(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】無線通信システム、及び基地局
(51)【国際特許分類】
H04W 16/02 20090101AFI20221003BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20221003BHJP
H04W 88/10 20090101ALI20221003BHJP
【FI】
H04W16/02
H04W24/02
H04W88/10
(21)【出願番号】P 2018158009
(22)【出願日】2018-08-27
【審査請求日】2021-08-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】松村 武
(72)【発明者】
【氏名】伊深 和雄
(72)【発明者】
【氏名】村上 誉
(72)【発明者】
【氏名】石津 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
【審査官】▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511094(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯を利用して複数の端末と通信を行う無線通信システムであって、
複数の前記周波数帯毎にネットワーク経路を設定するネットワーク経路切替制御手段と、
複数の前記周波数帯毎に対応するIPパケットを取得する取得手段と、
複数のベースバンドユニットを、複数の前記周波数帯毎に割り当てるベースバンドリソース割当制御手段と、
複数の前記IPパケットのそれぞれを、前記IPパケットに対応する前記周波数帯に割り当てられた前記ベースバンドユニットを用いて、ベースバンド信号に変換する変復調手段と、
複数の前記周波数帯に基づき、複数の無線回路部のパラメータを独立に設定する無線回路制御手段と、
複数の前記ベースバンド信号のそれぞれを、前記無線回路部を用いてアナログ信号に変換して前記端末に送信する送信手段と、
を備え
、
前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段は、何れか1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて他の1つの制御手段が実行され、前記他の1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて残りの制御手段が実行されること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
複数の周波数帯を利用して複数の端末と通信を行う無線通信システムであって、
複数の前記周波数帯毎にネットワーク経路を設定するネットワーク経路切替制御手段と、
複数の前記周波数帯毎に対応するIPパケットを取得する取得手段と、
複数のベースバンドユニットを、複数の前記周波数帯毎に割り当てるベースバンドリソース割当制御手段と、
複数の前記IPパケットのそれぞれを、前記IPパケットに対応する前記周波数帯に割り当てられた前記ベースバンドユニットを用いて、ベースバンド信号に変換する変復調手段と、
複数の前記周波数帯に基づき、複数の無線回路部のパラメータを独立に設定する無線回路制御手段と、
複数の前記ベースバンド信号のそれぞれを、前記無線回路部を用いてアナログ信号に変換して前記端末に送信する送信手段と、
複数の前記ベースバンドユニットと、複数の前記無線回路部とを有する基地局に対し、前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段の少なくとも何れかにおける制御条件を含む条件信号を生成し、前記条件信号を前記基地局が取得する設定手段と、
を備え
、
前記条件信号は、複数の前記端末との通信状況を示す複数の接続情報に基づき生成され、
前記条件信号は、前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段を実行する順番を含むこと
を特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
複数の前記ベースバンドユニットと、複数の前記無線回路部とを有する基地局に対し、前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段の少なくとも何れかにおける制御条件を含む条件信号を生成し、前記条件信号を前記基地局が取得する設定手段をさらに備え
、
前記条件信号は、複数の前記端末との通信状況を示す複数の接続情報に基づき生成されること
を特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記条件信号は、前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段を実行する順番を含むこと
を特徴とする請求
項3記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段は、何れか1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて他の1つの制御手段が実行され、前記他の1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて残りの制御手段が実行されること
を特徴とする請求項
2記載の無線通信システム。
【請求項6】
複数の周波数帯を利用して複数の端末と通信を行う基地局であって、
複数の前記周波数帯毎にネットワーク経路を設定するネットワーク経路切替制御部と、
複数の前記周波数帯毎に対応するIPパケットを取得する伝送路インタフェイス部と、
複数のベースバンドユニットを、複数の前記周波数帯毎に割り当てるベースバンドリソース割当制御部と、
複数の前記ベースバンドユニットを有し、複数の前記IPパケットのそれぞれを、前記IPパケットに対応する前記周波数帯に割り当てられた前記ベースバンドユニットを用い
て、ベースバンド信号に変換するベースバンド部と、
複数の前記周波数帯に基づき、複数の無線回路部のパラメータを独立に設定する無線回路制御部と、
複数の前記ベースバンド信号のそれぞれを、アナログ信号に変換して前記端末に送信する複数の前記無線回路部と、
を備え
、
前記ネットワーク経路切替制御部、前記ベースバンドリソース割当制御部、及び前記無線回路制御部は、何れか1つの制御部の実行された制御条件に基づいて他の1つの制御部が実行され、前記他の1つの制御部の実行された制御条件に基づいて残りの制御部が実行されること
を特徴とする基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数帯を利用して複数の端末と通信を行う無線通信システム、及び基地局に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ミッションクリティカルな利用シーンに、プライベートLTE(Long Term Evolution)等の技術を活用する動きが世界的に広がっている。具体的な用途としては、例えば広大な作業現場での重機類の遠隔操作映像伝達、スマートグリッドにおける発電量監視、地下鉄の運行管理等が挙げられる。このような用途には、広域カバレッジに加え、高信頼性や超低遅延性等が求められるため、従来の技術(例えばWi-Fi(登録商標)等)では、実現が難しい。このため、セルラシステムのインフラが構築されていない不感エリアの周波数の権利を通信事業者から譲り受け、プライベートLTEシステム等を自営インフラとして構築する場合がある。このようなプライベートLTE等については、周波数の権利の再販や貸与が認められている国において積極的に導入されている。
