(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】指輪、指輪の製造方法、指輪の製造方法において使用する屈曲用治具
(51)【国際特許分類】
A44C 9/00 20060101AFI20221003BHJP
A44C 17/02 20060101ALI20221003BHJP
A44C 17/04 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
A44C9/00
A44C17/02
A44C17/04
(21)【出願番号】P 2022089784
(22)【出願日】2022-06-01
【審査請求日】2022-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512088567
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・アヴァン
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】今田 陽子
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0102140(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0021993(US,A1)
【文献】特開2002-45221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 9/00,17/02,17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中石の周囲に複数個の脇石を備える指輪であって、前記中石及び前記脇石を載置させる石座が、下面中央に貫通孔を備える円筒状の中石載置部と、前記中石載置部の下方から径方向外側に向けて放射状に延びる複数本の脇石載置板と、隣接する脇石載置板の間の位置において、前記中石載置部の外面から外側に向かって膨出する脇石押圧固定部と、前記脇石押圧固定部から上方に立設される中石固定用爪部とで構成され、前記中石は、前記中石載置部に載置された状態において、中石に当接するように先端部分が屈曲された複数本の前記中石固定用爪部によって固定されており、前記脇石は、前記脇石載置板に載置された状態において、脇石の下面を挟持するように先端部分が屈曲された前記脇石載置板と、屈曲された脇石載置板を挟む位置に配置されると共に、脇石に当接するように押圧変形された1対の前記脇石押圧固定部とによって固定されていることを特徴とする指輪。
【請求項2】
脇石押圧固定部は、略球体状の形状で構成されることを特徴とする請求項1に記載の指輪。
【請求項3】
押圧された1対の脇石押圧固定部は、脇石と当接している総当接面積の9割が前記脇石のクラウン部と当接しており、残る1割が前記脇石のテーブルと当接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の指輪。
【請求項4】
請求項1に記載の指輪の製造方法であって、中石を固定する中石固定工程と、脇石を固定する脇石固定工程とを備え、前記中石固定工程は、中石を中石載置部に載置させる中石載置工程と、前記中石載置工程で載置された中石のクラウン部に中石固定用爪部の先端部分を屈曲させて当接させる中石固定用爪部屈曲工程とをこの順で備え、前記脇石固定工程は、脇石押圧固定部の直下において脇石のガードルが脇石載置板と接する位置に切り込み用治具を用いて切り込みを入れる切り込み形成工程と、前記切り込み形成工程により形成された切り込みに脇石のガードルを当接させた状態で、脇石を脇石載置板に載置させて脇石載置板の先端部分を脇石に当接させない範囲で第1の屈曲用治具を用いて脇石を挟むように屈曲させる第1の屈曲工程と、前記第1の屈曲工程により屈曲された脇石載置板の先端部分が脇石に当接するまで第2の屈曲用治具を用いて屈曲させる第2の屈曲工程と、前記第2の屈曲工程により屈曲された脇石載置板の先端部分を、切断用治具を用いて所定長さに切断する切断工程と、前記切断工程により切断された先端部分を挟む位置に配置される1対の脇石押圧固定部を、押圧用治具を用いて上方から押圧することで脇石押圧固定部を脇石に当接させる押圧工程とをこの順で備え、前記押圧工程においては、脇石押圧固定部における中石固定用爪部よりも外側の領域を前記押圧用治具で押圧することを特徴とする指輪の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の指輪の製造方法における第1の屈曲工程で使用する第1の屈曲用治具であって、手に握りながら閉方向又は開方向に操作する一対の把持部と、前記操作により開閉軸を介して閉方向又は開方向に動作する下側挟持片と上側挟持片との一対の挟持片とを備えるペンチ状のもので構成されると共に、前記下側挟持片は、先端部分を前記上側挟持片の方向に向けて湾曲させてあると共に、脇石載置板の先端部分を所定長さ挿入することで前記脇石載置板の屈曲幅の位置決めを行うことが可能な位置決め用溝を下側挟持片の先端から長手方向に所定長さ設けてあり、前記上側挟持片には、脇石のテーブルと当接する位置に、脇石のテーブルと面一で当接する平坦面を設けてあることを特徴とする第1の屈曲用治具。
【請求項6】
