mm程度のチューブをレーザ加工してメッシュパターンを形成し、この後、径方向に引き延ばす加工を行うことにより、それぞれ所望の径まで拡径することができる。前述したように、第1ステント本体10に第2ステント本体20を内挿することにより、二層構造のステント1を作製することができる。この二層構造のステント1は、
図1に示す状態から半径方向に縮径され、カテーテル(不図示)の内腔に収納される。カテーテルに収納されたステント1を外部に押し出すと、
図1に示すような形状が回復する。ステント1を、超弾性合金や形状記憶合金のような弾性材料等で形成することにより、上記のような形状回復の機能を得ることができる。なお、ステント1の作製は、レーザ加工に限定されるものではなく、例えば、切削加工等の他の方法によって作製することも可能である。
【0038】
上述した第1実施形態のステント1によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
第1実施形態のステント1は、第1ステント本体10と第2ステント本体20とからなる二層構造であって、第1ステント本体10の外セル12の空孔部分13に、第2ステント本体20の内セル22の交点部分24が配置されるように重ねられている(
図3C参照)。各ステント本体のメッシュパターンを上記のように重ねることにより、ステント全体でメッシュパターンの密度が高くなるため、ステント1の表面積をより大きくすることができる。したがって、第1実施形態のステント1によれば、狭窄した血管をより均一に拡張することができる。
【0039】
一方、第1実施形態のステント1は、第1ステント本体10に第2ステント本体20が内挿された状態において、第1ステント本体10と第2ステント本体20が径方向において互いに連結されていない。本構成によれば、第1ステント本体10と第2ステント本体20は、それぞれ同一層上で独立して変形することが可能となり、互いの変形を妨げる干渉状態が起こりにくいため、ステント全体としての柔軟性をより高めることができる。このように、第1実施形態のステント1は、表面積を大きくしても、曲げ剛性が高くなり過ぎることがないので、血管構造への形状追従性に優れている。
【0040】
また、上述したように、第1実施形態のステント1において、第1ステント本体10と第2ステント本体20は、それぞれ同一層上で独立して変形することが可能なため、ステント1を縮径した場合に、各層のストラットを互いに干渉させることなく縮径することができる。このように、第1実施形態のステント1は、縮径性に優れているため、一層構造のメッシュパターンで表面積を大きくしたステントと比べて、径の細いカテーテル内にも容易に収納することができる。
【0041】
したがって、第1実施形態のステント1は、表面積が大きく且つ血管構造への形状追従性及び縮径性に優れている。
なお、ワイヤ状の材料を編み込んでステントを二層構造とした場合、ワイヤ状の材料が層間にも張り巡らされるため、それぞれの編み込み層を同一層上で独立して変形させることができなくなる。そのため、編み込みにより二層構造としたステントで表面積を大きくしたとしても、第1実施形態のステント1のような形状追従性及び縮径性を得ることは困難となる。
【0042】
ここで、第1実施形態のステント1を屈曲した血管内で一時的に留置した場合の効果ついて説明する。
図7は、ステント1を屈曲させた場合の内部の状態を説明する図である。
図7では、ステント1を、屈曲した血管内で一時的に留置した場合の内部の状態を模式的に示している。
図7において、ステント1の内側に描いた矢印A1は、第2ステント本体20の自己拡張力(圧力)の作用する方向を示している。
図7に示すように、ステント1において、第2ステント本体20は、自己拡張力により、第1ステント本体10を外側に向けて常に押圧した状態となる。そのため、屈曲の半径が小さな血管内において、ステント1に、いわゆる「キンク」と呼ばれる現象が生じにくくなる。キンクとは、ステントの断面が潰れて略楕円形になることをいう。また、屈曲した血管内では、
図7に矢印A2で示すように、ステント1を座屈させようとする力が加わる。この力は、特に、屈曲の内側で大きくなるが、この矢印A2の力に対して、矢印A1に示す第2ステント本体20の自己拡張力が対向するように作用する。そのため、屈曲した血管内において、ステント1の屈曲の半径が小さくなっても、ステント1を折れにくくすることができる。
【0043】
上述した第1実施形態のステント1をカテーテル内に収納し、血管内腔の病変部位で展開することにより、血管内腔が拡張されるため、病変部位の開通性を確保することができる。そして、ステント1を長期間留置することなく、所定期間の経過後に回収することにより、ステントの留置後に血管内で再狭窄や再閉塞が発生したり、血栓症等の合併症となったりする不具合の発生を抑制することができる。また、第1実施形態のステント1は、形状追従性に優れているため、血管内腔をバルーンで拡張したときのように、血管が直線状になりにくい。そのため、第1実施形態のステント1は、血管の損傷や周辺血管の穿通枝等、断裂や梗塞による出血性の合併症を引き起こしにくい。なお、第1実施形態のステント1は、血管内腔に生じた狭窄に限らず、例えば、食道、大腸等の消化器系の臓器に生じた狭窄にも用いることができる。すなわち、第1実施形態のステント1は、体内において管腔構造を有する生体組織全般に用いることができる。
【0044】
また、第1実施形態のステント1は、攣縮により脳血管が狭小化する脳血管攣縮の治療にも用いることができる。脳血管攣縮の治療法の一つとして、バルーンにより血管を拡張することが行われている。しかし、バルーンによる治療では、血管閉塞が発生したり、血管の損傷等が引き起こされたりするおそれがある。これに対して、第1実施形態のステント1は、上述のように形状追従性に優れているため、血管内腔をバルーンで拡張したときのように、血管が直線状になりにくい。そのため、第1実施形態のステント1は、脳血管攣縮の治療に用いた場合においても、血管の損傷や周辺血管の穿通枝等、断裂や梗塞による出血性の合併症を引き起こしにくいと考えられる。なお、後述する他の実施形態のステントにおいても、第1実施形態のステント1と同等の効果を奏する。
【0045】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のステント1Aについて説明する。第2実施形態のステント1Aは、第1ステント本体及び第2ステント本体のセル形状が第1実施形態と相違する。第2実施形態のステント1Aにおいて、その他の構成は、第1実施形態と同じである。そのため、第2実施形態では、ステント1Aの全体の図示を省略する。また、以下の説明及び図面において、第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、末尾(下2桁)に同一の符号を適宜に付して、重複する説明を適宜に省略する。
【0046】
図8Aは、第2実施形態の第1ステント本体110を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図3Bは、第2実施形態の第2ステント本体120を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図8Cは、第2実施形態のステント1Aを仮想的に平面状に広げた展開図である。第2実施形態において、周方向ODは、径方向RDに対して傾斜している。
【0047】
第2実施形態の第1ステント本体110は、
図8Aに示すように、複数の外セル(第1セル)112が、周方向ODに敷き詰められている。第1ステント本体110において、周方向ODに敷き詰められた複数の外セル112は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第1ステント本体110は、複数の外セル112が周方向ODに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。
【0048】
外セル112は、長辺側に配置された2つのストラット111と、短辺側に配置された2つのストラット111と、を備えている。外セル112は、平面状に広げた状態で略平行四辺形となるように、長辺側のストラット111と短辺側のストラット111とが互いに斜めに連結されている。外セル112には、空孔部分113が形成されている。また、隣接する外セル112同士は、交点部分114において接続されている。
【0049】
第2実施形態の第2ステント本体120は、
図8Bに示すように、複数の内セル(第2セル)122が、周方向ODに敷き詰められている。第2ステント本体120において、周方向ODに敷き詰められた複数の内セル122は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第2ステント本体120は、複数の内セル122が周方向ODに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。
【0050】
内セル122は、長辺側に配置された2つのストラット121と、短辺側に配置された2つのストラット121と、を備えている。内セル122は、平面状に広げた状態で略平行四辺形となるように、長辺側のストラット121と短辺側のストラット121とが互いに斜めに連結されている。各内セル122には、空孔部分123が形成されている。また、隣接する内セル122同士は、交点部分124において接続されている。
【0051】
第2実施形態のステント1Aにおいて、第1ステント本体110を構成する複数の外セル112と、第2ステント本体120を構成する複数の内セル122とは、一例として、同じ大きさ、形状、配置となるように構成されている。すなわち、第2実施形態において、
図8Aに示す第1ステント本体110のメッシュパターンと、
図8Bに示す第2ステント本体120のメッシュパターンとは、実質的に同じパターンとなる。なお、第1ステント本体110のメッシュパターンと、第2ステント本体120のメッシュパターンとは、異なっていてもよい。
【0052】
