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特許7150413多関節アームにおける分離クラッチ操作のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】多関節アームにおける分離クラッチ操作のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20221003BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J9/06 A
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2016556838
(86)(22)【出願日】2015-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-05-25
(86)【国際出願番号】 US2015021074
(87)【国際公開番号】W WO2015142930
(87)【国際公開日】2015-09-24
【審査請求日】2018-03-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】61/954,120
(32)【優先日】2014-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】スウォーアップ,ニティッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アワータッシュ,アージャン エム
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス,ポール ジー
(72)【発明者】
【氏名】モーア,ポール ダブリュ
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】平瀬 知明
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0052154(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0264112(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30-34/37
A61B 90/50
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のジョイントを有する多関節アーム;及び
前記多関節アームに結合されるとともに1又は複数のプロセッサを有する制御ユニット;を有し、
前記制御ユニットは:
前記複数のジョイントの各ジョイントをロック状態で動作させ、前記ロック状態にある前記複数のジョイントにおける各非作動ジョイントはそれぞれ、それぞれのブレーキによるブレーキ作動により動くことが防止され、前記ロック状態にある前記複数のジョイントにおける各作動ジョイントはそれぞれ、前記各作動ジョイントをそれぞれの指令位置に保持する作動によって前記それぞれの指令位置から動くことを防止され;
前記複数のジョイントは前記ジョイントのサブセットを含み、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントに対する刺激を決定し;
前記ジョイントのサブセットの各ジョイントの少なくとも1つのジョイントに対する前記刺激が、前記少なくとも1つのジョイントに対応するロック解除閾値を超えるとき、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントを前記ロック状態から浮動状態に切り替え、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントはそれぞれのロック解除閾値を有し、前記浮動状態にある前記ジョイントのサブセットの各ジョイントは、オペレータが、前記多関節アームを手動で位置決めする、手動で向き合わせする、又は手動で位置決め及び手動で向き合わせする両方を行うことを可能にするように、動くことが許容され;
前記ジョイントのサブセットの各ジョイントの速度を決定し;
前記ジョイントのサブセットの各ジョイントの前記速度が前記ジョイントのサブセットの各ジョイントのそれぞれのロック閾値を下回るときに前記ジョイントのサブセットの各ジョイントを前記浮動状態から前記ロック状態に切り替える、
コンピュータ支援医療装置。
【請求項2】
前記制御ユニットはさらに、1又は複数のクラッチ制御装置の起動に基づいて、前記ジョイントのサブセットを前記ロック状態から前記浮動状態に切り替える、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御ユニットはさらに、前記浮動状態の作動ジョイントである前記ジョイントのサブセットの各ジョイントそれぞれに、前記各ジョイントの実際の位置を指令する、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記制御ユニットはさらに、前記浮動状態にある前記ジョイントのサブセットの各作動ジョイントそれぞれに、前記各作動ジョイントの実際の速度で動くように指令する、
請求項に記載の装置。
【請求項5】
各前記ロック解除閾値は、前記多関節アームの現在の姿勢、位置、又は向きに基づいて変えられる、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ジョイントのサブセットの各ジョイントに対する前記刺激は:
前記ジョイントの指令位置と前記ジョイントの現在の位置との間の前記ジョイントの位置誤差に対応し、前記ジョイントは、作動ジョイントである;又は
前記ジョイントのブレーキ位置と前記ジョイントの前記現在の位置との間の前記ジョイントの位置誤差に対応する;又は
前記ジョイントに対する力又はトルクに対応する、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、
前記ジョイントのサブセットの各ジョイントに対する前記刺激が所定期間の間連続的に前記ロック解除閾値を越えたとき、前記ジョイントのサブセットを前記ロック状態から前記浮動状態に切り替えること;又は
所定期間にわたる前記ジョイントのサブセットの各ジョイントに対する前記刺激の集計が前記ロック解除閾値を越えたとき、前記ジョイントのサブセットを前記ロック状態から前記浮動状態に切り替えること;
