(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】機能徐放性組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20221003BHJP
A61L 9/04 20060101ALI20221003BHJP
C07C 63/26 20060101ALI20221003BHJP
C07C 63/307 20060101ALI20221003BHJP
C07C 63/333 20060101ALI20221003BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20221003BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20221003BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20221003BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20221003BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20221003BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20221003BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20221003BHJP
A01N 43/16 20060101ALI20221003BHJP
A01N 43/78 20060101ALI20221003BHJP
A01N 43/38 20060101ALI20221003BHJP
A01N 37/36 20060101ALI20221003BHJP
A01N 53/08 20060101ALI20221003BHJP
A01N 31/14 20060101ALI20221003BHJP
C07C 69/76 20060101ALI20221003BHJP
C07C 311/16 20060101ALI20221003BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221003BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20221003BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20221003BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20221003BHJP
C07F 5/06 20060101ALN20221003BHJP
C07F 3/06 20060101ALN20221003BHJP
C07F 1/08 20060101ALN20221003BHJP
C07F 15/02 20060101ALN20221003BHJP
C07F 11/00 20060101ALN20221003BHJP
【FI】
C09K3/00 110B
A61L9/04
C07C63/26 Z
C07C63/307
C07C63/333
A01N25/00 101
A01N25/10
A01P7/02
A01P7/04
A01P13/00
A01P3/00
A01P21/00
A01N43/16 C
A01N43/78 A
A01N43/38
A01N37/36
A01N53/08 125
A01N31/14
C07C69/76 Z
C07C311/16
C08L101/00
C08K5/00
A01M1/20 C
A01N25/08
C07F5/06 D
C07F3/06
C07F1/08 B
C07F15/02
C07F11/00 A
(21)【出願番号】P 2018117392
(22)【出願日】2018-06-20
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000226507
【氏名又は名称】株式会社ニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【氏名又は名称】田中 克郎
(72)【発明者】
【氏名】坪 俊介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 徹
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0029460(KR,A)
【文献】特開2015-066512(JP,A)
【文献】特開2016-017055(JP,A)
【文献】特開2019-056055(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129685(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0314737(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106423071(CN,A)
【文献】特開2015-078141(JP,A)
【文献】特開2010-084050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
A61K 9/00-9/72
A61L 9/00-9/22
A01N
C07C
A01P
C08L
C08K
A01M
C07F
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能徐放性液体と、金属イオン及び有機配位子を有し、900m
2/g以上の比表面積を有する多孔性配位高分子と、マトリックス樹脂とを含み、
10MPa以上圧縮した時の
前記機能徐放性液体の表面濃度が1.0mg/cm
2未満であ
り、
前記機能徐放性液体の含有量が、20質量%以上であり、
前記機能徐放性液体が、小動物防除薬剤、小動物の成長コントロール活性を有する化合物、樹脂に可塑性能を付与する機能を有する機能徐放性液体、植物の成長を制御する機能徐放性液体、及び抗菌機能、防カビ機能を有する機能徐放性液体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
前記多孔性配位高分子が、クロムイオンとテレフタル酸から構成される多孔性配位高分子、鉄イオンとトリメシン酸から構成される多孔性配位高分子、銅イオンとトリメシン酸から構成される多孔性配位高分子、亜鉛イオンと4,4'-ビフェニルジカルボキシ酸から構成される多孔性配位高分子、又はアルミニウムイオンとテレフタル酸から構成される多孔性配位高分子を含む、
機能徐放性組成物。
【請求項2】
前記機能徐放性液体が、600以下の分子量、10℃以上の融点を有する請求項1記載の機能徐放性組成物。
【請求項3】
前記多孔性配位高分子の平均細孔径が、前記機能徐放性液体の分子径以上である請求項1又は2に記載の機能徐放性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の機能徐放性組成物の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能徐放性組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
小動物防除等の機能性成分において、所定量の機能性成分を長期間放出することにより、効果の持続性の向上が期待できる。小動物防除機能成分の効果持続性を高める方法として、小動物防除機能成分をマトリックス樹脂に展開した小動物防除複合素材を用いた成形体などが考案されている(例えば、特許文献1~3)。特許文献1~3に記載された成形体は、小動物防除機能成分を成形体表面に徐々に放出する(以下、「徐放」という。)ことにより、害虫等の小動物と接触する成形体表面における小動物防除機能を持続できる。このような徐放性を長期間持続するためには、マトリックス樹脂に展開した機能性成分を増量させることが考えられる。機能性成分を増量させることは、機能を更に強める観点からも有効である。機能性成分を増量させる方法としては、機能性成分とマトリックス樹脂との親和性を高めるために、機能性成分に官能基を修飾したり、マトリックス樹脂の極性を高めたり、機能性成分を多孔質体に担持させたりする方法が挙げられる(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-73886号公報
【文献】特開2000-212005号公報
【文献】特開2008-206492号公報
【文献】特開2012-6868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体である機能性成分をマトリックス樹脂に展開するためには、マトリックス樹脂中の自由体積の空間に機能性成分を配置したり、樹脂間を広げ、その隙間の空間に機能性成分を配置したりすることが考えられる。この際に、機能性成分とマトリックス樹脂の両者の親和性が高いほど、機能性成分を配置しやすくなり、より多くの量の機能性成分をマトリックス樹脂中に展開できる。
【0005】
しかしながら、成形体の形状を維持するためには、マトリックス樹脂による骨格が形成される必要があるため、マトリックス樹脂中の自由体積は樹脂の種類、温度による熱振動等により限られた大きさとなる。また、機能性成分によって樹脂間を広げようとしても、成形体の形状を維持するためには樹脂間の距離は所定の距離以下である必要があり、自由体積も上限が存在し、機能性成分を増量させることに限界がある。マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、通常、マトリックス樹脂の極性を調整したりして樹脂を改質しても、機能性成分の成形体全体に対する含有量は、20質量%前後が限度である。よって、このような成形体は、徐放効果を長時間に亘り持続できない。
