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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】出力可変ハンドスイッチ
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/02 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
G05G1/02 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018164146
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020038415
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391055553
【氏名又は名称】スーガン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】山田俊介
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/086438(WO,A1)
【文献】特公平4-38092(JP,B2)
【文献】特表2012-518826(JP,A)
【文献】米国特許第5727099(US,A)
【文献】特表2007-500378(JP,A)
【文献】実開昭57-61512(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケ-スの上面に設けられた操作スイッチと、前記操作スイッチの動作により上下動する押込み部材と、前記ケ-ス内に導入され、その断面が互いに対向するように配置された投光側の光ファイバー及び受光側の光ファイバーとを備えた出力可変ハンドスイッチにおいて、
前記投光側の光ファイバー又は前記受光側の光ファイバーのいずれか一方を固定軸、他方を可動軸とし、前記押込み部材により、前記可動軸をその軸心と直角な方向に変位させ、前記押込み部材の変位量ΔLと前記押込み部材の変位に連動して変化する前記可動軸の変位量ΔXとの比ΔX/ΔLが1以下である変位スケール縮小機構を有し、
前記変位スケール縮小機構が、帯板状のベースと、前記ベースの一端から立ち上がるように取り付けられた円弧状の板ばねと、その一端が前記板ばねの上端に取り付けられ、かつその他端付近の上面が前記操作スイッチに接合又は当接する押込みアームと、前記押込みアームの長手方向中間の所定の位置において、前記押込みアームから下方に延在する可動軸取付け部材と、前記可動軸取付け部材と対応する位置において、前記ベースから上方に延在する固定軸取付け部材とを備えてなることを特徴とする出力可変ハンドスイッチ
【請求項2】
前記押込み部材の変位量ΔLと前記受光側の光ファイバーの受光量とが比例して変化することを特徴とする請求項1に記載の出力可変ハンドスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハンドスイッチに関し、とくに、ハンドスイッチを透過又は反射する光の光量を変化させて、その出力を連続的に可変にする出力可変ハンドスイッチ、に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドスイッチは、動力機器や測定機器を、機器本体から離れた場所で操作する手段として広く用いられており、医療現場とくに外科手術の現場において多用されている。
【0003】
かかるハンドスイッチは、単に機器の電源をON・OFFする2値制御の手段としてのみならず、機器の出力を最大値から最小値までの間の任意の値に制御する可変コントローラとして用いられることも少なくない。
【0004】
具体的な例をあげると、血管のX線検査やCT検査においては、造影剤等の薬剤を血管に注入しつつ撮影を行うが、その際、医師等の検査者が、患者の体調や、薬剤の造影効果等を判断しつつ、ハンドスイッチにより薬剤の注入量をコントロールする。
すなわち、薬剤が貯溜されたシリンダーを押圧するポンプの圧力を、ハンドスイッチ式の可変コントローラによって制御して、薬剤の注入量をコントロールするという方法が採られている。
【0005】
このようなハンドスイッチ式の可変コントローラの可変物理量としては、光の強度すなわち光量の変化が用いられることが多い。その理由は以下のように推測される。すなわち、ハンドスイッチの操作は、通常押しボタンスイッチにより行われる。押しボタンの僅かな変位により、大幅な物理量の変化を発生させるには、可変物理量として「光量」を用いれば、その変化は、光電変換手段により容易に電圧変化に変換できるので、動力機器の出力を制御する上で何ら問題は無いからである。
