(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】トレーニングファントム
(51)【国際特許分類】
G09B 23/36 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
G09B23/36
(21)【出願番号】P 2020092987
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2022-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520188329
【氏名又は名称】有限会社獣医イメージングサポート
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】岩吉 勇
【審査官】大隈 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-32253(JP,A)
【文献】特開2016-71297(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187937(JP,U)
【文献】国際公開第2011/027634(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0136354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00~29/14
A63H 1/00~37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の載置台に載置されて使用される、動物型のトレーニングファントムであって、
胸部及び腹部を模擬した模擬胴体部と、
前記模擬胴体部と一体的に形成されて、左前肢及び右前肢の少なくとも一部を模擬した模擬左前肢部及び模擬右前肢部とを少なくとも備え、
前記模擬胴体部は、
前記模擬胴体部の背中側に複数形成されて、仰臥位時に前記載置台に接地することで前記仰臥位時の姿勢を保持する仰臥位接地部と、
前記模擬胴体部の左右側面側に複数形成されて、横臥位時に前記載置台に接地することで前記横臥位時の姿勢を保持する横臥位接地部と、を備える、
ことを特徴とするトレーニングファントム。
【請求項2】
前記仰臥位接地部は、
骨盤の上方において前記背中から隆起した第1の隆起部分と、肩甲骨の上方において前記背中から隆起した第2の隆起部分として形成されたものであり、
前記横臥位接地部は、
前記骨盤の左右側方において前記左右側面から膨出した第1の膨出部分と、前記肩甲骨の左右側方において前記左右側面から膨出した第2の膨出部分として形成されたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のトレーニングファントム。
【請求項3】
前記模擬胴体部は、
前記模擬胴体部の腹部側に形成されて、腹臥位時に前記載置台に接地することで前記腹臥位時の姿勢を保持する腹臥位接地部をさらに備え、
前記模擬左前肢部及び前記模擬右前肢部は、
前記模擬左前肢部及び前記模擬右前肢部における前記模擬胴体部とは反対側
に位置する前記模擬左前肢部及び前記模擬右前肢部の先端部分に形成されて、腹臥位時に前記載置台に接地することで前記腹臥位時の姿勢を保持する腹臥位接地部を備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトレーニングファントム。
【請求項4】
前記模擬胴体部と一体的に形成されて、頚部を模擬した模擬頚部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のトレーニングファントム。
【請求項5】
前記模擬頚部は、
前記模擬頚部における前記模擬胴体部とは反対側
に位置する前記模擬頚部の先端部分に形成されて、仰臥位時に前記載置台に接地することで前記仰臥位時の姿勢を保持する仰臥位接地部を備える、
ことを特徴とする請求項4に記載のトレーニングファントム。
【請求項6】
前記模擬胴体部、前記模擬左前肢部、前記模擬右前肢部、及び、前記模擬頚部は、
少なくとも骨格、臓器、血管、及び、リンパ節を模擬した模擬生体組織を含む、