【0006】
機能性成分を担持する多孔質体としては、通常、ゼオライト等(シリカ、アルミナ、モレキュラーシーブ、活性炭等)が考えられる。このような多孔質体では、細孔内の表面状態が機能性成分との親和性を制御する自由度が低く、多くの機能性成分を担持できない。このため、多孔質体を用いる方法よりも、マトリックス樹脂の改質をする方法が有効であるようである。なお、機能性成分は、種々あり、その機能性成分と高い親和性を有するマトリックス樹脂はそれぞれ異なる。しかしながら、耐用温度、強度、材料単価等の使用時に要求される性能、価格に応じて、マトリックス樹脂の選択は限られる。このように、機能性成分との親和性を考慮した成形体の素材設計は極めて困難である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、優れた徐放効果を長期間に亘り持続できる機能徐放性組成物及び成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の機能徐放性液体と、特定の多孔性配位高分子とを含有するフィラーと、マトリックス樹脂とを組み合わせると、得られる機能徐放性組成物は、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)
機能徐放性液体と、金属イオン及び有機配位子を有し、900m2/g以上の比表面積を有する多孔性配位高分子と、マトリックス樹脂とを含み、
10MPa以上圧縮した時の液体成分の表面濃度が1.0mg/cm
2
未満である、
機能徐放性組成物。
(2)
前記機能徐放性液体が、600以下の分子量、10℃以上の融点を有する(1)の機能徐放性組成物。
(3)
前記多孔性配位高分子の平均細孔径が、前記機能徐放性液体の分子径以上である(1)又は(2)の機能徐放性組成物。
(4)
(1)~(3)のいずれかの機能徐放性組成物の成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた徐放効果を長期間に亘り持続できる機能徐放性組成物及び成形体を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1~4、21における、機能徐放性複合成形体中の機能徐放性液体の含有濃度と、機能徐放性複合成形体の表面量の関係を示す図である。
【
図2】実施例5~8における、機能徐放性複合成形体中の機能徐放性液体の含有濃度と、機能徐放性複合成形体の表面量の関係を示す図である。
【
図3】実施例9~12における、機能徐放性複合成形体中の機能徐放性液体の含有濃度と、機能徐放性複合成形体の表面量の関係を示す図である。
【
図4】実施例13~16における、機能徐放性複合成形体中の機能徐放性液体の含有濃度と、機能徐放性複合成形体の表面量の関係を示す図である。
【
図5】実施例17~20における、機能徐放性複合成形体中の機能徐放性液体の含有濃度と、機能徐放性複合成形体の表面量の関係を示す図である。
【
図6】比較例1~5における、機能徐放性複合成形体中の機能徐放性液体の含有濃度と、機能徐放性複合成形体の表面量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)を、必要に応じて図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。
【0013】
[機能徐放性組成物]
本実施形態の機能徐放性組成物は、機能徐放性液体と、金属イオン及び有機配位子を有し、900m2/g以上の比表面積を有する多孔性配位高分子と、マトリックス樹脂とを含む。本実施形態の機能徐放性組成物は、機能徐放性液体と、多孔性配位高分子と、マトリックス樹脂とを組み合わせることにより、優れた徐放効果を長期間に亘り持続できる。このため、本実施形態の機能徐放性組成物は、製品の性能向上、メンテナンス頻度の削減によるコスト削減等の利点を備える。
【0014】
(機能徐放性液体)
機能徐放性液体における「機能徐放性」としては、例えば、小動物防除機能、植物の成長を制御する機能、抗菌機能、防カビ機能、樹脂に可塑性能を付与する機能、摺動機能、自己修復機能、触媒機能、医療機能等の機能を有し、徐放性を有する性質をいう。機能徐放性液体は、機能徐放性を有する液体成分であってもよく、機能徐放性を有する固体成分を液状化した形態であってもよく、機能徐放性を有する固体成分を溶媒に溶解させることにより液状化した形態であってもよい。
【0015】
小動物防除機能を有する機能性液体としては、例えば、各種の農業害虫、衛生害虫その他の昆虫類、蜘蛛類、ダニ類、鼠等の小動物の防除活性を有する薬剤又は薬剤を溶媒に溶解させた液状の形態(以下、「小動物防除薬剤」ともいう。)であればよく、例えば、小動物忌避活性を有する化合物、殺虫活性、殺ダニ活性、殺蜘蛛活性若しくは殺鼠活性等の殺小動物活性を有する化合物、小動物の摂食阻害活性を有する化合物、及び小動物の成長コントロール活性を有する化合物が挙げられる。
【0016】
小動物防除薬剤の具体例としては、ブロフラニリド等のメタジアミド系殺虫剤、イカリジン等のピペリジン系殺虫剤、イミダクロプリド等のクロロニコチニル系殺虫剤、シラフルオフェン等のケイ素原子を有するネオフィルラジカルからなる化合物、ベンフラカルブ、アラニカルブ、メトキシジアゾン、カルボスファン、フェノブカルブ、カルバリル、メソミル、プロポクサー、フェノキシカルブ等のカーバメート系化合物、ピレトリン、アレスリン、dl,d-T80-アレスリン、d-T80-レスメトリン、バイオアレスリン、d-T80-フタルスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、プロパスリン、ペルメトリン、アクリナトリン、エトフェンプロックス、トラロメトリン、フェノトリン、d-フェノトリン、フェンバレレート、エンペントリン、プラレトリン、テフルスリン、ベンフルスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等のピレスロイド系化合物、ジクロロボス、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、プロモフォス、フェンチオン、トリクロルホン、ナレド、テメホス、フェンクロホス、クロルピリホスメチル、シアホス、カルクロホス、アザメチホス、ピリダフェンチオン、プロペタンホス、クロルピリホス等の有機リン系化合物及びこれらの異性体、誘導体、類縁体等が挙げられる。また、小動物の成長コントロール活性を有する化合物としては、例えば、メトプレン、ピリプロキシフェン、キノプレン、ハイドロプレン、デオヘノラン、NC-170、フルフェノロクスロン、ジフルベンズロン、ルフェヌロン、クロルアズロン等が挙げられる。殺小動物活性を有する化合物としては、例えば、ケルセン、クロルフェナビル、デブフェンピラドピリダベン、ミルベメクチン、フェンピロキシメート等の殺ダニ剤、シリロシド、ノルボマイド、隣化亜鉛、硫酸タリウム、貴隣、アンツー、ワルファリン、エンドサイド、クマリン、クマテトラリン、プロマジオロン、ディフェチアロン等の殺鼠剤が挙げられる。また、小動物防除薬剤としては、例えば、タイワンヒノキ、アスナロ、ヒノキアスナロ(青森ヒバ)等に含まれるヒノキチオール、ハーブやヒノキに含まれるカジノール誘導体(α-カジノール、T-カジノール)、クローブ、ナツメグ、コリアンダー、クミン等の香油植物に多く含まれるゲラニオール、ピネン、カリオフィレン、ボルネオール、オイゲノール、オギスギ等の小動物防除性を有する公知の香油等の天然由来の薬剤が挙げられる。また、小動物防除薬剤としては、誘引効果、交信阻害効果等を有する昆虫などのフェロモン剤も用いられる。フェロモン剤としては、例えば、信越化学工業製品の「コンフューザーR」、「コンフューザーAA」、「コンフューザーN」、「コンフューザーMM」、「ハマキコン-N」、「スカシバコンL」、「シンクイコン-L」、「ナシヒメコン」、「ボクトウコン-H」、「ヘタムシコン」等の果樹類に用いられるフェロモン剤、信越化学工業製品の「コンフューザーV」、「ヨトウコン-H」、「ヨトウコン-S」、「コナガコン-プラス」、「信越コナガコン」等の野菜類に用いられるフェロモン剤、信越化学工業製品の「ハマキコン-N」等の茶類に用いられるフェロモン剤、信越化学工業製品の「オキメラコン」、「ヨトウコンーI」、「ケブカコン」等のサトウキビに用いられるフェロモン剤が挙げられる。
【0017】
更に小動物防除薬剤は、スズメバチ科ハチの忌避剤であってもよく、スズメバチ科ハチの忌避剤は、例えば、下記一般式(I)で表される化合物を有効成分として含む。
【0018】
【0019】
式(I)中、R1は、水素原子、置換基βを有していてもよいC1-4アルキル基、置換基βを有していてもよいC2-4アルケニル基、又は置換基βを有していてもよいC1-4アルキル-カルボニル基を示し、Xは、置換基γを有していてもよいC1-4アルキレン基、又は置換基γを有していてもよいC2-4アルケニレン基を示し、αは、置換基δを有していてもよいC1-4アルキル基、置換基δを有していてもよいC2-4アルケニル基、置換基δを有していてもよいC1-4アルコキシ基、置換基δを有していてもよいC1-4アルキル-カルボニル基、置換基δを有していてもよいC1-4アルキル-カルボニルオキシ基、ハロゲノ基及び水酸基から選択される1以上の置換基を示す。置換基β、γ及びδは、それぞれ独立して、C1-4アルコキシ基、C1-4アルキル-カルボニル基、C1-4アルキル-カルボニルオキシ基、ハロゲノ基及び水酸基からなる群より選択される1以上の置換基を示し、nは、0以上、5以下の整数を示す。