【0003】
現時点では、プライベートLTEの運用周波数は、主に6GHzである。これに対し、5Gにおけるミリ波帯を利用した通信技術の商用化に伴い、プライベートLTEの利用形態や提供サービスも多様化するものと考えられる。特にミリ波帯は、従来に比べて高速大容量、且つ低遅延な通信が提供できるため、高度且つ先進的なサービスの提供が期待されている。しかしながら、ミリ波帯を用いた場合、伝搬損失が大きく、広大なエリアをカバーするために多くの基地局を設置する必要がある。上記に加え、基地局間のハンドオーバには、既存のC/U分離技術を適用し、6GHz帯以下の周波数で制御信号を送る必要がある。
【0004】
また、ミリ波帯及びミリ波帯とは異なる周波数帯のうち、複数の周波数帯を活用した異なるサービスを融合的に展開する際、それぞれ異なる周波数帯を利用して通信を行い、サービス間の干渉を避ける必要がある。これらの要求を満足するには、上記サービスに利用される複数の周波数帯に対応し、それぞれを独立に制御可能な基地局が求められる。他方、プライベートLTEの基地局は、環境や利用状況に応じた柔軟な運用が必要となることから、可搬性が求められることもある。上記より、プライベートLTEの基地局を用いた場合、運用する際の簡易性や利便性を追求した安価で小型な設計が求められる。
【0005】
ここで、従来のセルラ通信や、例えば特許文献1に開示された基地局等は、主にベースバンド部、無線部、及び制御部(基地局制御部)で構成される。ベースバンド部は、ユーザの端末等に送信する情報を含むIPパケットを、ベースバンド信号に変換する。無線部は、ベースバンド信号をアナログ信号に変換し、ユーザの端末等に送信する。制御部は、ベースバンド部及び無線部を制御する。このような基地局は、商用展開されており、これらの機能部をキャビネット内に収容したものが多い。例えば複数セクタ対応や、MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)対応により、無線部の規模が増減するが、単一周波数帯で3セクタ対応のコンパクトな基地局が実現され、設置作業の簡素化や設置場所の省スペース化が実現されている。さらに、フェムトセル基地局と呼ばれるLTE対応の超小型基地局も商用化されており、住居、店舗、オフィス等の屋内に導入することで、数十メートル程度を通信エリアとしてサポートできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば5Gのミリ波帯を利用する通信では、より多くの基地局の設置が必要となることが想定される。また、ベースバンド信号処理の規模が大きくなるため、上述した従来のベースバンド部や制御部等に比べて、規模が大きくなる。このため、特許文献1等に開示された基地局等では、運用する際の簡易性や利便性を実現することが難しい。
【0008】
この対策として、例えば張り出し設置と呼ばれる技術が挙げられる。この技術では、無線部と、ベースバンドユニット(BBU:Base Band Unit)を含むベースバンド部とが、それぞれ分離して設置される。無線部は、RRH(Remote Radio Head)と呼ばれ、必要な場所にRRHのみを設置し、複数のRRHに接続されるBBUを集約することで、基地局設置の簡素化や小スペースを図ることが可能となる。しかしながらこの技術では、大規模なBBUを設置できる十分なスペースが確保できる場合に限定される。このため、運用する際の簡易性や利便性を実現することが難しい。
【0009】
上記対策のほか、例えばネットワークや物理層のリソースを共用する技術が挙げられる。物理層のリソース共用として、従来のLTEで用いられるマルチユーザアクセス技術は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)の複数のサブキャリアで構成されるリソースブロックをユーザ毎に割り当てることで、複数のユーザ端末による同時アクセスを可能とする。しかしながら、この技術は同一周波数帯においてのリソース共用であり、異なる周波数帯のユーザ(端末)には適用できない。また、ネットワークリソース共有技術は、5Gにおけるヘテロジニアスなマルチレイヤネットワーク構成を念頭に置いたものであり、スライシング等によるネットワーク共用技術をベースとして、物理的な設置場所やハードウェアそのものをセルラ通信事業者間で共用し、設置コスト等の低廉化を実現することが可能となる。しかしながら、現状ではベースバンド部や無線部等の物理層も再定義可能なネットワーク構成の一部として組み込まれているものの、用途や通信システム毎に固定の物理層が実装され、それらをシナリオに従って切り替える構成である。このため、同時に複数の周波数帯で運用する場合は、周波数帯毎に固定の物理層を実装する必要がある。このため、運用する際の簡易性や利便性を実現することが難しい。
【0010】
ここで、プライベートLTEは、企業や団体がLTEを自営網用途に利用する技術である。1台から気軽に導入できる必要があるため、無線部やBBUを含むベースバンド部は、簡素且つ安価な設計が求められる。しかしながら、例えばミリ波帯に対応したプライベートLTEの基地局は、ミリ波帯の高速大容量通信を処理する必要があることから、BBUの規模は従来よりも飛躍的に大きくなる。さらに高度な活用法として、用途に応じた周波数の使い分けがあり、複数の周波数帯で同時に通信を行うためには、それぞれの周波数帯の通信に応じた十分なベースバンド信号処理回路を実装する必要があり、装置コストが増大する。これは、RRHによる無線部と、BBUの分離技術とを適用した場合においても同様の傾向を示す。
【0011】
上記に加え、プライベートLTEの基地局は、大規模イベント等にスポット的に設置される場合もあり、可搬性も求められる。このため、プライベートLTEの基地局では、運用する際の簡易性や利便性につながる小型化、軽量化、省電力化等の要件が期待され、この要件を満たすには、セルラ通信事業者の基地局よりも難しい傾向にある。
【0012】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、運用する際の簡易性や利便性の向上を実現することができる無線通信システム、及び基地局を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上述した問題点を解決するために、複数の周波数帯を利用して複数の端末と通信を行う無線通信システム、及び基地局を発明した。無線通信システムは、複数の周波数帯毎にネットワーク経路を設定するネットワーク経路切替制御手段と、複数の周波数帯毎に対応するIPパケットを取得する取得手段と、複数のベースバンドユニットを、複数の周波数帯毎に割り当てるベースバンドリソース割当制御手段と、複数のIPパケットのそれぞれを、IPパケットに対応する周波数帯に割り当てられたベースバンドユニットを用いて、ベースバンド信号に変換する変復調手段と、複数の周波数帯に基づき、複数の無線回路部のパラメータを独立に設定する無線回路制御手段と、複数のベースバンド信号のそれぞれを、無線回路部を用いてアナログ信号に変換して端末に送信する送信手段と、を備え、ネットワーク経路切替制御手段、ベースバンドリソース割当制御手段、及び無線回路制御手段は、何れか1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて他の1つの制御手段が実行され、他の1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて残りの制御手段が実行されることを特徴とする。
