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  • 特許-電気粘着シート及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】電気粘着シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20221003BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221003BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20221003BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J201/00
C09J11/04
C09J11/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017179596
(22)【出願日】2017-09-19
(65)【公開番号】P2019056027
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-09-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月5日に2017年度精密工学会秋季大会学術講演会の講義論文集にて公表
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】240000464
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人日栄
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 康弘
(72)【発明者】
【氏名】石田 磨仁
(72)【発明者】
【氏名】安齊 秀伸
(72)【発明者】
【氏名】桜井 宏治
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/113485(WO,A1)
【文献】特開2014-210346(JP,A)
【文献】日本ロボット学会誌,Vol.31, No.5,pp.465-468 (2013).
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ER粒子を含むERゲルを用いた電気粘着シートであって、
当該電気粘着シートの粘着側の面に底部を一体として形成されており、ER粒子を含むERゲルによって形成された、前記底部から突出する複数のピラーを備え
前記複数のピラーにおける頂面が電圧の印加に応じて粘着力を発揮する、電気粘着シート。
【請求項2】
ER粒子を含むERゲルを用いた電気粘着シートの製造方法であって、
導電性の基板上にER粒子を含むERゲルの層を形成し、
前記ERゲルの層の表面に対向する位置に、複数の電極を備えるテンプレートを配置し、
前記電極に電圧を印加してERゲルの層からERゲルを隆起させ、
前記隆起したERゲルを硬化させる、
電気粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気粘着シート及びその製造方法に関し、特に微細部品の固定搬送機構に適用可能な電気粘着シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品の固定搬送機構では、搬送対象たる物品の表面に吸着して真空状態を作り出すことで物品を固定し、搬送する真空チャックが用いられてきた。また、例えば半導体製造プロセスにおいては、基板を保持・搬送するための手段として、静電チャックを用いることも知られている。
【0003】
電気粘着シートは、いわゆる電気レオロジー(以下、ERという)効果を発現するER流体をゲル化したERゲルを用いて製造され、表面の粘着性を電気的に調整することで被粘着物を保持する。ER流体は、絶縁性の液体に微粒子を分散させたコロイド溶液に対して印加する電圧を変化させることによってその粘弾性が可逆的に変化する。ERゲルは、ゲルに微粒子が分散した構造をとり、電圧を変化させることによって表面の粘着性を可逆的に変えることができ、しかも電圧の変化に対する応答性に優れている。
【0004】
ERゲルを用いた電気粘着シートを使用する場合、ERゲルには、印加電圧の変化に伴う安定した表面の粘着性の変化、即ち、Electro-Adhesive効果(EA効果)が求められることになる。
【0005】