【0020】
スズメバチ科の忌避剤の更なる具体例としては、例えば、特開2017-88548号公報に記載された忌避剤が挙げられる。
【0021】
植物の成長を制御する機能徐放性液体としては、例えば、植物ホルモンが挙げられる。植物ホルモンとしては、例えば、インドール-3-酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、2,6-ジクロロ安息香酸、ナフタレン酢酸等の天然又は合成オーキシン類、ゼアチン、カイネチン、4-ベンジルアミノベンズイミダゾール、ベンジルアデニン等の天然又は合成サイトカイニン類;ジベレリン類;ブラシノライド、カスタステロン等のブラシノステロイド類、アブシシン酸等が挙げられる。これらの植物ホルモンは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0022】
抗菌機能、防カビ機能を有する機能徐放性液体としては、例えば、徐放性を有する公知の抗菌剤及び徐放性を有する防カビ剤が挙げられる。抗菌剤及び防カビ剤としては、例えば、ヒノキチオール系化合物、キトサン系化合物、カラシ抽出系化合物、ユーカリ系化合物等の天然有機系化合物、合成有機系化合物、有機複合剤等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、菌及びカビの双方に有効に作用する観点から、合成有機系化合物が好ましい。合成有機系化合物としては、例えば、含窒素複素環系化合物、アルデヒド系化合物、フェノール系化合物、ビグアナイド系化合物、ニトリル系化合物、ハロゲン系化合物、アニリド系化合物、ジスルフィド系化合物、チオカーバメート系化合物、有機ケイ素四級アンモニウム塩系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、アミノ酸系化合物、有機金属系化合物、アルコール系化合物、カルボン酸系化合物、エステル系化合物、チアゾリン系化合物、カチオン性ポリマー等が挙げられる。これらの合成有機系化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0023】
樹脂に可塑性能を付与する機能を有する機能徐放性液体としては、例えば、カルボン酸エステル誘導体、リン酸エステル誘導体、ホスファゼン誘導体、カルボン酸アミド誘導体、スルホン酸エステル誘導体、及びスルホンアミド誘導体が挙げられる。可塑剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0024】
カルボン酸エステル誘導体としては、例えば、水酸基、ニトロ基、アミノ基、エポキシ基、ハロゲン等で置換されてもよい各種カルボン酸のアルキルエステル、及び芳香族エステルが挙げられる。カルボン酸エステル誘導体の具体例としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジフェニルフタレート、ベンジルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、4,5-エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、4,5-エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(7,8-エポキシ-2-オクテニル)、4,5-エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(9,10-エポキシオクタデシル)、4,5-エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(10,11-エポキシウンデシル)、フタル酸ジ(テトラヒドロフルフリロキシエチル)、各種フタル酸混合エステル及びフタル酸混合エステルのエチレンオキシド付加物等のフタル酸エステル誘導体、イソフタル酸エステル誘導体、テトラヒドロフタル酸エステル誘導体、パラヒドロキシ安息香酸ブトキシエチル、パラヒドロキシ安息香酸シクロヘキシロキシエトキシエトキシエチル、パラヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、ω-アルキルオリゴエチレンオキシドのヒドロキシ安息香酸エステル、ウンデシルグリシジルエーテルのパラヒドロキシ安息香酸付加物等の安息香酸エステル誘導体、チオジプロピオン酸ジ(テトラヒドロフルフリロキシエチル)等のプロピオン酸エステル誘導体、アジピン酸エステル誘導体、アゼライン酸エステル誘導体、セバシン酸エステル誘導体、ドデカン-2-酸エステル誘導体、マレイン酸エステル誘導体、フマル酸エステル誘導体、トリメット酸エステル誘導体、クエン酸トリ(ブトキシエトキシエチル)、クエン酸ジn-オクチル-モノ(ノニルフェノキシエチル)、クエン酸トリn-オクチル、クエン酸ジオクチル(テトラヒドロフルフリロキシエチル)、クエン酸トリミリスチル、トリエチルシトレート等のクエン酸エステル誘導体、イタコン酸エステル誘導体、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等のオレイン酸エステル誘導体、リシノール酸エステル誘導体、乳酸(n-ブチル)、乳酸(2-エチルヘキシル)、乳酸(n-ブトキシエトキシエチル)、乳酸(n-オクトキシエトキシエチル)、乳酸(n-デシルオキシエトキシエチル)等の乳酸エステル誘導体、酒石酸ジ(オクトキシエトキシエチル)、酒石酸(n-オクチル)(ノニルフェノキシエチル)、酒石酸ジ(オクトキシエトキシエチル)等の酒石酸エステル誘導体、リンゴ酸ジブトキシエチル、リンゴ酸ジ(n-ブトキシエトキシエチル)、リンゴ酸ジステアリル、リンゴ酸オクタデセニルイソノニル等のリンゴ酸エステル誘導体、ベンジルグリシジルエーテルのサリチル酸付加物等のサリチル酸エステル誘導体が挙げられる。
【0025】
リン酸エステル誘導体としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシル・ジフェニル・ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、イソデシル・ジフェニル・ホスフェート、トリクレジル・ホスフェート、トリキシレニル・ホスフェート、トリ(クロロエチル)ホスフェート、キシレニル・ジフェニルホスフェート、及びテトラキス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)4,4´-ビフェニレンジホスフォネートが挙げられる。
【0026】
ホスファゼン誘導体としては、例えば、下記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物が挙げられる。
【0027】
【0028】
式中、mは3~25の整数を示し、R1、及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~8のアルキル基、あるいは、炭素数1~8のアルキル基及び/又はアリル基で置換されていてもよいフェニル基を示す。ホスファゼン誘導体は、式(1)で表される直鎖状ホスファゼン化合物の1種類で構成されてもよく、2種類以上の混合物の形態で構成されていてもよい。
【0029】
ホスファゼン誘導体としては、例えば、下記一般式(2)で表される直鎖状ホスファゼン化合物も挙げられる。
【0030】
【0031】
式中、nは3~1000の整数を示し、R3、及びR4は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~8のアルキル基、あるいは、炭素数1~8のアルキル基及び/又はアリル基で置換されていてもよいフェニル基を示し、Xは、基-N=P(OR3)3、基-N=P(OR4)3、基-N=P(O)(OR3)又は基-N=P(O)(OR4)を示し、Yは、基-P(OR3)4、基-P(OR4)4、基-P(O)(OR3)2又は基-P(O)(OR4)2を示す。ホスファゼン誘導体は、式(2)で表される直鎖状ホスファゼン化合物の1種類で構成されてもよく、2種類以上の混合物の形態で構成されていてもよい。
【0032】
ホスファゼン誘導体としては、下記式(3)で表される架橋基により、式(1)又は式(2)中のR1、R2、R3、R4からアルキル基が脱離し、2つの酸素原子間が架橋されたホスファゼン化合物であってもよい。
【0033】
【0034】
式中、rは、0又は1を示し、Aは基-SO2-、-S-、-O-又は-C(CH3)2-を示す。
【0035】
式(1)で表わされる環状ホスファゼン化合物の具体例としては、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン、ヘキサプロポキシシクロトリホスファゼン、オクタプロポキシキシシクロテトラホスファゼン、及びデカプロポキシシクロペンタホスファゼンが挙げられる。また、式(2)で表わされる直鎖状ホスファゼン化合物の具体例としては、鎖状ジクロルホスファゼンにプロポキシ基及び/又はフェノキシ基を置換した鎖状ホスファゼン化合物が挙げられる。式(3)で表される架橋構造の具体例としては、4,4´-スルホニルジフェニレン(ビスフェノール-S残基)、4,4´-オキシジフェニレン基、4,4´-チオジフェニレン基、及び4,4´-ジフェニレン基が挙げられる。これらのホスファゼン誘導体は、任意の位置にアミノ基及び/又はフェニルアミノ基が置換したものであってもよい。これらのホスファゼン誘導体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0036】
