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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ろ過膜モジュール及びろ過処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/00 20060101AFI20221003BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20221003BHJP
   B01D 65/00 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
B01D35/00
B01D63/08
B01D65/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019525685
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2018023641
(87)【国際公開番号】W WO2018235901
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/022919
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595111804
【氏名又は名称】エム・テクニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】榎村 眞一
(72)【発明者】
【氏名】吉住 真衣
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特許第6129389(JP,B1)
【文献】特開昭48-096460(JP,A)
【文献】特開2000-015012(JP,A)
【文献】特開2015-066495(JP,A)
【文献】特開2003-183019(JP,A)
【文献】特開2017-064689(JP,A)
【文献】特開昭53-142383(JP,A)
【文献】実開昭52-133238(JP,U)
【文献】実開昭52-049353(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 35/00
B01D 63/08
B01D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状のろ過面によって規定される管状流路を少なくとも1つ備えた膜エレメントと、
前記膜エレメントの外側に配置された筒状のハウジングとを備え、
前記管状流路内に加圧された処理流体を通過させる一方、前記膜エレメントと前記ハウジングの内周面との間の外環状流路内に逆洗時には、洗浄用流体を前記膜エレメントの外周面から前記管状流路へ前記膜エレメント内を通過させるよう構成された内圧クロスフローろ過処理を行う内圧式のろ過膜モジュールにおいて、
前記外環状流路内に配置された逆洗用流れ調整器を備え、
前記逆洗用流れ調整器は、前記外環状流路内を通過中の前記洗浄用流体の流れを、自らが駆動することなく変化させるものであり、
前記外環状流路内を通過中の前記洗浄用流体の流れを前記逆洗用流れ調整器にて変化させることにより、前記洗浄用流体のうち前記外環状流路内の前記膜エレメントの前記外周面に沿う領域における流速を、前記逆洗用流れ調整器を配置しない場合における前記外周面に沿う領域における流速に比べて、増大させる壁面流体加速機能が発揮されるように構成されたことを特徴とするろ過膜モジュール。
【請求項2】
前記逆洗用流れ調整器は、前記外環状流路内に敷設されたスパイラル状フィンであることを特徴とする請求項記載のろ過膜モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記ろ過膜モジュールを用いて、前記処理流体の濃縮、精製、溶媒置換、pH調整、導電率調整、微粒子洗浄、微粒子表面処理、分級のうち少なくとも1以上を目的とした前記処理流体のクロスフローろ過処理を行うことを特徴とするろ過処理方法。
【請求項4】
過膜モジュールを用いて、粒子径の異なる複数の粒子を含む処理流体をろ過処理する方法であって、
前記ろ過膜モジュールは、一次側流路に処理流体を加圧送液し、クロスフローにてろ過処理を行う中空筒状のろ過面を備えたろ過膜モジュールであって、
前記一次側流路は前記中空筒状のろ過面の外側であり、
前記ろ過膜モジュールの一次側流路内を通過中の前記処理流体の流れを、自らが駆動することなく変化させるとともに、
前記一次側流路内のろ過面に沿って流動する前記処理流体に遠心分離機能が発揮されるように構成された流れ調整器を、前記ろ過膜モジュールの一次側流路内に配置したものであり、
前記ろ過膜モジュールは、中空筒状のろ過面によって規定される管状流路を少なくとも1つ備えた膜エレメントと、前記膜エレメントの外側に配置された筒状のハウジングとを備え、
前記一次側流路が前記膜エレメントと前記ハウジングの内周面との間の外環状流路から構成され、
二次側流路が前記管状流路から構成されることにより、外圧クロスフローのろ過処理を行う外圧式ろ過膜モジュールであり、
前記流れ調整器は、前記外環状流路内に敷設されたスパイラル状フィンであり、前記外環状流路内を通過中の前記処理流体の流れをスパイラル状となるように導き、前記外環状流路内を通過中の前記処理流体に遠心力が作用するように構成されたものであり、
前記処理流体を前記外環状流路内に通過させる際、前記粒子のうち粒子径の小さな粒子に対する遠心力よりも粒子径の大きな粒子に対する遠心力の方が大きくなり、粒子径の大きな粒子が前記ハウジング側へ移動することにより前記膜エレメントから離れるため、前記粒子径の小さな粒子の前記膜エレメントの通過が阻害されにくくなるようにした処理を含み、
前記処理流体の濃縮、精製、溶媒置換、pH調整、導電率調整、微粒子洗浄、微粒子表面処理、分級のうち少なくとも1以上を目的とした前記処理流体のクロスフローろ過処理を行うことを特徴とするろ過処理方法。
【請求項5】
ろ過膜モジュールを用いて、粒子径の異なる複数の粒子を含む処理流体をろ過処理する方法であって、
前記ろ過膜モジュールは、一次側流路に処理流体を加圧送液し、クロスフローにてろ過処理を行うろ過面を備えたろ過膜モジュールであって、
前記ろ過膜モジュールは、管状流路を少なくとも1つ備えた膜エレメントと、前記膜エレメントの外側に配置された筒状のハウジングとを備え、
前記膜エレメントの外周面を前記ろ過面とし、
前記一次側流路が前記膜エレメントと前記ハウジングの内周面との間の外環状流路から構成され、
二次側流路が前記管状流路から構成されることにより、外圧クロスフローのろ過処理を行う外圧式ろ過膜モジュールであり、
前記ろ過膜モジュールの一次側流路内を通過中の前記処理流体の流れを、自らが駆動することなく変化させるとともに、
前記一次側流路内のろ過面に沿って流動する前記処理流体に遠心分離機能が発揮されるように構成された流れ調整器を、前記ろ過膜モジュールの一次側流路内に配置し、
前記流れ調整器は、前記外環状流路内に敷設されたスパイラル状フィンであり、前記外環状流路内を通過中の前記処理流体の流れをスパイラル状となるように導き、前記外環状流路内を通過中の前記処理流体に遠心力が作用するように構成されたものであり、
前記処理流体を前記外環状流路内に通過させる際、前記粒子のうち粒子径の小さな粒子に対する遠心力よりも粒子径の大きな粒子に対する遠心力の方が大きくなり、粒子径の大きな粒子が前記ハウジング側へ移動することにより前記膜エレメントから離れるため、前記粒子径の小さな粒子の前記膜エレメントの通過が阻害されにくくなるようにした処理を含み、
