(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】リフター
(51)【国際特許分類】
B65G 25/06 20060101AFI20221003BHJP
A21C 9/08 20060101ALI20221003BHJP
B66F 7/14 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
B65G25/06
A21C9/08 A
B66F7/14
(21)【出願番号】P 2021199489
(22)【出願日】2021-12-08
【審査請求日】2021-12-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521538136
【氏名又は名称】株式会社西友エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】西 公男
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-317299(JP,A)
【文献】特開2001-252191(JP,A)
【文献】特開2009-132048(JP,A)
【文献】特開平11-306700(JP,A)
【文献】特開平07-075478(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113273584(CN,A)
【文献】中国実用新案第208692700(CN,U)
【文献】「株式会社 西友エンジニアリング」,[online],2020年11月28日,https://web.archive.org/web/20201128135513/https://seiyueng.com/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 25/06
B65G 33/00-33/38
B66F 7/14
A21C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のコラムと、左右の前記コラムの間に配置されて容器を保持する容器ホルダと、を備え、左右の前記コラムには、スクリューシャフトが回転可能に設けられており、前記スクリューシャフトには、前記容器ホルダに連結されるスクリューナットが螺合されており、
動力伝達部により1つのモータの動力を左右の前記コラムの各前記スクリューシャフトに伝達して各前記スクリューシャフトの回転により前記容器ホルダを昇降させるリフターであって、
前記容器ホルダの側面には、ボスが設けられており、
前記スクリューナットに取り付けられるナットハウジングの外周面には、前記ボスの中心孔に嵌入される支持軸が設けられて
おり、
前記ボスに対する前記支持軸の嵌入長さが80~120mmであり、
前記動力伝達部を構成する部品が損傷した際に左右の前記コラムにおいて一方の前記スクリューシャフトのみに前記モータの動力が伝達される状況において、前記容器ホルダが水平に対して傾いた状態で停止されることを特徴とするリフター。
【請求項2】
前記スクリューシャフトは、2条の台形ネジ又は角ネジを備え、前記台形ネジ又は前記角ネジのリードが26~30mmである請求項1に記載のリフター。
【請求項3】
パン生地用である請求項1
又は2に記載のリフター。
【請求項4】
前記支持軸は、前記スクリューシャフトに対する横方向の衝撃を吸収するためのガイドホイールに挿通されており、
前記ガイドホイールは、前記ナットハウジングと前記ボスとの間に配置されており、
前記ガイドホイール及び前記ボスは、前記支持軸よりも軟らかい金属により形成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリフター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフターに関し、さらに詳しくは、スクリューシャフトの回転により容器ホルダを昇降させるリフターに関する。
【背景技術】
【0002】
中種法による仕込みエリアで分割機やミキサーにパン生地を搬送するためのパン生地用リフターが一般に用いられている(例えば、特許文献1等を参照)。このパン生地用リフターとしては、左右のコラム(主柱)と、左右のコラムの間に配置されて容器を保持する容器ホルダと、を備え、左右のコラムには、スクリューシャフト(主軸又は雄ネジ)が回転可能に設けられており、スクリューシャフトには、容器ホルダに連結されるスクリューナット(雌ネジ)が螺合されており、スクリューシャフトの回転により容器ホルダを昇降させるものが一般に知られている。この種のパン生地用リフターでは、例えば、