【0014】
第1発明に係る無線通信システムは、複数の周波数帯を利用して複数の端末と通信を行う無線通信システムであって、複数の前記周波数帯毎にネットワーク経路を設定するネットワーク経路切替制御手段と、複数の前記周波数帯毎に対応するIPパケットを取得する取得手段と、複数のベースバンドユニットを、複数の前記周波数帯毎に割り当てるベースバンドリソース割当制御手段と、複数の前記IPパケットのそれぞれを、前記IPパケットに対応する前記周波数帯に割り当てられた前記ベースバンドユニットを用いて、ベースバンド信号に変換する変復調手段と、複数の前記周波数帯に基づき、複数の無線回路部のパラメータを独立に設定する無線回路制御手段と、複数の前記ベースバンド信号のそれぞれを、前記無線回路部を用いてアナログ信号に変換して前記端末に送信する送信手段と、を備え、前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段は、何れか1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて他の1つの制御手段が実行され、前記他の1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて残りの制御手段が実行されることを特徴とする。
【0015】
第2発明に係る無線通信システムは、複数の周波数帯を利用して複数の端末と通信を行う無線通信システムであって、複数の前記周波数帯毎にネットワーク経路を設定するネットワーク経路切替制御手段と、複数の前記周波数帯毎に対応するIPパケットを取得する取得手段と、複数のベースバンドユニットを、複数の前記周波数帯毎に割り当てるベースバンドリソース割当制御手段と、複数の前記IPパケットのそれぞれを、前記IPパケットに対応する前記周波数帯に割り当てられた前記ベースバンドユニットを用いて、ベースバンド信号に変換する変復調手段と、複数の前記周波数帯に基づき、複数の無線回路部のパラメータを独立に設定する無線回路制御手段と、複数の前記ベースバンド信号のそれぞれを、前記無線回路部を用いてアナログ信号に変換して前記端末に送信する送信手段と、複数の前記ベースバンドユニットと、複数の前記無線回路部とを有する基地局に対し、前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段の少なくとも何れかにおける制御条件を含む条件信号を生成し、前記条件信号を前記基地局が取得する設定手段と、を備え、前記条件信号は、複数の前記端末との通信状況を示す複数の接続情報に基づき生成され、前記条件信号は、前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段を実行する順番を含むことを特徴とする。
【0016】
第3発明に係る無線通信システムは、第1発明において、複数の前記ベースバンドユニットと、複数の前記無線回路部とを有する基地局に対し、前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段の少なくとも何れかにおける制御条件を含む条件信号を生成し、前記条件信号を前記基地局が取得する設定手段をさらに備え、前記条件信号は、複数の前記端末との通信状況を示す複数の接続情報に基づき生成されることを特徴とする。
【0017】
第4発明に係る無線通信システムは、第3発明において、前記条件信号は、前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段を実行する順番を含むことを特徴とする。
【0018】
第5発明に係る無線通信システムは、第2発明において、前記ネットワーク経路切替制御手段、前記ベースバンドリソース割当制御手段、及び前記無線回路制御手段は、何れか1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて他の1つの制御手段が実行され、前記他の1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて残りの制御手段が実行されることを特徴とする。
【0019】
第6発明に係る基地局は、複数の周波数帯を利用して複数の端末と通信を行う基地局であって、複数の前記周波数帯毎にネットワーク経路を設定するネットワーク経路切替制御部と、複数の前記周波数帯毎に対応するIPパケットを取得する伝送路インタフェイス部と、複数のベースバンドユニットを、複数の前記周波数帯毎に割り当てるベースバンドリソース割当制御部と、複数の前記ベースバンドユニットを有し、複数の前記IPパケットのそれぞれを、前記IPパケットに対応する前記周波数帯に割り当てられた前記ベースバンドユニットを用いて、ベースバンド信号に変換するベースバンド部と、複数の前記周波数帯に基づき、複数の無線回路部のパラメータを独立に設定する無線回路制御部と、複数の前記ベースバンド信号のそれぞれを、アナログ信号に変換して前記端末に送信する複数の前記無線回路部と、を備え、前記ネットワーク経路切替制御部、前記ベースバンドリソース割当制御部、及び前記無線回路制御部は、何れか1つの制御部の実行された制御条件に基づいて他の1つの制御部が実行され、前記他の1つの制御部の実行された制御条件に基づいて残りの制御部が実行されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上述した構成からなる本発明によれば、ベースバンドリソース割当制御手段は、複数のベースバンドユニットを、複数の周波数帯毎に割り当てる。このため、複数の周波数帯を利用して複数の端末と通信を行う際、端末との通信環境を踏まえてベースバンドユニットを共用することができ、ベースバンドユニットの数を最小限に抑えることができる。これにより、運用する際の簡易性や利便性の向上を実現することが可能となる。従って、例えばプライベートLTEの基地局における小型化、軽量化、省電力化等の要件を満たすことができる。
【0021】
また、上述した構成からなる本発明によれば、設定手段は、複数の基地局から取得した接続情報に基づき条件信号を生成し、生成した条件信号を複数の基地局毎に送信する。このため、各基地局と端末との通信状況を踏まえ、基地局毎に制御条件を変更することができる。これにより、各基地局間において端末の数や種類が変動する場合においても、最適な通信環境を保つことが可能となる。
【0022】
また、上述した構成からなる本発明によれば、条件信号は、ネットワーク経路切替制御手段、ベースバンドリソース割当制御手段、及び無線回路制御手段を実行する順番を含む。このため、端末との通信状況に適した制御条件を容易に設定することができる。これにより、端末の数や種類が変動する場合においても、最適な通信環境を保つことが可能となる。
【0023】
また、上述した構成からなる本発明によれば、ネットワーク経路切替制御手段、ベースバンドリソース割当制御手段、及び無線回路制御手段は、何れか1つの手段の実行された制御条件に基づいて他の1つの制御手段が実行され、他の1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて残りの制御手段が実行される。このため、各制御手段の実行に伴う制約を踏まえ、各制御手段を実行することができる。これにより、通信環境に応じた最適な通信条件を容易に設定することが可能となる。