前記処理流体の濃縮、精製、溶媒置換、pH調整、導電率調整、微粒子洗浄、微粒子表面処理、分級のうち少なくとも1以上を目的とした前記処理流体のクロスフローろ過処理を行うことを特徴とするろ過処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過膜モジュールとろ過処理方法に関するものであり、セラミックスフィルターを用いたクロスフローろ過処理方法に特に適するろ過膜モジュール及びろ過処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミックフィルターはセラミック製の膜をフィルターとして用いた精密ろ過装置であり、数μmの細孔径を有したMF膜(Micro filtration)からUF膜(Ultra filtration)、NF膜(Nano filtration)などのろ過膜を、被処理物の物性や目的に合わせて種類やメッシュサイズを選択してろ過処理に使用される(特許文献1~6)。
【0003】
ろ過処理の目的には被処理物の分離、濃縮、精製、溶媒置換、pH調整、導電率調整、微粒子洗浄、微粒子表面処理、分級などがあるが、廃液をろ過することにより廃棄物の削減や環境保護にも役立っている。
一般的にろ過処理は、全量ろ過方式とクロスフローろ過方式の2種類に大別されるが、通常、セラミックフィルターはクロスフロー形式で運転される。
【0004】
クロスフローろ過方式は膜面に対し略平行な流れを作ることで、ろ過膜面を常に洗い流すことができものであり、処理流体中の懸濁物質やコロイドなどの付着物質がろ過膜面に堆積し目詰まりを抑制しながらろ過を行うものである。
このように、クロスフローろ過方式は、目詰りを抑制しながらろ過を行う方式であるため、一般に膜面流速(処理流体の流れのうち、ろ過膜の膜面に沿う領域の流速)が高いほど膜面への付着物質の堆積が抑制されることが知られている。すなわちろ過膜上の処理流体の流量や流速がろ過特性と付着物の洗い流しに大きく影響することが知られている。
【0005】
しかしながら、膜面流速を高めれば高めるほど、循環経路の耐圧強度を高める必要があると共に高出力のポンプ設備が必要になるなど設備費用が増加することはもちろん、運転に必要な消費エネルギーやランニングコストが増加してしまう。そのため、必要とされる処理量や洗浄効果との関係から、経済的な膜面流速を設計してろ過処理が行われているのが現状である。
【0006】
より具体的には、セラミックフィルターは全体が略円筒状の形状をしており、円筒状内に数個の管状流路が貫通している形態を備え、この管状流路の一端側から他端側へ、加圧された処理流体を流通させることでろ過が行われる。管状流路の内径は数mm~数cm程度であるが、通常この内径に対して処理流体の流速を計算し、ろ過を実施するものである。
【0007】
ところが、前述のように、管状流路を流れる流体は、その中心側ほど流速が早く、ろ過面のある外側ほど流速(膜面流速)が遅い。したがって、管状流路内の流体の平均流速を単に増やしても、膜面流速を効率的に高めることが出来ず、エネルギーの有効利用につながらない。
また微細粒子を含むスラリーの場合、微細粒子は凝集体を形成しているので凝集体の内部に包含されている洗浄目的物を洗うことは難しい。
【0008】
次に、クロスフローろ過方式は目詰りを抑制しながらろ過を行う方式であるものの、ある程度使用すると細孔に付着物が堆積するなどして目詰まりが発生する。そのため洗浄用流体をセラミックフィルターの外側から内側の管状流路に通液する逆洗を実施することで、目詰まりを解消する。逆洗する洗浄用流体は有機溶媒、各種洗浄液もしくは純水などであるが、この場合も長い時間や多量の洗浄用流体が必要になるため、洗浄用流体の少量化と洗浄の効率アップも望まれていた。
【0009】
クロスフローろ過方式を採用すると共に固形成分を連続的に長時間に渡って効率よく除去することができる回転濾板式濾過機の提案が特許文献7に示すようになされている。この特許文献7に記載の濾過機は、回転軸に固定された一対の円板状のチャンバー板と、濾過室に配置され且つ一対の濾板の濾過面に堆積するケーキ層を掻き取るようにハウジングに固定されたスクレーパを備えたものであり、このような動的な除去手段を、一次側に処理流体を加圧送液しクロスフローにてろ過処理を行う中空筒状のろ過膜を備えたろ過膜モジュールに適用することは困難であった。
特許文献8及び9には、一次側に処理流体を加圧送液しクロスフローにてろ過処理を行う中空筒状のろ過面を備えたろ過膜モジュールにおいて、前記一次側流路内に配置された流れ調整器を備え、前記流れ調整器は、前記一次側流路内を通過中の前記処理流体の流れを、自らが駆動することなく変化させるものであり前記一次側流路内を通過中の前記処理流体の流れに前記一次側流路の周方向成分を与えるように構成されたことを特徴とするろ過膜モジュールに係る発明が開示されている。
ところが、特許文献8では、例えば回転素子と称される板体を螺旋状にねじり加工したものがモジュール内に設置されるが、乱流を発生する効果については記載されるものの、処理流体に対して遠心分離効果を付与するものではない。また、特許文献9では、「乱流誘起体」と称される螺旋形状の部材が支持パイプによって保持され、流入液に乱流を強制的かつ自動的に付与することが記載されている。しかしながら、支持パイプで保持された「乱流誘起体」が流入液に対して遠心分離効果を付与することは記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-057355号公報
【文献】国際公開第99/056851号パンフレット
【文献】特開2006-263517号公報
【文献】特開2006-263640号公報
【文献】国際公開第13/147272号パンフレット
【文献】特開2014-184362号公報
【文献】特開2011-016037号公報
【文献】実開昭52-133238号公報
【文献】実開昭52-49353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ろ過処理の処理条件(ろ過膜モジュール内の一次側流路及び膜エレメントとハウジングの内周面との間の外環状流路内の流路径、その流路長、流速、流体圧力、流体の密度、粘度などのろ過処理の諸条件)を同一に設定した場合において、従来のろ過装置及びろ過方法に比べて、遠心分離効果や膜面流速(処理流体の流れのうち、ろ過膜の膜面に沿う領域の流速)を高めることができ、膜面への付着物質の堆積を抑制しつつ濾過効率を向上させることができるろ過膜モジュール及びろ過処理方法を提供することを課題とする。
【0012】
また本発明は、ろ過処理に必要な消費エネルギーを低減することができるろ過膜モジュール及びろ過処理方法を提供することを課題とする。
本発明は、逆洗時の処理の条件を同一に設定した場合において、従来のろ過装置及びろ過方法に比べて、膜エレメントの外周面における遠心分離効果や膜面流速(処理流体の流れのうち、膜エレメントの外周面に沿う領域の流速)を高めることができ、逆洗処理の効率を向上させることができるろ過膜モジュール及びろ過処理方法を提供することを課題とする。
【0013】
また本発明は、逆洗処理に必要な消費エネルギーを低減することができるろ過膜モジュール及びろ過処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、一次側流路に処理流体を加圧送液し、クロスフローにてろ過処理を行う筒状のろ過面を備えたろ過膜モジュールにおいて、前記一次側流路は前記中空円筒状のろ過面の外側であり、前記一次側流路内を通過中の前記処理流体の流れを、自らが駆動することなく変化させるとともに、前記一次側流路内のろ過面に沿って流動する前記処理流体に遠心分離機能が発揮されるように構成された流れ調整器を、前記ろ過膜モジュールの一次側流路内に配置したものである。