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のトレーニングファントム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物型のトレーニングファントムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、獣医師、獣医学部学生、動物看護士等の実習者が、超音波検査、X線検査等の各種の画像検査装置を用いた検査手順や検査方法を実習する際、実習用の生体(例えば、実習犬等の動物)を利用していた。しかしながら、実習用の生体を利用する場合、実習内容や時間が制限されるだけでなく、実習中における実習者の怪我リスクや生体への負担も大きく、さらに生体を保定する補助者も必要である。また、動物愛護管理法上の観点からも実習用の生体の利用を廃止することが望ましい。以上のことから、実習用の生体の利用を廃止し、その代替となる実習方法や教材を開発することが強く要求されている。
【0003】
そこで、実習用の生体を利用せずに各種の実習を可能とする動物模型の一例として、特許文献1には、体側パネルの内部に模擬臓器・器官を配置し、切開創や肛門部に相当する開口部を備えた動物模型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された動物模型は、ウシやブタ等の動物を等身大の大きさで模擬し、自立姿勢にて使用されるものである。一方、各種の画像検査装置を用いて動物を検査する場合、検査対象や検査項目によっては、自立姿勢ではなく、仰臥位や横臥位にて検査する必要がある。しかしながら、特許文献1に開示された動物模型は、仰臥位及び横臥位を安定して保持することが困難であり、仰臥位及び横臥位におけるトレーニングを適切に実施することができなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、仰臥位及び横臥位におけるトレーニングを適切に実施することが可能なトレーニングファントムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係るトレーニングファントムは、
所定の載置台に載置されて使用される、動物型のトレーニングファントムであって、
胸部及び腹部を模擬した模擬胴体部と、
前記模擬胴体部と一体的に形成されて、左前肢及び右前肢の少なくとも一部を模擬した模擬左前肢部及び模擬右前肢部とを少なくとも備え、
前記模擬胴体部は、
前記模擬胴体部の背中側に複数形成されて、仰臥位時に前記載置台に接地することで前記仰臥位時の姿勢を保持する仰臥位接地部と、
前記模擬胴体部の左右側面側に複数形成されて、横臥位時に前記載置台に接地することで前記横臥位時の姿勢を保持する横臥位接地部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係るトレーニングファントムによれば、模擬胴体部が、背中側に複数形成された仰臥位接地部と、左右側面側に複数形成された横臥位接地部とを備える。そのため、トレーニングファントムは、補助者により保定されていなくても仰臥位時及び横臥位時の姿勢が保持されるので、獣医師等の実習者が単独で仰臥位及び横臥位におけるトレーニングを適切に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るトレーニングファントム1Aを用いた超音波検査トレーニングシステム10の一例を示す全体構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るトレーニングファントム1Aを示す正面図、背面図、右側面図、上面図及び底面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るトレーニングファントム1Aの仰臥位時の姿勢を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るトレーニングファントム1Aの横臥位時の姿勢を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るトレーニングファントム1Bを示す正面図、背面図、右側面図、上面図及び底面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るトレーニングファントム1Bの仰臥位時の姿勢を示す図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るトレーニングファントム1Bの横臥位時の姿勢を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るトレーニングファントム1Aを用いた超音波検査トレーニングシステム10の一例を示す全体構成図である。
【0012】
超音波検査トレーニングシステム10は、獣医師、獣医学部学生、動物看護士等の実習者が、動物型のトレーニングファントム1Aを用いて、動物に対する超音波検査の検査手順や検査方法をトレーニング、学習等するために利用されるシステムである。