【0024】
上述した構成からなる本発明によれば、ベースバンドリソース割当制御部は、複数のベースバンドユニットを、複数の周波数帯毎に割り当てる。このため、複数の周波数帯を利用して複数の端末と通信を行う際、端末との通信環境を踏まえてベースバンドユニットを共用することができ、ベースバンドユニットの数を最小限に抑えることができる。これにより、運用する際の簡易性や利便性の向上を実現することが可能となる。従って、例えばプライベートLTEの基地局における小型化、軽量化、省電力化等の要件を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、第1実施形態における無線通信システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態における無線通信システムのアーキテクチャ構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、ベースバンドユニット及び無線回路部の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4(a)は、第1実施形態における無線通信システムの動作の一例を示すフローチャートであり、
図4(b)は、第1実施形態における無線通信システムの動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5(a)は、第1実施形態における無線通信システムの動作の変形例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態における無線通信システムの一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態における無線通信システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、各実施形態における無線通信システムの利用例を示す模式図である。
【
図9】
図9(a)及び(b)は、第2実施形態における無線通信システムの利用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態:無線通信システム100、基地局1)
以下、本発明の実施形態としての無線通信システム100、及び基地局1について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の無線通信システム100の一例を示す模式図であり、
図2は、本実施形態の無線通信システム100のアーキテクチャ構成例を示す模式図である。なお、
図2の実線矢印は、主に制御関係を示し、開いた実線矢印は、主にデータ(信号)の送受信関係を示し、開いた破線矢印は、主に他の構成を介した制御関係を示す。
【0027】
無線通信システム100は、例えば
図1に示すように、基地局1を備える。無線通信システム100は、ミリ波帯等を含む複数の周波数帯を利用して、複数の端末9と通信を行う場合に用いられる。無線通信システム100は、例えば基地局1に接続されたEPC5等のネットワークコアを備え、プライベートLTE等のシステムとして用いられる。なお、ここで「通信」とは、例えば基地局1から端末9等に対して所定の信号(情報)を送信するほか、端末9等から送信された所定の信号を基地局1が受信することを含んでもよい。
【0028】
基地局1は、制御・ベースバンド部2と、無線部3と、記憶部4とを備え、各構成は内部バスにより接続される。基地局1は、例えば
図2に示すように、複数の端末9と通信を行うためのものである。基地局1は、EPC5に接続されるほか、例えば外部ネットワークを介して外部ネットワークコア6と接続されてもよい。基地局1は、例えばEPC5に接続された自営網サーバ7等から、制御信号等を取得する。
【0029】
基地局1は、例えばEPC5を介して自営網サーバ7等から公知のIPパケットを取得し、IPパケットに基づくアナログ信号を端末9に送信する。基地局1では、端末9との通信に利用する複数の周波数帯に基づき、ベースバンドリソース(後述するベースバンドユニット25)を共用することができる。このため、ベースバンド回路規模の増大を抑えることができる。
【0030】
端末9との通信に利用する複数の周波数帯は、管理者等により予め基地局1に設定されているほか、例えば基地局1と端末9との通信状況に応じて、EPC5を介して自営網サーバ7等から基地局1に設定されてもよく、基地局1自体が端末9との通信状況に応じて設定できるようにしてもよい。基地局1に周波数帯が設定されることで、ベースバンドリソースの共用を制御することができるほか、接続されるネットワーク経路、及び端末9との通信に用いられる無線回路部32のパラメータを設定することができる。
【0031】
制御・ベースバンド部2は、ネットワーク経路切替制御部21と、伝送路インタフェイス部22と、ベースバンドリソース割当制御部23と、ベースバンド部24と、基地局制御部26とを有し、例えばタイミング制御部27を有してもよい。制御・ベースバンド部2は、無線部3における端末9との通信条件等を制御することもできる。
【0032】
ネットワーク経路切替制御部21は、通信に利用される複数の周波数帯毎にネットワーク経路を設定する。ネットワーク経路切替制御部21は、周波数帯毎に異なるネットワーク経路を設定するほか、一部の周波数帯に対して等しいネットワーク経路を設定してもよい。ネットワーク経路として、EPC5が設定されるほか、例えば外部ネットワークコア6が設定されてもよい。
【0033】
伝送路インタフェイス部22は、ネットワーク経路切替制御部21により設定されたネットワーク経路に接続し、複数の周波数帯毎に対応するIPパケットを取得する。伝送路インタフェイス部22は、例えばIPsec(Security Architecture for Internet Protocol)、IPv6(Internet Protocol Version 6)等のプロトコルを処理して、IPパケットを取得する。伝送路インタフェイス部22は、例えば記憶部4に保存されたIPパケットを取得してもよい。
【0034】
ベースバンドリソース割当制御部23は、後述する複数のベースバンドユニット25を、複数の周波数帯毎に割り当てる。ベースバンドリソース割当制御部23は、1つベースバンド信号の周波数帯に対して、複数のベースバンドユニット25を割り当ててもよい。
【0035】
ベースバンド部24は、複数のベースバンドユニット25(
図1、2では25-1、25-2、・・・、25-n(nは正数))を有し、IPパケットをベースバンド信号に変換する。ベースバンドユニット25は、符号化、復号、変調、復調、多重化、及び逆多重化の少なくとも何れかの処理を実行することにより、IPパケットをベースバンド信号に変換する。ベースバンドユニット25は、ベースバンドリソース割当制御部23によって割り当てられた周波数帯に対応するIPパケットを、ベースバンド信号に変換する。各ベースバンドユニット25又はベースバンド部24は、例えばベースバンドプロセッサ等のハードウェア資源を用いて具体的に実現されてもよく、例えばベースバンドプロセッサ、及び通信制御プログラムを記憶するメモリ等を含む公知のモジュールを用いて、具体的に実現されてもよい。
【0036】
