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特許7150368チアゾール系化合物の結晶形およびその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】チアゾール系化合物の結晶形およびその応用
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/12 20060101AFI20221003BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20221003BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C07D417/12 CSP
A61K31/4439
A61P31/22
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021500202
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 CN2019094824
(87)【国際公開番号】W WO2020007355
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】201810738963.X
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521493167
【氏名又は名称】フェーノ・セラピューティクス・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Phaeno Therapeutics Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】石 衛華
(72)【発明者】
【氏名】江 志▲ガン▼
(72)【発明者】
【氏名】賀 海鷹
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-519134(JP,A)
【文献】特表2008-530042(JP,A)
【文献】特表2008-534539(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10226048(DE,A1)
【文献】特表2014-528948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線粉末回折パターンが、10.81±0.2°、15.97±0.2°、21.69±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
【化1】
式(I)で表れる化合物の結晶体A。
【請求項2】
X線粉末回折パターンが、10.81±0.2°、13.03±0.2°、15.97±0.2°、18.48±0.2°、21.69±0.2°、23.78±0.2°、25.14±0.2°、26.96±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
請求項1に記載の結晶体A。
【請求項3】
XRPDパターンの分析データが、下記表:
【表1】
で示される、
請求項2に記載の結晶体A。
【請求項4】
示差走査熱量測定曲線が、216.04±3℃に吸熱ピークの開始点を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶体A。
【請求項5】
熱重量分析曲線が、120±3℃で0.4442%の重量損失を有し、204±3℃で2.4492%の重量損失を有する、
請求項1~のいずれか一項に記載の結晶体A。
【請求項6】
式(II)で表れる化合物。
【化2】
【請求項7】
X線粉末回折パターンが、10.17±0.2°、11.85±0.2°、15.94±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
式(II)で表れる化合物の結晶体B。
【化3】
【請求項8】
X線粉末回折パターンが、8.46±0.2°、10.17±0.2°、11.85±0.2°、13.98±0.2°、15.94±0.2°、20.39±0.2°、21.32±0.2°、23.78±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
請求項に記載の結晶体B。
【請求項9】
XRPDパターンの分析データが下記表:
【表2】
で示される、
請求項に記載の結晶体B。
【請求項10】
示差走査熱量測定曲線が、185.89±3℃に吸熱ピークの開始点を有する、
請求項のいずれか一項に記載の結晶体B。
【請求項11】
熱重量分析曲線が、187.16±3℃で0.7160%の重量損失を有する、
請求項10のいずれか一項に記載の結晶体B。
【請求項12】
単純ヘルペスウイルス関連疾患の治療のための医薬品の調製における、請求項1~のいずれか一項に記載の式(I)で表れる化合物の結晶体Aの使用。
【請求項13】
単純ヘルペスウイルス関連疾患の治療のための医薬品の調製における、請求項に記載の式(II)で表れる化合物および請求項11のいずれか一項に記載の式(II)で表れる化合物の結晶体Bの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
本出願は、2018年07月06日に出願された、出願番号がCN201810738963.Xである特許出願の優先権を主張する。
【0002】
<技術分野>
本発明は、式(I)で表われる化合物の結晶形A、式(II)で表われる化合物およびその結晶形B、ならびに単純ヘルペスウイルス関連疾患の治療のための医薬品の調製における式(I)で表われる化合物の結晶形A、式(II)で表われる化合物およびその結晶形Bの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ウイルス性疾患の治療において、新しい治療法の開発が強く求められている。さまざまな細菌感染症の治療法の開発は大きく進展しているが、ウイルスの治療法として、実行可能な方法はほとんどないのが現状である。ジドブジンは、ヒト免疫不全ウイルスの治療薬として承認された主要な医薬品である。現在、ヘルペスウイルス感染症の治療において、ガンシクロビル、アシクロビル、ホスカルネットを使用している。しかし、これらの治療法は、宿主細胞のDNA複製を損傷したり、限られたウイルス感染にしか効果がないため、かなりの副作用がある。さらに、ウイルスは治療に対する耐性を示してきて、治療の効果をますます低下させる可能性があることが知られている。
【0004】
ヘルペスウイルス科は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バール・ウイルス(Epstein-Barr virus)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)、ヒトヘルペスウイルス8(HHV8)、仮性狂犬病ウイルス、および鼻気管炎ウイルスなどを含むDNAウイルスのファミリーである。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、式(I)で表われる化合物の結晶形Aを提供する。そのX線粉末回折パターンは、10.81±0.2°、15.97±0.2°、21.69±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【化1】
【0006】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形AのX線粉末回折パターンは、10.81±0.2°、13.03±0.2°、15.97±0.2°、18.48±0.2°、21.69±0.2°、23.78±0.2°、25.14±0.2°、26.96±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0007】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.581°、10.807°、13.031°、15.301°、15.637°、15.971°、17.253°、18.160°、18.475°、20.076°、20.644°、21.688°、22.381°、23.782°、25.141°、26.167°、26.959°、29.108°、31.492°、31.904°、32.061°、33.385°、および36.623°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0008】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形AのXRPDパターンを図1に示す。
【0009】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形AのXRPDパターンの解析データを表1に示す。
【0010】
表1.結晶形AのXRPDパターンの解析データ
【表1】
【0011】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形Aの示差走査熱量測定曲線は、216.04±3℃に吸熱ピークの開始点を有する。
【0012】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形AのDSCパターンを図2に示す。
【0013】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形Aの熱重量分析(TGA)曲線は、120±3℃で0.4442%の重量損失を有し、204±3℃で2.4492%の重量損失を有する。
【0014】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形AのTGAパターンを図3に示す。
【0015】
本発明は、式(II)で表われる化合物を提供する。
【化2】
【0016】
