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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】圧力モータを用いたダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20221003BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20221003BHJP
   F16F 9/20 20060101ALI20221003BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20221003BHJP
   F16F 9/504 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F15/023 A
F16F9/20
F16F9/32 T
F16F9/504
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019046616
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020094680
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018230688
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504242342
【氏名又は名称】株式会社免制震ディバイス
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100105119
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 孝治
(72)【発明者】
【氏名】小橋 祐人
(72)【発明者】
【氏名】木田 英範
(72)【発明者】
【氏名】中南 滋樹
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148390(JP,A)
【文献】特開2001-254533(JP,A)
【文献】特開2007-296936(JP,A)
【文献】特開昭60-018630(JP,A)
【文献】特開2008-291898(JP,A)
【文献】特開2017-133625(JP,A)
【文献】古屋善正, 村上光清, 山田豊,朝倉機械工学全書12 流体工学,12版,日本,朝倉鑛造,1974年03月01日,242-243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 1/00-99/00
F15B 11/00-11/22
21/14
F16F 9/00- 9/58
15/00-15/36
F17D 1/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が充填されたシリンダと、
当該シリンダ内に摺動自在に設けられ、前記シリンダ内を第1流体室と第2流体室に区画するピストンと、
当該ピストンをバイパスし、前記第1及び第2流体室に連通する連通路と、
当該連通路に配置され、当該連通路に連通するケーシングに収容された回転体を有し、前記ピストンの摺動に伴う作動流体の流動を前記回転体の回転運動に変換する圧力モータと、
前記回転体によって回転駆動され、振動抑制効果を発揮するフライホイールと、
前記連通路に連通するように設けられ、作動流体におけるキャビテーションを防止するために、作動流体の圧力を蓄えるとともに、当該蓄えた圧力によって作動流体を加圧するアキュムレータと、を備え
前記圧力モータの前記ケーシングには、軸線方向において前記回転体と反対側の位置に、作動流体を排出するためのドレン口が形成され、
前記圧力モータは、前記ドレン口が鉛直方向上側に位置するように配置され、前記アキュムレータは、前記ドレン口に連通した状態で前記圧力モータに設けられていることを特徴とする圧力モータを用いたダンパ。
【請求項2】
前記連通路は、前記第1及び第2流体室の側から前記圧力モータ側に向かって斜め上がりに傾斜していることを特徴とする、請求項1に記載の圧力モータを用いたダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物などの振動を抑制するためのダンパに関し、特に作動流体の圧力を回転運動に変換する圧力モータを用いたダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のダンパとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。このダンパは、本願の図5に示されている。このダンパ51は、作動油HFが充填されたシリンダ52と、シリンダ52内に摺動自在に設けられ、シリンダ52内を第1及び第2流体室52a、52bに区画するピストン53と、ピストン53をバイパスし、シリンダ52の連通口52c、52cを介して第1及び第2流体室52a、52bに連通する連通路54と、連通路54に設けられた、圧力モータとしての歯車モータ55を備える。