図8Cに示すように、第2実施形態のステント1Aにおいて、第1ステント本体110と第2ステント本体120とは、外セル112(第1ステント本体110)の空孔部分113に、内セル122(第2ステント本体120)の交点部分124が配置されるように重ねられている。具体的には、外セル112の空孔部分113に内セル122の交点部分124が配置されている構成において、1つの外セル112の空孔部分113に1つの内セル122の交点部分124が配置されるように重ねられている。第2実施形態のように、各ステント本体のセル形状を
図8A及び
図8Bのように構成した場合においても、各ステント本体のメッシュパターンを上記のように重ねることにより、ステント全体でメッシュパターンの密度が高くなるため、ステント1Aの表面積をより大きくすることができる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のステント1Bについて説明する。第3実施形態のステント1Bは、第1ステント本体及び第2ステント本体のセル形状が第1実施形態と相違する。第3実施形態のステント1Bにおいて、その他の構成は、第1実施形態と同じである。そのため、第3実施形態では、ステント1Bの全体の図示を省略する。また、以下の説明及び図面において、第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、末尾(下2桁)に同一の符号を適宜に付して、重複する説明を適宜に省略する。
【0054】
図9Aは、第3実施形態の第1ステント本体210を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図9Bは、第3実施形態の第2ステント本体220を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図9Cは、第3実施形態のステント1Bを仮想的に平面状に広げた展開図である。第3実施形態においては、セル同士が径方向(周方向)RDに対して斜めに接続される環方向を、環方向CD1、CD2として説明する。
【0055】
第3実施形態の第1ステント本体210は、
図9Aに示すように、複数の外セル(第1セル)212が、径方向(周方向)RDに敷き詰められている。第1ステント本体210において、径方向RDに敷き詰められた複数の外セル212は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第1ステント本体210は、複数の外セル212が径方向RDに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。
【0056】
外セル212は、環方向CD1において、1組のストラット(第1ストラット)211(以下、「211a-211b」ともいう)と、この1組のストラット211と間隔(空孔部分213)を空けて配置されるストラット(第1ストラット)211と、を備えている。また、外セル212は、環方向CD2において、互いに対向するように間隔(空孔部分213)を空けて配置される2つのストラット211を備えている。1組のストラット211a-211bの間隔L1と、空孔部分213の間隔L2との比率は、例えば、1:3~1:10程度である。外セル212において、1組のストラット211に対して環方向CD1に離れて配置されるストラット211は、環方向CD1に隣接する他の外セル212において、1組のストラット211の一方のストラット211aとなる。
【0057】
外セル212には、空孔部分213が形成されている。また、環方向CD1に沿って配置される各外セル212において、1組のストラット211a-211bと、環方向CD1に沿って延びるストラット211とは、交差部分214において接続されている。
【0058】
第3実施形態の第2ステント本体220は、
図9Bに示すように、複数の内セル(第2セル)222が、径方向(周方向)RDに敷き詰められている。第2ステント本体220において、径方向RDに敷き詰められた複数の内セル222は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第2ステント本体220は、複数の内セル222が径方向RDに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。
【0059】
内セル222は、環方向CD1において、1組のストラット(第2ストラット)221(以下、「221a-221b」ともいう)と、この1組のストラット221と間隔(空孔部分223)を空けて配置される1つのストラット(第2ストラット)221と、を備えている。また、内セル222は、環方向CD2において、互いに対向するように間隔(空孔部分213)を空けて配置される2つのストラット221を備えている。1組のストラット221a-221bの間隔L3と、空孔部分223aの間隔L4との比率は、例えば、1:3~1:10程度である。内セル222において、1組のストラット221に対して環方向CD1に離れて配置されるストラット221は、環方向CD1に隣接する他の内セル222において、1組のストラット221の一方のストラット221aとなる。
【0060】
内セル222には、空孔部分223が形成されている。また、環方向CD1に沿って配置される各内セル222において、1組のストラット221a-221bと、環方向CD1に沿って延びるストラット221とは、交差部分224において接続されている。
【0061】
第3実施形態のステント1Bにおいて、第1ステント本体210を構成する複数の外セル212と、第2ステント本体220を構成する複数の内セル222とは、一例として、同じ大きさ、形状、配置となるように構成されている。すなわち、第3実施形態において、
図9Aに示す第1ステント本体210のメッシュパターンと、
図9Bに示す第2ステント本体220のメッシュパターンとは、実質的に同じパターンとなる。なお、第1ステント本体210のメッシュパターンと、第2ステント本体220のメッシュパターンとは、異なっていてもよい。
【0062】
図9Cに示すように、ステント1Bにおいて、第1ステント本体210と第2ステント本体220とは、外セル212(第1ステント本体210)の空孔部分213に、内セル222(第2ステント本体220)の交差部分224が配置されるように重ねられている。具体的には、外セル212の空孔部分213に内セル222の交差部分224が配置されている構成において、1つの外セル212の空孔部分213に1つの内セル222の交差部分224が配置されるように重ねられている。第3実施形態のように、各ステント本体のセル形状を
図9A及び
図9Bのように構成した場合においても、各ステント本体のメッシュパターンを上記のように重ねることにより、ステント全体でメッシュパターンの密度が高くなるため、ステント1Bの表面積をより大きくすることができる。
【0063】
次に、第3実施形態のステント1Bの他の効果について説明する。
図10Aは、前述した第2実施形態のステント1Aを血管内で拡張させた場合の断面図である。
図10Aは、血管内で拡張させたステント1Aを、例えば、
図8Cのs2-s2線に沿って斜めに切断した場合の仮想的な断面を示している。
図10Bは、第3実施形態のステント1Bを血管内で拡張させた場合の断面図である。
図10Bは、血管内で拡張させたステント1Bを、例えば、
図9Cのs3-s3線に沿って斜めに切断した場合の仮想的な断面を示している。
【0064】
図10Aに示すように、第2実施形態のステント1Aを血管BVの内部で拡張させると、第1ステント本体110の外セル112を構成するストラット111と、第2ステント本体120の内セル122を構成するストラット121とが周方向に交互に配置された状態となる。そのため、ステント1Aの開口断面は、周方向に沿って凹凸が多く且つ段差も大きな形状となる。なお、
図10A及び
図10Bの説明において、「周方向」とは、ステントを軸線方向(中心軸方向)ら見たときの円周方向を意味する。
【0065】
一方、
図10Bに示すように、第3実施形態のステント1Bを血管BVの内部で拡張させると、第1ステント本体210の外セル212を構成する1組のストラット211(211a-211b:
図9A参照)と、第2ステント本体220の内セル222を構成する1組のストラット221(221a-221b:
図9B参照)とが周方向に沿って交互に配置された状態となる。そのため、ステント1Bの開口断面は、周方向に沿って凹凸が少なく且つ段差も緩やかな形状となる。このように、第3実施形態のステント1Bは、開口断面に凹凸が少ないため、より円形に近い形状で拡張させることができる。したがって、第3実施形態のステント1Bによれば、狭窄した血管BVの内壁をより均一に拡張することができる。
【0066】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態のステント1Cについて説明する。第4実施形態のステント1Cは、第1ステント本体及び第2ステント本体のセル形状が第3実施形態と相違する。そのため、第4実施形態の説明及び図面において、第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、末尾(下2桁)に同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。第4実施形態においては、セル同士が径方向(周方向)RDに対して斜めに接続される環方向を、環方向CD1、CD2として説明する。
【0067】
図11は、第4実施形態のステント1Cの模式的な斜視図である。
図12Aは、第4実施形態の第1ステント本体310を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図12Bは、第4実施形態の第2ステント本体320を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図12Cは、第4実施形態のステント1Cを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【0068】
図11に示すように、第4実施形態のステント1Cは、第1ステント本体310と、第2ステント本体320と、を備えている。第1ステント本体310は、ステント1Cの外側に配置される略円筒形状の構造体である。第2ステント本体320は、第1ステント本体310の内側に配置される略円筒形状の構造体である。ステント1Cは、第1ステント本体310に第2ステント本体320が内挿された二重構造を有する。なお、