本発明は、式(II)で表われる化合物の結晶形Bを提供する。そのX線粉末回折パターンは、10.17±0.2°、11.85±0.2°、15.94±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0017】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形BのX線粉末回折パターンは、8.46±0.2°、10.17±0.2°、11.85±0.2°、13.98±0.2°、15.94±0.2°、20.39±0.2°、21.32±0.2°、23.78±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0018】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形BのX線粉末回折パターンは、8.460°、10.174°、11.535°、11.850°、13.982°、15.935°、19.110°、19.464°、19.939°、20.391°、21.888°、23.309°、23.780°、24.517°、24.929°、26.034°、26.367°、26.959°、27.352°、28.772°、30.626°、31.297°、32.067°、33.845°、および38.235°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0019】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形BのXRPDパターンを図4に示す。
【0020】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形BのXRPDパターンの解析データを表2に示す。
【0021】
表2.結晶形BのXRPDパターンの解析データ
【表2】
【0022】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形Bの示差走査熱量測定曲線は、185.89±3℃に吸熱ピークの開始点を有する。
【0023】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形BのDSCパターンを図5に示す。
【0024】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形Bの熱重量分析(TGA)曲線は、187.16±3℃で0.7160%の重量損失を有する。
【0025】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形BのTGAパターンを図6に示す。
【0026】
さらに、本発明は、単純ヘルペスウイルス関連疾患の治療のための医薬品の調製における、前記の結晶形Aの使用を提供する。
【0027】
さらに、本発明は、単純ヘルペスウイルス関連疾患の治療のための医薬品の調製における、前記の式(II)で表われる化合物およびその結晶形Bの使用を提供する。
【発明の効果】
【0028】
新規のチアゾール系化合物として、本発明の化合物は、単純ヘルペスウイルス(HSV)に対して良好な抗ウイルス活性を有し;また、インビボでの薬物動態研究において、同じ有効量での血漿中曝露量がより低く、より優れた安全性を示した。本発明の式(I)で表われる化合物の結晶形Aおよび式(II)で表われる化合物の結晶形Bは、安定であり、光、熱や湿度の影響を受けにくく、且つインビボでの投与の効果が優れているため、良好なドラッガビリティを有することを示唆している。
【0029】
定義と説明
特に断らない限り、本明細書で使用される以下の用語および語句は、以下の意味を有する。特定の用語や語句は、特定の定義がなければ、不明瞭または不明確であると見なされるべきではなく、通常の意味で理解されるべきである。本明細書に商品名が記載されている場合、対応する商品またはその有効成分を指すものである。
【0030】
本発明の中間化合物は、以下に列挙される特定の実施形態、それらを他の化学合成方法と組み合わせることにより形成される実施形態、および当業者に周知の同等の代替方法を含む、当業者に周知の様々な合成方法によって調製することができる。好ましい実施形態は、本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書に開示される特定の実施形態における化学反応は、本発明の化学変化および必要とされる試薬や材料に適する適切な溶媒中で行う。本発明の化合物を得るために、当業者が、既存の実施形態に基づいて合成工程または反応スキームを変更または選択する必要がある場合がある。
【0032】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を限定するものではない。
【0033】
本発明で使用されるすべての溶媒は市販されるものであり、さらに精製することなく使用される。
【0034】
本発明で使用される溶媒は市販されるもの。本発明は以下の略語を使用する。EtOHはエタノールを表し;MeOHはメタノールを表し;TFAはトリフルオロ酢酸を表し;TsOHはp-トルエンスルホン酸を表し;mpは融点を表し;EtSOHはエタンスルホン酸を表し;MeSOHはメタンスルホン酸を表し;THFはテトラヒドロフランを表し;EtOAcは酢酸エチルを表し;NBSはN-ブロモスクシンイミドを表し;AIBNはアゾビスイソブチロニトリルを表し;DMSOはジメチルスルホキシドを表し;DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを表し;EDCIはカルボジイミドを表し;HOBtは1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを表す。
【0035】
本発明における粉末X線回折(X-ray powder diffractometer,XRPD)法
