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特許7150396符号生成装置及びスペクトラム拡散信号受信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】符号生成装置及びスペクトラム拡散信号受信システム
(51)【国際特許分類】
   H04J 13/10 20110101AFI20221003BHJP
   H04B 1/7075 20110101ALI20221003BHJP
【FI】
H04J13/10
H04B1/7075
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018201897
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020068505
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】小田 真嗣
【審査官】玉田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-160170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0224973(US,A1)
【文献】特表2009-535640(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0068958(US,A1)
【文献】特開2007-327952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0214434(US,A1)
【文献】特開平10-257023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0108588(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103487817(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0147457(US,A1)
【文献】米国特許第6452961(US,B1)
【文献】一色 浩,荒井 修,松本一実,Dinesh Manandhar,小神野和貴,鳥本秀幸,GPSハンドブック,株式会社朝倉書店、柴崎 亮介,2010年09月25日,pp.104-137 5.受信機,ISBN: 978-4-254-20137-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 13/00-13/22
H04B 1/69- 1/719
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号のM系列符号の位相を位相状態として前記位相状態を所定のサイクルだけ変化させることにより、所望の位相状態の符号である位相レジスタ値を生成する符号生成装置であって、
前記M系列符号の線形変化要因に対応した位相レジスタ値を算出する位相レジスタ算出手段と、
前記M系列符号の非線形変化要因に対応して、前記位相レジスタ値を調整する位相レジスタ調整手段と、
を備えたことを特徴とする符号生成装置。
【請求項2】
前記位相レジスタ調整手段は、
前記M系列符号がガロア線形フィードバックシフトレジスタで生成され、且つ前記非線形変化要因に応じたドップラーシフト量がプラスの場合、順型のガロア線形フィードバックシフトレジスタによって、前記位相レジスタ値を調整し、
且つ前記ドップラーシフト量がマイナスの場合、相反型のガロア線形フィードバックシフトレジスタによって前記位相レジスタ値を調整することを特徴とする請求項1に記載の符号生成装置。
【請求項3】
前記位相レジスタ調整手段は、
前記M系列符号がフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタで生成され、且つ前記非線形変化要因に応じたドップラーシフト量がプラスの場合、順型のフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタによって、前記位相レジスタ値を調整し、
且つ前記ドップラーシフト量がマイナスの場合、相反型のフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタによって前記位相レジスタ値を調整することを特徴とする請求項1に記載の符号生成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の符号生成装置を備え、前記符号生成装置にて生成され出力された前記位相レジスタ値を、衛星からのスペクトラム拡散信号を捕捉及び追尾するためのコード生成器に設定することを特徴とするスペクトラム拡散信号受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「全地球測位システム」(GPS:Global Positioning System)などが放送しているM系列の拡散信号を受信するために、所望の位相状態の符号(0又は1)を生成する符号生成装置と、この符号生成装置を適用したスペクトラム拡散信号受信システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
GPSのL2C信号はガロア線形フィードバックシフトレジスタによるM系列でスペクトラム拡散され、みちびき「準天項衛星システム」(QZSS:Quasi-Zenith Satellite System)のL6信号はフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタによるM系列を組み合わせたKasami系列でスペクトラム拡散されている。L2C信号及びL6信号を受信するためには、受信機内のコード生成器に適切な位相レジスタ値を設定する必要がある。適切な位相レジスタ値が設定されたコード生成器の出力と受信したベースバンド信号(スペクトラム拡散信号)とを乗算することでL2C信号及びL6信号を受信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4453338号
【文献】特許4806341号
【文献】特許4510219号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、コード生成器に設定する位相レジスタ値を計算するために、全ての位相レジスタ値をROM(Read Only Memory)に記憶したり、ソフトウェアで計算したりしているが、GPSのL2C信号やQZSSのL6信号のような長周期のM系列で拡散された信号を受信するためには次の2つの技術的な問題が生じる。
【0005】
1つ目は、長周期の全ての位相レジスタ値をROMに記憶するためには、大量のROM容量が必要になってしまうという技術的な問題点が生じる。2つ目は、長周期の位相レジスタ値を計算するためには、高性能な、言い換えると高速演算可能なCPU(Central Processing Unit)が必要になってしまうという技術的な問題点が生じる。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、M系列符号の生成に関わる各種の負荷を軽減することが可能な符号生成装置及びこの符号生成装置を適用したスペクトラム拡散信号受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、受信信号のM系列符号の位相を位相状態として前記位相状態を所定のサイクルだけ変化させることにより、所望の位相状態の符号である位相レジスタ値を生成する符号生成装置であって、前記M系列符号の線形変化要因に対応した位相レジスタ値を算出する位相レジスタ算出手段と、前記M系列符号の非線形変化要因に対応して、前記位相レジスタ値を調整する位相レジスタ調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記位相レジスタ調整手段は、前記M系列符号がガロア線形フィードバックシフトレジスタで生成され、且つ前記非線形変化要因に応じたドップラーシフト量がプラスの場合、順型のガロア線形フィードバックシフトレジスタによって、前記位相レジスタ値を調整し、且つ前記ドップラーシフト量がマイナスの場合、相反型のガロア線形フィードバックシフトレジスタによって前記位相レジスタ値を調整することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記位相レジスタ調整手段は、前記M系列符号がフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタで生成され、且つ前記非線形変化要因に応じたドップラーシフト量がプラスの場合、順型のフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタによって、前記位相レジスタ値を調整し、且つ前記ドップラーシフト量がマイナスの場合、相反型のフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタによって前記位相レジスタ値を調整することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3に記載の符号生成装置を備え、前記符号生成装置にて生成され出力された前記位相レジスタ値を、衛星からのスペクトラム拡散信号を捕捉及び追尾するためのコード生成器に設定することを特徴とするスペクトラム拡散信号受信システムである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、線形変化要因及び非線形変化要因によって位相レジスタ算出手段と位相レジスタ調整手段とを使い分けることで、長周期のM系列符号に対して、小規模な回路構成かつ低性能なCPUでも全ての位相レジスタ値をROMに記憶することなく、最適に位相レジスタ値を計算することが可能である。以上の結果、ROM容量の小容量化とCPU処理能力の低負荷を実現可能である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、順型及び相反型の両方のガロア線形フィードバックシフトレジスタを備える。特に、順型のガロア線形フィードバックシフトレジスタを備えることで、プラス方向に変化するドップラーシフト量だけ位相レジスタ値を調整することができる。他方、相反型のガロア線形フィードバックシフトレジスタを備えることで、マイナス方向に変化するドップラーシフト量だけ位相レジスタ値を調整することができる。これにより、プラス及びマイナスの両方向に変化するドップラーシフト量をより的確に区別して位相レジスタ値をより適切に少ない計算負荷で調整することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、順型及び相反型の両方のフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタを備える。特に、順型のフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタを備えることで、プラス方向に変化するドップラーシフト量だけ位相レジスタ値を調整することができる。他方、相反型のフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタを備えることで、マイナス方向に変化するドップラーシフト量だけ位相レジスタ値を調整することができる。これにより、プラス及びマイナスの両方向に変化するドップラーシフト量をより的確に区別して位相レジスタ値をより適切に少ない計算負荷で調整することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、このような符号生成装置にて生成され出力された位相レジスタ値をスペクトラム拡散信号受信システムのコード生成部に適用して、このコード生成部から出力された符号に基づいて生成される逆拡散符号を、衛星からのスペクトラム拡散信号に掛け合わせることで、スペクトラム拡散信号の捕捉及び追尾を効率良く行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るスペクトラム拡散信号受信システム1の構成を模式的に示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る位相レジスタ計算回路部と、位相レジスタ調整処理部との組み合わせによって、位相レジスタ値を計算する動作を示したタイミングチャートである。
図3】本実施形態に係るr段(rビット)のシフトレジスタを有する4種類(順型ガロア、相反型(逆型)ガロア、順型フィボナッチ、及び相反型(逆型)フィボナッチ)線形フィードバックシフトレジスタのブロック図(図3(a)、図3(b)、図3(c)及び図3(d))である。
図4】本実施形態に係る4段(4ビット)のシフトレジスタを有する順型ガロア及び相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタのブロック図(図4(a)及び図4(b))、並びに、順型ガロア及び相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタにおける各レジスタの状態のシフト(サイクル)を示す表(図4(c)及び図4(d))である。
図5】本実施形態に係る4段(4ビット)のシフトレジスタを有する順型フィボナッチ及び相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタのブロック図(図5(a)及び図5(b))、並びに、順型フィボナッチ及び相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタにおける各レジスタの状態のシフト(サイクル)を示す表(図5(c)及び図5(d))である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
≪実施形態≫
<スペクトラム拡散信号受信システムの構成>
本発明の実施形態に係るスペクトラム拡散信号受信システム1について、図1を参照して説明する。ここに、図1は、本実施形態に係るスペクトラム拡散信号受信システム1の構成を模式的に示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るスペクトラム拡散信号受信システム1は、アンテナ2と、周波数変換部3と、A/D変換部4と、受信回路部10と、CPU部50とを備えて構成され、例えば、車載用GPS受信モジュールとして図示しない車両に搭載されている。
【0018】
CPU部50は、受信処理部60と、位相レジスタ調整処理部70とを備えて構成されている。尚、CPU部50は、ソフトウェアによって構成可能である。また、符号生成装置80は、位相レジスタ計算回路部40と、位相レジスタ調整処理部70とを備えて構成されている。詳細には、位相レジスタ計算回路部40、及び位相レジスタ調整処理部70は、後述される順型ガロア、相反型(逆型)ガロア、順型フィボナッチ、及び相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタを夫々備えて構成されている。
【0019】
ここで、図示しない衛星から無線を介して送信されたスペクトラム拡散信号がスペクトラム拡散信号受信システム1のアンテナ2により受信された際に、周波数変換部3は、前記スペクトラム拡散信号を中間周波数の信号にダウンコンバートしてA/D変換部4に出力し、A/D変換部4は、前記スペクトラム拡散信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して受信回路部10に出力する。なお、スペクトラム拡散信号受信システム1では、所定のチャンネル数(通常、8~16チャンネル)だけの受信回路部10を備えているが、図1では、1チャンネル分の受信回路部10のみ図示している。
【0020】
スペクトラム拡散信号がL2C信号である場合に、当該L2C信号は、前記衛星内において、航法メッセージに所定周波数の搬送波を重畳し、さらに、拡散コードとしてのCMコード(繰り返し周期:10230ビット/周期)及びCLコード(繰り返し周期:767250ビット/周期)によりスペクトラム拡散された信号である。また、CMコード及びCLコードは、各衛星に固有で且つ前記各衛星の間で互いに異なるコード列であり、該各衛星で生成されるM系列のコード列のうち、所定の開始位置と終了位置との間を指定範囲とするコードである。従って、アンテナ2にて複数の衛星からスペクトラム拡散信号をそれぞれ受信したときに、各衛星のCMコード及びCLコードは、27ビットのガロア線形フィードバックシフトレジスタで生成され、2の27乗-1個のM系列のコード列中で、互いに異なる指定範囲を占有することになる。
【0021】
受信回路部10は、コード生成器21及びコード発生用NCO22を含むコード生成部20と、相関器30と、キャリア用NCO31と、搬送波相関部32と、位相レジスタ計算回路部40とを備えて構成されている。
【0022】
