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特許7150326下地材固定金具及び内壁下地材の固定施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】下地材固定金具及び内壁下地材の固定施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20221003BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
E04B2/56 631J
E04B2/74 531N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018223792
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020084677
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000121729
【氏名又は名称】奥地建産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】湯 正明
(72)【発明者】
【氏名】奥地 誠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 渉
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-093302(JP,A)
【文献】特開平10-072891(JP,A)
【文献】実開平03-011705(JP,U)
【文献】特開平09-279736(JP,A)
【文献】特許第6472903(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56-2/70,2/88-2/96
E04B 2/72-2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交するフランジ及びウェブを有する形鋼で形成された梁材に、内壁の壁面を形成する内壁ボード材の裏側面に設置される板状の内壁下地材を固定するための下地材固定金具であって、
前記梁材の長尺方向に対して平行に配置される第1板片の両側端部から当該第1板片に対して略直角に同方向へ突出する一対の第2板片に、それぞれ当該第2板片の先端縁から前記第1板片側へ延びて前記フランジに嵌着する切込み溝を形成してなる嵌着部と、
前記切込み溝と直交する方向に前記内壁下地材の上端部を嵌め込んで支持する支持部と、
前記第1板片及び前記支持部を連結するとともに前記支持部に嵌め込んだ前記内壁下地材の面外方向への出入を調整する調整ボルトと、を備え、
前記切込み溝は、前記第2板片の上端部側に形成され
前記第1板片は、前記下地材固定金具が梁材に固定された状態で、当該第1板片の上端へ向かって前記梁材の長尺方向に平行な方向に幅狭になるように形成されることを特徴とする下地材固定金具。
【請求項2】
前記切込み溝は、切込みの互いに対向する一対の端面を切込みの基端から先端に向かって互いに近接する方向へ同一の角度で均一に傾斜させていることを特徴とする請求項1に記載の下地材固定金具。
【請求項3】
前記切込み溝は、切込みの先端部分の幅を前記フランジの板厚よりも狭く形成され、切込みの基端部分の幅を前記フランジの板厚と略同一に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の下地材固定金具。
【請求項4】
前記調整ボルトは、ボルトの先端を前記切込み溝の開放方向へ向けており、前記第1板片よりも前記調整ボルトの先端側に位置する前記支持部の当該調整ボルトからの脱落を防止する抜止め部をボルトの先端部に形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の下地材固定金具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の下地材固定金具を用いて、H形鋼で形成された前記梁材に前記内壁下地材を固定する内壁下地材の固定施工方法であって、
板状の前記内壁下地材の上端部を前記支持部に嵌め込んで固定し、
前記第1板片を打設して前記切込み溝を前記フランジに嵌着するとともに、
