(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】シリコン負極活物質及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20221003BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221003BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20221003BHJP
C01B 32/97 20170101ALI20221003BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/36 E
C01B32/97
(21)【出願番号】P 2020102813
(22)【出願日】2020-06-15
(62)【分割の表示】P 2017544763の分割
【原出願日】2015-02-24
【審査請求日】2020-06-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517050282
【氏名又は名称】ネクシオン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヨンテ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヨンギル
(72)【発明者】
【氏名】パク ソン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ソ ヒヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジヘ
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨンウィ
(72)【発明者】
【氏名】ホン ヨンジン
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/031993(WO,A1)
【文献】特開2015-060776(JP,A)
【文献】特表2013-506264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粒子を含み、該粒子の各々が、
一つのシリコンコア;
前記シリコンコア上のシリコン炭化物層、及び前記シリコンコアと前記シリコン炭化物層との間の
、人為的に前記シリコンコア上に形成されたシリコン酸化物層を有する厚さ0.5nm~20nmの二重クランピング層;
及び
該二重クランピング層上に形成された導電層;を含むシリコン負極活物質。
【請求項2】
前記シリコンコアの半径に対する前記二重クランピング層の厚さの割合は0.1%~10%の範囲内である、請求項1に記載のシリコン負極活物質。
【請求項3】
前記導電層は炭素系導電層を含む、請求項
1に記載のシリコン負極活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池技術に関し、より詳細には、シリコン負極活物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、リチウム電池、リチウムイオン電池、及びリチウムイオンポリマー電池などの二次電池の需要が大いに増加している。二次電池は、可逆性に優れた電極材料を用いて再充電が可能な電池であって、正極及び負極活物質に従ってニッケル-水素(Ni-MH)電池、リチウム(Li)電池、又はリチウムイオン(Li-ion)電池などに区分できる。このような二次電池は、スマートフォン、携帯用コンピューター、及び電子紙などのIT機器、又は電気自動車などの移動手段の電力供給源としてその適用分野が漸次拡大されている。
【0003】
一般に、リチウム電池におけるリチウムの樹枝状成長を抑制できる材料として、372mAh/gの理論容量を有する炭素系材料が適用されている。しかし、二次電池の応用が拡大されるにつれて二次電池の高容量化及び高出力化がさらに要求されており、これによって、炭素系負極材料の理論容量に取って代わる500mAh/g以上の容量を有するシリコン(Si)、スズ(Sn)又はアルミニウム(Al)などのリチウムとの合金化が可能な非炭素系負極材料が注目を受けている。
【0004】
前記非炭素系負極材料のうち、前記シリコンは、理論容量が約4200mAh/gに至って最も大きい。しかし、シリコン負極材料は、充電時に体積が4倍ほど膨張するので、充・放電過程で体積変化によって活物質間の電気的連結が破壊されたり、集電体から活物質が分離され、電解質による活物質の浸食などの問題があるので、その実用化において障壁がある。よって、シリコン材料の適用のためには、充・放電時の体積変化による電池の非可逆性を改善することが要求される。また、二次電池の爆発的な需要成長により、シリコン負極活物質を経済的且つ大量に生産できる製造技術の確保が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、シリコンを用いて、高容量及び高出力を有しながらも充放電による体積変化を緩和し、エネルギー密度が高いと共に長寿命を有する負極活物質を提供することにある。