【0006】
このような光量の変化による可変コントローラの機能を実現したハンドスイッチの例として、特許文献1の「可変ハンドスイッチ」があげられる。以下、この従来技術のハンドスイッチについて、やや詳しく説明する。
【0007】
図8は、この従来技術のハンドスイッチの構造を分解して示す斜視図である。 このハンドスイッチは、ケ-ス20の上に設けられた操作スイッチ21、この操作スイッチにより上下動する押込み部材22、これと連動する移動壁23、ケ-スのネック部24より導入され、その断面が移動壁23に対向して配置された一対の光ファイバー(投光側ファイバー25及び受光側ファイバー26)等から構成されている。
【0008】
図9は、上記のハンドスイッチの動作原理の説明図である。移動壁23に対向するように、投光側ファイバー25と受光側ファイバー26が並んで配置され、投光側ファイバー25から入射する光は、移動壁23の表面で反射して受光側ファイバー26で受光される。
【0009】
移動壁23の前面には、グラデーションシート27が貼付けられている。このグラデーションシート27は、プラスチックフィルムの表面に、上下方向でその反射率が徐々に変わるような加工が施されてなるものである。
操作スイッチ21を押し込むことにより、移動壁23が降下して、投入光が照射する位置での表面反射率が変化する。
【0010】
そのため、操作スイッチ21の上下動により、受光側ファイバー26の光量が変化する。投光側ファイバー及び受光側ファイバーの光量の情報は、光電変換手段28により、電気出力の情報に変換される。これによりポンプ29の出力が制御され、シリンダー30内に貯溜された薬液を押圧するピストン31の圧力が制御され、造影剤等の薬液の注入量が制御されることになる。
【0011】
このように、グラデーションシート27を用いて、受光側ファイバーの光量が連続的に変化するようにしていることが、特許文献1の可変ハンドスイッチの特徴である。なお、図8,9においては移動壁23に貼付されたグラデーションシート27で反射させて光量を変化させているが、特許文献1には投光側ファイバー25と受光側ファイバー26とを対向させ、その間に光を透過するグラデーションのついた壁を設け、グラデーションの濃淡により透過する光量を制御する方式も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】WO2004-086438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、上述のようなグラデーションシートを用いて光量を制御する可変ハンドスイッチの性能について、種々検討した結果、以下のような問題があることを知見した。すなわち、光量の出力特性が経時的に変化し、その耐久性が十分ではないという問題である。これは、グラデーションシートの生地であるプラスチックフィルムが、光の照射によって劣化することに起因するものと考えられる。
【0014】
すなわち、かなり強い光を継続して照射することによって、プラスチックフィルムが変質し、その透明度が低下する。そのため、グラデーションシートの無地に近い部分の反射率又は透過率が低下し、最大出力側の光量が低下するという現象が起こる。さらに劣化が進行すると、グラデーションシートの表面に亀裂やヒビ割れが生じて、部分的に反射率が大きく変化する。これにより、反射率又は透過率のグラデーション特性が乱され、光量の出力特性が不安定になるという問題である。
【0015】
かかるプラスチックフィルムの光劣化の問題を、根本的に解決するためには、グラデーションシートを用いることなく、操作スイッチの動作により、受光側の光量を任意のレベルに可変にする光量制御の新たな技術を確立する必要がある。
【0016】
従来から、光ファイバーを用いた光伝送路において、光ファイバーの切断面を突き合わせて光路を接続している部位(以下、これを単に「接続部」という)において、その両側の光ファイバーの軸心をずらすことによって、伝送される光量を可変にし得ることが知られている。すなわち、接続部の上流(投光)側の光ファイバー又は下流(受光)側の光ファイバーのいずれか一方を固定軸、他方を可動軸として、可動軸を所定量変位させることによって、受光側の光量の制御が可能になる。
【0017】
より具体的に説明を付け加えると、接続部における光の伝達率(=受光側の光量/投光側の光量×100)をRとし、可動軸の変位量(可動軸と固定軸の軸心間の距離)をΔX、光ファイバー直径をDとすると、ΔX/D=0でR=100となり、ΔX/D≧1.0でR=0となる。この特性により、ΔXにより、接合部の光の伝送のON・OFF制御が可能なことが容易に理解される。