図9に示すように、スクリューナット108に取り付けられるナットハウジング132の外周面には一対の支持軸137が設けられ、一対の支持軸137が横断面U字状の支持部材151で支持され、支持部材151にはリンク部材152の上端部が軸支され、リンク部材152の下端部が容器ホルダ105の側面に軸支されていることが多い。言い替えると、容器ホルダ105に対してスクリューナット108が一対の支持軸137により両持ち状態で連結されている。これにより、容器ホルダ105を円滑に昇降させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のパン生地用リフターでは、容器ホルダ105に対してスクリューナット108が一対の支持軸137により両持ち状態で連結されているので、左右のコラムの各スクリューシャフト107にモータの動力を伝達する動力伝達部を構成する部品(例えば、タイヤカップリング、減速機等)が損傷等した際に、一方のスクリューシャフト107のみにモータの動力が伝達される状況において、左右のスクリューシャフト107、即ち停止軸107及び作動軸107の各スクリューナット108に高低差が生じても各スクリューナット108に対して曲げモーメントがかかり難く垂直荷重のみがかかるため、容器ホルダ105の上昇又は下降が継続されてしまう。その結果、動力伝達部を構成する部品の損傷等を迅速に把握できず、重大な人身事故が発生してしまう恐れがある。
【0005】
また、従来のパン生地用リフターでは、リードが24mm以下の2条の台形ネジ又は角ネジを備えるスクリューシャフトを採用することが多い。この場合、スクリューシャフトの回転を速くしないと容器ホルダの適正な昇降速度を確保できない。よって、スクリューシャフトの回転が速く稼働時及び停止時の衝撃も大きくなり、潤滑油(具体的に、動力伝達部を構成する減速機内の潤滑油)やグリス(具体的に、スクリューシャフトやスクリューナットに塗布されたグリス、スクリューシャフトを吊り下げ状態で軸支するベアリングケース内のグリス)等の異物が周囲に飛散し易い。そのため、潤滑油やグリス等の異物の飛散防止用のカバーを備えたり、モータをインバータ制御してスクリューシャフトの回転の開始時及び停止時の速度を調整したりすることが必須となる。一方、リードを単純に長くしても、メンテナンス作業時等のモータ停止時に容器ホルダが自重で落下してしまう恐れがある。さらに、容器ホルダの昇降時の摩擦抵抗が大きくなってしまう。
【0006】
ここで、国内の中種法によるミキサーや分割機に製パン生地を搬送するリフト(リフター)としてローラーチェーンを使用するものが知られている。このローラーチェーンを使用するリフトは、短定期的にチェーン交換が必要になるので、取付や交換の作業は、組立てや保全作業の基本となる作業である。ところが、チェーンはかみ合い電動なので、摩耗していても、たるみが多くても少なくても、電動できてしまうので、いい加減に調整してしまいがちである。そうなってしまうと、新品に交換しても早期摩耗したり、チェーンが切れたり、チェーンが巻き付いたり、などのトラブルが起きて機械装置が停止してしまう。更に数ミリのピン径では衝撃等の強度に安全率不足である。従って製パン業界の数百Kgを吊り上げる中種法ではローラーチェーンを使用してのリフトは不向きであり、やはり、スクリュー式リフトを使うべきである。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、動力伝達部を構成する部品が損傷等した際に容器ホルダの昇降を停止させることで、部品の損傷等を迅速に把握でき且つ重大な人身事故の発生を防止することができる簡易な構造のリフターを提供することを目的とする。
本発明は、上記目的に加えて、潤滑油やグリス等の異物の飛散を抑制して容器内の製品原料への異物混入を防止できるとともに、モータ停止時の容器ホルダの自重での落下を防止でき、更に容器ホルダの昇降時の摩擦抵抗を抑えることができるリフターを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.左右のコラムと、左右の前記コラムの間に配置されて容器を保持する容器ホルダと、を備え、左右の前記コラムには、スクリューシャフトが回転可能に設けられており、前記スクリューシャフトには、前記容器ホルダに連結されるスクリューナットが螺合されており、前記スクリューシャフトの回転により前記容器ホルダを昇降させるリフターであって、
前記容器ホルダの側面には、ボスが設けられており、
前記スクリューナットに取り付けられるナットハウジングの外周面には、前記ボスの中心孔に嵌入される支持軸が設けられていることを特徴とするリフター。
2.前記ボスに対する前記支持軸の嵌入長さが80~120mmである上記1.に記載のリフター。