ところが、ERゲルの性能は、内部や表面の粒子分散状態や、原料であるER流体の特性に大きく依存する。ER流体は、通常、シリコーンオイル等の電気絶縁性分散媒中に分散相粒子(ER粒子)が分散した形態であるため、比重差によりER粒子が沈降・凝集してしまうことから、安定した特性が得られにくかった。またER粒子を均一に分散し、表面に粒子を均一に並べてゲル化することは困難で、安定したEA効果が得られにくかった。
【0006】
そこで、より安定したEA効果が得られるように、高性能なER流体の適用や、電場印加製造法により電気粘着効果(EA効果)を高めたERゲルが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0007】
このようなERゲルは、例えばシリコーンオイル等の電気粘性流体、即ち前記ER流体をゲル化することにより形成したシリコーンゲルに、有機無機複合ER粒子(例えば、アクリル樹脂の微粒子をコアとして半導体酸化スズをコーテンィングした粒子)を分散させた構造をとる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-255701号公報
【文献】特開2008-266407号公報
【文献】特開2001-26793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1乃至3に記載された技術を用いた場合、十分な被粘着面を対象物が有する場合、固定搬送機構にも適用することが可能ではあった。しかしながらERゲル側の粘着面において電気粘着効果を得られる領域には依然としてばらつきがあり、微小部品に対しては、ERゲル中のER粒子の分散性やERゲルの粘着力の安定性を図ることが困難であり、実際に固定搬送を行うだけの十分かつ安定した性能を得られていない。
【0010】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、例えば物品を固定搬送することができるように、十分かつ安定した粘着力を得ることができる電気粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、ER粒子を含むERゲルを用いた電気粘着シートであって、当該電気粘着シートの粘着側の面に形成されており、ER粒子を含むERゲルによって形成された複数のピラーを備えることを特徴としている。
【0012】
このように構成された本発明によれば、ERゲルによって形成された複数のピラーを備えているため、ピラーの頂部を粘着対象である物品に接触させることができる。そして複数のピラーを同時に物品に接触させて物品を粘着保持することにより、例えばあるピラーの粘着力が低い場合でも他のピラーの粘着力によって物品を粘着保持することができる。これにより、ER粒子の分散性が低い場合であっても、電気粘着シート全体として安定した粘着力を発揮することができる。
さらに本発明によれば、複数の微小物品を同時に搬送することも可能である。即ち、上述した複数のピラーを有する電気粘着シートを用いることにより、定位置に配置された複数の物品を、複数のピラーのうちの各ピラーの頂部に粘着し、搬送することができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために本発明は、ER粒子を含むERゲルを用いた電気粘着シートの製造方法であって、導電性の基板上にER粒子を含むERゲルの層を形成し、ERゲルの層の表面に対向する位置に、複数の電極を備えるテンプレートを配置し、電極に電圧を印加してERゲルの層からERゲルを隆起させ、隆起したERゲルを硬化させることを特徴としている。
【0014】
このように構成された本発明によれば、導電性の基板上にER粒子を含むERゲルの層を形成し、テンプレートの電極と導電性の基板上との間に電圧を印加することで、複数の電極に対応したERゲルのピラーを形成することができる。そしてこのように形成された、複数のピラーを有する電気粘着シートは、ピラーの頂部を粘着対象である物品に接触させることができる。そして複数のピラーを同時に物品に接触させて物品を粘着保持することにより、例えばあるピラーの粘着力が低い場合でも他のピラーの粘着力によって物品を粘着保持することができる。これにより、ER粒子の分散性が低い場合であっても、電気粘着シート全体として安定した粘着力を発揮することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、例えば物品を固定搬送することができるように、十分かつ安定した粘着力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による電気粘着シートの側断面図である。
図2】同実施形態による電気粘着シートの製造工程を示すフロー図である。
図3】同実施形態による電気粘着シートの製造段階の各工程を示す概略図である。
図4】本発明の実施例における電極の印加時間と、電圧との関係とを示すグラフである。
