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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ファスナー引抜除去器具装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/18 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
B25B27/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021513435
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 IB2019056347
(87)【国際公開番号】W WO2020058777
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】62/733,507
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/255,341
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/514,117
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518381042
【氏名又は名称】グリップ・ホールディングズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 潔
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ククカ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ステファン・ククカ
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6092279(US,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2007-0000562(KR,U)
【文献】特開2017-159438(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103639950(CN,A)
【文献】米国特許第8459153(US,B2)
【文献】米国特許第8056448(US,B2)
【文献】米国特許第6047620(US,A)
【文献】米国特許第5782148(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク・ツール本体と、
ネジ山付き開口部と、
複数の係合部と、
リリース・ボルトとを含み、
前記複数の係合部は、前記トルク・ツール本体の回転軸を中心に放射状に配置されており、
前記複数の係合部は、前記トルク・ツール本体の基部の周囲に接続されており、
前記ネジ山付き開口部は前記基部を貫通しており、
前記リリース・ボルトは、前記複数の係合部の反対側で、前記ネジ山付き開口部にネジ係合されており、
前記リリース・ボルトは、円錐テーパー部とネジ山付き軸部とドライバー部とを含み、
前記円錐テーパー部と前記ドライバー部は、前記ネジ山付き軸部を中心に互いに対向して配置されており、
前記円錐テーパー部は、前記ネジ山付き軸部と同心を成すよう接続されており、
前記ドライバー部は、前記ネジ山付き軸部と同心を成すよう接続されており、
前記ネジ山付き軸部は、前記ネジ山付き開口部と係合されており、
前記円錐テーパー部は、前記複数の係合部に隣接して配置されており、
前記ドライバー部は、前記トルク・ツール本体からオフセットして配置されている、
ファスナー引抜除去工具装置。
【請求項2】
前記トルク・ツール本体は、前記複数の係合部の断面から外側に延びている、
請求項1に記載のファスナー引抜除去工具装置。
【請求項3】
前記複数の係合部のそれぞれの断面は、第1の傾斜部と、湾曲部と、第2の傾斜部とを含み、
前記第1の傾斜部は、前記湾曲部の終端に接続されており、
前記第2の傾斜部は、前記湾曲部の終端に接続されており、
前記第1の傾斜部と前記第2の傾斜部とは、前記湾曲部に対して互いに対向して配置されている、
請求項1に記載のファスナー引抜除去工具装置。
【請求項4】
前記複数の係合部は、任意の係合部と隣接する係合部を含み、
前記任意の係合部の第1の傾斜部は、前記隣接する係合部の第2の傾斜部と鈍角を成すよう接続されている、
請求項3に記載のファスナー引抜除去工具装置。
【請求項5】
さらに、アタッチメント本体と
係合ボアとを含み、
