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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】栽培施設
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/20 20060101AFI20221003BHJP
   A01G 9/22 20060101ALI20221003BHJP
   H02S 10/00 20140101ALI20221003BHJP
【FI】
A01G9/20 B
A01G9/22
H02S10/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018094552
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019198268
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】514231295
【氏名又は名称】株式会社テヌート
(73)【特許権者】
【識別番号】513144453
【氏名又は名称】藤原 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慶太
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-018037(JP,A)
【文献】特開平08-126438(JP,A)
【文献】特開平01-186501(JP,A)
【文献】特開2015-065387(JP,A)
【文献】実開昭57-003000(JP,U)
【文献】特開2003-174182(JP,A)
【文献】特開2017-012007(JP,A)
【文献】特開2002-076421(JP,A)
【文献】特開2017-078316(JP,A)
【文献】特開昭63-126432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/20- 9/22
H02S 10/00-10/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な姿勢で同一平面上に等間隔に配置され、同期して回転可能に構成された複数のルーバーと、前記複数のルーバーの遮光面にそれぞれ配設された太陽光パネルとを有し、栽培施設内において植物を囲うように上方及び側方にそれぞれ配設されたルーバー装置と、
栽培施設内の実照度を測定する照度測定手段と、
前記ルーバー装置を制御可能に構成された環境制御部と、を備え、
前記照度測定手段は、前記複数のルーバー毎に、前記複数のルーバーに近接して栽培施設内の屋内側に各々配設された複数の照度センサからなり、
前記環境制御部は、前記複数の照度センサが測定した実照度の情報を取得して、実照度の平均値を算出し、算出した実照度の平均値に基づいて、複数のルーバーの回転方向及び回転角を制御するよう構成され、さらに、
太陽光の入射方向及び入射角の情報の取得手段を備え、記憶部に記憶された基準照度情報を取得し、前記基準照度情報に含まれる基準照度の設定値が前記算出した実照度の平均値を上回る場合、前記複数のルーバーの遮光面が太陽光の入射方向と平行となる方向へと向かうよう、前記複数のルーバーを所定角度回転して、前記複数のルーバーの遮光量を低減し、基準照度の設定値が前記算出した実照度の平均値を下回る場合、前記複数のルーバーの遮光面が太陽光の入射方向と対向する方向へと向かうよう、前記複数のルーバーを所定角度回転して、前記複数のルーバーの遮光量を増加するよう前記ルーバー装置を制御することを特徴とする栽培施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内へ取り込む日射量及び屋内の照度が調節可能に構成された栽培施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内へ取り込む日射量及び屋内の照度が調節可能に構成された栽培施設においては、電動式モーターにより巻取り可能な遮光カーテンを開閉し、その開度の調節によって、屋内に取り込む日射量を調節し、屋内が植物の生育に適した照度となるように構成されている。