【0015】
本発明はクロスフローろ過処理に適するろ過膜モジュールとして実施することができる。すなわち、中空筒状のろ過面によって規定される管状流路を少なくとも1つ備えた膜エレメントと、前記膜エレメントの外側に配置された筒状のハウジングとを備え、前記一次側流路が前記膜エレメントと前記ハウジングの内周面との間の外環状流路から構成され、二次側流路が前記管状流路から構成されることにより、クロスフローろ過処理を行うろ過膜モジュールに適用することができる。その際、前記流れ調整器は、前記管状流路内に敷設されたスパイラル状フィンであり、前記流れ調整器は、前記一次側流路内のろ過面に沿う領域で、処理流体に遠心分離機能が発揮されるように構成される。
【0016】
本発明は、外圧クロスフローろ過処理に適するろ過膜モジュールとして実施することができる。すなわち、中空筒状のろ過面によって規定される管状流路を少なくとも1つ備えた膜エレメントと、前記膜エレメントの外側に配置された筒状のハウジングとを備え、前記一次側流路が前記膜エレメントと前記ハウジングの内周面との間の外環状流路から構成され、前記二次側流路が前記管状流路から構成されることにより、外圧クロスフローのろ過処理を行う外圧式ろ過膜モジュールに適用することができる。その際、前記流れ調整器は、前記外環状流路内に敷設されたスパイラル状フィンであり、前記外環状流路内を通過中の前記処理流体の流れをスパイラル状となるように導き、前記外環状流路内を通過中の前記処理流体に遠心力が作用するように構成される。
前記スパイラル状フィンは、パイプや丸棒をコイル状に形成したものであっても構わないし、帯状平板をスクリュー(オーガー)状に形成したものであっても構わない。
【0017】
本発明を、内圧クロスフローろ過処理を行う内圧式のろ過膜モジュールに適用する場合において、前記外環状流路内に配置された逆洗用流れ調整器を備えたものとして実施することもできる。前記逆洗用流れ調整器は、前記外環状流路内を通過中の前記洗浄用流体の流れを、自らが駆動することなく変化させるものであり、
前記外環状流路内を通過中の前記洗浄用流体の流れを前記逆洗用流れ調整器にて変化させることにより、前記洗浄用流体のうち前記外環状流路内の前記膜エレメントの前記外周面に沿う領域における流速を、前記逆洗用流れ調整器を配置しない場合における前記外周面に沿う領域における流速に比べて、増大させる壁面流体加速機能が発揮されるように構成されることができる。
前記逆洗用流れ調整器は、前記外環状流路内に敷設されたスパイラル状フィンとして実施することができる。前記逆洗用流れ調整器の前記スパイラル状フィンは、パイプや丸棒をコイル状に形成したものであっても構わないし、帯状平板をスクリュー(オーガー)状に形成したものであっても構わない。
【0018】
また本発明は、上記のいずれかのろ過膜モジュールを用いて、前記処理流体の濃縮、精製、溶媒置換、pH調整、導電率調整、微粒子洗浄、微粒子表面処理、分級のうち少なくとも1以上を目的とした前記処理流体のクロスフローろ過処理を行うことを特徴とするろ過処理方法を提供する。
【0019】
外圧クロスフローのろ過処理に適するろ過膜モジュールを用いる場合、粒子径の異なる複数の粒子を含む前記処理流体をろ過処理する方法として実施することが有利である。本発明を、外圧クロスフローのろ過処理に適用した場合、前記処理流体を前記外環状流路内に通過させる際、乱流状ではなく、処理流体が一次側流路の軸方向に回転しながら流れるため、前記粒子のうち粒子径の小さな粒子に対する遠心力よりも粒子径の大きな粒子に対する遠心力の方が大きくなり、粒子径の大きな粒子が前記ハウジング側へ移動することにより前記膜エレメントから離れるため、前記粒子径の小さな前記粒子の前記膜エレメントの通過が阻害されにくくなるようにした処理が実行される。これによって、前記処理流体の濃縮、精製、溶媒置換、pH調整、導電率調整、微粒子洗浄、微粒子表面処理、分級のうち少なくとも1以上を目的とした前記処理流体のクロスフローろ過処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、従来のろ過装置及びろ過方法に比べて、膜面流速を高めることができ、膜面への付着物質の堆積を抑制しつつ濾過効率を向上させることができるろ過膜モジュール及びろ過処理方法を提供することができたものである。
また本発明は、ろ過処理に必要な消費エネルギーを低減することができるろ過膜モジュール及びろ過処理方法を提供することができたものである。
【0021】
本発明は、従来のろ過装置及びろ過方法に比べて、膜エレメントのろ過面における膜面流速を高めることができ、逆洗処理の効率を向上させることができるろ過膜モジュール及びろ過処理方法を提供することができたものである。
また本発明は、逆洗処理に必要な消費エネルギーを低減することができるろ過膜モジュール及びろ過処理方法を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1~第3の実施の形態に係るろ過膜モジュールが適用されるろ過装置の回路図である。
図2】(A)は本発明の第1~第3の実施の形態が適用されるろ過膜モジュールの要部断面説明図である。(B)は内圧クロスフローろ過の場合のろ過膜モジュールの構成要素の関係を示す要部断面図で、(C)は外圧クロスフローろ過の場合のろ過膜モジュールの構成要素の関係を示す要部断面図である。
図3】(A)は本発明の第2の実施の形態に係るろ過膜モジュールの要部断面説明図であり、(B)は本発明の他の実施の形態に係るろ過膜モジュールの要部断面説明図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係るろ過膜モジュールの要部断面説明図である。
図5】本発明の第3の実施の形態に係るろ過膜モジュールの要部断面説明図である。
図6】本発明の第4の実施の形態に係るろ過膜モジュールが適用されるろ過装置の回路図である。
図7】(A)は本発明の第4の実施の形態に係るろ過膜モジュールの要部断面説明図であり、(B)は同実施の形態に係るろ過膜モジュールの変更例を示す要部断面説明図である。
図8】(A)(B)(C)(D)はそれぞれ同実施の形態に係るろ過膜モジュールのスパイラルフィンの変更例を示す要部断面図である。
図9】同実施の形態に係るろ過膜モジュールの膜エレメントの変更例を示す斜視図である。
図10】PLGA粒子の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(内圧クロスフローろ過処理)
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
クロスフローろ過処理は、内圧クロスフローろ過処理と外圧クロスフローろ過処理とに大別される。内圧クロスフローろ過処理は、内部に管状の流路を一次側流路として備えた膜エレメントに加圧された処理流体を通して、ろ過処理によって生じたろ過液を外側の二次側流路へ通過させる処理方式である。他方、外圧クロスフローろ過処理は、膜エレメントの内部の管状の流路を二次側流路として用いるものであり、膜エレメントの外側を一次側流路として、この外側の一次側流路に処理流体を通して、ろ過処理によって生じたろ過液を膜エレメントの内側の二次側流路へ通過させる処理方式である。膜エレメントはろ過面を構成するろ過膜及びろ過膜を支持する支持体19を備え、ろ過膜は通常膜エレメントと一次側流路が接する面に設けられる。支持体19はろ過膜による処理を阻害しないものが用いられる。より具体的に言うと、内圧クロスフローろ過処理の場合は、図2(B)で示すように、ろ過膜が膜エレメントの内部の管状の流路の内壁面に沿って設けられ、外圧クロスフローろ過処理の場合は、図2(C)で示すように、膜エレメントの外周面に沿って設けられる。
