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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ガスタービンの燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/14 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
F23R3/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020122937
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2021169913
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】202010294542.X
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520266650
【氏名又は名称】マーベル-テック・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】リン・ガァン
(72)【発明者】
【氏名】チェン・イファン
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522533(JP,A)
【文献】特開2017-053276(JP,A)
【文献】特開2012-083097(JP,A)
【文献】特開平11-211086(JP,A)
【文献】特開2014-202465(JP,A)
【文献】実開昭60-076729(JP,U)
【文献】実開昭59-108054(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/14
F23R 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を形成する燃焼筒と、
前記燃焼筒の頂部に設けられた燃料噴射器と、
前記燃焼室よりも上流側に位置して前記燃料噴射器を収納する収納室とを備え、
前記燃料噴射器は、
前記収納室を貫通して前記燃焼室に燃料を供給する複数の燃料供給管と、
前記燃料供給管の下流部の外側に設けられて空気を通過させるガイド部材とを有し、
前記複数の燃料供給管のそれぞれの上流部が連通路により連通され、
前記連通路が、エンドカバーに形成され、かつ、前記エンドカバーから突出する燃料供給口に連通するように構成されており、
前記ガイド部材と前記燃料供給管とが連結壁により連結され、
前記燃料供給管の下流部に、前記ガイド部材の内側を通過する空気に燃料を噴射して空気と混合させる燃料噴射孔が設けられており、
前記連結壁に、前記燃料噴射孔が臨む、前記燃料供給管の周方向に並んだ複数のガイド溝が形成され、
前記空気と前記燃料が前記ガイド部材から前記燃焼室に供給されるガスタービンの燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンの燃焼装置において、前記燃焼筒とこれを覆うハウジングとの間に形成されて空気を前記収納室に導入する空気導入通路を有するガスタービンの燃焼装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガスタービンの燃焼装置において、前記収納室と前記空気導入通路を連通させる部位に空気の整流板が設けられているガスタービンの燃焼装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のガスタービンの燃焼装置において、前記ガイド部材は前記燃料供給管の軸心方向から見て円筒形または多角形であるガスタービンの燃焼装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガスタービンの燃焼装置において、前記燃料噴射孔は、前記燃料供給
管の半径方向に対して0~30°の方向に開口し、
前記ガイド部材のガイド溝は、前記燃料供給管の軸心方向に対して0~30°の方向に開口し、
前記ガイド溝からの空気流出の方向は、前記燃料噴射孔に対して60°~90°の角度をなすように配置されているガスタービンの燃焼装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のガスタービンの燃焼装置において、前記ガイド部材の内側に、前記ガイド部材と前記燃料供給管との間を通る空気をガイド部材回りに旋回させる固定の旋回羽根が配置されているガスタービンの燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに適用されるガスタービンの燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンにおいて、NOx発生量を効果的に低減させる予混合燃焼方式を採り入れた燃焼方式、例えば、希薄予混合燃焼方式と拡散燃焼方式とを組み合わせた複合燃焼方式が提案されている(特許文献1)。