【0013】
超音波検査トレーニングシステム10は、その構成として、検査対象となる動物の生体組織を模擬した動物型のトレーニングファントム1Aと、検査対象に超音波を送信し、その検査対象から反射した超音波(エコー)を画像化することで検査対象を観察可能な超音波検査装置11と、トレーニングファントム1Aが載置される載置台12とを備える。
【0014】
トレーニングファントム1Aは、載置台12に載置されて使用されるものであり、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、ハムスター、リス等の動物の生体組織を模擬した模擬生体組織が内部に形成されている。本実施形態では、トレーニングファントム1Aは、イヌ、具体的には、体重8kg程度のビーグル犬の体型をモデル化し、全長450mm、高さ250mm、幅150mmのサイズを有するものとして説明するが、上記の例に限られず、任意の動物を任意のサイズで模擬したものでもよい。なお、トレーニングファントム1Aの詳細については後述する。
【0015】
超音波検査装置11は、超音波を送受信するプローブ部110と、操作ボタンや表示モニタ等を有するとともに、超音波の送受信処理、画像化するための画像処理等を行う装置本体部111とを備える。超音波検査装置11は、動物の生体組織を検査対象として機能するものであるが、超音波検査トレーニングシステム10では、トレーニングファントム1Aの内部に形成された模擬生体組織を検査対象とする。
【0016】
載置台12は、例えば、平板状の台本体部120と、台本体部120の四隅を支持する脚部121とを備える。台本体部120は、例えば、板材の上に緩衝材を張り、防水性の合成皮革で被覆したものである。台本体部120は、下方からプローブ部110を当てられるように、切り欠き状の凹部122が形成されている。脚部121は、折り畳み式でもよいし、組み立て式でもよい。なお、載置台12は、トレーニングファントム1Aが載置されるだけでなく、生体(動物)の検査にも使用されてもよい。また、載置台12は、形状、サイズ、材質等を適宜変更してもよい。
【0017】
実習者は、トレーニングファントム1Aを用いてトレーニングする検査項目に応じて、仰臥位、左横臥位、右横臥位、及び、腹臥位のいずれかの姿勢(
図1の例では仰臥位)でトレーニングファントム1Aを載置台12に載置する。そして、実習者は、右手でプローブ部110を持ち、トレーニングファントム1Aの各部にプローブ部110を所定の向きや角度で当てながら、左手で装置本体部111の操作ボタンを操作し、検査項目に沿った画像が表示モニタに表示されることを視認し、検査手順や検査方法を学習する。
【0018】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るトレーニングファントム1Aを示す正面図、背面図、右側面図、上面図及び底面図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係るトレーニングファントム1Aの仰臥位時の姿勢を示す図である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係るトレーニングファントム1Aの横臥位時の姿勢を示す図である。なお、
図2では、左側面図は、右側面図と対称であるため、省略した。
【0019】
トレーニングファントム1Aは、上述したように、載置台12に載置されて使用されるものであり、仰臥位、横臥位(左横臥位及び右横臥位を含む)、及び、腹臥位のように、複数の姿勢を保持可能な外形を有する。
【0020】
トレーニングファントム1Aは、その構成として、胸部及び腹部を模擬した模擬胴体部2と、模擬胴体部2と一体的に形成されて、左前肢及び右前肢の少なくとも一部を模擬した模擬左前肢部3L及び模擬右前肢部3Rと、模擬胴体部2と一体的に形成されて、頚部を模擬した模擬頚部4とを備える。
【0021】
模擬胴体部2は、模擬胴体部2の背中側に複数形成されて、仰臥位時に載置台12に接地することで仰臥位時の姿勢を保持する仰臥位接地部20と、模擬胴体部2の左右側面側に複数形成されて、横臥位時に載置台12に接地することで横臥位時の姿勢を保持する横臥位接地部21と、模擬胴体部2の腹部側に形成されて、腹臥位時に載置台12に接地することで腹臥位時の姿勢を保持する腹臥位接地部22とを備える。
【0022】
仰臥位接地部20は、
図3に示すように、骨盤23の上方において背中から隆起した第1の隆起部分200と、肩甲骨24の上方において背中から隆起した第2の隆起部分201として形成されたものである。横臥位接地部21は、
