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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】巻鉄心および巻鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/245 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
H01F27/245 155
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017159461
(22)【出願日】2017-08-22
(65)【公開番号】P2019040907
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-05-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】新井 聡
(72)【発明者】
【氏名】溝上 雅人
(72)【発明者】
【氏名】水村 崇人
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】須原 宏光
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-150507(JP,A)
【文献】実公昭40-032584(JP,Y2)
【文献】特開昭58-182810(JP,A)
【文献】実開昭47-010014(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回された軟磁性帯を有する巻鉄心であって、
前記巻回された前記軟磁性帯の巻回方向に、相互に対向する第1の端部および第2の端部を有し、
前記軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の前記第1の端部および前記第2の端部の形状は、屈曲部を少なくとも一つ有する形状であり、
前記第1の端部および前記第2の端部の、前記軟磁性帯の巻回方向における位置は、前記第1の端部および前記第2の端部を前記軟磁性帯の巻回方向および厚み方向に垂直な方向に沿って見た場合に、階段状にずれていることを特徴とする巻鉄心。
【請求項2】
前記軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の前記第1の端部および前記第2の端部の形状は、V字状を含む形状であることを特徴とする請求項1に記載の巻鉄心。
【請求項3】
前記軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の前記第1の端部および前記第2の端部の形状は、屈曲部を有し湾曲部を有しない形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の巻鉄心。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の巻鉄心の製造方法であって、
軟磁性帯を巻回して前記軟磁性帯を中空形状にする工程と、
前記中空形状にした軟磁性帯に対して歪み取り焼鈍を行う工程と、
前記歪み取り焼鈍が行われた各軟磁性帯を切断することにより、前記第1の端部および前記第2の端部を形成する工程と、を有することを特徴とする巻鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻鉄心および巻鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO2の排出量の削減や、省エネルギー化のために、電気機器の高効率化が求められている。そこで、変圧器やリアクトル等の電気機器で使用される巻鉄心の鉄損を低減することが求められている。そこで、巻鉄心を構成する方向性電磁鋼板等の軟磁性材料自体の鉄損を低減する技術の開発が精力的に進められている。しかしながら、このような素材の低鉄損化のみでは、電気機器における最終的な損失を十分に低減することができない。このため、巻鉄心としての低損失化が強く求められている。
【0003】
巻鉄心の損失を低減するための技術として特許文献1、2に記載の技術がある。
特許文献1、2には、片方の表面に線状の溝を形成した一方向性電磁鋼板を、当該溝が外巻き側または内巻き側に位置するように巻き重ねて構成された巻鉄心が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-15309号公報
【文献】特公平6-22179号公報
【文献】特開2008-166636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、巻鉄心には、励磁巻線等のコイルを巻鉄心に挿入すること等を目的として、突き合わせ部が形成される。突き合わせ部は、軟磁性帯(帯状の軟磁性体)を巻き回して歪み取り焼鈍を行った後、軟磁性帯をその厚み方向に切断することにより形成される、軟磁性帯の巻回方向の端部である。コイルを挿入した後、突き合わせ部同士が突き合わされて巻鉄心が構成される。突き合わせ部同士が突き合わさる部分には空隙が生じ、この空隙の部分の透磁率は軟磁性帯の透磁率よりも小さい。このため、突き合わせ部(軟磁性帯の巻回方向の端部)では、磁束の集中が起こりやすい。
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、突き合わせ部(軟磁性帯の巻回方向の端部)における磁束の集中を考慮していない。従って、鉄心の鉄損を十分に低減することが容易ではない。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、巻鉄心を構成する軟磁性帯の巻回方向の端部における磁束の集中を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の巻鉄心は、巻回された軟磁性帯を有する巻鉄心であって、前記巻回された前記軟磁性帯の巻回方向に、相互に対向する第1の端部および第2の端部を有し、前記軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の前記第1の端部および前記第2の端部の形状は、屈曲部を少なくとも一つ有する形状であり、前記第1の端部および前記第2の端部の、前記軟磁性帯の巻回方向における位置は、前記第1の端部および前記第2の端部を前記軟磁性帯の巻回方向および厚み方向に垂直な方向に沿って見た場合に、階段状にずれていることを特徴とする。