カルボン酸アミド誘導体としては、例えば、N-シクロヘキシル安息香酸アミド等を例示できる。また、スルホンアミド誘導体としては、N-メチル-ベンゼンスルホンアミド、N-エチル-ベンゼンスルホンアミド、N-ブチル-ベンゼンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-ベンゼンスルホンアミド、N-エチル-P-トルエンスルホンアミド、N-ブチル-トルエンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-トルエンスルホンアミドが挙げられる。
【0037】
スルホン酸エステル誘導体としては、例えば、ベンゼンスルホン酸エチルが挙げられる。
【0038】
スルホン酸アミド誘導体としては、例えば、メタンスルホン酸2-メトキシエチル、メタンスルホン酸2,2,2-トリフルオロエチル、p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸n-プロピル等が挙げられる。
【0039】
摺動機能を有する機能徐放性液体としては、例えば、徐放性を有する公知の摺動剤が挙げられる。公知の摺動剤としては、例えば、鉱油、合成油、ワックス、パラフィン等が挙げられる。
【0040】
自己修復機能を有する機能徐放性液体としては、例えば、徐放性を有する公知の自己修復剤が挙げられる。公知の自己修復剤としては、ポリロタキサン、自己治癒クリヤー(ナトコ商事株式会社製品)等が挙げられる。
【0041】
触媒機能を有する機能徐放性液体としては、例えば、徐放性を有する公知の触媒が挙げられる。公知の触媒としては、イオン液体、三級アミン(例えば、東ソー株式会社製品の「PZETA」等)、有機チタン化合物(例えば、テトラ-i-プロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシン)チタン(例えば、日本曹達株式会社製品)等が挙げられる。
【0042】
医療機能を有する機能徐放性液体としては、例えば、徐放性を有する公知の医療品が挙げられる。
【0043】
溶媒は、マトリックス樹脂に対する相溶性が高く、成形体の形状安定性に対して影響が小さい溶媒であることが好ましい。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール、スルホンアミド誘導体、スルホン酸エステル誘導体、カルボン酸アミド誘導体、カルボン酸エステル誘導体、リン酸エステル誘導体、炭化水素系化合物、及びシリコーン系化合物が挙げられる。スルホンアミド誘導体としては、例えば、N-メチル-ベンゼンスルホンアミド、N-エチル-ベンゼンスルホンアミド、N-ブチル-ベンゼンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-ベンゼンスルホンアミド、N-エチル-P-トルエンスルホンアミド、N-ブチル-トルエンスルホンアミド、及びN-シクロヘキシル-トルエンスルホンアミドが挙げられる。スルホン酸エステル誘導体としては、例えば、メタンスルホン酸2-メトキシエチル、メタンスルホン酸2,2,2-トリフルオロエチル、p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸n-プロピル等が挙げられる。カルボン酸アミド誘導体としては、例えば、N-シクロヘキシル安息香酸アミドが挙げられる。カルボン酸エステル誘導体としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジフェニルフタレート、ベンジルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、4,5-エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、4,5-エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(7,8-エポキシ-2-オクテニル)、4,5-エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(9,10-エポキシオクタデシル)、4,5-エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(10,11-エポキシウンデシル)、フタル酸ジ(テトラヒドロフルフリロキシエチル)、各種フタル酸混合エステル及びフタル酸混合エステルのエチレンオキシド付加物等のフタル酸エステル誘導体、イソフタル酸エステル誘導体、テトラヒドロフタル酸エステル誘導体、パラヒドロキシ安息香酸ブトキシエチル、パラヒドロキシ安息香酸シクロヘキシロキシエトキシエトキシエチル、パラヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、ω-アルキルオリゴエチレンオキシドのヒドロキシ安息香酸エステル、ウンデシルグリシジルエーテルのパラヒドロキシ安息香酸付加物等の安息香酸エステル誘導体、チオジプロピオン酸ジ(テトラヒドロフルフリロキシエチル)等のプロピオン酸エステル誘導体、アジピン酸エステル誘導体、アゼライン酸エステル誘導体、セバシン酸エステル誘導体、ドデカン-2-酸エステル誘導体、マレイン酸エステル誘導体、フマル酸エステル誘導体、トリメット酸エステル誘導体、クエン酸トリ(ブトキシエトキシエチル)、クエン酸ジn-オクチル-モノ(ノニルフェノキシエチル)、クエン酸トリn-オクチル、クエン酸ジオクチル(テトラヒドロフルフリロキシエチル)、クエン酸トリミリスチル、トリエチルシトレート等のクエン酸エステル誘導体、イタコン酸エステル誘導体、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等のオレイン酸エステル誘導体、リシノール酸エステル誘導体、乳酸(n-ブチル)、乳酸(2-エチルヘキシル)、乳酸(n-ブトキシエトキシエチル)、乳酸(n-オクトキシエトキシエチル)、乳酸(n-デシルオキシエトキシエチル)等の乳酸エステル誘導体、酒石酸ジ(オクトキシエトキシエチル)、酒石酸(n-オクチル)(ノニルフェノキシエチル)、酒石酸ジ(オクトキシエトキシエチル)等の酒石酸エステル誘導体、リンゴ酸ジブトキシエチル、リンゴ酸ジ(n-ブトキシエトキシエチル)、リンゴ酸ジステアリル、リンゴ酸オクタデセニルイソノニル等のリンゴ酸エステル誘導体、ベンジルグリシジルエーテルのサリチル酸付加物等のサリチル酸エステル誘導体が挙げられる。リン酸エステル誘導体としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシル・ジフェニル・ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、イソデシル・ジフェニル・ホスフェート、トリクレジル・ホスフェート、トリキシレニル・ホスフェート、トリ(クロロエチル)ホスフェート、キシレニル・ジフェニルホスフェート、テトラキス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)4,4´-ビフェニレンジホスフォネートが挙げられる。炭化水素系化合物としては、例えば、鎖式飽和炭化水素化合物(パラフィン類)、鎖式不飽和炭化水素化合物(オレフィン類)、脂環式炭化水素化合物(シクロアルカン、シクロアルケン、シクロアルキン等)、及び芳香族炭化水素化合物が挙げられる。これらの炭化水素化合物の中でも、分子量が330~530であり、動粘度が10~120cStのパラフィンオイルが特に好適に用いられる。分子量が330~530の炭化水素化合物は、小動物の体孔から小動物の体内に容易に侵入する観点から好ましい。また、動粘度が10~120cStの炭化水素化合物は、小動物の体表面に付着しやすい観点から好ましい。更に、パラフィンオイルを用いるのは、安価かつ容易に入手できる観点から好ましい。シリコーン系化合物としては、例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、及び高級脂肪酸エステル変性シリコーンが挙げられる。
【0044】
機能徐放性液体は、マトリックス樹脂の加工温度の制約の観点から、600以下の分子量、10℃以上の融点を有することが好ましい。
【0045】
(多孔性配位高分子)
多孔性配位高分子は、金属イオンと有機配位子とを含有する多孔性材料である。多孔性配位高分子は、例えば、金属イオンが有機配位子に吸着した形態を有している。有機配位子は、例えば、金属イオンと結合可能な有機配位子である。多孔性配位高分子は、MOF(Metal-Organic Framework)又はPCP(Porous Coordination Polymer)ともいう。
【0046】
多孔性配位高分子は、例えば、マクロ孔又はメソ孔領域の細孔を多数有し、細孔径(細孔の直径)が結晶構造に由来して決定されるために均一な細孔径を有する。
【0047】