請求項4に記載の指輪の製造方法における第2の屈曲工程で使用する第2の屈曲用治具であって、手に握りながら閉方向又は開方向に操作する一対の把持部と、前記操作により開閉軸を介して閉方向又は開方向に動作する下側挟持片と上側挟持片との一対の挟持片とを備えるペンチ状のもので構成されると共に、前記下側挟持片は、その先端領域を前記上側挟持片の方向に向けて湾曲させてあると共に、脇石載置板と当接させる先端部分をL字状に屈曲させてあり、前記上側挟持片は、その先端領域を前記下側挟持片に向かう方向とは反対方向に向けて湾曲させてあると共に、先端部分を中石載置部の貫通孔に差し入れることが可能なように前記下側挟持片の方向に向かって屈曲させたL字状の突端形状で構成してあり、且つL字状の突端形状で構成してある前記先端部分を前記中石載置部の貫通孔に差し入れた状態において脇石のテーブルと当接する位置に、脇石のテーブルと面一で当接する平坦面を設けてあることを特徴とする第2の屈曲用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中石の周囲に複数個の脇石を備える指輪、前記指輪の製造方法、前記指輪の製造方法において使用する屈曲用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪として、中石の周囲に複数個の脇石を備える指輪が各種開発されている。このような中石の周囲に複数個の脇石を備える指輪を示す従来技術として、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、立爪形指輪に関する考案で、ブライダル用に限らず日常的にも抵抗なく気安く使用できる使用範囲の広い立爪形指輪を提供できるというメリットがある。
しかしながら、このような中石の周囲に複数個の脇石を備える従来の指輪は、複数本の爪を脇石のクラウン部からテーブルに沿わせて屈曲させて脇石を固定するものが一般的であったことから、脇石を固定するための爪が脇石よりも外側に出っ張った状態で配置されると共に、爪の先端部分が脇石のテーブルに配置される構造となっていた。
従って、爪が衣服等に引っ掛かり易く、また壁等に接触し易いことで、衣服や壁等が損傷するだけでなく、脇石が落下する危険性があるという問題があった。
また、脇石を固定するための爪が脇石よりも外側に出っ張った状態で配置されることに加えて、屈曲させた複数本の爪の先端部分で脇石を固定する構造であるため、脇石をしっかりと固定するためには、爪の先端部分を脇石のテーブルにある程度の長さで接触させる必要があり、脇石を上方から見た際に複数本の爪で脇石が隠れてしまって見栄えが悪いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記従来における問題点を解決し、脇石を固定するための部材が衣服等に引っ掛かったり、壁等に接触したりすることに伴って、衣服や壁等が損傷することや、脇石が落下することを確実に防止することができると共に、脇石を強固に固定することができ、また、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪、前記指輪の製造方法、前記指輪の製造方法において使用する屈曲用治具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の指輪は、中石の周囲に複数個の脇石を備える指輪であって、前記中石及び前記脇石を載置させる石座が、下面中央に貫通孔を備える円筒状の中石載置部と、前記中石載置部の下方から径方向外側に向けて放射状に延びる複数本の脇石載置板と、隣接する脇石載置板の間の位置において、前記中石載置部の外面から外側に向かって膨出する脇石押圧固定部と、前記脇石押圧固定部から上方に立設される中石固定用爪部とで構成され、前記中石は、前記中石載置部に載置された状態において、中石に当接するように先端部分が屈曲された複数本の前記中石固定用爪部によって固定されており、前記脇石は、前記脇石載置板に載置された状態において、脇石の下面を挟持するように先端部分が屈曲された前記脇石載置板と、屈曲された脇石載置板を挟む位置に配置されると共に、脇石に当接するように押圧変形された1対の前記脇石押圧固定部とによって固定されていることを第1の特徴としている。
また、本発明の指輪は、上記第1の特徴に加えて、脇石押圧固定部は、略球体状の形状で構成されることを第2の特徴としている。
また、本発明の指輪は、上記第1又は第2の特徴に加えて、押圧された1対の脇石押圧固定部は、脇石と当接している総当接面積の9割が前記脇石のクラウン部と当接しており、残る1割が前記脇石のテーブルと当接していることを第3の特徴としている。
また、本発明の指輪の製造方法は、請求項1に記載の指輪の製造方法であって、中石を固定する中石固定工程と、脇石を固定する脇石固定工程とを備え、前記中石固定工程は、中石を中石載置部に載置させる中石載置工程と、前記中石載置工程で載置された中石のクラウン部に中石固定用爪部の先端部分を屈曲させて当接させる中石固定用爪部屈曲工程とをこの順で備え、前記脇石固定工程は、脇石押圧固定部の直下において脇石のガードルが脇石載置板と接する位置に切り込み用治具を用いて切り込みを入れる切り込み形成工程と、前記切り込み形成工程により形成された切り込みに脇石のガードルを当接させた状態で、脇石を脇石載置板に載置させて脇石載置板の先端部分を脇石に当接させない範囲で第1の屈曲用治具を用いて脇石を挟むように屈曲させる第1の屈曲工程と、前記第1の屈曲工程により屈曲された脇石載置板の先端部分が脇石に当接するまで第2の屈曲用治具を用いて屈曲させる第2の屈曲工程と、前記第2の屈曲工程により屈曲された脇石載置板の先端部分を、切断用治具を用いて所定長さに切断する切断工程と、前記切断工程により切断された先端部分を挟む位置に配置される1対の脇石押圧固定部を、押圧用治具を用いて上方から押圧することで脇石押圧固定部を脇石に当接させる押圧工程とをこの順で備え、前記押圧工程においては、脇石押圧固定部における中石固定用爪部よりも外側の領域を前記押圧用治具で押圧することを第4の特徴としている。