図5】本発明の実施例及び比較例に基づいて製造された電気粘着シートの表面の写真である。
図6】本発明の実施例による電気粘着シートの保持力と電圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態による電気粘着シート及びその製造方法について詳述する。電気粘着シートは、例えば半導体の部品のような微細部品を機械によって固定搬送するための装置や、人間が使用する工具や手袋の表面等に適用することが可能である。電気粘着シートに粘着される被粘着物品としては、導電性物品に限定されず半導体、又は絶縁性の物品であってもよい。
【0018】
図1は、実施形態による電気粘着シートの側断面図である。電気粘着シート1は、主としてERゲル3によって形成されており、ERゲル3中にはER粒子5が分散している。電気粘着シート1が粘着対象物に粘着する粘着側の面には、ERゲル3を加工して形成された複数のピラー7が形成されている。
【0019】
ERゲル3は、シリコーンオイル等のマクスウェル応力、誘電泳電力を受けて変形し易い誘電体によって形成されている。そしてERゲル3は、シリコーンオイルを架橋剤により架橋し、ゲル化することにより形成することができる。
【0020】
シリコーンオイルとしては、例えばジメチルポリシロキサンのようなジメチルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。フッ素変性シリコーンオイルとしては、例えば、トリフルオロプロピル基(CF324-)を有するポリシロキサン、ノナフルオロヘキシル基(C4924-)を有するポリシロキサン、環状型ポリシロキサン化合物などがある。
【0021】
ERゲル3に添加する架橋剤としては、例えばシリコーンオイル末端に熱、UV等で反応するアリール基、メタクロイル基、アクリロイル基などの不飽和結合を有する置換基を備えるもの、シリコーンオイル末端に水素原子を有するハイドロジェンシリコーン、エポキシ、ウレタン等のグリシジル基、イソシアネート基と縮合反応性を有する、シリコーンオイル末端に水酸基、アミノ基などを備えるものが用いられる。
【0022】
なお、ERゲル3としてはシリコーンゲル以外に、粘弾性を有するウレタンゴムやブタジエンゴム、アクリルゴム、オレフィンゴム、及びこれらの共重合体や変性品を用いることも考えられる。
【0023】
ER粒子5は、例えば直径100nm~20μm程度のアクリルポリマー粒子の表面に半導体酸化スズをコーティングして形成されている。ERゲル3内のER粒子5の濃度としては、例えば20~50重量%とすることが好ましい。なお、上述したER粒子5の濃度は例示であり、電気粘着シート1に要求される粘着力等に応じてER粒子5の濃度を適宜変更してもよい。
【0024】
複数のピラー7は、それぞれ、例えば高さ約100μm、直径450μmの円錐形状を有しており、その頂面はほぼ平坦に形成されている。そしてピラー7の頂面が、電気粘着シート1の粘着面として作用する。また、複数のピラー7は、同一平面上に規則的に配置されており、ピラー7の延びる方向から見たときに、例えば正方形の角にそれぞれピラー7が配置されるような、または長方形の角にそれぞれピラー7が配置されるような格子状に配置されていることが好ましい。また、電気粘着シート1の粘着面の側に形成された複数のピラー7の間隔は電気粘着シート1に要求される粘着力に応じて適宜変更可能であるが、隣接するピラー7同士の間隔は以下の通りに決定することが好ましい。
【0025】
電極粘着シート1は、電圧を印加することで保持力を発揮するものであるが、ピラー7同士の間隔は、粘着対象物を粘着して保持する際に印加される電圧及び電場に応じて決定される。より具体的には、そして隣接するピラー7同士の間隔λは、以下の数式1に基づいて決定されることが好ましい。
【数1】

ここで、Emaxは電圧印加時の最大電場、Eminは電圧印加時の最小電場、Vは印加電圧、εは真空中の誘電率、εはERゲルの比誘電率、σはERゲルの表面張力を示す。そしてXY平面上におけるピラー7同士の間隔は、X方向及びY方向の両方において上記式の値を満たすか、少なくとも一方向において上記式の値を満たしていればよい。即ち、例えば上記式により算出された値に基づいてX方向のピラー7同士の間隔Lを設定した場合、Y方向のピラー7同士の間隔はLとしても良いし、電圧にもよるが100μm~1200μmの間で任意に決定された値としても良い。
【0026】
このように粘着対象物を粘着して保持するときに印加する電圧の電場、電圧、ERゲルの性質を考慮して隣接するピラー7同士の間隔を調整することにより、安定した粘着力又は保持力を得ることができる。
【0027】
