(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】防水装置、防水装置監視システム及び防水装置監視方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/44 20060101AFI20221003BHJP
E02B 7/50 20060101ALI20221003BHJP
E02B 7/20 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
E02B7/44
E02B7/50
E02B7/20 104
(21)【出願番号】P 2019108338
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502251108
【氏名又は名称】株式会社宇根鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100161300
【氏名又は名称】川角 栄二
(72)【発明者】
【氏名】宇根 利典
(72)【発明者】
【氏名】光見寺 進
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-159126(JP,A)
【文献】特開平10-311018(JP,A)
【文献】特開平11-200349(JP,A)
【文献】特開2001-172944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/44
E02B 7/50
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力により起立する防水板で水を堰き止める防水装置であって、
前記防水板の姿勢を検出する防水板姿勢検出手段と、
前記防水板が設置されている場所の水位を検出する水位検出手段と、
前記防水板に関する情報を処理するサーバーに、前記防水板姿勢検出手段で検出された前記姿勢に関する情報
及び前記水位検出手段で検出された前記水位に関する情報を
無線送信する送信手段と
、
前記送信手段に給電する電池とを備え、
前記送信手段は、前記防水板が所定の倒伏姿勢から所定の起立姿勢に転じた場合及び前記防水板が前記起立姿勢から前記倒伏姿勢に転じた場合のみ、前記サーバーに前記姿勢に関する情報を送信し、
前記送信手段は、前記防水板が設置されている場所の水位が所定の水位未満から前記所定の水位以上に転じた場合及び前記防水板が設置されている場所の水位が前記所定の水位以上から前記所定の水位未満に転じた場合のみ、前記サーバーに前記水位に関する情報を送信する
ことを特徴とする防水装置。
【請求項2】
前記防水板姿勢検出手段が、前記防水板と当該防水板が結合されている床面との距離に応じてON信号又はOFF信号を出す近接センサーからなり、
前記防水板が前記倒伏姿勢であれば前記近接センサーはOFF信号を出しており、
前記防水板が前記起立姿勢であれば前記近接センサーはON信号を出しており、
前記送信手段は、前記近接センサーの出力がOFF信号からON信号に転じた場合及びON信号からOFF信号に転じた場合のみ、前記姿勢に関する情報として前記近接センサーの出力を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の防水装置。
【請求項3】
前記水位検出手段が、水より比重の小さいフロートの位置に応じてON信号又はOFF信号を出す水位センサーからなり、
前記防水板が設置されている場所の水位が前記所定の水位未満であれば前記水位センサーはOFF信号を出しており、
前記防水板が設置されている場所の水位が前記所定の水位以上であれば前記水位センサーはON信号を出しており、
前記送信手段は、前記水位センサーの出力がOFF信号からON信号に転じた場合及びON信号からOFF信号に転じた場合のみ、前記水位に関する情報として前記水位センサーの出力を送信する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の防水装置。
【請求項4】
浮力により起立する防水板で水を堰き止める防水装置を監視する防水装置監視システムであって、
複数の前記防水装置と、
前記複数の前記防水装置に関する情報を処理するサーバーとを備え、
前記防水装置が、
前記防水板の姿勢を検出する防水板姿勢検出手段と、
前記防水板が設置されている場所の水位を検出する水位検出手段と、
前記防水板姿勢検出手段で検出された前記姿勢に関する情報
及び前記水位検出手段で検出された前記水位に関する情報を
無線送信する送信手段と
を有し、
前記サーバーが、
前記送信手段により送信された
前記情報を
通信網を介して受信する受信手段と、
前記姿勢に関する前記情報に基づき前記防水板が所定の起立姿勢又は所定の倒伏姿勢のいずれであるかを判定する起伏判定手段と、
前記水位に関する前記情報に基づき前記水位が所定の水位以上の高水位又は前記所定の水位未満の低水位のいずれであるかを判定する水位判定手段と、
前記起伏判定手段及び前記水位判定手段により得られた情報を
通信網を介してユーザーに報知する報知手段とを有する
ことを特徴とする防水装置監視システム。
【請求項5】
前記サーバーの前記報知手段が、それぞれの前記防水装置に関連付けられたユーザーに前記起伏判定手段及び前記水位判定手段により得られた前記情報を報知する
ことを特徴とする請求項
4に記載の防水装置監視システム。
【請求項6】
前記サーバーが、前記姿勢に関する前記情報及び前記水位に関する前記情報を記録する記録手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項
4又は5に記載の防水装置監視システム。
【請求項7】
浮力により起立する防水板で水を堰き止める防水装置を監視する防水装置監視方法であって、
前記防水板が設置されている場所の水位に関する情報をサーバーが受信して、前記水位が所定の水位以上の高水位又は前記所定の水位未満の低水位のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、
前記水位が前記高水位と判定された場合に、水位が上昇している旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップとを備え、
前記防水板の姿勢に関する情報を前記サーバーが受信して、前記防水板が所定の起立姿勢又は所定の倒伏姿勢のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、
前記水位が前記高水位と判定され且つ前記防水板が前記起立姿勢であると判定された後、所定の時間経過後も引き続き前記防水板が前記起立姿勢であると判定された場合に、防水板が起立したままである旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップをさらに備える