キャリア用NCO31は、ダウンコンバートされた搬送波と同一周波数のローカルキャリアを生成し、このローカルキャリアを搬送波相関部32に出力する。搬送波相関部32は、A/D変換部4からのデジタル信号と、キャリア用NCO31からのローカルキャリアとを乗算し、ダウンコンバートされた搬送波を除去したベースバンド信号を相関器30に出力する。コード発生用NCO22は、所定周波数のクロック信号をコード生成器21に出力する。
【0023】
コード生成器21は、コード発生用NCO22からのクロック信号に基づいて、ベースバンド信号中のCMコード及びCLコードと同相の拡散符号(以下、拡散コードともいう。)を生成して相関器30に出力する。相関器30は、搬送波相関部32からのベースバンド信号と、コード生成器21からの拡散コードとを乗算し、乗算結果を相関値としてCPU部50に出力する。
【0024】
CPU部50は、測位演算制御部として機能し、相関値に基づくスペクトラム拡散信号の捕捉及び追尾を行うために、ローカルキャリアを調整するローカルキャリア用制御値(周波数及び位相)をキャリア用NCO31に出力し(搬送波位相追尾ループ:PLL(Phase Locked Loop)制御)、拡散コードの発生タイミングを調整するコード用制御値(周波数及び位相)をコード発生用NCO22に出力する(コード位相追尾ループ:DLL(Delay Locked Loop)制御)。
【0025】
キャリア用NCO31は、ローカルキャリア用制御値に基づいて、搬送波とローカルキャリアとが位相同期するように、ローカルキャリアを搬送波相関部32に出力する。また、コード発生用NCO22は、コード用制御値に基づいて、CMコード及びCLコードと拡散コードとが位相同期するように、クロック信号をコード生成器21に出力する。
【0026】
この結果、受信回路部10内では、拡散コードとCMコード及びCLコードとの位相同期と、ローカルキャリアと搬送波との位相同期とがそれぞれ取られて、スペクトラム拡散信号の捕捉及び追尾を行うことが可能となる。また、CPU部50では、相関値から航法データを読み取り、さらに、複数の衛星からの各スペクトラム拡散信号の搬送波位相、ドップラー周波数及び各衛星からスペクトラム拡散信号受信システム1までの擬似距離より、該システム1の現在位置や、前記システム1を車載用GPS受信モジュールとして搭載した車両の速度や、現在時刻を求めることができる。
【0027】
さらに、CPU部50は、スペクトラム拡散信号の捕捉及び追尾を行う際に、当該スペクトラム拡散信号に含まれるCMコード及びCLコードに関わる情報(M系列におけるCMコード及びCLコードの開始位置、終了位置及び指定範囲に関わる情報や、前記指定範囲内の所定位置にCMコードやCLコードが位置していることを示す情報)を含む初期設定値を符号生成装置80で生成してコード生成器21に出力する。従って、コード生成器21は、初期設定値及びクロック信号より、スペクトラム拡散信号に含まれるCMコード及びCLコードの所定位置(位相)に同期した拡散コードを生成して相関器30に出力する。
【0028】
本実施形態では、1番目の特徴として、位相レジスタ計算回路部40と、位相レジスタ調整処理部70とを組み合わせて目的となる位相レジスタ値を計算する。受信信号のM系列符号の変化要因は、(i)単位時間経過による線形変化要因と、(ii)衛星(送信機)やユーザ(受信機)の加速や不規則移動による非線形変化要因とに分けられる。
【0029】
位相レジスタ計算回路部40はM系列符号の線形変化要因に対応するために備えられる。他方で、位相レジスタ調整処理部70はM系列符号の非線形変化要因に対応するために備えられる。
【0030】
変化要因によって位相レジスタ計算回路部40と位相レジスタ調整処理部70とを使い分けることで、L2C信号やL6信号で使用される長周期のM系列に対して、小規模な回路構成かつ低性能なCPUでも最適に位相レジスタ値を計算することが可能である。
【0031】
本実施形態では、2番目の特徴として、(i)コード生成器21に設定する位相レジスタ値を計算する位相レジスタ計算回路部40に加えて、(ii)位相レジスタ値を微調整するための位相レジスタ調整処理部70を備える。
位相レジスタ調整処理部70は短時間内のドップラーシフト量(ドップラー変化分)だけ位相レジスタ値を調整することを目的とする。
【0032】
更に、M系列のタイプがGPSのL2C信号の場合、順型及び相反型の両方のガロア線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR:Linear Feedback Shift Register)が用いられる。他方、M系列のタイプがQZSSのL6信号の場合、順型及び相反型の両方のフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタが用いられる。
【0033】
順型及び相反型の両方のガロア及びフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタを備えることで、プラス方向及びマイナス方向の両方向に変化するドップラーシフト量(ドップラー変化分)だけ位相レジスタ値を調整することを可能にする。
詳細には、M系列のタイプがGPSのL2C信号の場合、順型のガロア線形フィードバックシフトレジスタを備えることで、プラス方向に変化するドップラーシフト量だけ位相レジスタ値を調整することを可能にする。他方、相反型(逆型)のガロア線形フィードバックシフトレジスタを備えることで、マイナス方向に変化するドップラーシフト量だけ位相レジスタ値を調整することを可能にする。
【0034】
M系列のタイプがQZSSのL6信号の場合、順型のフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタを備えることで、プラス方向に変化するドップラーシフト量だけ位相レジスタ値を調整することを可能にする。他方、相反型(逆型)のフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタを備えることで、マイナス方向に変化するドップラーシフト量だけ位相レジスタ値を調整することを可能にする。
【0035】
仮に、プラス方向及びマイナス方向のドップラーシフト量を区別せずに、両方とも順型ガロア及び順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタによって位相レジスタ値を求める場合、非線形変化要因に対応するドップラーシフト量がマイナスの際に、順型ガロア及び順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタに基づいて位相レジスタ値を求めることになる。ドップラーシフト量がマイナスのため、サイクルを逆方向に進めた所定数のサイクルが決定される。しかしながら、実際には、線形フィードバックシフトレジスタは逆方向サイクルに進めることはできないため(シフト方向を右シフトから左シフトに逆シフトしても正しい結果が得られないため)、所定数のサイクルに該当する位置まで順方向(プラス方向)にサイクルを進めることで位相レジスタ値が求められる。例えば、マイナスのドップラーシフト量に基づいて、決定された所定数のサイクルがマイナスX(Xは自然数)サイクルである場合、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタでXサイクルだけ逆方向(マイナス方向)に進めた所望の位相レジスタ値を求めるために、実際には、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタで順方向に 「-X modulo Z(ZはM系列の最大周期であり、自然数。moduloは最小非負剰余で定義される剰余演算。)」サイクルだけ進めることで所望の位相レジスタ値が求まる。ここで、仮にXを1とした場合、L2C信号の27ビットM系列の最大周期Zは134217727(2の27乗-1)なので-1サイクル進めた位相レジスタ値を求めるために、実際は134217726サイクル分の位相レジスタ値計算が必要となり、所望の位相レジスタ値を得るまで多量の位相レジスタ値の計算が必要となってしまう。
【0036】
これに対して、本実施形態では、ドップラーシフト量がマイナスの場合、順型ガロア及び順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタの代わりに、相反型ガロア及び相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタを用いる。これにより、マイナスのドップラーシフト量に基づいて、決定された所定数のサイクルがマイナスXサイクルである場合、相反型ガロア及び相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタにおいて、Xサイクルだけ順方向に進めることで所望の位相レジスタ値が求まる。前記の例のXを1としたケースでは、1サイクル進めた位相レジスタ値を求めるだけで良い。即ち、全ての位相レジスタ値をROMに記憶することなく、Xサイクルという少ないサイクルステップでより少量の計算によって、所望の位相レジスタ値を得ることができる。