図4に示すように、骨盤23の左右側方において左右側面から膨出した第1の膨出部分210と、肩甲骨24の左右側方において左右側面から膨出した第2の膨出部分211として形成されたものである。
【0023】
第1の隆起部分200は、骨盤23の上部左右部分がそれぞれ上方に向かって隆起するように、左右一対で形成されている。第2の隆起部分201は、左右の肩甲骨24の上部がそれぞれ上方に向かって隆起するように、左右一対で形成されている。第1の隆起部分200及び第2の隆起部分201は、周囲の部分に対して緩やかに山状に盛り上がるようにして、先端部分が丸みを有することが好ましい。
【0024】
第1の膨出部分210は、上面図(又は底面図)においてトレーニングファントム1Aを上方(又は下方)から視認したときに、骨盤23の左側及び右側がそれぞれ左側方及び右側方に向かって膨出するように形成されている。第2の膨出部分211は、上面図(又は底面図)においてトレーニングファントム1Aを上方(又は下方)から視認したときに、肩甲骨24の左側及び右側がそれぞれ左側方及び右側方に向かって膨出するように形成されている。第1の膨出部分210及び第2の膨出部分211は、緩やかに膨らむようにして、最も側方に膨らんだ先端部分が、丸みを有するものでもよいし、上下方向に沿うような稜線状でもよいし、平坦状でもよい。
【0025】
模擬左前肢部3L及び模擬右前肢部3Rは、模擬胴体部2とは反対側の先端部分に形成されて、腹臥位時に載置台12に接地することで腹臥位時の姿勢を保持する腹臥位接地部30L、30Rを備える。本実施形態では、模擬左前肢部3L及び模擬右前肢部3Rは、上腕骨を内部に含むところまでの部分を模擬したものであり、橈骨よりも先の部分を省略しているが、左前肢及び右前肢の全てを模擬したものでもよい。また、腹臥位接地部30L、30Rは、平坦状でもよいし、凸状でもよい。
【0026】
模擬頚部4は、模擬胴体部2とは反対側の先端部分に形成されて、仰臥位時に載置台12に接地することで仰臥位時の姿勢を保持する仰臥位接地部40を備える。なお、仰臥位接地部40は、平坦状でもよいし、凸状でもよい。
【0027】
模擬胴体部2、模擬左前肢部3L、模擬右前肢部3R、及び、模擬頚部4は、一体となってトレーニングファントム1Aの外形を形成し、少なくとも骨格、臓器、血管(血液)、及び、リンパ節の各部の生体組織を模擬した模擬生体組織を、皮膚、筋肉、及び、脂肪を模擬した模擬生体組織で被覆するように、合成樹脂材料を用いて製作される。
【0028】
合成樹脂材料は、例えば、軟質エラストーマ樹脂、硬質ウレタン樹脂等を母材として、ポリプロピレン、ポリエチレン等の添加剤を所定の割合で加えることで、超音波に対する音響特性、色、透明度、及び、硬度を調整することが可能な材料である。
【0029】
模擬生体組織は、実際の生体組織の各部における音響特性と同等の音響特性を再現するように、各部毎に合成樹脂材料の組成(音響特性)を変化させて製作される。また、皮膚、筋肉、及び、脂肪に相当する模擬生体組織は、肌色や茶色等の半透明色とし、肋骨等の主要な骨格に相当する模擬生体組織は、例えば、白色に着色することで、主要な骨格が外部から視認可能に製作される。なお、合成樹脂材料の組成は適宜変更してもよいし、複数種の合成樹脂材料を併用してもよい。
【0030】
模擬生体組織は、以下に例示する生体組織の各部を模擬したものである。なお、模擬生体組織は、生体組織の全てを模擬したものでもよいし、生体組織の一部を模擬したものでもよいし、以下に例示する生体組織以外の他の生体組織をさらに模擬したものでもよい。また、模擬生体組織は、正常な状態の生体組織を模擬したものでもよいし、所定の疾患を罹患した状態の生体組織を模擬したものでもよい。
【0031】
模擬胴体部2の胸部には、心臓が含まれる。心臓の具体的な部位は、左心房、右肺静脈、左肺静脈、心房中隔、左心耳、左心室、心室中隔、左室後壁、左室流出路、心内膜、心外膜、僧帽弁装置(前尖、後尖、腱索、前乳頭筋、後乳頭筋)、大動脈弁、バルサルバ洞、大動脈、左冠動脈起始部、右冠動脈起始部、右心房、右心耳、右心室、調節帯、乳頭筋、三尖弁(中隔尖、壁側尖)、右室壁、肉柱、右室流出路、肺動脈弁、主肺動脈、右肺動脈、左肺動脈である。
【0032】
模擬胴体部2の腹部には、肝臓、胆嚢、脾臓、腎臓、副腎、膀胱、前立腺、精巣、卵巣、子宮、膵臓、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、結腸等が含まれる。
【0033】