前記調整ボルトを回動操作して前記支持部及び該支持部に嵌め込まれた前記内壁下地材の面外方向への出入を調整した後に、
前記内壁下地材の下端部を床下地材に固定することを特徴とする内壁下地材の固定施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内壁を構成する内壁下地材を、形鋼で形成された梁材に固定する下地材固定金具、及び下地材固定金具を用いる内壁下地材の固定施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より内壁を構成し、矩形に枠組みされる木製下地枠を鉄骨梁などの横架材に固定可能な金具が発明されている。例えば、特許文献1に記載の発明では、木製下地枠の上端部を嵌め込む溝型に形成された金具本体と、互いに平行な2枚の板片に、H形鋼で形成された横架材の下フランジに噛合する噛合部をそれぞれ形成した固定部材と、金具本体及び固定部材を連結する調整ボルトと、を有する固定金具について開示されており、固定金具の調整ボルトを室内側から回動操作することにより金具本体と、金具本体に嵌め込まれた木製下地枠の面外方向への出入を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-93302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄骨造の建築物において、建築物に作用する水平力に抵抗するために、床梁に棒状の水平ブレースを設置して床梁の剛性を高めることがある。通常、水平ブレースは、長手方向の両端部を床梁の下フランジにボルト・ナット固定されるが、特許文献1に記載の固定金具を用いて木製下地枠を床梁に設置しようとすると、水平ブレースのガセットプレート及び軸材と固定部材の上端とが干渉して固定金具を所望する位置に設置できない場合がある。通常、このような場合は、固定金具の金具本体を木製下地枠に沿って水平ブレースから離反する方向へスライド移動させれば水平ブレースと固定金具との干渉を回避することができるが、床梁と直交梁との接合部や、床梁と柱から突出するダイヤフラムとの接合部などが固定金具に近接していると、床梁のフランジに固定される接合用のガセットプレートやボルト・ナットなどの障害物が固定金具に干渉して、固定金具を所望する位置へ水平移動させることができない。さらに水平ブレースを床梁に設置する場合、天井懐は水平ブレースや配線、配管が密集した余裕のない空間となりやすく、このような狭隘な空間であっても僅かな隙間を活用して木製下地枠を安定的に固定できる固定金具が必要とされていた。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、内壁を構成する内壁下地材を、狭隘な空間であっても形鋼で形成された梁材に安定的に固定することができる下地材固定金具、及び下地材固定金具を用いた内壁下地材の固定施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の下地材固定金具は、互いに直交するフランジ及びウェブを有する形鋼で形成された梁材に、内壁の壁面を形成する内壁ボード材の裏側面に設置される板状の内壁下地材を固定するための下地材固定金具であって、前記梁材の長尺方向に対して平行に配置される第1板片の両側端部から当該第1板片に対して略直角に同方向へ突出する一対の第2板片に、それぞれ当該第2板片の先端縁から前記第1板片側へ延びて前記フランジに嵌着する切込み溝を形成してなる嵌着部と、前記切込み溝と直交する方向に前記内壁下地材の上端部を嵌め込んで支持する支持部と、前記第1板片及び前記支持部を連結するとともに前記支持部に嵌め込んだ前記内壁下地材の面外方向への出入を調整する調整ボルトと、を備え、前記切込み溝は、前記第2板片の上端部側に形成され、前記第1板片は、前記下地材固定金具が梁材に固定された状態で、当該第1板片の上端へ向かって前記梁材の長尺方向に平行な方向に幅狭になるように形成されることを特徴としている。
【0007】
本発明の第2の下地材固定金具は、前記切込み溝が、切込みの互いに対向する一対の端面を切込みの基端から先端に向かって互いに近接する方向へ同一の角度で均一に傾斜させていることを特徴としている。
【0008】
本発明の第3の下地材固定金具は、前記切込み溝が、切込みの先端部分の幅を前記フランジの板厚よりも狭く形成され、切込みの基端部分の幅を前記フランジの板厚と略同一に形成されることを特徴としている。