図11では、
図1に示すプッシャワイヤ2及び遠位端シャフト3の図示を省略している。
【0069】
第1ステント本体310は、
図12Aに示すように、複数の外セル(第1セル)312が径方向(周方向)RDに敷き詰められている。第1ステント本体310において、径方向RDに敷き詰められた複数の外セル312は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第1ステント本体310は、複数の外セル312が径方向RDに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。
【0070】
外セル312は、環方向CD1において、1組のストラット(第1ストラット)311(以下、「311a-311b」ともいう)と、この1組のストラット311と間隔(空孔部分313)を空けて配置される1つのストラット(第1ストラット)311と、を備えている。また、外セル312は、環方向CD2において、互いに対向するように間隔(空孔部分313)を空けて配置される2つのストラット311を備えている。外セル312において、1組のストラット311に対して環方向CD1に離れて配置されるストラット311は、環方向CD1に隣接する他の外セル312において、1組のストラット311の一方のストラット311aとなる。
【0071】
外セル312には、空孔部分313が形成されている。また、環方向CD1に沿って配置される各外セル312において、1組のストラット311a-311bと、環方向CD1に沿って延びるストラット311とは、略S字形の第1交差部分314において接続されている。第1交差部分314は、拡径したステント1Cを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、径方向RDに引き延ばされるように変形する。そのため、径方向RDに敷き詰められた外セル312をより柔軟に屈曲させることができる。
図12Aに示すように、第1ステント本体310において、各第1交差部分314は、径方向RDに平行に配置されている。
【0072】
第2ステント本体320は、
図12Bに示すように、複数の内セル(第2セル)322が、径方向(周方向)RDに敷き詰められている。第2ステント本体320において、径方向RDに敷き詰められた複数の内セル322は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第2ステント本体320は、複数の内セル322が径方向RDに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。
【0073】
内セル322は、環方向CD1において、1組のストラット(第2ストラット)321(以下、「321a-321b」ともいう)と、この1組のストラット321と間隔(空孔部分323)を空けて配置される1つのストラット(第2ストラット)321と、を備えている。また、内セル322は、環方向CD2において、互いに対向するように間隔(空孔部分323)を空けて配置される2つのストラット321を備えている。内セル322において、1組のストラット321に対して環方向CD1に離れて配置されるストラット321は、環方向CD1に隣接する他の内セル322において、1組のストラット321の一方のストラット321aとなる。
【0074】
内セル322には、空孔部分323が形成されている。また、環方向CD1に沿って配置される各内セル322において、1組のストラット321a-321bと、環方向CD1に沿って延びるストラット321とは、略S字形の第2交差部分324において接続されている。第2交差部分324は、拡径したステント1Cを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、径方向RDに引き延ばされるように変形するため、径方向RDに敷き詰められた内セル322をより柔軟に屈曲させることができる。
図12Bに示すように、第2ステント本体320において、各第2交差部分324は、径方向RDに平行に配置されている。
【0075】
第4実施形態のステント1Cにおいて、第1ステント本体310を構成する複数の外セル312と、第2ステント本体320を構成する複数の内セル322とは、一例として、同じ大きさ、形状、配置となるように構成されている。すなわち、第4実施形態において、
図12Aに示す第1ステント本体310のメッシュパターンと、
図12Bに示す第2ステント本体320のメッシュパターンとは、実質的に同じパターンとなる。なお、第1ステント本体310のメッシュパターンと、第2ステント本体320のメッシュパターンとは、異なっていてもよい。
【0076】
図12Cに示すように、ステント1Cにおいて、第1ステント本体310と第2ステント本体320は、外セル312(第1ステント本体310)の空孔部分313に、内セル322(第2ステント本体320)の第2交差部分324が配置されるように重ねられている。具体的には、外セル312の空孔部分313に内セル322の第2交差部分324が配置されている構成において、1つの外セル312の空孔部分313に1つの内セル322の第2交差部分324が配置されるように重ねられている。第4実施形態のように、各ステント本体のセル形状を
図12A及び
図12Bのように構成した場合においても、各ステント本体のメッシュパターンを上記のように重ねることにより、ステント全体でメッシュパターンの密度が高くなるため、ステント1Cの表面積をより大きくすることができる。
【0077】
また、第4実施形態のステント1Cにおいて、第1ステント本体310の各外セル312は、環方向CD1において、略S字形の第1交差部分314において接続されている。同様に、第2ステント本体320の各内セル322は、環方向CD2において、略S字形の第2交差部分324において接続されている。そして、第1ステント本体310の第1交差部分314と、第2ステント本体320の第2交差部分324とは、
図12Cに示すように、径方向RDに平行に配置されている。本構成によれば、拡径したステント1Cを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、径方向RDに敷き詰められた外セル312及び内セル322をより柔軟に屈曲させることができるため、ステント1Cの形状追従性をより高めることができる。
【0078】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態のステント1Dについて説明する。第5実施形態のステント1Dは、第1ステント本体及び第2ステント本体のセル形状が第3実施形態と相違する。そのため、第5実施形態の説明及び図面において、第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、末尾(下2桁)に同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。第5実施形態においては、セル同士が径方向(周方向)RDに対して斜めに接続される環方向を、環方向CD1、CD2として説明する。
【0079】
図13は、第5実施形態のステント1Dの模式的な斜視図である。
図14Aは、第5実施形態の第1ステント本体410を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図14Bは、第5実施形態の第2ステント本体420を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図14Cは、第5実施形態のステント1Dを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【0080】
図13に示すように、第5実施形態のステント1Dは、第1ステント本体410と、第2ステント本体420と、を備えている。第1ステント本体410は、ステント1Dの外側に配置される略円筒形状の構造体である。第2ステント本体420は、第1ステント本体410の内側に配置される略円筒形状の構造体である。ステント1Dは、第1ステント本体410に第2ステント本体420が内挿された二重構造を有する。なお、
図13では、
図1に示すプッシャワイヤ2及び遠位端シャフト3の図示を省略している。
【0081】
第5実施形態の第1ステント本体410は、
図14Aに示すように、複数の外セル(第1セル)412が、径方向(周方向)RDに敷き詰められている。第1ステント本体410において、径方向RDに敷き詰められた複数の外セル412は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第1ステント本体410は、複数の外セル412が径方向RDに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。
【0082】
第5実施形態において、第1ステント本体410の構成は、第4実施形態の第1ステント本体310と実質的に同じであるため、詳細な説明を省略する。第5実施形態の第1ステント本体410において、ストラット411、411a、411b、外セル412、空孔部分413、第1交差部分414は、第4実施形態の第1ステント本体310のストラット311、311a、311b、外セル312、空孔部分313、第1交差部分314に相当する。
図14Aに示すように、第1ステント本体410の各外セル312は、環方向CD1において、第1交差部分414において接続されている。
【0083】
第5実施形態の第2ステント本体420は、
図14Bに示すように、複数の内セル(第2セル)422が、径方向(周方向)RDに敷き詰められている。第2ステント本体420において、径方向RDに敷き詰められた複数の内セル422は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第2ステント本体420は、複数の内セル422が径方向RDに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。
【0084】