本発明の巻鉄心の製造方法は、前記巻鉄心の製造方法であって、軟磁性帯を巻回して前記軟磁性帯を中空形状にする工程と、前記中空形状にした軟磁性帯に対して歪み取り焼鈍を行う工程と、前記歪み取り焼鈍が行われた各軟磁性帯を切断することにより、前記第1の端部および前記第2の端部を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、巻鉄心を構成する軟磁性帯の巻回方向の端部における磁束の集中を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、巻鉄心の構成の一例を示す図である。
図2図2は、軟磁性帯の巻回方向の端部を、軟磁性帯の短手方向に沿って見た図である。
図3図3は、軟磁性帯の巻回方向の端部を、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た図である。
図4図4は、軟磁性帯の巻回方向の端部を突き合わせる様子の一例を示す斜視図である。
図5図5は、軟磁性帯の端部の形状の比較例を示す図であり、軟磁性帯の巻回方向の端部を、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た図である。
図6図6は、軟磁性帯の巻回方向の端部の形状の比較例を示す図であり、軟磁性帯の端部の形状を示す斜視図である。
図7図7は、軟磁性帯の巻回方向の端部の形状の第1の変形例を示す図であり、軟磁性帯の端部を、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た図である。
図8図8は、軟磁性帯の巻回方向の端部の形状の第2の変形例を示す図であり、軟磁性帯の端部を、軟磁性帯の短手方向に沿って見た図である。
図9図9は、軟磁性帯の巻回方向の端部の形状の第2の変形例を示す図であり、軟磁性帯の巻回方向の端部を突き合わせる様子の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。尚、各図において、X軸、Y軸、Z軸は、各図における向きの関係を示すものである。○の中に●を付したものは、紙面の奥側から手前側に向く方向を示し、○の中に×を付したものは、紙面の手前側から奥側に向く方向を示す。
【0011】
図1は、巻鉄心100の構成の一例を示す図である。
図1において、本実施形態の巻鉄心100は、所定の幅にスリット剪断された軟磁性帯(帯状の軟磁性体)を芯金に巻き回して中空のトラック状にし、中空のトラック状にした軟磁性帯に対して歪み取り焼鈍を行った後、当該中空のトラック状の軟磁性帯が一カ所で分離される(巻回方向において分断される)ように、各軟磁性帯を切断することにより構成される。そうすると、各軟磁性帯には、その巻回方向(周方向)において、相互に対向する2つの端部(第1の端部および第2の端部)が形成される。図1では、領域A内に示す縦線(Z軸方向に延びる線)と、最外周の軟磁性帯の帯面上に示す線(V字状の線)とが、軟磁性帯の巻回方向の端部を示す部分である。
【0012】
尚、巻鉄心100を構成する軟磁性帯は、方向性電磁鋼帯、無方向性電磁鋼帯、アモルファス磁性材料等、巻鉄心として使用可能なものであれば、どのようなものであってもよい。また、巻鉄心の形状は、トラック状に限定されず、円環状やドーナツ状等、巻軸に沿う方向の両端が開口する中空形状であれば、どのような形状であってもよい。また、本実施形態の巻鉄心100は、例えば、変圧器やリアクトル等、巻鉄心を使用する電気機器であれば、どのような電気機器であっても適用することができる。また、本実施形態では、軟磁性帯の巻回方向において相互に対向する2つの端部(第1の端部および第2の端部)が一箇所において形成される場合を例に挙げて説明する。しかしながら、軟磁性帯の巻回方向において相互に対向する2つの端部(第1の端部および第2の端部)が二箇所において形成されていてもよい。この場合、軟磁性帯の巻回方向において相互に対向する2つの端部に関する以下の説明は、これら二箇所のうちの少なくとも何れか一方において適用することができる。
【0013】
図2は、図1の領域Aの部分を拡大して示す図であり、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jを、軟磁性帯の短手方向に沿って見た図である。尚、軟磁性帯の短手方向は、Y軸方向であり、軟磁性帯の巻回方向(図2ではX軸方向)と、軟磁性帯の帯面に垂直な方向(図2ではZ軸方向)とに垂直な方向である。図3は、軟磁性帯の巻回方向の端部201aを、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た図である。図4は、軟磁性帯の巻回方向の端部を突き合わせる様子の一例を示す斜視図である。尚、図3では、軟磁性帯の巻回方向の端部201aのみを示すが、その他の端部201b~201jについても、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見たときの形状は、図3に示す端部201aの形状と同じである。
【0014】
図4に示すように、巻回方向において相互に対向する一方の端部と他方の端部(第1の端部および第2の端部)は、白抜きの矢印線で示す方向に接近し、突き合わされる。このようにして突き合わされた軟磁性帯の各層において、巻回方向(周方向)の一方の端部と他方の端部(第1の端部および第2の端部)は、相互に対向する。尚、巻回方向において相互に対向する2つの端部(第1の端部および第2の端部)の間にできる空隙が可及的に小さくなるように当該2つの端部を密着させるのが好ましい。巻回方向において相互に対向する2つの端部の間の磁気抵抗を小さくすることができるからである。尚、図2および図3では、巻回方向において相互に対向する2つの端部(第1の端部および第2の端部)を纏めて端部201a~201jと表記している(以下の説明では、これら巻回方向において相互に対向する2つの端部を必要に応じて端部と総称する)。