ことを特徴とす
る防水装置監視方法。
【請求項8】
浮力により起立する防水板で水を堰き止める防水装置を監視する防水装置監視方法であって、
前記防水板が設置されている場所の水位に関する情報をサーバーが受信して、前記水位が所定の水位以上の高水位又は前記所定の水位未満の低水位のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、
前記水位が前記高水位と判定された場合に、水位が上昇している旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップとを備え、
前記防水板の姿勢に関する情報を前記サーバーが受信して、前記防水板が所定の起立姿勢又は所定の倒伏姿勢のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、
前記水位が前記高水位と判定され且つ前記防水板が前記倒伏姿勢であると判定された後、所定の時間経過後も引き続き前記防水板が前記倒伏姿勢であると判定された場合に、高水位のままである旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップをさらに備える
ことを特徴とす
る防水装置監視方法。
【請求項9】
浮力により起立する防水板で水を堰き止める防水装置を監視する防水装置監視方法であって、
前記防水板が設置されている場所の水位に関する情報をサーバーが受信して、前記水位が所定の水位以上の高水位又は前記所定の水位未満の低水位のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、
前記水位が前記高水位と判定された場合に、水位が上昇している旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップとを備え、
前記防水板の姿勢に関する情報を前記サーバーが受信して、前記防水板が所定の起立姿勢又は所定の倒伏姿勢のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、
前記水位が前記低水位と判定され且つ前記防水板が前記起立姿勢であると判定された場合に、防水板が異常動作している旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップをさらに備える
ことを特徴とす
る防水装置監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮力により起立する防水板で水をせき止める防水装置、防水装置監視システム及び防水装置監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、台風や前線の活発化による大雨に加え、気候変動やヒートアイランド現象などの影響により、狭い範囲に短時間で猛烈に降る雨(いわゆるゲリラ豪雨)が、都市部を中心に各地で観測され、多くの浸水被害が報告されている。中でも、地下鉄・地下街・地下駐車場・地下エレベーター等の地下空間への出入口、及びマンション・オフィスビル・公共施設・ショッピングセンター等の生活空間への出入口は、特に被害が甚大となる。
【0003】
洪水時に雨水の侵入を防止するため、防水板が利用されている。防水板の一種として、水による浮力で通路を堰き止めるよう構成された防水板が知られている(
図8参照)。この防水板900は、平常時は、床面902に設けられた凹部902aに倒伏姿勢で収容されており、雨水により凹部902a内の水位が上昇すると、浮力により防水板900が図の矢印の方向に起立して、これにより通路901(床面902、側壁903及び側壁904で区画されている)を堰き止める。この防水板900により、集中豪雨などで水位が上昇しても、出入口からの浸水を防ぐことができる。
【0004】
この防水板900は、水位が上昇すると自動的に起立して通路901を堰き止める。そして水位が下がると、防水板900は自動的に倒伏して凹部902aに収容される。この間、人は何らの操作をする必要がない。そのため、ユーザーは、防水板が作動したのかしなかったのか、作動したとすればいつ作動したのかを、知ることができない。もしも監視カメラを設置して防水板の作動を監視するとすれば、電源を設置する必要が生じる上に消費電力が多いため、高コストとなる。
【0005】
また、防水板は主に集中豪雨が発生したときに作動するものであり、そのため実際に防水板が作動する頻度は必ずしも高くない。そのため、防水板に関するメンテナンスは疎かになりがちである。もしも防水板のメンテナンスに不備があれば、いざというときに起動しないおそれがある。防水板が設置されている場所の排水状態に不備がある場合は、洪水が発生する程の雨量でなくとも、防水板が設置されている場所だけ水位が上昇し、それにより、不必要に防水板が起立することも起こり得る。そのため、防水板のユーザーにメンテナンスを促すために、防水板の情報を取得することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題点を鑑みて、本発明は、浮力により起立する防水板に関する情報を取得することができる防水装置、防水装置監視システム及び防水装置監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、浮力により起立する防水板で水を堰き止める防水装置であって、前記防水板の姿勢を検出する防水板姿勢検出手段と、前記防水板が設置されている場所の水位を検出する水位検出手段と、前記防水板に関する情報を処理するサーバーに、前記防水板姿勢検出手段で検出された前記姿勢に関する情報及び前記水位検出手段で検出された前記水位に関する情報を無線送信する送信手段と、前記送信手段に給電する電池とを備え、前記送信手段は、前記防水板が所定の倒伏姿勢から所定の起立姿勢に転じた場合及び前記防水板が前記起立姿勢から前記倒伏姿勢に転じた場合のみ、前記サーバーに前記姿勢に関する情報を送信し、前記送信手段は、前記防水板が設置されている場所の水位が所定の水位未満から前記所定の水位以上に転じた場合及び前記防水板が設置されている場所の水位が前記所定の水位以上から前記所定の水位未満に転じた場合のみ、前記サーバーに前記水位に関する情報を送信することを特徴とする防水装置である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、簡易な構成で防水板の姿勢に関する情報及び防水板が設置されている場所の水位に関する情報を遠隔で取得することが可能であり、これらの情報を取得するための消費電力が少なく電池で給電される防水装置を提供できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記防水板姿勢検出手段が、前記防水板と当該防水板が結合されている床面との距離に応じてON信号又はOFF信号を出す近接センサーからなり、前