【0024】
本発明は両ろ過処理に適用することができるが、図1乃至図5を参照して内圧クロスフローろ過処理に適するろ過装置についての3つの実施の形態(第1乃至第3の実施の形態)を示し、図6以降を参照して外圧クロスフローろ過処理に適するろ過装置についての実施の形態を示す。
【0025】
(ろ過装置の概要)
まず図1を主に参照して、内圧クロスフローろ過処理に適するろ過装置の概要を説明する。図1に示す回路図は、微粒子分散液などの各種の処理流体に対してろ過処理用を行う装置の基本構成の一例を示すものであり、ろ過膜モジュール11を複数用いたり、攪拌装置を用いたりするなど、種々の変更を加えて実施することができる。このろ過装置は、ハウジング12と膜エレメント13を備えたろ過膜モジュール11と、ろ過膜モジュール11の一次側導入口51に対して送液ポンプ56を介して接続された処理液タンク55を備え、処理液タンク55の内部の処理流体が、送液ポンプ56によってろ過膜モジュール11内に圧送される。圧送された処理流体は、膜エレメント13内の一次側流路14(図2(A)参照)を通過し、一次側排出口52から戻しバルブ61を経て処理液タンク55に戻される。処理液タンク55に対しては、液供給源57から処理流体などが必要に応じて供給される。液供給源57から供給される液は、処理流体の他、洗浄液であったり、希釈液であったりしても構わないし、複数の供給源から異なる経路を通じて処理液タンク55に供給されるものであっても構わない。液供給源57からの液の供給の有無及び液の種類や量はろ過の目的などに応じて変更して実施することができる。
【0026】
圧送された処理流体が膜エレメント13内の一次側流路14を通過することによって、クロスフローろ過処理がなされる。このろ過処理は、1パスであっても構わないが、ろ過膜モジュール11と処理液タンク55を結ぶ循環経路によって繰り返し行われるものであっても構わない。ろ過処理によって生じたろ過液は、膜エレメント13の外側に排出され、ハウジング12に設けられた二次側排出口54から濾過液バルブ62を介して濾過液排出先59へ排出される。
ろ過処理が完了した処理流体は、循環経路の適宜箇所に設けられた経路から処理物排出先58に排出される。
【0027】
以上が通常のろ過処理時に用いられる回路および流体の流れであるが、膜エレメント13を洗浄する場合には、洗浄液供給源60からの洗浄用流体(有機溶媒、洗浄液や純水など)が、ハウジング12に設けられた二次側導入口53へ、洗浄液バルブ63を介して圧送される。ハウジング12内に導入された洗浄用流体は、膜エレメント13の外周面から内部の一次側流路14へ導入されて、一次側導入口51及び一次側排出口52から処理液タンク55などへ排出される。また、図示はしないが洗浄液は循環しても構わない。
【0028】
(ろ過膜モジュール11の概要)
次に、主として図2を参照して、ろ過膜モジュール11の概要について説明する。ろ過膜モジュール11は、膜エレメント13と、膜エレメント13の外側に配置された筒状のハウジング12とを備えている。膜エレメント13は、中空筒状のろ過面15によって規定される管状流路である一次側流路14を少なくとも1つ(図2では4つ)備える。膜エレメント13の両端は、前述の一次側導入口51と一次側排出口52にそれぞれ繋がっており、一次側導入口51と一次側排出口52を介して外部の回路と接続され、一次側導入口51から加圧された処理流体が一次側流路14内に導入されて、クロスフローろ過処理後の処理流体が、一次側排出口52から排出される。
【0029】
ろ過面15を構成するろ過膜には、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等のセラミック系材料が主に用いられるが、ステンレス製やガラス製の膜や、ポリエチレン、4フッ化エチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等の有機膜であっても構わない。これらは、MF膜(Micro filtration)、UF膜(Ultra filtration)、NF膜(Nano filtration)など、被処理物の物性やろ過処理の目的に合わせて種類やサイズを選択してろ過処理に使用される。なお、セラミックフィルターはセラミック製であることから耐蝕性、耐熱性、耐圧性、耐背圧性、耐久性、洗浄性など利点が多いため特に有利である。
【0030】
ろ過面15の濾過膜を支持する支持体19は多孔質のセラミック系材料が一般的であるがステンレス製や多孔質の樹脂製チューブであっても構わない。
ハウジング12は、中空の筒状体で金属や合成樹脂などの液密性と耐圧性を備えた素材で構成されている。ハウジング12の内壁と膜エレメント13の外壁の間の空間が外環状流路である二次側流路16を構成するものである。図示は省略するが、ハウジング12と膜エレメント13との両端は支持部材によって支持されており、ハウジング12に設けられた二次側導入口53や二次側排出口54などの他の構成部材を含めて一つのろ過膜モジュール11が構成されている。
なお、図2(B)は内圧クロスフローろ過処理における、ろ過膜モジュール11、ハウジング12、膜エレメント13、一次側流路14、ろ過面(ろ過膜)15、二次側流路16及び支持体19の関係を図示したもので、図2(C)は外圧クロスフロー処理における各要素の関係を図示したものである。
【0031】
本発明においては、一次側流路14の内部に図3図4に示す流れ調整器17が配置される。また外環状流路である二次側流路16の内部に図5に示す逆洗用流れ調整器18が配置される。流れ調整器17と逆洗用流れ調整器18とは併用しても構わないし、一方のみを配置して実施しても構わない。
【0032】
(第1の実施の形態:図4参照)
この実施の形態に係る流れ調整器17は、スタティックミキサー21として実施されている。スタティックミキサー21は、矩形のブレードを180度ねじった形態の複数のエレメント22を一次側流路14の軸方向に配列したものであり、エレメント22は、ねじれの方向の異なる右エレメントと左エレメントとが交互に配列されているのが一般的であるが、流れ調整器17として適用する場合には、その流体の分割作用や反転作用による攪拌混合、分散作用も有効であるが、エレメント22による流体の転換作用が重要である。即ち、処理流体は、エレメント22のねじれ面の流線形状面に沿って流れの方向が変化する際に、処理流体には軸方向に回転する流れが生じる。これにより処理流体のうち管状の一次側流路14の中心部を流れている流体は内周面へ移動し、この移動した流体によって押されるようにして内周面を流れている流体は中心部へ移動する。その結果、エレメント22によって仕切られた断面半円形の流路内で流体が回転する流れとなり、一次側流路14内のろ過面15に沿う領域の流速を、スタティックミキサー21を設けない場合に比べて、高めることができる流体加速機能が発揮される。したがって、エレメント22は、ねじれの方向の異なる右エレメントと左エレメントとが交互に配列されているものであっても構わないが、右エレメントと左エレメントのいずれか一方のエレメントが、連続的に配置されているものであっても構わない。
【0033】
上記の流体の分割作用や反転作用による攪拌混合、分散作用が有効である一例としては、処理流体が微細粒子を含むスラリーの場合を挙げることができる。スラリーの場合、微細粒子は凝集体を形成しているので凝集体の内部に包含されている目的物をろ過により除去することが困難であるが、上記の攪拌混合、分散作用が有効に発揮されることにより、凝集体の内部に包含されている目的物をろ過により除去する作用が促進される。