【0037】
以上の結果、ROM容量の小容量化とCPU処理能力の低負荷を実現可能である。
【0038】
<動作原理>
次に、図2を参照して、本実施形態に係る位相レジスタ計算回路部と、位相レジスタ調整処理部とを組み合わせて目的となる位相レジスタ値を計算する動作原理について説明する。ここに、図2は、本実施形態に係る位相レジスタ計算回路部と、位相レジスタ調整処理部との組み合わせによって、位相レジスタ値を計算する動作を示したタイミングチャートである。
【0039】
図2に示すように、CPU部50で動作する処理は、時間の流れに沿って4ms(millisecond)間隔で時刻UT(User Timing)0、時刻UT1、時刻UT2、時刻UT3、時刻UT4で発生する割り込みをきっかけにして処理が開始し、次の割り込みが発生するまでの4ms区間内で与えられた処理を終了させる必要がある。
【0040】
先ず、CPU部50において、時刻UT0から4ms後のUT1までの間に計算回路設定処理が行われる。計算回路設定処理は位相レジスタ計算回路部40を動作させるために必要な情報を計算して設定する。具体的には、計算回路設定処理は位相レジスタ計算回路部40に所望の位相レジスタ値を計算してもらうために、所定のチップ値を設定する。所定のチップ値とは、図2の例においては、UT3タイミングでのチップ値になる。UT3タイミングではコード生成器21に位相レジスタ値を設定する必要があるため、事前のUT0タイミングで計算回路設定処理を動作させて、位相レジスタ計算回路部40に所望の位相レジスタ値を計算させるための指示を発行する。
【0041】
図2の具体例では、計算回路設定処理が位相レジスタ計算回路部40に設定する所定のチップ値は、UT3タイミングのL2C信号のコードチップ値である6138チップ(M系列の所定開始位置から6138サイクル)となる。UT3タイミングでのチップ値が6138チップとなるのは、L2C信号のチップレートは511.5K(chip per second)で、時刻が4ms進む毎に2046チップ(=511.5K(chip per second)×4ms)進むことから、6138チップ(chip)(=0chip(UT0タイミングのchip)+511.5K(chip per second)×12ms(UT0~UT3の経過時間))と計算される。
【0042】
ここで、チップ値とはM系列の各コードにおける開始位置(開始位相)を起点にしたサイクル値のことであり、例えば、L2C信号の6138チップとはM系列におけるCMコード及びCLコードの所定開始位置から線形フィードバックシフトレジスタを6138サイクル進めた状態である言い換えられる。
【0043】
次に、位相レジスタ計算回路部40に、CPU部50からデータの流れS10に沿って、M系列符号の線形変化要因に対応したチップ値が入力される。線形変化要因とは「初期値+チップレート×経過時間」として計算されるチップ値のことである。位相レジスタ計算回路部は時刻UT1の割り込みをきっかけにして設定されたチップ値に応じた位相レジスタ値の計算を開始し、UT2までに計算を終了する。位相レジスタ計算回路部40において、位相計算終了後に、M系列符号の線形変化要因に対応したチップ値に相当する位相レジスタ値がCPU部50に出力される。
【0044】
図2の具体例では、位相レジスタ計算回路部40に、時刻UT3タイミングでの6138チップ(chip)(=0+511.5K(chip per second)×12ms)のデータがCPU部50からデータの流れS10に沿って、入力される(6138チップの設定(set、6138chip))。続いて、位相レジスタ計算回路部40において、位相計算が時刻UT1から時刻UT2まで行われ、M系列符号の線形変化要因に対応した6138チップに相当する位相レジスタ値がCPU部50にデータの流れS20に沿って、出力される。
【0045】
次に、位相レジスタ調整処理部70に、位相レジスタ計算回路部40からデータの流れS20に沿って、M系列符号の線形変化要因に対応した位相レジスタ値が入力される。これに加えて、M系列符号の非線形変化要因に対応したドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップが入力される。
【0046】
続いて、位相レジスタ調整処理部70において、後述される位相レジスタ調整処理を施され、M系列符号の線形変化要因を考慮し、非線形変化要因に対応した位相レジスタ値がコード生成器21及びコード発生用NCO22に出力される。
【0047】
図2の具体例では、位相レジスタ調整処理部70に、時刻UT2において、位相レジスタ計算回路部40によって計算されたM系列符号の線形変化要因に対応した6138チップに相当する位相レジスタ値が位相レジスタ計算回路部40からデータの流れS20に沿って、入力される(6138チップに相当する位相レジスタ値の読み込み(read「6138chipに相当する位相レジスタ値」))。これに加えて、M系列符号の非線形変化要因に対応したドップラーシフト量に基づいて算出した調整用チップ値、即ち、αチップが入力される。ドップラーシフト量は衛星信号を受信する受信処理部60から得る。
【0048】
続いて、位相レジスタ調整処理部70において、後述される位相レジスタ調整処理を施され、M系列符号の線形変化要因を考慮し、非線形変化要因に対応した6138+αチップに相当する位相レジスタ値がコード生成器21及びコード発生用NCO22にデータの流れS30に沿って、出力される(”6138+α”チップに相当する位相レジスタ値の設定(set「”6138+α”チップに相当する位相レジスタ値」))。
【0049】
次に、コード生成器21及びコード発生用NCO22において、入力されたM系列符号の線形変化要因を考慮し、非線形変化要因に対応した6138+αチップに相当する位相レジスタ値の設定に基づいて逆拡散符号が出力される。
【0050】
<線形フィードバックシフトレジスタ>
次に、図3を参照して、本実施形態に係る線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR:Linear Feedback Shift Register)について説明する。ここに、図3(a)は本実施形態に係るr段(rビット)のシフトレジスタを有する順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタのブロック図である。図3(b)は本実施形態に係るr段(rビット)のシフトレジスタを有する相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタのブロック図である。図3(c)は本実施形態に係るr段(rビット)のシフトレジスタを有する順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタのブロック図である。図3(b)は本実施形態に係るr段(rビット)のシフトレジスタを有する相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタのブロック図である。
【0051】
本実施形態では、M系列の2種類のタイプに応じて、2種類の線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR:Linear Feedback Shift Register)を夫々使い分ける。
即ち、M系列のタイプがGPSのL2C信号の場合、ガロア線形フィードバックシフトレジスタが用いられ、M系列のタイプがQZSSのL6信号の場合、フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタが用いられる。
更に、夫々の線形フィードバックシフトレジスタにおける位相レジスタ調整処理では、プラス方向又はマイナス方向のドップラーシフト量に対応するために、順型と相反型(逆型)という2つのM系列処理を夫々備えることを特徴とする。
【0052】
<順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタ>