また、本発明の屈曲用治具は、請求項4に記載の指輪の製造方法における第1の屈曲工程で使用する第1の屈曲用治具であって、手に握りながら閉方向又は開方向に操作する一対の把持部と、前記操作により開閉軸を介して閉方向又は開方向に動作する下側挟持片と上側挟持片との一対の挟持片とを備えるペンチ状のもので構成されると共に、前記下側挟持片は、先端部分を前記上側挟持片の方向に向けて湾曲させてあると共に、脇石載置板の先端部分を所定長さ挿入することで前記脇石載置板の屈曲幅の位置決めを行うことが可能な位置決め用溝を下側挟持片の先端から長手方向に所定長さ設けてあり、前記上側挟持片には、脇石のテーブルと当接する位置に、脇石のテーブルと面一で当接する平坦面を設けてあることを第5の特徴としている。
また、本発明の屈曲用治具は、請求項4に記載の指輪の製造方法における第2の屈曲工程で使用する第2の屈曲用治具であって、手に握りながら閉方向又は開方向に操作する一対の把持部と、前記操作により開閉軸を介して閉方向又は開方向に動作する下側挟持片と上側挟持片との一対の挟持片とを備えるペンチ状のもので構成されると共に、前記下側挟持片は、その先端領域を前記上側挟持片の方向に向けて湾曲させてあると共に、脇石載置板と当接させる先端部分をL字状に屈曲させてあり、前記上側挟持片は、その先端領域を前記下側挟持片に向かう方向とは反対方向に向けて湾曲させてあると共に、先端部分を中石載置部の貫通孔に差し入れることが可能なように前記下側挟持片の方向に向かって屈曲させたL字状の突端形状で構成してあり、且つL字状の突端形状で構成してある前記先端部分を前記中石載置部の貫通孔に差し入れた状態において脇石のテーブルと当接する位置に、脇石のテーブルと面一で当接する平坦面を設けてあることを第6の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記第1の特徴による指輪によれば、複数個の脇石が、脇石の下面を挟持するように先端が屈曲された脇石載置板と、屈曲された脇石載置板を挟む位置に配置されると共に、脇石に当接するように押圧変形された1対の脇石押圧固定部とによって固定されていることで、脇石を固定するための部材が脇石よりも外側に出っ張った状態で配置されることを確実に防止できる。よって、脇石を固定するための部材が衣服等に引っ掛かったり、壁等に接触したりすることに伴って、衣服や壁等が損傷することや、脇石が落下することを確実に防止することができると共に、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪とすることができる。
また、脇石の下面を挟持するように先端部分が屈曲された脇石載置板と1対の脇石押圧固定部との三点で脇石を固定する構成とすることで、脇石を強固に固定することができる。
【0008】
また、上記第2の特徴による指輪によれば、上記第1の特徴による作用効果に加えて、脇石押圧固定部に負荷する押圧力を効率的に分散でき、押圧作業を効率的に行うことができる。また、押圧変更された脇石押圧固定部が脇石のテーブルに当接する当接面積を効果的に低減させることができる。よって、製造コストを抑えることができると共に、脇石を上方から見た際に脇石押圧固定部で脇石が隠れてしまうことを極力抑えることができ、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪とすることができる。
更に、脇石を固定する機能に加えて、指輪に装飾性を加えることもでき、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪とすることができる。
【0009】
また、上記第3の特徴による指輪によれば、上記第1又は第2の特徴による作用効果に加えて、脇石押圧固定部で押圧される脇石のクラウン部は、脇石の下面を挟持するように屈曲された脇石載置板の先端部分と対向する位置に配置されることになるため、脇石押圧固定部を介して脇石のクラウン部に負荷される力と、脇石の下面を挟持するように屈曲された脇石載置板の先端部分を介してパビリオン部に負荷される力とを対向させることができ、脇石を固定する力に喪失が生じ難い構造とすることができる。これによって、脇石のテーブルに当接させる脇石押圧固定部の面積を極力少ない面積に抑えることができることに加えて、僅かな面積であっても脇石押圧固定部を脇石のテーブルに当接させる構成とすることで、一段と確実に、且つ強固に脇石を石座に固定することができる。
更に、脇石を上方から見た際に脇石押圧固定部で脇石が隠れてしまうことを極力抑えることができ、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪とすることができる。
【0010】
また、上記第4の特徴による指輪の製造方法によれば、脇石を固定するための部材が脇石よりも外側に出っ張った状態で配置されることのない指輪を製造することができる。よって、脇石を固定するための部材が衣服等に引っ掛かったり、壁等に接触したりすることに伴って、衣服や壁等が損傷することや、脇石が落下することを確実に防止することが可能であると共に、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪を製造することができる。
また、脇石の下面を挟持するように先端部分が屈曲された脇石載置板と1対の脇石押圧固定部との三点で脇石を固定する構造を備える指輪とすることができ、脇石を強固に固定することができる指輪を製造することができる。
【0011】