【0006】
また、本発明が解決しようとする他の技術的課題は、上述した利点を有するシリコン負極活物質を経済的且つ迅速に大量に形成できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するための本発明の一実施例に係るシリコン負極活物質は、シリコン粒子を含むシリコンコア;及び前記シリコンコア上のシリコン炭化物層、及び前記シリコンコアと前記シリコン炭化物層との間のシリコン酸化物層を有する二重クランピング層;を含む。
【0008】
前記シリコン酸化物層は、前記シリコン炭化物層のシリコンソースになり得る。一実施例において、前記二重クランピング層の厚さは0.5nm~20nmであって、前記シリコンコアの半径に対する前記二重クランピング層の厚さの割合は1%~10%の範囲内である。
【0009】
一部の実施例において、前記シリコン負極活物質は、前記二重クランピング層上に形成された導電層をさらに含み得る。また、前記二重クランピング層は各貫通ホールを含み、前記導電層は、前記各貫通ホールを通過してシリコン負極活物質上に連続的にコーティングされ得る。前記導電層は炭素系導電層を含み得る。
【0010】
前記他の技術的課題を解決するための本発明の一実施例に係るシリコン負極活物質の製造方法は、シリコンコア、及び前記シリコンコア上にシリコン酸化物層を有する第1中間粒子を形成する。その後、前記第1中間粒子上に第1固形有機層をコーティングすることによって第2中間粒子を形成し、前記第2中間粒子を第1温度で熱処理し、第1固形有機層を炭素層に変換させることによって第3中間粒子を形成する。続いて、前記第3中間粒子を第2温度で熱処理し、前記シリコン酸化物層と前記炭素層との間にシリコン炭化物層を形成し、前記シリコン酸化物層及び前記シリコン炭化物層を含む二重クランピング層を形成することができる。
【0011】
前記シリコン酸化物層は、前記シリコン炭化物層のシリコンソースになる。前記炭素層の形成のための第1温度は700℃~1,100℃の範囲内である。また、前記シリコン炭化物層の形成のための前記第2温度は1,150℃~1,300℃の範囲内であり得る。
【0012】
前記第1中間粒子の前記シリコン酸化物層の厚さは、前記シリコンコアの半径に対して1%~10%の範囲内であり得る。一部の実施例において、前記第3中間粒子の前記シリコン酸化物層の厚さは、前記炭素層の厚さの1倍~10倍の範囲のサイズを有し得る。また、前記二重クランピング層の厚さは0.5nm~20nmであって、前記シリコンコアの半径に対する前記二重クランピング層の厚さの割合は1%~10%の範囲内であり得る。
【0013】
前記第2中間粒子を形成する段階は、炭素前駆体を含む分散溶液を準備する段階;前記分散溶液中に前記第1中間粒子を分散させる段階;及び前記分散溶液で濡らされた前記第1中間粒子を収得して乾燥させる段階;によって行われ得る。一実施例において、前記炭素前駆体は、炭化水素系、アルコール系、エーテル系及びエステル系化合物からなる群から選ばれた一つの溶液又は2以上の混合溶液;又は、前記溶液又は水中に溶解された炭素含有天然高分子物質及び炭素含有合成高分子物質のうちのいずれか一つ又はこれらの混合物;を含み得る。前記炭素含有高分子物質は、キトサン、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、デンプン、グリコーゲン、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)又はこれらの混合物を含み得る。
【0014】
前記他の技術的課題を解決するための本発明の他の実施例に係るシリコン負極活物質の製造方法は、シリコンコア、及び前記シリコンコア上にシリコン酸化物層を有する第1中間粒子を形成し、前記第1中間粒子上に第1固形有機層をコーティングすることによって第2中間粒子を形成する。その後、前記第2中間粒子を熱処理し、第1固形有機層を炭素層に変換させると同時に、シリコン酸化物層と前記第1固形有機層との間にシリコン炭化物層を形成し、前記シリコン酸化物層及び前記シリコン炭化物層を含む二重クランピング層を形成する。
【0015】
前記シリコン酸化物層は前記シリコン炭化物層のシリコンソースになり得る。前記熱処理温度は1,150℃~1,300℃の範囲内であり得る。
【0016】
前記第1中間粒子の前記シリコン酸化物層の厚さは、前記シリコンコアの半径に対して1%~10%の範囲内であり得る。前記二重クランピング層の厚さは0.5nm~20nmであって、前記シリコンコアの半径に対する前記二重クランピング層の厚さの割合は1%~10%の範囲内である。
【0017】
前記第2中間粒子を形成する段階は、炭素前駆体を含む分散溶液を準備する段階;前記分散溶液中に前記第1中間粒子を分散させる段階;及び前記分散溶液で濡らされた前記第1中間粒子を収得して乾燥させる段階;によって行われ得る。
【0018】