順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタは、図3(a)に示すように、r個のレジスタ100、101、102、…、10r-1と、XOR素子(排他的論理和素子)1111、112、113、…、11r-1と、結線素子121、122、123、…、12rを有する。この順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタでは、第1のレジスタ100、XOR素子111、第2のレジスタ101、XOR素子112、第3のレジスタ102、XOR素子113、…の順に直列に接続され、開始コードの各ビットのデータ(1又は0)がビット列(S、S、S、S、…、Sr-3、Sr-2、Sr-1)として第1~第rのレジスタ100~10r-1にそれぞれ入力される。XOR素子111は、第1の結線素子121の出力及び第2のレジスタ101の出力の排他的論理和を第1のレジスタ100に出力する。XOR素子112は、第2の結線素子122の出力及び第3のレジスタ102の出力の排他的論理和を第2のレジスタ101に出力する。以下概ね同様にして、XOR素子11r-1は、結線素子12r-1の出力及びレジスタ10r-1の出力の排他的論理和をレジスタ10r-2に出力する。この場合、受信回路部10内の図示しないクロック発生部からクロック信号が入力される毎に、第1~第rのレジスタ100~10r-1内の状態(ビットS、S、S、…、Sr-1の状態)が次のレジスタに向かって順にシフトする。クロック信号に従って所定サイクルだけ動作して変化したビット列(S、S、S、S、…、Sr-3、Sr-2、Sr-1)のデータ(1又は0)は図示しない記憶部に出力される。
【0053】
<相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタ>
相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタは、図3(b)に示すように、r個のレジスタ200、201、202、…、20r-1と、XOR素子(排他的論理和素子)211、212、213、…、21r-1と、結線素子22r、22r-1、22r-2、…、223、222、221とを有する。この相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタでは、第1のレジスタ200、XOR素子211、第2のレジスタ201、XOR素子212、…、レジスタ20r-2、XOR素子21r-1、レジスタ20r-1の順に直列に接続され、開始コードの各ビットのデータ(1又は0)がビット列(S、S、S、S、…、Sr-3、Sr-2、Sr-1)として第1~第rのレジスタ200~20r-1にそれぞれ入力される。また、第rのレジスタ20r-1の出力は、結線素子221、222、223、…、22r、即ち、b、b、b、…、br-3、br-2、br-1、bの入力となる。XOR素子211は、第1のレジスタ200の出力及び結線素子22r-1の出力の排他的論理和を第2のレジスタ201に出力する。XOR素子212は、結線素子22r-2の出力及び第2のレジスタ201の出力の排他的論理和を第3のレジスタ202に出力する。以下概ね同様にして、XOR素子21r-1は、結線素子221の出力及びレジスタ20r-2の出力の排他的論理和をレジスタ20r-1に出力する。この場合、受信回路部10内の図示しないクロック発生部からクロック信号が入力される毎に、第1~第rのレジスタ200~20r-1内の状態(ビットS、S、S、…、Sr-1の状態)が次のレジスタに向かって順にシフトする。クロック信号に従って所定サイクルだけ動作して変化したビット列(S、S、S、S、…、Sr-3、Sr-2、Sr-1)のデータ(1又は0)は図示しない記憶部に出力される。
【0054】
<順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタ>
順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタは、図3(c)に示すように、r個のレジスタ300、301、302、…、30r-1と、XOR素子(排他的論理和素子)311、312、313、…、31r-1と、結線素子321、322、323、…、32r-3、32r-2、32r-1、32rとを有する。この順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタでは、レジスタ300、301、302、…、30r-4、30r-3、30r-2、30r-1の順に直列に接続され、開始コードの各ビットのデータ(1又は0)がビット列(S、S、S、S、…、Sr-3、Sr-2、Sr-1)として第1~第rのレジスタ300~30r-1にそれぞれ入力される。また、第1のレジスタ300の出力は、第2のレジスタ301の入力及び結線素子321の入力となる。XOR素子311は、結線素子321の出力及びXOR素子312の出力の排他的論理和を第1のレジスタ300に出力する。XOR素子312は、結線素子322の出力及びXOR素子313の出力の排他的論理和をXOR素子311に出力する。以下概ね同様にして、XOR素子31r-1は、結線素子32r-1の出力及び結線素子32rの出力の排他的論理和をXOR素子31r-2に出力する。この場合、受信回路部10内の図示しないクロック発生部からクロック信号が入力される毎に、第1~第rのレジスタ300~30r-1内の状態(ビットS~Sr-1の状態)が次のレジスタに順にシフトする。クロック信号に従って所定サイクルだけ動作して変化したビット列(S、S、S、S、…、Sr-3、Sr-2、Sr-1)のデータ(1又は0)は図示しない記憶部に出力される。
【0055】
<相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタ>
相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタは、図3(d)に示すように、r個のレジスタ400、401、402、…、40r-1と、XOR素子(排他的論理和素子)411、412、413、…、41r-1と、結線素子421、422、423、…、42r-3、42r-2、42r-1、42rとを有する。この相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタでは、レジスタ400、401、402、…、40r-1の順に直列に接続され、開始コードの各ビットのデータ(1又は0)がビット列(S、S、S、S、…、Sr-3、Sr-2、Sr-1)として第1~第rのレジスタ400~40r-1にそれぞれ入力される。また、第rのレジスタ40r-1の出力は、結線素子421の入力、及び第r-1のレジスタ40r-2の入力となる。XOR素子411は、結線素子421の出力及びXOR素子412の出力の排他的論理和を第rのレジスタ40r-1に出力する。XOR素子412は、結線素子422の出力及びXOR素子413の出力の排他的論理和をXOR素子411に出力する。以下概ね同様にして、XOR素子41r-1は、結線素子42r-1の出力及び結線素子42rの出力の排他的論理和をXOR素子41r-2に出力する。この場合、受信回路部10内の図示しないクロック発生部からクロック信号が入力される毎に、第1~第rのレジスタ400~40r-1内の状態(ビットS~Sr-1の状態)が次のレジスタに順にシフトする。クロック信号に従って所定サイクルだけ動作して変化したビット列(S、S、S、S、…、Sr-3、Sr-2、Sr-1)のデータ(1又は0)は図示しない記憶部に出力される。
【0056】
特に、順型ガロア又は順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタで使用される結線素子a、a、a、…、ar-3、ar-2、ar-1、aと、相反型ガロア又は相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタで使用される結線素子b、b、b、…、br-3、br-2、br-1、bは次の式を満たす。
【0057】
【数1】
ここで、Dは遅延オペレータ、rはレジスタ個数(段数)、b(・)は相反型ガロア又は相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタの結線素子系列(状態)、a(・)は順型ガロア又は順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタの結線素子系列(状態)である。また結線素子系列a(D),b(D)は各結線素子による多項式表現で次の式になる。
【数2】
遅延オペレータDは以下の文献などで説明されている。
参考文献1 Roger L. Peterson,Rodger E.Ziemer,David E.Borth著,丸林元 [ほか] 訳
スペクトル拡散通信入門,科学技術出版,pp.108-181,Sept.2002.