によって、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントに対する前記刺激が前記ロック解除閾値を超えるとき、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントを前記ロック状態から前記浮動状態に切り替える、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ジョイントのサブセットの各ジョイントが初めて前記浮動状態に切り替えられる前に前記ジョイントのサブセットの各ジョイントに対する前記刺激が前記ロック解除閾値を連続的に越えなければならない前記所定期間は、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントが後に前記浮動状態に切り替えられる前に前記ジョイントのサブセットの各ジョイントに対する前記刺激が前記ロック解除閾値を連続的に越えなければならない前記所定期間より長い期間である、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
記ロック解除閾値は、重力刺激に起因して前記ジョイントのサブセットの各ジョイントが前記浮動状態に切り替わることを防げるほど十分大きい、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記制御ユニットは、
前記ジョイントのサブセットにおける各ジョイントの各速度の集計が合成ロック閾値を下回る;又は
前記ジョイントのサブセットにおける各ジョイントそれぞれの前記各速度が、所定期間の間連続的に前記各ジョイントのそれぞれの前記ロック閾値を下回る;又は
所定期間にわたる前記ジョイントのサブセット各ジョイントそれぞれの速度の集が、それぞれの前記ロック閾値を下回る;
とき、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントを前記浮動状態から前記ロック状態に切り替える、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ジョイントのサブセットのジョイントに対する前記ロック解除閾値又は前記ジョイントに対する前記ロック閾値は、前記ジョイントが、前記ジョイントに対する可能な動きの端部の近くのそれぞれのソフト停止位置を越えているかどうかに基づく、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記制御ユニットは、前記浮動状態にある前記ジョイントのサブセットにおける各非作動ジョイントそれぞれに対して各ブレーキを解放する又は部分的に解放する、
請求項1に記載の装置。
【請求項13】
記制御ユニットは、前記浮動状態にある前記ジョイントのサブセットにおける各作動ジョイントに抵抗力又はトルクを導入する、
請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記制御ユニットは、さらに、前記浮動状態にある前記ジョイントのサブセットの各作動ジョイントそれぞれに、前記各作動ジョイントの実際の位置と前記各作動ジョイントの前の指令位置との間の各指令位置を指令する
請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記制御ユニットは、さらに、前記浮動状態にある各作動ジョイントそれぞれに、前記各作動ジョイントの実際の速度より低い各指令速度を指令する、
請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記制御ユニットは、前記多関節アームが、輸送モード、遠隔操作モード、指令動作モード、及び患者への取り付けモードからなるグループから選択される所定の動作モードにあるとき、前記浮動状態への前記ジョイントのサブセットの各ジョイントの切り替えを防止する、
請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記制御ユニットはさらに、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントを前記浮動状態に切り替える前に、前記複数のジョイントを前記ロック状態に所定期間の間保持する、
請求項1に記載の装置。
【請求項18】
多関節アームおよび前記多関節アームに結合された制御ユニットを有する医療装置の作動方法であって:
前記制御ユニットが、前記医療装置の前記多関節アームの複数のジョイントの各ジョイントをロック状態で動作させるステップであって、前記ロック状態にある前記複数のジョイントにおける各非作動ジョイントはそれぞれ、それぞれのブレーキによるブレーキ作動により動くことが防止され、前記ロック状態にある前記複数のジョイントにおける各作動ジョイントはそれぞれ、前記各作動ジョイントをそれぞれの指令位置に保持する作動によって前記それぞれの指令位置から動くことを防止される、ステップ;
前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントに対する刺激を決定するステップであって、前記複数のジョイントは前記ジョイントのサブセットを含む、ステップ;
前記ジョイントのサブセットの各ジョイントの少なくとも1つのジョイントに対する前記刺激が各ジョイントのそれぞれのロック解除閾値のうちの前記少なくとも1つのジョイントに対応するロック解除閾値を超えるとき、前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントを前記ロック状態から浮動状態に切り替えるステップであって、前記浮動状態にある前記ジョイントのサブセットの各ジョイントは、オペレータが、前記多関節アームを手動で位置決めする、手動で向き合わせする、又は手動で位置決め及び手動で向き合わせする両方を行うことを可能にするように、動くことが許容される、ステップ;
前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントの速度を決定するステップ;及び
前記ジョイントのサブセットの各ジョイントの前記速度が前記ジョイントのサブセットの各ジョイントのそれぞれのロック閾値を下回るとき、前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットの各ジョイントを前記浮動状態から前記ロック状態に切り替えるステップ;を含
方法。
【請求項19】
前記刺激が前記ロック解除閾値を超えるとき、前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットを前記ロック状態から前記浮動状態に切り替えるステップは:
前記ジョイントのサブセットの各ジョイントに対する前記刺激が、前記ジョイントに関連付けられる、それぞれのロック解除閾値を超えるとき、前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットを前記ロック状態から前記浮動状態に切り替えるステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記制御ユニットが、前記多関節アームの現在の姿勢、位置、又は向きに基づいて、前記ロック閾値又は前記ロック解除閾値を変えるステップをさらに含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ジョイントのサブセットのそれぞれのジョイントに対するそれぞれの刺激が前記それぞれのジョイントに対するそれぞれのロック解除閾値を越えるとき、前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットを前記ロック状態から前記浮動状態に切り替えるステップをさらに含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記速度がロック閾値を下回るとき、前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットを前記浮動状態から前記ロック状態に切り替えるステップは:
前記ジョイントのサブセットの各ジョイントについての前記速度が、前記ジョイントに関連付けられるそれぞれのロック閾値を下回るとき、前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットを前記浮動状態から前記ロック状態に切り替えるステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記ジョイントのサブセットが前記浮動状態にあるとき、前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットの非作動ジョイントに対する1又は複数のブレーキを解放するステップ;又は
前記ジョイントのサブセットが前記浮動状態にあるとき、前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットの作動ジョイントに、それぞれの実際の位置を命令するステップ;
をさらに含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記多関節アームが、輸送モード、遠隔操作モード、指令動作モード、及び患者への取り付けモードからなるグループから選択される1又は複数のモードに対応する所定の動作モードにあるとき、前記制御ユニットが、前記浮動状態への前記ジョイントのサブセットの切り替えを防止するステップをさらに含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記ジョイントのサブセットのそれぞれのジョイントが、前記それぞれのジョイントに対する可能な動きの端部の近くのそれぞれのソフト停止位置を越えるとき;
前記制御ユニットが、前記ジョイントのサブセットを前記ロック状態から前記浮動状態に切り替えるステップをさらに含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項26】
医療装置に関連付けられる1又は複数のプロセッサによって実行されるとき1又は複数のプロセッサに請求項18乃至25のいずれか1項に記載の方法を実行させるように適合される、複数の機械可読命令を含む、非一時的機械可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本開示は、" System and Method for Breakaway Clutching in an Articulated Arm”と題する、2014年3月17日に出願された米国仮出願第61 /954,452号;及び"CONSTANT FORCE SPRING WITH ACTIVE BIAS"と題する、2014年6月30日に出願された米国仮特許出願第62/954,120号の優先権を主張し、これはその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、多関節アーム(articulated arms)を持つ装置の動作に概して関連し、より具体的には、多関節アームの分離(breakaway)クラッチ操作(clutching)に関連する。
【背景技術】
【0003】
ますます多くの装置が自律的及び半自律的電子デバイスに置き換えられている。これは特に、手術室、介入室(interventional suites)、集中治療病棟(intensive care wards)、救急室等で見出される自律的及び半自律的電子デバイスの大規模アレイを備える今日の病院において当てはまる。例えば、ガラス温度計及び水銀温度計が電子体温計に置き換えられており、静脈内点滴ラインは今や電子モニタ及び流量調整器を含み、従来の手持ち式手術器具は、コンピュータ支援医療装置によって置き換えられている。
【0004】
これらの電子デバイスは、それらを操作する人に利点及び課題の両方をもたらす。これらの電子デバイスの多くは、1又は複数の多関節アーム及び/又はエンドエフェクタの自律又は半自律運動を行える可能性がある。これらの多関節アーム及びそれらのエンドエフェクタが使用される前に、それらは典型的には、所望の作業位置及び向きまで又は所望の作業位置及び向きの近くに動かされる。この運動は、1又は複数のユーザ入力制御を使用する遠隔操作又は遠隔作業によって実行される可能性がある。これらの電子装置の複雑さが増加するとともに多関節アームが多数の自由度を含むにつれて、遠隔操作による所望の作業位置及び向きへの動きは複雑に及び/又は時間がかかるようになる。この操作を効率化するために、幾つかの多関節アームは、多関節アームのジョイントのブレーキ及び/又はアクチュエータの1又は複数が解放され、オペレータが直接操作により多関節アームの位置及び/又は向きを手動で変えることを可能にする、クラッチ操作された(clutched)又は浮動(float)状態を含む。この方法では、多関節アームは、要望通りに素早く且つ容易に位置決め及び/又は向き合わせされ得る。クラッチ操作又は浮動状態は、しばしば、多関節アーム上の1又は複数のクラッチ制御装置を手動で作動させることによって及び/又はオペレータコンソールでクラッチ操作又は浮動状態を選択することによって、係合させられる。この種の手動起動は、不便及び/又は不用意である場合がある。
【0005】
したがって、多関節アームをクラッチ操作するための改良された方法及びシステムが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
