(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ドア開口部の構造
(51)【国際特許分類】
E06B 1/52 20060101AFI20221003BHJP
E06B 3/70 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
E06B1/52
E06B3/70 Z
(21)【出願番号】P 2020113233
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2022-02-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595151556
【氏名又は名称】大栄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100201684
【氏名又は名称】橋爪 慎哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100202957
【氏名又は名称】金森 毅
(72)【発明者】
【氏名】林 和彦
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-130399(JP,A)
【文献】特開2019-108669(JP,A)
【文献】実開平01-177387(JP,U)
【文献】特開2006-233604(JP,A)
【文献】特開2007-197986(JP,A)
【文献】特開2013-136894(JP,A)
【文献】特許第5350172(JP,B2)
【文献】特開2009-024458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/52-1/60
E06B 3/70-3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に形成される、縦枠と前記縦枠に蝶番で保持されるドアと仕上げ材とを有するドア開口部の構造であって、
前記ドアは、前記蝶番で保持される軸側及び開閉する開閉側の縁の端面の、開き側に突出部を有し、
前記突出部は、前記ドアの前記軸側及び前記開閉側に突出端面を有し、閉じ側に段差側面を有し、
前記縦枠は、前記ドアの端面に対向する
第1の対向面と、前記段差側面に対向する
第2の対向面を有し、
前記仕上げ材は、前記突出端面に対向する面に配さ
れ、
前記突出部は、前記ドアを閉じるときに前記第2の対向面に当接することで前記ドアが前記閉じ側へ移動しすぎることを防止し、
前記縦枠は、前記ドアを閉じたときに前記ドアの前記閉じ側の表面が当接する戸当りを含めて前記第1の対向面よりも前記ドア開口部側に突出する部分を一切有しておらず、
前記縦枠の前記開き側の端面である前記第2の対向面から前記閉じ側の端面までの厚みは、前記ドアの前記開き側の表面から前記閉じ側の表面までの厚みよりも薄い、
ドア開口部の構造。
【請求項2】
前記縦枠の表面は、白色である、
請求項1に記載のドア開口部の構造。
【請求項3】
前記縦枠の表面は、前記ドアの表面と同じ色及び模様を有する、
請求項1に記載のドア開口部の構造。
【請求項4】
前記ドアは、ドア本体とエッジ部を有し、
前記エッジ部は前記端面、前記突出端面及び前記段差側面を有し、
前記段差側面に緩衝材が配されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドア開口部の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開口部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内に設けられるドア開口部は、壁に枠材を取り付け、その枠材に戸当りを設けて、開閉するドアを配する構造が一般的である。ドア開口部の幅員である開口幅は、車椅子の移動や物の移動などのために大きい方が良い。また、枠材及び戸当りは露出しており、美観を求められることから、ドアと同じ色合いの枠材及び戸当りが用いられることが多い。
【0003】
しかし、枠材が露出しているということによって、ドア開口部の美観を損ねている場合がある。そのため、この枠材を見えなくするために、特許文献1には、枠材を仕上げ材で覆う発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、枠材を見えなくするようにはしているが、ドア開口部の内側には戸当りが設置してある。ドア開口部の開口幅は、最も内側にある戸当りによって制限されることになるため、ドア開口部の開口幅は狭いままである。