【0058】
<ガロア線形フィードバックシフトレジスタによる4ビットM系列>
次に、図4を参照して、本実施形態に係る位相レジスタ調整処理における順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタと相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタとの関係を簡単な具体例である「4ビットM系列」によって説明する。ここに、図4(a)は本実施形態に係る4段(4ビット)のシフトレジスタを有する順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタのブロック図である。
図4(b)は本実施形態に係る4段(4ビット)のシフトレジスタを有する相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタのブロック図である。
【0059】
尚、図4(a)及び図4(b)では、一例として、4段(4ビット)のシフトレジスタを有する線形フィードバックシフトレジスタとして構成した場合を図示しているが、図3(a)と図3(b)で示したような4ビット以外の所定ビット(rビット)の線形フィードバックシフトレジスタとして構成することも可能である。
【0060】
<順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタ>
順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタは、図4(a)に示すように、4つのレジスタ141~144と、XOR素子(排他的論理和素子)140と、結合素子a、aと、を有する。この順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタでは、第1のレジスタ141、XOR素子140、第2~第4のレジスタ142~144の順に直列に接続され、開始コードの各ビットのデータ(1又は0)がビット列(S、S、S、S)として第1~第4のレジスタ141~144にそれぞれ入力される。また、第1のレジスタ141の出力は、XOR素子140の入力及び第4のレジスタ144の入力となる。XOR素子140は、第1のレジスタ141の出力及び第2のレジスタ142の出力の排他的論理和を第1のレジスタ141に出力する。この場合、受信回路部10内の図示しないクロック発生部からクロック信号が入力される毎に、第1~第4のレジスタ141~144内の状態(ビットS~Sの状態)が次のレジスタに向かって順にシフトする。クロック信号に従って所定サイクルだけ動作して変化したビット列(S、S、S、S)のデータ(1又は0)は図示しない記憶部に出力される。
この順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタの結線素子系列を遅延オペレータDによって多項式表現で表すと(数2)から以下になる。
【0061】
【数3】
【0062】
<相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタ>
相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタは、図4(b)に示すように、4つのレジスタ241~244と、XOR素子(排他的論理和素子)240と、結合素子b、bと、を有する。この相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタでは、第1のレジスタ241、XOR素子240、第2~第4のレジスタ242~244の順に直列に接続され、開始コードの各ビットのデータ(1又は0)がビット列(S、S、S、S)として第1~第4のレジスタ241~244にそれぞれ入力される。また、第1のレジスタ241の出力は、XOR素子240の入力となる。XOR素子240は、第1のレジスタ241の出力及び第4のレジスタ244の出力の排他的論理和を第2のレジスタ242に出力する。この場合、受信回路部10内の図示しないクロック発生部からクロック信号が入力される毎に、第1~第4のレジスタ241~244内の状態(ビットS~Sの状態)が次のレジスタに向かって順にシフトする。クロック信号に従って所定サイクルだけ動作して変化したビット列(S、S、S、S、…、Sr-3、Sr-2、Sr-1)のデータ(1又は0)は図示しない記憶部に出力される。
この相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタの結線素子系列を遅延オペレータDによって多項式表現で表すと(数1)と(数3)から以下になる。
【0063】
【数4】
【0064】
<位相レジスタ調整処理:ガロア線形フィードバックシフトレジスタ>
次に、図4(c)及び図4(d)を参照して、位相レジスタ調整処理におけるガロア線形フィードバックシフトレジスタにおける各レジスタの状態のシフト(サイクル)の変化について説明する。ここに、図4(c)は、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタにおける各レジスタの状態のシフト(サイクル)を示す表であり、図4(d)は、相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタにおける各レジスタの状態のシフト(サイクル)を示す表である。
【0065】
具体的には、位相レジスタ調整処理部70に線形変化要因に対応する位相レジスタ値が位相レジスタ計算回路部40からデータの流れS20に沿って入力され、加えて、非線形変化要因に対応するドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップが入力される。
【0066】
位相レジスタ調整処理部70において、非線形変化要因に対応するドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップがプラスの場合、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタに基づいて位相レジスタ値が求められる。より具体的には、プラスのドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップに基づいて、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタにおいて、時間軸に沿った所定数のサイクル、言い換えると、サイクルを順方向に進んだ所定数のサイクルが決定される。例えば、プラスのドップラーシフト量に基づいて、決定された所定数のサイクルがプラス5サイクルである場合、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタの位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、0、0、1)(図4(c)中のサイクル0を参照)から開始したとして、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、0、0、1)(図4(c)中のサイクル1を参照)、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、0、1)(図4(c)中のサイクル2を参照)、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、1、1)(図4(c)中のサイクル3を参照)、及び、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、1、0)(図4(c)中のサイクル4を参照)を経て、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、1、1、1)(図4(c)中のサイクル5を参照)が得られる。ここに、本実施形態に係る「位相状態」とは、0又は1の位相レジスタ値の数列を意味する。
【0067】
特に、本実施形態では、他方で、非線形変化要因に対応するドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップがマイナスの場合、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタではなく相反型ガロア線形フィードバックシフトレジスタに基づいて位相レジスタ値が求められる。より具体的には、マイナスのドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップに基づいて、相反型ガロア線形フィードバックシフトレジスタにおいて、サイクルを順方向に進めた所定数のサイクルが決定される。例えば、マイナスのドップラーシフト量に基づいて、決定された所定数のサイクルがマイナス2サイクルである場合、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタで2サイクルだけ逆方向に進むのではなく、相反型ガロア線形フィードバックシフトレジスタで2サイクルだけ順方向に進む。即ち、相反型ガロア線形フィードバックシフトレジスタの位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、0、0、1)(図4(d)中のサイクル0を参照)から開始したとして、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、0、1、0)(図4(d)中のサイクル1を参照)を経て、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、1、0、0)(図4(d)中のサイクル2を参照)が得られる。このようにして得られた位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)が、データの流れS30に沿って、コード生成器21及びコード発生用NCO22に出力される。
【0068】
このように本実施形態では、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタのサイクルを逆方向に進ませた、即ち、サイクル0、14、13、・・・と逆方向に進ませた位相状態と、相反型ガロア線形フィードバックシフトレジスタのサイクルを順方向に進ませた、サイクル0、1、2、・・・と順方向に進ませた位相状態とが完全に一致する点を利用することを特徴とする。具体的には、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタで2サイクルだけ逆方向に進んだ位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、1、0、0)(図4(c)中のP1で示されたサイクル13を参照)と、相反型ガロア線形フィードバックシフトレジスタで2サイクルだけ順方向に進んだ位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、1、0、0)(図4(d)中のP2で示されたサイクル2を参照)とが完全に一致する点を利用することを特徴とする。