内セル422は、環方向CD2において、1組のストラット(第2ストラット)421(以下、「421a-421b」ともいう)と、この1組のストラット421と間隔(空孔部分423)を空けて配置される1つのストラット(第2ストラット)421と、を備えている。また、内セル422は、環方向CD2において、互いに対向するように間隔(空孔部分423)を空けて配置される2つのストラット421を備えている。内セル422において、1組のストラット421に対して環方向CD2に離れて配置されるストラット421は、環方向CD2に隣接する他の内セル422において、1組のストラット421の一方のストラット421aとなる。
【0085】
内セル422には、空孔部分423が形成されている。また、環方向CD2に沿って配置される各内セル422において、1組のストラット421a-421bと、環方向CD1に沿って延びるストラット421とは、略S字形の第2交差部分424において接続されている。第2交差部分424は、拡径したステント1Dを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、径方向RDに引き延ばされるように変形するため、径方向RDに敷き詰められた内セル422をより柔軟に屈曲させることができる。
【0086】
図14Bに示すように、第2ステント本体420の各内セル422は、環方向CD2において、第2交差部分424において接続されている。そのため、第5実施形態のステント1Dにおいて、第1ステント本体410の各外セル412が第1交差部分414(
図14A参照)において接続される環方向CD1と、第2ステント本体420の各内セル422が第2交差部分424において接続される環方向CD2とは、径方向RDにおいて線対称となる。
【0087】
図14Cに示すように、ステント1Dにおいて、第1ステント本体410と第2ステント本体420は、外セル412(第1ステント本体410)の空孔部分413に、内セル422(第2ステント本体420)の第2交差部分424が配置されるように重ねられている。具体的には、外セル412の空孔部分413に内セル422の第2交差部分424が配置されている構成において、1つの外セル412の空孔部分413に1つの内セル422の第2交差部分424が配置されるように重ねられている。また、ステント1Dにおいて、外セル412の第1交差部分414と内セル422の第2交差部分424とは、径方向RDに平行に配置されると共に、それぞれ交互に配置される。各ステント本体のセル形状を
図14A及び
図14Bのように構成した場合においても、各ステント本体のメッシュパターンを上記のように重ねることにより、ステント全体でメッシュパターンの密度が高くなるため、ステント1Dの表面積をより大きくすることができる。
【0088】
また、第5実施形態のステント1Dにおいて、第1ステント本体410の各外セル412は、環方向CD1において、略S字形の第1交差部分414において接続されている。一方に、第2ステント本体420の各内セル422は、環方向CD2において、略S字形の第2交差部分424において接続されている。そして、第1ステント本体410の第1交差部分414と、第2ステント本体420の第2交差部分424とは、
図14Cに示すように、径方向RDに平行に配置されている。本構成によれば、拡径したステント1Dを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、径方向RDに敷き詰められた外セル412及び内セル422をより柔軟に屈曲させることができるため、ステント1Dの形状追従性をより高めることができる。
【0089】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態のステント1Eについて説明する。第6実施形態のステント1Eは、第1ステント本体及び第2ステント本体のセル形状が第3実施形態と相違する。そのため、第6実施形態の説明及び図面において、第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、末尾(下2桁)に同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。第6実施形態においては、セル同士が径方向(周方向)RDに対して斜めに接続される環方向を、環方向CD1、CD2として説明する。
【0090】
図15は、第6実施形態のステント1Eの模式的な斜視図である。
図16Aは、第6実施形態の第1ステント本体510を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図16Bは、第6実施形態の第2ステント本体520を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図16Cは、第6実施形態のステント1Eを仮想的に平面状に広げた展開図である。第6実施形態において、周方向ODは、径方向RDに対して傾斜している。
【0091】
図15に示すように、第6実施形態のステント1Eは、第1ステント本体510と、第2ステント本体520と、を備えている。第1ステント本体510は、ステント1Eの外側に配置される略円筒形状の構造体である。第2ステント本体520は、第1ステント本体510の内側に配置される略円筒形状の構造体である。第6実施形態のステント1Eは、第1ステント本体510に第2ステント本体520が内挿された二重構造を有する。なお、
図15では、
図1に示すプッシャワイヤ2及び遠位端シャフト3の図示を省略している。
【0092】
第1ステント本体510は、
図16Aに示すように、複数の外セル(第1セル)512が、周方向ODに敷き詰められている。第1ステント本体510において、周方向ODに敷き詰められた複数の外セル512は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第1ステント本体510は、複数の外セル512が周方向ODに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。
【0093】
外セル512は、環方向CD1において、1組のストラット(第1ストラット)511(以下、「511a-511b」ともいう)と、この1組のストラット511と間隔(空孔部分513)を空けて配置される1つのストラット(第1ストラット)511と、を備えている。また、外セル512は、環方向CD2において、互いに対向するように間隔(空孔部分513)を空けて配置される2つのストラット511を備えている。外セル512において、1組のストラット511に対して環方向CD1に離れて配置されるストラット511は、環方向CD1に隣接する他の外セル512において、1組のストラット511の一方のストラット511aとなる。
【0094】
環方向CD1に配置される1組のストラット511a-511bと、1つのストラット511とは、外セル512の長辺側を構成する。また、環方向CD2に配置される2つのストラット511は、外セル512の短辺側を構成する。外セル512は、平面状に広げた状態で略平行四辺形となるように、長辺側のストラット511a-511b及び511と、短辺側のストラット511とが互いに斜めに連結されている。
【0095】
外セル512には、空孔部分513が形成されている。また、環方向CD1に沿って配置される各外セル512において、1組のストラット511a-511bと、環方向CD1に沿って延びるストラット511とは、略S字形の第1交差部分514において接続されている。第1交差部分514は、拡径したステント1Eを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、径方向RDに引き延ばされるように変形する。そのため、径方向RDに敷き詰められた外セル512をより柔軟に屈曲させることができる。
図16Aに示すように、第1ステント本体510において、各第1交差部分514は、周方向ODと平行に配置されている。
【0096】
第2ステント本体520は、
図16Bに示すように、複数の内セル(第2セル)522が、周方向ODに敷き詰められている。第2ステント本体520において、周方向ODに敷き詰められた複数の内セル522は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第2ステント本体520は、複数の内セル522が周方向ODに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。
【0097】
内セル522は、環方向CD1において、1組のストラット(第2ストラット)521(以下、「521a-521b」ともいう)と、この1組のストラット521と間隔(空孔部分523)を空けて配置される1つのストラット(第2ストラット)521と、を備えている。また、内セル522は、環方向CD2において、互いに対向するように間隔(空孔部分523)を空けて配置される2つのストラット521を備えている。内セル522において、1組のストラット521に対して環方向CD1に離れて配置されるストラット521は、環方向CD1に隣接する他の内セル522において、1組のストラット521の一方のストラット521aとなる。
【0098】
環方向CD1に配置される1組のストラット521a-521bと、1つのストラット521とは、内セル522の長辺側を構成する。また、環方向CD2に配置される2つのストラット521は、内セル522の短辺側を構成する。内セル522は、平面状に広げた状態で略平行四辺形となるように、長辺側のストラット521a-521b及び521と、短辺側のストラット521とが互いに斜めに連結されている。
【0099】
内セル522には、空孔部分523が形成されている。また、環方向CD1に沿って配置される各内セル522において、1組のストラット521a-521bと、環方向CD1に沿って延びるストラット521とは、略S字形の第2交差部分524において接続されている。第2交差部分524は、拡径したステント1Eを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、径方向RDに引き延ばされるように変形する。そのため、径方向RDに敷き詰められた内セル522をより柔軟に屈曲させることができる。
図16Bに示すように、第2ステント本体520において、各第2交差部分524は、周方向ODと平行に配置されている。