そのため、美観に優れて、開口幅が大きいドア開口部の構造が求められていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、美観に優れて、開口幅が大きいドア開口部の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るドア開口部の構造は、壁に形成される、縦枠と前記縦枠に蝶番で保持されるドアと仕上げ材とを有するドア開口部の構造であって、前記ドアは、前記蝶番で保持される軸側及び開閉する開閉側の縁の端面の、開き側に突出部を有し、前記突出部は、前記ドアの前記軸側及び前記開閉側に突出端面を有し、閉じ側に段差側面を有し、前記縦枠は、前記ドアの端面に対向する第1の対向面と、前記段差側面に対向する第2の対向面を有し、前記仕上げ材は、前記突出端面に対向する面に配され、前記突出部は、前記ドアを閉じるときに前記第2の対向面に当接することで前記ドアが前記閉じ側へ移動しすぎることを防止し、前記縦枠は、前記ドアを閉じたときに前記ドアの前記閉じ側の表面が当接する戸当りを含めて前記第1の対向面よりも前記ドア開口部側に突出する部分を一切有しておらず、前記縦枠の前記開き側の端面である前記第2の対向面から前記閉じ側の端面までの厚みは、前記ドアの前記開き側の表面から前記閉じ側の表面までの厚みよりも薄い。
【0008】
例えば、本発明に係るドア開口部の構造は、前記縦枠の表面は、白色である。
【0009】
例えば、本発明に係るドア開口部の構造は、前記縦枠の表面は、前記ドアの表面と同じ色及び模様を有する。
【0010】
例えば、本発明に係るドア開口部の構造は、前記ドアは、ドア本体とエッジ部を有し、前記エッジ部は前記端面、前記突出端面及び前記段差側面を有し、前記段差側面に緩衝材が配されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ドアを閉じたときに縦枠が見えにくくなるので、美観に優れる。さらに、縦枠に戸当りを設置しないので、ドア開口部の開口幅が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るドア開口部の構造の平面視断面図
【
図2】本発明の実施の形態1に係るドア開口部の構造の
図1のA部拡大図
【
図3】本発明の実施の形態1に係るドア開口部の構造の
図1のB部拡大図
【
図4】従来の構造1に係るドア開口部の構造の平面視断面図
【
図5】本発明の実施の形態1に係るドア開口部の構造の縦枠部分斜視図
【
図6】従来の構造1に係るドア開口部の構造の縦枠部分斜視図
【
図7】本発明の実施の形態2に係るドア開口部の構造の平面視断面図
【
図8】従来の構造2に係るドア開口部の構造の平面視断面図
【
図9】従来の構造3に係るドア開口部の構造の平面視断面図
【
図10】本発明の実施の形態3に係るドア開口部の構造の部分的平面視断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
まずは、本発明により解決する課題の背景について説明する。
本発明のドア開口部の構造である枠付きドアは、日本の戸建て住宅の約7割を占める在来木造(軸組工法)の建物の洋室・廊下廻りの出入り口(開口部)に設置するものを対象とする。その開口部では大壁工法(柱等を壁で覆う)が採用されている。ちなみに従来の和室部は柱が見える真壁工法であったが、近年では和室部においても大壁工法が採用される場合が多く、この場合も本発明のドア開口部の構造の対象となる。
【0014】
元来、利用者にとって出入り口の幅員はできるだけ大きいのが望ましい。
政府は高齢化社会での車椅子介護を前提とし、住宅の出入り口の有効な幅員を750mm以上確保しようとする、バリアフリー化施策を推進してきた。
【0015】
軸組工法・大壁工法で用いられるドア枠は、設置部の柱等やこれを覆う壁と立体的に密接する。このため、設置部分の柱の間隔や太さ、壁の仕上げ厚み、壁とドア枠の取り合いから種々の制約を受け、幅員の最大許容寸法が導かれる。
【0016】
出入り口の幅員は、取り付け開口部の柱ピッチから、一本分の柱太さ、戸当りを含む縦枠の見付寸法、緩衝する壁の仕上げ厚み寸法(
図8参照)を差し引いたものが上限値となる。
【0017】
図4の平面図に示すように、在来工法の柱ピッチは3尺(909mm)、柱は3.5寸(105mm)が一般的であり、枠見付(24mm)、戸当り見付(12mm)の条件で有効幅員を求めると732mmとなり、750mmの確保自体が難しい。従って、特別に柱の位置をずらす等の面倒を避けてのバリアフリー化実現は難しい。
【0018】
加えて、日本の住宅では片側、両側の入隅部に設ける開口部では、壁から突出して枠を設置する場合が圧倒的に多く、幅員は狭くならざるを得ないのが実情である。