前記アタッチメント本体は、前記回転軸と同軸を成すよう配置されており、
前記アタッチメント本体は、前記複数の係合部の反対側で、前記トルク・ツール本体の基部に隣接して接続されており、
前記係合ボアは、前記回転軸に沿って前記アタッチメント本体を貫通する、
請求項1に記載のファスナー引抜除去工具装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、一般に、ファスナー(締結具)、特にボルトやナットを引き抜く(取り外す)ために設計された様々な工具に関し、より具体的には、損傷したファスナーを取り外すために設計された、滑り防止機能を備えたネジ山付きエキストラクターの組み合わせと、滑りを防止したネジ山付きエキストラクターの組み合わせから損傷したファスナーを取り除くための除去ツールを開示する。
【背景技術】
【0002】
六角ボルト、ナット、ネジなどのネジ山付き部品(ファスナー)は、雌ネジと呼ばれる相補的ネジに係合することにより、複数の部材を固定して保持するために使用される。一般に、これらのタイプのファスナーは、外部ネジ山と、一端にヘッドが設けられた円筒形のシャフトから成る。外部ネジ山は、穴またはナットにタップされた相補的な雌ネジのネジ山と係合し、ファスナーを所定の位置に固定し、関連する部材を一緒に固定する。ヘッドは、外部からのトルク力を受け、ファスナーを雌ネジに対して回す(駆動する)ための手段である。レンチなどの外部工具がファスナーを回転させて、相補的な雌ネジに係合させるための相応のトルクをファスナーにかけられるよう、ヘッドは特別な形状をしている。このタイプのファスナーは、シンプルで、非常に効果的で、安価であり、現代の建設で広く使用されている。
【0003】
雄ネジであれ雌ネジであれ、これらのタイプのファスナーを使用する上で最も一般的な問題の1つは、外部工具がヘッド部分で滑ることである。これは、一般的に、ファスナーや工具の摩耗や腐食、過度の締め付け、または、ファスナーのヘッド部分の損傷によって引き起こされる。ファスナーの取り外しには様々な方法が使用されるが、その中には他の方法よりも破壊的なものもある。ファスナーの頭部が損傷した場合は、固着したファスナーを取り外すために、より破壊的な方法を実施する必要がある。ファスナーのドリルアウトは、一部のユーザーによって使用される一般的な方法である。この方法は、いくつかのシナリオでは有効であるが、穴の内部ネジ山を損傷する危険性が高い。
【0004】
本願発明は、スリップの可能性を実質的に排除したファスナー引抜除去器具(エキストラクター)を提供する。本願発明では、ファスナーのヘッドに食い込む一連の一体型スプラインを使用し、エキストラクターのビットとファスナーのヘッド部分との間の効率的なトルク伝達を可能にする。また、従来型のファスナー・エキストラクターを使用する際のもう一つの共通の問題として、ファスナーのヘッドまたは全体がエキストラクターに付着したままになることがあるが、本願発明によれば、ユーザーは、除去ツールにより、残ったファスナーの一部または全体をエキストラクターから容易に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本願発明に係るトルク・ツール本体と、複数の係合部とリリース・ボルトとを示す斜視図である。
図2】本願発明に係るトルク・ツール本体とアタッチメント本体の下面を示す上面図である。
図3】本願発明に係るトルク・ツール本体および複数の係合部の上面図である(図4に詳細部分を示す)。
図4】本願発明に係る複数の係合部の、図4の領域A内に相当する詳細図である。
図5】本願発明に係るトルク・ツール本体の側面図である(図6に断面図を示す)。
図6】本願発明に係るトルク・ツール本体の、図5の線A-Aに沿った断面図である。
図7】本願発明に係るリリース・ボルトの側面図である。
図8】本願発明に係るトルク・ツール本体、複数の係合部、および、リリース・ボルトの断面図である。
図9】本願発明に係る第1の代替実施形態のトルク・ツール本体および複数の係合部の上面図である(図10に示す詳細図を示す)。
図10】本願発明の第1の代替的実施形態に係る複数の係合部の、図9のA部分の詳細図である(図11に詳細図を示す)。
図11】本願発明の第1の代替的実施形態に係る複数の係合部の、図10のB部分の詳細図である。
図12】本願発明の第2の代替的実施形態に係るトルク・ツール本体および複数の係合部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
すべての図面は、本願発明の特定の態様を説明するためのものであり、本願発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0007】