また、上記第5の特徴による屈曲用治具によれば、位置決め用溝に脇石載置板の先端部分を挿入した状態で一対の把持部を閉方向に操作するだけで、脇石載置板の先端部分を容易且つ確実に脇石のキューレットを支点として脇石側へ屈曲させることができる。よって、製造効率を向上させることが可能な第1の屈曲用治具とすることができる。
【0012】
また、上記第6の特徴による屈曲用治具によれば、L字状の突端形状で形成される上側挟持片の先端部分を中石載置部の貫通孔に差し入れた状態で一対の把持部を閉方向に操作するだけで、脇石載置板の先端部分を脇石のパビリオン部に当接させた状態で屈曲させることができる。よって、製造効率を向上させることが可能な第2の屈曲用治具とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る指輪を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のP-P線方向における断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る指輪の石座を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る指輪の製造方法を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る指輪の製造方法を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る指輪の製造方法で使用する第1の屈曲用治具を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る指輪の製造方法で使用する第2の屈曲用治具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態に係る指輪、指輪の製造方法、指輪の製造方法において使用する屈曲用治具を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
なお、
図1においては、説明の便宜上、脇石を実際よりも大きく図示するものとする。
【0015】
まず、
図1、
図2を参照して、本発明の実施形態に係る指輪100を説明する。
【0016】
本発明の実施形態に係る指輪100は、中石3の周囲に複数個(本実施形態においては6個)の脇石4を備える指輪である。
この指輪100は、
図1に示すように、石座1と、指輪100を指につけるための腕部2と、石座1に載置される中石3及び脇石4とで構成される。
【0017】
前記石座1は指輪100の土台を構成するものである。
この石座1は、
図1、
図2に示すように、中石載置部10と、脇石載置板20と、脇石押圧固定部30と、中石固定用爪部40とで構成される。
なお、石座1を構成する素材としては、例えばプラチナ、真鍮、金など、指輪の石座を構成する材料として汎用されている各種のものを用いることができる。
また、石座1の製造方法としては、例えばキャスト製法等、石座の製造方法として汎用されているものを用いることができる。なお、本実施形態における石座1は、キャスト製法を用いて中石載置部10と、脇石載置板20と、脇石押圧固定部30と、中石固定用爪部40とを一体成形してある。
【0018】
前記中石載置部10は、中石3を載置させるためのものである。
本実施形態においては
図1、
図2に簡略化して示すように、中央に貫通孔11を備える円筒状部材で中石載置部10を形成してある。
そして、
図1(b)に示すように、この中石載置部10の貫通孔11に中石3が嵌るような状態で中石3を中石載置部10に載置させてある。
【0019】
前記脇石載置板20は、脇石4を載置させて固定するためのものである。
本実施形態においては
図1、
図2に示すように、中石載置部10の下方から中石載置部10の径方向外側に向けて等間隔で放射状に延びる複数本(本実施形態においては6本)の細長い薄板状部材で脇石載置板20を形成してある。
また、
図1(b)に示すように、この脇石載置板20は、脇石4が載置された状態において、脇石4の下面に当接するように先端部分が屈曲されている。
より具体的には、脇石4が載置された状態において、脇石4のキューレット部を支点として脇石載置板20が外側のパビリオン部に当接するように先端部分が屈曲されている。
また
図1(b)に二点鎖線で示すように、脇石載置板20の長さは、屈曲された脇石載置板20の先端が脇石4よりも外側に出っ張らない長さに調整されている。
更に、詳しくは図示していないが、本実施形態においては、脇石押圧固定部30の直下において脇石4のガードルが脇石載置板20と接する位置に、切り込みを水平方向に設けてあり、この切り込みに脇石4のガードルを当接させてある(差し入れてある)。
なお、脇石載置板20の形状、長さ、厚み、数等は本実施形態のものに限るものではなく適宜変更可能である。但し、脇石4を載置させることが可能なものであると共に、屈曲された脇石載置板20の先端が脇石4よりも外側に出っ張らない長さであることが必要である。また、脇石載置板20の数は、好適には、5本又は6本とすることが望ましい。
【0020】
前記脇石押圧固定部30は、脇石載置板20に載置された状態にある脇石4を上方から押圧し、脇石載置板20と合わさって脇石4を脇石載置板20上で固定するためのものである。
本実施形態においては
図1、
図2に示すように、隣接する脇石載置板20の間の位置において、中石載置部10の外面から外側に向かって略球体状に膨出する部材で脇石押圧固定部30を形成してある。
また、
図1(b)に示すように、この脇石押圧固定部30は、脇石4が脇石載置板20に載置された状態において、脇石4の上面に当接するように押圧変形されている。