機器モデル:Bruker D8 advance X線回折計
試験方法:約10~20mgのサンプルをXRPD分析に使用した。
詳細なXRPDパラメータは以下の通りである。
ライトチューブ:Cu、kα、(λ=1.54056Å)
ライトチューブ電圧:40kV、ライトチューブ電流:40mA
発散スリット:0.60mm
検出器スリット:10.50mm
散乱防止スリット:7.10mm
走査範囲:4~40deg
ステップサイズ:0.02deg
ステップ長さ:0.12秒
サンプルディスクの回転速度:15rpm
【0036】
本発明における示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimeter,DSC)法
機器モデル:TA Q2000示差走査熱量計
試験方法:サンプル(~1mg)を採取し、DSCアルミニウムポットに入れて試験を行った。50mL/minのNの条件下、10℃/minの昇温速度で30℃(室温)から300℃(または350℃)にサンプルを加熱した。
【0037】
本発明における熱重量分析(Thermal Gravimetric Analyzer,TGA)法
機器モデル:TA Q5000IR熱重量分析器
試験方法:サンプル(2~5mg)を採取し、TGAプラチナポットに入れて試験を行った。25mL/minのNの条件下、10℃/minの昇温速度で室温から350℃までまたは20%の重量損失となるまで、サンプルを加熱した。
【0038】
動的蒸気吸着分析(Dynamic Vapor Sorption, DVS)法
機器モデル:SMS DVS Advantage動的蒸気吸着測定装置
測定条件:サンプル(10~15mg)をDVSサンプルパンに採取して測定した。
詳細なDVSパラメータは以下の通りである。
温度:25℃
平衡:dm/dt=0.01%/min(最短時間:10min,最長時間:180min)
乾燥:0%RHで120min乾燥させた。
RH(%)測定勾配:10%
RH(%)測定勾配の範囲:0%~90%~0%
吸湿性評価の分類は以下の通りである。
【表3】
【0039】
*25±1℃および80±2%RHでの吸湿による重量増加
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、式(I)で表われる化合物の結晶形AのCu-Kα放射線によるXRPDパターンである。
図2図2は、式(I)で表われる化合物の結晶形AのDSC曲線である。
図3図3は、式(I)で表われる化合物の結晶形AのTGA曲線である。
図4図4は、式(II)で表われる化合物の結晶形BのCu-Kα放射線によるXRPDパターンである。
図5図5は、式(II)で表われる化合物の結晶形BのDSC曲線である。
図6図6は、式(II)で表われる化合物の結晶形BのTGA曲線である。
図7図7は、式(II)で表われる化合物の結晶形BのDVS等温線である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の内容をよりよく理解するために、特定の実施例によって本発明をさらに説明するが、これらの特定の実施形態は、本発明の内容を限定するものではない。
【0042】
実施例1:式(I)で表われる化合物の調製
【化3】
【化4】
【0043】
工程1:化合物2の合成
化合物1(30.00g,162.11mmol)の四塩化炭素(400.00mL)溶液に、NBS(57.70g,324.22mmol)およびAIBN(5.32g,32.42mmol)を加え、80℃で反応系をさらに2時間攪拌した。反応が完了した後、減圧下で濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、無色の油状物として化合物2を得た。H NMR(400MHz,CDCl) δ 7.55(s,1H),7.47-7.45(m,1H),7.28-7.25(m,1H),4.62(s,1H),4.60(s,2H)。
【0044】
工程2:化合物3の合成
水素化ナトリウム(9.60g,240.02mmol,含有量60%)を、エタノール(144.00mL)とテトラヒドロフラン(432.00mL)の溶液にゆっくり加え、室温で5分間攪拌した後、この系に、マロン酸ジエチル(18.22g,113.75mmol)および化合物2(39.00g,113.75mmol)を加え、室温で反応系を30分間攪拌した。反応が完了した後、水でクエンチし、減圧下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、無色の油状物として化合物3を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ 7.36(s,1H),7.34-7.32(m,1H),7.22-7.12(m,1H),4.13(q,J1=14.0Hz,J2=7.2Hz,6H),1.18-1.14(m,8H)。
【0045】
工程3:化合物4の合成