本願発明は、広くは、エキストラクター(引抜工具)、および、その付属品に関し、より具体的には、ファスナー・エキストラクターと除去ツールを開示する。エキストラクターから損傷したファスナーを除去することが困難なことがある。本願発明は、エキストラクターに選択的に組み込まれたリリース・ツールを提供することにより、この問題を解決することを目的とする。特に、リリース・ツールは、エキストラクターに残った破損したファスナーの断片を除去できるようユーザーを支援するように設計されている。さらに、本願発明は雄ネジ部材に基づくヘッド設計のファスナーと互換である。雄ネジ部材に基づくヘッド設計のファスナーは雄ファスナー(雄ネジ)とも呼ばれ、ファスナー・ヘッドの外部側面を使用して、締め付け、または、取り外しのためのツールが係合するようにする。このようなファスナーには六角ボルトやナットがある。雄ファスナーの例には、六角形のヘッドを有するボルトがある。また、本願発明は、右回りのネジ山と左回りのネジ山のいずれにも適用できる。
【0008】
図1および図8に示すように、本願発明は、トルク・ツール本体(1)、ネジ山付開口部(4)、複数の係合部(5)、および、リリース・ボルト(12)を含む。トルク・ツール本体(1)は、複数の係合部(5)によって、対応する力をファスナー・ヘッドに加えるための物理的構造として使用される。雄ファスナーの場合、トルク・ツール本体(1)は、レンチ・ソケットと同様の、雄ファスナーの上にかみ合うようにフィットするようなサイズのチューブ状に飛び出した部材である。トルク・ツール本体(1)の長さ、幅、および、直径は、異なるサイズの雄ファスナーに適合するように様々であってよい。複数の係合部(5)は、ファスナー引抜時の滑りを防止する役割を果たし、図3に示すように、トルク・ツール本体(1)の回転軸(2)の周りに放射状に配置されている。
【0009】
より具体的には、複数の係合部(5)は、ファスナー・ヘッドの側面を把持するために、トルク・ツール本体(1)の基部(3)の周りで周方向に接続されている。その結果、複数の係合部(5)は、トルク・ツール本体(1)とファスナー・ヘッドとの間の滑りを防止することで、雄ファスナーへのトルクの伝達を容易にする。ネジ山付開口部(4)は、基部(3)を貫通しており、リリース・ボルト(12)の取付手段として機能する。より具体的には、リリース・ボルト(12)は、ネジ山付開口部(4)にネジ係合し、複数の係合部(5)の反対側に配置されている。その結果、損傷または剥離したファスナーが、取り外し後に複数の係合部(5)内に詰まったとき、リリース・ボルト(12)は、損傷あるいは剥離したファスナーを複数の係合部(5)から押し出す(除去する)ことができる。
【0010】
図1から図3に示すように、トルク・ツール本体(1)は、複数の係合部(5)の断面から外側に向かって延伸している。これにより、複数の係合部(5)がトルク・ツール本体(1)の内周面に回転軸(2)を中心に配置された、レンチ・ソケットのような構造が得られる。
【0011】
さらに、レンチ・ハンドルをトルク・ツール本体(1)の外部で横方向に接続することで、レンチ・ハンドル・アタッチメントを得ることができる。レンチ・ソケットとレンチ・ハンドル・アタッチメントの両方に関して、複数の係合部(5)のそれぞれは、トルク・ツール本体(1)の特定の長さに沿って延長されており、その結果、トルク・ツール本体(1)内に空の空間を画定する。この空の空間は、複数の係合部(5)がファスナー・ヘッドの側面を把持するように、ファスナー・ヘッドを受容するキャビティとして機能する。
【0012】
従来型のソケット・レンチの設計では、トルクの大部分がファスナー・ヘッドの側面の角を介して雄ファスナーに伝達される。しかし、時間の経過とともに横方向の角が劣化し、ソケット・レンチからファスナー・ヘッドへのトルク伝達効率が低下するため、滑りが発生してしまう。本願発明では、トルク伝達ポイントをファスナー・ヘッドの側面に移動することで、この問題を解決する。これは、複数の係合部(5)を使用することによって達成される。複数の係合部(5)のそれぞれは、ファスナー・ヘッドの側面の角部ではなく、側面の平面に係合する(「噛む」)ように配置されている。これにより、適切な量のトルクがファスナー・ヘッドに伝達され、回転し、その結果、破損または剥離したファスナーを引き抜くことができる。
【0013】