3.前記スクリューシャフトは、2条の台形ネジ又は角ネジを備え、前記台形ネジ又は前記角ネジのリードが26~30mmである上記1.又は2.に記載のリフター。
4.パン生地用である上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のリフター。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリフターによると、容器ホルダの側面には、ボスが設けられており、スクリューナットに取り付けられるナットハウジングの外周面には、ボスの中心孔に嵌入される支持軸が設けられている。これにより、容器ホルダに対してスクリューナットが片持ち状態で連結されるため、動力伝達部を構成する部品が損傷等した際に、左右のコラムにおいて一方のスクリューシャフトのみにモータの動力が伝達される状況において、左右のスクリューシャフト、即ち停止軸及び作動軸の各スクリューナットに高低差が生じることにより各スクリューナットに対して曲げモーメントがかかるため、容器ホルダが水平に対して傾いた状態で停止される。その結果、動力伝達部を構成する部品の損傷等を迅速に把握できるとともに、重大な人身事故の発生を防止することができる。
【0010】
また、前記ボスに対する前記支持軸の嵌入長さが80~120mmである場合は、嵌入長さが80mm以上であれば、ボスと支持軸の間にガタが生じ難く、一方のスクリューシャフトのみにモータの動力が伝達される状況において、左右のスクリューシャフトの各スクリューナットに対して曲げモーメントが効果的に作用される。一方、嵌入長さが120mm以内であれば、容器ホルダの横幅を十分に確保しつつ左右のコラムの間隔を小さくできる。
【0011】
さらに、前記スクリューシャフトは、2条の台形ネジ又は角ネジを備え、前記台形ネジ又は前記角ネジのリードが26~30mmである場合は、リードが26mm以上であれば、スクリューシャフトの回転を遅くしても容器ホルダの適正な昇降速度を確保でき、スクリューシャフトの回転及び停止による潤滑油やグリス等の異物の飛散を抑制して容器内の製品原料への異物混入を防止することができる。一方、リードが30mm以内であれば、リードが長すぎないため、メンテナンス作業時等のモータ停止時に容器ホルダが自重で落下してしまうことを防止できる。さらに、容器ホルダの昇降時の摩擦抵抗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【
図1】実施形態に係るパン生地用リフターの分解斜視図である。
【
図4】実施形態に係るスクリューナットに対する容器ホルダの連結部を含む部位の横断面図である。
【
図5】実施形態に係るスクリューシャフトの要部側面図である。
【
図6】パン生地用リフターの作用説明図であり、(a)はドゥボックスを容器ホルダに向かって前進させる状態を示し、(b)はドゥボックスを容器ホルダに保持させた状態を示し、(c)は容器ホルダの上昇途中の状態を示し、(d)は容器ホルダを上昇端側で反転させた状態を示す。
【
図8】比較例に係るパン生地用リフターの要部断面図である。
【
図9】従来のパン生地用リフターを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0014】
以下、図面を用いて実施形態により本発明を具体的に説明する。なお、本実施形態では、本発明に係る「リフター」として、中種法による仕込みエリアで分割機やミキサーにパン生地を搬送するためのパン生地用リフター1を例示する(
図1参照)。さらに、スクリューシャフト(主軸又は雄ネジ)7と、スクリューシャフト7に螺合されるスクリューナット(雌ネジ)8と、を備えるスクリューシャフト構造体Sを例示する(
図3参照)。
【0015】
本実施形態に係るパン生地用リフター1は、
図1~
図3に示すように、左右のコラム(主柱)2a、2bと、左右のコラム2a、2bの間に配置されてドゥボックス4(本発明に係る「容器」として例示する。
図6参照)を保持する容器ホルダ5と、を備えている。これら各コラム2a、2bには、上下方向に延びるスクリューシャフト7が回転可能に設けられている。このスクリューシャフト7には、容器ホルダ5に連結されるスクリューナット8が螺合されている。そして、スクリューシャフト7にモータ10の動力を動力伝達部9を介して伝達してスクリューシャフト7を回転させることで、スクリューナット8とともに容器ホルダ5が昇降される(
図6参照)。
【0016】
左右のコラム2a、2bは、垂直方向に延びる中空柱状に形成されている(