多孔性配位高分子は、有機配位子の長さ、化学構造による親和性を制御することにより、機能性液体成分の保持力を高くするとともに、細密充填化することができる。同様の観点から、多孔性配位高分子の平均細孔径は、機能徐放性液体の分子径以上であることが好ましく、多孔性配位高分子のBET法による比表面積は、900m2/g以上(例えば、900m2/g以上10400m2/g以下)であり、1000m2/g以上であることが好ましく、1200m2/g以上であることが更に好ましく、1500m2/g以上であることが特に好ましい。また、BET法による比表面積が900m2/g以上であると、マトリックス樹脂に機能性液体成分を直接練り込み、複合成形体を形成する場合に比べ、多孔性配位高分子は、機能性液体をマトリックス樹脂により有効に展開することができる。尚、多孔性配位高分子の平均細孔径は、BET法により求められる。また、機能徐放性液体の分子径は、オープンソースの「Mol-view」を用いて以下の手順により求められる。まず、分子を描画し、分子の長径及び短径をソフト内で測定する。ここで、長径は、直線状に分子を伸ばした場合の長い部分の分枝間距離、短径は、同様にした場合の短い部分の分枝間距離とする。ここで、上記「分子径」は、上記短径に相当する。
【0048】
多孔性配位高分子の平均細孔径は、機能徐放性液体をマトリックス樹脂により有効に展開でき、長期徐放性を一層向上させる観点から、0.1~5.0nmであることが好ましく、0.5~3.0nmであることがより好ましい。
【0049】
(金属イオン)
金属イオンとしては、例えば、銀イオン、アルミニウムイオン、ベリリウムイオン、カルシウムイオン、カドミニウムイオン、セリウムイオン、コバルトイオン、クロムイオン、銅イオン、ジスプロシウムイオン、エルビウムイオン、ユウロピウムイオン、鉄イオン、ガリウムイオン、ガドリニウムイオン、ホルミウムイオン、インジウムイオン、リチウムイオン、マグナシウムイオン、マンガンイオン、モリブテンイオン、ネオジムイオン、ニッケルイオン、スカンジウムイオン、サマリウムイオン、ストロンチウムイオン、テルビウムイオン、ツリウムイオン、バナジウムイオン、タングステンイオン、イットリウムイオン、イッテルビウムイオン、亜鉛イオン、及びジルコニウムイオンなどが挙げられる。これらの金属イオンは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの金属イオンは、塩等の化合物の形態で多孔性配位高分子に存在していてもよい。
【0050】
(有機配位子)
有機配位子は、金属イオンに架橋可能な架橋配位子であることが好ましい。架橋配位子としては、例えば、2-メチルイミダゾール、テレフタル酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’’-p-テルフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、1,3,5-ベンゼントリカルボキシル酸、1,3,5-トリ-4-カルボキシルフェニルベンゼン、メチルイミダゾール、4,4’-ビフェニルジカルボキシ酸、フマル酸、ナフタレンジカルボン酸、ヘキサアザトリフェニレン、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、、トリメシン酸、5-シアノ-ベンゼンジカルボン酸、5-エチル-1,3ベンゾジカルボン酸、テレフェニル-3,3’,5,5’-テトラカルボン酸、9,10-アントラセンジカルボン酸、イミダゾール、2,2’-ジアミノ-4,4’-スチルベンジカルボン酸、2,2’-ジニトロ-スチルベンジカルボン酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、3,3’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルメタン、1,2,4,5-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、4,4’,4’’-s-トリアジン-2,4,6トレイル-三安息香酸、2-ヒドロキシテレフタル酸、ビフェニル-3,3’,5,5’-テトラカルボン酸、ビフェニル-3,4,5-トリカルボン酸、5-ブロモイソフタル酸、マロン酸等が挙げられる。
【0051】
機能徐放性組成物を製造する方法において、多孔性配位高分子の表面、及び/又は細孔内に付着したり、存在したりしている残渣物質を除去してから、多孔性配位高分子に機能徐放性液体を保持させることが望ましい。残渣物質が存在すると、多孔性配位高分子及び機能性液体を複合化する際、残渣物質によって細孔が狭められたり完全に塞がれたりして、機能性液体を多孔性配位高分子の細孔に注入しにくくなる虞がある。また、残渣物質が不純物として機能性液体に混入するため、機能徐放性液体の物性が変化して、求める効果が得られない虞がある。残渣物質を除去する方法としては、例えば溶剤で多孔性配位高分子を洗浄する方法等が挙げられる。洗浄に用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール、THF、及びDMFが挙げられ、溶媒は、水、及び/又はメタノールであることが好ましい。溶媒が水及び/又はメタノールであると、溶媒の分子径が小さいため、溶媒が多孔性配位高分子の細孔内に容易に入り込み、細孔内の残渣物質を容易に除去できる。また、残渣物質を洗浄する工程において、溶剤に多孔性配位高分子を長時間浸漬してもよい。浸漬時間は、12時間以上であることが好ましく、24時間以上であることがより好ましい。未反応物質又は不純物を除去する方法としては、加熱処理によって残渣物質を脱離させる方法が挙げられる。未反応物質又は不純物が有機物であり、有機物を除去したい場合は、空気中又は酸素雰囲気中で加熱処理を行うことが好ましい。未反応物質又は不純物が揮発性物質であり、揮発性物質を除去したい場合は、真空加熱処理を行うことが好ましい。加熱温度は100~300℃であることが好ましい。溶剤による洗浄を行った後、加熱処理を行って溶剤を完全に除去する方法が好ましい。
【0052】
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は、1種類又は2種類以上の樹脂を含む。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、EVA樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、及び熱可塑性ポリウレタン樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、カゼイン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリウレア樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、キシレン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びエピスルフィド樹脂が挙げられる。
【0053】
多孔性配位高分子の含有量に対する機能徐放性液体の含有量の比率は、例えば、1.0~5.0であり、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1.5~3.0であることが好ましい。
【0054】
機能徐放性組成物中のマトリックス樹脂の含有量は、例えば、10~95質量%程度であってもよい。
【0055】
(無機充填材)
機能徐放性組成物は、機械的物性が向上する観点から、無機充填材を含有してもよい。無機充填材としては、公知の無機充填材が用いられ、例えば、粒子状無機充填材、繊維状無機充填材、及び鱗片状又は板状無機充填材が挙げられる。粒子状無機充填材としては、例えば、ミクロンサイズを有する粒子状無機充填材であっても、ナノサイズを有する粒子状無機充填材であってもよい。ミクロンサイズを有する粒子状無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、ガラスビーズ、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、チタン酸カリウム粒子、チタニア粒子、単斜晶系チタニア粒子、リン酸カルシウム粒子、ワラストナイト、バーミキュライト、シラスバルーン、ガラスバルーン等が挙げられる。ナノサイズを有する粒子状無機充填材としては、例えば、ナノ酸化チタン、ナノシリカ、カーボンブラック、カーボンフィラー等が挙げられる。無機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、粒子状無機充填材は、機能徐放性液体(特に小動物防除剤)の徐放性に一層優れる観点から、チタン酸カリウム粒子であることが好ましい。繊維状無機充填材は、成形体の外観に悪影響を与えない観点から、0.05~10μmの平均繊維径、及び3~150μmの平均繊維長を有する繊維状無機充填材であることが好ましく、0.1~7μmの平均繊維径、及び5~50μmの平均繊維長を有する繊維状無機充填材であることがより好ましい。繊維状無機充填材としては、例えば、ミクロンサイズを有する繊維状無機充填材であってもよく、ナノサイズを有する繊維状無機充填材であってもよい。ミクロンサイズを有する繊維状無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、石墨繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、木綿、麻繊維、ケナフ繊維、竹繊維、レーヨン、スチール繊維、アルミニウム繊維、石膏繊維、4チタン酸カリウム繊維、6チタン酸カリウム繊維、8チタン酸カリウム繊維、チタニア繊維、単斜晶系チタニア繊維、シリカ繊維、ワラストナイト、ゾノトライト等が挙げられる。ナノサイズを有する繊維状無機充填材としては、例えば、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン、コットンフィブリル、窒化珪素ウイスカー、アルミナウイスカー、炭化珪素ウイスカー、ニッケルウイスカー等が挙げられる。これらの繊維状無機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。鱗片状又は板状無機充填材としては、例えば、ミクロンサイズを有する鱗片上又は板状無機充填材であっても、ナノサイズを有する鱗片状又は板状無機充填材であってもよい。ミクロンサイズを有する鱗片状又は板状無機充填材としては、例えば、タルク、カオリンクレイ、マイカ(合成マイカ又は天然マイカ)、ガラスフレーク、アラゴナイト、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、チタン酸カリウムリチウム、チタン酸カリウムマグネシウム、セリサイト、板状アルミナ、窒化ホウ素等が挙げられる。ナノサイズを有する鱗片状又は板状無機充填材としては、例えば、有機化モンモリロナイト、膨潤性合成マイカ、黒鉛、グラファイト等が挙げられる。鱗片状無機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。無機充填材は、そのまま用いてもよく、樹脂との界面接着性を向上させたり、機械的物性を一層向上させたりする観点から、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等のシランカップリング剤又はチタネートカップリング剤等の表面処理剤で表面処理した形態で用いてもよい。