このためにドアメーカー各社のドア枠は大変複雑で数多いモジュール設定がなされており、設計者、供給者、施工者の煩雑・難解な作業が求められ大きな負担となっている。
【0019】
本発明の建具と枠の組み合わせであれば、戸当りが不要な上、入隅部に設置する場合も壁の緩衝を受けずに柱に建具枠を直付けする事が可能となる。
従って複雑な配慮も無く、従来の工法では得られなかったより大きい幅員を容易に確保できる製品が供給される。
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るドア開口部の構造について、図面を参照しながら説明する。
図1に平面で示すように、ドア20を開く方向が開き側であり、
図1の下方である。ドア20を閉じる方向が閉じ側であり、
図1の上方である。ドア20に蝶番が取り付けられている方向が軸側であり、
図1の左方である。ドア20を開閉する方向が開閉側であり、
図1の右方である。
本発明の実施の形態1に係るドア開口部の構造は、壁10の内部に配置された2つの柱11のそれぞれに、縦枠30及び縦枠31が、お互いが対抗するように、ドア開口部の上部から床面の間に固定されている。縦枠30及び縦枠31は、断面形状が矩形であり、その壁10の厚み方向の長さは、柱11の壁10の厚み方向の長さよりも短い。縦枠30及び縦枠31の上部の端はドア20の上部の端以上の位置にあり、下部の端はドア20の下部の端以下の位置にある。縦枠30及び縦枠31にドア20が設置されている。
【0021】
柱11、11の中心の間隔の基準値は、在来軸組工法では、3尺、6尺、9尺及び12尺が一般的である。ドア開口部では、柱11、11の中心の間隔は3尺すなわち909mmが圧倒的に多い。さらに柱11の1辺の長さは一般的に105mmであるので、柱11の内面同士の距離LPは、804mmになる。また、縦枠30及び31の厚みLBは、一般的に24mmである。従って開口幅である長さLAは756mmであり、バリアフリー基準値を満たす。
【0022】
壁10は、柱11、胴縁12、プラスターボード13、仕上げ材14及び幅木15を有する。胴縁12は、壁10の閉じ側及び開き側の柱11が無い部分に、柱11の閉じ側及び開き側の表面を延長するように部分的に配置される。プラスターボード13は、柱11の、ドア開口部内側の面と、柱11及び胴縁12の閉じ側面及び開き側面に、縦枠30又は縦枠31が固定された部分を除いて隙間無く配置される。
【0023】
仕上げ材14は、プラスターボード13の表面に配置される。一般的に仕上げ材14としてクロス材が用いられる。仕上げ材14は、ドア開口部内側の面と、壁10の閉じ側面及び開き側面に、プラスターボード13の角部で折り曲げられて、連続的に貼り付けられている。仕上げ材14は、端面が縦枠30又は縦枠31の側面に突き当てて貼り付けられ、仕上げ材14の端面は表面に露出しない。
【0024】
壁10の下部に、床と接するように幅木15が配置されている。壁10の角部で交差する幅木15は、表面同士及び内面同士が交接するように斜めに切断した面同士を突き当てて配置される。ドア開口部の内側の幅木15の端面は、縦枠30又は縦枠31の側面に突き当てて配置されるため、表面に露出しない。
【0025】
ドア20は、蝶番42の軸を中心に開き側に回転して開く。
図1に示す状態はドア20を閉じた状態である。ドア20は、閉じた状態で、縦枠30に設けられたラッチ受けにラッチ40で固定される。
【0026】
ドア20は、
図2に拡大平面で示すように、開閉側の端部の開き側に突出部27を有する。突出部27は、開閉側に突出端面21を有し、閉じ側に段差側面22を有する。ドア20は、突出部27を除いた開閉側に端面23を有し、ドア20の閉じ側に閉じ側の面61を有する。
ラッチ40は、端面23に配置され、縦枠30の、ドア開口部の内側の面に配された凹部に設けられたラッチ受けと嵌合する。ケース錠41は、ドア20の内部に配置されている。
【0027】
ドア20を閉じたときに、突出端面21は縦枠30のドア開口部内側の面よりも、外側にある。段差側面22は、縦枠30の開き側の面よりも開き側にある。端面23は、縦枠30のドア開口部内側の面よりも、内側にある。すなわち、突出部27は、ドア20を閉じたときに縦枠30のドア開口部内側の面よりも外側に伸びている。これによって、突出部27は、ドア20を閉じたときに、開き側から見ると、端面23と縦枠30の内側面との隙間を隠す。さらに突出部27は、ドア20を閉じるときに、ドア20が閉じ側へ移動しすぎることを防止するとともに、ドア20と縦枠30の隙間から光が漏れることを防止する。なお、段差側面22と縦枠30の開き側面との間に緩衝材を配しても良い。
【0028】