【0100】
図16Cに示すように、ステント1Eにおいて、第1ステント本体510と第2ステント本体520は、外セル512(第1ステント本体510)の空孔部分513に、内セル522(第2ステント本体520)の第2交差部分524が配置されるように重ねられている。具体的には、外セル512の空孔部分513に内セル522の第2交差部分524が配置されている構成において、1つの外セル512の空孔部分513に1つの内セル522の第2交差部分524が配置されるように重ねられている。また、ステント1Eにおいて、外セル512の第1交差部分514と内セル522の第2交差部分524とは、周方向ODに平行に配置されると共に、それぞれ交互に配置される。各ステント本体のセル形状を
図16A及び
図16Bのように構成した場合においても、各ステント本体のメッシュパターンを上記のように重ねることにより、ステント全体でメッシュパターンの密度が高くなるため、ステント1Eの表面積をより大きくすることができる。
【0101】
また、第6実施形態のステント1Eにおいて、第1ステント本体510の各外セル512は、環方向CD1において、略S字形の第1交差部分514において接続されている。同様に、第2ステント本体520の各内セル522は、環方向CD1において、略S字形の第2交差部分524において接続されている。そして、第1ステント本体510の第1交差部分514と、第2ステント本体520の第2交差部分524とは、
図16Cに示すように、周方向ODに平行に配置されている。本構成によれば、拡径したステント1Eを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、周方向ODに敷き詰められた外セル512及び内セル522をより柔軟に屈曲させることができるため、ステント1Eの形状追従性をより高めることができる。
【0102】
(第7実施形態)
図17Aは、ステント1の近位側の端部とプッシャワイヤ2とを第1の接続形態で接続した構成を模式的に示す側面図である。
図17Bは、
図17Aのs4-s4線断面図である。なお、第7実施形態及び後述する第8、第9実施形態の説明では、接続形態を説明するためのステントとして、第1実施形態のステント1(
図1参照)を例として挙げるが、他の実施形態のステントに適用してもよい。また、以下に説明する各図では、ステント1の構成を簡略化している。
【0103】
図17Aに示すように、第1ステント本体10の近位側LD1の端部101は、プッシャワイヤ2と接続部102において接続されている。第2ステント本体20の近位側LD1の端部201は、プッシャワイヤ2と接続部202において接続されている。第1の接続形態において、第1ステント本体10の接続部102と第2ステント本体20の接続部202は、プッシャワイヤ2の軸線方向LDにおいて、同じ位置に形成されている。第1ステント本体10の接続部102と第2ステント本体20の接続部202は、溶接等により接続された位置及びその範囲を模式的に示している。
【0104】
図17Bに示すように、第1ステント本体10の接続部102と第2ステント本体20の接続部202は、プッシャワイヤ2の径方向(軸線方向LDと直交する方向)において等間隔に形成されている。なお、
図17Bでは、第1ステント本体10の接続部102と第2ステント本体20の接続部202とを、円周方向に90度間隔で設けた例を示しているが、これに限定されない。
【0105】
(第8実施形態)
図18Aは、ステント1の近位側の端部とプッシャワイヤ2とを第2の接続形態で接続した構成を模式的に示す側面図である。
図18Bは、
図18Aのs5-s5線断面図である。
図18Cは、
図18Aのs6-s6線断面図である。
図18B及び
図18Cにおいては、各接続部の位置を分かり易くするため、図中の上下方向を第1径方向RD1、第1径方向RD1と直交する図中の左右方向を第2径方向RD2とする。なお、第1径方向RD1及び第2径方向RD2の向きは、図面の上下方向及び左右方向に限定されない。
【0106】
図18Aに示すように、第1ステント本体10の近位側LD1の端部101と、第2ステント本体20の近位側LD1の端部201とは、プッシャワイヤ2の軸線方向LDにおいて異なる位置に接続されている。具体的には、第1ステント本体10の端部101は、プッシャワイヤ2の側面に沿うように、遠位側LD2から近位側LD1まで延伸されている。そして、第1ステント本体10の端部101は、第2ステント本体20の接続部202よりも近位側LD1において、接続部102において接続されている。一方、第2ステント本体20の端部201は、プッシャワイヤ2の遠位側LD2に位置している。そして、第2ステント本体20の端部201は、第1ステント本体10の端部101よりも遠位側LD2において、接続部202において接続されている。
【0107】
第1ステント本体10の接続部102及び第2ステント本体20の接続部202は、プッシャワイヤ2の軸線方向LDから視て等間隔に形成されている。例えば、
図18Bに示すように、第2ステント本体20の接続部202は、第1径方向RD1において、180度の間隔で形成されている。
図18Bにおいて、第1ステント本体10の端部101は、プッシャワイヤ2の側面に接しているが、接続部102において接続されていない。また、
図18Cに示すように、第1ステント本体10の接続部102は、第2径方向RD2において、180度の間隔で形成されている。
【0108】
本実施形態の構成によれば、プッシャワイヤ2の軸線方向LDにおいて、第1ステント本体10の端部101と第2ステント本体20の端部201とが同じ位置で接続されないため、溶接時の熱によりプッシャワイヤ2に歪み等が生じる不具合を抑制することができる。なお、プッシャワイヤ2の軸線方向LDにおいて、第1ステント本体10の接続部102及び第2ステント本体20の接続部202の位置を入れ替えて、第1ステント本体10の接続部102を、第2ステント本体20の接続部202よりも遠位側LD2に設けてもよい。
【0109】
(第9実施形態)
図19Aは、ステント1の近位側の端部とプッシャワイヤ2とを第3の接続形態で接続した構成を模式的に示す側面図である。
図19Bは、
図19Aのs7-s7線断面図である。
図19Cは、
図19Aのs8-s8線断面図である。
図19B及び
図19Cにおいては、各接続部の位置を分かり易くするため、第8実施形態と同じく、図中の上下方向を第1径方向RD1、第1径方向RD1と直交する図中の左右方向を第2径方向RD2とする。
【0110】
図19Aに示すように、第1ステント本体10の端部101と、第2ステント本体20の端部201は、プッシャワイヤ2の軸線方向LDにおいて異なる位置に接続されている。具体的には、第1ステント本体10の端部101は、第2ステント本体20の端部201を跨ぐように、遠位側LD2から近位側LD1まで延伸されている。そして、第1ステント本体10の端部101は、第2ステント本体20の端部201よりも近位側LD1において、接続部102において接続されている。一方、第2ステント本体20の端部201は、プッシャワイヤ2の遠位側LD2に位置している。そして、第2ステント本体20の端部201は、第1ステント本体10の端部101よりも遠位側LD2において、接続部202において接続されている。
【0111】
第1ステント本体10の接続部102及び第2ステント本体20の接続部202は、プッシャワイヤ2の軸線方向LDから視て等間隔に形成されている。例えば、
図19Bに示すように、第2ステント本体20の接続部202は、第1径方向RD1に180度の間隔で形成されている。また、
図19Cに示すように、第1ステント本体10の接続部102は、第2ステント本体20の接続部202と同様に、第1径方向RD1に180度の間隔で形成されている。
【0112】
なお、プッシャワイヤ2の軸線方向LDにおいて、第1ステント本体10の接続部102と第2ステント本体20の接続部202との位置を入れ替えて、第1ステント本体10の接続部102を、第2ステント本体20の接続部202よりも遠位側LD2に設けてもよい。また、
図19Bにおいて、第2ステント本体20の接続部202を、第2径方向RD2に180度の間隔で形成し、第1ステント本体10の接続部102を、第2径方向RD2に180度の間隔で形成してもよい。
【0113】
(第10実施形態)
上述した第7~第10実施形態に示すステント1の近位側の端部とプッシャワイヤ2との接続形態は、ステント1の遠位側LD2と遠位端シャフト3との接続形態にも適用することができる。
図20は、ステント1の遠位側の端部と遠位端シャフト3とを第1の接続形態(第7実施形態)で接続した構成を模式的に示す側面図である。
【0114】
図20に示すように、第1ステント本体10の遠位側LD2の端部103は、遠位端シャフト3と接続部104において接続されている。第2ステント本体20の遠位側LD2の端部203は、遠位端シャフト3と接続部204において接続されている。第1ステント本体10の接続部104と第2ステント本体20の接続部204は、遠位端シャフト3の軸線方向LDにおいて、同じ位置に形成されている。また、図示していないが、第1ステント本体10の接続部104と第2ステント本体20の接続部204は、遠位端シャフト3の軸線方向LDから視て等間隔に形成されている(例えば、
図17B参照)。
【0115】
図21は、ステント1の遠位側の端部と遠位端シャフト3とを第1の接続形態(
図20参照)で接続した他の構成を模式的に示す側面図である。
図21に示すように、ステント1の内部に、造影性の高い金属線30を内挿した構成としてもよい。金属線30の遠位側LD2の端部は、遠位端シャフト3に接続されている。また、図示していないが、金属線30の近位側LD1の端部は、プッシャワイヤ2(
図1参照)に接続されている。
【0116】
図22は、ステント1の遠位側の端部と遠位端シャフト3とを第4の接続形態で接続した構成を模式的に示す側面図である。
図22に示すように、第2ステント本体20の遠位側LD2の端部203は、遠位端シャフト3と接続部204で接続されている。一方、第1ステント本体10の遠位側LD2の端部は、遠位端シャフト3と接続されていない。すなわち、第4の接続形態において、ステント1の遠位側は、第2ステント本体20の遠位側LD2の端部203のみが遠位端シャフト3と接続されている。なお、