化合物3(10.00g,29.31mmol)の水(10.00mL)とDMSO(100.00mL)の溶液に、塩化リチウム(7.45g,175.86mmol)を加え、160℃で反応系を4時間攪拌した。反応が完了した後、100mLの水を添加し、系に対して酢酸エチル(50mL×5)で抽出を行い、炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×2)で有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)によって精製して、黄色の油状物として化合物4を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ 7.40(s,1H),7.29(d,J=8.0Hz,1H),7.15(d,J=8.0Hz,1H),4.07(t,J=14.0Hz,2H),3.42-3.35(m,1H),3.16-3.04(m,4H),1.18(t,J=15.6Hz,3H)。
【0046】
工程4:化合物5の合成
化合物4(3.50g,13.00mmol)およびトリブチル(ピリジン-2-イル)スタンナン(7.18g,19.50mmol)のトルエン(50.00mL)溶液を、窒素ガスで3回置換した後、反応液にテトラ(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(901.67mg,780.00μmol)を加え、窒素ガス保護下、110℃で反応系を5時間攪拌した。反応が完了した後、減圧下で濃縮した。残留物を分取クロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=3:1)により精製して、淡黄色の固体として化合物5を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ 8.62(d,J=6.4Hz,1H),7.92-7.81(m,4H),7.29(d,J=5.2Hz,2H),4.09(q,J1=18.0Hz,J2=6.8Hz,2H),3.40-3.23(m,1H),3.21-3.15(m,4H),1.20(t,J=14.4Hz,3H)。
【0047】
工程5:化合物6の合成
20℃で、化合物5(2.00g,7.48mmol)のエタノール(20mL)と水(5mL)との混合溶液に、水酸化ナトリウム(1.50g,37.41mmol)を加え、20℃で反応系を30分間攪拌した。反応が完了した後、反応液を濃縮乾固させた。固体を20mLの水に溶解させ、pH4~6に酸性化し、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥させ、濾過し、濃縮し、淡黄色の油状物として化合物6を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ 8.63(d,J=4.4Hz,1H),7.94-7.83(m,3H),7.34-7.31(m,2H),3.30-3.00(m,1H),3.22-3.16(m,4H)。
【0048】
工程6:化合物8の合成
化合物6(200.00mg,835.88μmol)および化合物7(207.90mg,1.00mmol)のDMF(5.00mL)溶液に、EDCI(192.29mg,1.00mmol)およびHOBt(135.53mg,1.00mmol)を加え、50℃で反応系を6時間攪拌した。反応が完了した後、減圧下で反応液を濃縮乾固させ、残留物を分取クロマトグラフィーにより精製して、白色の固体として化合物8を得た。H NMR(400MHz,CDCl) δ 8.70(d,J=4.0Hz,1H),(s,1H),7.81-7.71(m,3H),7.34(d,J=8.0Hz,1H),7.26-7.25(m,1H),(s,2H),3.91-3.83(m,1H),3.79(s,3H),3.45-3.35(m,4H),2.60(s,3H)。
【0049】
工程7:化合物(I)の調製
化合物8(690.00mg,1.61mmol)を超臨界流体クロマトグラフィー(装置:SFC-10;キラルカラム:AD(250mm*50mm,10μm);移動相:超臨界CO/MeOH(0.1%NHO)=55/45,流量180mL/min;カラム温度:38 ℃)によりキラル分離し、化合物(I)を得た。保持時間は約1.7minである。H NMR (400MHz,DMSO-d) δ 8.62(d,J=3.2Hz,1H),(m,4H),7.63(s,2H),7.34-7.29(m,2H),4.09-4.06(m,1H),3.74(s,3H),(m,4H),2.45(s,3H)。
【0050】
実施例2:式(I)で表われる化合物の結晶形Aの調製
式(I)で表われる化合物約20gを秤量し、800mLのエタノールに加え、マグネチックスターラーで一晩撹拌した。混合物を濾過し、少量のエタノールでフィルターケーキをすすぎ、得られた固体を減圧下で乾燥させた。XRPD測定は、式(I)で表われる化合物の結晶形Aが得られたことを示した。
【0051】
実施例3:式(II)で表われる結晶形Bの調製
【化5】
【0052】
式(I)で表われる化合物(56.5g,131.85mmol)を秤量し、3Lの丸底フラスコに加え、無水テトラヒドロフラン2Lを添加し、50~55℃に加熱し、完全に溶解させた。濾過し、55℃濾液に、50mLの無水テトラヒドロフランで希釈したメタンスルホン酸(12.67g,131.85mmol)を滴下し、固体を析出させ、さらに2時間攪拌した。濾過し、フィルターケーキを減圧下で乾燥させ、得られた固体を丸底フラスコに加え、無水エタノール1Lを添加し、40℃に加熱し、14時間攪拌した。濾過し、フィルターケーキを真空下で乾燥させた。XRPD測定は、式(II)で表われる化合物の結晶形Bが得られたことを示した。