記防水板が前記倒伏姿勢であれば前記近接センサーはOFF信号を出しており、前記防水板が前記起立姿勢であれば前記近接センサーはON信号を出しており、前記送信手段は、前記近接センサーの出力がOFF信号からON信号に転じた場合及びON信号からOFF信号に転じた場合のみ、前記姿勢に関する情報として前記近接センサーの出力を送信することを特徴とする請求項1に記載の防水装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、防水板姿勢検出手段を近接センサーで構成することができ、送信手段が送信する情報量が少ない防水装置を提供できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記水位検出手段が、水より比重の小さいフロートの位置に応じてON信号又はOFF信号を出す水位センサーからなり、前記防水板が設置されている場所の水位が前記所定の水位未満であれば前記水位センサーはOFF信号を出しており、前記防水板が設置されている場所の水位が前記所定の水位以上であれば前記水位センサーはON信号を出しており、前記送信手段は、前記水位センサーの出力がOFF信号からON信号に転じた場合及びON信号からOFF信号に転じた場合のみ、前記水位に関する情報として前記水位センサーの出力を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の防水装置である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、水位検出手段をフロートを有する水位センサーで構成することができ、送信手段が送信する情報量が少ない防水装置を提供できる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、浮力により起立する防水板で水を堰き止める防水装置を監視する防水装置監視システムであって、複数の前記防水装置と、前記複数の前記防水装置に関する情報を処理するサーバーとを備え、前記防水装置が、前記防水板の姿勢を検出する防水板姿勢検出手段と、前記防水板が設置されている場所の水位を検出する水位検出手段と、前記防水板姿勢検出手段で検出された前記姿勢に関する情報及び前記水位検出手段で検出された前記水位に関する情報を無線送信する送信手段とを有し、前記サーバーが、前記送信手段により送信された前記情報を通信網を介して受信する受信手段と、前記姿勢に関する前記情報に基づき前記防水板が所定の起立姿勢又は所定の倒伏姿勢のいずれであるかを判定する起伏判定手段と、前記水位に関する前記情報に基づき前記水位が所定の水位以上の高水位又は前記所定の水位未満の低水位のいずれであるかを判定する水位判定手段と、前記起伏判定手段及び前記水位判定手段により得られた情報を通信網を介してユーザーに報知する報知手段とを有することを特徴とする防水装置監視システムである。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、防水板に関する情報を遠隔でユーザーに報知することが可能であり、一つのサーバーで複数の防水装置を監視可能な防水装置監視システムを提供できる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記サーバーの前記報知手段が、それぞれの前記防水装置に関連付けられたユーザーに前記起伏判定手段及び前記水位判定手段により得られた前記情報を報知することを特徴とする請求項4に記載の防水装置監視システムである。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、防水板に関する情報をそれぞれの防水装置に関連付けられたユーザーに報知することが可能な防水装置監視システムを提供できる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、前記サーバーが、前記姿勢に関する情報及び前記水位に関する情報を記録する記録手段をさらに有することを特徴とする請求項4又は5に記載の防水装置監視システムである。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、取得した防水板に関する情報を記録することが可能な防水装置監視システムを提供することができる。
【0028】
請求項7に記載の発明は、浮力により起立する防水板で水を堰き止める防水装置を監視する防水装置監視方法であって、前記防水板が設置されている場所の水位に関する情報をサーバーが受信して、前記水位が所定の水位以上の高水位又は前記所定の水位未満の低水位のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、前記水位が前記高水位と判定された場合に、水位が上昇している旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップとを備え、前記防水板の姿勢に関する情報を前記サーバーが受信して、前記防水板が所定の起立姿勢又は所定の倒伏姿勢のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、前記水位が前記高水位と判定され且つ前記防水板が前記起立姿勢であると判定された後、所定の時間経過後も引き続き前記防水板が前記起立姿勢であると判定された場合に、防水板が起立したままである旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップをさらに備えることを特徴とする防水装置監視方法である。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、長時間防水板が起立したままである場合、その旨をユーザーに報知し、防水板にトラブルが発生している可能性を認識させる防水板監視方法を提供できる。
【0030】
請求項8に記載の発明は、浮力により起立する防水板で水を堰き止める防水装置を監視する防水装置監視方法であって、前記防水板が設置されている場所の水位に関する情報をサーバーが受信して、前記水位が所定の水位以上の高水位又は前記所定の水位未満の低水位のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、前記水位が前記高水位と判定された場合に、水位が上昇している旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップとを備え、前記防水板の姿勢に関する情報を前記サーバーが受信して、前記防水板が所定の起立姿勢又は所定の倒伏姿勢のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、前記水位が前記高水位と判定され且つ前記防水板が前記倒伏姿勢であると判定された後、所定の時間経過後も引き続き前記防水板が前記倒伏姿勢であると判定された場合に、高水位のままである旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップをさらに備えることを特徴とする防水装置監視方法である。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、防水板が設置されている場所の水位が長時間高水位である場合、その旨をユーザーに報知し、排水に異常が発生している可能性を認識させる防水板監視方法を提供できる。