一実施例において、前記炭素前駆体は、炭化水素系、アルコール系、エーテル系及びエステル系化合物からなる群から選ばれた一つの溶液又は2以上の混合溶液;又は、前記溶液又は水中に溶解された炭素含有天然高分子物質及び炭素含有合成高分子物質のうちのいずれか一つ又はこれらの混合物;を含み得る。前記炭素含有高分子物質は、キトサン、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、デンプン、グリコーゲン、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)又はこれらの混合物を含み得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施例によると、高容量の確保のために純粋なシリコン粒子を含むシリコンコアを有し、前記シリコンコア上にシリコン酸化物層及びシリコン炭化物層を含む二重クランピング層を提供し、電池の充・放電時の体積変化を抑制することによって、寿命が向上した負極を実現するシリコン負極活物質が提供される。また、前記二重クランピング層がシリコンコアを露出させる貫通ホールを有する場合、前記シリコンコアと外部との間にリチウムイオンなどのイオンが自由に往来できるようにし、高効率及び高出力の充・放電が可能である。
【0020】
また、本発明の実施例によると、シリコンコア上に形成されたシリコン酸化物層をシリコンソースとして用いてシリコン炭化物層を形成するので、シリコンコアの浸食無しで安定的に二重クランピング層を形成できるという利点がある。また、前記シリコン炭化物層を製造するために液状の炭素前駆体を用いることによって、二重クランピング層が形成される中間粒子の最適な分散と固形有機層の均一なウェッティングを誘導し、後続熱処理を通じて緻密な炭素層及びシリコン炭化物層を経済的且つ迅速に大量に形成できる製造方法が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a-1c】
図1a
~図1cは、それぞれ本発明の一実施例に係る各シリコン負極活物質を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るシリコン負極活物質の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3a-3e】
図3a~
図3eは、前記製造方法に係る各中間生成物を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の他の実施例に係るシリコン負極活物質の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5a-5b】
図5a及び
図5bは、本発明の実施例に係る製造方法による各中間生成物を示す図である。
【
図6】
図6は、上記の各実験例によって製造されたシリコン負極活物質粒子の高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM)イメージである。
【
図7】
図7は、本発明の実施例に係るシリコン負極活物質のX線回折パターンである。
【
図8a-8b】
図8aは、実験例1に係るシリコン活物質粒子及び比較例のシリコン活物質粒子を用いてそれぞれ製造された半分のセルの初期充放電特性を示すグラフで、
図8bは、前記半分のセルの容量維持率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0023】
本発明の各実施例は、当該技術分野で通常の知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。また、下記の実施例は、多くの他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることはない。むしろ、これらの実施例は、本開示をさらに充実且つ完全にし、当業者に本発明の思想を完全に伝達するために提供されるものである。
【0024】
また、以下の図面において、各層の厚さやサイズは、説明の便宜及び明確性のために誇張したものであり、図面上で同一の符号は同一の要素を称する。本明細書で使用された「及び/又は」という用語は、該当の列挙された項目のうちのいずれか一つ及び一つ以上の全ての組み合わせを含む。
【0025】
本明細書で使用された用語は、特定の実施例を説明するためのものであり、本発明を制限するためのものではない。本明細書で使用された単数の形態は、文脈上、他の場合を明確に指摘するものでない限り、複数の形態を含み得る。また、本明細書で使用された「含む(comprise)」及び/又は「含む(comprising)」という用語は、言及した各形状、数字、段階、動作、部材、要素及び/又はこれらのグループの存在を特定するものであり、一つ以上の他の形状、数字、動作、部材、要素及び/又はグループの存在又は付加を排除するものではない。
【0026】
図1a及び
図1bは、それぞれ本発明の一実施例に係る各シリコン負極活物質100A、100Bを示す断面図である。
【0027】
図1aを参照すると、シリコン負極活物質100Aは粒子構造を有する。前記粒子構造の負極活物質100Aは20nm~2μmの平均粒径を有し、電池の応用及び電極構造に応じて適宜選択され得る。例えば、粒径が小さいほど充放電時の体積変化が抑制され、それによる寿命の劣化を防止できる一方、粒径が大きいほどエネルギー密度が向上し得るので、要求される電池の応用に応じて適宜選択され得る。
【0028】