例えば、植物の生育に適した所定の照度に対して、屋内の照度が過大であるときは、遮光カーテンを閉動作して屋内へ取り込む日射量を抑え、逆に、照度が不足しているときは、遮光カーテンを開動作して屋内へ取り込む日射量を増加し、さらに、必要に応じて補光ランプの照射によって、照度の過不足を補うように構成された栽培施設が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-45317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような、電動式の遮光カーテンを用いて屋内の照度を調節する場合、遮光カーテンの構造上、屋内へ取り込む日射量を精緻に調節することは難しく、屋内における照度の斑も生じやすかった。その結果、屋内の照度を斑なく、より精緻に調節する点について改善の余地があった。
また、電動式の遮光カーテンの駆動や補光ランプの照射に係る消費電力も大きく、不経済であった。特に、山岳部に設置される栽培施設においては、電源確保が容易でない場合も多く、栽培施設の省エネ化が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、屋内の照度を斑なく、より精緻に調節可能とし、さらに、省エネ化に資する栽培施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のかかる目的は、
互いに平行な姿勢で同一平面上に等間隔に配置され、同期して回転可能に構成された複数のルーバーと、前記複数のルーバーの遮光面にそれぞれ配設された太陽光パネルとを有するルーバー装置と、
栽培施設内の実照度を測定する照度測定手段と、
前記ルーバー装置を制御可能に構成された環境制御部と、を備え、
前記環境制御部は、前記照度測定手段が測定した実照度の情報を取得し、屋内の実照度の測定値に基づいて、複数のルーバーの回転方向及び回転角を制御することを特徴とする栽培施設によって達成される。
【0007】
本発明の栽培施設によれば、照度測定手段が測定した実照度の測定値を基に、前記複数のルーバーの回転方向及び回転角を制御する環境制御部によって、複数のルーバーの日射の遮光量が調節可能となっており、これにより、屋内へ取り込む日射量の精緻な調節が可能となり、その結果、屋内の照度を斑なく、より精緻に調節可能となる。さらに、前記複数のルーバーの遮光面にそれぞれ配設された太陽光パネルの発電によって、栽培施設の省エネ化が図られる。
【0008】
本発明の好ましい実施態様においては、前記ルーバー部は、前記太陽光パネルの発電を充電する蓄電池と、前記太陽光パネルまたは前記蓄電池から電力を取り出し可能な電源コネクタを備えるように構成されている。
【0009】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、電源コネクタによって電力を取り出して各機器に供給することが可能となる。加えて、屋内の各機器に電力を供給するための電源ケーブルの配線を削減することが可能となる。これにより、栽培施設の利便性が向上する。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記環境制御部は、太陽光の入射方向及び入射角の情報の取得手段を備え、記憶部に記憶された基準照度情報を取得し、前記基準照度情報に含まれる基準照度の設定値が実照度の測定値を上回る場合、前記複数のルーバーの遮光面が太陽光の入射方向と平行となる方向へと向かうよう、前記複数のルーバーを所定角度回転して、前記複数のルーバーの遮光量を低減し、基準照度の設定値が実照度の測定値を下回る場合、前記複数のルーバーの遮光面が太陽光の入射方向と対向する方向へと向かうよう、前記複数のルーバーを所定角度回転して、前記複数のルーバーの遮光量を増加するよう前記ルーバー装置を制御するように構成されている。
【0011】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、前記環境制御部は、太陽光の入射方向及び入射角の情報を取得し、これに基づき、記憶部に記憶された基準照度情報と、前記照度測定部から取得した実照度情報の値を比較して、前記複数のルーバーの遮光量を調節し、日射導入量を増減するよう制御可能となる。これにより、太陽の日射角度等の変化に対応し、屋内へ取り込む日射量の精緻な調節が可能となり、その結果、屋内の照度をさらに斑なく、より精緻に調節可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、屋内の照度を斑なく、より精緻に調節可能とし、さらに、省エネ化に資する栽培施設を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の好ましい実施態様に係る栽培施設の内部構成図である。