【0003】
歯車モータ55は、外接式のものであり、連通路54に連通するケーシング55aと、ケーシング55a内に収容され、互いに噛み合う入力ギヤ55b及び出力ギヤ55cと、出力ギヤ55cに一体に連結された出力軸55dを有する。出力軸55dには、フライホイール(回転マス)56が一体に連結されている。ダンパ51は、シリンダ52に連結された第1取付具FL1と、ピストン53と一体のピストンロッド57に連結された第2取付具FL2を介して、構造物の相対変位する2つの部位(図示せず)に取り付けられる。
【0004】
以上の構成のダンパ51では、地震時に構造物が振動し、上記2つの部位が相対変位すると、ピストン53がシリンダ52内を移動するのに伴い、作動油HFが第1及び第2流体室52a、52bの一方から連通口52cを介して連通路54に流入し、さらに歯車モータ55のケーシング55a内を通り、第1及び第2流体室52a、52bの他方に向かって流動する。このケーシング55a内での作動油HFの流動による圧力を、歯車モータ55の出力ギヤ55cの回転運動に変換し、フライホイール56を回転駆動することにより、その慣性質量効果によって構造物の振動抑制効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-94795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のダンパ51では、歯車モータ55の作動時、作動油HFが連通路54やケーシング55a内を流動する際に、キャビテーションが発生するおそれがある。この「キャビテーション」とは、液体の流れの中で圧力差が生じ、液体の圧力がごく短時間だけ飽和蒸気圧よりも低くなったときに、液体中に存在する微少な「気泡核」を核として液体が沸騰したり、溶存していた気体の遊離によって多数の小さな気泡が発生したりする現象である。
【0007】
図5に示すように、このダンパ51では特に、第1又は第2流体室52a、52bと連通口52c及び連通路54との間で、通路面積が急激に変化するとともに、連通部54の両側に存在する屈曲部において、作動油HFの流れの方向が急激に変化する。このため、作動油HFの流れの乱れなどにより流れ中の圧力差が大きくなりやすく、作動油HFの圧力が飽和蒸気圧を下回ることで、キャビテーションが発生しやくなる。
【0008】
そして、キャビテーションが発生すると、液体中の部品の破損及び摩耗(壊食)などの不具合が発生するおそれがあり、歯車モータの場合には特に、回転する入出力ギヤの表面に気泡が衝突することによって、大きな音鳴り(回転音)や振動の原因になる。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、圧力モータの作動に伴う作動油におけるキャビテーションを防止し、それにより、キャビテーションに起因する音鳴りなどの不具合を回避することができる、圧力モータを用いたダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明は、圧力モータを用いたダンパであって、作動流体が充填されたシリンダと、シリンダ内に摺動自在に設けられ、シリンダ内を第1流体室と第2流体室に区画するピストンと、ピストンをバイパスし、第1及び第2流体室に連通する連通路と、連通路に配置され、連通路に連通するケーシングに収容された回転体を有し、ピストンの摺動に伴う作動流体の流動を回転体の回転運動に変換する圧力モータと、回転体によって回転駆動され、振動抑制効果を発揮するフライホイールと、連通路に連通するように設けられ、作動流体におけるキャビテーションを防止するために、作動流体の圧力を蓄えるとともに、蓄えた圧力によって作動流体を加圧するアキュムレータと、を備え、圧力モータのケーシングには、軸線方向において回転体と反対側の位置に、作動流体を排出するためのドレン口が形成され、圧力モータは、ドレン口が鉛直方向上側に位置するように配置され、アキュムレータは、ドレン口に連通した状態で前記圧力モータに設けられていることを特徴とする。
【0011】