シリコン負極活物質100Aはシリコンコア10を含む。シリコンコア10は、単一シリコン粒子であるか、複数のシリコン粒子が凝集した2次粒子構造を有し得る。前記シリコン粒子は、単結晶又はポリシリコンなどの結晶質であるか、非晶質又はこれらが混合された相を有し、粉砕、電気爆発又はシリコン前駆体ガスの凝結などの工程によって得られる。
【0029】
シリコン負極活物質100Aは、シリコンコア10上にクランピング層20をさらに含む。クランピング層20は、電池の充・放電時のシリコンコア10の体積変化を機械的に緩和させ、活物質自体の粒子形態を維持させるための層である。クランピング層20は、外殻であるシリコン炭化物層21、及び内殻であるシリコン炭化物層21とシリコンコア10との間のシリコン酸化物層22を含む二重層構成を有する。
【0030】
クランピング層20のシリコン酸化物層22は、
図2を参照して後述するように、シリコン炭化物層21の生成のためのシリコンのソースになるので、シリコン酸化物層22が最初の化学量論的組成を有する場合にも、シリコン炭化物層21の生成の間にシリコン酸
化物層22が非化学量論的なSiO
x(0<X<2)の組成を有するように変化し得る。シリコン酸化物層22から生成されたシリコン炭化物層(SiC)21は、結晶質、非晶質又はその混合構造を有し得るが、結晶質の場合にも、繰り返される充・放電によるリチウムの透過及び初期リチウム化によって漸次非晶質化され得る。
【0031】
二重クランピング層20の厚さは0.5nm~20nmであり得る。厚さが20nmを超えると、シリコン負極活物質全体のエネルギー密度が低下し、厚さが0.5nm未満であると、シリコンコア10の体積変化を緩衝するための十分な機械的強度を得ることができない。また、シリコンコアの半径に対する二重クランピング層の厚さの割合が1%~10%の範囲内であるとき、エネルギー密度及び機械的強度の側面でシリコン負極活物質100Aの特性が最適化され得る。
【0032】
図1bを参照すると、一部の実施例において、シリコン負極活物質100Bの二重クランピング層20は一つ又は2以上の貫通ホール20Hを含み得る。リチウムイオンLi+は、二重クランピング層20を通じて拡散されたり、各貫通ホール20Hを介して自由にシリコンコア10と二重クランピング層20外部の電解質(EL)との間で往来するようになる。外部電解質(EL)に溶解されたリチウムイオンLi+は、充電時に二重クランピング層20に形成された各貫通ホール20Hを介して、矢印Aで示したように、二重クランピング層20内部のシリコンコア10に伝達されて還元され得る。放電時には、矢印Bで示したように、シリコンコア10のリチウムが酸化されながらリチウムイオンLi+がシリコンコア10から放出される。各貫通ホール20Hを介して自由に往来するリチウムイオンLi+は、二重クランピング層20によって減少したリチウムの透過量を補償することによって充放電効率を補償し、このような特性は、電池の応用に応じて適宜選択され得る。例えば、ノート型コンピューターのように高効率が要求される場合、全体のシリコンコアのサイズは減少させ、各貫通ホール20Hを形成することができ、電気自動車のような高容量の応用では、全体のシリコンコアのサイズを増加させ、各貫通ホール20Hの形成を減少又は消滅させることによって機械的クランピング効果を最大化することもできる。
【0033】
図1cを参照すると、シリコン負極活物質100Cは、二重クランピング層20上に黒鉛、ソフトカーボン、又はグラフェンなどの炭素系導電層30をさらに含み得る。炭素系導電層30は、互いに接触するシリコン負極活物質100B間の電気的連結のためのものであり、集電体(図示せず)までの内部抵抗を減少させる。上述したように、炭素系導電層30は、結晶質であるか、少なくとも部分的に非晶質の炭素膜であり得る。炭素系導電層30が高結晶性を有する場合、黒鉛であり得るが、この場合、表面で電解液との反応を起こし得る。しかし、低結晶性又は非晶質炭素膜は、前記電解質に対して化学的耐食性を有するので、充・放電時に前記電解液の分解が抑制され、負極の寿命を向上させることができる。また、炭素系導電層30は、導電性を有するSP2黒鉛構造と、絶縁性を有するSP3のダイヤモンド構造とが混在したものであり得る。また、炭素系導電層30が導電性を有するためには、前記SP2にSP3より大きなモル分率を与えることもでき、これは、後述する熱処理工程を通じて調節され得る。
【0034】
上述した炭素系導電層30は例示的なものであり、本発明がこれに制限されることはない。例えば、アンチモン亜鉛酸化物又はアンチモンスズ酸化物などの導電性金属酸化物の各ナノスケール粒子又はその層などの他の導電層が二重クランピング層20上に形成されてもよい。前記各ナノスケール粒子は、下地の各シリコン負極活物質粒子と焼結体を形成してもよい。
【0035】
一部の実施例において、シリコン負極活物質100Cの二重クランピング20は、
図1bを参照して説明したように、貫通ホール20Hを有し得る。この場合、炭素系導電層3