【0015】
図1図2、および図4に示すように、本実施形態では、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jの接合(突き合わせ)の方式がステップラップ接合である場合を例に挙げて説明する。図1図2、及び図4に示すように、ステップラップ接合は、軟磁性帯の短手方向(軟磁性帯の巻回方向および厚み方向に垂直な方向)に沿って軟磁性帯を見た場合(即ち、軟磁性帯の厚み部分を見た場合)に、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jの位置が、周期的に階段状にずれるように軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jを配置することにより実現される。図1図2、および図4に示す例では、軟磁性帯の短手方向に沿って軟磁性帯を見た場合に、軟磁性帯の厚み方向で隣接する5つの軟磁性帯毎に、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jのそれぞれの位置が、周期的に階段状にずれるようにする場合を示す。尚、図1図2、および図4に示す例では、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jの位置を、1つの軟磁性帯毎にずらす場合を示すが、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jの位置を、複数の軟磁性帯毎にずらすようにしてもよい。
【0016】
以上のようなステップラップ接合を採用することによって、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jを、軟磁性帯の短手方向に沿って見た場合に、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jの位置が、徐々に変化するため、軟磁性帯の端部の厚み方向(図2ではZ軸方向)の各位置における磁束の集中(即ち、軟磁性帯の端部の厚み方向において磁束が不均一になること)を抑制することができる。
【0017】
また、本実施形態では、図1図3、および図4に示すように、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向(図3ではZ軸方向)に沿って軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jを見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jの形状が、V字状となるようにする。そして、軟磁性帯の巻回方向の端部同士が対向し、当該端部を構成する面(V字状の部分の面)が相互に平行になるようにすることで、当該端部同士が嵌め合うようにする。このようにすることにより、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jを、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合に、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jの位置が、徐々に変化する。また、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jの面積を広くすることができる。従って、軟磁性帯の端部201a~201jの厚み方向(図2ではZ軸方向)のみでなく、軟磁性帯の端部201a~201jの面内方向(Y軸方向)の各位置における磁束の集中(磁束が不均一になること)を抑制することができる。よって、軟磁性帯の端部全体の磁束の集中を抑制することができる。尚、V字の頂点の角度(頂角)は任意である(即ち、鋭角であっても鈍角であっても直角であってもよい)。
【0018】
本実施形態では、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向(図3図4ではZ軸方向)から見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jの形状は同一である。このようにすることによって、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jの形状を統一することができる。従って、軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jを形成する工程を容易にすることができる。ただし、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向から見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部の少なくとも1つの形状が、その他の軟磁性帯の巻回方向の端部の形状と異なっていてもよい。本実施形態では、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向から見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部の形状は、V字状であるので、V字の頂点の角度(頂角)や位置を異ならせてもよい。
【0019】
(実施例)
次に、実施例を説明する。
本実施例では、厚みが0.23[mm]の方向性電磁鋼帯を、幅160[mm]にスリット剪断したものを用いて、鉄心高さHが600[mm]、鉄心幅Wが400[mm]、積層厚みDが100[mm]の巻鉄心を作製した(鉄心高さH、鉄心幅W、積層厚みDについては、図1を参照)。また、軟磁性帯の端部の接合(突き合わせ)の方式をステップラップ接合とした。
