(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】フラックス、やに入りはんだ及びソルダペースト
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20221003BHJP
B23K 35/14 20060101ALI20221003BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20221003BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20221003BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/14 B
B23K35/363 D
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
C22C13/00
(21)【出願番号】P 2017130388
(22)【出願日】2017-07-03
【審査請求日】2020-06-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】行方 一博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 基秀
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224702(JP,A)
【文献】国際公開第2008/072654(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/169459(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0065242(US,A1)
【文献】特開平06-015483(JP,A)
【文献】国際公開第2005/027601(WO,A1)
【文献】特開平04-371391(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025798(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00-35/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けに用いられるフラックスであって、
ホスフィンオキシドを含み、
前記ホスフィンオキシドの含有量が、前記フラックス全体100重量部に対して、0.1~10重量部であり、
前記ホスフィンオキシドが、トリフェニルホスフィンオキシド
、及び、トリ-n-オクチルホスフィンオキシドから選択される少なくとも一種である、フラックス。
【請求項2】
さらに、ロジン系樹脂及び合成樹脂のうち少なくとも一方を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
さらに、有機酸系活性剤を含む、請求項1又は2に記載のフラックス。
【請求項4】
前記ホスフィンオキシドが、トリフェニルホスフィンオキシドである、請求項1~3のいずれか一つに記載のフラックス。
【請求項5】
さらに、アミン系化合物を含む、請求項1~4のいずれか一つに記載のフラックス。
【請求項6】
前記アミン系化合物の含有量が、前記フラックス全体100重量部に対して、0.5~10重量部である、請求項5に記載のフラックス。
【請求項7】
前記アミン系化合物が、環状構造を有する、請求項5又は6に記載のフラックス。
【請求項8】
前記アミン系化合物が、イミダゾール系化合物である、請求項7に記載のフラックス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一つに記載のフラックスを含む、やに入りはんだ。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一つに記載のフラックスを含む、ソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けに用いられるフラックス、該フラックスを含むやに入りはんだ、及び、前記フラックスを含むソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の電子回路基板に電子部品を接合するために用いられるはんだ組成物としては、例えば、はんだ合金粉末とフラックスとを混合したソルダペースト、糸状のはんだ合金の内部にフラックスを充填したやに入りはんだ等が挙げられる。これらのはんだ組成物に含まれるフラックスとしては、ロジン等の天然樹脂又は合成樹脂、活性剤、溶剤等が含まれる樹脂系のフラックスが広く用いられている。
【0003】
従来、電子部品を接合する電子回路基板等の接合母材には、はんだが付着しやすい銅、銅合金等の金属材料が用いられてきた。しかしながら、銅及び銅合金は、高価であり且つ機械的強度に劣るという問題があった。そこで、近年では、接合母材として、例えば42アロイ(Fe-42Ni)、コバール(Fe-29Ni-17Co)、鉄等の金属材料が多く用いられている。これらの金属材料は、銅及び銅合金よりも低価格で強度に優れるものの、はんだ濡れ性に劣る。そのため、42アロイ等のようにはんだ付けが難しい金属材料(以下、難接合母材ともいう)を用いる場合、ハロゲン成分が大量に含まれた活性の高い活性剤を含むフラックスを使用することにより、はんだ濡れ性を向上させている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、活性の高いハロゲン系活性剤を含むフラックスを用いると、はんだ付けを行う部分に腐食が発生しやすく、また、はんだ付けを行った基板を廃棄する際、ダイオキシン等の有害物質が排出されるという問題があった。そのため、フラックスを組成の観点から改良することが求められている。例えば、特許文献2では、ロジン系樹脂、非ハロゲン系活性剤、溶剤及びアミン系化合物を含むフラックスを用いることにより、スズメッキ等が施された鋼板のはんだ濡れ性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-105131号公報