図4参照)。これら各コラム2a、2bは、水平方向に離間して立設されている。また、各コラム2a、2bは、スクリューシャフト7の上部を吊り下げ状態で軸支するベアリングケース11と、スクリューシャフト7の下部を軸支するフランジユニット12と、を備えている。このベアリングケース11は、各コラム2a、2bに固定されるブラケット13に取り付けられている。さらに、ベアリングケース11内には、2個のラジアル軸受と1個のスラスト軸受が設けられているとともに、オイルシールにより高粘度のグリスが封入されている。このグリスは、オイルシールが損傷したり劣化や熱で粘度が低下したりすることでベアリングケース11内から漏れ出ることがある。
【0017】
なお、
図1において、左のコラム2aでは、右のコラム2bに記載したスクリューシャフト7、ベアリングケース11及びフランジユニット12等の記載を省略し、右のコアラム2bでは、左のコラム2aに記載したスクリューナット8及びガイド部21等の記載を省略する。さらに、
図1中の符号「25」は、図示しない分割機やミキサーに向かってパン生地を移送するためのシュートを示す。
【0018】
容器ホルダ5は、開放された前方から容器を保持可能である。この容器ホルダ5は、左右の側板16と、左右の側板16の間にかけ渡される後板17と、各側板16の内側に設けられる略L字状の支持板18と、を備えている。これら各側板16の外側面には、アーム19が水平軸回りに揺動自在に支持されている。これら各アーム19の間には、容器ホルダ5上に移送されたドゥボックス4の前方への飛び出しを防止するための安全バー20が取り付けられている。
【0019】
各側板16の外側面には、容器ホルダ5の昇降をガイドするためのガイド部21が設けられている。このガイド部21は、ガイド軸22と、ガイド軸22に軸支されるガイドローラ23と、を備えている。このガイドローラ23は、容器ホルダ5の昇降に伴ってコラム2a、2bに備えられるガイド面24(
図4参照)に沿って転動される。これにより、容器ホルダ5は、昇降されるとともに、上昇端側で後述する支持軸37を支点として反転される(
図6参照)。さらに、ガイドローラ23の外周面には、横ブレ防止のためにウレタン樹脂等のライニングが施されている。
【0020】
容器ホルダ5の側面(具体的に側板16の外側面)には、後述する支持軸37が嵌入する中心孔27aを有するボス27が設けられている。このボス27は、その軸心が左右のコラム2a、2bの並び方向A(ボス27と支持軸37の対向方向A)に沿うように配置されている(
図4参照)。さらに、ボス27は、支持軸37よりも軟らかく耐摩耗性に優れた金属(例えば、砲金(BC、PBC)等)により形成されている。
【0021】
スクリューシャフト7は、2条の台形ネジ又は角ネジを備えている(
図5参照)。この台形ネジ及び角ネジのリードLとしては、26~30mm(好ましくは26~28mm)を採用できる。より具体的に、台形ネジ又は角ネジは、そのピッチPが13mmであり、そのリードLが26mmであり、その外径Dが60mmである。さらに、スクリューシャフト7及び後述するスクリューナット8には、高粘度のグリスが塗布されている。このグリスは、劣化で粘度が低下したり塵埃が付着したりするため定期的に補給(再塗布)されることが望ましい。
【0022】
スクリューナット8には、該スクリューナット8の外周を覆うようにナットハウジング32が取り付けられている。このスクリューナット8は、スクリューシャフト7に応じたリードを有する2条の台形ネジ又は角ネジを備えている。また、ナットハウジング32は、スクリューナット8のグリスの飛散と塵埃の侵入を防ぐためのものである。さらに、ナットハウジング32上には、横ブレ防止のための馬蹄状プレート33及びナットガイド34がこの順で取り付けられている。
【0023】
ナットハウジング32の外周面には、ボス27の中心孔27aに嵌入されて軸支される支持軸37が設けられている。この支持軸37は、左右のコラム2a、2bの並び方向Aに沿って延びている(
図4参照)。また、ボス27に対する支持軸37の嵌入長さL1としては、80~120mm(好ましくは90~110mm)を採用できる。より具体的に、嵌入長さL1は94mmである。さらに、支持軸37は、スクリューシャフト7に対する横方向の衝撃を吸収するためのガイドホイール38に挿通されている。このガイドホイール38は、支持軸37よりも軟らかく耐摩耗性に優れた金属(例えば、砲金(BC、PBC)等)により形成されている。さらに、ボス27に嵌入された支持軸37の先端側には、容器ホルダ4の横方向への移動を吸収するための隙間39が設けられている。
【0024】