ドア20の厚みLFは、縦枠30のドア20の厚み方向の厚みLGよりも厚い。ドア20を閉じたときの、縦枠30の閉じ側の面62は、ドア20の閉じ側の面61よりも閉じ側にある。ドア20の閉じ側の面61と縦枠30の閉じ側の面62との段差LEは、ドア20を閉じたときの美観をよくするために、例えば10mm以内に設定され、好ましくは5mm以内に設定されるようにしても良い。また、厚みLGは厚みLFよりも大きくても良く、そのときは段差LEが10mmよりも大きくなる場合がある。
【0029】
ドア20は、
図3に平面で示すように、軸側の端部の開き側に、突出部28を有する。突出部28は、ドア開口部の外側に突出端面25を有し、突出部28の閉じ側に段差側面24を有する。ドア20の、突出部28を除いた軸側に端面26を有する。
蝶番42は、ドア側の羽部が端面26に固定され、枠側の羽部が縦枠31のドア開口部の内側面に固定されている。なお、本実施の形態では、ドア20を縦枠31に蝶番42によって保持するものを示したが、蝶番42に変わってピボットによってドア20を保持するものとしても良い。
【0030】
ドア20を閉じたときに、突出端面25は縦枠31のドア開口部内側の面よりも外側にある。段差側面24は、縦枠31の開き側の面よりも開き側にある。端面26は、縦枠31のドア開口部内側面よりも内側にある。すなわち、突出部28は、ドア20を閉じたときに縦枠31のドア開口部内側の面よりも外側に伸びている。これによって、突出部28は、ドア20を閉じたときに開き側から見ると、端面26と縦枠31の内側面との隙間を隠す。さらに突出部28は、ドア20を閉じたときに、ドア20と縦枠31の隙間から光が漏れることを防止する。
【0031】
ドア20の厚みLFは、縦枠31のドア20の厚み方向の厚みLGよりも厚い。ドア20を閉じたときの、縦枠31の閉じ側の面63は、ドア20の閉じ側の面61よりも閉じ側にある。
本実施の形態1では縦枠についてのみ説明したが、ドア開口部の上部又は下部に配置される横枠についても、同様にドアの突出部がドアと横枠の隙間を隠す構成としても良い。
【0032】
このように配されたドア開口部の下部の、ドア20が無い状態の斜視図を
図5に示す。図中のハッチング領域は、縦枠31の露出している表面を表す。このハッチング領域は、一般的には仕上げ材14又は幅木15とは異なる色や模様であって、木材表面の色や模様であり、ドア20の表面と同じ色や模様を有する。また、一般的にクロスなどの仕上げ材は白色系統の表面色を有しているので、同系色である白色を基調とした表面色としても良い。
【0033】
(従来の構造1)
次に、比較のため従来のドア開口部の構造について説明する。
図4に示すように、ドア120を開く方向が開き側であり、
図4の下方である。開き側とは逆方向の、ドア120を閉じる方向が閉じ側であり、
図4の上方である。ドア120に蝶番が取り付けられて、ドア120の回転軸がある方向が軸側であり、
図4の左方である。軸側とは逆方向の、ドア120を開閉する方向が開閉側であり、
図4の右方である。
従来の構造1に係るドア開口部の構造では、
図4に平面で示すように、壁110の内部に配置された2本の柱111のそれぞれに、縦枠130及び縦枠131が、お互いが対抗するように、ドア開口部の上部から床面の間に固定されている。縦枠130及び縦枠131の上部の端はドア120の上部の端以上の位置にあり、下部の端はドア120の下部の端以下の位置にある。縦枠130及び縦枠131にドア120が設置されている。また、縦枠130及び縦枠131のドア開口部内側に、それぞれ戸当り121が配置されている。
【0034】
柱111、111の中心の間隔は、実施の形態1と同じであり、909mmである。柱の1辺の長さも同様に105mmなので、柱111同士の内面同士の距離LPは実施の形態1と同じ804mmである。また、縦枠130及び縦枠131の厚みは実施の形態1と同様に24mmである。戸当り121の突出部の厚みはそれぞれ12mmである。従って開口幅(有効幅員)である長さLCは732mmであり、バリアフリー基準を満たさない。
【0035】
縦枠130及び縦枠131は、断面が矩形であり、壁110の厚み方向の長さは、壁110の厚みよりも長く、壁110の閉じ側及び開き側の表面より突出している。縦枠130及び縦枠131は、壁110の内部にある2本の柱111のドア開口部内側の面に、お互いが対向するように、ドア開口部の上部から床面の間にネジによって固定されている。
【0036】
壁110は、柱111、胴縁112、プラスターボード113、仕上げ材114及び幅木115を有する。胴縁112は、閉じ側側面及び開き側側面の、柱111が無い部分に、柱111の表面を延長するように部分的に配置される。プラスターボード113は、柱111及び胴縁112の閉じ側面及び開き側面に、隙間無く配置される。