より具体的には、脇石4が脇石載置板20に載置された状態において、押圧変形されて脇石4の上面と当接する脇石押圧固定部30の総当接面積の9割~9割5分が脇石4のクラウン部と当接し、残る1割~5分が脇石4のテーブルと当接するように押圧変形されている。なお、本実施形態においては、押圧変形されて脇石4の上面と当接する脇石押圧固定部30の総当接面積の9割が脇石4のクラウン部と当接し、残る1割が脇石4のテーブルと当接するように押圧変形されている。なお、脇石4が脇石載置板20に載置された状態において、脇石4の上面に当接する割合は上記割合に限るものではなく、他の割合としてもよいが、好適には上記割合とすることが望ましい。
このような構造により、1対の脇石押圧固定部30と脇石載置板20とが合わさって、脇石4が脇石載置板20に強固に固定されている。
より具体的には、1対の脇石押圧固定部30による脇石4の上面(クラウン部)を押圧する力と、脇石4の下面を挟持するように屈曲された脇石載置板20の先端部分による脇石4の下面(パビリオン部)を押圧する力とが対向することで、脇石4が脇石載置板20に固定されている。これに加えて、1対の脇石押圧固定部30による脇石4の上面(テーブル)を鉛直方向の下方に押圧する力により脇石4が脇石載置板20に強固に固定されている。
なお、脇石押圧固定部30の形状、大きさ、数等は本実施形態のものに限るものではなく適宜変更可能である。但し、一つの脇石載置板20に対して、石座1の周方向両側に脇石押圧固定部30を少なくとも1対設けることが必要である。
【0021】
前記中石固定用爪部40は、中石載置部10に載置された中石3を固定するためのものである。
本実施形態においては
図1、
図2に示すように、脇石押圧固定部30から上方に立設される細長い円柱状部材で中石固定用爪部40を形成してある。
また、
図1(b)に示すように、中石載置部10に中石3が載置された状態において、中石固定用爪部40の先端部分は中石3に当接するように屈曲されている。
このような構造により、中石3が中石載置部10に固定されている。
なお、中石固定用爪部40の形状、大きさ、数等は本実施形態のものに限るものではなく適宜変更可能である。例えば、中石固定用爪部40を設ける脇石押圧固定部30と、中石固定用爪部40を設けていない脇石押圧固定部30とが混在するような構成としてもよい。
但し、中石固定用爪部40の先端部分を中石3に当接するように屈曲させた状態において、中石3のテーブルに中石固定用爪部40の先端部分がかからない長さとすることが望ましい。
【0022】
次に、
図3~
図6を参照して、本発明の実施形態に係る指輪100の製造方法と、指輪100の製造方法で使用する第1の屈曲用治具50及び第2の屈曲用治具60とを説明する。
【0023】
図3、
図4を参照して、本発明の実施形態に係る指輪100の製造方法は、中石3を固定する中石固定工程Aと、脇石4を固定する脇石固定工程Bとを備える。
より具体的には、中石固定工程Aとして、中石載置工程A1と中石固定用爪部屈曲工程A2とをこの順で備える。
また、脇石固定工程Bとして、切り込み形成工程B1と、第1の屈曲工程B2と、第2の屈曲工程B3と、切断工程B4と、押圧工程B5とをこの順で備える。
【0024】
まず
図3(a)を参照して、切り込み形成工程B1により、脇石押圧固定部30の直下において脇石4のガードルが脇石載置板20と接する位置に切り込み用治具70を用いて水平方に切り込みを入れる。なお、本発明の実施形態における切り込み用治具70は、脇石押圧固定部30の直下において脇石4のガードルが脇石載置板20と接する位置に入り込み易いように、側面視において菱形の外形形状をなし、水平方向の対角線部分が切断刃となっている。勿論、切り込み用治具はこのようなものに限るものではなく、他の切り込み用治具を用いる構成としてもよい。
【0025】
次に、
図3(b)を参照して、第1の屈曲工程B2により、切り込み形成工程B1により形成された切り込みに脇石4のガードルを当接させた状態で、脇石4を脇石載置板20に載置させて脇石載置板20の先端部分を脇石4に当接させない範囲で第1の屈曲用治具50を用いて脇石4を挟むように屈曲させる。
ここで、第1の屈曲用治具50は
図3(b)、
図5に示すように、手に握りながら閉方向又は開方向に操作する一対の把持部51と、前記操作により開閉軸を介して閉方向又は開方向に動作する下側挟持片52と上側挟持片53との一対の挟持片とを備えるペンチ状のもので構成されている。また、下側挟持片52は、先端領域52aの先端部分を上側挟持片53の方向に向けて湾曲させてあると共に、脇石載置板20の先端部分を所定長さ挿入することで脇石載置板20の屈曲幅の位置決めを行うことが可能な位置決め用溝52bを下側挟持片52の先端から長手方向に所定長さ設けてある。更に、
図5(a)の二点鎖線で示すように、下側挟持片52の先端部分の上面を先端に向かって下方に傾斜させた傾斜面52cとしてある。この傾斜面52cは、第1の屈曲用治具50を用いて脇石載置板20を屈曲させる際、脇石4のパビリオン部の傾斜面に沿う傾斜面(脇石4のパビリオン部の傾斜面と略平行となる傾斜面)となるように設けてあるもので、屈曲時に脇石4のパビリオン部に当接させることで脇石4の移動を抑止するためのものである。
また、上側挟持片53には、脇石4のテーブルと当接する位置に、脇石4のテーブルと面一で当接する平坦面53aを設けてある。
このような構成の第1の屈曲用治具50用いて第1の屈曲工程B2を行うことで、脇石載置板20の屈曲幅を容易に位置決めすることができる。また、