【0069】
即ち、本実施形態では、相反型(逆型)ガロア線形フィードバックシフトレジスタは上述した特徴を有することに加えて、順型と相反型(逆型)の二つのM系列を利用する点に特徴がある。相反型(逆型)のM系列を利用することで、順型のM系列の位相状態を逆方向(マイナス方向)にサイクルを進ませるということと等価な作用効果を得ることができる。順型のM系列に対する相反型(逆型)M系列は所定の関係式によって一意に決まり、それ以外の何らかのM系列を利用しても所望の作用効果は得られない。順型のM系列と相反型(逆型)のM系列という二つのM系列を利用することで、所望の作用効果を少ないサイクルステップで計算することが可能である。
【0070】
仮に、非線形変化要因に対応するドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップがマイナスの際に、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタに基づいて位相レジスタ値を求める場合、サイクルを逆方向に進めた所定数のサイクルが決定され、実際には、逆方向に進んだ所定数のサイクルに該当する位置まで順方向にサイクルを進めた位相レジスタ値が求められる。例えば、マイナスのドップラーシフト量に基づいて、決定された所定数のサイクルがマイナス2サイクルである場合、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタで2サイクルだけ逆方向に進む、即ち、実際には、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタで順方向に13(=-2 modulo 15)サイクルだけ進む。即ち、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタの位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、0、0、1)(図4(c)中のサイクル0を参照)から開始したとして、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、0、0、1)(図4(c)中のサイクル1を参照)、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、0、1)(図4(c)中のサイクル2を参照)、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、1、1)(図4(c)中のサイクル3を参照)、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、1、0)(図4(c)中のサイクル4を参照)、以下、サイクル5~12を経て、所望の位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、1、0、0)(図4(c)中のサイクル13を参照)を得るまで13サイクルステップという多量の位相レジスタ値の計算が必要となってしまう。
【0071】
これに対して、本実施形態では、ドップラーシフト量がマイナスの場合、順型ガロア線形フィードバックシフトレジスタの代わりに、相反型ガロア線形フィードバックシフトレジスタを用いる。これにより、例えば、マイナスのドップラーシフト量に基づいて、決定された所定数のサイクルがマイナス2サイクルである場合、相反型ガロア線形フィードバックシフトレジスタにおいて、2サイクルだけ順方向に進む。即ち、サイクル0~2を経た2サイクルという少ないサイクルステップでより少量の計算によって、所望の位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、1、0、0)(図4(d)中のサイクル2を参照)を得ることができる。
開始コードの位相状態(S、S、S、S)が与えられれば、少ないサイクルステップで所望の位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)を計算することができるため、全ての位相レジスタ値をROMに記憶する必要はない。
【0072】
以上の結果、ROM容量の小容量化とCPU処理能力の低負荷を実現可能である。
【0073】
<フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタによる4ビットM系列>
次に、図5を参照して、本実施形態に係る位相レジスタ調整処理における順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタと相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタとの関係を簡単な具体例である「4ビットM系列」によって説明する。ここに、図5(a)は本実施形態に係る4段(4ビット)のシフトレジスタを有する順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタのブロック図である。
図5(b)は本実施形態に係る4段(4ビット)のシフトレジスタを有する相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタのブロック図である。
【0074】
尚、図5(a)及び図5(b)では、一例として、4段(4ビット)のシフトレジスタを有する線形フィードバックシフトレジスタ(符号生成装置)として構成した場合を図示しているが、図3(c)と図3(d)で示したような4ビット以外の所定ビット(rビット)の線形フィードバックシフトレジスタとして構成することも可能である。
【0075】
<順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタ>
順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタは、図5(a)に示すように、4つのレジスタ341~344と、XOR素子(排他的論理和素子)340と、結合素子a、aと、を有する。この順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタでは、第1のレジスタ341、XOR素子340、第2~第4のレジスタ342~344の順に直列に接続され、開始コードの各ビットのデータ(1又は0)がビット列(S、S、S、S)として第1~第4のレジスタ341~344にそれぞれ入力される。また、第1のレジスタ341の出力は、XOR素子340の入力及び第2のレジスタ342の入力となる。XOR素子340は、第1のレジスタ341の出力及び第4のレジスタ344の出力の排他的論理和を第1のレジスタ341に出力する。この場合、受信回路部10内の図示しないクロック発生部からクロック信号が入力される毎に、第1~第4のレジスタ341~344内の状態(ビットS~Sの状態)が次のレジスタに順にシフトする。クロック信号に従って所定サイクルだけ動作して変化したビット列(S、S、S、S)のデータ(1又は0)は図示しない記憶部に出力される。
この順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタの結線素子系列を遅延オペレータDによって多項式表現で表すと(数2)から以下になる。
【0076】
【数5】
【0077】
<相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタ>
相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタは、図5(b)に示すように、4つのレジスタ441~444と、XOR素子(排他的論理和素子)440と、結合素子b、bと、を有する。この相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタでは、第1のレジスタ441、第2~第3のレジスタ442~443、XOR素子440、第4のレジスタ444の順に直列に接続され、開始コードの各ビットのデータ(1又は0)がビット列(S、S、S、S)として第1~第4のレジスタ441~444にそれぞれ入力される。また、第2のレジスタ442の出力は、XOR素子440の入力、及び第1のレジスタ441の入力となる。XOR素子440は、第2のレジスタ442の出力及び第1のレジスタ441の出力の排他的論理和を第4のレジスタ444に出力する。この場合、受信回路部10内の図示しないクロック発生部からクロック信号が入力される毎に、第1~第4のレジスタ441~444内の状態(ビットS~Sの状態)が次のレジスタに順にシフトする。クロック信号に従って所定サイクルだけ動作して変化したビット列(S、S、S、S)のデータ(1又は0)は図示しない記憶部に出力される。
この相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタの結線素子系列を遅延オペレータDによって多項式表現で表すと(数1)と(数5)から以下になる。
【0078】
【数6】
【0079】
<位相レジスタ調整処理:フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタ>
次に、図5(c)及び図5(d)を参照して、位相レジスタ調整処理におけるフィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタにおける各レジスタの状態のシフト(サイクル)の変化について説明する。ここに、図5(c)は、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタにおける各レジスタの状態のシフト(サイクル)を示す表であり、図5(d)は、相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタにおける各レジスタの状態のシフト(サイクル)を示す表である。
【0080】
具体的には、位相レジスタ調整処理部70に線形変化要因に対応する位相レジスタ値が位相レジスタ計算回路部40からデータの流れS20に沿って入力され、加えて、非線形変化要因に対応するドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップが入力される。
【0081】