幾つかの実施形態と一致して、コンピュータ支援医療装置は、1又は複数の第1のジョイントを有する多関節アーム及び多関節アームに結合されるとともに1又は複数のプロセッサを有する制御ユニットを含む。制御ユニットは、第1のジョイントのそれぞれを多数の状態で動作させる。多数の状態は、それぞれの第1のジョイントの運動が制限される、ロック状態、及び、それぞれの第1のジョイントの運動が許可される、浮動状態を含む。制御ユニットはさらに、第1のジョイントから選択された1又は複数の第2のジョイントを、第2のジョイントへの刺激が1又は複数のロック解除閾値を超えるとき、ロック状態から浮動状態に切り替えるとともに、第2のジョイントのそれぞれの速度が1又は複数のロック閾値を下回るとき、第2のジョイントを浮動状態からロック状態に切り替える。
【0007】
幾つかの実施形態と一致して、医療装置の運動を制御する方法は、医療装置の多関節アームの1又は複数の第1のジョイントのそれぞれを多数の状態のうちの1つで動作させることを含む。多数の状態は、それぞれのジョイントの運動が制限される、ロック状態、及び、それぞれのジョイントの運動が許可される、浮動状態を含む。方法はさらに、ジョイントから選択される1又は複数の第2のジョイントへの刺激を決定すること、刺激が1又は複数のロック解除閾値を超えるとき、第2のジョイントをロック状態から浮動状態に切り替えること、及び、第2のジョイントのそれぞれの速度が1又は複数のロック閾値より低いとき、第2のジョイントを浮動状態からロック状態に切り替えること、を含む。
【0008】
幾つかの実施形態と一致して、非一時的機械可読媒体は、医療装置に関連付けられる1又は複数のプロセッサによって実行されるとき1又は複数のプロセッサに方法を実行させるように適合される、複数の機械可読命令を含む。方法は、医療装置の多関節アームの1又は複数の第1のジョイントのそれぞれを多数の状態のうちの1つで動作させることを含む。多数の状態は、それぞれのジョイントの運動が制限される、ロック状態、及び、それぞれのジョイントの運動が許可される、浮動状態を含む。方法はさらに、第1のジョイントから選択される1又は複数の第2のジョイントに対する刺激を決定すること、刺激が1又は複数のロック解除閾値を超えるとき、第2のジョイントをロック状態から浮動状態に切り替えること、及び、第2のジョイントのそれぞれの速度が1又は複数のロック閾値を下回るとき、第2のジョイントを浮動状態からロック状態に切り替えること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】幾つかの実施形態によるコンピュータ支援システムの簡略化された図である。
図2】幾つかの実施形態による多関節アームを示す簡略化された図である。
図3】幾つかの実施形態による解放クラッチ操作の方法の簡略化された図である。 図面において、同じ記号を有する要素は同じ又は同様の機能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の記載では、本開示と一致する幾つかの実施形態を述べる具体的な詳細が説明される。しかしながら、幾つかの実施形態は、これら具体的な詳細の幾つか又は全てがなくても実施できることは当業者には明らかであろう。本明細書に開示される具体的な実施形態は、例証であって限定ではないことが意図されている。当業者は、ここには具体的に記載されていない他の要素が本開示の範囲及び精神のなかにあることを認識するであろう。また、不必要な繰り返しを避けるために、1つの実施形態に関連して図示及び記載された1又は複数の特徴は、そうでないことが具体的に記載されていない限り又は1又は複数の特徴が実施態様を非機能的にしない限り、他の実施形態に組み込まれ得る。
【0011】
図1は、幾つかの実施形態によるコンピュータ支援システム100の簡略化された図である。図1に示されるように、コンピュータ支援システム100は、1若しくは複数の可動又は多関節アーム120を持つ装置110を含む。1又は複数の多関節アーム120のそれぞれは、1又は複数のエンドエフェクタを支持し得る。幾つかの例では、装置110は、コンピュータ支援手術装置と一致し得る。1又は複数の多関節アーム120はそれぞれ、手術器具、イメージング装置等の支持を提供する。装置110はさらに、オペレータワークステーション(図示せず)に結合されてよく、このオペレータワークステーションは、装置110、1又は複数の多関節アーム120、及び/又はエンドエフェクタを操作するための1又は複数のマスタ制御装置を含んでよい。幾つかの実施形態では、装置110及びオペレータワークステーションは、Sunnyvale, CaliforniaのIntuitive Surgical, Inc.によって商品化されているda Vinci(登録商標)Surgical Systemに対応し得る。幾つかの実施形態では、他の形態、より少ない又はより多い多関節アーム等を持つコンピュータ支援手術装置が、コンピュータ支援システム100とともに使用され得る。
【0012】
装置110は、インタフェースを経由して制御ユニット130に結合される。インタフェースは、1又は複数のケーブル、コネクタ、及び/又はバスを含み得るとともに、さらに、1又は複数のネットワークスイッチング及び/又はルーティング装置を持つ1又は複数のネットワークを含み得る。制御ユニット130は、メモリ150に結合されたプロセッサ140を含む。制御ユニット130の動作は、プロセッサ140によって制御される。制御ユニット130は、1つのプロセッサ140のみを備えて示されているが、プロセッサ140は、制御ユニット130の中の1又は複数の中央処理装置、マルチコアプロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)、特定用途向け集積回路(ASICs)などの代表であり得る。制御ユニット130は、独立型サブシステム及び/又はコンピューティングデバイスに追加されるボードとして、又は仮想マシンとして実装され得る。幾つかの実施形態では、制御ユニットは、オペレータワークステーションの部分として含まれ得る及び/又はオペレータワークステーションと別であるが、オペレータワークステーションと協調して動作され得る。
【0013】
メモリ150は、制御ユニット130によって実行されるソフトウェア及び/又は制御ユニット130の動作中に使用される1又は複数のデータ構造を格納するために使用され得る。メモリ150は、1又は複数の種類の機械可読媒体を含み得る。機械可読媒体の幾つかの一般的な形態は、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、孔のパターンを持つ任意の他の物理媒体、RAM、PROM、EPROM、フラッシュEPROM、任意の他のメモリチップ又はカートリッジ、及び/又はそこからプロセッサ又はコンピュータが読むように適合される任意の他の媒体を含み得る。
【0014】