図20に示す第4の接続形態において、ステント1の遠位側を、第1ステント本体10の遠位側LD2の端部103のみで遠位端シャフト3と接続する構成としてもよい。
【0117】
図23は、ステント1の遠位側の他の構成を模式的に示す側面図である。
図23に示すように、第1ステント本体10の遠位側LD2と第2ステント本体20の遠位側LD2とを、それぞれ開放した構成としてもよい。なお、図示していないが、
図23に示す構成において、第1ステント本体10の近位側LD1の端部と、第2ステント本体20の近位側LD1の端部とは、それぞれプッシャワイヤ2(
図1参照)に接続されている。
【0118】
(第11実施形態)
図24は、第11実施形態のステント1Fの模式的な側面図である。
図25は、
図24のs9-s9線断面図である。第11実施形態の説明及び図面において、第1実施形態と同等の部材等には、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図24及び
図25に示すように、第11実施形態のステント1Fは、第1ステント本体10と第2ステント本体20との間に被覆膜40を備えている。被覆膜40は、略筒状に形成され、ステント1Fの軸線方向LDに沿って延在している。被覆膜40としては、例えば、PTFE、ePTFE等の材料を用いることができる。被覆膜40の膜厚は、例えば、0.05~0.2mm程度である。
【0119】
第1ステント本体10と第2ステント本体20との間に被覆膜40を設けることにより、ストラット(
図3A~
図3C参照)の隙間からプラーク、血栓等が漏れ出して、遠位側の血管に血管梗塞が発生することを抑制することができる。被覆膜40は、第1ステント本体10と第2ステント本体20との間に限らず、第1ステント本体10の外側に設けてもよい。
【0120】
被覆膜40は、薬剤を含んでいてもよい。被覆膜40が薬剤を含むとは、薬剤が溶出し得るように、被覆膜40が薬剤を放出可能に担持していることをいう。薬剤は限定されないが、例えば、第1実施形態のステント1に薬剤を含ませる構成において例示した薬剤を用いることができる。また、被覆膜40は、血液の凝固抑制作用を有する抗血栓性の材料で構成してもよい。
【0121】
(第12実施形態)
次に、ステントに造影性の高い素線を巻き付ける実施形態について説明する。本実施形態では、造影性の高い素線を巻き付けるステントとして、第1実施形態のステント1(
図1参照)を例として説明するが、他の実施形態のステントに適用してもよい。
図26は、第1ステント本体10のストラット11に造影性の高い素線31(以下、「素線31」ともいう)を疎に巻き付けた例を示す模式図である。
図26に示す例において、素線31は、第1ステント本体10のすべてのストラット11に巻き付けてもよいし、一部のストラット11にのみ巻き付けてもよい。
【0122】
図27は、第1ステント本体10のストラット11に造影性の高い素線31を密に(コイル状に)巻き付けた例を示す模式図である。
図27に示す例において、素線31は、第1ステント本体10のすべてのストラット11に巻き付けてもよいし、一部のストラット11にのみ巻き付けてもよい。
【0123】
なお、
図26及び
図27に示す例において、素線31を第2ステント本体20のストラット21に同様の形態で巻き付けてもよい。また、素線31は、第1ステント本体10と第2ステント本体20の両方に巻き付けてもよいし、いずれか一方にのみ巻き付けてもよい。
【0124】
図28は、ステント1に造影性の高い素線31を第1の形態で巻き付けた例を示す模式図である。
図28に示すように、第1の形態において、素線31は、ステント1の内側に位置する第2ステント本体20に螺旋状に巻き付けられている。素線31の一方の端部31aは、第2ステント本体20の近位側LD1に接続されている。また、素線31の他方の端部31bは、第2ステント本体20の遠位側LD2に接続されている。素線31を第2ステント本体20に螺旋状に巻き付けることにより、X線透過の画像において、血管内で拡張したステント1の視認性を高めることができる。なお、素線31は、複数本巻き付けられていてもよい。素線31を複数本巻き付けた場合、血管内において、拡張させたステント1が部分的に開いていないところを確認することができる。
【0125】
素線31は、第2ステント本体20のストラット21(
図3B参照)に溶接等により接続されてもよい。また、素線31は、第2ステント本体20に限らず、ステント1の外側に位置する第1ステント本体10に接続されてもよいし、それぞれ異なるステント本体に接続されてもよい。例えば、素線31の一方の端部が第2ステント本体20の近位側LD1に接続され、他方の端部が第1ステント本体10の遠位側LD2に接続される構成であってもよい。
【0126】
図29は、ステント1に造影性の高い素線31を第2の形態で巻き付けた例を示す模式図である。
図29に示すように、第2の形態において、素線31は、第2ステント本体20の両端部を往復するように螺旋状に巻き付けられている。素線31の一方の端部は、第2ステント本体20の近位側LD1に接続されている。素線31は、ステント1の近位側LD1から遠位側LD2に向けて第2ステント本体20に螺旋状に巻き付けられている。素線31は、第2ステント本体20の遠位側LD2の端部で折り返され、ステント1の遠位側LD2から近位側LD1に向けて第2ステント本体20に螺旋状に巻き付けられている。素線31の他方の端部は、第2ステント本体20の近位側LD1に接続されている。
図29に示す第2の形態においても、上述した第1の形態と同様の効果を得ることができる。
【0127】
本形態においても、素線31は、第2ステント本体20のストラット21に溶接等により接続されてもよい。また、素線31は、第2ステント本体20に限らず、ステント1の外側に位置する第1ステント本体10に接続されてもよいし、それぞれ異なるステント本体に接続されてもよい。例えば、素線31の一方の端部が第2ステント本体20の近位側LD1に接続され、他方の端部が第1ステント本体10の遠位側LD2に接続される構成であってもよい。
【0128】
(第13実施形態)
次に、第13実施形態のステント1Gについて説明する。第13実施形態のステント1Gは、第1ステント本体及び第2ステント本体のセル形状が第1実施形態と相違する。第13実施形態のステント1Gにおいて、その他の構成は、第1実施形態と同じである。以下の説明及び図面において、第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、末尾(下2桁)に同一の符号を適宜に付して、重複する説明を適宜に省略する。
【0129】
図30は、第13実施形態のステント1Gの模式的な斜視図である。
図31Aは、第13実施形態の第1ステント本体610の一部を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図31Bは、第13実施形態の第2ステント本体620の一部を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図31Cは、第13実施形態のステント1Gの一部を仮想的に平面状に広げた展開図である。
【0130】
図30に示すように、第13実施形態のステント1Gは、第1ステント本体610と、第2ステント本体620と、を備えている。第1ステント本体610は、ステント1Gの外側に配置される略円筒形状の構造体である。第2ステント本体620は、第1ステント本体610の内側に配置される略円筒形状の構造体である。ステント1Gは、第1ステント本体610に第2ステント本体620が内挿された二重構造を有する。なお、
図30では、
図1に示すプッシャワイヤ2及び遠位端シャフト3の図示を省略している。
【0131】
第1ステント本体610は、
図31Aに示すように、枠形に配置されたストラット611からなる複数の外セル(第1セル)612が径方向(周方向)RDに敷き詰められている。第1ステント本体610において、径方向RDに敷き詰められた複数の外セル612は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第1ステント本体610は、複数の外セル612が径方向RDに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。外セル612には、空孔部分613が形成されている。また、径方向RDに隣接する外セル612同士は、交差部分614において接続されている。
【0132】
交差部分614は、隣接する4つの外セル612の各ストラット611が接続される部分である。交差部分614は、軸線方向LDに細長い略矩形状を有している。各ストラット611は、交差部分614の四隅にそれぞれ接続されている。各ストラット611は、交差部分614と接続される部分に曲線部615が形成されている。そのため、第1実施形態の交点部分14(外セル12)と比較すると、本実施形態の交差部分614(外セル612)において、ストラット611は、軸線方向LDに延びた形状となる。そのため、拡径したステント1Gを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、交差部分614に接続された各ストラット611を、それぞれ独立して変形させることができる。そのため、径方向RDに敷き詰められた外セル612をより柔軟に屈曲させることができる。このように、第1ステント本体610は、径方向RDに敷き詰められた外セル612をより柔軟に屈曲させることができるため、形状追従性及び縮径性に優れている。
【0133】
第2ステント本体620は、
図31Bに示すように、枠形に配置されたストラット621からなる複数の内セル(第2セル)622が径方向(周方向)RDに敷き詰められている。第2ステント本体620において、径方向RDに敷き詰められた複数の内セル622は、軸線方向LDに連続して配置されている。すなわち、第2ステント本体620は、複数の内セル622が径方向RDに敷き詰められ且つ軸線方向LDに連続するメッシュパターンを有する。内セル622には、空孔部分623が形成されている。また、径方向RDに隣接する内セル622同士は、交差部分624において接続されている。