基地局制御部26は、基地局1全体の制御と呼制御のプロトコルや、監視制御を行う。基地局制御部26として、例えばCPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)等が用いられる。
【0037】
基地局制御部26は、ネットワーク経路切替制御部21、ベースバンドリソース割当制御部23、及び後述する無線回路制御部31における制御条件を含む条件信号を取得し、条件信号に基づき各制御部21、23、31を制御する。基地局制御部26は、例えばEPC5に接続された自営網サーバ7等から条件信号を取得する。条件信号には、通信に利用される複数の周波数帯の情報が含まれるほか、例えば各制御部21、23、31を実行する順番に関する情報、端末9の数や種類等の情報が含まれてもよい。
【0038】
タイミング制御部27は、図示しないGPSや伝送路インタフェイス部22を介して取得した基準クロックに基づき、基地局1内部で使用する各種クロックを生成する。
【0039】
無線部3は、無線回路制御部31と、複数の無線回路部32とを有する。無線部3は、例えば既存のRFモジュール等を用いて、具体的に実現されてもよい。無線部3として、例えば既存のRRHが用いられてもよく、この場合、無線部3の少なくとも一部が制御・ベースバンド部2と分離して設置されてもよい。
【0040】
無線回路制御部31は、通信に利用される複数の周波数帯に基づき、複数の無線回路部32のパラメータを独立に設定する。無線回路部32のパラメータとして、例えばキャリア周波数、送信電力、及び周波数帯域幅の少なくとも何れかが含まれる。
【0041】
複数の無線回路部32(
図1、2では32-1、32-2、・・・、32-m(mは正数))は、ベースバンド部24により変換された複数のベースバンド信号のそれぞれを、アナログ信号に変換する。複数の無線回路部32のそれぞれは、アンテナ33(
図2では33-1、33-2、・・・、33-m)を有し、アンテナ33を介してアナログ信号を端末9に送信する。
【0042】
1つの無線回路部32は、1つのベースバンドユニット25からベースバンド信号を取得するほか、例えば1つの周波数帯で割り当てられた複数のベースバンドユニット25からベースバンド信号を取得してもよい。無線回路部32は、ベースバンド信号を取得するベースバンドユニット25を予め設定されるほか、例えば無線回路制御部31によって設定されてもよい。
【0043】
ここで、例えば
図3に示すように、基地局1が5つのベースバンドユニット25-1~25-5、及び2つの無線回路部32-1、32-2を有する場合について説明する。
図3では、2つのベースバンドユニット25-1、25-2が、1つの周波数帯に割り当てられ、3つのベースバンドユニット25-3、25-4、25-5が、他の周波数帯に割り当てられる場合を想定している。この場合、無線回路部32-1は、ベースバンドユニット25-1、25-2により変換されたベースバンド信号を取得し、無線回路部32-2は、ベースバンドユニット25-3、25-4、25-5により変換されたベースバンド信号を取得する。
【0044】
各無線回路部32-1、32-2は、例えばIF Board、RF Boardを用いてベースバンド信号をアナログ信号に変換し、アンテナ33-1、33-2を介して端末9に送信する。なお、無線回路部32がベースバンド信号をアナログ信号に変換する処理は、公知の技術(例えば公知のIF Board、RF Board)を用いることができる。
【0045】
図3の各ベースバンドユニット25は、例えばそれぞれ20MHzに対応し、通信に利用する周波数帯が40MHz及び60MHzの2帯域の場合、2つのベースバンドユニット25-1、25-2を40MHz帯域に割り振り、3つのベースバンドユニット25-3、25-4、25-5を60MHz帯域に割り振ることができる。また、通信に利用する周波数帯が20MHz及び80MHzに変動した場合、1つのベースバンドユニット25-1を20MHz帯域に割り振り、4つのベースバンドユニット25-2、25-3、25-4、25-5を80MHz帯域に割り振ることができる。これらにより、ベースバンドユニット25の数を増加させずに、各周波数帯に対応させることができる。
【0046】
記憶部4には、基地局1により取得された各種情報が記憶される。記憶部4には、例えばRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含み、基地局制御部26により実行されるプログラム等が記憶される。なお、上述した各構成に含まれる機能は、基地局制御部26が、RAMを作業領域として、記憶部4に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。
【0047】
(第1実施形態:無線通信システム100の動作)
次に、本実施形態における無線通信システム100の動作について説明する。
図4(a)は、本実施形態における無線通信システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0048】
先ず、基地局1と端末9との通信に利用する複数の周波数帯に関する情報を取得する。例えば基地局制御部26は、EPC5を介して、複数の周波数帯の情報を含む条件信号を自営網サーバ7等から取得する。条件信号は、複数の周波数帯の情報に加え、例えば後述する各制御手段S110、S130、S150を実行する順番を含む。
【0049】
基地局制御部26は、条件信号に基づき、各制御手段S110、S130、S150のタイミング等を制御する。なお、条件信号は、例えば記憶部4に記憶されてもよく、管理者等が基地局1に入力してもよい。この場合、条件信号は、各制御手段S110、S130、S150を実行するとき、記憶部4から取出される。
【0050】
<ネットワーク経路切替制御手段S110>
その後、複数の周波数帯毎にネットワーク経路を設定する(ネットワーク経路切替制御手段S110)。ネットワーク経路切替制御部21は、伝送路インタフェイス部22と接続するネットワーク経路を、複数の周波数帯毎に設定する。周波数帯毎にネットワーク経路が設定されることで、周波数帯毎のIPパケットを取得することが可能となる。
【0051】
<取得手段S120>
次に、周波数帯毎に対応するIPパケットを取得する(取得手段S120)。伝送路インタフェイス部22は、接続されたネットワーク経路のうち、周波数毎に対応するネットワーク経路を介してIPパケットを取得する。
【0052】
<ベースバンドリソース割当制御手段S130>
次に、複数のベースバンドユニット25を、複数の周波数帯毎に割り当てる(ベースバンドリソース割当制御手段S130)。ベースバンドリソース割当制御部23は、複数の周波数帯毎に基づき、少なくとも1つのベースバンドユニット25を割り当てる。例えば2種類の周波数帯を利用する場合、ベースバンドリソース割当制御部23は、複数のベースバンドユニット25を2グループに割り当てる。なお、ベースバンドリソース割当制御部23は、例えば利用する周波数帯が増加した場合に備えて、一部のベースバンドユニット25を各グループに割り当てないようにしてもよい。
【0053】
<変復調手段S140>
次に、複数のIPパケットのそれぞれを、IPパケットに対応する周波数帯に割り当てられたベースバンドユニット25を用いて、ベースバンド信号に変換する(変復調手段S140)。各ベースバンドユニット25は、割り当てられた周波数帯に対応するIPパケットを、伝送路インタフェイス部22を介して取得し、ベースバンド信号に変換する。