【0034】
このスタティックミキサー21は、一次側流路14の全長にわたって設けても構わないし、一部分に設けても構わないし、断続的に設けても構わない。
スタティックミキサー21を一次側流路14内に配置する構造は、スタティックミキサー21の両端または一端を、ろ過膜モジュール11の両端の支持部材に固定する構造や、スタティックミキサー21の両端または一端を、膜エレメント13の両端または一端に直接または間接的に支持させる構造を例示することができる。なお、エレメント22の外周は一次側流路14のろ過面15に接触あるいは固定されていても構わないし、若干の間隔が空けられたものであっても構わない。
【0035】
(第2の実施の形態:図3(A)参照)
この実施の形態に係る流れ調整器17は、スパイラル状フィン31として実施されている。スパイラル状フィン31は、一次側流路14の軸方向へ螺旋状に旋回しながら伸びるものであり、スパイラル状フィン31によって規定された螺旋状の流路内に沿って流れる螺旋流となり、一次側流路14内のろ過面15に沿う領域の流速を高めることができる流体加速機能が発揮される。また螺旋流では遠心力の効果が働き、大きな微粒子がろ過面の方向に優先的に移行し小さな微粒子はろ過面から離れる方向に移行される分級効果も生まれる。その結果目詰まりが起こりにくいのでフィルター自体の処理能力が増加する利点が生じる。なおスパイラル状フィン31のねじれの方向は右螺旋でも構わないし左螺旋であっても構わないし、両螺旋が、一次側流路14の軸方向において変化されているものであっても構わない。スパイラル状フィン31を複数設けることによって、2重以上の多重の螺旋構造としても構わない。
【0036】
このスパイラル状フィン31は、一次側流路14の全長にわたって設けても構わないし、一部分に設けても構わないし、断続的に設けても構わない。
スパイラル状フィン31を一次側流路14内に配置する構造は、スパイラル状フィン31の両端または一端を、ろ過膜モジュール11の両端の支持部材に固定する構造や、スパイラル状フィン31の両端または一端を、膜エレメント13の両端または一端に直接または間接的に支持させる構造を例示することができる。なお、スパイラル状フィン31の外周は一次側流路14のろ過面15に接触あるいは固定されていても構わないし、若干の間隔が空けられたものであっても構わない。
【0037】
(流れ調整器17の他の実施の形態:図3(B))
流れ調整器17は、一次側流路14内のろ過面15に沿う領域の流速を高めるものであればよいので、スタティックミキサー21やスパイラル状フィン31以外の形態でも実施することができる。例えば、一次側流路14内に丸棒あるいは円管32を挿入することによって、一次側流路14の中央部分を流れる流体を一次側流路14内のろ過面15に沿う領域に移動する流れを作る形態を示すことができる。なお、円管を使用する場合は、その両端を適宜の手段で閉鎖する必要がある。
但し、これらの丸棒あるいは円管は、流体の流れ方向を変更するものである以上、その流れの抵抗となる。従ってこの抵抗によって、処理流体の全体の流速が低下する結果、一次側流路14内のろ過面15に沿う領域の流速を逆に低くするものであってはならない点を考慮しつつ、その直径や本数を設定して実施することができる。
また図示はしないが、例えば、一次側流路14の軸方向に伸びる支持棒に傾斜板や円錐体を設けるなど、一次側流路14の中央部分を流れる流体を一次側流路14内のろ過面15に沿う領域に移動される流れを作る形態を示すことができる。但し、これらのスタティックミキサー21、スパイラル状フィン31、傾斜板及び円錐体は、流体の流れ方向を変更するものである以上、その流れの抵抗となる。従ってこの抵抗によって、処理流体の全体の流速が低下する結果、一次側流路14内のろ過面15に沿う領域の流速を逆に低くするものであってはならない点を考慮しつつ、その形状や、傾斜角度やリード角の値や、大きさや個数を設定して実施することが適当である。
【0038】
(第3の実施の形態:図5参照)
第3の実施の形態は、逆洗用流れ調整器18の実施の形態に関するものである。この例では、逆洗用流れ調整器18はスパイラル状フィン41として実施されている。スパイラル状フィン41は、外環状流路である二次側流路16の軸方向へ螺旋状に旋回しながら伸びるものであり、逆洗用の洗浄用流体はスパイラル状フィン41によって規定された螺旋状の流路内に沿って流れる螺旋流となり、二次側流路16内の膜エレメント13の外周面に沿う領域の流速を高めることができる壁面流体加速機能が発揮される。また洗浄液の使用量を低減する目的で洗浄液を循環し使用する場合、螺旋流では洗浄液中の異物が遠心力の働きでハウジング側へ移行し清澄な洗浄液が優先的にフィルター側へ供給できることも大きな利点である。なおスパイラル状フィン41のねじれの方向は右螺旋でも構わないし左螺旋であっても構わないし、螺旋の方向が、二次側流路16の軸方向において変化しているものであっても構わない。このスパイラル状フィン41は、二次側流路16の全長にわたって設けても構わないし、一部分に設けても構わないし、断続的に設けても構わない。スパイラル状フィン41は複数設けることによって、2重以上の多重の螺旋構造としても構わない。
【0039】
スパイラル状フィン41を二次側流路16内に配置する構造は、スパイラル状フィン41の両端または一端を、ろ過膜モジュール11の両端の支持部材に固定する構造や、スパイラル状フィン41の両端または一端を、ハウジング12又は膜エレメント13両端または一端に直接または間接的に支持させる構造を例示することができる。なお、スパイラル状フィン41の外周は二次側流路16の外周面又は内周面に接触あるいは固定されていても構わないし、若干の間隔が空けられたものであっても構わない。
【0040】
(逆洗用流れ調整器18の他の実施の形態:図なし)逆洗用流れ調整器18は、二次側流路16内の膜エレメント13の外周面に沿う領域の流速を高めることができるものであればよく、スパイラル状フィン41以外の形態でも実施することができる。例えば、傾斜板などの部材を二次側流路16の軸方向に伸びる支持棒に設けたり、ハウジング12の内周面に傾斜した突起を設けるなど、二次側流路16の中央部分を流れる流体を二次側流路16内の膜エレメント13の外周面に沿う領域に移動される流れを作る形態を示すことができる。但し、これらのスパイラル状フィン41、傾斜板及び突起などの部材は、流体の流れ方向を変更するものである以上、その流れの抵抗となる。従ってこの抵抗によって、洗浄用流体の全体の流速が低下する結果、二次側流路16内の膜エレメント13の外周面に沿う領域の流速を低くするものであってはならない点を考慮しつつ、その形状や、傾斜角度やリード角の値や、大きさや個数を設定して実施することが適当である。
【0041】
(外圧クロスフローろ過処理)
次に図6及び図7を参照して、外圧クロスフローろ過処理に適するろ過装置の概要を説明する。
【0042】
図6に示す回路図は、微粒子分散液などの各種の処理流体に対してろ過処理用を行う装置の基本構成の一例を示すものであり、ろ過膜モジュール111を複数用いたり、攪拌装置を用いたりするなど、種々の変更を加えて実施することができることは先に示した内圧クロスフローろ過処理の場合と同様である。
【0043】
このろ過装置は、図7(A)(B)にそれぞれ示すようにハウジング112と膜エレメント113を備えたろ過膜モジュール111とを備え、ハウジング112と膜エレメント113との間の外環状流路が一次側流路114となり、膜エレメント113内の管状流路が二次側流路116となる。
【0044】