図示されるように、メモリ150は、装置110の自律及び/又は半自律制御をサポートするために使用され得る運動制御アプリケーション160を含む。運動制御アプリケーション160は、装置110から位置、動き、及び/又は他のセンサ情報を受信するための、他の装置に関する他の制御ユニットと位置、動き、及び/又は衝突回避情報を交換するための、並びに/又は、装置110、多関節アーム120、及び/又は装置110のエンドエフェクタの運動を計画するための、1又は複数のアプリケーションプログラミングインターフェース(APIs)を含み得る。運動制御アプリケーション160は、ソフトウェアアプリケーションとして描かれているが、運動制御アプリケーション160は、ハードウェア、ソフトウェア、及び/又はハードウェアとソフトウェアの組合せを使用して実装され得る。
【0015】
幾つかの実施形態では、コンピュータ支援システム100は、手術室及び/又は介入室の中で見つけられ得る。コンピュータ支援システム100は、2つの多関節アーム120を持つ1つの装置110のみを含んでいるが、当業者は、コンピュータ支援システム100が、装置110と同様の並びに/又は装置110と異なる設計の多関節アーム及び/又はエンドエフェクタを持つ任意の数の装置含み得ることを理解するであろう。幾つかの実施形態では、装置のそれぞれは、より少ない又はより多い多関節アーム及び/又はエンドエフェクタを含み得る。
【0016】
図2は、幾つかの実施形態による多関節アーム200を示す簡略化された図である。例えば、多関節アーム200は、装置110の多関節アーム120の1つの一部であり得る。図2に示されるように、多関節アーム200は、様々なリンク及びジョイントを含む。多関節アーム200の最近位端部にプラットフォーム210が結合される。幾つかの例では、プラットフォーム210は、コンピュータ支援装置からの追加のジョイント及びリンク(図示せず)の遠位端部にあり得る。プラットフォーム210に結合されるのは、一連のセットアップジョイント及びリンク220である。セットアップジョイント及びリンク220は、第1のセットアップリンケージジョイント222を介してプラットフォーム210に回転可能に結合される。幾つかの例では、他の多関節アーム(図示せず)のための追加のセットアップリンク及びジョイントが、追加の第1のセットアップリンケージジョイントを使用してプラットフォーム210に回転可能に結合される。第1のセットアップリンケージジョイント222に結合されるのは、第1のセットアップリンケージ直動ジョイント228を介してセットアップリンケージ延長リンク226の近位端部に結合されるセットアップベースリンケージ224である。セットアップリンケージ延長リンク226の遠位端部が、第2のセットアップリンケージ直動ジョイント232を介してセットアップリンケージ垂直リンク230の近位端部に結合される。セットアップリンケージ垂直リンク230の遠位端部が、第2のセットアップリンケージジョイント236を介して支持リンク234の近位端部に回転可能に結合される。第1の回転ジョイント238が、支持リンク234の遠位端部に結合される。第1の回転ジョイント238は、第1の回転ジョイント238の遠位に位置する追加のリンク及びジョイントに対する回転制御を提供する。幾つかの例では、第1の回転ジョイント238の中心軸250が、多関節アーム200の遠隔操作中にある場所で固定され得る遠隔中心(remote center)290と位置合わせされ得る。
【0017】
結合リンク240が、第1の回転ジョイント238を第2の回転ジョイント242に結合する。第2の回転ジョイント240は、ヨーリンク254を介してヨージョイント252に結合される。ヨージョイント252の遠位に結合されるのは、平行四辺形ピッチ機構(parallelogram pitch mechanism)260である。平行四辺形ピッチ機構260の近位端部には、ヨージョイント252を第1のピッチジョイント264に結合する第1のピッチリンク262がある。第2のピッチリンク266が、第1のピッチジョイント264を第2のピッチジョイント268に結合する。第3のピッチリンク270が、第2のピッチジョイント268を第3のピッチジョイント272に結合する。器具カートリッジが、第3のピッチジョイント272に結合されるとともに器具シャフト280を含む。1又は複数のエンドエフェクタが、器具シャフト280の遠位端部に結合され得る。幾つかの例では、平行ピッチ機構260は、器具シャフト280を遠隔中心290と位置合わせして維持するように制御され得る。
【0018】
図2に示されるように、多関節アーム200は、多数のリンケージ224、226、230、234、240、254、262、266、270、及び280を含み、それらの相対的な位置及び/又は向きは、多数の直動ジョイント228及び232並びに多数の回転ジョイント222、236、238、242、262、264、268、及び272を使用して調整され得る。直動及び回転ジョイントのそれぞれは、それぞれのジョイントの位置、回転、動き、力、及び/又はトルク等を検知するための1又は複数のセンサを含み得る。
【0019】
多関節アーム200を制御するための所望の能力に応じて、様々なジョイントのそれぞれは、非作動又は作動ジョイントであり得る。幾つかの例では、非作動ジョイントは、如何なるアクチュエータも含まなくてよいので、遠隔操作及び/又は多関節アーム200の制御ユニットからの動作制御命令による動作ができない。幾つかの例では、非作動ジョイントは、制御ユニットが非作動ジョイントにおける動きを防ぐ及び/又は制限することを可能にするブレーキを含み得る。幾つかの例では、図2の、ジョイント228、232、及び/又は236は、非作動ジョイントであり得る。幾つかの例では、作動ジョイントは、遠隔操作及び/又は動作命令により作動ジョイントの動きを制御し得る1又は複数のアクチュエータを含み得る。幾つかの例では、作動ジョイントはさらに、ブレーキを含み得る。
【0020】
幾つかの実施形態では、望ましくない運動を防ぐために、多関節アーム200の様々なジョイント及びリンクは、非作動ジョイントブレーキのそれぞれが作動され且つ作動ジョイントアクチュエータのそれぞれが作動ジョイントを指令位置で保持するように命令される、ロック状態に置かれ得る。幾つかの例では、ロック状態は、多関節アーム200に作用する重力に起因する望ましくない動きを追加的に防ぐ。図2に示されていないが、多関節アーム200は、1又は複数のクラッチボタン又は制御装置を含み得る。幾つかの例では、クラッチボタンは、器具カートリッジに沿った様々な場所に配置され得る。幾つかの例では、追加のクラッチ制御装置が、オペレータコンソールでのオペレータ制御により作動され得る。クラッチボタン又は制御装置の1又は複数を作動させることによって、多関節アームの1又は複数のジョイントは、ロック状態から、非作動ジョイントブレーキの少なくとも幾つか少なくとも部分的に解放され得るとともに作動ジョイントアクチュエータの少なくとも幾つかが指令位置から離れるジョイントの動きを可能にし得るクラッチ操作された状態又は浮動状態に切り替えられ得る。例えば、多関節アーム200に配置されたクラッチボタンの作動は、多関節アーム200を浮動状態に置き得る一方、プラットフォーム210に結合されたコンピュータ支援装置の他の部分がロック状態のままである。多関節アーム200の浮動状態にある間、オペレータは、多関節アーム200を所望の作業位置及び向きに手動で位置決め及び/又は向き合わせし得る。