またガスタービンエンジンに使用される燃焼装置において、局所的な高温燃焼を防止してNOxの発生を抑制し、且つ逆火現象を防止する技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-210641号公報
【文献】特許第6285081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2では、複数の燃料噴射用環状部と、複数の燃焼空気用環状部とを同心状に交互に配置し、燃料供給母管と各燃料噴射用環状部とを、複数の分岐燃料供給管で接続しているため、燃焼装置の構造が複雑になる。また燃料供給母管と、その下流側の各燃料噴射用環状部との間に、複数の分岐燃料供給管を配置するスペースを確保する分、燃焼装置全体の軸心方向が長くなる。
【0005】
本発明の目的は、構造を簡単化すると共に、装置全体の軸心方向を短くすることができるガスタービンの燃焼装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガスタービンの燃焼装置は、燃焼室を形成する燃焼筒と、
前記燃焼筒の頂部に設けられた燃料噴射器と、
前記燃焼室よりも上流側に位置して前記燃料噴射器を収納する収納室とを備え、
前記燃料噴射器は、
前記収納室を貫通して前記燃焼室に燃料を供給する燃料供給管と、
前記燃料供給管の下流部の外側に設けられて空気を通過させるガイド部材とを有し、
前記燃料供給管の下流部に、前記ガイド部材を通過する空気に燃料を噴射して空気と混合させる燃料噴射孔が設けられており、前記空気と前記燃料が前記ガイド部材から前記燃焼室に供給される。
【0007】
この構成によると、燃料供給管は、収納室を貫通して前記燃焼室に燃料を供給する。燃料供給管の下流部に、ガイド部材を通過する空気に燃料を噴射して空気と混合させる燃料噴射孔が設けられ、空気と燃料がガイド部材から燃焼室に供給される。このように燃料供給管からガイド部材に至る燃料の供給経路の構造を簡略化したうえで、空気と燃料がガイド部材から燃焼室に供給されるようにした。このため、複数の燃料噴射用環状部と複数の燃焼空気用環状部とを同心状に交互に配置し、且つ複数の分岐燃料供給管を必要とする従来構造よりも、部品点数を低減して構造を簡単化することができる。また、複数の分岐燃料供給管を配置するスペース等を確保する必要がないため、前記従来構造よりも装置全体の軸心方向の長さを短くすることができる。
【0008】
本発明において、前記燃焼筒とこれを覆うハウジングとの間に形成されて空気を前記収納室に導入する空気導入通路を有していてもよい。この構成によれば、空気と燃料との流動方向が逆向きの逆流型とすることができ、これにより装置全体の軸心方向をさらにコンパクト化することができる。
【0009】
前記空気導入通路を有する発明において、前記収納室と前記空気導入通路を連通させる部位に空気の整流板が設けられていることが好ましい。この構成によれば、空気導入通路から導入される空気が整流板を通過することで、整流板の下流側で空気が均一な流れに整流される。
【0010】
本発明において、前記ガイド部材は前記燃料供給管の軸心方向から見て円筒形または多角形であり、前記ガイド部材に前記燃料噴射孔が臨むガイド溝が形成されていてもよい。この構成によれば、ガイド部材に導入された空気は、ガイド溝を通過するとき流速が速くなる結果、燃料が空気中に円滑に吸い出されて空気との混合が促進される。
【0011】
前記ガイド部材が前記円筒形または多角形である場合、前記燃料噴射孔は、前記燃料供給管の半径方向に対して0~30°の方向に開口し、
前記ガイド部材のガイド溝は、前記燃料供給管の軸心方向に対して0~30°の方向に開口し、
前記ガイド溝からの空気流出の方向は、前記燃料噴射孔に対して60°~90°の角度をなすように配置されていることが好ましい。
燃料供給管の半径方向に対し燃料噴射孔の開口角度が30°を超えると、燃料噴射孔の加工性が低下する。また燃料供給管の軸心方向に対しガイド部材の出口開口角度が30°を超えると、燃料と空気が好適に混合されないおそれがある。燃料噴射孔に対しガイド溝の空気通路の方向が60°未満または90°を超えると、燃料と空気の混合が阻害される場合がある。
【0012】