【0056】
(耐候性付与添加剤)
機能徐放性組成物は、屋外放置における耐候性を一層向上させる観点から、耐候性付与添加剤を含有してもよい。耐候性付与添加剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収性光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、及びカーボンからなる群より選択される1種が挙げられる。
【0057】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、ビス-[3,3-ビス-(4’-ハイドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)-ブタノイックアシッド]-グリコールエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、及びメチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが挙げられる。
【0058】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-フェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、及びビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリストールジフォスファイトが挙げられる。
【0059】
紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、プロパンジオックアシッド,及び[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステルが挙げられる。
【0060】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(Nメチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ))、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザ-ジスピロ-[5.1.11.2]-ヘンエイコサン-21-オン、プロパン二酸,[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-,ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)エステル、1,3-ベンゼンジカルボキシアミド、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)、及び2-エチル,2’-エトキシ-オキサラニリドが挙げられる。
【0061】
耐候性付与添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、耐候性付与添加剤は、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミト゛)]、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-エチル,2’-エトキシ-オキサラニリド、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(Nメチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ))、1,3-ベンゼンジカルボキシアミド、及びN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0062】
本実施形態の機能徐放性組成物は、10MPa以上圧縮した時の液体成分の表面濃度が1.0mg/cm2未満であることが好ましい。表面濃度が1000μg/cm2以上であると、機能徐放性組成物を射出成形等で加工する場合、表面がべたつく等の理由により素材ペレットが詰まる等の問題が生じる虞がある。
【0063】
(用途)
機能徐放性組成物は、所定形状を有する成形体に加工して利用するだけでなく、そのままの状態で、例えば塗料、シーリング剤、クッション材又は詰め物として利用することもできる。機能徐放性組成物は、例えば、適宜のマトリックス樹脂を選択し、かつ機能徐放性液体を吸着させた多孔性配位高分子の添加量及び充填剤、可塑剤等の添加量を適宜調整することにより、流動性、半流動性又はゴム状弾性を有する成形体を製造できる。このため、本発明には、本実施形態の機能徐放性組成物から成形された成形体も含む。流動性を有するものは、例えば塗料として利用でき、半流動性を有するものは、例えばシーリング剤として利用できる。また、ゴム状弾性を有するものは、例えばクッション材や詰め物として利用できる。なお、機能徐放性組成物を塗料、シーリング剤、クッション材又は詰め物として利用する場合には、必要に応じてマトリックス樹脂中に着色剤や顔料等の色材を添加することができる。機能徐放性組成物の成形加工に際しては、例えば射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー成形、FRP成形、積層成形、注型成形、溶液流延法、真空・圧空成形、押出複合成形、発泡成形、熱成形、インサート成形、溶融含浸法等の公知に属する適宜の成形法を適用することができる。また、製品である成形体の形状に関しては特に制限があるものではなく、平板状、棒状、円筒状、櫛形、球状等、あらゆる形状とすることができる。また、機能徐放性組成物を単体で成形するほか、金属等と組み合わせた二色乃至多色の成形を行うこともできる。
【実施例】
【0064】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されない。
【0065】
[実施例1]
機能徐放性液体としてエトフェンプロックス(融点37℃、沸点200℃、分子量376.49、分子径(長径)1.748nm、分子径(短径)0.5nm、三井化学アグロ製品)、金属イオンとしてクロムイオン、有機配位子としてテレフタル酸から構成される多孔性配位高分子(「HUST-1」、BET法による比表面積:2800m2/g、平均細孔径:2.0~2.7nm)を用いた。多孔性配位高分子に機能徐放性液体を下記表1の組成物A1に示す組成となるように吸着させた。吸着方法としては、真空ベルジャー内に多孔性配位高分子を配置し、多孔性配位高分子を0.01MPa以下に減圧し、この状態にエトフェンプロックスを滴下させ、多孔性配位高分子に吸着させる方法を用いた。エトフェンプロックスを吸着させた多孔性配位高分子をマトリックス樹脂としてのポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン製品の「ノバティックUJ310」)にコンパウンド加工及び混合し、機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体(エトフェンプロックス)の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表1の組成物A1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物A2~A6をそれぞれ作製した。
コンパウンド加工の方法として、ラボプラストミル装置(東洋精機製作所製品)を用い、加工温度120℃にて10分間コンパウンドする方法を用いた。
次に、加熱プレス機(井本製作所製品の「IMC180C型」)を用いて、各成形体素材を120℃にて2.5トン加圧し、50mm×50mm、厚さ1.2mmのプレート状成形体を作製し、これを実施例1とした。
【0066】
【0067】
[実施例2]
金属イオンとして鉄イオン、有機配位子としてトリメシン酸から構成される多孔性配位高分子(BET法による比表面積:1754m2/g、平均細孔径:2.4~2.9nm)を用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体(エトフェンプロックス)の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表2の組成物B1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物B2~B7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例2とした。