【0021】
幾つかの実施形態では、多関節アーム200のクラッチ操作機構の手動起動は、必ずしも実際的及び/又は用意周到でない場合がある。幾つかの例では、クラッチボタン又は制御装置の場所は、オペレータによる容易な起動に便利でない場合がある。幾つかの例では、オペレータは、クラッチ制御装置を操作するための自由な指及び/又は手を有さない場合がある。幾つかの例では、オペレータコンソールに位置する他のオペレータとのクラッチ制御の連携が、可能及び/又は実際的でない可能性がある。幾つかの例では、オペレータは、多関節アーム200の部分の周りに確立された滅菌野を壊すことなしにクラッチ制御装置を操作できない可能性がある。したがって、多関節アーム200の少なくとも部分を、オペレータによるクラッチ制御の起動なしに浮動状態に入らせることは有利である。
【0022】
幾つかの実施形態では、多関節アーム200の運動が手動クラッチ起動なしで望まれ得る。幾つかの例では、意図しない衝突が、オペレータ、患者、及び/又は物体と、多関節アーム200の1又は複数のリンク及び/又はジョイントとの間で発生し得る。幾つかの例では、これらの意図しない衝突は、オペレータの負傷、患者の負傷、物体の損傷、並びに/又は、多関節アーム200によって維持されている固定された位置及び/又は向きに起因する多関節アーム200の損傷をもたらす可能性がある。幾つかの例では、意図しない衝突を検出するとともに多関節アーム200を自動的に浮動状態に入れることができることは、オペレータの負傷、患者の負傷、物体の損傷、及び/又は多関節アーム200の損傷を減少させ得る。
【0023】
図3は、幾つかの実施形態による解放クラッチ操作の方法300の簡略化された図である。方法300のプロセス310-360の1又は複数が、少なくとも一部において、非一時的、有形、機械可読媒体に格納される実行可能なコードの形態で、実装されることができ、この機械可読媒体は、1又は複数のプロセッサ(例えば、制御ユニット130のプロセッサ140)によって実行されるとき、1又は複数のプロセッサにプロセス310-360の1又は複数を実行させる。幾つかの実施形態では、方法300は、運動制御アプリケーション160のような、アプリケーションによって実行され得る。
【0024】
プロセス310において、ロック状態に入る。多関節アーム120及び/又は200のような、多関節アームのジョイントは、初期設定で(by default)ロック状態に置かれ得る。ロック状態では、多関節アームの動きが、多関節アームの非作動ジョイントのそれぞれにおいてブレーキを作動させることによって及び多関節アームの作動ジョイントのそれぞれを対応する作動ジョイントアクチュエータを使用してそれぞれの指令位置に保持することによって、防がれ得る及び/又は減らされ得る。
【0025】
プロセス320において、1又は複数のジョイントへの外部刺激が決定される。多関節アームのジョイントのそれぞれに関連付けられ1又は複数のセンサが、外部刺激が多関節アームの1又は複数のジョイントに加えられているかどうかを決定するために、周期的に読み取られる及び/又はモニタされる。幾つかの例では、直動ジョイントに関連付けられるリニアセンサ及び/又は回転ジョイントに関連付けられる回転センサが、それぞれのジョイントの実際の位置を決定するためにモニタされる。幾つかの例では、位置誤差が、実際の位置と、作動ジョイントにおける指令位置及び/又は非作動ジョイントにおけるブレーキ位置との間の差に基づいて決定され得る。幾つかの例では、位置誤差は、1又は複数の運動学的モデル、逆ヤコビ行列変換、及び/又はそれぞれのジョイントに関する制御モデルを使用することによってそれぞれのジョイントへの力及び/又はトルクを概算するために変換され得る。幾つかの例では、それぞれのジョイントに対する力及び/又はトルクは、それぞれのジョイントをモニタする、力及び/又はトルクセンサをそれぞれ使用して測定され得る。幾つかの例では、作動ジョイントのジョイント速度も、作動ジョイントに関連付けられる1又は複数の速度センサを使用して又は作動ジョイントの実際の位置における変化に基づいて数値的に決定され得る。
【0026】
プロセス330において、ジョイントのいずれかへの外部刺激がロック解除閾値を越えているかどうかが決定される。プロセス320の間に決定されたジョイントのそれぞれの外部刺激値が、1又は複数のロック解除閾値と、ロック解除閾値のいずれかを越えているかどうかを確かめるために比較される。幾つかの例では、多関節アームのジョイントは、外部ジョイント刺激値のいずれか1つがそれぞれのロック解除閾値を超えるとき、プロセス340を使用して浮動状態に切り替えられ得る。幾つかの例では、多関節アームのジョイントは、外部ジョイント刺激値の2以上の組合せがそれぞれのロック解除閾値を超えるとき、浮動状態に切り替えられ得る。幾つかの例では、多関節アームのジョイントは、2以上のジョイントからの外部刺激値の重み付け及び/又は非重み付け(un-weighted)集合(集計)(aggregation)が合成ロック解除閾値を超えるとき、浮動状態に切り替えられ得る。幾つかの例では、集は、平均、中央値、平方和、最小、及び/又は最大等を含み得る。
【0027】
幾つかの例では、それぞれのジョイントに対するロック解除閾値のそれぞれは、多関節アームのそれぞれのジョイントの場所及び/又は目的に応じて異なり得る。幾つかの例では、ロック解除閾値は、多関節アームの現在の姿勢、位置、及び/又は向きに基づいて調整され得る。幾つかの例では、それぞれのジョイントに対するロック解除閾値は、それぞれのジョイントが、それぞれのジョイントに対する可能な動きの端部の近くのソフト停止部(soft stop)を越えているとき、調整され得る及び/又は無効にされ得る。幾つかの例では、浮動状態は、それぞれのジョイントがソフト停止部を越えているとき、初期設定で起動され得る。幾つかの例では、外部刺激が閾値を越えているかどうかの決定は、多関節アームのジョイントのサブセットに限定され得る。幾つかの例では、ブレーキをかけられている非作動ジョイントへの外部刺激は、プロセス320の間にモニタされなくてもよく、対応するロック解除閾値を有さなくてもよい。幾つかの例では、ロック解除閾値は、多関節アームのサイズ及び/又は質量に基づいて調整され得る。幾つかの例では、ロック解除閾値は、重力及び/又はジョイントセンサにおけるエラーに起因する浮動状態への予期しない切り替えを避けるのに十分大きくなり得る。