動力伝達部9は、1つのモータ10の動力を左右のコラム2a、2bの各スクリューシャフト7に伝達するものである。この動力伝達部9は、左右のコラム2a、2bの上端部にかけ渡された支持部41上に配置されている。また、動力伝達部9は、上流側の減速機43及び下流側の減速機44と、これら減速機43、44の間に配置されるドライブシャフト45と、を備えている。上流側の減速機43の入力軸43aは、タイヤカップリング46を介してモータ10の駆動軸と連結されている。また、上流側の減速機43の出力軸43bは、チェーンカップリング47を介してスクリューシャフト7の上端部と連結されている。このチェーンカップリング47には、グリスの飛散と塵埃の侵入を防ぐためのカップリングケース48が取り付けられている。さらに、上流側の減速機43の出力軸43cには、チェーン49が連結されるスプロケット50が取り付けられている。このチェーン49は、スクリューシャフト7の回転数(すなわち、容器ホルダ5の昇降位置)を検出するために用いられる。また、減速機43、44内には、2重のオイルシールにより低粘度の潤滑油が封入されている。この潤滑油は、オイルシールの損傷により減速機43、44内から漏れ出ることがある。さらに、減速機43、44には、潤滑油が熱くなったときにエアを抜くためのエア抜き弁が設けられている。
【0025】
ドライブシャフト45は、複数のピローユニット51により水平軸回りに回転自在に支持されている。また、ドライブシャフト45は、その一端側がタイヤカップリング46を介して上流側の減速機43の出力軸43dと連結されており、その他端側がタイヤカップリング46を介して下流側の減速機44の入力軸44aと連結されている。この下流側の減速機44の出力軸44bは、チェーンカップリング47を介してスクリューシャフト7の上端部と連結されている。
【0026】
なお、本パン生地用リフター1は、作業員の誤った位置取り等を検知するための人感センサー(図示省略)を備え、人感センサーの検知により、リフター1の作動を停止したり、音声や画面表示等で異常を報知したりする。さらに、本パン生地用リフター1は、作業者による動作手順が適正な手順と異なる場合(例えば、安全バー20のかけ忘れ等)、作業者による動作が適正な手順となるように音声や画面表示等で誘導(例えば、「安全バー20をかけて下さい」等の誘導)する。
【0027】
次に、上記構成のパン生地用リフター1の作用効果について説明する。先ず、下降端に位置する容器ホルダ5に対してパン生地を収容したドゥボックス4を前進させる(
図6(a)参照)。次に、安全バー20を下ろして容器ホルダ5にドゥボックス4を保持させる(
図6(b)参照)。次いで、モータ10の動力を動力伝達部9で伝達してスクリューシャフト7の回転により容器ホルダ5を上昇させる(
図6(c)参照)。この容器ホルダ5の上昇端側では、ガイド部21がガイド面24(湾曲面部)を転動することで容器ホルダ5が反転され、ドゥボックス4内のパン生地がシュート25を介して分割機やミキサーに投入される(
図6(d)参照)。その後、上記の作用と逆の手順で、容器ホルダ5を下降端まで下降させて安全バー20を外すことで、容器ホルダ5から空のドゥボックス4が取り出される。
【0028】
なお、本パン生地用リフター1では、安全対策として、容器ホルダ5は、その上昇時に反転手前で中間停止される。また、容器ホルダ5は、その下降時に中間停止され、それ以降の下降が手動スイッチで行われる。さらに、容器ホルダ5の下降時には警報装置が作動される。
【0029】
ここで、動力伝達部9を構成する部品(例えば、タイヤカップリング46、減速機43、44等)が損傷等した際には、左右のコラム2a、2bにおいて一方のスクリューシャフト7のみにモータ10の動力が伝達される状況となることがある。例えば、
図7に示すように、容器ホルダ5の上昇時に左のスクリューシャフト7が停止軸となり右のスクリューシャフト7が作動軸となる状況において、停止軸7及び作動軸7の各スクリューナット8に高低差が生じることにより各スクリューナット8に対して曲げモーメントMがかかるため、容器ホルダ5が水平に対して傾いた状態で停止される。この容器ホルダ5の水平に対する傾斜角は、スクリューナット8の摩耗状態に応じて15度以内となる。
【0030】
以上より、本実施形態のパン生地用リフター1によると、容器ホルダ5の側面には、ボス27が設けられており、スクリューナット8に取り付けられるナットハウジング32の外周面には、ボス27の中心孔27aに嵌入される支持軸37が設けられている。これにより、容器ホルダ5に対してスクリューナット8が片持ち状態で連結されるため、動力伝達部9を構成する部品が損傷等した際に、左右のコラム2a、2bにおいて一方のスクリューシャフト7のみにモータ10の動力が伝達される状況において、左右のスクリューシャフト7、即ち停止軸7及び作動軸7の各スクリューナット8に高低差が生じることにより各スクリューナット8に対して曲げモーメントがかかるため、容器ホルダ5が水平に対して傾いた状態で停止される。その結果、動力伝達部9を構成する部品の損傷等を迅速に把握できるとともに、重大な人身事故の発生を防止することができる。