図3(c)に示すように、脇石載置板20の先端部分を容易且つ確実に脇石4のキューレットを支点として脇石4側へ屈曲させることができる。なおこの際、切り込み形成工程B1により予め設けておいた切り込みに脇石4のガードルを当接させてあると共に、平坦面53aを脇石4のテーブルに当接させた状態で第1の屈曲工程B2を行う構成とすることで、脇石4の移動を効果的に抑止させた状態で第1の屈曲工程B2を行うことができ、作業効率の良い第1の屈曲工程B2とすることができる。
この状態において、屈曲された脇石載置板20の先端部分と、その先端部分と対向する位置に配置されている1対の脇石押圧固定部30との三点で脇石4が脇石載置板20上で仮固定された状態となる。
【0026】
次に、
図3(d)を参照して、第2の屈曲工程B3により、第1の屈曲工程B2により屈曲された脇石載置板20の先端部分が脇石4に当接するまで第2の屈曲用治具60を用いて屈曲させる。
ここで、第2の屈曲用治具60は
図3(d)、
図6に示すように、手に握りながら閉方向又は開方向に操作する一対の把持部61と、前記操作により開閉軸を介して閉方向又は開方向に動作する下側挟持片62と上側挟持片63との一対の挟持片とを備えるペンチ状のもので構成されている。また、下側挟持片62は、その先端領域62aを上側挟持片63の方向に向けて湾曲させてあると共に、脇石載置板20と当接させる先端部分62bをL字状に屈曲させてある。更に、上側挟持片63は、その先端領域63aを下側挟持片62に向かう方向とは反対方向に向けて湾曲させてあると共に、先端部分63bを中石載置部10の貫通孔11に差し入れることが可能なように下側挟持片62の方向に向かって屈曲させたL字状の突端形状で構成してある。加えて、L字状の突端形状で構成してある先端部分63bを中石載置部10の貫通孔11に差し入れた状態において脇石4のテーブルと当接する位置に、脇石4のテーブルと面一で当接する平坦面63cを設けてある。
なお、先端部分63bの太さは、貫通孔11に差し入れた際に前後左右に隙間が生じない太さとしてある。また、
図3(d)においては、説明の便宜上、貫通孔11の図示を省略するものとする。
このような構成の第2の屈曲用治具60用いて第2の屈曲工程B3を行うことで、脇石載置板20の先端部分を屈曲させる際に、まず、先端部分63bを中石載置部10の貫通孔11に差し入れてあることで、第2の屈曲用治具60自体が前後左右に動くことを確実に防止できる。加えて、平坦面63cで脇石4のテーブルを抑えることで、脇石4が上方へと動くことを確実に抑えることができる。
よって、L字状の突端形状で形成される上側挟持片63の先端部分63bを中石載置部10の貫通孔11に差し入れた状態で一対の把持部61を閉方向に操作するだけで、
図4(a)に示すように、脇石載置板20の先端部分を脇石4のパビリオン部に隙間なく当接させた状態で屈曲させることができる。
この状態において、屈曲された脇石載置板20の先端部分と、その先端部分と対向する位置に配置されている1対の脇石押圧固定部30との三点で脇石4が脇石載置板20上で強固に締め込まれて固定された状態となる。
【0027】
次に、
図4(a)を参照して、切断工程B4により、第2の屈曲工程B3により屈曲された脇石載置板20の先端部分(
図4(a)における斜線部分)を、図示しない切断用治具を用いて所定長さに切断する。
これにより、
図4(a)、
図4(b)に示すように、屈曲された脇石載置板20の先端部分の長さを脇石4のパビリオン部よりも外側に出っ張らない長さに調整することができる。
【0028】
次に、
図4(b)を参照して、中石載置工程A1により、中石3を中石載置部10に載置させる。より具体的には、貫通孔11に中石3を差し込むことで中石3を中石載置部10に載置させる。
【0029】
次に、
図4(c)を参照して、中石固定用爪部屈曲工程A2により、中石載置工程A1で載置された中石3のクラウン部に中石固定用爪部40の先端部分を屈曲させて当接させる。これにより、中石3が中石載置部10に固定される。
【0030】
次に、
図4(d)を参照して、押圧工程B5により、切断工程B4により切断された脇石載置板20の先端部分を挟む位置に配置される1対の脇石押圧固定部30を、押圧用治具80を用いて上方から押圧することで脇石押圧固定部30を脇石4のテーブルに当接させる。この際、脇石押圧固定部30における中石固定用爪部40よりも外側の領域を押圧用治具80で押圧する。
この工程により、
図1、
図4(d)に示すように、脇石押圧固定部30を押圧変形させて脇石4のテーブルに当接させることができる。これによって、1対の脇石押圧固定部30を介して脇石4のクラウン部に負荷される力と、脇石4の下面を挟持するように屈曲された脇石載置板20の先端部分を介してパビリオン部に負荷される力に加えて、1対の脇石押圧固定部30による脇石4のテーブルを鉛直方向の下方に押圧する力が加わり、脇石4が脇石載置板20に強固に固定される。
また本実施形態においては、押圧変形されて脇石4の上面と当接する脇石押圧固定部30の総当接面積の9割が脇石4のクラウン部と当接し、残る1割が脇石4のテーブルと当接するような押圧力にて脇石押圧固定部30を押圧変形させる構成としてある。
なお、本実施形態においては、押圧用治具80として、略球体状の脇石押圧固定部30における中石固定用爪部40よりも外側の領域を押圧し易いように、先細りの外形形状を備えた押圧用治具80を用いる構成としてある。このような押圧用治具80を用いる構成とすることで、押圧工程B5の作業効率を向上させることができる。勿論、押圧用治具80としてはこのような形状のものに限るものではなく、略球体状の脇石押圧固定部30における中石固定用爪部40よりも外側の領域を確実に押圧できるものであれば、他の形状のものを用いる構成であってもよい。
また、1対の脇石押圧固定部30に対する押圧は、1対の脇石押圧固定部30を同時に押圧するものと、1対の脇石押圧固定部30を別々に押圧するものとのどちらであってもよい。