【0037】
プラスターボード113の外側に、仕上げ材114が貼り付けられている。仕上げ材114の端面は、縦枠130又は縦枠131の突出した部分の側面に突き当てて貼り付けられ、表面に露出しない。
【0038】
壁110の下部に、床と接するように幅木115が配置される。幅木115の端面は、縦枠130又は縦枠131の突出した部分の側面に突き当てて配置され、表面に露出しない。
【0039】
ドア120は、蝶番142の軸を中心に開き側に回転して開く。
図4に示す状態はドア120を閉じた状態である。ドア120の開閉側の端部に配置されたラッチ140は、ドア120を閉じた状態で、縦枠130に設けられたラッチ受けに嵌合して固定される。蝶番142は、ドア側の羽部がドア120の軸側の端部に固定され、枠側の羽部が縦枠131のドア開口部内側の面に固定されている。
【0040】
戸当り121は、ドア120を閉じたときに、ドア120の端部の閉じ側の面が当接する位置に、縦枠130及び縦枠131のドア開口部内側の面に固定される。なお、戸当り121とドア120との間に緩衝材を配しても良い。戸当り121があることによって、ドア120を閉じたときに、ドア120が閉じ側へ回動しすぎることを防止するとともに、ドア120と縦枠130及び縦枠131の隙間から光が漏れることを防止する。
【0041】
このように配されたドア開口部の下部の、ドア120が無い状態の斜視図を
図6に示す。図中のハッチング領域は、縦枠131及び戸当り121の露出している表面を表す。このハッチング領域は、一般的には仕上げ材114又は幅木115とは異なる色や模様であって、木材表面の色や模様であり、ドア120の表面と同じ色や模様を有する。
【0042】
(実施の形態1と従来の構造1との比較)
実施の形態1と、従来の構造1を比較して説明する。
縦枠とは、ドア開口部の構造において、ドアを保持するために用いられるものである。ドアの重量を支えるだけの強度が必要であり、ラッチを嵌合させるための凹部を形成するための奥行きも必要なので、縦枠には所定の厚みが必要である。しかしながら、ドア開口部の開口幅が大きい方が、利便性が高くなるので、できるだけ薄い方が良いという条件もある。そのため、通常は縦枠の厚みは、必要最小限の厚みのものが用いられる。
【0043】
実施の形態1の縦枠30及び縦枠31の厚みと、従来の構造1の縦枠130及び縦枠131は、同じ厚みであるとする。従来の構造1では、戸当り121を配する必要があるが、本発明の実施の形態1では戸当りを配する必要が無い。その結果、柱同士の間隔が同じで、縦枠の厚みが同じであっても、
図1に示す開口幅LAは、
図3に示す開口幅LCよりも大きくすることができる。
【0044】
従来の構造1において、縦枠130及び縦枠131の端部が壁110から突出しているのは、仕上げ材114及び幅木115の端面処理に都合が良いという理由からで、突出していないと仕上げ材114及び幅木115の端面が露出することになり、美観を損ねるからである。従って、仕上げ材114及び幅木115の端面は露出していないので、美観を損ねることは無い。
また、実施の形態1においては、仕上げ材14は壁10の角部で曲げられ、幅木15は壁10の角部で表面同士を交接して付き合わせて、端面を露出していない。さらに仕上げ材14及び幅木15は、縦枠30及び縦枠31の側面に当接しているので、仕上げ材14及び幅木15の端面が露出することは無い。従って、実施の形態1も、美観を損ねることは無い。つまり、この点において実施の形態1と従来の構造1とは同程度である。
【0045】
従来の構造1では、ドア120が閉まった状態で、開き側からドア開口部を見ると、ドア120と縦枠130及び縦枠131との隙間の奥に、戸当り121があるので、ドア120と縦枠130及び縦枠131との隙間から光が漏れることは無い。
また、実施の形態1では、ドア20が閉まった状態で、開き側からドア開口部を見ると、ドア20と仕上げ材14との隙間の奥に、縦枠30及び縦枠31があるので、ドア20と縦枠30及び縦枠31との隙間から光が漏れることは無い。つまり、この点において実施の形態1と従来の構造1とは同程度である。
【0046】
従来の構造1では、ドア120が閉まった状態で、開き側からドア開口部を見ると、ドア120の周囲に厚みのある縦枠130及び縦枠131が見える。縦枠130及び縦枠131の端部が壁110の表面から突出するのは、仕上げ材114及び幅木115の端面を当接させるためである。そのため縦枠130及び縦枠131の存在感が大きく、美観に優れるとは言えない。また、美観をよくするために、一般的にはドア120の表面の色や模様と同じ色や模様を持つ縦枠が用いられる。さらに、縦枠130及び縦枠131の壁110の厚み方向の長さは、柱111の大きさ、プラスターボード113の厚み、仕上げ材114の厚み及び幅木115の厚みの組み合わせによって様々な種類のものが必要となる。そのため、ドアの表面の種類や、壁の厚み等に応じた縦枠の材料を在庫として持つ必要があるため、在庫コストの負担増となる。