肝臓の具体的な部位は、内側左葉、外側左葉、内側右葉、外側右葉、方形葉、尾状葉尾状突起、尾状葉乳頭突起、肝静脈、門脈、葉間裂、横隔膜、鎌状間膜脂肪等である。胆嚢の具体的な部位は、底部、体部、頚部、胆嚢管、総胆管等である。脾臓の具体的な部位は、頭部、体部、尾部、皮膜、脾静脈、脾静脈門脈吻合部、脾動脈等である。腎臓の具体的な部位は、皮質、髄質、腎盂、腎杯、腎稜、腎洞、葉間動静脈、小葉間動静脈、弓状動静脈、腎動静脈、尿管等である。副腎の具体的な部位は、皮質、髄質、皮膜、前腹静脈等である。膀胱の具体的な部位は、尖部、体部、頚部、尿管開口部、尿道等である。前立腺の具体的な部位は、尿道、左葉、右葉等である。精巣の具体的な部位は、精巣、精巣縦隔、精巣上体(頭部、体部、尾部)、皮膜等である。卵巣の具体的な部位は、卵巣、卵胞等である。子宮の具体的な部位は、子宮頸管、体部、左右子宮角等である。膵臓の具体的な部位は、左葉、右葉、体部、膵十二指腸動静脈、膵管等である。食道の具体的な部位は、食道裂孔、食道遠位部等である。胃の具体的な部位は、噴門部、胃底部、体部、幽門部、幽門管、幽門、粘膜ヒダ等である。十二指腸の具体的な部位は、十二指腸曲、十二指腸下行部、後十二指腸曲、大十二指腸乳頭、小十二指腸乳頭等であり、壁厚み5mm程度である。空腸は、壁厚み3mm程度である。回腸の具体的な部位は、回盲結腸部等である。結腸の具体的な部位は、上行結腸、横行結腸、下行結腸等であり、壁厚み1mm程度である。
【0034】
模擬頚部4の頚部には、下顎腺、甲状腺、上皮小体、気管、食道等が含まれる。
【0035】
模擬胴体部2、模擬左前肢部3L、模擬右前肢部3R、及び、模擬頚部4の各部には、リンパ節が含まれる。リンパ節の具体的な部位は、胃、肝、脾、腎、腰大動脈群、内側腸骨、下腹、仙骨、空腸、右結腸、左、結腸、浅頸、内側咽頭後等である。
【0036】
模擬胴体部2、模擬左前肢部3L、模擬右前肢部3R、及び、模擬頚部4の各部には、血管が含まれる。血管の具体的な部位は、胸部大動脈、腹部大動脈、腹腔動脈(左胃動脈、肝動脈、脾動脈)、前腸間膜動脈(腸間膜動脈)、腎動脈、精巣(卵巣)動脈、深腸骨回旋動脈、外腸骨動脈、内腸骨動脈、正中仙骨動脈等である。また、血管の具体的な部位は、後大静脈、肝静脈、前腹静脈、腎静脈、精巣(卵巣)静脈、深腸骨回旋静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、内腸骨静脈、門脈、胃十二指腸静脈、脾静脈、空腸静脈等である。さらに、血管の具体的な部位は、左右外頸静脈、左右総頚動脈、前大静脈、右腕頭静脈、外頸静脈、浅頸静脈、腕頭動脈、左総頚動脈、右総頚動脈、右鎖骨下動脈、頸椎動脈、肋頸動脈、浅頸動脈、肩甲動脈等である。
【0037】
模擬胴体部2、模擬左前肢部3L、模擬右前肢部3R、及び、模擬頚部4の各部には、骨格が含まれる。骨格の具体的な部位は、頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、骨盤、肩甲骨、肋骨、肋軟骨、肋軟骨結合部、胸骨、胸骨丙、鎌状突起、上腕骨等である。
【0038】
本実施形態に係るトレーニングファントム1Aによれば、模擬胴体部2が、背中側に複数形成された仰臥位接地部20(第1の隆起部分200、第2の隆起部分201)と、左右側面側に複数形成された横臥位接地部21(第1の膨出部分210、第2の膨出部分211)とを備え、模擬頚部4が、先端部分に形成された仰臥位接地部40を備える。そのため、トレーニングファントム1Aは、補助者により保定されていなくても仰臥位時及び横臥位時の姿勢が保持されるので、獣医師等の実習者が単独で仰臥位及び横臥位におけるトレーニングを適切に実施することができる。
【0039】
また、仰臥位接地部20は、骨盤23の上方において背中から隆起した第1の隆起部分200と、肩甲骨24の上方において背中から隆起した第2の隆起部分201として形成されたものであり、横臥位接地部21は、骨盤23の左右側方において左右側面から膨出した第1の膨出部分210と、肩甲骨24の左右側方において左右側面から膨出した第2の膨出部分211として形成されたものである。そのため、トレーニングファントム1Aは、生体の自然な体形を再現しつつ余計な凹凸が設けられていないので、トレーニングファントム1Aの表面に沿ってプローブ部110を操作する際、臥位接地部20及び横臥位接地部21に引っ掛かることがない。したがって、獣医師等の実習者が仰臥位及び横臥位におけるトレーニングを適切に実施することができる。
【0040】
さらに、模擬胴体部2が、模擬胴体部2の腹部側に形成された腹臥位接地部22を備え、模擬左前肢部3L及び模擬右前肢部3Rが、先端部分に形成された腹臥位接地部30L、30Rを備える。そのため、トレーニングファントム1Aは、補助者により保定されていなくても腹臥位時の姿勢が保持されるので、獣医師等の実習者が単独で腹臥位におけるトレーニングを適切に実施することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係るトレーニングファントム1Bを示す正面図、背面図、右側面図、上面図及び底面図である。