このろ過膜モジュール111の一次側導入口151に対して送液ポンプ156を介して処理液タンク155が接続され、処理液タンク155の内部の処理流体が、送液ポンプ156によってろ過膜モジュール111内に圧送される。圧送された処理流体は、ハウジング112と膜エレメント113との間の外環状流路である一次側流路114を通過し、一次側排出口152から戻しバルブ161を経て処理液タンク155に戻される。処理液タンク155に対しては、液供給源157から処理流体などが必要に応じて供給される。
【0045】
凝集や沈降の生ずるおそれのある粒子が処理流体に含まれている場合、その凝集や沈降を抑制するために撹拌装置153を処理液タンク155に配置し、処理液タンク155内部の処理流体を撹拌することも好ましい。
なお液供給源157から供給される液は、処理流体の他、洗浄液であったり、希釈液であったりしても構わないし、複数の供給源から異なる経路を通じて処理液タンク155に供給されるものであっても構わない。液供給源157からの液の供給の有無及び液の種類や量はろ過の目的などに応じて変更して実施することができる。
【0046】
圧送された処理流体が一次側流路114を通過することによって、膜エレメント113の外周面をろ過面115として、クロスフローろ過処理がなされる。このろ過処理は、1パスであっても構わないが、ろ過膜モジュール111と処理液タンク155を結ぶ循環経路によって繰り返し行われるものであっても構わない。ろ過処理によって生じたろ過液は、膜エレメント113の内側に排出され、管状流路である二次側流路116につながる二次側排出口154から濾過液バルブ162を介して濾過液排出先159へ排出される。
ろ過処理が完了した処理流体は、循環経路の適宜箇所に設けられた経路から処理物排出先158に排出される。
【0047】
以上が通常のろ過処理時に用いられる回路および流体の流れであるが、膜エレメント113を洗浄する場合には、洗浄液供給源160からの洗浄用流体(有機溶媒、洗浄液や純水など)が、ろ過膜モジュール111の二次側流路116へ、洗浄液バルブ163を介して圧送される。ろ過膜モジュール111へ導入された洗浄用流体は膜エレメント113の管状流路である二次側流路116の内周面から膜エレメント113の外周面へ流出して一次側流路114へ経て、一次側導入口151及び一次側排出口152から処理液タンク155などへ排出される。また、図示はしないが洗浄液は循環するように構成しても構わない。
【0048】
(ろ過膜モジュール111の概要)
次に、図7を参照して、ろ過膜モジュール111の概要について説明する。ろ過膜モジュール111は、膜エレメント113と、膜エレメント113の外側に配置された筒状のハウジング112とを備えている。筒状のハウジング112の内周面と膜エレメント113の間の外環状流路が一次側流路114を構成し、膜エレメント113を貫通する少なくとも1つ(図2では4つ)の管状流路が二次側流路116を構成する。
【0049】
ろ過膜モジュール111の両端は、前述の一次側導入口151と一次側排出口152にそれぞれ繋がっており、一次側導入口151と一次側排出口152を介して外部の回路と接続され、一次側導入口151から加圧された処理流体が一次側流路114内に導入されて、クロスフローろ過処理後の処理流体が、一次側排出口152から排出される。
【0050】
ろ過面115を構成する膜エレメント113には、内圧クロスフローろ過処理のろ過膜と同様のものを採用することができる。また、濾過膜を支持する支持体は多孔質のセラミック系材料が一般的であるがステンレス製や多孔質の樹脂製チューブであっても構わない。
ハウジング112は、中空の筒状体で金属や合成樹脂などの液密性と耐圧性を備えた素材で構成されている。
【0051】
図示は省略するが、ハウジング112と膜エレメント113との両端は支持部材によって支持されており、ハウジング112に設けられた導入口や排出口などの他の構成部材を含めて一つのろ過膜モジュール111が構成されている。
【0052】
(流れ調整器117)
本発明においては、一次側流路114の内部に図7に示す流れ調整器117が配置される。
この実施の形態に係る流れ調整器117は、スパイラル状フィン131として実施されている。スパイラル状フィン131は、一次側流路114の軸方向へ螺旋状に旋回しながら伸びるものである。このスパイラル状フィン131は、一次側流路114の軸方向に流れる処理流体の流れを、自らが駆動することなく変化させる(周方向成分を与えるように変化させる)ものである。これにより、スパイラル状フィン131によって規定された螺旋状の流路内に沿って流れる処理流体は螺旋流となり、遠心力が作用する。その結果、大きな微粒子が半径方向の外側への方向(すなわちろ過面115から離れる方向)に相対的に移行する一方、小さな微粒子が半径方向の内側への方向(すなわちろ過面115に近づく方向)へ相対的に移行する。従って、処理流体中の粒子のうち粒子径の小さなもののみを、ろ過面115を経て二次側流路116へ通過させる一方、処理流体中の粒子径の大きなもののみを、一次側流路114へ残す処理が促される。よって、この実施の形態に係るろ過膜モジュール111は、分級作用を処理流体に与える必要がある流体処理に適用するのに有利である。
【0053】
(流れ調整器の作用の比較)
先に示した第1ないし第3の実施の形態に係る内圧クロスフローろ過処理にあっては、膜エレメント13内の管状流路である一次側流路14に、処理流体が通される。管状流路内のスパイラル状フィン31による螺旋状の流れによって遠心力が処理流体に働く。
【0054】
処理流体について固液を分離する場合は、処理流体中の固体成分の粒子が膜エレメント13を通過せずに、液体成分のみが膜エレメント13が通過して二次側流路16へ移動する処理を行うことになる。
その際、遠心力が働くと、比較的大きな粒子は管状流路の内壁面のろ過面15に相対的に近づき、比較的小さな粒子は管状流路の内壁面のろ過面15から相対的に遠ざかる。ここで、比較的小さな粒子は、ろ過面15のろ過開口に比較的に近い大きさであり、ろ過面15の目詰まりの原因となるため、これがろ過面15から相対的に遠ざかることによって、ろ過面15の目詰まりの発生を抑制することができる。
【0055】
他方、処理流体について固/固を分離する分級処理を伴う場合には、ふるい分けるために小さな粒子のみをろ過面15を通過させて大きな粒子はろ過面15を通過しないように操作しなければならない。ところが、内圧クロスフローろ過処理にあっては、上述のように、処理流体に遠心力が働くと、比較的大きな粒子は管状流路の内壁面のろ過面15に相対的に近づき、比較的小さな粒子は管状流路の内壁面のろ過面15から相対的に遠ざかってしまう。従って内圧クロスフローろ過処理にて分級処理を伴う場合には、遠心力は分級処理の効率を低下させる方向で作用するおそれがある。
【0056】
これに対して、外圧クロスフローろ過処理に係るこの実施の形態にあっては、ろ過面115が一次側流路114の内側に位置している。その結果、上述の内圧クロスフローろ過処理の場合とは逆に、処理流体に遠心力が働くと、比較的大きな粒子は外環状流路である一次側流路114の外側に相対的に移行して、ろ過面115から相対的に遠ざかり、比較的小さな粒子は一次側流路114の内側に相対的に移行して、ろ過面115へ相対的に近づく。従って外圧クロスフローろ過処理にて分級処理を伴う場合には、遠心力は分級処理の効率を向上させる方向で作用することになる。
【0057】
(一次側流路114の流量と分級サイズとの関係)
この実施の形態に係るろ過膜モジュール111を用いて分級を行う場合、目的の分級サイズに応じて一次側流路114の流量(一次側流量)を変更して実施することが好ましい。
【0058】