図3図4に本願発明の好ましい実施形態を示す。複数の係合部(5)のそれぞれの断面は、第1の傾斜部(6)、湾曲部(7)、および、第2の傾斜部(8)を含む。より具体的には、第1の傾斜部(6)は湾曲部(7)の終端に接続され、第2の傾斜部(8)は湾曲部(7)の終端に接続され、第1の傾斜部(6)と第2の傾斜部(8)は、湾曲部(7)に対して互いに対向して配置されている。その結果、一対の係合部(5)の間、または、係合部(5)の1つの中に把持エッジが画定され、把持エッジが損傷または剥離したファスナーの除去の際にファスナー・ヘッドに切り込むことができるようになっている。トルク・ツール本体(1)の上面(32)は、基部(3)の外面と複数の係合部(5)との間に配置されており、平坦な面である。さらに、基部(3)の上面(32)と複数の係合部(5)との間の縁は、面取りされた縁か、または、ネジ山付開口部(4)に向かって傾斜する湾曲した縁のいずれかである。なお、第1の傾斜部(6)と第2の傾斜部(8)は、第1の傾斜部(6)または第2の傾斜部(8)が湾曲部(7)に対して鋭角になるように、互いに同一直線上にあるか、または凹状を成してよい。
【0014】
さらに、図3図4に示すように、好ましい実施形態の複数の係合部(5)は、トルク・ツール本体(1)において、等間隔で配置されており、完全な囲み形状を構成している。第1の傾斜部(6)、湾曲部(7)、および、第2の傾斜部(8)の長さは変わってもよい。同様に、第1の傾斜部(6)、湾曲部(7)、第2の傾斜部(8)の間の対応する角度は、より鋭利な歯のような形状を作るために変化してもよい。囲み形状を構成するために、複数の係合部(5)は、任意の係合部(10)と、隣接係合部(11)とで構成されている。ここで、任意の係合部(10)は、隣接係合部(11)が任意の係合部(10)の真横の係合部となる任意の係合部と定義する。より具体的には、任意の係合部(10)の第1の傾斜部(6)は、隣接係合部(11)の第2の傾斜部(8)と鈍角を成すよう接続されている。言い換えれば、隣接して配置された第1の傾斜部(6)および第2の傾斜部(8)が鈍角を成すよう配向されることで、把持エッジのプロファイルが画定される。上述したように、本願発明は、様々なファスナー・ヘッド設計に適合するように設計することができる。これは、複数の係合部(5)の数を変化させて、異なるタイプのファスナー・ヘッド設計に適合できるようにすることによって達成される。複数の係合部(5)の数は、一般に、ファスナー・ヘッドの側面の数に対応する。たとえば、五角形のファスナー・ヘッドは5つの横方向の側面を有する。五角形状の頭部を有する雄ファスナーを取り外すためには、ユーザーは複数の係合部(5)として5つの係合部を構成する本願発明の実施形態を利用しなければならない。好ましくは、ファスナー・ヘッドと接触する複数の係合部(5)の数は、18個、12個、6個、または、4個であってよい。
【0015】
図9から図11に、本願発明の第1の代替実施形態を示す。複数の係合部(5)のそれぞれの断面は、第1の傾斜部(6)と湾曲部(7)と第2の傾斜部(8)とを含む。第2の傾斜部(8)は、近位部(81)と遠位部(82)とをさらに含む。より具体的には、第1の傾斜部(6)は湾曲部(7)の末端に接続されており、第2の傾斜部(8)の近位部(81)は湾曲部(7)の末端に接続されており、第1の傾斜部(6)と第2の傾斜部(8)の近位部(81)とは、湾曲部(7)を中心に互いに対向して配置されている。第2の傾斜部(8)の遠位部(82)は第2の傾斜部(8)の近位部(81)の末端に接続され、湾曲部(7)の反対側に配置される。その結果、第2の傾斜部(8)の近位部(81)と第2の傾斜部(8)の遠位部(82)との間に把持エッジが画定され、把持エッジが、損傷または剥離したファスナーの除去の際にファスナー・ヘッドに切り込むことができるようになる。さらに、第2の傾斜部(8)の近位部(81)および第2の傾斜部(8)の遠位部(82)は、鈍角を成すよう配向されており、把持エッジのプロファイルを構成する。
【0016】
図9から図11に示すように、第1の代替実施形態の複数の係合部(5)は、トルク・ツール本体(1)において等間隔で配置されており、完全な囲み形状を構成する。第1の傾斜部(6)、湾曲部(7)、および、第2の傾斜部(8)の長さは変わってもよい。同様に、第1の傾斜部(6)、湾曲部(7)、および、第2の傾斜部(8)の間の対応する角度は、より鋭利な歯のような形状を構成するために変化してもよい。囲み形状を構成する複数の係合部(5)は、任意の係合部(10)と隣接係合部(11)とを含む。任意の係合部(10)とは、隣接係合部(11)が任意の係合部(10)の真横の係合部となるような、複数の係合部(5)内の任意の係合部である。より具体的には、任意の係合部(10)の第1の傾斜部(6)は、隣接係合部(11)の遠位部(82)と直線を成すように接続され、遠位部(82)と近位部(81)とは、隣接係合部(11)を基準にして、鈍角を成すように隣接している。
【0017】