【0018】
さらに、ΔX/Dが0~1.0の範囲においては、RはΔX/Dの関数として、R=ψ(ΔX/D)と表示できる。この関数は1次関数ではないが、ΔX/Dの増加に伴ってRが一意的に減少する(その微係数dR/dΔXが常にマイナスの)関数関係にあり、この特性を利用して、可動軸の変位量ΔXを制御して受光側の光量を任意のレベルに可変にする可変コントローラを構成することができる。
【0019】
以下本明細書では、光ファイバーの接合部の光軸をずらすことによって、受光側の光量を任意のレベルに制御する方法を、光軸制御法という。ハンドスイッチに光軸制御法を適用するにあたって、問題になる点は、操作スイッチの動作による変位量ΔLと光ファイバーの直径Dとのマッチングの問題である。以下、この問題についてやや詳しく説明する。
【0020】
ハンドスイッチに用いる光ファイバーは、光の伝達力の観点からは、芯径が0.5mm以下の単心ファイバーで十分である。一方、光ファイバーの芯径がある程度以上に(例えば2mm以上に)なるとファイバーの剛性が大きくなり、撓み難くなって、ハンドスイッチのハンドリング性に大きな悪影響を及ぼすおそれがある。
【0021】
とくに、ハンドスイッチには、投光側と受光側の少なくとも2本の光ファイバーが接続されるため、ファイバーの剛性が大きい場合のハンリングの不便さは非常に大きなものになる。従って、ハンドスイッチに用いる光ファイバーの芯径は、1mm程度以下であることが望ましい。
【0022】
一方、光軸制御法おける可動軸の変位量ΔXの範囲は、ファイバーの芯径Dとの関係によって変わり、ΔXはDの値以下の範囲になる。すなわち、D=1mmであれば、ΔXの範囲は0~1.0mmになり、D=0.5mmであれば、ΔXの範囲は0~0.5mmとなる。
【0023】
これに対して、操作スイッチの動作による変位量ΔLは通常は、2~5mm程度と考えられる。ハンドスイッチにおいて、親指の操作で変位量ΔLを0~1.0mmの範囲で調節するには、極めて微妙な調節が必要になり、事実上は不可能と言っても差し支えないであろう。
【0024】
したがって、ハンドスイッチに光軸制御法を適用するためには、操作スイッチの動作に連動して、可動軸を移動させる際に、可動軸の変位量ΔXを、操作スイッチによる変位量ΔLに対して大幅に縮小させる「変位スケール縮小機構」を導入することが必要不可欠になると考えられる。
【0025】
この変位スケール縮小機構は、変位量ΔXと変位量ΔLの比(ΔX/ΔL)がほぼ一定で(変換前後の変位量が比例関係に有り)、かつ片手で把持するハンドスイッチのケ-スの中に収容可能なように小形で簡易な構造を有するものであることが望ましい。
【0026】
そこで本発明は、光軸制御法でその出力を可変に制御するハンドスイッチにおいて、変位スケール縮小前後の変位量が比例関係に有り、かつハンドスイッチのケ-スの中に収容可能なように小形で簡易な構造を有する「変位スケール縮小機構」を提供し、これにより、ハンドスイッチ内での可動軸の変位量を光ファイバーの直径以内、例えば0~0.5mm又は0~1.0mmの範囲内で調節すること可能にする手段を提供することを課題としている。
【0027】
さらに、これにより、グラデーションシートを用いることなく受光側光量を任意のレベルに調節することを可能にし、もって出力の経時変化がなく、耐久性に優れた可変ハンドスイッチを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するための本発明の出力可変ハンドスイッチは、ケ-スの上面に設けられた操作スイッチと、前記操作スイッチの動作により上下動する押込み部材と、前記ケ-ス内に導入され、その断面が互いに対向するように配置された投光側の光ファイバー及び受光側の光ファイバーとを備えた出力可変ハンドスイッチにおいて、
前記投光側の光ファイバー又は前記受光側の光ファイバーのいずれか一方を固定軸、他方を可動軸とし、前記押込み部材により、前記可動軸をその軸心と直角な方向に変位させ、前記押込み部材の変位量ΔLと前記押込み部材の変位に連動して変化する前記可動軸の変位量ΔXとの比ΔX/ΔLが1以下である変位スケール縮小機構を有し、
前記変位スケール縮小機構が、帯板状のベースと、前記ベースの一端から立ち上がるように取り付けられた円弧状の板ばねと、その一端が前記板ばねの上端に取り付けられ、かつその他端付近の上面が前記操作スイッチに接合又は当接する押込みアームと、前記押込みアームの長手方向中間の所定の位置において、前記押込みアームから下方に延在する可動軸取付け部材と、前記可動軸取付け部材と対応する位置において、前記ベースから上方に延在する固定軸取付け部材とを備えてなることを特徴とするものである。