【0032】
請求項9に記載の発明は、浮力により起立する防水板で水を堰き止める防水装置を監視する防水装置監視方法であって、前記防水板が設置されている場所の水位に関する情報をサーバーが受信して、前記水位が所定の水位以上の高水位又は前記所定の水位未満の低水位のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、前記水位が前記高水位と判定された場合に、水位が上昇している旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップとを備え、前記防水板の姿勢に関する情報を前記サーバーが受信して、前記防水板が所定の起立姿勢又は所定の倒伏姿勢のいずれであるかを前記サーバーが判定するステップと、前記水位が前記低水位と判定され且つ前記防水板が前記起立姿勢であると判定された場合に、防水板が異常動作している旨を前記サーバーがユーザーに報知するステップをさらに備えることを特徴とする防水装置監視方法である。
【0033】
請求項9に記載の発明によれば、水位が上昇していないにもかかわらず防水板が起立している場合に防水板が異常動作している可能性を認識させる防水装置監視方法を提供できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、浮力により起立する防水板に関する情報を、簡易な構成で、取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態に係る防水装置を示す図であって、防水板が倒伏している状態を一部を破断して示す平面図である。
【
図2】
図1におけるA-A断面を示す断面図である。
【
図3】
図2におけるB部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る防水装置監視システムの概略図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る防水装置監視方法の処理の流れを示すフローチャートであって、ステップS01からステップS07までを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る防水装置監視方法の処理の流れを示すフローチャートであって、ステップS08からステップS16までを示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態に係る防水装置監視方法の処理の流れを示すフローチャートであって、ステップS17からステップS23までを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明を適用した防水装置、防水装置監視システム及び防水装置監視方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0037】
(防水装置の実施形態)
本発明に係る防水装置の実施形態について、
図1~3に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る防水装置を示す図であって、防水板が倒伏している状態を一部を破断して示す平面図である。
図2は、
図1におけるA-A断面を示す断面図であり、
図3は、
図2におけるB部を拡大して示す拡大断面図である。なお、
図2において、防水板が起立している状態を二点鎖線で示している。
【0038】
まず、本実施形態に係る防水装置10の構成について
図1,2に基づき説明する。防水装置10は通路90に設置されている。通路90は、床面91及び側壁93,94で区画されており、
図1,2における右方に出入口(図示省略)が存在する。洪水が発生した場合、水は通路90を矢印で示す方向に流れる。
【0039】
防水装置10は主要な構成要素として、防水板11、蝶番12、近接センサー13、水位センサー14、制御ボックス15及びアンテナ16を備えている。防水板11は、
図1に示すように平面視で矩形に構成されており、蝶番12により床面91と結合されている。防水板11の比重は水の比重より小さく設定されており、洪水が発生して通路90の水位が上昇すると、防水板11は浮力により起立する(
図2の二点鎖線部参照)。防水板11と床面91及び側壁93,94との間は水密となっており、起立している状態では防水板11は通路90を堰き止め、防水板11より右側(下流側)に水が流入するのを防止する。
【0040】
防水板11は、先述の通り蝶番12により床面91と結合されている。蝶番12が有する回転軸12aは、防水板11の一辺に沿って配置されており、防水板11は回転軸12aを中心に回転可能となっている。蝶番12は、回転軸12aが床面91に対して平行となるよう配置されている。
図1,2に示すように、側壁93,94にはそれぞれストッパー93a,94aが突出するよう設けられており、
図2において時計回りに回転する防水板11は、ストッパー93a,94aに当たることで、時計回りの回転が制限される。なお、防水板11の回転を制限するには任意の手段を適用することができる。
【0041】
床面91には凹部91aが形成されており、防水板11が倒伏している状態では、
図2に示すように、防水板11は凹部91aに収容される。このとき、防水板11の下面が凹部91a内の支持面91bに接地しつつ、防水板11の上面は床面91と同じ高さとなる。
【0042】
凹部91aにはグレーチング95が設けられている。グレーチング95は、その上面が床面91と同じ高さになるよう設置されている。降雨時は、雨水は床面91からグレーチング95を通り、凹部91aに溜まる。また凹部91aの内部には排水口91cが設けられており、排水口91cは外部に通じる排水管91dに繋がっている。凹部91a内の雨水は、排水口91cから排水管91dを通って、外部に排出される。
【0043】
凹部91aに流入する雨水の量が排水口91cによる排水能力を超えると、凹部91aに雨水が溜まり始める。凹部91a内の水位が上昇すると、凹部91a内で倒伏している状態の防水板11には浮力が生じ、起立動作を開始する。すなわち、防水板11を収容する凹部91aが床面91に設けられていることにより、洪水時には、防水板11は早期に起立動作を開始することになる。起立動作を開始した後、防水板11は、水位が上昇するのに従って回転軸12a周りに、
図2における時計方向に回転してゆき、防水板11がストッパー93a,94aに当たると、回転動作が終了する。