上述の通り一次側流路114内で螺旋状の流れが発生することにより、処理流体に含まれる粒子には遠心力がかかる。そのため、分級サイズより大きな粒子が流路外側(ハウジング側)に移動するよう流量を設定することで、分級速度がアップする。例えば、メッシュサイズ15μmの膜エレメント113を用いて15μm以下の粒子を分級(除去)する場合、実験結果及び遠心力計算より約10L/min(コイルとコイルの間を流れる液について、コイル間の断面積から流速換算すると約0.72m/sec)が好ましい。それ以上一次側流量を増加させると、膜エレメント113のろ過面115を通過させて二次側流路116へ抜きたい(ふるい分けたい)15μm以下の粒子(特に10~15μmの粒子)がろ過面115の外側を通りすぎて、ろ過面115を通過することなく、一次側排出口152から排出されてしまう粒子の割合が多くなる傾向を示す(表3の実施例B1と実施例B2、B3との比較)。従って、分級サイズに応じて一次側流路114の流量を調整して実施することが好ましい。
【0059】
(スパイラル状フィン131の形態)
スパイラル状フィン131の形態は、処理流体にスパイラル状の流れを作り出すことで遠心力を発生させることができるものであれば特に限定はされない。具体的には、図7(B)に示すような板状のフィンであっても構わないし、図7(A)に示す大小2種類のフィンであっても構わない。図7(A)に示すものは、断面形状において径の小さな小径部132と径の大きな大径部133との2つのフィンを繋げずに並べて配置したもので、小径部132が大径部133の内側に配置されている。このようにスパイラル状フィン131の一次側流路114の軸心に沿う断面形状に関して、ろ過面115に近い領域と遠い領域とに二分した際に、近い領域では遠い領域に比べて断面積を小さくすることによって、ろ過面115に近い領域では十分な流路面積を確保するとともに、ろ過面115から遠い領域では流路面積を制限することで、ろ過面115に近い領域へ処理流体全体を近づけて処理効率の向上を図ることができるようにしたものである。
【0060】
スパイラル状フィン131のねじれの方向は右螺旋でも構わないし左螺旋であっても構わないし、両螺旋が、一次側流路114の軸方向において変化されているものであっても構わない。スパイラル状フィン131は複数設けることによって、2重以上の多重の螺旋構造としても構わない。
【0061】
また例えば、スパイラル状フィン131を、図8(A)に示すようにハウジング112、膜エレメント113に接するように配置しても構わないし、図8(B)に示すように、ハウジング112の内周面寄りに配置しても構わないし、図8(C)に示すようには、膜エレメント113の外周面寄りに配置しても構わないし、図8(D)に示すように、多重の螺旋構造とする際に一方のスパイラル状フィン131をハウジング112の内周面寄りに配置し、他方のスパイラル状フィン131を膜エレメント113の外周面寄りに配置しても構わない。
【0062】
このスパイラル状フィン131は、一次側流路114の全長にわたって設けても構わないし、一部分に設けても構わないし、断続的に設けても構わない。
スパイラル状フィン131を一次側流路114内に配置する構造は、スパイラル状フィン131の両端または一端を、ろ過膜モジュール111の両端の支持部材に固定する構造や、スパイラル状フィン131の両端または一端を、膜エレメント113の両端または一端に直接または間接的に支持させる構造を例示することができる。なお、スパイラル状フィン131の内周は一次側流路114のろ過面115に接触あるいは固定されていても構わないし、若干の間隔が空けられたものであっても構わないが、若干の間隔が空けられたものの方がより好ましい。同様に、スパイラル状フィン131の外周はハウジング112に接触あるいは固定されていても構わないし、若干の間隔が空けられたものであっても構わない。
【0063】
(逆洗)
膜エレメント113の目詰まりを解消することを主な目的として、常に従って逆洗することができる。
洗浄する場合には、洗浄液供給源160からの洗浄用流体が、膜エレメント113の管状流路である二次側流路116の内周面から膜エレメント113の外周面へ流出して一次側流路114へ経て、排出される。これによって、膜エレメント113の目に詰まった粒子が、一次側流路114へ排出され、目詰まりが解消される。この洗浄は、定期的に行うようにしても構わないし、不定期に行うものであっても構わない。
【0064】
(二次側排出量と分級効率との関係)
実施に際しては、二次側の濾過液バルブ162の開度を変更し、二次側排出量を調整することが好ましい。二次側排出量を小さくするに従って膜エレメント113のろ過面115に目詰まりが生じにくくなる反面、分級速度は遅くなる傾向を示す。他方、二次側排出量を大きくするに従って分級速度は早くなるがろ過面115に目詰まりが生じ易くなるため逆洗の回数を多くする必要が生じる。ろ過面115の目詰まりが早い場合、初期の粒子透過量が多くても、全体的な粒子透過量は少なくなり、最終的に分級時間が長くなる場合がある。
従って、総合的な分級効率を考慮して二次側排出量を調整することが好ましい。
【0065】
(膜エレメント113の変更例)
膜エレメント113に関しても、種々変更して実施することができるものであり、二次側流路116の本数や大きさを変更する他、膜エレメント113の断面形状を図9に示すような多数のプリーツを備えたプリーツ型のものに変更することによってろ過面積を大きくして実施することもできる。
【0066】
(ろ過膜モジュール111の変更例)
流れ調整器117は、処理流体にスパイラル状の流れを作り出すことで遠心力を発生させることができるものあればよく、スパイラル状フィン131以外の形態でも実施することができる。例えば、一次側流路114の軸方向に伸びる空間に傾斜板や円錐体を設けるなど、一次側流路114を流れる流体を周方向に移動させる成分を与える形態を示すことができる。但し、スパイラル状フィン131、傾斜板及び円錐体は、流体の流れ方向を変更するものである以上、その流れの抵抗となる。従ってこの抵抗によって、処理流体の全体の流速が低下して処理効率が低下する点を考慮しつつ、その形状や、傾斜角度やリード角の値や、大きさや個数を設定して実施することが適当である。なお、管状流路である二次側流路116の内部に第1ないし第3の実施の形態に示す流れ調整器17を併用しても構わない。
【0067】
(ろ過処理方法)
本発明のろ過膜モジュールは、内圧クロスフローろ過処理と外圧クロスフローろ過処理共に、従来のろ過膜モジュールと同様、処理流体の濃縮、精製、溶媒置換、pH調整、導電率調整、微粒子洗浄、微粒子表面処理、分級などの様々な目的のためのクロスフローろ過処理方法に適用することができる。前述の通り、その目的や処理流体の種類や態様に応じて、MF膜、UF膜、NF膜などを選択して実施することができるとともに、ろ過装置の回路を変更するなどして実施することができる。例えば、処理流体の濃縮を目的とする処理にあっては、処理液タンクに対して処理中に洗浄液などを供給せずに循環経路によってクロスフローろ過処理を行うことができるし、処理流体のpH調整や導電率調整を目的とする処理にあっては、本願出願人にかかる特許第6144447号や特許第6151469号に係る発明を適用して実施することも可能である。
【実施例
【0068】
以下本発明の理解を高めるために実施例を示すが本発明はこの実施例に限定して理解されるべきではない。
表1及び表2に示す実施例A1ないしA5は、図3(A)に示す流れ調整器17を備えたろ過膜モジュールを作製し、内圧クロスフローろ過を想定したものである。
表3に示す実施例B1ないしB6は、図7(A)に示す流れ調整器117を備えたろ過膜モジュールを作成したものであり、比較例B1は、実施例B1について流れ調整器117を設けないろ過膜モジュールを作成したものである。