【0053】
実施例4:式(II)で表われる化合物の結晶形Bの吸湿性に関する研究
実験材料:
SMS DVS Advantage動的蒸気吸着測定装置
実験法:
10~15mgの式(II)で表われる化合物の結晶形BをDVSサンプルパンに取り、測定を行った。
実験結果:
式(II)で表われる化合物の結晶形BのDVSスペクトルを図7に示した。ΔW=1.158%である。
実験の結論:
式(II)で表われる化合物の結晶形Bは、25℃および80%RHでの吸湿による重量増加が1.158%であり、わずかな吸湿性を有する。
【0054】
実験例1:単純ヘルペスウイルス1型による細胞変性効果の実験(インビトロでの評価)
実験の目的:
細胞変性効果(CPE)の実験により、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)のGHSV-UL46株に対する化合物の抗ウイルス活性を測定した。
実験装置:
細胞インキュベーター:Thermo 240I
細胞計数装置:Beckman Vi-CellTM XR
自動ディスペンサー:Thermo Multidrop
化合物の液体移送システム:Labcyte ECHO 555 liquid handler
マイクロプレートリーダー:Molecular Device SpectraMax340PC384。
【0055】
実験材料:
ウイルス:HSV-1 GHSV-UL46,ATCC#VR-1544
細胞:中国科学院武漢ウイルス研究所から寄贈されたアフリカミドリザル腎臓細胞Vero E6。
【0056】
実験試薬:
【表4】
【0057】
培地の調製方法:
細胞増殖用培地:500mlのDMEM培地+50mlのウシ胎児血清+5ml抗生物質(2種類)+5mLの非必須アミノ酸。
細胞変性効果の実験用培地:500mLのDMEM培地+10mLのウシ胎児血清+5mL抗生物質(2種類)+5mLの非必須アミノ酸。
【0058】
実験の手順:
1.細胞プレーティング(1日目)
1.1.生物学的安全キャビネットの作業面を75%のアルコールで拭い、安全キャビネットに紫外線を15分間照射した。ファンがオンになったまま、ガラス窓を警告線の下端まで引き寄せ、キャビネット内の空気の流れを安定させるように5分間維持した。
1.2.細胞密度が80%になるVero E6細胞のフラスコ(T150細胞培養フラスコ)を取り出した。細胞増殖用培地を吸出し、10mlのリン酸塩緩衝液で細胞を2回洗浄した。2mlのトリプシンを加え、37℃のCOインキュベーターに入れて細胞を消化した。
1.3.細胞を分離して脱落させた後、細胞変性効果の実験用培地15mlを加えて消化を停止させた。細胞を数回ピペッティングして、1mlの細胞懸濁液を取り、細胞計数装置で計数した。
1.4.細胞変性効果の実験用培地で細胞を1.33×10細胞/mlに希釈した。Multidropにより、希釈した細胞懸濁液を、ウェルあたり30μl(4000細胞)で384ウェルプレート(Corning#3701)に添加した。
1.5.細胞プレートの周囲を少し振って細胞を均一に分散させた後、細胞プレートを37℃のCO細胞インキュベーターに入れ、一晩インキュベートした。
【0059】
2.化合物の希釈、処理、およびウイルス接種(2日目)
2.1.DMSOで化合物を勾配希釈し、希釈した化合物をECHOプレートに加えた。
2.2.細胞を播種した384ウェルプレートに、ECHO 555 liquid workstationで化合物を添加した。各試験化合物は、8つの濃度で2回測定された。細胞対照ウェルについては、化合物およびウイルスを添加しなかった。ウイルス対照ウェルについては、化合物を追加しなかった。すべてのウェルのDMSOの最終濃度は0.5%であった。
2.3.実験用培地でウイルスを希釈し、1.5TCID90/ウェル、30μlで接種した。Multidropにより、細胞対照ウェルに、ウェルあたり30μlで実験用培地を加えた。次に、Multidropにより、化合物試験ウェルおよびウイルス対照ウェルに、ウェルあたり30μlで希釈したウイルスを加えた。
2.4.細胞プレートを37℃のCO細胞インキュベーターに入れ、5日間インキュベートした。
【0060】
3.細胞の生存率(viability)の測定(7日目)
3.1. 5日間培養した後、細胞プレートのすべてのウェルにおける細胞変性効果を観察したところ、対照ウェルの細胞は変性しなかったが、ウイルス対照ウェルの細胞はほとんど変性した。
3.2.Multidropにより、細胞プレートに、ウェルあたり6μlでCCK8を加えた。
3.3.細胞プレートを37℃のCO細胞インキュベーターに入れ、3時間インキュベートした。
細胞プレートを37℃のCO細胞インキュベーターに入れ、5日間インキュベートした。
3.4.マイクロプレートリーダーにより、450nmの波長で細胞プレートの各ウェルの吸光度値を読み取り、また、630nmを参照波長として使用した。生データの値は、450nmにおける吸光度から630nmにおける吸光度を引いた値(生データ=OD450-OD630)とした。
【0061】
4.データ分析
4.1.試験化合物の抗ウイルス活性(%Inhibition)は、以下の式で計算した。
【数1】