【0009】
本発明の第4の下地材固定金具は、前記調整ボルトが、ボルトの先端を前記切込み溝の開放方向へ向けており、前記第1板片よりも前記調整ボルトの先端側に位置する前記支持部の当該調整ボルトからの脱落を防止する抜止め部をボルトの先端部に形成されることを特徴としている。
【0010】
本発明の壁下地材の固定施工方法は、第1から第4のいずれかに記載の下地材固定金具を用いて、H形鋼で形成された梁材に前記内壁下地材を固定する内壁下地材の固定施工方法であって、板状の前記内壁下地材の上端部を前記支持部に嵌め込んで固定し、前記第1板片を打設して前記切込み溝を前記フランジに嵌着するとともに、前記調整ボルトを回動操作して前記支持部及び該支持部に嵌め込まれた前記内壁下地材の面外方向への出入を調整した後に、前記内壁下地材の下端部を床下地材に固定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の下地材固定金具によると、梁材の長尺方向に対して平行に配置される第1板片が上端へ向かって前記梁材の長尺方向に平行な方向に幅狭になるように形成されるとともに、一対の第2板片の上端部にフランジに嵌着する切込み溝が形成されているので、梁材のフランジ付近が狭隘な空間であっても、第1板片や第2板片の上端部が他の部材に干渉することなく下地材固定金具を梁材に固定することができる。また、幅狭な第1板片の上端部をハンマなどで打設すれば切込み溝をフランジへ嵌着させることができ、第1板片を全高に亘って同幅とした場合と比較して第1板片の打設箇所をある程度一定に保つことができるため、金具自体の傾きを抑制して下地材固定金具を安定的に梁材に固定することができる。そして、嵌着部をフランジに嵌着させた際に、第1板片の梁材の弱軸方向(ウェブに対して直交する方向)に対する面積が従来の金具よりも小さくなるため、嵌着部に回転モーメント力が作用した場合に金具自体の変形やねじれを抑えて内壁下地材の建ち通りを安定させたものとすることができる。
【0012】
本発明の第2の下地材固定金具によると、切込み溝は、切込みの互いに対向する一対の端面を切込みの基端から先端に向かって互いに近接する方向へ同一の角度で均一に傾斜させているので、第1板片をハンマなどで打設して切込み溝をフランジに嵌着させると、切込み溝の相対向する端面にはそれぞれ均一に負荷が掛かり、両方の端面が均一に変形しながらフランジに噛み込むので、嵌着部が傾ずにフランジに嵌合して支持部に支持された内壁下地材の建ちや通りを安定させることができる。
【0013】
本発明の第3の下地材固定金具によると、切込み溝は、切込みの開放側である先端部分の距離をフランジの板厚よりも狭く形成され、切込みの基端部分の幅をフランジの板厚と略同一に形成されてるので、嵌着部をハンマで柱材のフランジに打ち込むと、切込み溝の先端側がより強固にフランジを挟着することができ、下地材固定金具の梁材からの脱落を防止できる。
【0014】
本発明の第4の下地材固定金具によると、調整ボルトは、支持部の調整ボルトからの脱落を防止する抜止め部を先端部に形成されるので、調整ボルトを回動させて支持部に嵌め込まれた内壁下地材の出入を調整しても、支持部及び内壁下地材が調整ボルトから脱落して不用意に嵌着部との連結が解除されることはない。
【0015】
本発明の内壁下地材の固定施工方法によると、内壁下地材を下地材固定金具の支持部に嵌め込んで嵌着部をフランジに嵌着させ、内壁下地材の面外方向への出入を調整してから内壁下地材の下端部を床下地材に固定するので、内壁下地材の建ちや通りの調整された施工精度の高い内壁を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】内壁下地材を梁材に設置した状況を示す断面図。
図2図1のA部分拡大断面図。
図3】下地材固定金具を示す正面図。
図4】下地材固定金具を示す平面図。
図5】下地材固定金具の分解斜視図。
図6】切込み溝の一対の端面を示す斜視図。
図7】抜止め部を形成した調整ボルトを有する下地材固定金具を示す平面図。
図8】内壁下地材を示す斜視図。
図9】下地材固定金具を梁材のフランジに嵌着する状況を示す断面図。
図10】調整ボルトを回動操作した場合の支持部の動きを示す断面図。