【0044】
次に、防水板11に関する情報を取得するための要素である、近接センサー13、水位センサー14、制御ボックス15及びアンテナ16について、
図1~3に基づいて説明する。
図3に示すように、近接センサー13は、磁気を検知する検知部13aとマグネット13bとから構成される。検知部13aは、凹部91a内に固定された構造物に結合されている。マグネット13bは防水板11に結合されている。防水板11が倒伏している姿勢で、検知部13aとマグネット13bとは対向するよう配置されている。
【0045】
検知部13aはケーブルで制御ボックス15に接続されている。近接センサー13は、マグネット13bが検知部13aに対して所定の距離より近づいている場合には、OFF信号を出し、マグネット13bが検知部13aから所定の距離以上離れている場合には、ON信号を出す。
【0046】
すなわち防水板11が、
図2の実線で示す倒伏姿勢から、所定の角度以上起き上がっている場合には、近接センサー13からON信号が出され、起き上がっている角度が所定の角度より小さければ、OFF信号が出される。このように、近接センサー13は、防水板11の姿勢を検出する防水板姿勢検出手段として機能する。
【0047】
防水板11に関する情報を処理するにあたって、近接センサー13がOFF信号を出している場合には防水板11が倒伏姿勢であるとして、近接センサー13がON信号を出している場合には防水板11が起立姿勢であるとして取り扱うことができる。なお倒伏姿勢と起立姿勢の境界は、近接センサー13の感度や設置位置によって任意に設定することができる。
【0048】
水位センサー14は
図3に示すように、グレーチング95の下方に配置されており、凹部91a内に固定された構造物に結合されている。水位センサー14はケーブルを介して制御ボックス15に信号を出力するよう構成されている。水位センサー14は、水より比重の小さいフロート14aが上下に移動可能に構成されている。水位センサー14は、フロート14aが上端14bに到達した場合にON信号を出し、フロート14aが上端14bに到達していない場合にOFF信号を出す。したがって、水位センサー14は凹部91a内の水位を検出する水位検出手段として機能し、所定の水位以上の場合にON信号を出し、所定の水位未満の場合はOFF信号を出す。
【0049】
防水板11に関する情報を処理するにあたって、水位センサー14がOFF信号を出している場合には凹部91a内の水位は低水位であるとして、水位センサー14がON信号を出している場合には凹部91a内の水位は高水位であるとして取り扱うことができる。
【0050】
なお、低水位と高水位とを区分けする閾値は、水位センサー14の設置位置(上端14bの位置)によって任意に設定可能である。浮力により防水板11が起立し始める水位を閾値とした場合、凹部91a内の水位が上昇していくと、近接センサー13と水位センサー14は、ほぼ同時にOFF信号からON信号に転じることになる。凹部91a内の水位が低下していくと、近接センサー13と水位センサー14は、ほぼ同時にON信号からOFF信号に転じることになる。
【0051】
浮力により防水板11が起立し始める水位よりも低い水位を閾値とした場合、凹部91a内の水位が上昇していくと、水位センサー14が先にOFF信号からON信号に転じ、その後防水板11が起立し始め近接センサー13がOFF信号からON信号に転じることになる。凹部91a内の水位が低下していくと、防水板11が先に倒伏姿勢となり近接センサー13がON信号からOFF信号に転じ、その後水位センサー14がON信号からOFF信号に転じることになる。本実施形態では、浮力により防水板11が起立し始める水位よりも低い水位が、低水位と高水位とを区分けする閾値となるよう、水位センサー14を配置している。
【0052】
図3に示すように、制御ボックス15はグレーチング95の下方に配置されており、凹部91a内に固定された構造物に結合されている。制御ボックス15の内部には、制御基板(図示省略)及び電池(図示省略)が収容されている。制御ボックス15の制御基板には、近接センサー13、水位センサー14及びアンテナ16が接続されている。制御ボックス15は、近接センサー13及び水位センサー14の信号を取得して、アンテナ16を介して外部に無線送信する。制御ボックス15に収容されている電池は、制御基板及びこれに接続された機器に給電する。また制御ボックス15は防水が施されており、凹部91aが浸水した場合でも正常に作動するよう構成されている。
【0053】
アンテナ16は、
図1~3に示すように薄い略矩形形状を有しており、側壁93に設置されている。アンテナ16は、制御ボックス15に接続されており、近接センサー13及び水位センサー14により取得された防水板11に関する情報を、基地局に向けて無線送信する。後述するように、基地局に送られた情報は通信網を経由してサーバーに送信され、そのサーバーで防水板11に関する情報が処理される。すなわち、アンテナ16は、防水板11の情報をサーバーに送信する送信手段として機能する。
【0054】
制御ボックス15及びアンテナ16は、近接センサー13及び水位センサー14それぞれが、OFF信号からON信号に転じた場合及びON信号からOFF信号に転じた場合にのみ、基地局に無線送信するように構成されている。すなわち、防水板11の姿勢に関しては、倒伏姿勢から起立姿勢に転じた場合及び起立姿勢から倒伏姿勢に転じた場合のみ、その情報が基地局に送信される。防水板11が設置されている場所の水位に関しては、低水位から高水位に転じた場合及び高水位から低水位に転じた場合のみ、その情報が基地局に送信される。このように構成することより、アンテナ16が電波を送出する機会が少なくなり、消費電力が抑えられるため、電池の寿命が延び、長期間電池を交換することなく防水板に関する情報を送信することが可能となる。また送信される情報量も少ないため、低速な通信回路を使用しても十分に送信可能となる。
【0055】
なお図に示すアンテナ16は、凹部91aの外部に設置されているが、基地局に電波が到達できるよう、任意の場所に設置することができる。
【0056】
本実施形態の防水装置10を用いることにより、防水板11に関する情報を取得することができる。また、取得した防水板11に関する情報に応じて、適宜な処理を行うことができる。また、防水板11を遠隔で監視することができる。
【0057】
(防水装置監視システムの実施形態)
次に、本発明に係る防水装置監視システムの実施形態について、
図4に基づき説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る防水装置監視システムの概略図である。防水装置監視システム100は、先述の防水装置10を監視するシステムである。なお本実施形態に係る防水装置監視システム100を説明するために、先述の防水装置10の説明で用いた