【0029】
上記の出力可変ハンドスイッチおいては、前記押込み部材の変位量ΔLと前記受光側の光ファイバーの受光量とが比例して変化し、前記の押込み部材の変位量と前記可動軸の変位量との比ΔX/ΔLが、ほぼ一定であって、その値が0.2~0.5の囲内であることが望ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、光軸制御法でその出力を可変に制御するハンドスイッチにおいて、変位スケール縮小前後の変位量が比例関係に有り、かつハンドスイッチのケ-スの中に収容可能なように小形で簡易な構造を有する「変位スケール縮小機構」を提供することが可能になり、これにより、ハンドスイッチ内での可動軸の変位量を光ファイバーの直径以内、例えば0~0.5mm又は0~1.0mmの範囲内で調節することが可能になった。
【0032】
また、これにより、グラデーションシートを用いることなく受光側光量を任意のレベルに調節することを可能にし、もって出力の経時変化がなく、耐久性に優れた出力可変ハンドスイッチを提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、実施例の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態に付いて説明する。図1は、本発明の第一の実施例である出力可変ハンドスイッチの構造を分解して示す斜視図である。また、図2は、このハンドスイッチのコントローラ本体の断面前記要図である。
【0034】
このハンドスイッチは、片手の掌で把持できる大きさのケ-ス1とその内部に収容されるコントローラ本体2とからなっている。ケ-ス1は舟型の中空体で、その高さ方向の中央付近で上下に2分されて、上側ケ-ス1aと下側ケ-ス1bに分割可能になっている。この両者の中にコントローラ本体2を取り付けた後、両ケ-スを嵌め合わせて一体に構成する。
【0035】
上側ケ-ス1aの上面には、操作スイッチ3が設けられている。操作スイッチ3はゴム製の凸部からなり、ハンドスイッチを握った際の親指の操作により、ゴムが変形して、その下側に接続又は当接する押込みアームを上下動させる。
【0036】
ケ-ス1の手元側の端部からは、一対の光ファイバーがケ-ス内に導入されている。この一対の光ファイバーのうち、一方が投光側ファイバー4となり、他方が受光側ファイバー5となる。この両ファイバーは、ケ-ス1の中央付近で内側に撓まされて、両者の断面を突き合わせて、光路の接合部6を形成している。
【0037】
本実施例のハンドスイッチにおいては、コントローラ本体2が全体として、「変位スケール縮小機構」として作用する。以下その構造と機能について説明する。図3はコントローラ本体の構造を説明するための図で、図3(a)はコントローラ本体の断面図、図3(b)は図3(a)のA部の拡大斜視図である。
【0038】
コントローラ本体2は、帯板状のベース7と、このベース7の一方の端部から立ち上がるように取り付けられた円弧状の板ばね8と、この板ばね8の上端に取り付けられた押込みアーム9とからなっている。押込みアーム9の端部付近の上面に凸部が形成され、この凸部の上面が操作スイッチ3の下面に当接して、操作スイッチ3を押し下げる操作により、押込みアーム9が下降する。操作スイッチ3から指を離すと、板ばね7の反撥力により、押込みアーム9が元の位置に復元する。
【0039】
押込みアーム9の長手方向中間の所定の位置に、押込みアーム9から下方に延在する可動軸取付け部材10が取り付けられている。可動軸取付け部材10の下端に、投光側ファイバー4又は受光側ファイバー5のいずれか一方の光ファイバーが(この実施例では受光側ファイバー5)が、その光軸が水平になるよう取り付けられている。
【0040】
ベース7の所定の位置に(可動軸と固定軸の軸心が一致する位置に)固定軸取付け部材11が、ベース7から上方に延在するように取り付けられている。固定軸取付け部材11の上端に、投光側ファイバー4が、その光軸が水平になるよう取り付けられている。
【0041】
図3(b)に示すように、可動軸取付け部材10を押し込んだときに、可動軸と固定軸の軸心が一致するように一対の光ファイバーが配置されている。なお、図示していないが、操作スイッチ3が押し込まれていない状態では、可動軸の軸心は固定軸の軸心とずれるため、受光側の光量が0になるように構成している。
【0042】
なお、本実施例では、固定軸取付け部材11に対し、可動軸取付け部材10が直角横方向から延在するような構造になっているが、これに限る必要はなく、両者が直線上に延在するような構造でも差し支えない。