0は、貫通ホール20Hを含み、シリコン負極活物質粒子の全体表面上に連続的にコーティングされることが好ましい。この場合、貫通ホール20Hを介してリチウムイオンの移動度を向上させ、二重クランピング層20によってシリコン負極活物質100Cの体積変化を緩和しながらも、貫通ホール20Hを介して露出したシリコンコア10の表面が炭素系導電層30によって外部電解質に浸食されることを防止する。炭素系導電層30は例示的なものであり、電解質に対して適切な障壁層として機能する上述したナノスケール粒子層が適用されてもよい。
【0036】
図2は、本発明の一実施例に係るシリコン負極活物質の製造方法を示すフローチャートで、
図3a~
図3eは、前記製造方法に係る各中間生成物を示す。
【0037】
図2及び
図3aを参照すると、シリコンコア10、及びシリコンコア10上にシリコン酸化物層22Lを有する第1中間粒子100aを形成する(S10)。シリコン酸化物層22Lは、自然酸化膜であってもよく、人為的にシリコンコア10上に形成されたシリコン酸化膜であってもよい。例えば、人為的に形成されたシリコン酸化物層22Lは、シリコンコア10の表面を熱酸化したり、シリコンコア10上に化学気相蒸着やプラズマ強化化学気相蒸着法によってシリコン酸化物を蒸着することによって提供され得る。
【0038】
後述するように、シリコン酸化物層22Lが消耗しながらシリコン炭化物層21が形成されるので、最終的に設計された二重クランピング層20の厚さ(
図3dのT
des参照)に比べて、形成された第1中間粒子100aのシリコン酸化物層22Lの厚さ(T
1)が過度に小さいと、シリコン酸化物層22Lが全て消耗してしまい、二重クランピング構造20を得られないか、内部のシリコンコア10がシリコンのソースとして作用しながら浸食され、粒子構造の崩壊又は容量低下が発生し得る。その反対に、第1中間粒子100aのシリコン酸化物層22Lの厚さ(T
1)が増加するほど、製造されたシリコン負極活物質のシリコン酸化物層(
図1aの22を参照)の厚さが大きくなるので、前記活物質の容量低下が発生し得る。また、シリコン酸化物層22Lの密度(例えば、2.3g/cm
3)が、後述する炭素膜、主に、ソフト炭素膜の密度(例えば、2.3g/cm
3)に比べて大きいので、シリコン炭化物層21のシリコンソースになるシリコン酸化物層22Lの厚さは、最終的に設計された二重クランピング層20の厚さ(T
des)に対して50%~150%の範囲内にし、十分なマージンを有するように設計され得る。
【0039】
また、後述するように、シリコン酸化物層22Lは、炭素層25Lの厚さの1倍~10倍ほどのサイズ、さらに、多様な炭素層25Lの密度範囲に対応できるように1.1倍~3倍ほどのサイズを有することが好ましい。これは、シリコン炭化物層21を形成するために炭素層25Lが全て消耗したとしても、下地のシリコン酸化物層22Lを残留させ、二重クランピング層20の成長厚さの制限により、初期の非可逆容量が増加し、非活物質化される問題を防止し、リチウム移動度の減少による律速特性の低下を防止できるためである。
【0040】
図2及び
図3bを参照すると、第1中間粒子100a上に炭素前駆体である第1固形有機層25Sをコーティングすることによって第2中間粒子100bを形成する(S20)。一実施例において、第1固形有機層25Sの製造のための前記炭素前駆体として、炭化水素系、アルコール系、エーテル系及びエステル系化合物からなる群から選ばれた一つ又は2以上の混合溶液が使用可能である。一実施例において、前記炭化水素は、ヘキセン、ノネン、ドデセン、ペンタデセン、トルエン、キシレン、クロロ安息香酸、ベンゼン、ヘキサデシン、テトラデシン又はオクタデシンであり得る。しかし、これは例示的なものであり、炭素数が6~20の範囲内の線状又は分枝状の他の液状炭化水素が適用可能である。
【0041】
また、前記アルコールは、エチルアルコール、メチルアルコール、グリセロール、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ポリビニルアルコール、シクロヘキサノール、オクチルアルコール、デカノール、ヘキサデカノール、エチレングリコール、1,2-オクタンジオール、1,2-ドデカンジオール及び1,2-ヘキサデカンジオールのうちのいずれか一つ又はこれらの混合物であり得る。前記アルコール系有機溶液として、他の1次アルコール、2次アルコール及び3次アルコールが使用されてもよい。
【0042】
前記エーテルは、オクチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、ベンジルエーテル、フェニルエーテル、デシルエーテル、エチルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル、及びポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリテトラヒドロフランなどのポリエーテルであってもよい。上述したポリエーテルは例示的なものであり、前記エーテル系有機溶媒として、他の脂肪族又は芳香族ポリエーテルが使用されてもよい。前記エステルは、ポリエチレンテレフタレート、アクリレートエステル、セルロースアセテート、イソブチルアセテート、イソプロピルアセテート、アリルヘキサノエート、ベンジルアセテート、ボルニルアセテート、ブチルアセテート又はラクトンなどの環状エステルであってもよい。
【0043】