【0020】
発明例では、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部の形状を、頂角が90°のV字状とした。比較例では、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部の形状を、軟磁性帯の帯幅方向(短手方向)に沿う直線状とした。図5および図6は、比較例を示す図である。図5は、軟磁性帯の巻回方向の端部501を、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た図である。図6は、軟磁性帯の巻回方向の端部を突き合わせる様子を示す斜視図である。図5は、図3に対応する図であり、図6は、図4に対応する図である。
【0021】
発明例および比較例の巻鉄心のそれぞれに対し、その内部の磁束密度が1.65[T]になるように、50[Hz]の励磁周波数で励磁し、それぞれの巻鉄心の鉄損を測定した。その結果、比較例の巻鉄心の鉄損は250[W]であったのに対し、発明例の巻鉄心の鉄損は220[W]となり、方向性電磁鋼板の板面に対して垂直な方向に沿って見た場合の各軟磁性板の巻回方向の端部の形状を三角形にすることにより、鉄損を改善することができた。
【0022】
(まとめ)
以上のように本実施形態では、軟磁性帯を用いて巻鉄心100を構成するに際し、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部201a~201jの形状をV字状にする。従って、軟磁性帯の巻回方向の端部の面内方向の各位置における磁束の集中を抑制することができる。よって、巻鉄心を構成する軟磁性帯の巻回方向の端部における磁束の集中を低減することができる。これにより、巻鉄心の損失(鉄損)を低減することができ、低損失、低騒音の巻鉄心を実現することができる。
【0023】
(変形例)
<第1の変形例>
本実施形態では、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部の形状をV字状にする場合を例に挙げて説明した。しかしながら、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部の形状が、屈曲部および湾曲部の少なくとも何れか一方を少なくとも一つ有する形状であれば、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向から見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部の形状はV字状に限定されない。
【0024】
図7は、軟磁性帯の巻回方向の端部の形状の第1の変形例を示す図であり、軟磁性帯の巻回方向の端部を、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た図である。図7は、図3に対応する図である。
図7(a)に示すように、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部701の形状は、W字状であってもよい。W字の頂点の角度(頂角)は任意である。また、図7(b)に示すように、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部702の形状は、円弧状であってもよい。また、図7(c)に示すように、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部703の形状は、軟磁性帯の短手方向(Y軸方向)に複数の円弧を並べた形状であってもよい。また、図7(d)に示すように、軟磁性帯の帯面に対して垂直な方向に沿って見た場合の各軟磁性帯の巻回方向の端部704の形状は、V字と円弧を並べた形状であってもよい。
【0025】
<第2の変形例>
本実施形態のように、軟磁性帯の巻回方向の端部の接合(突き合わせ)の方式をステップラップ接合とすれば、軟磁性帯の厚み方向で磁束が集中する(不均一になる)ことを抑制することができるので好ましい。しかしながら、軟磁性帯の巻回方向の端部の接合(突き合わせ)の方式は、ステップラップ接合に限定されない。
【0026】
図8は、軟磁性帯の巻回方向の端部の形状の第2の変形例を示す図であり、軟磁性帯の巻回方向の端部を、軟磁性帯の短手方向に沿って見た図である。図9は、軟磁性帯の端部の形状の第2の変形例を示す図であり、軟磁性帯の巻回方向の端部を突き合わせる様子を示す斜視図である。図8は、図2に対応する図であり、図9は、図4に対応する図である。
【0027】
図8および図9に示すように、軟磁性帯の端部の接合(突き合わせ)の方式は、コンベンショナル接合であってもよい。コンベンショナル接合は、軟磁性帯の短手方向に沿って軟磁性帯の厚み部分を見た場合に、軟磁性帯の巻回方向の端部801a~801jの位置が、第1の位置および第2の位置の2つの位置に交互に配置されるようにすることにより実現される。図8および図9に示す例では、軟磁性帯の短手方向に沿って軟磁性帯の厚み部分を見た場合に、軟磁性帯の厚み方向で隣接する2つの軟磁性帯毎に、軟磁性帯の巻回方向の端部(突き合わせ部)の位置が、第1の位置および第2の位置の2つの位置に交互に配置されるようにする場合を示す。第1の位置および第2の位置は、軟磁性帯の巻回方向(周方向)における位置であり、相互に異なる位置である。このように、巻回された軟磁性帯の各層のそれぞれについて、軟磁性帯の巻回方向の端部の、軟磁性帯の巻回方向における位置は、その他の少なくとも1つの層の軟磁性帯の巻回方向における端部の、軟磁性帯の巻回方向における位置と異なるようにすることができる。
【0028】
<その他の変形例>
以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
100:巻鉄心、201a~201j、701~704、801a~801j:端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9