【0043】
次ぎに、上述したコントローラ本体2が、変位スケール縮小機構として作用する原理について説明する。図4は、本実施例における変位スケール縮小機構の原理の説明図である。
【0044】
操作スイッチ(図示していない)により、押込みアーム9が押し下げられると、押込みアーム9は、板ばね8の湾曲中心(図のO点)を回転中心として、角度θだけ反時計回りに回動する。すなわち、押込み点(図のP点)は矢印の方向に移動する。
【0045】
これに対応して、可動軸取付け部材10の光ファイバー取付け点(図のQ点)も角度θだけ反時計回りに回動する。押込み部材の変位量(ΔL)は、辺OPの長さ(以下、OP2点間の辺長を、単にOPと書く)に対し、ΔL=OPsinθとなる。
【0046】
同様に、可動軸の変位量ΔX=OQsinθとなる。ゆえに、ΔX/ΔL=OQsinθ/OPsinθ=OQ/OPとなる。したがって、ΔX/ΔLの縮尺比は、辺長比OQ/OPと一致することになり、可動軸取付け部材11の取付け位置を変えることによって、変位スケールの縮小比を任意に変えられることになる。なお、板ばね8の湾曲中心(図のO点)を基準点として変位スケール縮小機構を説明してきたが、板ばね8のサイズ等により基準点Oは、板ばね8の中心点側に移動する。
【0047】
上記の変位スケール縮小機構は、「変位スケール縮小前後の変位量が比例関係に有り、かつハンドスイッチのケ-スの中に収容可能なように小形で簡易な構造を有する」という要件を充たすものであり。かつ、ΔX/ΔLを0.2~0.5程度の範囲で変えることも、容易に可能になっている。
【0048】
次ぎに、本発明のハンドスイッチにおける光量出力の変化特性について説明する。図5は、本実施例のハンドスイッチにおいて、操作スイッチの押込み量と受光側光量の関係を測定した結果の一例を示す図である。この測定は、図1及び図2に示したハンドスイッチを用い、光ファイバーは芯径0.5mmの単心のものを用いた。
【0049】
図5の縦軸は、デジタルファイバーセンサー(KEYENCE FS-N10シリーズ)で測定した受光側光量の値で、横軸は操作スイッチの押込み量(単位mm)である。
図に見られるように、押込み量がある値以下では(A領域)、受光側光量はほぼ0になっている。これは、固定軸12と可動軸13の位置関係を示す下の図において、左側の図のように、両軸の間隔(本明細書ではΔXと表記)が、光ファイバーの直径D以上にずれている(ΔX/D≧1)ため、受光側に全く光が伝送されない領域である。
【0050】
つづいて、B領域は、下の中央の図に見られるように、固定軸12と可動軸13の光ファイバー芯の一部が重なり合っている(ΔX/D=0~1となる)領域で、操作スイッチの押込み量の増加とともに、受光側の光量がほぼ直線的に増加している。
さらに、C点は、下の右側の図に見られるように、固定軸12と可動軸13の軸心が一致する(ΔX/D=0)点で、受光側の光量は最大値となる。
【0051】
B領域における操作スイッチの押込み量は、2.5mmから4.5mmの範囲である(ΔL=4.5-2.5=2.0mm)。一方、B領域におけるΔX/Dは0から1の範囲である。本実施例におけるDは0.5mmであるから、ΔX/ΔL=0.5/2.0=0.25になっていると推測される。すなわち、このハンドスイッチの変位スケール縮小機構により、操作スイッチの押込み量のスケールが0.25倍になって、可動軸の変位スケールとして伝達されていることが分かる。
【0052】
次ぎに、本発明の第二実施例であるハンドスイッチについて説明する。図6は、本発明の第二実施例である出力可変ハンドスイッチの構造を分解して示す斜視図である。また、図7は本発明の第二実施例におけるコントローラ本体の断面前記要図である。このハンドスイッチの上側ケ-ス1aには、2個の操作スイッチが設けられている。すなわち、先端側の第一操作スイッチ3aと中央付近の第二操作スイッチ3bである。
【0053】
これに対応して、コントローラ本体も2個配設されている。第一操作スイッチ3aで操作される第一コントローラ本体2aと、第二操作スイッチ3bで操作される第一コントローラ本体2bである。このように、一つのケ-ス内に各2個の操作スイッチとコントローラ本体が配置されていることが、この第二実施例のハンドスイッチの特徴である。
【0054】
上記2個のコントローラ本体には、いずれも光ファイバーの接合部(投光側ファイバーと受光側ファイバーの断面を突き合わせて、光軸の変位により受光側の光量を制御する部位)を有している、すなわち、第一コントローラ本体2aには、第一接合部6aが設けられ、ここで、第一投光側ファイバー4aと第一受光側ファイバー5aが対向配置される。