他の実施例では、前記炭素含有濃度を増加させるために、追加的な炭素前駆体として、前記液状有機化合物を溶媒として用いて、これに溶解可能な炭素含有天然高分子物質及び炭素含有合成高分子物質のうちのいずれか一つ又はこれらの混合物をさらに含み得る。更に他の実施例として、前記液状有機化合物の代わりに、他の溶媒、例えば、蒸留水又は脱イオン水などの水に追加的な炭素含有天然高分子物質及び炭素含有合成高分子物質のうちのいずれか一つ又はこれらの混合物を溶解させ得る。
【0044】
前記炭素含有高分子物質は、キトサン、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、デンプン、グリコーゲン、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)又はこれらの混合物であり得る。例えば、前記PAN、PAA又はPVPなどの高分子物質を上述した適切な溶媒に溶かし、第1中間粒子100aを前記溶媒に分散させ、前記高分子物質で濡らされた第1中間粒子を収得した後、これを乾燥することによって第2中間粒子100bを得ることができる。
【0045】
第1固形有機層25Sの製造のための炭素前駆体である前記溶液と第1中間粒子100aの分散溶液の濃度は、例えば、0.1wt%~20wt%であり得る。前記分散溶液の濃度が低いと収率が小さく、その濃度が高くなると、分散状態の維持が難しいので、液状有機化合物のウェッティングが難しくなり得る。一部の実施例では、分散性の強化のために撹拌工程が行われ得る。更に他の方法では、炭素前駆体である有機固形膜をスプレー法及び飛散法などによって第1中間粒子上にコーティングすることができ、本発明がこれに制限されることはない。
【0046】
一部の実施例では、前記混合溶液中にオクチルアミン、トリオクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オレイルアミンなどのアミン系界面活性剤及び/又はオクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ヘキサデカン酸、オレイン酸、エルシン酸、ステアリン酸、安息香酸又はビフェニルカルボン酸などの界面活性剤をさらに含んでもよい。これは、分散粒子の表面安定性を向上させ、炭素前駆体の均一なウェッティングを助ける。上述した各界面活性剤は例示的なものであり、本発明が
これに制限されることはない。例えば、前記界面活性剤は、前記分散溶液中の各分散粒子の表面安定性の制御を通じて分散粒子の形状、例えば、球状、ナノロッド、テトラポッド、及びトリポッドなどの形状を制御できるように適宜選択され得る。
【0047】
図2及び
図3cを参照すると、収得された第2中間粒子100bを第1温度で熱処理し、第1固形有機層25Sを炭素層25Lに変換させ、シリコン酸化物層22L上に炭素層25Lが形成された第3中間粒子100cを形成する(S30)。前記第1温度は、第1固形有機層25Sとシリコン酸化物層22Lとの間のシリコン炭化物層の形成が起こる温度以下で第1固形有機層25Sのみが選択的に炭素層25Lに変換される温度範囲内で選択され得る。一実施例において、前記第1温度は約700℃~1,100℃の範囲内であり得る。このとき、第1固形有機層25Sは、炭素層25Lに完全に変換可能である。炭素層25Lの厚さ(T
2)は0.5nm~10nmであり得る。
【0048】
図2及び
図3dを参照すると、第3中間粒子100cを第2温度で熱処理し、シリコン酸化物層22Lと炭素層25Lとの間にシリコン炭化物層21を形成する。第2温度は第1温度より高くなり得る。前記第2温度は、1,200℃~1,400℃の範囲内である。
【0049】
図3dにおいて、位置Pは、前記第2温度での熱処理以前のシリコン酸化物層22Lと炭素層25Lとの界面位置である。前記第2温度での熱処理が進められながら、シリコン酸化物層22Lの表面は位置P
1に後退し、シリコン酸化物層22Lの厚さ(T
1)はD
1だけ減少し、炭素層25Lの内部表面は位置P
2に前進しながら、炭素層25Lの厚さ(T
2)はD
2だけ減少する。このように、シリコン酸化物層22L及び炭素層25Lが消耗しながら厚さが漸次薄くなり、シリコン酸化物層22Lと炭素層25Lとの間に新たに所定厚さを有するシリコン炭化物層21Lが生成される。生成された二重クランピング層の厚さ(T
des)は、緻密な膜構造によって実際に減少した厚さの和、D
1+D
2より小さくなり得る。
【0050】
一部の実施例において、シリコン炭化物層21Lの形成は、炭素層25Lが消尽しながら終了し得る。シリコン酸化物層22Lの厚さ(T
1)が炭素層25Lの厚さ(T
2)の1倍~10倍ほどのサイズ、好ましくは1.1倍~3倍ほどのサイズを有すると、炭素層25Lの消尽による反応終了後にも依然としてシリコン酸化物層22Lが残存するようになり、生成されたシリコン炭化物層21L及び残留するシリコン酸化物層22Lを含む二重クランピング層(
図1aの20)を得ることができる。他の実施例において、炭素層25Lの厚さ(T
2)を十分に厚くし、シリコン炭化物層21に変換されない炭素層25Lが二重クランピング層20上に残存し得る。残留する炭素層25Lは炭素系導電層(
図1cの30)として用いられ、炭素系導電層が形成されたシリコン負極活物質100dが提供され得る。