図1~3に示す符号を適宜使用する。
【0058】
図4に示すように、防水装置監視システム100は主要な構成要素として、先述した構成の防水装置10、基地局20、通信網30、サーバー40、基地局50、携帯端末60及び固定端末70を備えている。基地局20は、防水装置10(アンテナ16)が送出する信号を受信可能に構成されており、通信網30に接続されている。サーバー40は通信網30に接続されて情報を送受信可能になっており、防水板に関する情報を処理する。基地局50は、携帯端末60と無線通信可能に構成されており、通信網30に接続されている。固定端末70は通信網30に接続されている。ここで携帯端末60及び固定端末70は、防水板に関する情報を必要とするユーザーが有する端末である。なお、ユーザーには、防水板が設置された施設の所有者や管理者だけでなく、防水板の管理者や代理店、製造者も含まれる。
【0059】
サーバー40は、通信網30に接続された通信部41、通信部41に接続された制御部42及び制御部42に接続された記憶部43を有している。制御部42は、受信した防水板に関する情報を処理するとともに、サーバー40全体の動作を制御する。通信部41は防水板に関する情報を受信すると共に、制御部42の制御により、携帯端末60及び/又は固定端末70に情報を送信する。すなわち、通信部41は防水装置10から送信された情報を受信する受信手段として機能し、通信部41及び制御部42は、防水板に関する情報をユーザーに報知する報知手段として機能する。記憶部43は、制御部42の制御により、防水板に関する情報を記録する。すなわち記憶部43は防水板に関する情報を記録する記録手段として機能する。
【0060】
次に、この防水装置監視システム100における情報のやり取り及び情報処理について説明する。
【0061】
(防水板の姿勢の監視)
防水装置10は、防水板11に関する情報として、防水板11の姿勢を先述の近接センサー13により取得し、アンテナ16を介してサーバー40に送信する。サーバー40の通信部41は、防水板の情報を受信し、制御部42は、近接センサー13の信号に基づき、防水板11が倒伏姿勢又は起立姿勢のいずれであるかを判定する。すなわち、制御部42は起伏判定手段として機能する。先述の通り、防水板11が倒伏姿勢から所定の角度以上起き上がっている場合には、近接センサー13はON信号を送出し、起き上がっている角度が所定の角度より小さければOFF信号を送出するので、制御部42は、近接センサー13がON信号を出していれば起立姿勢と判定し、OFF信号であれば倒伏姿勢と判定する。
【0062】
防水板11が起立姿勢であると判定された場合、制御部42は、防水板が起立している旨のメッセージを、通信部41から通信網30を介して、携帯端末60及び/又は固定端末70に送信する。これによりユーザーは、防水板11が起立していることを認知することができる。なおこのメッセージは、電子メールやプッシュ送信など任意の形態を採用することができる。
【0063】
また、制御部42は、判定された防水板11の姿勢を記憶部43に記録する。記憶される情報として、防水板の個体毎に付与された識別子、倒伏姿勢から起立姿勢へと転じた日時、起立姿勢から倒伏姿勢へと転じた日時、ユーザーへメッセージを送信した日時、メッセージの内容等が、好適に選択される。
【0064】
なお、先述の通り、防水装置10の近接センサー13は、OFF信号からON信号に転じた場合及びON信号からOFF信号に転じた場合にのみ、サーバー40に信号を送信する。そのため制御部42は、近接センサー13がOFF信号からON信号に転じたこと受信した場合に、防水板が起立姿勢であると判定すればよく、その後、近接センサー13がON信号からOFF信号に転じたこと受信した場合に、防水板が倒伏姿勢であると判定すればよい。
【0065】
(防水板が設置されている場所の水位の監視)
防水装置10は、防水板に関する情報として、防水板が設置されている場所の水位を先述の水位センサー14により取得し、アンテナ16を介してサーバー40に送信する。サーバー40の通信部41は、防水板の情報を受信し、制御部42は、水位センサー14の信号に基づき、防水板が設置されている場所の水位が、所定の水位以上の高水位であるのか、所定の水位未満の低水位であるのかを判定する。先述の通り、水位センサー14は所定の水位以上の場合にはON信号を送出し、所定の水位未満の場合はOFF信号を送出するので、制御部42は、水位センサー14がON信号を出していれば高水位と判定し、OFF信号であれば低水位と判定する。
【0066】
防水板が設置されている場所の水位が高水位と判定された場合、制御部42は、水位が上昇している旨のメッセージを、通信部41から通信網30を介して、携帯端末60及び/又は固定端末70に送信する。これによりユーザーは、防水板が設置されている場所の水位が上昇していることを認知することができる。なおこのメッセージは、電子メールやプッシュ送信など任意の形態を採用することができる。
【0067】
また、制御部42は、判定された、防水板が設置されている場所の水位を、記憶部43に記録する。記録される情報として、防水板の個体毎に付与された識別子、低水位から高水位へと転じた日時、高水位から低水位へと転じた日時、ユーザーへメッセージを送信した日時、メッセージの内容等が、好適に選択される。
【0068】
なお、先述の通り、防水装置10の水位センサー14は、OFF信号からON信号に転じた場合及びON信号からOFF信号に転じた場合にのみ、サーバー40に信号を送信する。そのため制御部42は、水位センサー14がOFF信号からON信号に転じたこと受信した場合に、高水位であると判定すればよく、その後、水位センサー14がON信号からOFF信号に転じたこと受信した場合に、低水位であると判定すればよい。
【0069】
(防水装置の異常の報知)
防水板は、設置場所での水位の上昇に伴って起立姿勢に転じるのが正常な動作である。もしも水位が上昇することなく防水板が起立するのであれば、防水装置に何らかの異常(何者かが防水板を起こしたなど)が発生していることになる。この防水装置監視システム100では、異常をユーザーに報知することができる。
【0070】
すなわち、制御部42により、防水板の設置場所の水位が低水位と判定されている状態(水位センサー14がOFF信号を出している状態)において、防水板の姿勢が起立姿勢であると判定された場合(近接センサー13がOFF信号からON信号に転じた場合)、制御部42は、防水板が異常動作している旨のメッセージを、通信部41から通信網30を介して、携帯端末60及び/又は固定端末70に送信する。これによりユーザーは、防水板が異常動作していることを認知することができる。なおこのメッセージは、電子メールやプッシュ送信など任意の形態を採用することができる。
【0071】
(防水装置監視方法)
次に本発明に係る防水装置監視方法の実施形態について、
図5~7に基づき説明する。