【0134】
交差部分624は、隣接する4つの内セル622の各ストラット621が接続される部分である。交差部分624は、軸線方向LDに細長い略矩形状を有している。各ストラット621は、交差部分624の四隅にそれぞれ接続されている。各ストラット621は、交差部分624と接続される部分に曲線部625が形成されている。そのため、第1実施形態の交点部分24(内セル22)と比較すると、本実施形態の交差部分624(内セル622)において、ストラット621は、軸線方向LDに延びた形状となる。そのため、拡径したステント1Gを略U字形に屈曲させた場合に、交差部分624に接続された各ストラット621を、径方向RDにそれぞれ独立して変形させることができる。そのため、径方向RDに敷き詰められた内セル622をより柔軟に屈曲させることができる。このように、第2ステント本体620は、径方向RDに敷き詰められた内セル622をより柔軟に屈曲させることができるため、形状追従性及び縮径性に優れている。
【0135】
図31A及び
図31Bに示すように、第13実施形態のステント1Gにおいて、第1ステント本体610を構成する外セル612と、第2ステント本体620を構成する内セル622は、一例として、同じ大きさ、形状、配置となるように構成されている。すなわち、第13実施形態において、
図13Aに示す第1ステント本体610のメッシュパターンと、
図31Bに示す第2ステント本体620のメッシュパターンは、実質的に同じパターンとなる。なお、第1ステント本体610のメッシュパターンと、第2ステント本体620のメッシュパターンは、異なっていてもよい。
【0136】
図31Cに示すように、ステント1Gにおいて、第1ステント本体610と第2ステント本体620は、外セル612(第1ステント本体610)の空孔部分613に、内セル622(第2ステント本体620)の交差部分624が配置されるように重ねられている。具体的には、外セル612の空孔部分613に内セル622の交差部分624が配置されている構成において、1つの外セル612の空孔部分613に1つの内セル622の交差部分624が配置されるように重ねられている。各ステント本体のメッシュパターンを上記のように重ねることにより、ステント全体でメッシュパターンの密度が高くなるため、ステント1Gの表面積をより大きくすることができる。また、本実施形態のステント1Gは、外セル612の交差部分614が
図31Aに示すような構成を備え、内セル622の交差部分624が
図31Bに示すような構成を備えているため、形状追従性及び縮径性に優れている。また、ステント1Gにおいて、外セル612及び内セル622は、上記のような構成を備えるため、縮径したステント1Gをカテーテル内へ収納しやすいだけでなく、血管内で拡径したステント1Gをカテーテル内に再収納しやすいという効果を奏する。
【0137】
(第14実施形態)
次に、第14実施形態のステント1Hについて説明する。第14実施形態のステント1Hは、第1ステント本体及び第2ステント本体のセル形状が第4実施形態(
図12A、
図12B参照)と相違する。第14実施形態のステント1Hにおいて、その他の構成は、第4実施形態と同じである。そのため、第14実施形態では、ステント1Hの全体の図示を省略する。第14実施形態の説明及び図面において、第4実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。第14実施形態においては、セル同士が径方向(周方向)RDに対して斜めに接続される環方向を、環方向CD1、CD2として説明する。
【0138】
図32Aは、第14実施形態の第1ステント本体310を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図32Bは、第14実施形態の第2ステント本体320を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図32Cは、第14実施形態のステント1Hを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【0139】
第14実施形態の第1ステント本体310は、第1交差部分314の配置が第4実施形態と異なる。
図32Aに示すように、第14実施形態の第1ステント本体310は、環方向CD1において、第1交差部分314が1つおきに配置されている列C1と、第1交差部分314が各セル間に配置されている列C2とを備えている。そして、列C1とC2は、環方向CD2に交互に配置されている。第14実施形態の第1ステント本体310において、その他の構成は、第4実施形態と同じである。
【0140】
第14実施形態の第2ステント本体320は、第2交差部分324の配置が第4実施形態と異なる。
図32Bに示すように、第14実施形態の第2ステント本体320は、環方向CD1において、第2交差部分324が1つおきに配置されている列C3と、第2交差部分324が各セル間に配置されている列C4とを備えている。そして、列C3とC4は、環方向CD2に交互に配置されている。第14実施形態の第2ステント本体320において、その他の構成は、第4実施形態と同じである。
【0141】
第14実施形態のステント1Hにおいて、第1ステント本体310を構成する複数の外セル312と、第2ステント本体320を構成する複数の内セル322とは、一例として、同じ大きさ、形状、配置となるように構成されている。すなわち、第14実施形態において、
図32Aに示す第1ステント本体310のメッシュパターンと、
図32Bに示す第2ステント本体320のメッシュパターンとは、実質的に同じパターンとなる。なお、第1ステント本体310のメッシュパターンと、第2ステント本体320のメッシュパターンとは、異なっていてもよい。
【0142】
図32Cに示すように、第14実施形態のステント1Hにおいて、列C5には、環方向CD1において、第1ステント本体310の空孔部分313に、第2ステント本体320の第2交差部分324が配置されるセルと、第2交差部分324が存在していない部分が配置されるセルとが交互に配置されている。また、列C6には、環方向CD1において、第1ステント本体310の空孔部分313に、第2ステント本体320の第2交差部分324が配置されている。そして、第14実施形態のステント1Hは、環方向CD2において、列C5とC6が交互に配置されるように第1ステント本体310と第2ステント本体320とが重ねられている。
【0143】
第14実施形態のように、各ステント本体のセル形状を
図32A及び
図32Bのように構成した場合においても、各ステント本体のメッシュパターンを上記のように重ねることにより、ステント全体でメッシュパターンの密度が高くなるため、ステント1Hの表面積をより大きくすることができる。また、第14実施形態のステント1Hにおいても、第4実施形態のステント1Cと同様に、拡径したステント1Hを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、径方向RDに敷き詰められた外セル312及び内セル322をより柔軟に屈曲させることができるため、ステント1Hの形状追従性をより高めることができる。
【0144】
(第15実施形態)
次に、第15実施形態のステント1Jについて説明する。第15実施形態のステント1Jは、第1ステント本体及び第2ステント本体のセル形状が第4実施形態(
図12A、
図12B参照)と相違する。第15実施形態のステント1Jにおいて、その他の構成は、第4実施形態と同じである。そのため、第15実施形態では、ステント1Jの全体の図示を省略する。第15実施形態の説明及び図面において、第4実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。第15実施形態においては、セル同士が径方向(周方向)RDに対して斜めに接続される環方向を、環方向CD1、CD2として説明する。
【0145】
図33Aは、第15実施形態の第1ステント本体310を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図33Bは、第15実施形態の第2ステント本体320を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図33Cは、第15実施形態のステント1Jを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【0146】
第15実施形態の第1ステント本体310は、複数の外セル312の中に、ストラット311の構成が異なる外セル312J(後述)を備えている。
図33Aに示すように、第15実施形態の第1ステント本体310は、環方向CD1に配置された1組のストラット311a-311bのうち、ストラット311bが省略された外セル312(以下、「外セル312J」ともいう)を備えている。外セル312Jにおいて、ストラット311bの一方が接続されていない交差部分314と環方向CD1に延びるストラット311とが接続される部分には、凸部314pが形成されている。凸部314pは、遠位側LD2に突出しているため、血管内で拡径したステント1Hをカテーテル内に再収納する際に、凸部314pとカテーテルの端部との干渉を抑制することができる。なお、外セル312Jは、第1ステント本体310に規則的に配置されていてもよいし、不規則に配置されていてもよい。第15実施形態の第1ステント本体310において、その他の構成は、第4実施形態と同じである。
【0147】
第15実施形態の第2ステント本体320は、複数の内セル322の中に、ストラット321の構成が異なる内セル322J(後述)を備えている。
図33Bに示すように、第15実施形態の第2ステント本体320は、環方向CD1に配置された1組のストラット321a-321bのうち、ストラット321bが省略された内セル322(以下、「内セル322J」ともいう)を備えている。内セル322Jにおいて、ストラット321bの一方が接続されていない交差部分324と環方向CD1に延びるストラット321とが接続される部分には、凸部324pが形成されている。凸部324pは、遠位側LD2に突出しているため、血管内で拡径したステント1Hをカテーテル内に再収納する際に、凸部324pとカテーテルの端部との干渉を抑制することができる。なお、内セル322Jは、規則的に配置されていてもよいし、不規則に配置されていてもよい。第15実施形態の第2ステント本体320において、その他の構成は、第4実施形態と同じである。