この構成によれば、燃料噴射孔が燃料供給管の半径方向に対して0~30°の方向に開口しているため、燃料噴射孔の加工を容易化でき製造コストの低減を図れる。ガイド部材のガイド溝が燃料供給管の軸心方向に対して0~30°の方向に開口しているため、空気と燃料が好適に混合されて燃焼室に供給される。ガイド溝からの空気通路の方向は、前記燃料噴射孔に対して60°~90°の角度をなすように配置されているため、燃料の微粒子化が進み、空気と燃料とを均一に混合することができる。
【0013】
前記ガイド部材が前記円筒形または多角形である場合、前記ガイド部材の内側に、前記ガイド部材と前記燃料供給管との間を通る空気をガイド部材回りに旋回させる固定の旋回羽根が配置されていることが好ましい。この構成によれば、旋回羽根により、空気と燃料との混合が促進される。
【0014】
請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明から、より明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の符号は、同一または相当する部分を示す。
図1】本発明の第1実施形態に係る燃焼装置が適用されるガスタービンエンジンの概略構成を示すブロック図である。
図2】同燃焼装置の断面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図2のIV-IV線方向から見た正面図である。
図5図3の一部を拡大して示す図である。
図6図2の要部を拡大して示す図である。
図7図2のVII-VII線断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る燃焼装置の一部を拡大して示す断面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る燃焼装置の一部を拡大して示す断面図である。
図10図9のX-X線方向から見た背面図である。
図11】同燃焼装置の旋回羽根を部分的に示す周方向断面図である。
図12】本発明の第4実施形態に係る燃焼装置の燃料噴射器を斜め上流側から見た斜視図である。
図13】同燃料噴射器を下流方向から見た背面図である。
図14】同燃料噴射器の配置を示す背面図である。
図15】同燃料噴射器を示す斜め下流側から見た斜視図である。
図16】同燃料噴射器の縦断面図である。
図17】第1実施形態に係る燃焼装置のシミュレーション結果を示す概略図である。
図18】第3実施形態に係る燃焼装置のシミュレーション結果を示す概略図である。
図19】第4実施形態に係る燃焼装置のシミュレーション結果を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1実施形態に係る燃焼装置を図1ないし図7と共に説明する。
図1に示すように、ガスタービンエンジン1は、圧縮機2と、燃焼装置3と、圧縮機2に回転軸4を介して連結されたタービン5とを備える。ガスタービンエンジンを、以後、単にガスタービン1と称する。
【0017】
ガスタービン1では、導入した空気を圧縮機2で圧縮して燃焼装置3に導き、燃料を燃焼装置3内に噴射して前記空気と共に燃焼させ、得られた高温高圧の燃焼ガスによりタービン5を駆動する。このタービン5の駆動により圧縮機2が駆動される。ガスタービン1の出力により、例えば、航空機のロータまたは発電機等の負荷6を駆動する。燃焼装置3内に噴射される燃料として、例えば、水素ガスが適用される。以下の説明では、ガスタービン1の軸心方向における圧縮機2側を「前側」と呼び、タービン5側を「後側」と呼ぶ。
【0018】
燃焼装置3は、ガスタービン1の回転軸心の回りに複数箇配置されており、図2に示すように、ガスタービン1(図1)のメインハウジングMHに支持されている。燃焼装置3は、ハウジング7と、燃焼筒8と、燃料噴射器9と、この燃料噴射器9を収納する収納室10とを備える。これら燃焼装置3の構成部品は、例えば、軽量で耐熱性を有する金属等から構成されている。
【0019】
<ハウジング7>
ハウジング7は、この燃焼装置3の外筒となる略円筒状の部材であり、燃焼筒8を収容する。ハウジング7の長手方向中間付近に、点火プラグPが取り付けられ、この点火プラ
グPの先端部が燃焼筒8内の燃焼室8aに挿入されている。ハウジング7には、このハウジング7の前端を塞ぐエンドカバー14が複数のボルト15により固定されている。ハウジング7内における前端部には、円筒状の収納室10がハウジング7と同心状に設けられている。収納室10は燃焼室8aよりも上流側に位置する。収納室10から燃焼筒8が円筒状に延びるように設けられ、これら燃焼筒8および収納室10は、ハウジング7に同心状に設けられる。
【0020】
<燃焼筒8>
