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特許7150276無線給電装置およびこれを用いた多軸ロボット
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  • 特許-無線給電装置およびこれを用いた多軸ロボット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】無線給電装置およびこれを用いた多軸ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20221003BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20221003BHJP
   H02J 50/05 20160101ALI20221003BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J19/00 F
H02J50/05
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019041575
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020142336
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000214836
【氏名又は名称】長野日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】杉野 正芳
(72)【発明者】
【氏名】肥後 徳仁
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
(72)【発明者】
【氏名】塚本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】坂井 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋士
(72)【発明者】
【氏名】正木 敬章
(72)【発明者】
【氏名】馬場 涼一
(72)【発明者】
【氏名】宮地 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅城
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/029438(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/049683(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02903130(EP,A1)
【文献】特開2010-136519(JP,A)
【文献】特開2015-042051(JP,A)
【文献】特開2018-117511(JP,A)
【文献】特開2012-110118(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053246(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0166915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/06
B25J 19/00
H02J 50/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の振幅が一定の高周波を生成する高周波電源部(13)と、
前記高周波電源部(13)で生成した高周波を送電する送電電極部(14)、および前記送電電極部(14)から出力された高周波を電界結合によって非接触で電力を受け取る受電電極部(15)を有する電極部(17)と、
前記電極部(17)をコンデンサとする電極等価回路部(20)を形成したとき、前記電極等価回路部(20)とともに等価理想トランス(26)に相当する回路を構成する特定回路部(23)と、
前記等価理想トランス(26)の出力側に接続されている負荷(16)と、
を備える無線給電装置。
【請求項2】
前記特定回路部(23)は、前記高周波電源部(13)と前記電極部(17)との間に、直列に挿入された直列コイル(24)、および並列に挿入された並列コイル(25)を有する請求項1記載の無線給電装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の無線給電装置(10)を備える多軸ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線給電装置およびこれを用いた多軸ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁誘導、磁界共鳴あるいは電界結合などを用いて非接触で電力を供給する無線給電装置が公知である。例えば、特許文献1は、電界結合を用いた無線給電装置を開示している。このような電界結合では、送電電極部から受電電極部への電力の伝送に高周波が用いられる。そのため、電界結合の場合、送電側と受電側との間で高い精度のインピーダンスの整合が要求される。ところで、受電側に接続される負荷で消費される電力が刻々と変化したり、負荷の数が変化したりする場合、受電側のインピーダンスはこれらに応じて変化する。このような場合、インピーダンスが変化しても、負荷には常に一定の電圧を供給することが求められる。
【0003】