図2図2は、図1のルーバー装置近傍の概略斜視図である。
図3図3は、栽培施設内の環境制御に係るシステム構成図である。
図4図4は、本発明の好ましい実施の形態に係る栽培施設の制御システムの構成図である。
図5図5図3のルーバー装置の動作例を説明するための説明図である。
図6図6図3のルーバー装置の動作例を説明するための説明図である。
図7図7図3のルーバー装置の動作例を説明するための説明図である。
図8図8は、基準照度及び実照度の関係を説明するための説明図である。
図9図9は、図4の環境制御部による照度調節制御のフローチャートである。
図10図10は、図1のルーバー装置の別配置例を示す栽培施設の内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0015】
図1は、本発明の好ましい実施態様に係る栽培施設の内部構成図である。なお、以下の説明においては、太陽の日射量から遮光量を差し引いた、栽培施設の屋内に取り込む日射量のことを日射導入量という。図1に示されるように、栽培施設1は、屋内への日射導入量の調節機能を有するルーバー装置11と、栽培植物の生育促進に係る気体(以下、施用気体という。)を供給する気体供給装置12と、各種機器を制御して栽培施設内の生育環境をコントロールする環境制御部13と、栽培施設内の生育環境に係る測定値を取得する環境測定部14を備えて構成されている。
【0016】
また、ルーバー装置11は、栽培施設1の上方から入射する太陽光の日射導入量を調節する上面ルーバー装置11Aと、側方から入射する太陽光の日射導入量を調節する側面ルーバー装置11Bとによって構成されている。上面ルーバー装置11A及び側面ルーバー装置11Bは、中空の管状体である支管15に支持されている。
【0017】
気体供給管16は、全周に亘り多数の微細孔が形成された通気性の管壁を有する管状体でおり、管状体内部の気体を外部に均一に散布することができるように構成されている。これにより、気体供給装置12と接続された気体供給管16は、気体供給装置12から施用気体の供給を受け、施用気体を散布する機能を果たす。なお、気体供給管16は、フック状の係止部材15aによって、支管15に支持されている。後述する環境制御部13により、施用気体の供給のタイミングが制御可能に構成されている。施用気体として、例えば、二酸化炭素、空気等が供給可能となっている。
【0018】
栽培施設1の屋内上方には、LED等の光源を並列状に配設して構成された複数の補光ランプ17が設けられており、環境制御部13によって点灯制御可能に構成されている。また、屋内の地表面近傍には、植物に対して上方への送風が可能な複数の送風ファン18が設けられている。また、栽培施設1の天井部には、環境制御部13によって開閉制御可能な天窓19が設けられている。この複数の送風ファン18は、駆動により、上方へと送風を行うことによって、植物の葉の裏面に送風を行い、これにより、植物の葉の温度を下げるとともに、葉面境界層に存在する二酸化炭素を除去して、植物の呼吸を助ける役割を果たしている。さらに、送風ファン18の駆動と同時に天窓19を開制御することにより、好適に上方への送風を行うことができるように構成されている。
【0019】
図2は、本発明の好ましい実施態様に係る栽培施設のルーバー装置11近傍の概略斜視図である。
上面ルーバー装置11A及び側面ルーバー装置11Bは、それぞれ、矩形状の平坦面である遮光面を有し、互いに平行な姿勢で同一平面上に等間隔で配置された複数のルーバー121によって構成されたルーバー部120を備えている。この複数のルーバー121は、同期しながら回転可能に設けられ、これにより、遮光面の傾斜角度を変更可能に構成されており、この傾斜角度は、複数のルーバー121の回転方向及び回転角度が制御可能となっているルーバー制御装置110を介して、環境制御部13により制御可能となっている。なお、従来の遮光カーテンにより遮光する構成によれば、遮光カーテンが屋内の通気性を低下させ、遮光カーテン下部に暖められた気流が過度に滞留し、植物にストレスを与える問題が存在するが、この複数のルーバー121によって、遮光する構成によれば、ルーバー121間に存在する隙間により、通気性が確保されるため、かかる問題を好適に防止できる。