図6は、本発明の第2の実施形態に係るトレーニングファントム1Bの仰臥位時の姿勢を示す図である。
図7は、本発明の第2の実施形態に係るトレーニングファントム1Bの横臥位時の姿勢を示す図である。なお、
図5では、左側面図は、右側面図と対称であるため、省略した。
【0042】
第2の実施形態に係るトレーニングファントム1Bは、第1の実施形態に係るトレーニングファントム1Aに対して、模擬頚部4を省略したものである。すなわち、トレーニングファントム1Bは、その構成として、胸部及び腹部を模擬した模擬胴体部2と、模擬胴体部2と一体的に形成されて、左前肢及び右前肢の少なくとも一部を模擬した模擬左前肢部3L及び模擬右前肢部3Rとを備える。
【0043】
本実施形態に係るトレーニングファントム1Bによれば、模擬胴体部2が、背中側に複数形成された仰臥位接地部20(第1の隆起部分200、第2の隆起部分201)と、左右側面側に複数形成された横臥位接地部21(第1の膨出部分210、第2の膨出部分211)とを備える。そのため、トレーニングファントム1Bは、補助者により保定されていなくても仰臥位時及び横臥位時の姿勢が保持されるので、獣医師等の実習者が単独で仰臥位及び横臥位におけるトレーニングを適切に実施することができる。なお、トレーニングファントム1Bのその他の構成及び効果は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0045】
なお、上記各実施形態では、トレーニングファントム1A、1Bは、超音波検査装置11を用いた超音波検査のトレーニングに利用されるものとして説明した。これに対し、トレーニングファントムは、超音波検査以外にも、例えば、X線検査装置、CT検査装置等の画像検査装置を用いた画像検査のトレーニングに利用可能に構成されてもよい。その際、トレーニングファントムは、その模擬生体組織が、実際の生体組織の各部におけるX線吸収率と同等のX線吸収率を再現するように、合成樹脂材料を適宜選択し製作すればよい。
【0046】
また、上記各実施形態では、トレーニングファントム1A、1Bが、左後肢、右後肢、頭部、及び、尻尾を備えないものとして説明した。これに対し、トレーニングファントムは、左後肢及び右後肢の少なくとも一部を模擬した模擬左後肢部及び模擬右後肢部、頭部を模擬した模擬頭部、及び、尻尾を模擬した模擬尻尾部の少なくとも1つをさらに備えるようにしてもよい。その際、模擬左後肢部及び模擬右後肢部は、横臥位時に載置台12に接地することで横臥位時の姿勢を保持する横臥位接地部を備えるようにしてもよいし、腹臥位時に載置台12に接地することで腹臥位時の姿勢を保持する腹臥位接地部を備えるようにしてもよい。また、模擬頭部は、仰臥位時に載置台12に接地することで仰臥位時の姿勢を保持する仰臥位接地部を備えるようにしてもよく、例えば、左右の耳部分を仰臥位接地部として機能させてもよい。さらに、模擬尻尾部は、仰臥位時に載置台12に接地することで仰臥位時の姿勢を保持する仰臥位接地部を備えるようにしてもよい。
【0047】
また、上記各実施形態では、トレーニングファントム1A、1Bが、腹臥位接地部22と、腹臥位接地部30L、30Rとを備えるものとして説明した。これに対し、トレーニングファントムは、腹臥位接地部22と、腹臥位接地部30L、30Rを備えないものとして構成されていてもよい。
【0048】
また、上記第1の実施形態では、トレーニングファントム1Aが、骨盤23、肩甲骨24、及び、頚部4の先端部分という3か所に形成された仰臥位設置部を備えるものとして説明した。これに対し、トレーニングファントムは、骨盤23及び頚部4の先端部分という2か所に形成された仰臥位設置部を備えるものでもよいし、骨盤23及び肩甲骨24という2か所に形成された仰臥位設置部を備えるものでもよい。
【符号の説明】
【0049】
1A、1B…トレーニングファントム、
2…模擬胴体部、3L…模擬左前肢部、3R…模擬右前肢部、4…模擬頚部、
10…超音波検査トレーニングシステム、11…超音波検査装置、12…載置台、
20…仰臥位接地部、21…横臥位接地部、22…腹臥位接地部
23…骨盤、24…肩甲骨、
30L、30R…腹臥位接地部、40…仰臥位接地部、
110…プローブ部、111…装置本体部、
120…台本体部、121…脚部、122…凹部、
200…第1の隆起部分、201…第2の隆起部分、
210…第1の膨出部分、211…第2の膨出部分、