図11】梁材に下地材固定金具を設置した状況を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、下地材固定金具の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本願の下地材固定金具1は、図1に示すように、主にH形鋼で形成された梁材2の下部のフランジ21に内壁3を構成する内壁下地材30を固定する際に用いられる金具である。なお、本願の下地材固定金具1は、梁材2が互いに直交するフランジ21及びウェブ22を有する形鋼であれば他の形鋼であっても適用することができるが、ここではH形鋼である梁材2に設置する場合について説明する。
【0018】
図2に示すように、下地材固定金具1は、梁材2の下部のフランジ21に嵌着する切込み溝11aを有する嵌着部11と、切込み溝11aと直交する方向に内壁下地材30の上端部を嵌め込んで支持する支持部12と、嵌着部11及び支持部12を連結するとともに支持部12及び支持部12に嵌め込んだ内壁下地材30の面外方向への出入を調整する調整ボルト13と、を備えている。
【0019】
嵌着部11は、図3及び図5に示すように、1枚の鋼板からなる若干のバネ性を有する部材で、梁材2の長尺方向に対して平行に配置され上端へ向かって梁材2の長尺方向に平行な方向に幅狭になるように形成される平板状の第1板片111と、第1板片111の両側端部から第1板片111に対して略直角に同方向へ突出する一対の第2板片112と、一対の第2板片112の第1板片111側の下端部から第1板片111方向へ突出する一対の第3板片113と、一対の第2板片112の下端部及び一対の第3板片113の下端部をそれぞれ互いに近接する方向へ折曲して形成され、支持部12に載置される一対の第4板片114と、を具備している。
【0020】
第1板片111は、図3及び図5に示すように、上端へ向かって幅狭に形成される略三角形状の板片で、下端部の幅方向略中央に板厚方向へ貫通する第1貫通孔111aを形成されており、この第1貫通孔111aに調整ボルト13を挿入することができる。一対の第2板片112は、第1板片111の上端部が幅狭に形成されているため上端部同士が互いに近接する方向へ傾斜しており、それぞれの先端縁112aから第1板片111側へ向けて切込みを入れた切込み溝11aが形成されている。図6に示すように、切込み溝11aは、切込みの互いに対向する端面11bを切込みの基端から開放側の先端に向かって互いに近接する方向へ同一の角度αで傾斜させており、切込みの先端部分の幅W1を梁材2の下部のフランジ21の板厚tよりも狭く形成し、また、基端部分の幅W2を下部のフランジ21の板厚tと略同一に形成している。また、図3及び図5に表わしているように、第2板片112の下端部は第1板片111の下端部よりも下方へ突出しており、この突出した部分から第3板片113が第1板片111側へ向けて延出し、第1板片111側から見たときに第1板片111の下端と第4板片114の上端面との間には隙間が形成されている。
【0021】
支持部12は、図2及び図5に示すように、鋼板を略L形状に折り曲げた第1支持部121と、第1支持部121よりも厚さの薄い金板を略L形状に折り曲げた第2支持部122と、を接合することによって構成される。第1支持部121は、角部121aを形成する一方の板片であり、第2支持部122に接合される第1接合片12aと、角部121aを形成する他方の板片の略中央部を角部121a側へ略直角に折り返された立上げ片12bと、立上げ片12bの両側に位置し、内壁下地材30を支持部12に嵌め込んだ際に内壁下地材30の一方の板面に当接する2つの第1当接片12cと、によって形成されている。立上げ片12bには、板厚方向へ貫通するとともに内周面に雌ねじを設けられた第2貫通孔12dが形成されており、この第2貫通孔12dに調整ボルト13を挿入することができる。また、第1当接片12cは、高さ方向の略中央部を第1接合片12a側へ僅かに屈曲させており、内壁下地材30を支持部12に嵌め込んだ際に後述する第2当接片12fとの間で弾性的に内壁下地材30を挟着することができる。
【0022】