【0028】
幾つかの例では、ロック解除閾値は、ジョイントの実際の位置とジョイントの指令及び/又はブレーキ位置との間の位置誤差に関連する閾値の値に対応し得る。幾つかの例では、閾値の値は、直動ジョイントに関して0.02から5ミリメートルの間であり得る。幾つかの例では、閾値の値は、回転ジョイントに関して0.03から0.5度の間であり得る。幾つかの例では、1又は複数のロック解除閾値は、プロセス320の間に測定される及び/又は決定されるような、ジョイントに加えられている力及び/又はトルクに対応し得る。幾つかの例では、閾値の値は、直動ジョイントへの力に関して、1から30Nであり得る。幾つかの例では、閾値の値は、回転ジョイントへのトルクに関して1から30Nmの間であり得る。幾つかの例では、閾値の値は、ジョイントに対する力及び/又はトルク飽和値を越え得る。
【0029】
幾つかの実施形態では、ロック解除閾値は、多関節アームを浮動状態に切り替える前に所定期間越えられるべきである。幾つかの例では、多関節アームのジョイントは、それぞれの外部刺激値が、所定期間連続的に対応するロック解除閾値を越えるとき、浮動状態に切り替えられ得る。幾つかの例では、多関節アームのジョイントは、所定期間に渡るそれぞれの外部刺激値の集、例えば平均等がそれぞれの刺激値を越えるとき、浮動状態に切り替えられ得る。幾つかの例では、スライディングウインドウ(sliding window)及び/又は指数平滑法が、集を決定するために使用され得る。幾つかの例では、フィルタが、低い周波数であり得る重力及び他の環境要因に起因する外乱から人間の意図に起因する外乱をより良く分離するために、中間周波数を強調する検知された外部刺激に対して使用され得る。幾つかの例では、中間周波数は、おおよそ0.01Hzから10Hzに及び得る。幾つかの例では、離散ウェーブレット変換が、人間の意図に起因する外乱をより良く分離するためにフィルタの代わりに又はフィルタと組み合わせて使用され得る。幾つかの例では、所定の期間はオペレータによって設定され得る。幾つかの例では、所定の期間は、50から150ミリ秒の間であり得る。幾つかの例では、所定の期間は、他の最近完了した動作に起因する多関節アームの残存している勢い及び/又はユーザ入力と混同される環境からの静的外乱に起因する浮動状態への予期しない切り替えを避けるために、分離クラッチ操作が最初に起動されるとき、異なり得る。幾つかの例では、ロック状態は、多関節アームが患者から切り離される、及び/又はエンドエフェクタが多関節アームに取り付けられる又は取り外される等のような、ありそうな一時的な状況に起因する浮動状態への予期しない切り替えを避けるために、最初に分離クラッチ操作が起動される前に、外部刺激が所定期間の間ロック解除閾値を下回る状態が確立されるべきである。幾つかの例では、所定時間は、分離クラッチ操作が可能にされた後の追加の100から250ミリ秒の間に及び得る。
【0030】
外部刺激が1又は複数のロック解除閾値を越えないとき、外部刺激はプロセス320を再び使用して決定される。外部刺激が1又は複数のロック解除閾値を越えるとき、多関節アームのジョイントは、プロセス340を使用して浮動状態に切り替えられる。
【0031】
プロセス340において、浮動状態に入る。多関節アームのジョイントの1又は複数は、ジョイントの自由な及び/又はほぼ自由な動作が許容される浮動状態に置かれる。幾つかの例では、浮動状態に置かれているジョイントは、多関節アームのジョイントのサブセットであり得る。幾つかの例では、これは、分離クラッチ操作を外部刺激の対象となる多関節アームのこれらの部分に適用することを許容する。幾つかの例では、浮動状態に置かれている非作動ジョイントのそれぞれのブレーキは解放されて、非作動ジョイントのそれぞれの動作を可能にし得る。幾つかの例では、浮動状態に置かれている作動ジョイントのそれぞれは、プロセス320の間に又は作動ジョイントが浮動状態のままである間に決定された実際の位置に移動するように命令され得る。幾つかの例では、浮動状態に置かれている作動ジョイントのそれぞれはまた、プロセス320の間に又は作動ジョイントが浮動状態のままである間に決定されたジョイント速度に適合するように命令され得る。幾つかの例では、作動ジョイントのフィードバックコントローラの指令位置を実際の位置に及び/又はフィードバックコントローラの指令速度を実際のジョイント速度に設定することは、作動ジョイントが自由に動いているという印象、及び、重力補償も適用されているとき、見かけの無重力状態の印象も与える。
【0032】
幾つかの実施形態では、浮動状態におけるジョイントの運動は、減衰にさらされ得る。浮動状態の間に多関節アームの無制限の及び/又は暴れる運動を減らす及び/又は防ぐために、浮動状態に置かれたジョイントの1又は複数が、何らかの形の減衰運動にさらされ得る。例えば、激しい衝突のような強い外部刺激にさらされる多関節アームが、何らかの制約なしに強い外部刺激から離れることが望ましくない場合がある。クラッチ操作された運動を拘束することは、速く動く多関節アームによって生じる負傷及び/又は損傷のリスクを減少させ得る。幾つかの例では、減衰運動は、非作動ジョイントの運動に抵抗をセットするようにブレーキを部分的に解放することによって、非作動アームに実装され得る。幾つかの例では、ブレーキは、ブレーキを制御するために使用される信号の1又は複数の電圧、電流、及び/又はデューティサイクル等を制御することによって、部分的に解放され得る。幾つかの例では、減衰運動は、運動の方向に基づいて実際の位置の後ろの距離の一部を動くように作動ジョイントに命令することによって、フィードバックコントローラの安定余裕(stability margin)に著しい影響を与えること無しにフィードバックコントローラの微分定数(derivative constant)を増加させることによって、並びに/又は、抵抗力及び/又はトルクを模倣するように作動ジョイントのアクチュエータに逆電流及び/又は電圧を導入することによって、作動ジョイントに実装され得る。幾つかの例では、減衰運動は、作動ジョイントの速度を、プロセス320の間に又は作動ジョイントが浮動状態のままである間に決定されたジョイント速度を下回る値に命令することによって作動ジョイントに実装され得る。幾つかの例では、減衰運動は、多関節アームの現在の姿勢、位置、及び/又は向き、並びに/又は多関節アームのサイズ及び/又は質量等を考慮するように調整され得る。
【0033】
幾つかの実施形態では、浮動状態に置かれていない多関節アームのジョイントの1又は複数が、コンプライアンス運動制限(compliant motion restriction)にさらされ得る。幾つかの例では、浮動状態に置かれていないジョイントは、浮動状態に置かれているジョイントの検出された運動に反応して命令され得る。幾つかの例では、浮動状態に置かれていないジョイントは、1又は複数の位置及び/又は向きに命令され得る。図2の例では、平行四辺形ピッチ機構260のジョイントの1又は複数が、器具シャフト280の中心軸250との交点を遠隔中心290に維持するように命令され得る。