ここで、Sampleは化合物試験ウェルの吸光度値、cell controlは細胞対照ウェルの吸光度の平均値、virus controlはウイルス対照ウェルの吸光度の平均値である。
4.2.GraphPad Prismソフトウェアを使用して用量-反応曲線をプロットし、試験化合物の半数効果濃度(EC50)を得た。
【0062】
5.実験の結果を表3に示す。
表3.HSV-1細胞変性効果の実験結果
【表5】
【0063】
6.結論:本発明の化合物は、単純ヘルペスウイルス(HSV)に対して良好な抗ウイルス活性を有する。
【0064】
実験例2:化合物の薬物動態の評価
実験目的:マウスにおける化合物のインビボでの薬物動態を試験する
実験材料:
Balb/cマウス(オス、18-22g、6~8週齢、Shanghai SLAC社)
実験の手順:
げっ歯類への静脈内注射および経口投与後の化合物の薬物動態特徴を、標準プロトコルで測定した。候補化合物を、対応する溶液に調製し、単回静脈内注射(1.0mg/kg、5%のDMSO/95%の20%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)または胃内投与(1.0mg/kg、0.5%のメチルセルロースMC4000)によって投与した。24時間以内の全血サンプルを採取し、3000gで15分間遠心分離し、上澄みを分離して血漿サンプルを得た。内部標準を含む4倍量のアセトニトリル溶液を添加して、タンパク質を沈殿させた。得られた混合物を遠心分離し、上澄みを取り出し、それに等量の水を添加して、さらに遠心分離した。上澄みを取り出し、サンプルとして注入し、LC-MS/MS分析法により血漿中薬物濃度を定量的に分析し、ピーク濃度、ピーク時間、クリアランス率、半減期、薬物-時間曲線下面積、バイオアベイラビリティなどの薬物動態パラメータを算出した。
【0065】
実験の結果を表4に示す。
表4.薬物動態の実験結果
【表6】


結論:マウスにおける胃内投与のインビボでの薬物動態の研究において、本発明の化合物は、同じ有効量での血漿中曝露量がより低く、より優れた安全性を示した。
[書類名]特許請求の範囲
[請求項1]
X線粉末回折パターンが、10.81±0.2°、15.97±0.2°、21.69±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
[化1]
式(I)で表われる化合物の結晶形A。
[請求項2]
X線粉末回折パターンが、10.81±0.2°、13.03±0.2°、15.97±0.2°、18.48±0.2°、21.69±0.2°、23.78±0.2°、25.14±0.2°、26.96±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
請求項1に記載の結晶形A。
[請求項3]
図1に示すXRPDパターンを有する、
請求項2に記載の結晶形A。
[請求項4]
示差走査熱量測定曲線が、216.04±3℃に吸熱ピークの開始点を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶形A。
[請求項5]
図2に示すDSCパターンを有する、
請求項4に記載の結晶形A。
[請求項6]
熱重量分析曲線が、120±3℃で0.4442%の重量損失を有し、204±3℃で2.4492%の重量損失を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶形A。
[請求項7]
図3に示すTGAパターンを有する、
請求項6に記載の結晶形A。
[請求項8]
式(II)で表われる化合物。
[化2]
[請求項9]
X線粉末回折パターンが、10.17±0.2°、11.85±0.2°、15.94±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
式(II)で表われる化合物の結晶形B。
[請求項10]
X線粉末回折パターンが、8.46±0.2°、10.17±0.2°、11.85±0.2°、13.98±0.2°、15.94±0.2°、20.39±0.2°、21.32±0.2°、23.78±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
請求項9に記載の結晶形B。
[請求項11]
図4に示すXRPDパターンを有する、
請求項10に記載の結晶形B。
[請求項12]
示差走査熱量測定曲線が、185.89±3℃に吸熱ピークの開始点を有する、
請求項9~11のいずれか一項に記載の結晶形B。
[請求項13]
図5に示すDSCパターンを有する、
請求項12に記載の結晶形B。
[請求項14]
熱重量分析曲線が、187.16±3℃で0.7160%の重量損失を有する、
請求項9~11のいずれか一項に記載の結晶形B。
[請求項15]
図6に示すTGAパターンを有する、
請求項14に記載の結晶形B。
[請求項16]
単純ヘルペスウイルス関連疾患の治療のための医薬品の調製における、請求項1~7のいずれか一項に記載の式(I)で表われる化合物の結晶形Aの使用。
[請求項17]
単純ヘルペスウイルス関連疾患の治療のための医薬品の調製における、請求項8に記載の式(II)で表われる化合物および請求項9~15のいずれか一項に記載の式(II)で表われる化合物の結晶形Bの使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7