第2支持部122は、角部122aを形成する一方の板片であり、第1支持部121の第1接合片12aと接合される第2接合片12eと、角部122aを形成する他方の板片であり、内壁下地材30を支持部12に嵌め込んだ際に内壁下地材30の他方の板面に当接する第2当接片12fと、によって形成されている。第2接合片12eは、第1接合片12aを載置するために幅方向の略中央部を隆起させた載置部12gと、載置部12gの幅方向の両側、且つ、載置部12gと間隔を空けた位置を隆起させて載置部12gとの間で嵌着部11の第4板片114を挟む隆起部12hと、を形成されており、第2当接片12fには、内壁下地材30を支持部12に固定するためのビスを挿入する複数のビス孔12iが形成されている。また第2当接片12fは、図2に示すように、内壁3の壁面を形成する内壁ボード材31を内壁下地材30に固定した際に、内壁ボード材31に直接当接する部材であるため、内壁ボード材31の建ちが傾かないよう薄い金板で形成されており、その厚さは例えば0.4mm程度で形成することができる。
【0023】
このように構成される嵌着部11、第1支持部121、及び第2支持部122を連結する際は、まず、嵌着部11の第1板片111を第2支持部122の角部122a側へ向けた状態で、載置部12gと隆起部12hとの間に第4板片114を配置して嵌着部11を第2支持部122に載置し、次いで、第1支持部121の第1接合片12aの先端を第2支持部122側へ向けて載置片12gの上部に第1当接片12aを重ね合わせ、第1当接片12a及び載置片12gを図4に示すように、上方からバーリング加工でかしめる(12j)ことにより結合することができる。このように第1支持部121及び第2支持部122を重ね合わせて結合することによって、図2に示す内壁下地材30を嵌め込むための嵌め込み部12kが形成される。
【0024】
調整ボルト13は、図3から図5に示すように、外周面に雄ねじを形成されたボルトで、頭部側の端面には電動ドライバーなどの工具を係止させるための係止穴13aが形成されている。この調整ボルト13は、ボルトの先端を切込み溝11aの開放方向へ向けて嵌着部11と支持部12とを連結しており、第1板片111側から第1貫通孔111aに挿通し、次いでナット14、及び第1支持部121の立上げ片12bに形成された第2貫通孔12dを順に螺合させることにより嵌着部11及び支持部12を連結固定することができる。ナット14は、調整ボルト13の第1板片111からの抜けを防止するためのものであり、調整ボルト13に対して回動不能に固定されているため、調整ボルト13を回動させるとナット14も同じ方向へ回動し、ナット14が締付け方向へ回動してボルトの回動を阻害することはない。したがって、図10に示すように、調整ボルト13の係止穴13aに工具4を差し込んで調整ボルト13を回動させると、調整ボルト13に螺合した立上げ片12bのみがボルト軸に沿ってスライド移動し、支持部12全体を調整ボルト13のボルト軸方向に移動させることができる。なお、図示例では、係止穴13aの形状を十字穴としているが、調整ボルト13を回動可能な工具4を係止することができる形状であれば、その他の形状としてもよい。また、調整ボルト13は、図7(a)(b)に示すように、先端部にキャップを外嵌したりボルトの径方向に凹凸加工を施して抜止め部13bを形成することにより、立上げ片12bの調整ボルト13からの脱落を防止することができる。
【0025】
続いて、下地材固定金具1を用いて梁材2のフランジ21に内壁下地材30を設置する施工方法について説明する。梁材2に設置される内壁下地材30は、図1及び図8に示すように、内壁3の壁面を形成する内壁ボード材31の裏側面に固定される板状の部材で、上下の横木枠材3a、及び左右の縦木枠材3bを矩形状に組んだ矩形枠32の内部にグラスウールなどの断熱材33を固定することによって形成されている。まず、この内壁下地材30を図1に示す基礎Fの上に形成された床下地材F1の上部に立設し、図9に示すように、矩形枠32の上部の横木枠材3aを下地材固定金具1の嵌め込み部12kに嵌め合せ、第2当接片12f側から横木枠材3aにビスを打ち込んで内壁下地材30を下地材固定金具1に固定する。なお、下地材固定金具1は、内壁下地材30の形状に応じ、内壁下地材30の幅方向に沿って一定の間隔で設置される。
【0026】