【0051】
図2及び
図3eを参照すると、上述したように、炭素層25Lが消尽した場合、優れた導電性及びリチウム拡散が容易な物性を有する導電層を形成するために、二重クランピング層20上に別途に炭素系導電層をさらに形成することができる。このために、二重クランピング層20上に第2固形有機層30Sをコーティングすることによって第4中間粒子100eを形成することができる。
【0052】
第2固形有機層30Sは、第1固形有機層25Sと同様に、上述したPAN、PAA及びPVPなどの炭素前駆体物質を適切な溶媒に溶かし、二重クランピング層20が形成されたシリコン活物質粒子を前記溶媒に分散させ、前記高分子前駆体物質で濡らされた中間粒子を収得した後、これを乾燥することによって得ることができる。上述した実施例は例示的なものであり、第1固形有機層25Sは、上述した実施例を参照して形成され得る。
【0053】
その後、第4中間粒子100eを第3温度で熱処理し、第2固形有機層30Sを炭素層に変換し、炭素系導電層(
図1cの30参照)がコーティングされたシリコン負極活物質(
図1bの100B参照)を得ることができる。前記第3温度は、前記第1温度と同様に、700℃~1,100℃の範囲内であり得る。
【0054】
図4は、本発明の他の実施例に係るシリコン負極活物質の製造方法を示すフローチャートで、
図5a及び
図5bは、前記製造方法に係る各中間生成物を示す。同一の参照符号を有する構成要素に関しては、上述した開示事項を参照することができる。
【0055】
図4及び
図5aを参照すると、シリコンコア10、及びシリコンコア10上にシリコン酸化物層22を有する第1中間粒子(
図3aの100a参照)を形成する(S10)。上述したように、シリコン酸化物層22Lは、自然酸化膜であってもよく、人為的にシリコンコア10上に形成された層であってもよい。シリコン酸化物層22Lが消耗しながらシリコン炭化物層が形成されるので、シリコン酸化物層22Lの厚さは、最終的に設計された二重クランピング層20の厚さ(T
des)に対して50%~150%の範囲内にし、十分なマージンを有するように設計され得る。
【0056】
その後、前記第1中間粒子上に第1固形有機層26Lをコーティングすることによって第2中間粒子100mを形成する(S20)。第1固形有機層26Lは、上述したように、炭化水素系、アルコール系、エーテル系及びエステル系化合物からなるグループから選ばれた一つ又は2以上の混合溶液に前記第1中間粒子を分散させ、これらを再び収得して乾燥することによって得ることができる。他の実施例として、前記液状有機化合物を溶媒として用いて、これに溶解可能な炭素含有天然高分子物質及び炭素含有合成高分子物質のうちのいずれか一つ又はこれらの混合物をさらに添加することによって炭素前駆体の濃度を増加させることもできる。更に他の実施例として、前記液状有機化合物の代わりに、他の溶媒、例えば、水に追加的な炭素含有天然高分子物質及び炭素含有合成高分子物質のうちのいずれか一つ又はこれらの混合物を溶解させた後、第1中間粒子100mを混合溶液に分散させて収得・乾燥することによって第1固形有機層26Lをコーティングすることもできる。これらの液相法は、第1中間粒子100a上に均一に大規模で第1固形有機層26Lをコーティングできるという利点を有する。特に、水を使用する場合、環境にやさしい工程の樹立が可能であるという利点がある。
【0057】
更に他の方法では、炭素前駆体である有機固形膜を高温のスプレー法及び飛散法などによって第1中間粒子上にコーティングすることができ、適切な減圧又は冷却過程が行われ得るが、本発明がこれに制限されることはない。
【0058】
図4及び
図5bを参照すると、その後、第2中間粒子100mを所定温度で熱処理し、第1固形有機層26Lを炭素層26Sに変換させると同時に、シリコン酸化物層22Lと第1固形有機層26Lとの間にシリコン炭化物層21Lを形成することができる(S30)。前記熱処理温度は、1,150℃~1,300℃の範囲内であり得る。
【0059】
一部の実施例において、シリコン炭化物層21Lの形成は、炭素層26Sが消尽しながら終了し得る。シリコン酸化物層22Lの厚さが炭素層26Sの厚さの1.5倍~3倍ほどのサイズを有するので、炭素層26Sがシリコン炭化物層21Lの生成によって消尽したとしても、依然としてシリコン酸化物層22Lが残存するようになり、シリコン炭化物層21L及びシリコン酸化物層22Lを含む二重クランピング層(
図1aの20参照)を得ることができる。
【0060】
他の実施例において、第1固形有機層26Lの厚さが十分に厚い場合、シリコン炭化物
層21Lが形成され、炭素層26Sが消尽せず、二重クランピング層に前記炭素層が残存することもある。この場合、残存する炭素層は炭素系導電層として使用可能である。
【0061】
実験例1
常温の蒸留水に炭素前駆体であるPVPを溶解させ、前記PVPの水溶液に、シリコンコアの表面にシリコン酸化物層が形成された各中間粒子を分散させた。前記シリコンコアの半径は平均20nmであって、前記シリコン酸化物層の厚さは2nmであった。十分な量の固形有機層を形成させるために、PANの容量は10wt%として過量含有させた。
【0062】