【0054】
<無線回路制御手段S150>
次に、複数の周波数帯に基づき、複数の無線回路部32のパラメータを独立に設定する(無線回路制御手段S150)。無線回路制御部31は、例えば無線回路部32に対して、どの周波数帯に対応するベースバンド信号を取得するかを設定する。なお、無線回路制御部31は、例えば利用する周波数帯が増加した場合に備えて、一部の無線回路制御部31に対して、ベースバンド信号を取得しないように設定してもよい。
【0055】
<送信手段S160>
次に、複数のベースバンド信号のそれぞれを、無線回路部32を用いてアナログ信号に変換して端末9に送信する(送信手段S160)。無線回路部32は、無線回路制御部31により設定されたベースバンド信号を取得し、アナログ信号に変換する。このとき、無線回路部32は、変換したベースバンド信号に対応する周波数帯に基づき、ベースバンド信号をアナログ信号に変換する。無線回路部32は、アンテナ33を介して、上記周波数帯に対応する端末9にアナログ信号を送信する。
【0056】
上記各手段を実行することにより、本実施形態における無線通信システム100の動作が終了する。なお、送信手段S160のあと、各手段S110~S160の少なくとも何れかが複数回実行されてもよい。
【0057】
なお、上述した動作の順番は一例であり、ネットワーク経路切替制御手段S110は、取得手段S120の前に実行されればよく、ベースバンドリソース割当制御手段S130は、変復調手段S140の前に実行されればよく、無線回路制御手段S150は、送信手段S160の前に実行されればよく、各制御手段S110、S130、S150を実行する順序は、任意である。例えば
図4(b)に示すように、ネットワーク経路切替制御手段S110、ベースバンドリソース割当制御手段S130、及び無線回路制御手段S150を実行したあとに、取得手段S120、変復調手段S140、及び送信手段S160を実行してもよい。
【0058】
また、ネットワーク経路切替制御手段S110、ベースバンドリソース割当制御手段S130、及び無線回路制御手段S150は、何れか1つの制御手段(例えばネットワーク経路切替制御手段S110)の実行された制御条件に基づいて他の1つの制御手段(例えばベースバンドリソース割当制御手段S130)が実行され、他の1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて残りの制御手段(例えば無線回路制御手段S150)が実行されてもよい。これにより、例えば通信規制等を含む周波数帯に対して、規制外の通信を実行することを防ぐことが可能となる。また、各制御手段に費やす時間を短縮することが可能となる。なお、上述した各制御手段S110、S130、S150の「実行」については、制御条件等を変更する場合のほか、制御条件等を変更しない場合も含まれる。すなわち、例えばネットワーク経路切替制御手段S110の実行された制御条件に基づいて、ベースバンドリソース割当制御手段S130がベースバンドユニット25の割り当てを変更しない(例えば現状維持する)場合や、無線回路制御手段S150が無線回路部32のパラメータを変更しない(例えば現状維持する)場合も含ませることができる。
【0059】
本実施形態によれば、ベースバンドリソース割当制御手段S130は、複数のベースバンドユニット25を、複数の周波数帯毎に割り当てる。このため、複数の周波数帯を利用して複数の端末9と通信を行う際、端末9との通信環境を踏まえてベースバンドユニット25を共用することができ、ベースバンドユニット25の数を最小限に抑えることができる。これにより、運用する際の簡易性や利便性の向上を実現することが可能となる。従って、例えばプライベートLTEの基地局1における小型化、軽量化、省電力化等の要件を満たすことができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、ネットワーク経路切替制御手段S110、ベースバンドリソース割当制御手段S130、及び無線回路制御手段S150は、何れか1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて他の1つの制御手段が実行され、他の1つの制御手段の実行された制御条件に基づいて残りの制御手段が実行される。このため、各制御手段の実行に伴う制約を踏まえ、各制御手段を実行することができる。これにより、通信環境に応じた最適な通信条件を容易に設定することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態によれば、ベースバンドリソース割当制御部23は、複数のベースバンドユニット25を、複数の周波数帯毎に割り当てる。このため、複数の周波数帯を利用して複数の端末9と通信を行う際、端末9との通信環境を踏まえてベースバンドユニット25を共用することができ、ベースバンドユニット25の数を最小限に抑えることができる。これにより、運用する際の簡易性や利便性の向上を実現することが可能となる。従って、例えばプライベートLTEの基地局1における小型化、軽量化、省電力化等の要件を満たすことができる。
【0062】
(第1実施形態:無線通信システム100の動作の変形例)
次に、本実施形態における無線通信システム100の動作の変形例について説明する。
図5は、本実施形態における無線通信システム100の動作の変形例を示すフローチャートである。
【0063】
上述した動作の一例と、変形例との違いは、設定手段S170をさらに備える点である。なお、上述した動作の一例と同様の内容については、説明を省略する。
【0064】
<設定手段S170>
設定手段S170は、ネットワーク経路切替制御手段S110、ベースバンドリソース割当制御手段S130、及び無線回路制御手段S150の少なくとも何れかの制御条件を含む条件信号を生成するために実行される。なお、上述した各手段S110~S160の少なくとも1部が実行されたあとに、設定手段S170を実行し、その後各制御手段S110、S130、S150の少なくとも何れかが実行されてもよい。
【0065】
設定手段S170は、ネットワーク経路切替制御手段S110、ベースバンドリソース割当制御手段S130、及び無線回路制御手段S150の少なくとも何れかにおける制御条件を含む条件信号を生成する。設定手段S170は、基地局制御部26によって実行されるほか、例えば自営網サーバ7によって実行されてもよい。何れの場合においても、設定手段S170では、基地局1が条件信号を取得することができる。
【0066】
設定手段S170が自営網サーバ7によって実行される場合、設定手段S170は、接続情報取得手段S171と、生成手段S172と、条件信号送信手段S173とを含む。
【0067】
<接続情報取得手段S171>
接続情報取得手段S171は、基地局1と、複数の端末9との通信状況を示す接続情報を取得する。自営網サーバ7は、基地局1又は端末9から接続情報を取得する。自営網サーバ7は、例えば一定期間毎に接続情報を取得する。接続情報は、通信に利用されている周波数帯の情報を含むほか、例えば通信中の端末9の数や種類等を含む。
【0068】
<生成手段S172>
次に、接続情報に基づき、条件信号を生成する(生成手段S172)。自営網サーバ7は、例えば接続情報に変化が発生したと判断した場合に、接続情報の変化に応じて条件信号を生成する。例えば、通信に利用する周波数帯を変化させる必要がある場合や、通信中の端末9の数に変化があった場合、自営網サーバ7は条件信号を生成する。