【文献】特開2015-123491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、難接合母材に対して、特許文献2に開示されたロジン系樹脂、非ハロゲン系活性剤、溶剤及びアミン系化合物を含むフラックスを用いてはんだ付けを行ったところ、はんだ濡れ性を充分に向上させることができなかった。そのため、フラックス組成のさらなる改良が求められている。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、はんだ濡れ性を向上させることができるフラックス、該フラックスを含むやに入りはんだ、及び、前記フラックスを含むソルダペーストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフラックスは、はんだ付けに用いられ、ホスフィンオキシドを含む。
【0009】
斯かる構成により、前記フラックスを含むはんだ組成物を用いてはんだ付けを行う際、はんだが付着しやすい銅、銅合金等の金属材料だけでなく、難接合母材に対しても、はんだ濡れ性を向上させることができる。
【0010】
このように、前記フラックスは、難接合母材に対するはんだ濡れ性に優れるため、該フラックスに含まれるハロゲン系活性剤の含有量を低減又はゼロにすることができる。このようなフラックスは、はんだ付けを行う部分における腐食の発生を抑制することができる。また、はんだ付けを行った基板を廃棄する際、ダイオキシン等の有害物質が排出される恐れがないため、環境負荷低減の観点からも好ましい。
【0011】
本発明に係るフラックスは、さらに、ロジン系樹脂及び合成樹脂のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。斯かる構成により、はんだ濡れ性をより向上させることができる。
【0012】
本発明に係るフラックスは、さらに、有機酸系活性剤を含むことが好ましい。斯かる構成により、該フラックスに含まれるハロゲン系活性剤の含有量をより低減又はゼロにすることができる。このようなフラックスは、はんだ付けを行う部分における腐食の発生をより抑制することができる。また、はんだ付けを行った基板を廃棄する際、ダイオキシン等の有害物質が排出される恐れがないため、環境負荷低減の観点からもより好ましい。
【0013】
本発明に係るフラックスは、前記ホスフィンオキシドの含有量が、前記フラックス全体100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましい。斯かる構成により、はんだ濡れ性をより向上させることができる。
【0014】
本発明に係るフラックスは、前記ホスフィンオキシドが、トリフェニルホスフィンオキシドであることが好ましい。斯かる構成により、はんだ濡れ性をより向上させることができる。
【0015】
本発明に係るフラックスは、さらに、アミン系化合物を含むことが好ましい。前記フラックスは、ホスフィンオキシドとアミン系化合物とを併用することの相乗効果により、はんだ濡れ性をより向上させることができる。
【0016】
本発明に係るフラックスは、前記アミン系化合物の含有量が、前記フラックス全体100重量部に対して、0.5~10重量部であることが好ましい。斯かる構成により、はんだ濡れ性をより向上させることができる。また、前記アミン系化合物の含有量が10重量部以下であると、得られるはんだ組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係るフラックスは、前記アミン系化合物が、環状構造を有することが好ましい。斯かる構成により、はんだ濡れ性をより向上させることができる。
【0018】
本発明に係るフラックスは、前記アミン系化合物が、イミダゾール系化合物であることが好ましい。斯かる構成により、はんだ濡れ性をより向上させることができる。
【0019】
本発明に係るやに入りはんだは、前記フラックスを含む。
【0020】
前記フラックスは、はんだ濡れ性が良好である。そのため、前記やに入りはんだは、フィレットの形成不良、端子間におけるブリッジ、ツノ立ち等の不良が生じにくい。
【0021】
本発明に係るソルダペーストは、前記フラックスを含む。
【0022】
前記フラックスは、はんだ濡れ性が良好である。そのため、前記ソルダペーストは、該フラックスを含むやに入りはんだと同様に、難接合材料をリード部等に使用した部品又は難接合母材に対して、はんだはじき等の不良が生じにくい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、はんだ濡れ性を向上させることができるフラックス、該フラックスを含むやに入りはんだ、及び、前記フラックスを含むソルダペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るフラックス、該フラックスを含むやに入りはんだ、及び、前記フラックスを含むソルダペーストについて説明する。
【0025】
<フラックス>
本実施形態に係るフラックスは、はんだ付けに用いられ、ホスフィンオキシドを含む。
【0026】