第1の代替実施形態のある実施形態では、第1の傾斜部(6)と遠位部(82)との間の角度は、遠位部(82)と近位部(81)との間の角度に等しく、遠位部(82)は、ファスナー・ヘッドの側面に沿って横方向に配置されている。さらに、第1の傾斜部(6)、遠位部(82)、および、近位部(81)は台形の形状を画定する。
【0018】
図12に本願発明の第2の代替実施形態を示す。複数の係合部(5)のそれぞれの断面は、第1の傾斜部(6)と、湾曲部(7)と、第2の傾斜部(8)とからなる。湾曲部(7)は、さらに、第1のセクション、第2のセクション、第3のセクション、および第4のセクションを備える。より具体的には、第1のセクションは第2のセクションに隣接して接続されており、第3のセクションは第2のセクションに隣接して接続され、第1のセクションの反対側に配置されている。第4のセクションは第3のセクションに隣接して接続され、第2のセクションの反対側に位置している。その結果、第1の傾斜部(6)は、第1のセクションに末端で接続されている。第2の傾斜部(8)は第4のセクションの終端に接続されており、第1の傾斜部(6)と第2の傾斜部(8)は湾曲部(7)を中心に互いに対向して配置されている。さらに、第1の傾斜部(6)および第2の傾斜部(8)は同一直線上に配置され、湾曲部(7)は回転軸(2)に向かって配向されている。その結果、湾曲部(7)内に把持エッジが画定され、損傷または剥離したファスナーの除去中に把持エッジがファスナー・ヘッドに切り込むことができるようになっている。さらに、第1のセクション、第2のセクション、第3のセクション、および、第4のセクションを、複数の直線セクション、複数の曲線セクション、または、直線セクションと曲線セクションの両方の組み合わせとして成形してもよい。
【0019】
図12に示すように、さらに、第2の代替実施形態の複数の係合部(5)は、トルク・ツール本体(1)内において等間隔で配置されており、完全な囲み形状を形成している。第1の傾斜部(6)、湾曲部(7)、および第2の傾斜部(8)の長さは変わってもよい。同様に、第1の傾斜部(6)、湾曲部(7)、第2の傾斜部(8)の間の角度を、より鋭利な歯形状を作るために変化してもよい。囲み形状を構成するために、複数の係合部(5)は、任意の係合部(10)と隣接係合部(11)とを含む。任意の係合部(10)とは、隣接係合部(11)が任意の係合部(10)の真横の係合部となるような、複数の係合部(5)内の任意の係合部である。より具体的には、任意の係合部(10)の第1の傾斜部(6)は、隣接係合部(11)の第2の傾斜部(8)と鈍角を成すよう接続されている。言い換えれば、隣接して配置された第1の傾斜部(6)と第2の傾斜部(8)は鈍角に配向されているため、一対の係合部(5)の間の接続点が明確になり、把持エッジが湾曲部(7)内に構成される。
【0020】
本願発明のいくつかの実施形態では、複数の係合部(5)は、上面(32)からネジ山付開口部(4)に向かってテーパー状であり、複数の係合部(5)のネジ山付開口部(4)に隣接する部分の直径は、複数の係合部(5)の受容キャビティ、または、上面(32)に隣接する部分の直径よりも小さくなるよう構成されてよい。
【0021】
また、本願発明は、損傷または剥離したファスナーに加えられるトルク力を増大するために、外部のトルク・ツールをトルク・ツール本体(1)に取り付けるアタッチメント機能を含んでいてもよい。図5図6に示すように、本願発明は、オープンエンド・レンチ、ボックスエンド・レンチ、コンビネーション・レンチ、アジャスタブル・レンチ、ソケット・レンチなどの外部ツールを、トルク・ツール本体(1)に取り付けられるようにするアタッチメント本体(16)と係合ボア(17)とをさらに備えてよい。また、アタッチメント本体(16)は、トルク・ツールの回転軸と一致するように、回転軸(2)と同心に配置されている。さらに、アタッチメント本体(16)は、トルク・ツール本体(1)の基部(3)に隣接して接続され、複数の係合部(5)の反対側に配置されている。アタッチメント本体(16)は、トルク・ツール本体(1)の基部(3)の直径よりもわずかに大きい直径を有する六角形の設計であることが好ましい。しかしながら、アタッチメント本体(16)は、基部のサイズ、および、好ましい製造方法または設計に応じて、基部(3)よりも小さな直径を有していてもよい。係合ボア(17)は、回転軸(2)に沿ってアタッチメント本体(16)を貫通する。係合ボア(17)は、ソケット・レンチの雄型アタッチメント部材を受容する形状を成し、多くのソケット・レンチが正方形の雄型アタッチメント部材を使用しているため、係合ボア(17)の好ましい形状は正方形である。代替的実施形態では、係合ボア(17)およびアタッチメント本体(16)の形状および設計は、様々なトルク・ツールやアタッチメント手段に適合する、正方形または円筒形等であってよい。代替的実施形態では、トルク・ツール本体(1)と任意の駆動体との間の摩擦を増加させるために、アタッチメント本体(16)の外面には、ローレット加工などの表面グリップ処理が適用されていてもよい。