このダンパは、圧力モータを用いるものであり、シリンダ内のピストンの摺動に伴い、作動流体を連通路内及び圧力モータのケーシング内に流動させ、その流動による作動流体の圧力を圧力モータの回転体の回転運動に変換し、フライホイールを回転駆動することによって、振動抑制効果が発揮される。
【0012】
また、圧力モータが作動するのに伴い、連通路に連通するように設けられたアキュムレータにより、作動流体の圧力を蓄えるとともに、蓄えた圧力によって、作動流体を例えば飽和蒸気圧以上に加圧する。これにより、圧力モータの作動に伴う作動流体におけるキャビテーションを防止でき、キャビテーションに起因する音鳴りなどの不具合を回避することができる。
さらに、この構成では、圧力モータは、ケーシングのドレン口が鉛直方向上側に位置するように配置され、アキュムレータは、ドレン口に連通した状態で圧力モータに設けられている。これにより、圧力モータに空気が混入したとしても、混入した空気を、ケーシングの鉛直方向上側のドレン口を介して、上方のアキュムレータ側に良好に逃がすことができる。その結果、圧力モータ内の空気の混入量が減少することによって、キャビテーション及びそれに起因する音鳴りを有効に防止することができる。
また、温度上昇による作動油の膨張により連通路内や圧力モータのケーシング内の圧力が上昇した場合、上昇した圧力をアキュムレータに蓄積し、緩和することができる。さらに、アキュムレータは、圧力モータに1つ設ければよいので、連通路の圧力モータの両側に一対、設ける場合と比較して、コストを削減することができる。
【0022】
請求項に係る発明は、請求項に記載の圧力モータを用いたダンパにおいて、連通路は、第1及び第2流体室の側から圧力モータ側に向かって斜め上がりに傾斜していることを特徴とする。
【0023】
この構成では、第1及び第2流体室の側から圧力モータ側に向かって、連通路が斜め上がりに傾斜しているので、連通路内の空気を圧力モータに良好に導きながら、ドレン口を介してアキュムレータ側に逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態によるダンパを一部、切り欠いて示す縦断面図である。
図2】本発明の第2実施形態によるダンパを一部、切り欠いて示す縦断面図である。
図3】歯車モータに防音材を取り付けたダンパを示す断面図である。
図4】互いに異なる防音材を取り付けた2つの歯車モータを示す断面図である。
図5】従来のダンパを示す、図1と同様の断面図である。
図6】本発明の第3実施形態によるダンパを一部、切り欠いて示す縦断面図である。
図7】第3実施形態の変形例によるダンパを一部、切り欠いて示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1に示すように、本発明の第1実施形態によるダンパ1は、水平に延びるシリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に設けられたピストン3と、ピストン3をバイパスし、シリンダ2内に連通する連通路4と、連通路4に配置された、圧力モータとしての歯車モータ5と、歯車モータ5の出力軸8に連結されたフライホイール9などを備えている。
【0026】
シリンダ2は、円筒状の周壁2aと、周壁2aの両端部に設けられた第1及び第2端壁2b、2cを一体に有し、これらの3つの壁2a~2cによって、シリンダ2の内部空間が画成されている。第1端壁2bには、同心状の突出部2dが一体に形成され、その端部には、自在継手を介して第1取付具FL1が設けられている。
【0027】
ピストン3は、シリンダ2内に軸線方向に摺動自在に設けられており、ピストン3により、シリンダ2の内部空間が第1流体室2eと第2流体室2fに区画されている。第1及び第2流体室2e、2fと連通路4には、作動油HFが充填されている。作動油HFは、適度な粘性を有する通常のものである。
【0028】
ピストン3には、ピストンロッド10が同心状に一体に設けられている。ピストンロッド10は、ピストン3から第2端壁2cの側に延び、さらに、第2端壁2cのロッド案内孔2gを液密に貫通した状態で、外方に延びている。ピストンロッド10の外端部には、自在継手を介して第2取付具FL2が設けられている。
【0029】
また、ピストン3には、軸線方向に貫通する第1連通孔3a及び第2連通孔3bが形成されている。第1及び第2連通孔3a、3bには、第1リリーフ弁11及び第2リリーフ弁12が、それぞれ設けられている。第1及び第2リリーフ弁11、12は、互いに同じ構成を有し、常閉弁として構成されており、弁体と、弁体を閉弁方向に付勢するばねを有する。
【0030】