【0020】
図3は、図1のルーバー装置11の概略断面図である。
図3に示されるように、ルーバー制御装置110は、複数のルーバー121の回転を制御するルーバー制御部111と、駆動により複数のルーバー121を回転する駆動機構112と、ルーバー制御装置110の各機構に電力を供給する電源113とを備えている。また、ルーバー制御部111は、環境制御部13と情報を送受信可能に構成されたルーバー通信部114によって、環境制御部13から制御信号を取得して、駆動機構112を駆動制御する。駆動機構112は、ルーバー部120の駆動軸と接続されており、この駆動軸の回転に応じて、複数のルーバー121が同期しながら回転し、遮光面の傾斜角度を変更可能に構成されている。なお、この遮光面の傾斜角度を変更する機構については、特開2017-78316号公報に開示されているため、詳細な説明は省略する。
【0021】
ルーバー121は、太陽光を遮光可能な基台であって遮光面を有する遮光部121aと、遮光面に配設された太陽光パネル121bと、遮光部121aの下方に配設されたユニット部130とを備えている。ルーバー装置121が太陽光パネル121bを備えていることにより、ルーバー部120は、太陽光の遮光機能に加え、発電機能も備えている。太陽光パネル121bによって発電された電力は、ユニット部130が備える後述の蓄電池132に蓄電されて、各機構が利用可能となっている。これにより、ルーバー部120は、太陽光パネル121bで発電した電力をルーバー装置110の駆動電力とするとともに、他の機器に供給することが可能となっている。
【0022】
図4は、本発明の好ましい実施の形態に係る栽培施設1の制御システムの構成図である。
【0023】
図4は、栽培施設1内の環境制御に係るシステム構成図である。
環境制御部13は、CPU、記憶装置、格納されたプログラム(いずれも図示せず)等を有する電子制御機構である。環境制御部13は、栽培施設内の生育環境をコントロールするため各種機器を制御する制御装置であり、ネットワークNWを介して、ルーバー制御部111、気体供給装置12、補光ランプ17、送風ファン18、天窓19等の各機構に制御信号を送信するように構成されている。また、後述する環境測定部14、GPSモジュール20、照度測定部131の測定情報を取得可能に構成されている。
【0024】
環境測定部14は、栽培施設1内の温度や湿度、照度、二酸化炭素濃度等の環境値を測定するための複数のセンサを備えた環境測定センサ群であって、各測定値の情報を環境制御部13へ送信可能となっている。
【0025】
GPSモジュール20は、GPS(Global Positioning System)から取得した情報を利用し、栽培施設の位置(例えば緯度および経度)を検出するセンサである。
【0026】
設定部21は、ユーザーが環境制御部13に情報を入力し設定するための操作パネルである。
【0027】
記憶部22は、環境制御部13の制御についての必要なデータが記憶されている。例えば、環境測定部14や照度測定部131の各種測定情報、又は、環境制御部13の実行履歴、設定部21からの入力情報、GPSモジュール20が取得した位置情報、日時情報、太陽方位情報を示す天文データ、栽培対象となる植物の生育に望ましい基準の照度を示す基準照度などの各種情報が記憶されている。また、照度測定部131や環境測定部14の測定値が記憶されている。
【0028】
ルーバー装置11は、日射導入量の調節機構であり、前述の通り、日射を遮光可能なルーバー部120と、ルーバー部120を駆動制御して、日射の遮光量を調節することによって、日射導入量を調節可能なルーバー制御装置110を備えている。
【0029】
ここで、ルーバー制御部111、駆動機構112、電源113、ルーバー通信部114については、前述の通りであるため、説明を省略する。
【0030】
ルーバー部120及びルーバー部120が備えているルーバー121、遮光部121a、太陽光パネル121bについても、前述の通りであるため、説明を省略する。