図5~7は本実施形態に係る防水装置監視方法の処理の流れを示すフローチャートである。なお本実施形態に係る防水装置監視方法を説明するために、先述の防水装置10及び防水装置監視システム100の説明で用いた
図1~4に示す符号を適宜使用する。
【0072】
まずステップS01で監視処理が開始し、ステップS02に移る。ステップS02では、制御部42が、防水板の設置場所における水位を判定する。このステップでは、水位センサー14についてOFF信号からON信号に転じたことをサーバー40が受信した場合に、S02,ONとなる。水位センサー14についてOFF信号からON信号に転じたことをサーバー40が受信しない限りS02,OFFである。
【0073】
S02,OFFの場合、ステップS03に移る。ステップS03では、制御部42が防水板の姿勢を判定する。このステップでは、近接センサー13についてOFF信号からON信号に転じたことをサーバー40が受信した場合に、S03,ONとなる。近接センサー13についてOFF信号からON信号に転じたことをサーバー40が受信しない限りS03,OFFである。
【0074】
S03,OFFの場合とは、水位が上昇しておらず防水板が起立していない、正常な状態である。この場合ステップS04に移る。このステップS04では引き続き監視を続けるため、ステップS01に戻り引き続き監視処理を行う。
【0075】
S03,ONの場合とは、水位が上昇していないにもかかわらず防水板が起立しているという状態で、異常な状態である。この場合ステップS05に移る。ステップS05では、制御部42は、防水板が異常動作している旨のメッセージを、通信部41から通信網30を介して、携帯端末60及び/又は固定端末70に送信する。これによりユーザーは、防水板が異常動作していることを認知することができる。
【0076】
ステップS02,ONの場合、すなわち水位が上昇して高水位となった場合、ステップS06に移る。ステップS06では、制御部42は、記憶部43に高水位に転じたことを記録する。そしてステップS07に移る。
【0077】
ステップS07では、制御部42は、水位が上昇している旨のメッセージを、通信部41から通信網30を介して、携帯端末60及び/又は固定端末70に送信する。これによりユーザーは、防水板が設置されている場所の水位が上昇していることを認知することができる。ステップS07の処理の後はステップS08に移る。
【0078】
ステップS08では、制御部42が防水板の姿勢を判定する。このステップでは、近接センサー13についてOFF信号からON信号に転じたことをサーバー40が受信した場合に、S08,ONとなる。近接センサー13についてOFF信号からON信号に転じたことをサーバー40が受信しない限りS08,OFFである。
【0079】
S08,ONの場合とは、水位が上昇し、その後防水板が起立した状態であり、この場合ステップS09に移る。S08,OFFの場合はステップS17に移る。
【0080】
ステップS09では、制御部42は、記憶部43に防水板が起立姿勢に転じたことを記録する。そしてステップS10に移る。ステップS10では、制御部42は、水位の上昇に伴い防水板が起立する旨のメッセージを、通信部41から通信網30を介して、携帯端末60及び/又は固定端末70に送信する。これによりユーザーは、防水板が設置されている場所の水位が上昇して防水板が起立することを認知することができる。ステップS10の後はステップS11に移る。
【0081】
ステップS11では、制御部42が防水板の姿勢を判定する。このステップでは、近接センサー13についてON信号からOFF信号に転じたことをサーバー40が受信した場合に、S11,OFFとなる。近接センサー13についてON信号からOFF信号に転じたことをサーバー40が受信しない限りS11,ONである。
【0082】
S11,ONの場合とは、水位が高水位のままであり且つ防水板が起立姿勢のままの状態であり、この場合ステップS12に移る。ステップS12では、所定の時間(X時間)経過するのを待つ。この時間は任意に設定できる。そしてステップS13に移る。ステップS13では、制御部42は、次のステップでユーザーにメッセージを送信すること及びその送信内容を、記憶部43に記録する。そしてステップS14に移る。ステップS14では、制御部42は、X時間防水板が起立したままである旨のメッセージを、通信部41から通信網30を介して、携帯端末60及び/又は固定端末70に送信する。これによりユーザーは、豪雨が長時間続き水位が低下せず防水板が起立したままである可能性や、防水板に異物が挟まって倒伏できないなどトラブルが発生している可能性を認識することができる。ステップS14の処理の後はステップS11に戻る。
【0083】
ステップS11,OFFの場合、すなわち防水板が倒伏した場合、ステップS15に移る。ステップS15では、制御部42は、記憶部43に防水板が倒伏姿勢に転じたことを記録する。そしてステップS16に移る。ステップS16では、制御部42は、防水板が倒伏した旨のメッセージを、通信部41から通信網30を介して、携帯端末60及び/又は固定端末70に送信する。これによりユーザーは、防水板が正常に倒伏したことを認知することができる。ステップS16の処理の後はステップS17に移る。
【0084】
ステップS17では、制御部42が防水板の設置場所における水位を判定する。このステップでは、水位センサー14についてON信号からOFF信号に転じたことをサーバー40が受信した場合に、S17,OFFとなる。水位センサー14についてON信号からOFF信号に転じたことをサーバー40が受信しない限りS17,ONである。
【0085】
S17,ONの場合とは、防水板が倒伏姿勢であり水位が高水位のままである状態であり、この場合ステップS18に移る。ステップS18では、所定の時間(Y時間)経過するのを待つ。この時間は任意に設定できる。そしてステップS19に移る。ステップS19では、制御部42は、次のステップでユーザーにメッセージを送信すること及びその送信内容を、記憶部43に記録する。そしてステップS20に移る。ステップS20では、制御部42は、Y時間高水位のままである旨のメッセージを、通信部41から通信網30を介して、携帯端末60及び/又は固定端末70に送信する。これによりユーザーは、防水板の設置場所での排水に異常が発生している可能性を認識することができ、排水口91c(
図1参照)の確認が促されることになる。ステップS20の処理の後はステップS17に戻る。
【0086】
ステップS17,OFFの場合、すなわち防水板が倒伏姿勢であり水位が低水位となった場合、ステップS21に移る。ステップS21では、制御部42は、記憶部43に水位が低水位に転じたことを記録する。そしてステップS22に移る。ステップS22では、制御部42は、水位が低下した旨のメッセージを、通信部41から通信網30を介して、携帯端末60及び/又は固定端末70に送信する。これによりユーザーは、防水板の設置場所の水位が正常に低下したことを認知することができる。ステップS22の処理の後はステップS23に移り一連の処理が終わり、再度監視開始のステップS01に戻る。