第1リリーフ弁11は、第1流体室2e内の作動油HFの圧力が第1所定圧に達するまで、第1連通孔3aを閉鎖し、第1所定圧に達したときに、第1連通孔3aを開放する。これにより、第1流体室2e内の圧力が、第1連通孔3aを介して第2流体室2f側に逃がされ、第1所定圧以下に制限される。同様に、第2リリーフ弁12は、第2流体室2f内の圧力が第1所定圧に達するまで、第2連通孔3bを閉鎖し、第1所定圧に達したときに、第2連通孔3bを開放する。これにより、第2流体室2f内の圧力が、第2連通孔3bを介して第1流体室2e側に逃がされ、第1所定圧以下に制限される。
【0031】
シリンダ2の周壁2aの両端上部には、一対の連通口2h、2hが形成されている。連通路4は、シリンダ2の周壁2aと平行に延び、歯車モータ5が設けられる主通路部4aと、主通路部4aの両端から直角に延び、シリンダ2の連通口2h、2hに接続される一対のシリンダ接続部4b、4bで構成されている。この構成により、連通路4は、連通口2h、2hを介して、第1及び第2流体室2e、2fに連通している。
【0032】
歯車モータ5は、内接式のものであり、連通路4の主通路部4aに配置されている。歯車モータ5は、2つの出入口6a、6aを介して、連通路4に連通するケーシング6と、ケーシング6に収容され、互いに噛み合う回転自在の入力ギヤ7a及び出力ギヤ7bと、出力ギヤ7bに一体に設けられた出力軸8を有する。なお、歯車モータ5として、図5のダンパ51と同様の外接式のものを用いてもよい。
【0033】
フライホイール9は、比重が比較的大きな材料、例えば鋼材などで構成されている。また、フライホイール9は、例えば円板状に形成されており、出力軸8に同軸状に一体に設けられている。
【0034】
また、連通路4の主通路部4aの両端部には、本発明に係る一対のアキュムレータ21、21が設けられている。アキュムレータ21は、歯車モータ5などにおける作動油HFのキャビテーションを防止するために、作動油HFの圧力を蓄えるとともに、蓄えた圧力によって作動油HFを加圧するためのものである。
【0035】
アキュムレータ21は、本実施形態では、図1に示すようなばね式のものであり、連通路4に連通するケーシング22と、ケーシング22内に収容された摺動自在のピストン23と、ピストン23を連通路4側に付勢するセットばね24を有する。この構成によれば、連通路4内の作動油HFの圧力が上昇すると、作動油HFがケーシング22に流入し、ピストン23を介してセットばね24を圧縮する。これにより、作動油HFの圧力がアキュムレータ21に蓄えられるとともに、蓄えられた圧力が連通路4内及び歯車モータ5のケーシング6内の作動油HFに作用することによって、作動油HFが加圧される。
【0036】
以上の構成のダンパ1は、図示しないが、例えば構造物内の相対変位する2つの部位(例えば上梁と下梁)の間に、第1及び第2取付具FL1、FL2を介して取り付けられる。以下、ダンパ1の動作について説明する。
【0037】
まず、構造物が振動していないときには、ダンパ1は、図1に示す初期状態にあり、ピストン3は、シリンダ2の軸線方向の中心に位置している。
【0038】
この初期状態から、地震時などに構造物が振動すると、構造物の2つの部位間の相対変位に応じて、ピストン3がシリンダ2内を移動する。これに伴い、第1又は第2流体室2e、2f内の作動油HFがピストン3で押し出され、連通口2hを介して連通路4に流入し、さらに歯車モータ5のケーシング6に流入する。
【0039】
この作動油HFの流動による圧力が、歯車モータ5の入力ギヤ7a及び出力ギヤ7bの回転運動に変換され、出力軸8と一体のフライホイール9が回転駆動されることによって、回転慣性質量効果(慣性力)が発揮される。また、作動油HFが連通路4などを流動する際の粘性抵抗による粘性減衰効果(粘性力)が発揮されることで、回転慣性質量効果と併せて構造物の振動抑制効果が発揮される。
【0040】
また、このように歯車モータ5が作動する際、連通路4内の作動油HFの圧力が上昇するのに伴い、作動油HFがアキュムレータ21のケーシング22に流入し、ピストン23を介してセットばね24を圧縮する。これにより、作動油HFの圧力がアキュムレータ21に蓄えられるとともに、蓄えられた圧力が連通路4や歯車モータ5のケーシング6内の作動油HFに作用することによって、作動油HFが例えば飽和蒸気圧以上に加圧される。
【0041】
さらに、一対のアキュムレータ21、21が、歯車モータ5の付近でかつその両側に配置されているので、アキュムレータ21による作動油HFの加圧を効率的にバランス良く行うことができる。以上により、歯車モータ5の作動に伴う作動油HFにおけるキャビテーションを防止でき、それにより、キャビテーションに起因する音鳴りなどの不具合を回避することができる。
【0042】