【0031】
ルーバー部120が備えているユニット部130は、照度測定部131、蓄電池132、電源コネクタ133、ユニット通信部134を備えている。
【0032】
照度測定部131は、ルーバー121の下方に各々配設され、栽培施設1の屋内の照度である実照度を測定可能な照度センサである。照度センサは、ルーバー121の下方に配設された箱体のユニット部の上面に配設されている。照度測定部131がルーバー121の下方に配設されていることにより、環境制御部13は、ルーバー121を通過し、栽培施設内に導入された日射導入量をルーバー121毎に取得可能となっている。なお、環境制御部13は、取得したルーバー121毎の日射導入量の平均値を算出し、これを栽培施設1内の全体の日射導入量及び実照度と判断する。なお、照度センサは、照度の計測値をより好適に取得するために、箱体のユニット部の下方に吊止する構成としてもよい。なお、栽培施設1内の実照度の測定値は、この照度測定部131による照度センサの計測値によって得られるが、栽培植物近傍に配設された環境測定部14によって測定された照度の測定値を、実照度の測定値として用いることもできる。この場合、栽培対象となる植物近傍の照度を実照度としてより正確に取得可能となる。
【0033】
蓄電池132は、ユニット部130に配設され、太陽光パネル121bで発電した電力を充電可能となっている。これにより、太陽光パネル121bで発電された電力は、照度測定部131等の各機構の駆動電力に使用され、余剰電力が蓄電池132に充電されるように構成されている。また、蓄電池132に充電された電力は、補光ランプ17の照射に利用可能となっており、これにより、日射量が過剰であるときは、蓄電池132に電力を充電し、日射量の不足時に、蓄電池132に電力を用いて補光ランプ17を照射することができる。その結果、栽培施設1の省エネ化及び植物の日照不足の解消が図られる。
【0034】
電源コネクタ133は、コネクタの接続によって、太陽光パネル121b及び蓄電池132の電力を取り出すことができるように構成されている。これにより、栽培施設1内における電源確保が容易となり、これにより、栽培施設1の利便性が向上する。加えて、栽培施設1内に配設する電源ケーブルを削減できるため、電源ケーブルの故障等による不具合も防止でき、コストも削減できる。
【0035】
ユニット通信部134は、照度測定部131の測定情報を環境制御部13に送信可能なユニットである。これにより、環境制御部13は、照度測定部131の測定値から栽培施設1内の実照度を取得することが可能となっている。
【0036】
以下、上面ルーバー装置11Aを例として、ルーバー装置11の動作例を説明する。側面ルーバー装置11Bについて、基本的な構成及び動作は、上面ルーバー装置11Aと同様であるため説明は省略する。
【0037】
図5ないし図7は、ルーバー装置11の動作例を説明するための説明図である。
【0038】
図5ないし図7において、太陽の南中方向をSとし、各ルーバー121の遮光面が向く方向を法線方向nとし、南中方向Sに対して法線方向nのなす角を、ルーバー121の回転角αとし、太陽光の入射角をβとする。また、回転角αは、真南を0度として、西向きをプラス、東向きをマイナスとして表す。ルーバー装置11は、環境制御部13から送信された制御信号をルーバー制御装置110が取得し、ルーバー制御装置110が、取得した制御信号に基づいて、駆動機構112を駆動し、各ルーバー121の回転方向及び回転角αが制御されるよう構成されている。ここで、環境制御部13は、記憶部22に記憶されたGPSモジュール20が取得した位置情報、日時情報、太陽方位情報を示す天文データの少なくとも一つに基づいて太陽の方位を算出し、太陽の南中方向S、太陽光の入射方向及び入射角βを示す日射情報を取得する。
【0039】
日射の遮光量を抑えて太陽光を最大限通過させ、日射導入量を最大とする場合、図5に示されるように、法線方向nは、太陽光の入射方向と垂直となるように制御され、各ルーバー121の回転角αは、太陽光の入射角βと等しくなるように、ルーバー装置11が制御される。このとき、各ルーバー121の日射の遮光量は最小となり、太陽光パネル121bの発電量も、遮光量の減少に応じて低減することとなる。
【0040】