【0068】
【0069】
[実施例3]
金属イオンとして銅イオン、有機配位子としてトリメシン酸から構成される多孔性配位高分子(BET法による比表面積:2100m2/g、平均細孔径:0.9nm)を用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体(エトフェンプロックス)の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表3の組成物C1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物C2~C6をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例3とした。
【0070】
【0071】
[実施例4]
金属イオンとして亜鉛イオン、有機配位子として4,4'-ビフェニルジカルボキシ酸から構成される多孔性配位高分子(「UIO-67」、BET法による比表面積:1530m2/g、平均細孔径:0.6nm)を用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体(エトフェンプロックス)の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表4の組成物D1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物D2~D7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例4とした。
【0072】
【0073】
[実施例5]
機能徐放性液体としてペルメトリン(融点34℃、沸点200℃、分子量391.29、分子径(長径)1.431nm、分子径(短径)0.5nm)を用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表5の組成物E1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物E2~E7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例5とした。
【0074】
【0075】
[実施例6]
金属イオンとして亜鉛イオン、有機配位子として4,4'-ビフェニルジカルボキシ酸から構成される多孔性配位高分子(「UIO-67」、BET法による比表面積:1530m2/g、平均細孔径:0.6nm)を用いた以外は実施例5と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表6の組成物F1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物F2~F7をそれぞれ作製した。その後、実施例5と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例6とした。
【0076】
【0077】
[実施例7]
機能徐放性液体としてトリメリット酸エステル(沸点414℃、分子量547、分子径(長径)1.326nm、分子径(短径)1.304nm)を用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表7の組成物G1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物G2~G7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例7とした。
【0078】
【0079】
[実施例8]
金属イオンとして亜鉛イオン、有機配位子として4,4’-ビフェニルジカルボキシ酸
から構成される多孔性配位高分子(「UIO-67」、BET法による比表面積:1530m2/g、平均細孔径:0.6nm)を用いた以外は実施例7と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表8の組成物H1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物H2~H7をそれぞれ作製した。その後、実施例7と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例8とした。
【0080】
【0081】
[実施例9]
機能徐放性液体としてスルホン酸アミド(沸点314℃、分子量213.3、分子径(長径)1.081nm、分子径(短径):0.5nm)を用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表9の組成物I1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物I2~I7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例9とした。
【0082】
【0083】
[実施例10]
金属イオンとして亜鉛イオン、有機配位子として4,4'-ビフェニルジカルボキシ酸から構成される多孔性配位高分子(「UIO-67」、BET法による比表面積:1530m2/g、平均細孔径:0.6nm)を用いた以外は実施例9と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表10の組成物J1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物J2~J7をそれぞれ作製した。その後、実施例9と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例10とした。
【0084】
【0085】
[実施例11]
機能徐放性液体としてメトプレン(沸点100℃、分子量310.48、分子径(長径)1.426nm、分子径(短径)0.434nm)を用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表11の組成物K1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物K2~K7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例11とした。
【0086】
【0087】
[実施例12]
金属イオンとして亜鉛イオン、有機配位子として4,4'-ビフェニルジカルボキシ酸から構成される多孔性配位高分子(「UIO-67」、BET法による比表面積:1530m2/g、平均細孔径:0.6nm)を用いた以外は実施例11と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表12の組成物L1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物L2~L7をそれぞれ作製した。その後、実施例11と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例12とした。
【0088】
【0089】
[実施例13]
機能徐放性液体としてオルフラルア(沸点300℃、分子量226.36、分子径(長径)1.645nm、分子径(短径)0.18nm)をポリエチレングリコールに溶解させたものを用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表13の組成物M1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物M2~M7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例13とした。
【0090】
【0091】
[実施例14]
金属イオンとして亜鉛イオン、有機配位子として4,4'-ビフェニルジカルボキシ酸から構成される多孔性配位高分子(「UIO-67」、BET法による比表面積:1530m2/g、平均細孔径:0.6nm)を用いた以外は実施例13と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表14の組成物N1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物N2~N7をそれぞれ作製した。その後、実施例13と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例14とした。
【0092】
【0093】
[実施例15]
機能徐放性液体としてインドール3酢酸(融点168℃、分子量175.18、分子径(長径)0.882nm、分子径(短径)0.5nm)をDMSOに溶解させたものを用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表15の組成物O1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物O2~O7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例15とした。
【0094】
【0095】
[実施例16]
金属イオンとして亜鉛イオン、有機配位子として4,4’-ビフェニルジカルボキシ酸
から構成される多孔性配位高分子(「UIO-67」、BET法による比表面積:1530m2/g、平均細孔径:0.6nm)を用いた以外は実施例15と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表16の組成物P1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物P2~P7をそれぞれ作製した。その後、実施例15と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例16とした。