【0031】
このような構成からなる本発明の実施形態に係る指輪100、指輪100の製造方法、指輪100の製造方法で使用する第1の屈曲用治具50及び第2の屈曲用治具60は以下の効果を奏する。
【0032】
複数個の脇石4が、脇石4の下面を挟持するように先端が屈曲された脇石載置板20と、屈曲された脇石載置板20を挟む位置に配置されると共に、脇石4に当接するように押圧変形された1対の脇石押圧固定部30とによって固定されていることで、脇石4を固定するための部材が脇石4よりも外側に出っ張った状態で配置されることを確実に防止できる。よって、脇石4を固定するための部材が衣服等に引っ掛かったり、壁等に接触したりすることに伴って、衣服や壁等が損傷することや、脇石4が落下することを確実に防止することができると共に、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪100とすることができる。
また、脇石4の下面を挟持するように先端部分が屈曲された脇石載置板20と1対の脇石押圧固定部30との三点で脇石4を固定する構成とすることで、脇石を強固に固定することができる。加えて、脇石押圧固定部30の直下において脇石4のガードルが脇石載置板20と接する位置に、切り込みを水平方向に設けてあり、この切り込みに脇石4のガードルを当接させてある(差し入れてある)ことで、脇石4が上下にずれることを効果的に防止することができ、脇石4を一段と強固に固定することができる。
【0033】
また、脇石押圧固定部30を略球体状の形状で構成することで、脇石押圧固定部30に負荷される押圧力を効率的に分散でき、押圧作業を効率的に行うことができる。また、押圧変更された脇石押圧固定部30が脇石のテーブルに当接する当接面積を効果的に低減させることができる。よって、脇石押圧固定部30の製造に必要な材料を効果的に低減させることができ、製造コストを抑えることができると共に、脇石4を上方から見た際に脇石押圧固定部30で脇石4が隠れてしまうことを極力抑えることができ、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪100とすることができる。更に、脇石4を固定する機能に加えて、略球体状の形状で構成される脇石押圧固定部30の外形形状によって、中石3や脇石4の形状とも相まって指輪100に装飾性を加えることができ、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪100とすることができる。
【0034】
また、押圧変形された1対の脇石押圧固定部30の構成として、脇石4と当接している総当接面積の9割が脇石4のクラウン部と当接しており、残る1割が脇石4のテーブルと当接している構成とすることで、脇石押圧固定部30で押圧される脇石4のクラウン部は、脇石4の下面を挟持するように屈曲された脇石載置板20の先端部分と対向する位置に配置されることになるため、脇石押圧固定部30を介して脇石4のクラウン部に負荷される力と、脇石4の下面を挟持するように屈曲された脇石載置板20の先端部分を介してパビリオン部に負荷される力とを対向させることができ、脇石4を固定する力に喪失が生じ難い構造とすることができる。これによって、脇石4のテーブルに当接させる脇石押圧固定部30の面積を極力少ない面積に抑えることができることに加えて、僅かな面積であっても脇石押圧固定部30を脇石4のテーブルに当接させる構成とすることで、一段と確実に、且つ強固に脇石4を石座1に固定することができる。
更に、脇石4を上方から見た際に脇石押圧固定部30で脇石4が隠れてしまうことを極力抑えることができ、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪100とすることができる。
【0035】
また、中石載置工程A1と中石固定用爪部屈曲工程A2とをこの順で備えると共に、切り込み形成工程B1と、第1の屈曲工程B2と、第2の屈曲工程B3と、切断工程B4と、押圧工程B5とをこの順で備える指輪100の製造方法とすることで、脇石4を固定するための部材が脇石4よりも外側に出っ張った状態で配置されることのない指輪100を効率的に製造することができる。よって、脇石4を固定するための部材が衣服等に引っ掛かったり、壁等に接触したりすることに伴って、衣服や壁等が損傷することや、脇石4が落下することを確実に防止することが可能であると共に、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪100を効率的に製造することができる。
また、脇石4の下面を挟持するように先端部分が屈曲された脇石載置板20と1対の脇石押圧固定部30との三点で脇石4を固定する構造を備える指輪100とすることができ、脇石4を強固に固定することができる指輪100を製造することができる。加えて、切り込み形成工程B1により、脇石押圧固定部30の直下において脇石4のガードルが脇石載置板20と接する位置に切り込み用治具70を用いて水平方向に切り込みを入れ、この切り込みに脇石4のガードルを当接させた状態(切り込みにガードルを差し入れた状態)にしてあることで、脇石4を一段と強固に固定することができる指輪100を製造することができる。
【0036】
また、第1の屈曲用治具50を用いる第1の屈曲工程B2によって、屈曲された脇石載置板20の先端部分と、その先端部分と対向する位置に配置されている1対の脇石押圧固定部30との三点で脇石4を脇石載置板20上で仮固定した後、第2の屈曲用治具60を用いる第2の屈曲工程B3によって、屈曲された脇石載置板20の先端部分と、その先端部分と対向する位置に配置されている1対の脇石押圧固定部30との三点で脇石4を脇石載置板20上で強固に締め込んで固定する構成を備えることで、脇石4の固定時に脇石4が前後左右や上下に移動することをしっかりと防止しながら確実に脇石載置板20上に脇石4を固定させることができる。