【0047】
実施の形態1では、ドア20が閉まった状態で、開き側からドア開口部を見ると、ドア20の周囲には従来の構造1のような存在感の大きい縦枠が見えることは無く、美観に優れる。ドア20と仕上げ材14の隙間の奥には縦枠30及び縦枠31があるが、奥まった位置にあるので目立たない。従って、縦枠30及び縦枠31の表面の色や模様をドア20の表面色や模様と同じにする必要がなくなる。また、縦枠30及び縦枠31の壁10の厚み方向の長さは壁の厚みの影響を受けないため、壁の厚みに応じて多くの種類の在庫を持つ必要がなくなることから、在庫コストの負担軽減となる。また、一般的に仕上げ材14として用いられる壁紙は白色を基調とするものが多い。そのため、縦枠30及び縦枠31の表面を、同じ白色を基調とした色にしておくことで、さらに目立たなくすることができる。
【0048】
また、従来の構造1では、ドア120が開いた状態でドア開口部を見ると、
図6に示すように仕上げ材114とは異なる表面を持つ縦枠131が目立つため、美観に優れるとは言えない。
実施の形態1では、ドア20が開いた状態でドア開口部を見ると、
図5に示すように、仕上げ材14とは異なる表面を持つ縦枠31は目立ちにくい。さらに縦枠31の表面が壁紙と同じ基調の色であれば、さらに目立ちにくくなり、美観に優れる。
【0049】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るドア開口部の構造
について、図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態2に係るドア開口部の構造では、
図7に平面で示すように、2つのドア開口部が直交して隣接して配置される。
図7は2つのドア開口部の内、
図7の下方に示すドア開口部のドアと2つの縦枠を示し、もう1つのドア開口部はドアの一部と一方の縦枠のみを示しておりもう一方の縦枠は図示しない。
【0050】
図7の下方に示すドア開口部の縦枠230及び縦枠231及びドア220は、実施の形態1の縦枠30、縦枠31及びドア20と同様の構成である。壁の構成についても、実施の形態1の壁10と同様の構成であり、柱211、胴縁212、プラスターボード213、仕上げ材214及び幅木215を有し、実施の形態1と同様にそれぞれが配置される。
【0051】
もう一つのドア開口部の縦枠231、図示しない縦枠及びドア221は、実施の形態1の縦枠30、縦枠31及びドア20と同様の構成である。下方に示すドア開口部の縦枠230ともう一つのドア開口部の縦枠231は1つの柱211の
図7の下側側面と右側側面にネジ251によって固定されている。
本実施の形態2では縦枠についてのみ説明したが、ドア開口部の上部又は下部に配置される横枠についても同様の構成としても良い。
【0052】
(従来の構造2)
比較のために、従来の構造2に係るドア開口部の構造について、図面を参照しながら説明する。従来の構造2に係るドア開口部の構造は、
図8に平面で示すように、2つのドア開口部が直交して隣接して配置されるものである。
図8は2つのドア開口部の内、
図8の下方に示すドア開口部のドアと両方の縦枠を示し、もう1つのドア開口部はドアの一部と1方の縦枠のみを示しており、もう1方の縦枠は図示しない。
【0053】
図8の下方に示すドア開口部の縦枠330、縦枠331及びドア320は、従来の構造1に係る縦枠130、縦枠131及びドア120と同様である。縦枠330及び縦枠331の壁方向の長さは、壁の厚みよりも長いため、お互いが干渉することになり、柱311の直交する2面に取り付けることはできない。そのため、縦枠330及び縦枠331を柱311から離して、お互いが干渉しないように固定する必要がある。
【0054】
図8の下方に示すドア開口部の縦枠330は、柱311の
図8の下側の側面に、スペーサを挟んでネジ351によって固定されている。縦枠330に対向する位置に縦枠331が固定されており、縦枠330及び縦枠331にドア320が設置されている。そのため縦枠330は、従来の構造1に係るドア開口部の構造の場合よりも、柱311から離れた位置に固定されている。
【0055】
もう一つのドア開口部の縦枠331は柱311の