日射導入量を所定量減少させるように制御する場合、図6に示されるように、各ルーバー121を図5に示された状態から、各ルーバー121の遮光面を太陽光の入射方向に対して傾斜させ、角度θ傾けるようルーバー装置11が制御される。なお、このとき、各ルーバー121の回転角αは、太陽光の入射角β-θとなる。また、後述する環境制御部13による照度減少制御は、この角度θを現状から所定量、例えば、10度増加させるよう複数のルーバー121の回転方向及び回転角を決定してルーバー装置11を制御することを指す。すなわち、ルーバー装置11は、複数のルーバー121の遮光面がそれぞれ太陽光の入射方向と対向する方向へと向かうよう、複数のルーバー121をそれぞれ所定角度回転して、複数のルーバー121の遮光量を増加するよう制御される。これにより、日射導入量を所定量減少し、屋内の照度を減少できる。また、照度増加制御は、照度減少制御と逆に、この角度θを現状から所定量、例えば、10度減少させるよう複数のルーバー121の回転方向及び回転角を決定してルーバー装置11を制御することを指す。すなわち、ルーバー装置11は、複数のルーバー121の遮光面が太陽光の入射方向と平行となる方向へと向かうよう、複数のルーバー121を所定角度回転して、複数のルーバー121の遮光量を低減するように制御される。これにより、日射導入量を所定量増加し、屋内の照度を増加できる。
【0041】
日射の遮光量を増やし太陽光を最大限遮光して、日射導入量を最小とする場合、図7に示されるように、各ルーバー121の法線方向nが、太陽光の入射方向と対向するようにルーバー装置11が制御される。なお、このとき、各ルーバー121の回転角αは、太陽光の入射角βに対し、-βとなる。また、このとき、各ルーバー121の日射の遮光量は最大となり、太陽光パネル121bの発電量も、遮光量の増加に応じて、増大することとなる。
【0042】
次に、図8及び図9を用いて、環境制御部13による照度調節制御について説明する。ここで、照度調節制御とは、屋内の照度と調節する制御であり、屋内の環境に応じて、照度増加制御及び照度減少制御を実行する制御をいう。図8は、基準照度及び実照度の関係を説明するための説明図である。基準照度は、栽培対象となる植物の生育に望ましい照度の基準値を時系列で示す情報であり、図8の実線Cで示されている。この基準照度は、ユーザーが、設定部21によって任意の値を設定可能となっており、これが基準照度情報として記憶部22に記憶される。ここで、栽培対象となる植物の種類に応じて、最適な基準照度は異なるため、基準照度情報は、植物の種類に応じて、ユーザーにより、臨機応変に値が設定できるように構成されている。図8の実線Cで示される実照度は、環境測定部14または照度測定部131によって測定された屋内の照度を示す情報である。
【0043】
図9は、環境制御部13による照度調節制御のフローチャートである。この照度調節制御は、所定時間毎に実行され、栽培施設1内の照度の調節がなされる。まず、環境制御部13は、記憶部22から基準照度の情報を取得する(ステップS1)。例えば、図8の場合においては、時刻12時頃における基準照度は、1000W/m程度である。次に、環境測定部14または照度測定部131から得られる測定値を含む実照度の情報を取得する(ステップS2)。ここで、図8の場合においては、時刻12時頃における実照度は、800W/m程度である。
【0044】
次に、環境制御部13は、太陽の南中方向S、太陽光の入射方向及び入射角βを示す日射情報を取得する(ステップS3)。次に、環境制御部13は、各ルーバー121の回転角αの情報を取得する(ステップS4)。
【0045】
続いて、環境制御部13は、基準照度と実照度の値を比較し、基準照度の値が実照度の値よりも大きい場合、照度が不足している状況と判断し、照度増加制御を実行し、日射導入量を増加し、屋内の照度を増加する。基準照度の値が、実照度の値以下の場合、照度が過分である状況と判断されるため、照度減少制御を実行し、日射導入量を減少し、屋内の照度を減少する。例えば、図8の場合、時刻6時~14時頃の時間帯においては、基準照度が実照度よりも大きいため、照度増加制御が実行される。時刻14時~19時頃の時間帯においては、基準照度が、実照度以下であるため、照度減少制御が実行される。このようにして、栽培施設1は、日中の太陽光の入射角の変化に対応して日射導入量を調節可能に構成されており、その結果、屋内へ取り込む日射量の精緻な調節が可能となり、屋内の照度をさらに斑なく、より精緻に調節可能となっている。