前記分散水溶液を30分ほど撹拌した後、各シリコン粒子を収得し、粒子状の溶媒を蒸発させ、表面に炭素前駆体層として固形有機層がコーティングされた各中間粒子を製造した。その後、800℃で1時間にわたってArガス雰囲気で前記各中間粒子を熱処理し、炭素層が形成された中間粒子を製造した。その後、前記炭素層が形成された中間粒子を再びArガス雰囲気の1,200℃で1時間にわたって熱処理した。前記熱処理によって前記各中間粒子のシリコン酸化物層と炭素層との間にシリコン炭化物層が生成されながら、シリコン粒子上に二重クランピング層が形成された。
【0063】
実験例2
実験例1と同様に、常温の蒸留水に炭素前駆体であるPVPを溶解させ、前記PVPの水溶液に、シリコンコアの表面にシリコン酸化物層が形成された各シリコン粒子を分散させた。前記シリコン粒子は、実験例1のシリコン粒子と同一であり、シリコンコアの半径は平均20nmであって、シリコン酸化物層の厚さは約2nmである。
【0064】
前記分散水溶液を30分ほど撹拌した後、各シリコン粒子を収得し、粒子状の溶媒を蒸発させ、表面に固形有機層として炭素前駆体層がコーティングされた各中間粒子を製造した。その後、1,200℃で2時間にわたってArガス雰囲気で前記各中間粒子を熱処理し、前記各中間粒子のシリコン酸化物層上にシリコン炭化物層及び炭素層を順次形成した。
【0065】
図6は、上記の各実験例によって製造されたシリコン負極活物質粒子100の高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM)イメージである。シリコンコア10の半径は、平均20nmであって、二重クランピング層20の形成前のシリコンコアの半径と同一であり、これから二重クランピング層20の形成時にシリコンコアの浸食が起こらなかったことが分かる。シリコンコア10上に形成された二重クランピング層20の全体厚さは2.3nmであって、シリコン炭化物層21の形成後、依然として炭素層30が残留した。
【0066】
図7は、本発明の実施例に係るシリコン負極活物質のX線回折パターンである。□は、シリコンコアのピークであって、●は、シリコン炭化物のピークである。曲線Cは、本発明の実施例に係る二重クランピング層を有するシリコン負極活物質粒子の測定結果であって、曲線Rは、シリコンコアのピークである。
【0067】
下記の表1は、シリコン負極活物質の上記の実験例1及び2に係るシリコン負極活物質が適用された負極の平均電極膨張率と、比較例に係るシリコン負極活物質が適用された負極の平均電極膨張率との厚さ変化を示す。
【0068】
【0069】
*A=(充電時の厚さ-初期厚さ)/充電時の厚さX100
【0070】
**B=(充電時の厚さ-放電時の厚さ)/充電時の厚さX100
【0071】
表1のように、実施例(曲線C)によると、初期厚さを基準にして2%程度に充電時の厚さ変化が抑制され、充放電時の厚さ変化は、充電時を基準にして42%以下に抑制される。しかし、比較例(曲線R)に係るシリコン負極活物質は、初期厚さを基準にして189%程度に充電時の厚さ変化を示し、充放電時の厚さ変化は、充電時を基準にして108%以上の厚さ変化を示した。
【0072】
図8aは、実験例1に係るシリコン活物質粒子と比較例のシリコン活物質粒子を用いてそれぞれ製造された半分のセルの初期充放電特性を示すグラフで、
図8bは、前記半分のセルの容量維持率を示すグラフである。前記比較例は、シリコンコア上に炭素層を形成したものである。充放電律速は0.1Cである。
【0073】
図8aにおいて、曲線C11、C12及びC13は、実験例1の1回、2回及び3回の充電特性を示し、曲線C21、C22及びC23は、実験例1の1回、2回及び3回の放電特性を示す。同様に、曲線R11、R12及びR13は、比較例の1回、2回及び3回の充電特性を示し、曲線R21、R22及びR23は、比較例の1回、2回及び3回の放電特性を示す。実験例1と比較例の全ての充電容量は2,700(mAh/h)以上であることを確認することができる。初期充電容量は、2回及び3回で微小に増加する傾向を示すが、漸次収斂される。比較例のシリコン活物質粒子は、初期充電容量が実験例1の場合より多少高い傾向を示す。しかし、放電特性を参照すると、実験例1と比較例のいずれにおいてもほぼ同一の挙動を示す。2回目からは放電効率が多少減少し、これは、充電及び放電時の体積変化による非可逆容量の増加に起因し得る。
【0074】
図8bを参照すると、実施例1の電池(曲線C)は、40回でも90%以上の容量が維持されるが、比較例の電池(曲線R)は40回で60%以下に減少する。実施例1の電池と比較例の電池は、
図8aに示したように、充電及び放電容量特性では比較的類似する挙動を示すが、その寿命特性と関連する容量維持率は、本発明の実施例による場合、二重クランピング層によって著しく改善されることを確認することができる。
【0075】
以上説明した本発明は、上述した実施例及び添付の図面に限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な置換、変形及び変更が可能であることは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって明白であろう。