図2に示すように、内側に前記燃焼室8aを形成する燃焼筒8とこれを覆うハウジング7との間には、空気導入通路16が形成されている。空気導入通路16は、圧縮機2(図1)で圧縮された空気Aを収納室10に導入する。燃焼装置3は、空気Aと燃料Fとの流動方向が逆向きの逆流型として構成される。燃焼室8aに噴射された燃料Fと空気Aに、点火プラグPで点火することにより、燃焼室8a内に火炎が形成されるようになっている。
【0021】
<燃料噴射器9>
図2に示すように、収納室10は、燃焼室8aよりも上流側に位置して複数の燃料噴射器9を収納する。これら燃料噴射器9は、燃焼筒8の頂部に設けられ、燃焼室8aに燃料Fを噴射する。各燃料噴射器9は、収納室10を貫通して燃料Fを燃焼室8aに供給する有底筒状の燃料供給管11と、燃料供給管11の下流端部の外側に設けられた筒状のガイド部材12とを有する。ガイド部材12は燃料供給管11の軸心C2方向から見て円筒形である。燃料供給管11とガイド部材12は同心であり、連結壁13により連結されている。収納室10と燃焼室8aとを隔てる隔壁17が設けられ、隔壁17に、これを貫通して複数のガイド部材12が取り付けられている。燃料供給管11およびガイド部材12と連結壁13とは溶接され、ガイド部材12と隔壁17も溶接されている。
【0022】
図6に示すように、燃料供給管11の周壁における連結壁13よりも若干下流側に燃料噴射孔18が設けられている。燃料噴射孔18は燃料供給管11の周壁に複数個が等間隔で配置されている。燃料噴射孔18から噴射された燃料Fに対して上流から空気Aが供給される。図5に示すように、連結壁13には、空気を通過させる複数のガイド溝20が形成されている。複数のガイド溝20は周方向に等間隔で設けられている。各ガイド溝20の下流側に燃料噴射孔18が臨んでいる。ガイド部材12は円筒状のガイド管12Aからなり、このガイド管12Aの内側に燃料噴射孔18が臨むガイド溝20が形成されている。
【0023】
図3に示すように、燃料噴射器9は収納室10内で縦横にほぼ等間隔で配置されている。図6に示すように、燃料供給管11の複数の燃料噴射孔18からガイド部材12の内側に燃料Fを噴射して、上流からガイド溝20を通って供給される空気Aに、燃料噴射孔18から噴射された燃料Fを混合させる。この例の燃料噴射孔18は、燃料供給管11の半径方向R1に対して0°の方向、つまり半径方向R1に沿って開口している。但し、燃料噴射孔18の開口角度は前記0°に限定されるものではない。またこの例のガイド部材12は空気流出の方向が、燃料噴射孔18に対して90°の角度をなすように配置されている。
【0024】
図2に示すように、各燃料供給管11は、上流部がエンドカバー14に支持され、下流部がガイド部材12および連結壁13を介して隔壁17に支持されている。これら燃料供給管11は、各軸心C2方向が収納室10の軸心C1方向に平行で、互いに所定間隔を隔てて配置されている。
【0025】
またこの例では、図4に示すように、隣接する定められた三本の燃料供給管11の組毎
に、外部から燃料Fが供給される。各燃料供給管11の組は、それぞれの上流部が連通路21により連通されると共に、前記連通路21がエンドカバー14から突出する燃料供給口22に連通するように構成されている。各燃料供給口22から燃料Fが供給される。
【0026】
<整流板23>
図2に示すように、収納室10と空気導入通路16を連通させる部位に、空気の整流板23が設けられている。整流板23は、燃焼筒8の軸心C1方向と同心の円筒状に形成されている。この整流板23の周壁には、図7に示すように、径方向に貫通する複数の貫通孔23aが設けられている。これら貫通孔23aは、円周方向および軸方向に所定間隔おきに並ぶ。図2に示すように、空気導入通路16から導入される空気Aが、整流板23の複数の貫通孔23a(図7)を通過することで、整流板23の下流側で空気Aが均一な流れに整流される。
【0027】
<作用効果>
以上説明したガスタービン1の燃焼装置3によれば、図2の複数の燃料供給管11が所定間隔を隔てて配置されるうえ、各燃料供給管11の下流部に、円周方向複数の燃料噴射孔18が設けられている。このため、燃料噴射器9から燃焼室8a全域にわたって均一に燃料Fが噴射される。これにより燃料噴射器9の全面において微細な火炎が多点で保持される。したがって、局所的な高温燃焼の発生が防止され、NOxの発生を抑制し得る。また、燃料噴射孔18から噴射された燃料Fに対して上流から空気Aが供給されるため、火炎が燃料噴射器9の内部に入り込むことがないため、逆火現象が抑制される。
【0028】