次に、図2を参照しながら、本発明の第2実施形態によるダンパ31について説明する。同図において、上述した第1実施形態のダンパ1と同じ又は同等の構成要素については、同じ参照符号を付している。図1との比較から明らかなように、このダンパ31は、第1実施形態のダンパ1に対し、連通路の配管形状とシリンダ2の連通口の形状を変更したものである。
【0043】
具体的には、ダンパ1では、連通路4の主通路部4aと一対のシリンダ接続部4b、4bとの接続部が屈曲しているのに対し、ダンパ31では、連通路4の主通路部4cと一対のシリンダ接続部4d、4dは、曲線状の移行部4e、4eを介して接続されている。
【0044】
また、ダンパ1では、シリンダ2の連通口2hの径が、連通部4の内径と等しく一定であるのに対し、ダンパ31では、シリンダ2の連通口2iはテーパ状に形成されている。具体的には、連通口2iの径は、連通路4側の開口部では連通路4の内径と等しく、第1又は第2流体室2e、2f側に向かうにつれて徐々に広がるように形成されている。
【0045】
以上の構成によれば、歯車モータ5の作動時、作動油HFが連通路4の移行部4eを通る際にその流れの方向が急変しないことで、作動油HFの流れの乱れや、それに起因する流れ中の圧力差が抑制される。また、作動油HFがシリンダ2の連通口2iを通る際にその通路面積が徐々に変化することで、作動油HFの流れの乱れや流れ中の圧力差が抑制される。以上の結果、作動油HFの圧力が飽和蒸気圧を下回りにくくなるので、キャビテーションをさらに有効に防止することができる。
【0046】
次に、図3を参照しながら、第1実施形態の変形例によるダンパ41について説明する。このダンパ41は、前述したキャビテーションの防止機能に加えて、キャビテーションその他の原因により歯車モータ5に音鳴り(回転音)が発生した場合でも、その音鳴りを軽減するよう防音機能を備えたものである。
【0047】
このダンパ41では、歯車モータ5は、ケーシング6が下側に位置し、出力軸8が上方に延びるように配置されている。ケーシング6は、シリンダ2の周壁2aに、防振ゴム42を介して支持されている。
【0048】
図4(a)に示すように、ケーシング6の内部は、上下2枚の仕切板6b、6bによって、中央のギヤ収容室6cと、その上下の防音室6d、6dに区画されている。ギヤ収容室6cは連通路4に連通し、ギヤ収容室6cには、入力ギヤ7a及び出力ギヤ7bが収容されている。上下の防音室6d、6dはギヤ収容室6cに連通し、各防音室6dには作動油HFが充填されている。
【0049】
この構成によれば、歯車モータ5に音鳴りが発生した場合でも、シリンダ2とケーシング6の間に設けられた防振ゴム42によって、発生した音鳴りを軽減することができる。また、上下の防音室6d、6dに充填された作動油HFもまた、ギヤ収容室6c内で発生した音鳴りに対する防音材として機能する。これにより、防振ゴム42と相まって音鳴りをさらに軽減でき、良好な防音性能を発揮することができる。
【0050】
なお、図4(b)に示すように、ケーシング6の防音室6d、6dに、作動油HFに代えて防振材43を充填してもよい。この防振材43は、防振性能を有する材料、例えばグラスウールなどで構成されており、この例では、連通路4の外周にも巻かれている。したがって、この構成によっても、歯車モータ5の音鳴りに対して良好な防音性能を発揮することができる。
【0051】
次に、図6を参照しながら、本発明の第3実施形態によるダンパ51について説明する。同図において、図1の第1実施形態のダンパ1と同じ又は同等の構成要素については、同じ参照符号を付している。このダンパ51は、ダンパ1と比較し、歯車モータ5の出力軸8及びフライホイール9を下向きに配置した点や、アキュムレータ21を歯車モータ5に取り付けた点が異なる。
【0052】
具体的には、歯車モータ5のケーシング6には、軸線方向において出力軸8と反対側の位置に、作動油HFを排出するためのドレン口(図示せず)が形成されており、このドレン口は連通路4に連通している。図3のダンパ41とは逆に、歯車モータ5は、出力軸8及びフライホイール9が下側に位置し、ドレン口が上側に位置するように配置されている。
【0053】
アキュムレータ21は、第1及び第2実施形態と同様、ケーシング22、ピストン23及びセットばね24を有するばね式のものである。また、アキュムレータ21は、単一のアキュムレータで構成され、ケーシング22が歯車モータ5のドレン口に連通した状態で、歯車モータ5に設けられている。
【0054】
また、連通路4は、第1及び第2流体室2e、2fに接続され、上方に延びる一対のシリンダ接続部4f、4fと、各シリンダ接続部4fの上端から斜め上がりに傾斜し、歯車モータ5のケーシング6に接続された一対の傾斜部4g、4gを有する。
【0055】