位相レジスタ調整処理部70において、非線形変化要因に対応するドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップがプラスの場合、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタに基づいて位相レジスタ値が求められる。より具体的には、プラスのドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップに基づいて、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタにおいて、時間軸に沿った所定数のサイクル、言い換えると、サイクルを順方向に進んだ所定数のサイクルが決定される。例えば、プラスのドップラーシフト量に基づいて、決定された所定数のサイクルがプラス5サイクルである場合、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタの位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、0、0、0)(図5(c)中のサイクル0を参照)から開始したとして、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、0、0)(図5(c)中のサイクル1を参照)、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、1、0)(図5(c)中のサイクル2を参照)、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、1、1)(図5(c)中のサイクル3を参照)、及び、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、1、1、1)(図5(c)中のサイクル4を参照)を経て、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、0、1、1)(図5(c)中のサイクル5を参照)が得られる。
【0082】
特に、本実施形態では、他方で、非線形変化要因に対応するドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップがマイナスの場合、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタではなく相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタに基づいて位相レジスタ値が求められる。より具体的には、マイナスのドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップに基づいて、相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタにおいて、サイクルを順方向に進んだ所定数のサイクルが決定される。例えば、マイナスのドップラーシフト量に基づいて、決定された所定数のサイクルがマイナス2サイクルである場合、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタで2サイクルだけ逆方向に進むのではなく、相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタで2サイクルだけ順方向に進む。即ち、相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタの位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、0、0、0)(図5(d)中のサイクル0を参照)から、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、0、0、1)(図5(d)中のサイクル1を参照)を経て、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、0、1、0)(図5(d)中のサイクル2を参照)が得られる。このようにして得られた位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)が、データの流れS30に沿って、コード生成器21及びコード発生用NCO22に出力される。
【0083】
このように本実施形態では、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタのサイクルを逆方向に進ませた、即ち、サイクル0、14、13、・・・と逆方向に進ませた位相状態と、相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタのサイクルを順方向に進ませた、サイクル0、1、2、・・・と順方向に進ませた位相状態とが完全に一致する点を利用することを特徴とする。具体的には、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタで2サイクルだけ逆方向に進んだ位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、0、1、0)(図5(c)中のP3で示されたサイクル13を参照)と、相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタで2サイクルだけ順方向に進んだ位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、0、1、0)(図5(d)中のP4で示されたサイクル2を参照)とが完全に一致する点を利用することを特徴とする。
【0084】
即ち、本実施形態では、相反型(逆型)フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタは上述した特徴を有することに加えて、順型と相反型(逆型)の二つのM系列を利用する点に特徴がある。相反型(逆型)のM系列を利用することで、順型のM系列の位相状態を逆方向(マイナス方向)にサイクルを進ませるということと等価な作用効果を得ることができる。順型のM系列に対する相反型(逆型)M系列は所定の関係式によって一意に決まり、それ以外の何らかのM系列を利用しても所望の作用効果は得られない。順型のM系列と相反型(逆型)のM系列という二つのM系列を利用することで、所望の作用効果を少ないサイクルステップで計算することが可能である。
【0085】
仮に、非線形変化要因に対応するドップラーシフト量に相当する調整用チップ値、即ち、αチップがマイナスの際に、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタに基づいて位相レジスタ値を求める場合、サイクルを逆方向に進めた所定数のサイクルが決定され、実際には、逆方向に進んだ所定数のサイクルに該当する位置まで順方向にサイクルを進めた位相レジスタ値が求められる。例えば、マイナスのドップラーシフト量に基づいて、決定された所定数のサイクルがマイナス2サイクルである場合、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタで2サイクルだけ逆方向に進む、即ち、実際には、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタで順方向に13(=-2 modulo 15)サイクルだけ進む。即ち、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタの位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、0、0、0)(図5(c)中のサイクル0を参照)から開始したとして、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、0、0)(図5(c)中のサイクル1を参照)、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、1、0)(図5(c)中のサイクル2を参照)、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(1、1、1、1)(図5(c)中のサイクル3を参照)、位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、1、1、1)(図5(c)中のサイクル4を参照)、以下、サイクル5~12を経て、所望の位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、0、1、0)(図5(c)中のサイクル13を参照)を得るまで13サイクルステップという多量の位相レジスタ値の計算が必要となってしまう。
【0086】
これに対して、本実施形態では、ドップラーシフト量がマイナスの場合、順型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタの代わりに、相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタを用いる。これにより、例えば、マイナスのドップラーシフト量に基づいて、決定された所定数のサイクルがマイナス2サイクルである場合、相反型フィボナッチ線形フィードバックシフトレジスタにおいて、2サイクルだけ順方向に進む。即ち、サイクル0~2を経た2サイクルという少ないサイクルステップでより少量の計算によって、所望の位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)=(0、0、1、0)(図5(d)中のサイクル2を参照)を得ることができる。
開始コードの位相状態(S、S、S、S)が与えられれば、少ないサイクルステップで所望の位相レジスタ値の位相状態(S、S、S、S)を計算することができるため、全ての位相レジスタ値をROMに記憶する必要はない。
【0087】
以上の結果、ROM容量の小容量化とCPU処理能力の低負荷を実現可能である。
【0088】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0089】
また、この発明はGPSのL2C信号やQZSSのL6信号以外のM系列を使用した同種のスペクトラム拡散信号を受信するスペクトラム拡散信号受信システムにも適用できる。
【0090】
図1の符号の説明
1 スペクトラム拡散信号受信システム
2 アンテナ
3 周波数変換部
4 A/D変換部
10 受信回路部
20 コード生成部
21 コード生成器
22 コード発生用NCO
30 相関器
31 キャリア用NCO
32 搬送波相関部
40 位相レジスタ計算回路部
50 CPU部
60 受信処理部
70 位相レジスタ調整処理部
80 符号生成装置
図1
図2
図3
図4
図5