図8の右側の側面に、スペーサを挟んでネジ351によって固定されている。縦枠331に対向する位置に図示しない縦枠が固定されており、縦枠331及び図示しない縦枠にドア321が設置されている。そのため縦枠331は、従来の構造1に係るドア開口部の構造の場合よりも、柱311から離れた位置に固定されている。
【0056】
縦枠330及び縦枠331を柱311から離して固定したために生じることとなった隙間を埋めるように、胴縁312、プラスターボード313、仕上げ材314及び幅木315が配置される。
【0057】
縦枠330及び縦枠331に、従来の構造1と同様に、戸当り322が配置される。ドア320及びドア321には、図示しない蝶番及びラッチが配置されている。
【0058】
(従来の構造3)
さらに比較のために、従来の構造3に係るドア開口部の構造
について、図面を参照しながら説明する。従来の構造3に係るドア開口部の構造は、
図9に平面で示すように、2つのドア開口部が直交して隣接して配置されるものである。
図9は2つのドア開口部の内、
図9の下方に示すドア開口部のドアと2つの縦枠を示し、もう1つのドア開口部はドアの一部と1方の縦枠のみを示しており、もう1方の縦枠は図示しない。
【0059】
まずは、
図9の下部に示すドア開口部の構造について説明する。
壁410のドア開口部に縦枠430を配置して、縦枠430にドア420を配置する。縦枠430は略矩形の断面であり、長辺は柱411の1辺の長さよりも短く、両側の短辺にスリットが形成されている。縦枠430は、壁410の内部にある柱411に固定される。従来の構造3では、位置調整のために、柱411と縦枠430の間にスペーサ417を挟んでいる。従来の構造1と同様に、壁410は、柱411、胴縁412及びプラスターボード413を有する。従来の構造3では、仕上げ材及び幅木の図示は省略している。プラスターボード413は、従来の構造1と同様に、閉じ側の面及び閉じ側の面のみに配置される。そうするとプラスターボード413の端面は縦枠430によって隠れる事は無い。そのため、ケーシング材450及びケーシング材451が配置される。ケーシング材451は断面がL字形状である。ケーシング材450又はケーシング材451の一方の端部を縦枠430のいずれかのスリットに挿入し、他方の端部をプラスターボード413に当接して配置されることによって、プラスターボードの端面が見えなくなる。
【0060】
次に、従来の構造3のドア開口部の構造の、
図9の上部に示す、2つのドア開口部が直交して隣接して配置される部分について説明する。ケーシング材450及びケーシング材451は、一方の端部を縦枠430のいずれかのスリットに挿入し、他方の端部をプラスターボード413に当接して配置するものであるため、プラスターボード413との位置関係を確保するために縦枠430は柱411に直接配置することはできず、離す必要がある。
【0061】
縦枠430は、柱411の右側側面に、スペーサ416を挟んで固定されている。縦枠430に対向する位置に図示しない縦枠が固定されており、当該縦枠にドア420が設置されている。
もう一つの縦枠430は、柱411の下側側面に、スペーサ416を挟んで固定されている。壁は従来の構造1と同様に胴縁412及びプラスターボード413が配置される。ケーシング材450、ケーシング材451及びケーシング材452は、一方が縦枠430のいずれかのスリットに挿入され、他方がプラスターボード413に当接して配置される。
【0062】
ドア420は、縦枠430に設置されており、図示しない蝶番及びラッチが設置されている。戸当り421は、閉じたドア420の閉じ側の位置に、縦枠430に配置される。
【0063】
(実施の形態2と従来の構造2との比較)
本発明の実施の形態2と、従来の構造2を比較して説明する。
実施の形態2では、縦枠230及び縦枠231の、ドア220及びドア221の厚み方向の長さが、柱211のドア220及びドア221の厚み方向の長さよりも短い。このため、柱211の直交する2面にそのまま縦枠230及び231を配することができる。従って開口幅LAは、実施の形態1と同じ長さとなり、バリアフリー基準を満たす。
【0064】
しかし、従来の構造2では、縦枠330及び縦枠331の、ドア320及びドア321の厚み方向の長さは、柱311のドア320及びドア321の厚み方向の長さよりも長い。このため、実施の形態2のようにそのまま壁の2辺に取り付けることは、お互いが干渉するのでできない。従って、どちらかのドア開口部を柱から離して干渉を避け、離した部分の間を埋めるためにスペーサ316を設けなければならない。
【0065】
このため、従来の構造2では、縦枠330を柱311から離した分だけドア開口部の開口幅の長さが、従来の構造2よりもさらに短くなって、バリアフリー基準を満たさない。また、縦枠330を柱から離すために、実施の形態2よりも多い部材を必要とし、材料費及び工数を増加させる。