【0069】
<条件信号送信手段S173>
次に、ネットワークコアを介して条件信号を基地局1に送信する(条件信号送信手段S173)。自営網サーバ7は、例えばEPC5を介して、条件信号を基地局1に送信する。基地局制御部26は、条件信号を取得し、必要に応じてネットワーク経路切替制御手段S110、ベースバンドリソース割当制御手段S130、及び無線回路制御手段S150のタイミング等を制御する。
【0070】
その後、上述した各制御手段S110、S130、S150、及び各手段S120、S140、S160が適宜実行され、本実施形態における無線通信システム100の動作が終了する。
【0071】
本変形例によれば、条件信号は、ネットワーク経路切替制御手段S110、ベースバンドリソース割当制御手段S130、及び無線回路制御手段S150を実行する順番を含む。このため、端末9との通信状況に適した制御条件を容易に設定することができる。これにより、端末9の数や種類が変動する場合においても、最適な通信環境を保つことが可能となる。
【0072】
(第2実施形態:無線通信システム200)
次に第2実施形態における無線通信システム200について説明する。
図6は、本実施形態における無線通信システム200の一例を示す模式図である。
【0073】
上述した実施形態と、第2実施形態との違いは、複数の基地局1を備える点である。なお、上述した実施形態と同様の内容については、説明を省略する。
【0074】
無線通信システム200では、例えば複数の基地局1(
図6では基地局1-1、1-2、・・・、1-p(pは正数))が、1つのEPC5を介して自営網サーバ7に接続される。この場合、自営網サーバ7は、複数の基地局1を制御する条件信号を生成し、各基地局1に送信する。EPC5は、例えば外部ネットワーク8に接続され、複数の基地局1は、EPC5を介して外部ネットワーク8に接続することができる。なお、各基地局1は、1つのEPC5に接続されるほか、少なくとも1部の基地局1に別途EPC5が実装されてもよい。
【0075】
(第2実施形態:無線通信システム200の動作)
次に、本実施形態における無線通信システム200の動作について説明する。
図7は、本実施形態における無線通信システム200の動作の一例を示すフローチャートである。
【0076】
上述した実施形態の変形例と、第2実施形態との違いは、複数の基地局1のそれぞれに対する条件信号が生成される点である。なお、上述した実施形態の変形例と同様の内容については、説明を省略する。
【0077】
<設定手段S270>
設定手段S270は、複数の基地局1と、複数の端末9との通信状況に基づき、各基地局1におけるネットワーク経路切替制御手段S110、ベースバンドリソース割当制御手段S130、及び無線回路制御手段S150の少なくとも何れかの制御条件を含む条件信号を生成するために実行される。設定手段S270では、複数の基地局1の通信状況を踏まえた条件信号を生成できるため、基地局1間のバランスを考慮した制御を実現することができる。なお、少なくとも1つの基地局1において、上述した各手段S110~S160の少なくとも1部が実行されたあとに、設定手段S270を実行し、その後、少なくとも1つの基地局1において、各制御手段S110、S130、S150の少なくとも何れかが実行されてもよい。
【0078】
設定手段S270は、自営網サーバ7によって実行され、設定手段S270は、接続情報取得手段S271と、生成手段S272と、条件信号送信手段S273とを含む。
【0079】
<接続情報取得手段S271>
接続情報取得手段S271は、複数の基地局1と、複数の端末9との通信状況を示す接続情報を取得する。自営網サーバ7は、複数の基地局1又は複数の端末9から接続情報を取得する。
【0080】
<生成手段S272>
次に、接続情報に基づき、条件信号を複数の基地局1毎に生成する(生成手段S272)。自営網サーバ7は、例えば端末9が、基地局1-1との通信を終了し、基地局1-2との通信を開始する必要がある場合、自営網サーバ7は条件信号を生成する。
【0081】
<条件信号送信手段S273>
次に、ネットワークコアを介して条件信号を複数の基地局1毎に送信する(条件信号送信手段S273)。自営網サーバ7は、例えばEPC5を介して、条件信号を基地局1毎に送信する。各基地局制御部26は、条件信号を取得し、必要に応じてネットワーク経路切替制御手段S110、ベースバンドリソース割当制御手段S130、及び無線回路制御手段S150のタイミング等を制御する。
【0082】
その後、少なくとも1つの基地局1により上述した各制御手段S110、S130、S150、及び各手段S120、S140、S160が適宜実行され、本実施形態における無線通信システム200の動作が終了する。
【0083】
本実施形態によれば、上述した実施形態と同様に、ベースバンドリソース割当制御手段S130は、複数のベースバンドユニット25を、複数の周波数帯毎に割り当てる。このため、複数の周波数帯を利用して複数の端末9と通信を行う際、端末9との通信環境を踏まえてベースバンドユニット25を共用することができ、ベースバンドユニット25の数を最小限に抑えることができる。これにより、運用する際の簡易性や利便性の向上を実現することが可能となる。従って、例えばプライベートLTEの基地局1における小型化、軽量化、省電力化等の要件を満たすことができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、設定手段S270は、複数の基地局1から取得した接続情報に基づき条件信号を生成し、生成した条件信号を複数の基地局1毎に送信する。このため、各基地局1と端末9との通信状況を踏まえ、基地局1毎に制御条件を変更することができる。これにより、各基地局1間において端末9の数や種類が変動する場合においても、最適な通信環境を保つことが可能となる。
【0085】
本実施形態によれば、例えば
図6に示すネットワーク構成で基地局1間を連携でき、より効率的にベースバンドリソースを活用することができる。各基地局1は、それぞれ独立にベースバンドユニット25の設定と、無線回路部32の設定とを組み合わせることができる。また、例えばプライベートLTEで構築する自営網を運営する事業者が設置する自営網サーバ7からの制御情報に従って、基地局1毎に各種設定を実行することができる。
【0086】
また、例えば各基地局1が収集する端末9との接続情報等は、自営網サーバ7に通知され、自営網サーバ7は取得した情報に基づき、各基地局1のベースバンドリソース配分等を設定することができる(例えば設定手段S270)。これらの連携制御により、各基地局1のベースバンドリソースを仮想的に1つのベースバンドリソースとみなした運用が可能となる。
【0087】
なお、上述した各実施形態によれば、基地局1は、それぞれ独立に設定可能な複数のベースバンドユニット25と、それぞれ独立に設定可能な複数の無線回路部32とを有する。このため、これらの設定の組み合わせによって、同一場所において、複数のサービスを提供することが可能となる。また、複数のサービスの1つを受ける端末9による要求や、EPC5との基地局1運用時の状況に応じて、ベースバンドユニット25と無線回路部32との設定の順序を切り替えることができる。
【0088】
また、例えば各ベースバンドユニット25で処理されたベースバンド信号は、伝送路インタフェイス部22を介して、EPC5や外部ネットワークコア6等の1つ以上のコアに送信することができる。このとき、EPC5等のネットワークコアを介した制御や、端末9による要求に応じて、各ベースバンドユニット25毎に独立して伝送先となるネットワークコアを切り替えることができる。