以上の構成によれば、アキュムレータ21がドレン口を介して歯車モータ5のケーシング6及び連通路5に連通しているので、第1実施形態と同様、作動油HFの圧力がアキュムレータ21に蓄えられるとともに、蓄えられた圧力が連通路4やケーシング6内の作動油HFに作用することによって、作動油HFにおけるキャビテーション及びそれに起因する音鳴りなどの不具合を回避することができる。
【0056】
また、歯車モータ5に空気が混入したとしても、混入した空気を、ケーシング6の上側のドレン口を介して、上方のアキュムレータ21側に良好に逃がすことができる。その結果、歯車モータ5内の空気の混入量が減少することによって、キャビテーション及びそれに起因する音鳴りを有効に防止することができる。また、連通路4の傾斜部4gが歯車モータ5側に向かって斜め上がりに傾斜しているので、連通路4内の空気を歯車モータ5に良好に導きながら、ドレン口を介してアキュムレータ21側に逃がすことができる。
【0057】
さらに、温度上昇による作動油HFの膨張により連通路4内や歯車モータ5のケーシング6内の圧力が上昇した場合、上昇した圧力をアキュムレータ21に蓄積し、緩和することができる。また、アキュムレータ21は、歯車モータ5に1つだけ設けられるので、連通路4の歯車モータ5の両側に一対、設けられる第1実施形態と比較して、コストを削減することができる。
【0058】
次に、図7を参照しながら、上記第3実施形態の変形例によるダンパ61について説明する。同図において、第3実施形態のダンパ51と同じ又は同等の構成要素については、同じ参照符号を付している。このダンパ61は、アキュムレータとして、ダンパ51のばね式のアキュムレータ21に代えて、圧力緩和バッファ71を用いた点が異なる。
【0059】
この圧力緩和バッファ71は、歯車モータ5のケーシング6のドレン口(図示せず)に連通するケーシング72を備えている。ケーシング72は、空気Aを存した状態で、上蓋73によって密閉されている。
【0060】
この構成では、歯車モータ5が作動する際、連通路4内及び歯車モータ5のケーシング6内の作動油HFの圧力が上昇するのに伴い、作動油HFが圧力緩和バッファ71のケーシング72に流入し、ケーシング72内の空気Aを圧縮する。この空気Aの圧縮性により、作動油HFの圧力が蓄えられるとともに、蓄えられた圧力によって作動油HFが加圧される。このように、圧力緩和バッファ71は、第3実施形態のアキュムレータ21と同様、アキュムレータとして機能するので、第3実施形態と同様の動作を得ることができる。
【0061】
なお、本発明は、説明した第1及び第2実施形態や変形例に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、圧力モータとして、歯車モータを用いているが、他の形式の圧力モータ、例えばピストンモータやベーンモータ、ねじモータでもよい。圧力モータは、作動流体の流動を回転体の回転運動に変換するように構成されていて、キャビテーションが発生すると、回転体の回転による音鳴りが発生しやすくなるので、本発明による利点を有効に得ることができる。また、実施形態では、ダンパの作動流体として、通常の作動油HFを用いると説明したが、他の適当な作動流体を用いてもよいことはもちろんである。
【0062】
また、アキュムレータとして、実施形態では、ピストン23とセットばね24を有するばね式のアキュムレータ21を用い、図7の変形例では、空気の圧縮性を利用した気体式の圧力緩和バッファ71を用いているが、作動流体の圧力を蓄えるとともに、蓄えた圧力で作動流体を加圧する機能を有する限り、その形式は任意であり、例えばブラダ式やダイヤフラム式などのアキュムレータを用いることが可能である。
【0063】
また、第1及び第2実施形態では、アキュムレータ21を、連通路4の歯車モータ5の両側に一対で配置しているが、歯車モータ5の一方の側に1つのみ配置してもよい。その他、細部の構成を、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 第1実施形態によるダンパ
2 シリンダ
2e 第1流体室
2f 第2流体室
2i 連通口
3 ピストン
4 連通路
4c 主通路部
4d シリンダ接続部
4e 移行部
5 歯車モータ(圧力モータ)
6 ケーシング
7b 出力ギヤ(回転体)
9 フライホイール
21 アキュムレータ
31 第2実施形態によるダンパ
41 変形例によるダンパ
51 第3実施形態によるダンパ
4g 連通路の傾斜部
61 第3実施形態の変形例によるダンパ
71 圧力緩和バッファ(アキュムレータ)
HF 作動油(作動流体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7