前記ホスフィンオキシドとは、リン原子と酸素原子との二重結合(P=O結合)を有するリン化合物をいう。前記ホスフィンオキシドとしては、例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、はんだ濡れ性を向上させる観点から、トリフェニルホスフィンオキシドであることが好ましい。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記ホスフィンオキシドの含有量は、はんだ濡れ性を向上させる観点から、前記フラックス全体100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましい。前記ホスフィンオキシドの含有量は、0.5重量部以上であることがより好ましく、7重量部以下であることがより好ましい。なお、前記ホスフィンオキシドが2種以上含まれる場合、前記含有量は前記ホスフィンオキシドの合計含有量である。
【0028】
本実施形態に係るフラックスは、はんだ濡れ性を向上させる観点から、さらに、ロジン系樹脂及び合成樹脂のうち少なくとも一方を含んでいてもよい。前記ロジン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、アクリル化ロジン、ロジンエステル、酸変性ロジン等が挙げられる。また、前記合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の合成樹脂を用いることができる。これらの中でも、フラックスを活性化させる観点から、水添ロジン、酸変性ロジン及びロジンエステルから選択される1種以上であることが好ましい。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記ロジン系樹脂及び前記合成樹脂の合計含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、前記フラックス全体100重量部に対して、20~99重量部であることが好ましく、30~99重量部であることがより好ましい。特に、本実施形態に係るフラックスをやに入りはんだ用のフラックスとして用いる場合、前記ロジン系樹脂及び前記合成樹脂の合計含有量は、前記フラックス全体100重量部に対して、40~80重量部であることが好ましく、50~70重量部であることがより好ましい。なお、前記ロジン系樹脂及び前記合成樹脂のうちいずれか一方が含まれる場合、前記含有量は前記ロジン系樹脂及び前記合成樹脂のうちいずれか一方の含有量である。
【0030】
本実施形態に係るフラックスは、環境負荷低減の観点から、さらに、有機酸系活性剤を含んでいてもよい。前記有機酸系活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸;ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸等のその他の有機酸が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記有機酸系活性剤の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、前記フラックス全体100重量部に対して、0.1重量部以上であることが好ましく、0.3重量部以上であることがより好ましい。また、10重量部以下であることが好ましく、7重量部以下であることがより好ましい。なお、前記有機酸系活性剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記有機酸系活性剤の合計含有量である。
【0032】
本実施形態に係るフラックスは、はんだ濡れ性を向上させる観点から、さらに、アミン系化合物を含んでいてもよい。前記アミン系化合物は、環状構造を有することが好ましい。このようなアミン系化合物としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物等が挙げられる。前記イミダゾール系化合物としては、例えば、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)エチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール等が挙げられる。前記トリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-メタノール、1-メチル-1H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。その他のアミン系化合物としては、例えば、セチルアミン、エルカ酸アミド、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール、3,5-ジメチルピラゾール、ジメチルウレア、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリフェニル-1,3,5-トリアジン、ピラジンアミド、N-フェニルグリシン、3-メチル-5-ピラゾロン、N-ラウロイルサルコシン等が挙げられる。これらの中でも、はんだ濡れ性を向上させる観点から、2-ヘプタデシルイミダゾールであることが好ましい。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記アミン系化合物の含有量は、はんだ濡れ性を向上させる観点から、前記フラックス全体100重量部に対して、0.5~10重量部であることが好ましく、2~10重量部であることがより好ましい。なお、前記アミン系化合物が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記アミン系化合物の合計含有量である。