燃料供給管11は、収納室10を貫通して燃焼室8aに燃料Fを供給する。燃料供給管11の下流部に、ガイド部材12の内側に燃料Fを噴射して空気Aと混合させる燃料噴射孔18が設けられ、空気Aと燃料Fがガイド部材12から燃焼室8aに供給される。このように燃料供給管11からガイド部材12に至る燃料Fの供給経路の構造を簡略化したうえで、空気Aと燃料Fがガイド部材12から燃焼室8aに供給されるようにした。このため、複数の燃料噴射用環状部と複数の燃焼空気用環状部とを同心状に交互に配置し、且つ複数の分岐燃料供給管を必要とする従来構造(特許文献2)よりも、部品点数を低減して構造を簡単化することができる。また、複数の分岐燃料供給管を配置するスペース等を確保する必要がないため、前記従来構造よりも装置全体の軸心方向を短くすることができる。
【0029】
燃焼筒8とハウジング7との間に、空気Aを収納室10に導入する空気導入通路16が形成されているので、空気Aと燃料Fとの流動方向が逆向きの逆流型とすることができ、これにより装置全体の軸心方向をさらにコンパクト化することができる。
ガイド部材12の内側に燃料噴射孔18が臨むガイド溝20が形成されているため、ガイド部材12の内側に導入された空気Aは、ガイド溝20を通過するとき流速が速くなる結果、燃料Fが空気A中に円滑に吸い出されて空気Aとの混合が促進される。
【0030】
燃料噴射孔18が燃料供給管11の半径方向R1に対して0°の方向に開口しているため、燃料噴射孔18の加工を容易化でき製造コストの低減を図れる。ガイド部材12が燃料供給管11の軸心C2に対して0°の方向に開口しているため、ガイド部材12の通路、つまり空気流出の方向が燃料噴射孔18に対して90°の角度をなすので、空気Aが燃料Fを横から切る形となって空気Aと燃料Fとの混合が促進される。
【0031】
<他の実施形態について>
以下の説明において、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は先行して説明している形態と同様である。
【0032】
[第2の実施形態]
図8に示すように、ガイド溝20よりも上流側に燃料噴射孔18が設けられてもよい。この例の燃料噴射孔18は、燃料供給管11の半径方向R1に対して、下流側に定められた角度αだけ傾斜して開口している。前記角度αは0~30°(+30°)である。この角度αにつき、燃料噴射孔18が半径方向外方に向かうに従って軸心方向下流側に傾斜する場合の燃料噴射孔18の傾斜角を「正」の傾斜角とする。
【0033】
ガイド部材12のガイド溝20は、燃料供給管11の軸心C2に対して定められた角度βの方向に開口している。前記角度βは0~30°(+30°)である。この角度βにつき、ガイド溝20が上流側に向かうに従って半径方向外方に傾斜する場合の傾斜角を「正」の傾斜角とする。
ガイド部材12のガイド溝20の通路方向は、燃料噴射孔18に対して定められた角度γをなす。前記角度γは60°~90°である。
角度α、β、γは、それぞれ設計等によって任意に定める角度であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な角度を求めて定められる。
【0034】
燃料噴射孔18が燃料供給管11の半径方向R1に対して0~30°の方向に開口しているため、燃料噴射孔18の加工を容易化でき製造コストの低減を図れる。ガイド部材12のガイド溝20が燃料供給管11の軸心C2に対して0~30°の方向に開口しているため、空気Aと燃料Fが好適に混合されて燃焼室8aに供給される。ガイド部材12の通路方向は、前記燃料噴射孔18に対して60°~90°の角度をなすように配置されているため、燃料Fの噴射が円滑になされて空気Aと燃料Fとを均一に混合することができる。
【0035】
ガイド溝20よりも下流側に燃料噴射孔18が設けられる構成(図6参照)においても、角度αが0~30°、角度βが0~30°および角度γが60°~90°が好ましい。
【0036】
[第3の実施形態]
<旋回羽根>
図9および図10に示すように、ガイド部材12の内側に、連結壁13と燃料供給管11との間を通る空気Aをガイド管12回りに旋回させる固定の旋回羽根24が配置されている。旋回羽根24は内外輪の間に傾斜した複数の羽根26(図11)を固定したもので、一般にスワーラと呼ばれる。羽根26は、図11図9のXI-XI線断面図)に示すように、ガイド部材12(図10)の軸心C2に対し、傾斜角度δで傾斜している。前記傾斜角度δは15°~45°、好ましくは20°~40°である。
【0037】
この構成によれば、旋回羽根24により、空気Aと燃料Fとの混合が促進され、燃焼室8aの内部に旋回渦が形成されて安定な火炎が得られる。但し、羽根26の傾斜角度δが45°を超えると旋回が強過ぎて空気Aと燃料Fとの混合ガスの下流への進行速度が低下して逆化現象が起きる可能性がある。
【0038】
[第4の実施形態]
<ハニカムバーナー>