そして、図9に示すように、下地材固定金具1の切欠き溝11aの開放側の先端部分を梁材2の下部のフランジ21の幅方向の先端に当接し、フランジ21の先端が切込み溝11aの基端に当接するまでハンマ(図示しない)で第1板片111の第2板片112と反対側の面を打設して下地材固定金具1を梁材2に嵌着固定する。このとき、先述したように第1板片111は梁材2の長尺方向に対して平行に配置され、上端へ向かって梁材2の長尺方向に平行な方向に幅狭になるように形成されるとともに、切欠き溝11aは、第2板片112の上端部に形成されているので、図11に示すように、下地材固定金具1を設置するスペースが僅かであったとしても、嵌着部11の第1板片111や第2板片112を他の部材に干渉させることなく下地材固定金具1を梁材2に固定することができる。また、切込み溝11aは、先述したように図6に示す切込みの互いに対向する一対の端面11bを切込みの基端から先端に向かって互いに近接する方向へ同一の角度αで傾斜させているので、ハンマで嵌着部11を打ち込むと、切込み溝11aの互いに対向する端面11bが均一に変形しながらフランジ21に嵌め込まれていく。したがって、一対の端面11bのうちどちらか一方の端面11bのみが大きく変形することがなく、下地材固定金具1を傾かせずに安定した状態でフランジ21に固定することができる。また、切込みの開放側の先端部分の幅W1をフランジ21の板厚tよりも狭く形成し、切込みの基端部分の幅W2をフランジ21の板厚tと略同一に形成しているので、切込み溝11aの先端部分がフランジ21を強固に挟着することができ、下地材固定金具1の梁材2からの脱落を防止することができる。
【0027】
そして、図11に表れているように、下地材固定金具1の第1板片111を上端部に向けて梁材2の長尺方向に平行な方向に幅狭な形状とすることにより、第1板片111を全高に亘って同幅とした場合と比較して、第1板片111の打設箇所をある程度一定に保って金具自体の傾きを抑制することができる。さらに、嵌着部11をフランジ21に嵌着させた際に第1板片111の梁材2の弱軸方向(ウェブ22に対して直交する方向)に対する見付面積が従来の金具よりも小さくなるため、嵌着部111に回転モーメント力が作用しても従来の金具よりも金具自体の変形やねじれを抑えて内壁下地材30の建ち通りを安定させたものとすることができる。つまり、嵌着部11の形状に工夫を加えることによって従来の金具よりも金具自体の強度を向上させることができるので、嵌着部11の板厚をより薄くすることができ、経済的にも優れた金具とすることができる。
【0028】
このように下地材固定金具1に固定された内壁下地材30は、調整ボルト13を回動操作することによって内壁3の面外方向への出入を調整される。すなわち、図10に示すように、工具4を係止穴13aに差し込んで調整ボルト13を回動操作し、調整ボルト13に螺合した立上げ片12b、及び支持部12に嵌め込まれた内壁下地材30をボルト軸に沿って所望する位置にスライドさせることにより、面外方向への出入を調整することができる。
【0029】
そして、内壁下地材30の幅方向に沿って複数固定された下地材固定金具1をそれぞれ操作して内壁下地材30の面外方向への出入を調整した後、図1に示すように、内壁下地材30の下部の横枠材3aを床下地材F1にビス止め(図示しない)し、最後に、内壁下地材30のフランジ21と反対側の板面に内壁ボード材31を固定し、内壁3を完成させる。
【0030】
このように設置される下地材固定金具1は、図11に示すように、例えば、梁材2と、水平ブレース、柱材から突出するダイヤフラム、及び直交梁とを接合するためのガセットプレート23やボルト24、及びナット25などの障害物が梁材2のフランジ21に設置されていたとしても、僅かな隙間を活用して配置することができ、安定してフランジ21に固定することができる。また、天井懐が配管や配線の入り組む狭隘な空間であっても同様に本願の下地材固定金具1を有効に使用することができ、施工性を向上させることができる。
【0031】
また、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、H形鋼で形成された梁材に内壁を構成する内壁下地材を固定する際に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 下地材固定金具
11 嵌着部
111 第1板片
112 第2板片
112a (第2板片の)先端縁
11a 切込み溝
11b 端面
12 支持部
13 調整ボルト
13a 抜止め部
2 梁材
21 フランジ
22 ウェブ
3 内壁
30 内壁下地材
31 内壁ボード材
α 角度
W1 切込みの先端部分の幅
W2 切込みの基端部分の幅
t フランジの板厚
F1 床下地材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11