【0066】
(実施の形態2と従来の構造3との比較)
従来の構造3では、縦枠430及び縦枠431にスリットを設けて壁410との接合部を隠すケーシング材450及びケーシング材451を配する構造であるため、縦枠を柱411から離すためにスペーサ416が必要となる。さらに、壁の2辺に取り付ける場合は、ケーシング材同士が干渉するので、そのままでは取り付けることができない。そのためケーシング材451を固定するためのスペーサ416と、追加のケーシング材452が必要となる。そのため、実施の形態2よりも開口幅の長さが短くなる。
【0067】
従って、従来の構造3では、縦枠430及び縦枠431を柱411から離した分だけドア開口部の開口幅が狭くなってしまう。さらには、隣接部を隠すために、実施の形態2よりも多い部材を必要とし、材料費及び工数を増加させる。
【0068】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3について、図面を参照しながら説明する。実施の形態3は、ドア520に形成する突出部527を、ドア520の本体とは異なる材料で形成するものである。実施の形態1とは、ドアのみが異なる。
【0069】
ドア520本体は、
図10に示すように、従来の構造1のドアと同じように突出部は形成されていない。ドア520本体の両側の端部に、断面が略L字形状であって、長手方向の長さがドア520本体の上下方向と同じであるエッジ部570を固定して、ドア520となる。エッジ部570は、例えばアルミを押し出し成形されたものであるが、樹脂の成形品としても良い。エッジ部570のドア本体の端面に当接する部分の、ドア520の厚み方向の長さは、ドア520本体の厚みと同じである。エッジ部570の突出部527の形状は、実施の形態1に係る突出部27と同じである。突出部527は、ドア開口部の外側に突出端面521を有し、閉じ側に段差側面522を有する。エッジ部570は、突出部527を除いたドア開口部の外側に端面523を有する。ドア520を閉じたときに、突出端面521は、縦枠530のドア開口部の内側の面よりも外側にある。また、段差側面522は縦枠530の閉じ側の面よりも開き側にある。さらに端面523は縦枠530のドア開口部の内側の面よりも内側にある。すなわち、突出部527は、縦枠530のドア開口部内側の面よりも外側に伸びている。
【0070】
また、突出部527は中空であり、段差側面522の、左右方向中程に、全長に渡ってスリットが形成されている。ドア520を閉じたときに、縦枠530に当接する部分に、緩衝材であるタイト材580が配置されている。タイト材580は、スリット及び突出部527の空洞に嵌合する取り付け部と、湾曲してドア520を閉じたときに先端が縦枠530に当接する当接部とを有しており、段差側面522に取り付けられている。タイト材580は弾性部材であり、例えばゴムで形成されている。
なお、緩衝材として、断面が矩形や半円形等の発泡部材やゴム等の弾性部材を段差側面522に貼り付けて、ドア520を閉じたときに部分的に縦枠530に当接する構成としても良い。
【0071】
図10では、ドア開口部の開閉側のみを示したが、軸側も同様に、ドア520本体にエッジ部570が固定されている。
本実施の形態3では縦枠についてのみ説明したが、ドア開口部の上部又は下部に配置される横枠についても同様の構成としても良い。
【0072】
本発明の実施の形態3によれば、ドア520本体には従来の構造と同様に突出部を設ける必要が無いので、ドア520本体の加工コストは低減できる。また、ドア520の両側端部を金属で覆うことになるため、蝶番やラッチをドアに固定する際に、木材表面よりも強固に固定しやすくなる。
【0073】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0074】
10、110、410、510 壁
11、111、211、311、411 柱
12、112、212、312 胴縁
13、113、213、313 プラスターボード
14、114、214、314 仕上げ材
15、115、215、315 幅木
20、120、220、221、320、321、520 ドア
21、25、521 突出端面
22、24、522 段差側面
23、26、523 端面
27、28、227、228、527 突出部
30、31、130、131、230、231、330、331 縦枠
40、140 ラッチ
41 ケース錠
42、142 蝶番
51、52、251、351 ネジ
61、62、63 面
121、322、421、422 戸当り
316、416、417 スペーサ
430、431、530 縦枠
570 エッジ部
580 タイト材