【0034】
本実施形態に係るフラックスは、その他の添加材として、例えば、溶剤、チキソ剤、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、腐食防止剤等を含んでいてもよい。
【0035】
前記溶剤としては、特に限定されるものではなく、公知の溶剤を用いることができる。前記溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(2エチルヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)等のグリコールエーテル類;n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族系化合物;酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール類等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記溶剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、前記フラックス全体100重量部に対して、10重量部以上であることが好ましく、20重量部以上であることがより好ましい。また、60重量部以下であることが好ましく、40重量部以下であることがより好ましい。なお、前記溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記溶剤の合計含有量である。
【0037】
前記チキソ剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、硬化ひまし油、アミド類、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリット等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記チキソ剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、前記フラックス全体100重量部に対して、1重量部以上であることが好ましく、2重量部以上であることがより好ましく、3重量部以上であることがさらに好ましい。また、10重量部以下であることが好ましく、6重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることがさらに好ましい。なお、前記チキソ剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記チキソ剤の合計含有量である。
【0039】
本実施形態に係るフラックスの製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、上述のホスフィンオキシド、及び、必要に応じてその他の添加材を加熱容器に投入した後、160~180℃まで加熱することにより全原料を溶解させる。最後に、室温まで冷却することにより、本実施形態に係るフラックスを得ることができる。
【0040】
<やに入りはんだ>
本実施形態に係るやに入りはんだは、上述のフラックスを含む。より具体的には、前記やに入りはんだは、細い筒状のはんだ合金と、該はんだ合金の中心部に充填された前記フラックスとから構成される。前記フラックスの含有量は、前記やに入りはんだ全体100重量部に対して、1~5重量部であることが好ましい。
【0041】
前記はんだ合金としては、特に限定されるものではなく、例えば、無鉛のはんだ合金、有鉛のはんだ合金が挙げられるが、環境負荷低減の観点から、無鉛のはんだ合金であることが好ましい。前記無鉛のはんだ合金としては、例えば、スズ、銀、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、アンチモン等を含む合金が挙げられる。より具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sb、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Ag等の合金が挙げられる。
【0042】
<ソルダペースト>
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスを含む。より具体的には、前記ソルダペーストは、はんだ合金粉末と、前記フラックスとを混合することにより得られる。前記フラックスの含有量は、前記ソルダペースト全体100重量部に対して、5~20重量部であることが好ましい。また、前記はんだ合金粉末の含有量は、前記ソルダペースト全体100重量部に対して、80~95重量部であることが好ましい。前記はんだ合金粉末におけるはんだ合金としては、前記やに入りはんだに含まれるはんだ合金と同様の合金を用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
[フラックス]
<フラックスの作製>
表1及び2に示す配合量の各原料を加熱容器に投入し、180℃まで加熱することにより、全原料を溶解させた。その後、室温まで冷却することにより、均一に分散された実施例1~30及び比較例1のフラックスを得た。なお、表1及び2に示す各配合量は、フラックスに含まれる各成分の含有量と等しい。
【0045】
【0046】
【0047】
表1及び2に示す各原料の詳細を以下に示す。
(ロジン系樹脂)
KR-610:水添ロジン、荒川化学工業(株)製、商品名「KR-610」
KE-604:酸変性ロジン、荒川化学工業(株)製、商品名「KE-604」