【0046】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0047】
図9のフローチャートにおいて、環境制御部13が、基準照度と実照度の値を比較して、照度増加制御または照度減少制御を実行するように構成したが、実照度の累計である積算照度を算出して、所定の時刻における基準の積算照度の値と実際の積算照度の値の比較によって、照度増加制御または照度減少制御を実行するように構成してもよい。すなわち、所定の時刻における基準の積算照度の値が実際の積算照度の値が大きい場合、照度減少制御を実行し、その逆であれば、照度増加制御を実行する。これにより、栽培植物に対し好適な積算照度となるような制御が実現でき、例えば、一日単位などの所定の時間の幅を持たせた照度管理が可能となる。また、環境制御部13は、日没時に、基準の積算照度の値と実際の積算照度の値を比較し、実際の積算照度が基準の積算照度に満たない場合、補光ランプ17を所定時間照射して日照不足を補うようにしてもよい。これにより、栽培施設1の省エネ化を図りながら、好適に植物の日照不足を解消し、生育を促進できる。
【0048】
また、図9のフローチャートにおいて、照度を参照するように構成したが、温度や湿度を参照してもよい。例えば、所定の時刻に計測された温度が、予め設定された基準温度を上回る場合は、照度減少制御を実行し、基準温度以下の場合は、照度減少制御を実行することで、栽培植物の葉温を好適に保ち、生育を促進できる。この場合、照度減少制御を実行とともに、送風ファン18の駆動制御により植物の葉裏に送風することで、より好適に、栽培植物の葉温を下げ、植物へのストレスを抑えることができる。
【0049】
また、図9のフローチャートにおいて、環境制御部13は、照度増加制御または照度減少制御を実行するように構成したが、これに加えて、所定の条件により、気体供給装置102を制御して施用気体を栽培植物へ散布するよう制御しても良い。例えば、実照度が所定値以上の場合は、栽培植物の光合成が活性化していると考えられるため、気体供給装置102を制御し、二酸化炭素や空気などの施用気体を栽培植物へ散布するように構成してもよい。これにより、栽培植物の光合成を促進し、生育の促進が図られる。
【0050】
また、図10は、図1のルーバー装置11の別配置例を示す栽培施設の内部構成図である。図1においては、ルーバー装置11を支管15で支持するように構成したが、支管15で支持することは必須ではなく、所定の支持部材で支持するように構成してもよい。また、上面ルーバー装置11Aについても、図10に示されるように、栽培施設1の屋根部分の傾斜に沿って、傾斜を持たせて配置するように構成してもよい。これにより、太陽光の受光面積を増加して、太陽光パネル121bの発電量を増加できる。
【0051】
また、環境制御部13は、記憶部22に記憶されたGPSモジュール20が取得した位置情報、日時情報、太陽方位情報を示す天文データの少なくとも一つに基づいて太陽の方位を算出し、太陽の南中方向S、太陽光の入射方向及び入射角βを示す日射情報を算出するように構成したが、栽培施設1内の所定位置にフォトセンサを複数配置し、各センサの信号出力差を比較することによって、太陽光の入射方向及び入射角βを示す日射情報を算出するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 栽培施設
11 ルーバー装置
12 気体供給装置
13 環境制御部
14 環境測定部
15 支管
16 気体供給管
17 補光ランプ
18 送風ファン
19 天窓
20 GPSモジュール
21 設定部
22 記憶部
110 ルーバー制御装置
111 ルーバー制御部
112 駆動機構
113 電源
114 ルーバー通信部
120 ルーバー部
121 ルーバー
121a 遮光部
121b 太陽光パネル
130 ユニット部
131 照度測定部
132 蓄電池
133 電源コネクタ
134 ユニット通信部
NW 通信ネットワーク
図1
図2
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図8
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図10