【0096】
【0097】
[実施例17]
機能徐放性液体としてチアベンダゾール(融点305℃、分子量201.25、分子径(長径)1.004nm、分子径(短径)0.5nm)をメタノールに溶解させたものを用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表17の組成物Q1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物Q2~Q7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例17とした。
【0098】
【0099】
[実施例18]
金属イオンとして亜鉛イオン、有機配位子として4,4'-ビフェニルジカルボキシ酸から構成される多孔性配位高分子(「UIO-67」、BET法による比表面積:1530m2/g、平均細孔径:0.6nm)を用いた以外は実施例17と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表18の組成物R1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物R2~R7をそれぞれ作製した。その後、実施例17と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例18とした。
【0100】
【0101】
[実施例19]
機能徐放性液体としてカテキン(融点175℃、分子量290.27、分子径(長径)1.195nm、分子径(短径)0.524nm)をエタノールに溶解させたものを用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表19の組成物S1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物S2~S7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例19とした。
【0102】
【0103】
[実施例20]
金属イオンとして亜鉛イオン、有機配位子として4,4'-ビフェニルジカルボキシ酸から構成される多孔性配位高分子(「UIO-67」、BET法による比表面積:1530m2/g、平均細孔径:0.6nm)を用いた以外は実施例19と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表20の組成物T1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物T2~T7をそれぞれ作製した。その後、実施例19と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例20とした。
【0104】
【0105】
[実施例21]
金属イオンとしてアルミニウムイオン、有機配位子としてテレフタル酸から構成される多孔性配位高分子(「Al-PCP」、BET法による比表面積:1100m2/g、平均細孔径:0.7nm)を用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表21の組成物U1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物U2~U7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを実施例21とした。
【0106】
【0107】
[比較例1]
機能徐放性液体として実施例1で用いたエトフェンプロックスを、マトリックス樹脂としてポリエチレン樹脂(極性基及び官能基改質を行っていないLDPE)にコンパウンド加工及び混合し、組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量がそれぞれ下記表22の組成物a1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物a2~a7をそれぞれ作製した。
コンパウンド加工の方法としては、実施例1に記載の方法を用いた。混合した成形体素材を50×50mm、厚さ1.2mmのプレート状の成形体とし、これを比較例1とした。
【0108】
【0109】
[比較例2]
機能徐放性液体として実施例1で用いたエトフェンプロックスを、マトリックス樹脂として、特許文献4の実施例6に記載のように、極性基及び官能基改質を行ったポリエチレン樹脂にコンパウンド加工及び混合し、組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量がそれぞれ下記表23の組成物b1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物b2~b7をそれぞれ作製した。
コンパウンド加工の方法としては、実施例1に記載の方法を用いた。混合した成形体素材を50×50mm、厚さ1.2mmのプレート状の成形体とし、これを比較例2とした。
【0110】
【0111】
[比較例3]
金属イオンとして鉄イオン、有機配位子としてフマル酸から構成される多孔性配位高分子(「MIL-88A」、BET法による比表面積:170m2/g、平均細孔径:0.6nm)を用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表24の組成物c1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物c2~c7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを比較例3とした。
【0112】
【0113】
[比較例4]
金属イオンとしてジルコニウムイオン、有機配位子としてテレフタル酸から構成される多孔性配位高分子(「UiO-66」、BET法による比表面積:740m2/g、平均細孔径:0.6nm)を用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びPCP(多孔性配位高分子)の含有量がそれぞれ下記表25の組成物d1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物d2~d7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを比較例4とした。
【0114】
【0115】
[比較例5]
多孔性配位高分子に代えてゼオライトを用いた以外は実施例1と同様にして機能徐放性組成物(成形体素材)を作製した。ポリエチレン樹脂の配合量は、マトリックス樹脂(ポリエチレン樹脂)の含有量、機能徐放性液体の含有量及びゼオライトの含有量がそれぞれ下記表26の組成物e1に示すようになる量とした。同様に上記各含有量が異なる組成物e2~e7をそれぞれ作製した。その後、実施例1と同様にして各成形体素材から成形体を作製し、これを比較例5とした。
【0116】
【0117】
作製した実施例及び比較例の試料について、以下の方法により機能徐放性液体表面量(機能徐放性液体表面濃度)を測定した。
【0118】
先ず、20℃環境下にて各試料(成形体)を50mLのテトラヒドロフランに浸漬し、表面に析出している機能徐放性液体を洗浄した。次に、高速液体クロマトグラフィーを用いて、洗浄した液中の試料単位面積当たりの機能徐放液体の表面量(表面濃度)(μg/cm2)を測定した。ここで、試料中の機能徐放性液体の含有濃度が多いほど、上記表面量は増加するが、許容濃度を超えると極端に増加する臨界点である上限値に達する。機能徐放性液体の含有濃度を大きくしても、上記表面量が極端に増加する傾向を示さなければ、長期徐放性に優れることを示唆している。また、表面量が1000μg/cm2以上であると、機能徐放性複合成形体の素材として射出成形等で加工する場合、表面がべたつく等の理由により素材ペレットが詰まる等の問題が生じる虞がある。そこで、これらの2点を考慮して実施例及び比較例を評価した。
【0119】
評価結果を表1~26及び
図1~
図6に示す。
図1~
図6に示すグラフは、機能徐放性複合成形体中の
機能徐放性液体の含有濃度と、機能徐放性複合成形体の表面量の関係を示す。
図1~
図6から明らかなように、各実施例及び比較例のいずれにおいても機能徐放性液体の含有濃度が増加すると表面量も増加する傾向にあるが、各比較例の場合には、
機能徐放性液体含有濃度が20質量%を超えると、表面量が急激に増加することがわかった。これにより、各比較例の上限値は20重量%であることがわかった。一方、各実施例の場合には、
機能徐放性液体含有濃度が40重量%を超えても、表面量が極端に増加する臨界点、さらに加工上限値である1000μg/cm
2には達しなかった。
【0120】
以上より、マトリックス樹脂に機能性液体を直接展開するよりも、多孔性配位高分子に吸着させる方がより多くの機能性液体を添加することができ、効能及び効果持続性を高めることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本実施形態の機能徐放性組成物は、例えば、小動物防除機能、摺動機能、抗菌機能、防カビ機能、自己修復機能、触媒機能、医療機能等の機能性成分を付与した成形体に利用できる。具体的には、本実施形態の機能徐放性複合成形体は、自動車、電気製品等の工業分野、衛生サービス等のアメニティ分野、医薬品等の医療分野に利用できる。