しかしながら、従来の場合、負荷のインピーダンスや負荷の数の変化によって、入力インピーダンスおよび供給される電力が変動する。そのため、入力インピーダンスの変化に対応する大規模な可変整合器が必要となる。また、供給される電力が変化すると、高周波の供給源であるインバータのフィードバック制御が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-68079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、受電側の負荷の変化にかかわらず、等価理想トランスの機能により負荷の電圧が一定となり、構造の簡略化が図られる無線給電装置およびこれを用いた多軸ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の無線給電装置は、電界結合に関与する送電電極部および受電電極部と、特定回路部とから等価理想トランスに相当する回路を構成している。すなわち、送電電極部および受電電極部を有する電極部は、容量素子であるコンデンサとして電極等価回路部を構成する。このとき、特定回路部は、この電極部を含む電極等価回路部とともに等価理想トランスを構成する。これにより、特定回路部の出力側に接続されている負荷は、等価理想トランスを挟んで電圧の振幅が一定の高周波を生成する高周波電源部に接続された状態とみなされる。すなわち、1つ以上の負荷は、等価理想トランスを挟んで高周波電源部に並列に接続された状態とみなされる。その結果、電極部の出力側つまり受電電極側に接続する負荷の数または負荷の大きさが変化しても、電極部をコンデンサとする電極等価回路部は虚数成分の変化の影響を受けない。したがって、受電側の負荷の変化にかかわらず、等価理想トランスの機能により負荷の電圧が一定となり、構造の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態による無線給電装置の電気的な構成を示す概略図
図2】一実施形態による無線給電装置を適用した多軸ロボットを示す模式的な斜視図
図3】一実施形態による無線給電装置を適用したロボットの電気的な構成を示す概略図
図4】一実施形態による無線給電装置の電気的な構成を示す概略図
図5図1に示す無線給電装置の等価回路を示す概略図
図6図3に示すロボットの等価回路を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、無線給電装置およびこれを用いた多軸ロボットの実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、一実施形態による無線給電装置10を示している。無線給電装置10は、送電側ユニット11、および受電側ユニット12を備えている。送電側ユニット11は、高周波電源部13および送電電極部14を有している。高周波電源部13は、電圧の振幅が一定の高周波を生成する。高周波電源部13で生成した高周波は、送電電極部14へ供給される。送電電極部14は、例えば金属板などで構成され、高周波電源部13で生成した高周波を出力する。
【0009】
受電側ユニット12は、受電電極部15および負荷16を備えている。受電電極部15は、送電電極部14と対向して設けられている。対向する送電電極部14と受電電極部15との間は、空気によって満たされており、電界結合による非接触によって電力が伝達される。すなわち、受電電極部15は、送電電極部14から出力された高周波を電界結合によって受け取る。上述のように対向する送電電極部14と受電電極部15との間は、非接触であることから、絶縁体である空気が満たされたコンデンサを形成している。これら送電電極部14と受電電極部15とは、電極部17を構成している。
【0010】
無線給電装置10は、これら送電側ユニット11および受電側ユニット12において次のような電極等価回路部20を構成している。すなわち、電極等価回路部20は、電極部17を構成する一対の送電電極部14および受電電極部15をコンデンサとして、送電電極間容量部21および受電電極間容量部22とともに構成されている。送電電極間容量部21および受電電極間容量部22は、容量素子としてのコンデンサを有していてもよく、一対の回路配線の間で形成される見かけ上のコンデンサであってもよい。電極部17を構成する送電電極部14と受電電極部15とは、電気的な容量が等しく設定されている。これにより、無線給電装置10は、電極部17を構成する送電電極部14および受電電極部15と、送電電極間容量部21および受電電極間容量部22とによって、電極等価回路部20を構成している。
【0011】
無線給電装置10は、特定回路部23を備えている。特定回路部23は、送電側ユニット11において、高周波電源部13と電極部17との間に挿入されている。具体的には、特定回路部23は、直列コイル24および並列コイル25を有している。直列コイル24は、高周波電源部13と電極部17との間に直列に挿入されている。また、並列コイル25は、高周波電源部13と電極部17との間に並列に挿入されている。特定回路部23は、これらの直列コイル24および並列コイル25によって、電極等価回路部20とともにトランスに相当する回路を構成する。これにより、特定回路部23は、電極等価回路部20とともに、等価理想トランス26を構成する。
【0012】
負荷16は、受電側ユニット12において特定回路部23の出力側に接続している。すなわち、負荷16は、受電側ユニット12において、電極部17の出力側に接続し、受電電極部15で受け取った電力を消費する。負荷16は、例えばモータなどの駆動装置、バッテリなどの蓄電装置、およびこれらを制御する制御装置などで構成されている。また、負荷16は、例えば高周波を直流に整流する整流回路部などの各種の回路を有していてもよい。
【0013】