【0031】
また、本実施形態では、ボス27に対する支持軸37の嵌入長さL1が80~120mmである。嵌入長さL1が80mm以上であれば、ボス27と支持軸37の間にガタが生じ難く、一方のスクリューシャフト7のみにモータ10の動力が伝達される状況において、左右のスクリューシャフト7の各スクリューナット8に対して曲げモーメントMが効果的に作用される。一方、嵌入長さL1が120mm以内であれば、容器ホルダ5の横幅を十分に確保しつつ左右のコラム2a、2bの間隔を小さくできる。
【0032】
また、本実施形態では、スクリューシャフト7は、2条の台形ネジ又は角ネジを備え、台形ネジ又は角ネジのリードLが26~30mmである。リードLが26mm以上であれば、スクリューシャフト7の回転を遅くしても容器ホルダ5の適正な昇降速度を確保でき、スクリューシャフト7の回転及び停止による潤滑油(具体的に、動力伝達部9を構成する減速機43、44内の潤滑油)やグリス(具体的に、スクリューシャフト7やスクリューナット8に塗布されたグリス、スクリューシャフト7を吊り下げ状態で軸支するベアリングケース11内のグリス)等の異物の飛散を抑制してドゥボックス4内のパン生地への異物混入を防止することができる。一方、リードLが30mm以内であれば、リードLが長すぎないため、メンテナンス作業時等のモータ停止時に容器ホルダ5が自重で落下してしまうことを防止できる。さらに、容器ホルダ5の昇降時の摩擦抵抗を抑えることができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、従来のパン生地用リフター(
図9参照)に比べて、グリスの補給や水平調整作業の頻度を多くする必要があるが、スクリューナット8での異音発生を契機としてグリスの補給や水平調整作業の必要性を容易に把握することができる。
【0034】
ここで、比較例に係るパン生地用リフター101として、
図8に示すように、スクリューナット108に取り付けられるナットハウジング132の外周面にボス127を設け、容器ホルダ105の側面にボス127の中心孔127aに嵌入される支持軸137を設ける形態が挙げられる。この形態では、ナットハウジング132の外周面に外径の大きなボス127を溶接等で取り付ける必要があり、本パン生地用リフター1に比べてボス127の取付性が低下する。また、左右のコラム102a、102bに容器ホルダ105の昇降時にボス127が通過するための空間を設ける必要があり、本パン生地用リフター1に比べてコラム102a、102bの強度が低下する。
【0035】
尚、本発明においては、上記実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施形態とすることができる。すなわち、上記実施形態では、本発明に係るリフターとして、パン生地を次工程へ搬送するためのパン生地用リフター1を例示したが、これに限定されず、例えば、パン生地以外のペースト状食品材料やゴム材料などを次工程へ搬送するためのペースト状材料用リフターとしてもよい。
【0036】
さらに、上記実施形態では、車輪付きの容器(ドゥボックス)4を例示したが、これに限定されず、例えば、車輪を備えない容器としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、容器ホルダを昇降させるための技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0038】
1;パン生地用リフター、2a,2b;左右のコラム、4;ドゥボックス(容器)、5;容器ホルダ、7;スクリューシャフト、8;スクリューナット、27;ボス、27a;中心孔、32;ナットハウジング、37;支持軸、L;リード、L1;嵌入長さ、S;スクリューシャフト構造体。
【要約】
【課題】動力伝達部を構成する部品が損傷等した際に容器ホルダの昇降を停止させることで、部品の損傷等を迅速に把握でき且つ重大な人身事故の発生を防止することができる簡易な構造のリフターを提供する。
【解決手段】本リフター1は、左右のコラム2a、2bと、左右のコラムの間に配置されて容器を保持する容器ホルダ5と、を備え、左右のコラムには、スクリューシャフト7が回転可能に設けられており、スクリューシャフトには、容器ホルダに連結されるスクリューナット8が螺合されており、スクリューシャフトの回転により容器ホルダを昇降させるものである。そして、容器ホルダ5の側面には、ボス27が設けられており、スクリューナット8に取り付けられるナットハウジング32の外周面には、ボス27の中心孔に嵌入される支持軸37が設けられている。
【選択図】
図1