KE-359:超淡色ロジンエステル、荒川化学工業(株)製、商品名「KE-359」
(有機酸系活性剤)
アジピン酸:住友化学工業(株)製
アゼライン酸:中外薬品工業(株)製
(ホスフィンオキシド)
TPPO:トリフェニルホスフィンオキシド、東京化成工業(株)製
BAPO:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、東京化成工業(株)製
TMDPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、東京化成工業(株)製
TOPO:トリ-n-オクチルホスフィンオキシド、東京化成工業(株)製
(アミン系化合物)
C17Z:2-ヘプタデシルイミダゾール、四国化成工業(株)製
C11Z:2-ウンデシルイミダゾール、四国化成工業(株)製
C11Z-A:1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)エチル-2-ウンデシルイミダゾール、四国化成工業(株)製
アミンPb:セチルアミン、日油(株)製
ニュートロンS:エルカ酸アミド、日本精化(株)製
1-ブチルイミダゾール:東京化成工業(株)製
3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール:東京化成工業(株)製
3,5-ジメチルピラゾール:東京化成工業(株)製
ジメチルウレア:東京化成工業(株)製
ヘキサヒドロ-1,3,5-トリフェニル-1,3,5-トリアジン:東京化成工業(株)製
ピラジンアミド:東京化成工業(株)製
N-フェニルグリシン:東京化成工業(株)製
3-メチル-5-ピラゾロン:東京化成工業(株)製
サルコシネート LH:N-ラウロイルサルコシン、日光ケミカルズ(株)製
【0048】
<濡れ性評価>
実施例1~30及び比較例1のフラックスの濡れ性評価は、以下の方法を用いて、各フラックスの広がり率を算出することにより行った。
【0049】
脱脂洗浄した42アロイ基板(30mm×30mm×0.3mm厚)上に、糸はんだ(はんだ合金:SAC305(Sn96.5質量%、Ag3.0質量%、Cu0.5質量%)、長さ約5.6mm、径0.8mm)を径1.6mmのリング状にした状態で置き、このリング状の糸はんだの上に、各フラックスをひとかけら(約10mg)乗せることにより、試験片を作製した。
【0050】
各試験片を260℃に加熱したはんだ槽の上に置き、糸はんだを溶融させ、溶融後5秒間経過した後、試験片をはんだ槽の上から外した。
【0051】
各試験片をイソプロピルアルコールを用いて洗浄し、各試験片の高さをマイクロメーター(ミツトヨ社製)で測定した。そして、以下の計算式を用いて、広がり率を求めた。得られた結果を表1及び2に示す。
【0052】
広がり率(%)=100×(D-H)/D
H:はんだの高さ={試験後の試験片の厚さ}-{試験前の基板の厚さ(=0.3mm)}
D:試験に用いた糸はんだを球とみなした場合の直径(mm)=2.2(mm)
【0053】
表1及び2に示すように、本発明の構成要件をすべて満たす実施例1~30は、比較例1に比べて広がり率が高いことから、濡れ性が良好であることが分かる。また、実施例1~30のうち、さらにアミン系化合物を含む実施例10~30は、広がり率がより高いことから、濡れ性がより良好であることが分かる。
【0054】
[ソルダペースト]
<フラックスの作製>
表3に示す配合量の各原料を加熱容器に投入し、180℃まで加熱することにより、全原料を溶解させた。その後、室温まで冷却することにより、均一に分散された実施例31及び比較例2のフラックスを得た。なお、表3に示す各配合量は、フラックスに含まれる各成分の含有量と等しい。
【0055】
【0056】
表3に示す各原料の詳細を以下に示す。
(ロジン系樹脂)
KR-610:水添ロジン、荒川化学工業(株)製、商品名「KR-610」
KE-604:酸変性ロジン、荒川化学工業(株)製、商品名「KE-604」
KE-359:超淡色ロジンエステル、荒川化学工業(株)製、商品名「KE-359」
(有機酸系活性剤)
アジピン酸:住友化学工業(株)製
アゼライン酸:中外薬品工業(株)製
(ホスフィンオキシド)
TPPO:トリフェニルホスフィンオキシド、東京化成工業(株)製
(アミン系化合物)
C17Z:2-ヘプタデシルイミダゾール、四国化成工業(株)製
(溶剤)
HeDG:ヘキシルジグリコール、日本乳化剤(株)製
(チキソ剤)
スリパックスZHH:ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、日本化成(株)製
【0057】
<濡れ性評価>
実施例31及び比較例2のフラックスを含むソルダペーストの濡れ性評価は、JIS Z 3284-4に基づくディウェッティング試験により行った。なお、各ソルダペーストは、各フラックスと、はんだ合金粉末(SAC305:Sn96.5質量%、Ag3.0質量%、Cu0.5質量%)とを混合することにより得た。各フラックスの含有量は、各ソルダペースト全体100重量部に対して、11重量部とした。また、基板には、脱脂洗浄した42アロイ基板(30mm×30mm×0.3mm厚)を用いた。
【0058】
ディウェッティング試験の結果、JIS Z 3284-4における広がりの度合の区分が1又は2であったフラックスを「○」、前記広がりの度合の区分が3又は4であったフラックスを「×」として評価した。評価結果を表3に示す。
【0059】
表3に示すように、本発明の構成要件をすべて満たす実施例31では、はんだはじきが発生していないが、比較例2では、はんだはじきが発生していることから、実施例31のフラックスを含むソルダペーストは、濡れ性が良好であることが分かる。