【0089】
また、上述した各実施形態によれば、例えばEPC5が実装されるPCの中に、制御・ベースバンド部2の少なくとも一部が実装されてもよい。
【0090】
また、上述した各実施形態によれば、外部の事業者等が運用する外部ネットワークコア6への接続経路として、プライベートLTEのEPC5を経由する経路、及びEPC5を経由しない経路の何れも適用することができる。
【0091】
また、上述した各実施形態によれば、無線部3は、周波数帯毎に予め分離されてもよい。また、無線部3がRRHとして制御・ベースバンド部2と分離して設置される場合、周波数帯によってRRHの数が異なってもよく、また、複数の周波数帯のうち、一部がRRHとして分離され、他は分離されていなくてもよい。また、各周波数帯の無線部3は、同期されていなくてもよい。
【0092】
また、上述した各実施形態によれば、外部ネットワーク8の他事業者(セルラ通信事業者等)との連携運用も可能となる。この場合、外部ネットワーク8に設置されるサーバに、自営網及び他事業者の事業者網のユーザ情報や、接続情報が格納され、その情報に基づき、自営網の基地局1が適宜制御されてもよい。
【0093】
また、上述した各実施形態によれば、例えばミリ波帯を含む複数の周波数帯で運用可能なプライベートLTEの基地局1において、複数の周波数帯の間でベースバンドリソースを共用することができ、ベースバンド回路規模の増大を抑えることが可能となる。また、アプリケーションや運用状況に応じた周波数選択及びベースバンドリソース配分が効率的に実現でき、基地局1の簡素化や低廉化が可能となる。
【0094】
上記に加え、データ処理等を行うためのネットワークコアについても、周波数帯毎、即ちアプリケーションや場合によってはユーザ(端末9)毎に選択できる。このため、秘匿性や低遅延性が求められるケースでは、独自のネットワークコアを利用し、外部の事業者ネットワークにアクセスするケースでは、外部事業者ネットワークコアを利用するなど、目的に応じた柔軟なネットワーク構成が実現できる。これにより、高度化や多様化が進むアプリケーションの導入にも柔軟かつ効率的に対応することが可能となる。
【0095】
上述した各実施形態における無線通信システム100、200は、例えばイベント会場やショッピングモールを運営する企業や団体が、集客のために様々なイベントを開催しつつ、顧客の利便性の向上を目的とした様々なアプリケーションを提供するようなケースに用いられてもよい。
【0096】
例えば
図8に示すようなイベント会場において、イベントの参加者(複数の端末9-2)に魅力的なコンテンツを提供し、それと連動した高精細動画を巨大モニタ(端末9-1)に投影(配信)するようなイベントが主催される場合がある。この場合、コンテンツに関する通信は、低遅延性及び端末収容力が求められ、動画配信には高速大容量が求められる。このように、それぞれの要求性能が異なるため、それぞれの無線通信は、独立に運用されることが望ましい。
【0097】
上記ケースでは、何れも高速かつ低遅延なミリ波帯の利用が想定されるが、参加者へのコンテンツにはビームフォーミングを利用したMassive MIMO技術を利用し、空間多重化による収容力と通信容量の拡大が効果的である。これに対し、巨大モニタへの動画配信は、移動通信である必要はなく、固定局間通信としてのミリ波帯を利用した大容量通信を適用すればよい。しかしながら、同じ周波数では互いに干渉を起こす懸念があるため、異なる(複数の)周波数帯で運用することにより、安定性を確保することができる。
【0098】
また、イベント主催者は、参加者数やそれに応じたトラヒック量を事前にある程度予測でき、また、イベントや動画配信のスケジュール自体もコントロールすることができる。このため、利用状況に応じたベースバンドリソースの割り当てが可能となる。例えば、参加者が多く、個別トラヒックも多い時間帯には、動画配信の解像度を下げてベースバンドリソースの占有率を下げるような制御ができる。また、高精細動画配信のスケジュールを予め設定し、その時間帯はイベントコンテンツへのアクセスを制限できるようにイベント進行を制御する等、詳細なスケジューリングが可能となる。
【0099】
また、上述した第2実施形態における無線通信システム200は、例えば
図9に示すように、イベント主催者が複数の基地局1(
図9では基地局1-1、1-2)を設置し、連携動作させる場合に用いることができる。この場合、より効果的なベースバンドリソースの活用を実現することができる。
【0100】
例えばイベント会場内で参加者が移動しつつコンテンツにアクセスするシナリオでは、プライベートLTEの各基地局1-1、1-2は同じ構成であるが、人の移動に応じてベースバンドリソースを最適配分させることができる。何れの基地局1-1、1-2においても、巨大モニタへの動画配信を実行するが、イベントスペースAに参加者を集めてイベントを進行する時間帯(
図9(a))は、主に基地局1-2が巨大モニタ(端末9-3)への動画配信を担当し、基地局1-1が参加者(複数の端末9-2)へのコンテンツ配信に多くのベースバンドリソースを配分することができる。また、参加者をイベントスペースBに移動させたあと(
図9(b))は、基地局1-1が巨大モニタ(端末9-1)への動画配信を担当し、基地局1-2が参加者(複数の端末9-4)へのコンテンツ配信に多くのベースバンドリソースを配分することができる。また、同程度の参加者が何れのイベントスペースA、Bにも存在する場合は、各基地局1-1、1-2のベースバンドリソースを集合的なベースバンドリソースとみなし、動画配信とコンテンツ配信に効率的に配分することで、より高度且つ複雑な制御も実現できる。
【0101】
上記に加え、上述した各実施形態における無線通信システム100、200は、例えば緊急時等に利用することもできる。例えばイベント会場で災害等が発生した場合、外部のネットワークと連携して安全を確保する必要がある。この場合、例えば伝送距離の長いマイクロ波帯を利用して、顧客の端末9に避難経路を示して誘導したり、建物に設置した様々なセンサ情報を取集するため、より多くのベースバンドソースを配分したり、といった制御を実現することができる。また、イベント参加者用のアプリケーションに緊急時のサービスを実装しておき、災害時には顧客の端末9から位置情報をリアルタイムに収集し、外部連携機関に送信することで、災害救助支援活動に利用することができる。この場合においても、被害の激しい場所への通信に集中的に無線及びベースバンドリソースを配分する等の柔軟な使い方が可能となる。
【符号の説明】
【0102】
1 :基地局
2 :制御・ベースバンド部
21 :ネットワーク経路切替制御部
22 :伝送路インタフェイス部
23 :ベースバンドリソース割当制御部
24 :ベースバンド部
25 :ベースバンドユニット
26 :基地局制御部
27 :タイミング制御部
3 :無線部
31 :無線回路制御部
32 :無線回路部
33 :アンテナ
4 :記憶部
5 :EPC
6 :外部ネットワークコア
7 :自営網サーバ
8 :外部ネットワーク
9 :端末
100 :無線通信システム
200 :無線通信システム
S110 :ネットワーク経路切替制御手段
S120 :取得手段
S130 :ベースバンドリソース割当制御手段
S140 :変復調手段
S150 :無線回路制御手段
S160 :送信手段