それぞれの実施例では、濃度1wt%のポリビニルアルコール水溶液4kgに対してPLGA粒子を110g混合したものを用いた。混合後の未処理の処理流体中のPLGA粒子の粒度分布は図10(A)に示したとおりである。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例A1~A2)
表1に示す実施例は、内圧クロスフローろ過を想定し、内径6mmのセラミックフィルターにサイズの異なるスパイラル状のフィンを挿入した際の処理流体の流速の変化及びフィルターが目詰まりするまでの時間を確認している。比較例A1は、スパイラル状のフィンを挿入しない状態でのフィルター内部の流速を示す。
何れもスパイラル状のフィンを挿入した場合は、スパイラル状のフィンを挿入しない比較例A1に比べて、スパイラル状のフィンが発生する遠心分離効果によってフィルター内部の流速が増加し、挿入するスパイラル状のフィンのサイズが大きい場合の方がフィルター内部の膜面流速が大きくなっている。遠心分離効果と膜面流速の増加に伴い、フィルターが目詰まりするまでの時間が長くなっていることがわかる。つまり、連続で内圧クロスフローろ過処理を行う場合、フィルターが目詰まりするまでの時間が長くなると、逆洗を実施する回数/頻度が減少するので、全体としてろ過効率の向上に繋がる。なお、処理流体は、ポリビニルアルコール水溶液に対してPLGA粒子を混合したものを使用した。
フィルターのサイズ:外径φ10mm、内径φ6mm、長さ250mm
ハウジングのサイズ:外径φ16mm、内径φ14mm、長さ254mm
挿入したスパイラル状のフィンのサイズ(スパイラル状フィンの外径):φ3mm、φ4mm
処理流体の流量:5L/min
【0071】
【表2】
【0072】
(実施例A3~A5)
表2に示す実施例は、内圧クロスフローろ過を想定し、内径50.5mmのSUSフィルターにスパイラル状のフィンを挿入した際の処理流体の流速の変化及びフィルターが目詰まりするまでの時間を確認している。比較例A2は、スパイラル状のフィンを挿入しない状態でのフィルター内部の流速を示す。
上記表1による実施例と同様に、何れもスパイラル状のフィンを挿入した場合は、スパイラル状のフィンを挿入しない比較例A2に比べて、スパイラル状のフィンが発生する遠心分離効果によってフィルター内部の流速が増加し、挿入するスパイラル状のフィンのサイズが大きい場合の方がフィルター内部の膜面流速が大きくなっている。遠心分離効果と膜面流速の増加に伴い、フィルターが目詰まりするまでの時間が長くなっていることがわかる。つまり、連続で内圧クロスフローろ過処理を行う場合、フィルターが目詰まりするまでの時間が長くなると、逆洗を実施する回数/頻度が減少するので、全体としてろ過効率の向上に繋がる。なお、処理流体は、ポリビニルアルコール水溶液に対してPLGA粒子を混合したものを使用した。
フィルターのサイズ:外径φ58.5mm、内径φ50.5mm、長さ241.5mm
ハウジングのサイズ:外径φ88.9mm、内径φ84mm、長さ341mm
挿入したスパイラル状のフィンのサイズ:φ35mm、φ40mm、φ45mm
処理流体の流量:30L/min
【0073】
【表3】
【0074】
(実施例B1~B6)
各ろ過膜モジュールを用いて外圧クロスフローろ過処理により分級処理を行った結果を表1に示す。
表1において、フィルター面積は膜エレメント113のろ過面115の総面積を示し、メッシュサイズは膜エレメント113のろ過面115の開口大きさを示し、15μm以下を分級(除去)処理する実験を行なった。
ハウジング112の内径は84mmであり、膜エレメント113の外径は58.5mm(円筒型の場合)であり、両者間の間隔は半径方向において12.75mmであった。スパイラル状フィン131は、膜エレメント113の略全長にわたって配置されたもので、小径部132の直径が3mmであり、大径部133の直径が9mmであり、リード角が22度であった。処理液は、ポリビニルアルコール水溶液に対してPLGA粒子を混合したものを用いた。
【0075】
表3において、分級速度は、粒子透過量÷サンプリング時間で求めたもので、単位時間当たりの二次側への粒子の透過量を分級速度として示した。粒子透過量は、測定するために、表3に示す所定時間ごとに二次側排出液をサンプリングし、そのサンプリングした二次側排出液中に含まれる粒子量を重量にて測定した。
【0076】
最大粒子透過量は、二次側排出液を所定時間ごとにサンプリングし、そのサンプリングした二次側排出液中に含まれる粒子量を重量にて測定したものを粒子透過量とし、複数のサンプリング結果のうちの最大値を表3に示した。
最大粒子濃度は、上記のサンプリングごとに、粒子濃度=粒子透過量÷サンプリング量×1000として粒子濃度を求め、複数のサンプリング結果のうちの最大値を表3に示した。
【0077】
最大分級速度は、上記のサンプリングごとに、分級速度=粒子透過量÷サンプリング時間として分級速度を求め、複数のサンプリング結果のうちの最大値を表3に示した。
【0078】
(分級結果)
分級結果を図10に示す。図10はPLGA粒子の粒度分布を示すグラフであり、(A)は未処理の処理流体(即ち、処理液タンク155に液供給源157からの処理流体)中のPLGA粒子の粒度分布を示すもので、(B)は実施例B3の処理後の処理流体(即ち、処理後に処理物排出先158に排出される処理流体)中のPLGA粒子の粒度分布を示すもので、(C)は実施例B6の処理後の処理流体(即ち、処理後に処理物排出先158に排出される処理流体)中のPLGA粒子の粒度分布を示すものである。これらのグラフから明らかな通り、実施例B3及びB6の処理流体にあっては15μm以下の粒子が確実に分級(除去)されたことが確認された。処理流体を外環状流路内に通過させる際、粒子のうち粒子径の小さな粒子に対する遠心力よりも粒子径の大きな粒子に対する遠心力の方が大きくなり、粒子径の大きな粒子がハウジング側へ移動することにより膜エレメントから離れるため、粒子径の小さな粒子の膜エレメントの通過が阻害されにくくなっている。
【0079】
以上、実施例B4と実施例B5を除く全ての実施例においては、最大粒子濃度が比較例B1を上回った。また実施例B2と実施例B5を除く全ての実施例においては、最大分級速度が比較例B1を上回った。実施例B2と実施例B5は最大分級速度が比較例B1を下回ったが、表3に示すようにフィルター(膜エレメント113)が目詰まりするまでの時間が比較例B1を上回っていた。
上記内容から、分級速度の速い/遅い、二次側排出液の粒子濃度の高い/低い及び目詰まり発生までの経過時間の長い/短いをもって、処理の条件や目的に応じて分級効率の良否を総合的に判断して実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
11,111 ろ過膜モジュール
12,112 ハウジング
13,113 膜エレメント
14,114 一次側流路
15,115 ろ過面(ろ過膜)
16,116 二次側流路
17,18,117 流れ調整器
19 支持体
21 スタティックミキサー
22 エレメント
31,41,131 スパイラル状フィン
32 丸棒または円管
51,151 一次側導入口
52,152 一次側排出口
53 二次側導入口
54,154 二次側排出口
55,155 処理液タンク
56,156 送液ポンプ
57,157 液供給源
58,158 処理物排出先
59,159 濾過液排出先
60,160 洗浄液供給源
61,161 戻しバルブ
62,162 濾過液バルブ
63,163 洗浄液バルブ
132 小径部
133 大径部
153 撹拌装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10