この実施形態の燃料噴射器9を図12図15に示す。図12において、この例のガイド部材12Bは、燃料供給管11の軸心C2方向から見て六角形のガイド壁27と、このガイド壁27の外周面に接合された外周突部28とを有する。図13のように、外周突部28は正面視で六角枠状に形成されている。図14に示すように、径方向に隣接する複数の外周突部28の外側縁部同士が隙間なく互いに接合されることで、複数の燃料噴射器9がハニカム形状に配置される。図13の最外径側に位置する外周突部28は、隔壁17に
接合されている。前記各接合は例えば溶接によりなされる。
【0039】
図12に示すように、燃料供給管11は、円筒状の燃料供給管本体11aと、この燃料供給管本体11aの下流側端部に連結された有底六角筒状のボックス29とを有する。図16に示すように、ボックス29は、燃料供給管本体11aに連通し、且つ、燃料供給管本体11aと同心である。このボックス29と前記ガイド壁27は、同心であり、連結壁13により連結されている。
【0040】
ボックス29の周壁における連結壁13よりも若干下流側に、燃料噴射孔18が設けられている。図15に示すように、ボックス29の周壁に、複数個の燃料噴射孔18が所定間隔おきに配置されている。燃料噴射孔18は連結壁13に形成された各ガイド溝20の下流側に臨んでいる。図16に示すように、この例の燃料噴射孔18は、ボックス29における六角筒の各外周壁面にそれぞれ直交する方向に開口している。ガイド壁27は、燃料供給管本体11aの軸心C2と平行に延びている。
【0041】
以上説明したように、複数の燃料噴射器9がハニカム形状に密に配置されているので、他の実施形態よりも多数の燃料噴射器9を配置して空気Aと燃料Fの混合を均一化できる。燃料噴射孔18は、ボックス29における六角筒の各外周壁面にそれぞれ直交する方向に開口しているので、燃料噴射孔18の加工を容易化でき製造コストの低減を図れる。ガイド壁27は、燃料供給管本体11aの軸心C2と平行に延びているため、ガイド壁27の通路方向、つまり空気流出方向は燃料噴射孔18に対して90°の角度をなす。このため、空気Aが燃料Fを横から切る形となって空気Aと燃料Fとの混合が促進される。その他、前述の実施形態と同様の作用効果を奏する。なお、ガイド壁27は六角形には限定されず三角形以上の多角形でもよい。
【0042】
<計算流体力学によるシミュレーション結果について>
図17は、第1実施形態(図2~7)に係る燃焼装置のシミュレーション結果を示す。ただし、図17のシミュレーションでは、ガイド管12Aの下流側端部である突出部12Aa(図6では二点鎖線で表示)が、燃料供給管11の下流側端よりも下流側に若干延びている。このシミュレーション結果によれば、燃焼室8aの内部において、燃料供給管11の下流側に生じる低圧領域8aaに渦V1が発生するが、ガイド溝20を通る空気Aによって渦V1の径方向への膨らみが抑制され、低圧領域8aa内での燃料Fと空気Aの混合が促進される。また、突出部12Aaの下流側の低圧領域8abに生じる逆流渦V2の大きさが確保され、低圧領域8ab内での混合も促進される。これにより、燃焼ガスの均質化が促進され、火炎が安定化する。
図18に示す第3実施形態(図9図11)に係る燃焼装置のシミュレーション結果によれば、旋回羽根24により、燃料供給管11の下流側に旋回渦RVが形成されて混合ガスが径方向に広がるので逆流領域が形成される。これにより、下流に延びる安定な火炎31が得られる。
図19に示す第4実施形態(図12~16)に係るハニカムバーナ型の燃焼装置のシミュレーション結果によれば、燃焼室8aの内部において、ボックス29の下流側で逆流渦V3が発生する結果、燃焼ガスの均質化が図れ,火炎が安定化する。
【0043】
本発明では、小型の燃焼装置3の場合、燃料供給管11は1本でも可能である。
燃焼装置3に適用される燃料Fは、水素ガスに限定されるものではない。燃料Fは、例えば、水素ガスと他の燃料ガス(天然ガス、COなど)の混合燃料、または水素を含まない他の燃料ガス(天然ガス、COなど)であってもよい。
【0044】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、その
ようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…ガスタービン、3…燃焼装置、7…ハウジング、8…燃焼筒、8a…燃焼室、9…燃料噴射器、10…収納室、11…燃料供給管、12,12B…ガイド部材、16…空気導入通路、18…燃料噴射孔、20…ガイド溝、23…整流板、24…旋回羽根、A…空気、F…燃料
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