【0148】
第15実施形態のステント1Jにおいて、第1ステント本体310を構成する複数の外セル312(312Jを含む)と、第2ステント本体320を構成する複数の内セル322(322Jを含む)とは、一例として、同じ大きさ、形状、配置となるように構成されている。すなわち、第15実施形態において、
図33Aに示す第1ステント本体310のメッシュパターンと、
図33Bに示す第2ステント本体320のメッシュパターンとは、実質的に同じパターンとなる。なお、第1ステント本体310のメッシュパターンと、第2ステント本体320のメッシュパターンとは、異なっていてもよい。
【0149】
図33Cに示すように、第15実施形態のステント1Jにおいて、第1ステント本体310と第2ステント本体320は、外セル312(第1ステント本体310)の空孔部分313に、内セル322(第2ステント本体320)の第2交差部分324が配置されるように重ねられている。具体的には、外セル312(312J)の空孔部分313に内セル322の第2交差部分324が配置されている構成において、1つの外セル312(312J)の空孔部分313に1つの内セル322の第2交差部分324が配置されるように重ねられている。
【0150】
第15実施形態のように、各ステント本体のセル形状を
図33A及び
図33Bのように構成した場合においても、各ステント本体のメッシュパターンを上記のように重ねることにより、ステント全体でメッシュパターンの密度が高くなるため、ステント1Jの表面積をより大きくすることができる。また、第15実施形態のステント1Jにおいても、第4実施形態のステント1Cと同様に、拡径したステント1Jを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、径方向RDに敷き詰められた外セル312(312J)及び内セル322(322J)をより柔軟に屈曲させることができるため、ステント1Jの形状追従性をより高めることができる。
【0151】
第15実施形態のステント1Jにおいて、第1ステント本体310の凸部314pと、第2ステント本体320の凸部324pとは、いずれも遠位側LD2に突出している。そのため、血管内で拡径したステント1Jをカテーテル内に再収納する際に、凸部314P及び324pとカテーテルの端部との干渉を抑制することができる。したがって、第15実施形態のステント1Jによれば、血管内で拡径したステント1Jのカテーテル内への再収納を円滑に行うことができる。
【0152】
(第16実施形態)
次に、第16実施形態のステント1Kについて説明する。第16実施形態のステント1Kは、第1ステント本体及び第2ステント本体のセル形状が第4実施形態(
図12A、
図12B参照)と相違する。第16実施形態のステント1Kにおいて、その他の構成は、第4実施形態と同じである。そのため、第16実施形態では、ステント1Kの全体の図示を省略する。第16実施形態の説明及び図面において、第4実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。第16実施形態においては、セル同士が径方向(周方向)RDに対して斜めに接続される環方向を、環方向CD1、CD2として説明する。また、第16実施形態において「セル」とは、ストラット311が枠形に配置された形態に限らず、ストラット311が枠形に配置されていない形態(例えば、後述の外セル312K、内セル322K)を含むものとする。
【0153】
図34Aは、第16実施形態の第1ステント本体310を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図34Bは、第16実施形態の第2ステント本体320を仮想的に平面状に広げた展開図である。
図34Cは、第16実施形態のステント1Kを仮想的に平面状に広げた展開図である。
【0154】
第16実施形態の第1ステント本体310は、複数の外セル312の中に、大きさの異なる外セル312K(後述)を備えている。
図34Aに示すように、第16実施形態の第1ステント本体310は、環方向CD2に隣接する2つの外セル312において、共通のストラット311が省略された外セル312(以下、「外セル312K」ともいう)を備えている。外セル312Kの空孔部分313Kは、他の外セル312の空孔部分313の2倍の大きさを有している。なお、外セル312Kは、第1ステント本体310に規則的に配置されていてもよいし、不規則に配置されていてもよい。第16実施形態の第1ステント本体310において、その他の構成は、第4実施形態と同じである。
【0155】
第16実施形態の第2ステント本体320は、複数の内セル322の中に、大きさの異なる内セル322K(後述)を備えている。
図34Bに示すように、第16実施形態の第2ステント本体320は、環方向CD2に隣接する2つの内セル322において、共通のストラット321が省略された内セル322(以下、「内セル322K」ともいう)を備えている。内セル322Kの空孔部分323Kは、他の内セル322の空孔部分323の2倍の大きさを有している。なお、内セル322Kは、第2ステント本体320に規則的に配置されていてもよいし、不規則に配置されていてもよい。第16実施形態の第2ステント本体320において、その他の構成は、第4実施形態と同じである。
【0156】
図34Cに示すように、第16実施形態のステント1Kにおいて、第1ステント本体310と第2ステント本体320は、外セル312(第1ステント本体310)の空孔部分313に、内セル322(第2ステント本体320)の第2交差部分324が配置されるように重ねられている。具体的には、外セル312の空孔部分313に内セル322の第2交差部分324が配置されている構成において、1つの外セル312の空孔部分313に1つの内セル322の第2交差部分324が配置されるように重ねられている。また、第1ステント本体310と第2ステント本体320とを上記のように重ねることにより、ステント1Kは、外セル312Kの空孔部分313Kに、内セル322の第2交差部分324が2つ配置された形態となる。
【0157】
第16実施形態のように、各ステント本体のセル形状を
図34A及び
図34Bのように構成した場合においても、各ステント本体のメッシュパターンを上記のように重ねることにより、ステント全体でメッシュパターンの密度が高くなるため、ステント1Kの表面積をより大きくすることができる。また、第16実施形態のステント1Kにおいても、第4実施形態のステント1Cと同様に、拡径したステント1Kを略U字形(
図7参照)に屈曲させた場合に、径方向RDに敷き詰められた外セル312(312K)及び内セル322(322K)をより柔軟に屈曲させることができるため、ステント1Kの形状追従性をより高めることができる。
【0158】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び種々の変形や変更を加えた構成は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0159】
第1実施形態のステント1は、第1ステント本体10と第2ステント本体20とからなる二層構造を有するが、これに限定されない。第1ステント本体10の外側、及び/又は、第2ステント本体20の内側に、更に別のステント本体が設けられていてもよい。他の実施形態のステントについても同様である。
【0160】
第1実施形態のステント1において、第1ステント本体10及び/又は第2ステント本体20の表面に、薬剤、炭素系素材被膜、をコーティングしてもよいし、造影性の高い金属やポリマーをコーティングしてもよい。薬剤としては、例えば、薬剤溶解ステント(DES)と同じ用途に用いられる薬剤が挙げられる。炭素系素材被膜としては、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)のような抗血栓性不活性化被膜が挙げられる。他の実施形態のステントについても同様である。
【0161】
第7~第9実施形態において、第1ステント本体の接続部及び第2ステント本体の接続部を、プッシャワイヤ2に対して、それぞれ1箇所形成してもよいし、3箇所以上形成してもよい。
第14~第16実施形態において、ステント本体から省略する交差部分やストラットの位置は、図示の例に限定されない。血管内で拡径したステントをカテーテル内へ再収納することができれば、ステント本体から省略する交差部分やストラットの位置は、適宜に選択することができる。
【符号の説明】
【0162】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1J、1K ステント
2 プッシャワイヤ
3 遠位端シャフト
10、110、210、310、410、510、610 第1ステント本体
20、120、220、320、420、520、620 第2ステント本体
12、112、212、312(312J、312K)、412、512、612 外セル
22、122、222、322(322J、322K)、422、522、622 内セル
11、111、211(211a、211b)、311(311a、311b)、411(411a、411b)、511(511a、511b)、611 ストラット(外セル)
21、121、221(221a、221b)、321(321a、321b)、421(421a、421b)、521(521a、521b)、621 ストラット(内セル)
13、113、213、313(313K)、413、513、613 空孔部分(外セル)
23、123、223、323(323K)、423、523、623 空孔部分(内セル)
14、114 交点部分(外セル)
24、124 交点部分(内セル)
214、314、614 交差部分(外セル)
224、324、624 交差部分(内セル)
314、414、514 第1交差部分(外セル)
324、424、524 第2交差部分(内セル)
314p、324p 凸部
30 金属線
31 造影性の高い素線
40 被覆膜