【0037】
また、第1の屈曲用治具50の構成として、手に握りながら閉方向又は開方向に操作する一対の把持部51と、前記操作により開閉軸を介して閉方向又は開方向に動作する下側挟持片52と上側挟持片53との一対の挟持片とを備えるペンチ状のもので構成してあり、また、下側挟持片52は、先端部分を上側挟持片53の方向に向けて湾曲させ、脇石載置板20の先端部分を所定長さ挿入することで脇石載置板20の屈曲幅の位置決めを行うことが可能な位置決め用溝52bを下側挟持片52の先端から長手方向に所定長さ設けてあると共に、下側挟持片52の先端部分の上面を先端に向かって下方に傾斜させた傾斜面52cとしてあり、更に、上側挟持片53には、脇石4のテーブルと当接する位置に、脇石4のテーブルと面一で当接する平坦面53aを設けてある構成とすることで、位置決め用溝52bに脇石載置板20の先端部分を挿入した状態で一対の把持部51を閉方向に操作するだけで、脇石載置板20の先端部分を容易且つ確実に脇石4のキューレットを支点として脇石4側へ屈曲させることができる。加えて、傾斜面52cを脇石4のパビリオン部に当接させた状態で屈曲を行うことができ、脇石4の移動を抑止した状態で屈曲作業を行うことができる。
よって、製造効率を向上させることが可能な第1の屈曲用治具50とすることができる。
【0038】
また、第2の屈曲用治具60の構成として、手に握りながら閉方向又は開方向に操作する一対の把持部61と、前記操作により開閉軸を介して閉方向又は開方向に動作する下側挟持片62と上側挟持片63との一対の挟持片とを備えるペンチ状のもので構成してあり、また、下側挟持片62は、その先端領域を上側挟持片63の方向に向けて湾曲させてあると共に、脇石載置板20と当接させる先端部分62bをL字状に屈曲させてあり、更に、上側挟持片63は、その先端領域63aを下側挟持片62に向かう方向とは反対方向に向けて湾曲させてあると共に、先端部分63bを中石載置部10の貫通孔11に差し入れることが可能なように下側挟持片62の方向に向かって屈曲させたL字状の突端形状で構成してあり、且つL字状の突端形状で構成してある先端部分63bを中石載置部10の貫通孔11に差し入れた状態において脇石4のテーブルと当接する位置に、脇石4のテーブルと面一で当接する平坦面63を設けてある構成とすることで、L字状の突端形状で形成される上側挟持片63の先端部分63bを貫通孔11に差し入れた状態で一対の把持部61を閉方向に操作するだけで、脇石載置板20の先端部分を脇石4のパビリオン部に隙間なく当接させた状態で屈曲させることができる。よって、製造効率を向上させることが可能な第2の屈曲用治具60とすることができる。
【0039】
なお、中石3、脇石4の材質はダイヤモンドやサファイヤ、アクアマリン、ピンクトルマリン、ルビー、エメラルドなど、指輪の中石、脇石として汎用されている各種のものを用いることができる。また、カットを含めた形状も指輪の中石、脇石として汎用されている各種のものを用いることができる。
また、腕部2の形状や大きさも本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、脇石を固定するための部材が衣服等に引っ掛かったり、壁等に接触したりすることに伴って、衣服や壁等が損傷することや、脇石が落下することを確実に防止することができると共に、脇石を強固に固定することができ、また、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪とすることができることから、指輪の分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0041】
1 石座
2 腕部
3 中石
4 脇石
10 中石載置部
11 貫通孔
20 脇石載置板
30 脇石押圧固定部
40 中石固定用爪部
50 第1の屈曲用治具
51 把持部
52 下側挟持片
52a 先端領域
52b 位置決め用溝
52c 傾斜面
53 上側挟持片
53a 平坦面
60 第2の屈曲用治具
61 把持部
62 下側挟持片
62a 先端領域
62b 先端部分
63 上側挟持片
63a 先端領域
63b 先端部分
63c 平坦面
70 切り込み用治具
80 押圧用治具
100 指輪
A 中石固定工程
A1 中石載置工程
A2 中石固定用爪部屈曲工程
B 脇石固定工程
B1 切り込み形成工程
B2 第1の屈曲工程
B3 第2の屈曲工程
B4 切断工程
B5 押圧工程
【要約】
【課題】脇石を固定するための部材が衣服等に引っ掛かったり、壁等に接触したりすることに伴って、衣服や壁等が損傷することや、脇石が落下することを確実に防止することができると共に、脇石を強固に固定することができ、また、華やかな煌めきを一段と表現可能な指輪、前記指輪の製造方法、前記指輪の製造方法において使用する屈曲用治具の提供を課題とする。
【解決手段】石座1が、円筒状の中石載置部10と、中石載置部10の径方向外側に向けて放射状に延びる脇石載置板20と、中石載置部10の外面から外側に向かって膨出する脇石押圧固定部30と、脇石押圧固定部30から上方に立設される中石固定用爪部40とで構成され、脇石4が、脇石4の下面を挟持するように先端部分が屈曲された脇石載置板20と、屈曲された脇石載置板20を挟む位置に配置されると共に、脇石4に当接するように押圧変形された1対の脇石押圧固定部30とによって固定されている指輪100である。
【選択図】
図1