【0034】
プロセス350において、ジョイント速度が決定される。多関節アームのジョイントのそれぞれに関連付けられる1又は複数のセンサは、浮動状態にあるジョイントのそれぞれの速度を決定するために、周期的に読み取られる及び/又はモニタされる。幾つかの例では、2つの連続的なモニタリング間隔の間の直線及び/又は回転位置の変化が、ジョイント速度を推定するために使用される。幾つかの例では、数値的及び/又は他の微分テクニックが、検知された位置からジョイント速度を決定するために使用され得る。幾つかの例では、ジョイントの速度センサがモニタされ得る。
【0035】
プロセス360において、ジョイント速度がロック閾値未満に低下しているかどうかが決定される。分離クラッチ操作の間、多関節アームのジョイントは、多関節アームの継続運動が検出される限り浮動状態に保たれる。プロセス350の間に決定されたジョイント速度は、継続運動が多関節アームで検出されているかどうかを確かめるために1又は複数のロック閾値と比較される。幾つかの例では、ジョイント速度のそれぞれが対応するロック閾値と比較され得る。ジョイント速度のそれぞれが、その対応するロック閾値未満であるとき、運動の不足が検出されるとともに多関節アームのジョイントはプロセス310を使用してロック状態に切り替えられる。幾つかの例では、多関節アームのジョイントは、ジョイントのそれぞれからのジョイント速度の重み付き及び/又は重みなしの集が、合成ロック閾値未満であるとき、プロセス310を使用してロック状態に切り替えられ得る。幾つかの例では、集は、平均、中央値、平方和、最小、及び/又は最大等を含み得る。
【0036】
幾つかの例では、それぞれのジョイントに対するロック閾値のそれぞれは、多関節アームのそれぞれのジョイントの場所及び/又は目的に応じて異なり得る。幾つかの例では、ロック閾値は、多関節アームの現在の姿勢、位置、及び/又は向きに基づいて調整され得る。幾つかの例では、それぞれのジョイントに対するロック閾値は、それぞれのジョイントが、それぞれのジョイントに対する可能な動作の端部の近くのソフト停止部を越えているとき、調整され得る及び/又は無効にされ得る。幾つかの例では、ロック状態は、それぞれのジョイントがソフト停止部を越えているとき、初期設定で起動され得る。幾つかの例では、ジョイント速度がロック閾値未満であるかどうかの決定は、多関節アームのジョイントのサブセットに限られ得る。幾つかの例では、ロック閾値は、多関節アームのサイズ及び/又は質量に基づいて調整され得る。幾つかの例では、ロック閾値は、ジョイントセンサのエラーに起因するロックへの予期しない切り替えを避けるよう十分大きくなり得る。
【0037】
幾つかの例では、ロック閾値は、直動ジョイントに対して毎秒0.1から10ミリメートルの間であり得る。幾つかの例では、閾値の値は、回転ジョイントに対して、毎秒0.25から10度の間であり得る。
【0038】
幾つかの実施形態では、ジョイント速度は、多関節アームのジョイントをロック状態に切り替える前に、所定期間の間ロック閾値未満のままであるべきである。幾つかの例では、多関節アームのジョイントは、ジョイント速度が所定期間の間連続的に対応するロック閾値未満であるとき、ロック状態に切り替えられ得る。幾つかの例では、多関節アームのジョイントは、所定期間にわたるそれぞれのジョイント速度の、平均のような、集が、それぞれのロック閾値未満であるとき、ロック状態に切り替えられ得る。幾つかの例では、スライディングウインドウ及び/又は指数平滑法が、集を決定するために使用され得る。幾つかの例では、所定の期間は、オペレータによって設定され得る。幾つかの例では、所定の期間は、100から200ミリ秒の間であり得る。
【0039】
ジョイント速度が、ロック閾値を上回ったままであるとき、ジョイント速度は、プロセス350を使用して再び決定される。ジョイント速度がロック閾値を下回るとき、多関節アームのジョイントは、プロセス310を使用してロック状態に切り替えられる。
【0040】
上で論じられるとともにここでさらに強調されるように、図3は単なる例であり、これは、請求項の範囲を過度に限定するべきではない。当業者は、多くの変形形態、代替形態、及び変更形態を認識するであろう。幾つかの実施形態によれば、方法300の分離クラッチ操作は、多関節アームの特定の動作モードの間に無効にされ得る。幾つかの例では、多関節アームが保管の間に強固にロックされた状態にあるとき及び/又は多関節アームが取り付けられているカートが場所の間で輸送されているとき、分離クラッチ操作は無効にされ得る。幾つかの例では、多関節アームが作動遠隔操作モードにある及び/又は、患者に取り付けられるような、指令動作を実行しているとき、分離クラッチ操作は無効にされ得る。幾つかの例では、作動操作の間に分離クラッチ操作を無効にすることは、作動アームとの手動干渉及び/又は衝突が遠隔操作及び/又は指令動作と干渉する可能性を減少させ、したがって、操作されている物体に損傷を及ぼすこと及び/又は作動アームが使用されている患者を傷つけることのさらなる可能性を減少させ得る。幾つかの例では、分離クラッチ操作は、多関節アームのジョイントのいずれかがソフト停止位置を越えるとき、調整され得る、強制され得る、又は無効にされ得る。
【0041】
制御ユニット130のような、制御ユニットの幾つかの例は、1又は複数のプロセッサ(例えば、プロセッサ140)によって実行されるとき、1又は複数のプロセッサに方法300のプロセスを実行させ得る実行可能なコードを含む、非一時的、有形、機械可読媒体を含み得る。方法300のプロセスを含み得る機械可読媒体の幾つかの一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、孔のパターンを持つ任意の他の物理媒体、RAM、PROM、EPROM、フラッシュEPROM、任意の他のメモリチップ若しくはカートリッジ、及び/又はそこからプロセッサ又はコンピュータが読むように適合される任意の他の媒体である。
【0042】
例示の実施形態が説明されるとともに示されているが、広範囲の修正、変更及び置換が、前述の記載において考えられ、幾つかの例では、実施形態の幾つかの特徴が、他の特徴の対応する使用なしに用いられ得る。当業者は、多くの変形形態、代替形態、及び変更形態を認識するであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の請求項のみによって限定されるべきであり、請求項は広く且つ本明細書に開示される実施形態の範囲と一致する方法で解釈されることが適切である。
図1
図2
図3