【0022】
図2図6に示すように、アタッチメント本体(16)の底面(31)は、複数の係合部(5)がハンマーによって損傷または剥離したファスナーに打ち込まれる際に、係合ボア(17)に当たったり、損傷したりすることがないように、係合ボア(17)から離れてテーパー状になっている。言い換えれば、係合ボア(17)の位置におけるアタッチメント本体(16)の高さは、底面(31)が係合ボア(17)から離れてテーパー状になることができるように、アタッチメント本体(16)の外面に関するアタッチメント本体(16)の高さよりもわずかに大きい。
【0023】
図7に示すように、破損または剥離したファスナーを除去するためのリリース・ボルト(12)は、円錐テーパー部(13)とネジ山付き軸部(14)とドライバー部(15)とを含む。より具体的には、円錐テーパー部(13)とドライバー部(15)とは、ネジ山付き軸部(14)を中心に互いに対向配置されている。ネジ山付き軸部(14)の好ましい実施形態は円柱体である。また、円錐テーパー部(13)、ネジ山付き軸部(14)、およびドライバー部(15)は、互いに同軸で配置され、円錐テーパー部(13)がネジ山付き軸部(14)の端部に同心円状に接続され、ドライバー部(15)が反対側の端部からネジ山付き軸部(14)に同心円状に接続される。さらに、空洞がドライバー部(15)内部に設けられており、リリース・ボルト(12)が係合ボア(17)内に係合されたときに、リリース・ボルト(12)にトルクを加えるために、トルク印加ハンドルを空洞内に係合させることができるように構成されてよい。この空洞は、円形、正方形等の任意の形状であってよい。
【0024】
ネジ山付開口部(4)とリリース・ボルト(12)との間の係合を容易にするために、ネジ山付き軸部(14)は、ネジ山付開口部(4)のネジ山と一致するように設計されている。損傷または剥離したファスナーを取り外す必要がある場合、ネジ山付き軸部(14)は、ネジ山付開口部(4)と係合する。その結果、ドライバー部(15)がトルク・ツール本体(1)からオフセットして配置されているので、円錐テーパー部(13)は複数の係合部(5)に隣接してその中に配置される。ユーザーは、ドライバー部(15)を介してリリース・ボルト(12)に適切な時計回りまたは反時計回りのトルクを加え、回転力を直線力に変換し、損傷または剥離したファスナーがソケットから除去できる。複数の係合部(5)内の円錐テーパー部(13)の内部位置により、円錐テーパー部(13)が損傷または剥離したファスナーに接触し、印加された線形力によってファスナーを離脱させることができる。好ましい実施形態では、ドライバー部(15)は、六角形の形状である。しかし、代替的な実施形態では、ドライバー部(15)の形状は、回転力を加えることができる別のソケット・レンチまたは他の類似のツールに適合できる正方形、円形、または、内部ドライブを含むことができるが、これらに限定されない。円錐テーパー部(13)は、円筒形、正方形、六角形、またはユーザーまたは製造者が好む他のプロファイルに成形されてもよい。ネジ山付き軸部(14)は、半円、半四角、または、雄ねじが適用され得る他の任意の形状のシャンクであってよい。
【0025】
本願発明では、損傷または剥離したファスナーを取り外すために、トルク・ツール本体(1)ファスナーの周囲に配置し、複数の係合部(5)の大部分がファスナー・ヘッドの周囲に配置されるようにする。そして、ユーザーは、損傷または剥離したファスナーを回転させて取り外すためにはトルク・ツール本体(1)に反時計回りのトルク力を加えるだけでよい。トルク・ツール本体(1)にトルクがかかると、複数の係合部(5)がファスナー・ヘッドの側面に食い込み、ファスナーが回転する。本願発明は、部分的または完全に剥離したファスナー・ヘッドに係合するように設計されている。また、本願発明では、複数の係合部のそれぞれが把持エッジとして機能することで、ファスナー・ヘッドの滑りを抑制することができる。
【0026】
本願発明は、その好ましい実施形態に関連して説明してきたが、請求の範囲で主張される、本願発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の多くの可能な修正および変形が可能であることを理解されたい。
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