上記のような無線給電装置10は、例えば多軸ロボットに適用される。図2は、無線給電装置10を適用する多軸ロボットの一例として3軸のロボット30を示している。無線給電装置10をロボット30に適用する場合、高周波電源部13や送電電極部14などで構成される送電側ユニット11は設備などに固定されている。無線給電装置10の送電電極部14は、X軸方向へ延びるレール31に設けられている。ロボット30は、レール31に沿って移動する中間可動部32を有している。中間可動部32は、このレール31に沿ってX軸方向へ往復移動する。受電電極部15は、中間可動部32に設けられ、レール31に設けられている送電電極部14と対向している。また、中間可動部32は、送電電極部33を有している。送電電極部33は、中間可動部32が受電電極部15で受け取った電力を中継して送電する。中間可動部32の送電電極部33は、X軸に垂直なY軸方向へ延びている。終端可動部34は、受電電極部35を有している。終端可動部34の受電電極部35は、中間可動部32の送電電極部33と対向している。終端可動部34の受電電極部35は、中間可動部32の送電電極部33に対して移動可能または固定のいずれであってもよい。
【0014】
このようなロボット30の構成により、ロボット30は、無線給電装置10によって非接触で電力の供給を受ける。具体的には、ロボット30の中間可動部32は、受電電極部15によってレール31に沿って移動しながら送電電極部14から電力を受け取る。中間可動部32の送電電極部33は、受電電極部15で受け取った電力の少なくとも一部を送電電極部33から出力する。終端可動部34は、中間可動部32の送電電極部33から出力された電力を受電電極部35で受け取る。これにより、3軸のロボット30は、中間可動部32が送電電極部14から電力を受け取るとともに、終端可動部34が中間可動部32から電力を受け取る。このような3軸のロボット30に適用される無線給電装置10は、図3に示すような電気的な回路として示される。
【0015】
次に、上述の構成による無線給電装置10の作用について説明する。
電極等価回路部20は、図4に示すように電極部17の送電電極部14および受電電極部15によってコンデンサを構成している。この電極部17の全体におけるコンデンサの容量は、CSとする。したがって、本実施形態のように一対の電極部17を構成する場合、1つのコンデンサの容量は2CSとなる。電極等価回路部20において、送電電極間容量部21および受電電極間容量部の容量はそれぞれCPとする。また、特定回路部23は、直列コイル24および並列コイル25を有している。直列コイル24のインダクタンスはLSとし、並列コイル25のインダクタンスはLPとする。電極等価回路部20の電極部17における送電電極部14と受電電極部15との間の結合係数kは、以下の式(1)で示されるものとする。
【0016】
【数1】
【0017】
このように結合係数kを設定したとき、特定回路部23における直列コイル24のインダクタンスLS(H)は以下の式(2)と定め、並列コイル25のインダクタンスLP(H)は以下の式(3)と定める。直列コイル24のインダクタンスLSおよび並列コイル25のインダクタンスLPは、それぞれこれらの式(2)および式(3)を満たすように設定される。
【0018】
【数2】
【0019】
その結果、電極等価回路部20と特定回路部23とは、以下の式(4)に示すようにインピーダンス変換比をN、および入力インピーダンスをZin(Ω)として、一つのインピーダンス変換回路であるトランスとして機能する。
【0020】
【数3】
【0021】
これにより、図1および図4に示す無線給電装置10の全体を示す等価回路は、図5で示される。すなわち、無線給電装置10の等価回路は、高周波電源部13に負荷16として抵抗が接続した状態とみなされる。また、図3に示す無線給電装置10を適用したロボット30の等価回路は、図6で示される。すなわち、無線給電装置10の等価回路は、高周波電源部13に負荷16としての抵抗が並列に接続した状態とみなされる。そのため、図1に示す状態から図3に示す状態へ負荷16の数が増加しても、全体を示す等価回路としては図5および図6に示すように等価理想トランス26を挟んで高周波電源部13に並列に接続する負荷16の数が変化したに過ぎないとみなされる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の無線給電装置10は、電界結合に関与する送電電極部14および受電電極部15と、特定回路部23とからトランスに相当する回路を構成している。すなわち、送電電極部14および受電電極部15を有する電極部17は、容量素子であるコンデンサとして電極等価回路部20を構成する。このとき、特定回路部23、および電極部17を含む電極等価回路部20は、等価理想トランス26に相当する機能を有している。これにより、特定回路部23の出力側に接続されている負荷16は、トランスを挟んで電圧の振幅が一定の高周波を生成する高周波電源部13に接続された状態とみなされる。すなわち、1つ以上の負荷16は、等価理想トランス26を挟んで高周波電源部13に並列に接続された状態とみなされる。その結果、電極部17の出力側つまり受電電極部15側に接続する負荷16の数または負荷16の大きさが変化しても、電極部17をコンデンサとする電極等価回路部20は虚数成分の変化の影響を受けない。したがって、受電側の負荷16の変化にかかわらず、等価理想トランス26の機能により受電側の負荷16の電圧が一定となり、構造の簡略化を図ることができる。
【0023】
また、本実施形態の無線給電装置10を適用したロボット30は、レール31などの固定部分と中間可動部32との間、中間可動部32と終端可動部34との間が、それぞれケーブルや配線を用いることなく非接触で電力や信号が伝達される。したがって、ケーブルや配線などによる重量の増加を抑えることができるとともに、ケーブルや配線の切断による機器の停止を低減することができる。
【0024】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0025】
図面中、10は無線給電装置、13は高周波電源部、14、33は送電電極部、15、35は受電電極部、16は負荷、17は電極部、20は電極等価回路部、23は特定回路部、24は直列コイル、25は並列コイル、26は等価理想トランス、30はロボット(多軸ロボット)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6