【0055】
また、第二コントローラ本体2bには、第二接合部6bが設けられ、ここで、第二投光側ファイバー4bと第二受光側ファイバー5bが対向配置されている。したがって、この第二実施例のハンドスイッチには、4a,4b,5a,5bの4本の光ファイバーが接続されることになる。
【0056】
さらに、上記の2個のコントローラ本体はいずれも、変位スケール縮小機構の機能を果たすように構成されている。すなわち、操作スイッチ3の変位ΔLを押込みアーム9に伝え、押込みアーム9の長手方向中間の位置に可動軸取付け部材10を配して、操作スイッチ3の変位のスケールを縮小して、可動軸の変位ΔXとして伝達するように構成されている。
【0057】
ただし、第一及び第二コントローラ本体では、その変位スケールの縮小率ΔX/ΔLが相違している。第一コントローラ本体2aでは、前記第一実施例の場合と同様に、ΔX/ΔLは0.2~0.5と小さいのに対して、第二コントローラ本体2bでは、ΔX/ΔLが大きく1に近い値となっている。
【0058】
このように、変位スケールの縮小率を変えている理由は、第一コントローラ本体2aは、受光側ファイバーの光量を任意のレベルに可変にする可変コントローラとして使用するのに対して、第二コントローラ本体2bは、受光側ファイバーの光量を0又は1、すなわちON・OFFの2値制御を目的としているためである。
【0059】
第一受光側ファイバー5aの光量情報は光電変換手段により、電気情報に変換され、これにより動力機器(本実施例では、薬液注入ポンプ)の出力が制御される。この電気情報を動力機器に伝達する回路(以下、単に伝達回路という)にリレースイッチを設けて、第二受光側ファイバー5bの2値情報により、このスイッチをON・OFFするため、1個のハンドスイッチに2個のコントローラ本体を組み込んでいるのが、第二実施例のハンドスイッチの特徴である。
【0060】
この第二実施例のハンドスイッチを使用する際の操作手順は以下のごとくになる。ハンドスイッチの使用前の状態では、上記の伝達回路はOFFの状態になっている。そこで操作者は、まず第二操作スイッチ3bを押し込んで、伝達回路をONの状態にする。ここで、第二操作スイッチ3bの押込みを解除しても、伝達回路に設けられた保持回路により、ONの状態が継続する。
【0061】
その後、第一操作スイッチ3aにより、薬剤注入量を制御しつつ、血管の検査を行う。検査の終了後、まず第二操作スイッチ3bを押し込むことにより、ONを保持していた状態が解除され、伝達回路はOFF状態になる。
【0062】
上記のようなダブルスイッチ方式にするのは、安全の確保のためである。すなわち、第一実施例のハンドスイッチでは、機器のトラブルや操作者の誤操作により、意図しない時に薬液注入ポンプが作動する危険性があるが、第二実施例のハンドスイッチでは、操作者が伝達回路をONにしない限り、薬液注入ポンプは作動しないので、誤操作によるトラブルの危険性は顕著に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明の第一の実施例である出力可変ハンドスイッチの構造を分解して示す斜視図である。
図2】本発明の第一実施例におけるコントローラ本体の断面前記要図である。
図3】本発明の第一実施例におけるントローラ本体の構造の説明図である。
図4】本実施例における変位スケール縮小機構の原理の説明図である。
図5】本実施例のハンドスイッチにおいて、操作スイッチの押込み量と受光側光量の関係を測定した結果の一例を示す図である。
図6】本発明の第二実施例である出力可変ハンドスイッチの構造を分解して示す斜視図である。
図7】本発明の第二実施例におけるコントローラ本体の断面前記要図である。
図8】従来技術のハンドスイッチの構造を分解して示す斜視図である。
図9】従来技術のハンドスイッチの動作原理の説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1,1a,1b:ケ-ス
2,2a,2b:コントローラ本体
3,3a,3b:操作スイッチ
4,4a,4b:投光側光ファイバー
5,5a,5b:受光側光ファイバー
6,6a,6b:接合部
7:ベース
8:板ばね
9:押込みアーム
10:可動軸取付け部材
11:固定軸取付け部材
12:固定軸
13:可動軸
20:ケ-ス
21:操作スイッチ
22:押込み部材
23:可動壁
24:ケ-スの手元部
25:投光側光ファイバー
26:受光側光ファイバー
27:グラデーションシート
28:光電変換手段
29:ポンプ
30:シリンダー
31:ピストン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9