【0087】
(防水装置の変形例)
次に、防水装置の変形例について、
図1~3に示す符号を使用して説明する。先述の実施形態では、防水板の姿勢を検出する防水板姿勢検出手段として、磁気を利用する非接触式の近接センサー13を使用していたが、接触式のセンサーを防水板姿勢検出手段として使用することも可能である。また先述の実施形態では、防水板姿勢検出手段はON又はOFFの二値を出力する近接センサー13であったが、これに代えて、防水板の起き上がった角度を検知して数値として出力する角度センサーを使用してもよい。角度センサーで検出した角度をサーバー40に送信し、制御部42が倒伏姿勢であるか起立姿勢であるかを判定するよう構成することもできる。また記憶部43に、角度を数値として継続的に記録するよう構成することもできる。
【0088】
先述の実施形態では、防水板が設置されている凹部91aの水位を検出する水位検出手段として水位センサー14を使用していたが、これに代えて、水位を数値として取得するセンサーを使用してもよい。検出した水位をサーバー40に送信し、制御部42が低水位であるか高水位であるかを判定することもできる。また記憶部43に、水位を数値として継続的に記録するよう構成することもできる。
【0089】
先述の実施形態では、水位センサー14がグレーチング95の下に配置されていたが、配置する場所はこれに限られない。水位センサー14の上にグレーチング95が位置するのを避けるようにして、上端14bが、倒伏姿勢の防水板11の上面及び床面91とほぼ同じ高さとなるよう、水位センサー14を配置することも可能である。このように配置すると、水位が防水板11の上面及び床面91の高さまで上昇した場合にON信号が出され、高水位であると判定されることになる。
【0090】
先述の実施形態では、制御ボックス15内に収容された電池が電力を供給するよう構成されているが、外部電源から給電するよう構成することも可能である。またその場合、近接センサー13及び水位センサー14それぞれが、OFF信号からON信号及びON信号からOFF信号に転じた場合にのみサーバー40に送信する構成に代えて、近接センサー13及び水位センサー14が検出した値を高頻度(例えば一定時間間隔)に送信するよう構成することも可能である。
【0091】
(防水装置監視システムの変形例)
次に、防水装置監視システムの変形例について、
図1~4に示す符号を使用して説明する。先述の実施形態に係る防水装置監視システム100では、一つの防水装置10を監視するシステムとして構成されていたが、一つのサーバー40を用いて複数の防水装置を監視するシステムとすることも勿論可能である。そして、それぞれの防水装置10に関連付けられたユーザーの携帯端末60及び/又は固定端末70にメッセージを送信するよう構成することもできる。これにより、一つのサーバー40で複数の防水装置を監視することができる。また、各地に設置された複数の防水板に関する情報を、一か所で収集することが可能となる。このように収集された情報は、防災・減災に有効に活用される。
【0092】
(防水装置監視方法の変形例)
次に、防水装置監視方法の変形例について、
図1~7に示す符号を使用して説明する。先述の実施形態に係る防水装置監視方法では、ステップS01で監視処理が開始した後ステップS02に移り水位を判定するが、ステップS02に移る前に、防水装置10の制御ボックス15が正常に動いていることを示す信号を定期的に(例えば一日一回)サーバー40に送信するよう構成することができる。サーバー40はこの信号を受信しなかった場合に、ユーザーに防水装置10が正常に動いていない旨のメッセージを送信することができる。これによりユーザーは、制御ボックス15の電池が切れている可能性や、アンテナ16を介しての通信不良の可能性を認識することができる。
【0093】
また、サーバー40の制御部42がユーザーの属性(施設の所有者、防水板の代理店など)に応じて、送信するメッセージを変えることも可能である。また送信先のユーザーを選択することも可能である。メッセージの変更及び送信先ユーザーの選択は、S05,S07,S10,S14,S16,S20,S22いずれのステップにおいても適用できる。
【0094】
また、防水装置10は先述した通り、浮力により防水板11が起立し始める水位よりも低い水位が、低水位と高水位とを区分けする閾値となるよう、水位センサー14を配置しているが、浮力により防水板11が起立し始める水位が、低水位と高水位とを区分けする閾値となるよう、水位センサー14を配置することも可能である。その構成において、防水板11が正常に作動するのであれば、凹部91aの水位が上昇していくと、近接センサー13と水位センサー14は、ほぼ同時にOFF信号からON信号に転じることになる。
【0095】
その構成において、もしも水位センサー14のみがOFF信号からON信号に転じて、近接センサー13はOFF信号のままであるならば、防水板11が起立するはずの水位まで上昇しているにもかかわらず、防水板11は起立していないことを示唆する。その場合、出入口に雨水が流入している可能性が高まる。そこで防水装置監視方法の変形例として、水位センサー14のみがOFF信号からON信号に転じて近接センサー13はOFF信号のままである場合には、何らかの原因で防水板が作動していない旨をユーザーに報知するよう構成することができる。
【0096】
また、先述の防水装置監視方法では、ステップS08,ONからステップS11,OFFに至るまで、すなわち近接センサー13がON信号を出しており防水板11が起立している間は、水位センサー14はON信号のまま、すなわち高水位となっているが、この間に水位センサー14がOFF信号に転じた場合、すなわち防水板11が起立したままであるのに水位が低下した場合、水位が低下したにもかかわらず防水板が倒伏しない旨のメッセージを、ユーザーに送信するよう構成することも可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 防水装置
100 防水装置監視システム
11 防水板
12 蝶番
12a 回転軸
13 近接センサー(防水板姿勢検出手段)
13a 検知部
13b マグネット
14 水位センサー(水位検出手段)
14a フロート
14b 上端
15 制御ボックス
16 アンテナ(送信手段)
20 基地局
30 通信網
40 サーバー
41 通信部(受信手段)
42 制御部(水位判定手段、防水板姿勢判定手段、起伏判定手段、報知手段)
43 記憶部(記録手段)
50 基地局
60 携帯端末
70 固定端末
90 通路
91 床面
91a 凹部
91b 支持面
91c 排水口
91d 排水管
93 側壁
93a ストッパー
94 側壁
94a ストッパー
95 グレーチング