ピラー7の形状としては種々の形状を採用することができ、頂面がほぼ平坦になっていれば、上述した円錐形状の他に円柱形状等を採用してもよい。また、ピラー7の寸法も上述した寸法に限られるものではなく、粘着対象物の大きさや重量等に応じて適宜変更することができる。
【0028】
次に、電気粘着シート1の製造方法について詳述する。図2は、電気粘着シートの製造方法を示すフロー図であり、図3は、各工程を模式的に示す概略図である。
【0029】
図2に示すように、電気粘着シート1を製造する方法の一連の処理では、まず、ステップS1においてERゲル3を調整する。より具体的にERゲル3の調整は、図3(A)に示すように、シリコーンオイル等の誘電性の流体に対して所定量のER粒子5や及び架橋剤を配合し、攪拌することで実行される。
【0030】
次いで、電気粘着シート1の製造方法においては、ステップS2において所定の導電性基板9上にERゲル3の層11を形成する。より具体的には、ERゲル3の層11を形成するためには、まず、図3(B)に示すように基板9の表面に、ステップS1において調整したERゲル3を載せ、スピンコータ等を用いてERゲル3の厚みを均一にする。これにより、図3(C)に示すように基板9の表面に均一な厚さのERゲル3の層11を形成することができる。なお、導電性の基板は、絶縁性の基板の表面に電極パターンを施した片側電極基板であってもよい。片側電極基板を用いる場合、電極を櫛葉状に電極を形成し、基板側に陽極と陰極の両方を配置することができる。これにより、被吸着物が導電性を有していない半導体や絶縁性の被吸着物についても配線等を施すことなく、好適に吸着を行うことができる。
【0031】
次いで、電気粘着シート1の製造方法においては、ステップS3においてERゲル3の表面と対向する位置にテンプレート13(図3(D)参照)を配置する。図3(D)に示すようにテンプレート13は、その一方の面に、形成すべきピラー7の位置に対応させた複数の電極15を備えている。そして、ステップS3においては、テンプレート13の電極15が形成されている側の面がERゲル3の表面と対向するように、かつ電極15の先端がERゲル3から所定の距離、例えば10~20μmだけ離れるように、ERゲル3に対してテンプレート13を位置決めする。
【0032】
次いで、電気粘着シート1の製造方法においては、ステップS4においてテンプレート13と、導電性の基板9との間に電圧を印加する。このとき印加する電圧は、ERゲル3の物理的性質や形成しようとするピラー7の物理的形状等に応じて適宜設定可能であるが、例えば200~1500V程度であることが好ましい。そして図3(E)に示すように、テンプレート13を電源Vに接続し基板9を接地してテンプレート13と基板9との間に電圧を印加すると、上述した静電誘導リソグラフィの原理によりERゲル3が電極15に向けて隆起し始める。そして所定時間電圧を印加すると隆起したERゲル3がピラー7の形状となる。なお、ピラー形成時の電圧、及びテンプレートと基板との距離は上述した範囲に限られず適宜調整可能である。
【0033】
次いで、電気粘着シート1の製造方法においては、ステップS5においてピラー7の形状をなしているERゲル3を硬化させる。ピラー7の形状をなしているERゲル3を硬化させるための方法としては、ERゲル3に向けて紫外線を照射する方法、熱による硬化又は自然硬化を用いることができる。そして、ステップS5においてERゲル3を硬化させる工程は、ステップS4における電圧印加を停止した後に行ってもよいし、ステップS4における電圧印加と並行して行ってもよい。そして発明者等の実験によれば、ステップS5における硬化させる工程は、ステップS4における電圧印加と並行して行う方がより規則的なピラー7を形成することができたため、ステップS4における電圧印加を停止する前に、ステップS5におけるUV照射を開始することが望ましい。
【0034】
そして所定時間、例えば30秒~45秒間、UVをERゲル3に照射してERゲル3を硬化させると、図3(F)に示すような電気粘着シート1を作り出すことができる。
【0035】
以上のように電気粘着シート1は、ERゲル3によって形成された複数のピラー7を備えているため、ピラー7の頂部を粘着対象である物品に接触させることができる。そして複数のピラー7を同時に物品に接触させて物品を粘着保持することにより、例えばあるピラー7の粘着力が低い場合でも他のピラー7の粘着力によって物品を粘着保持することができる。これにより、ER粒子5の分散性が低い場合であっても、電気粘着シート1全体として安定した粘着力を発揮することができる。
【0036】
以下、本発明の実施例について詳述する。
【0037】
(実施例)
実施例1では、電極一つあたりの大きさは100μm×100μmで、電極同士の間隔がX方向において300μm、Y方向において300μmであるテンプレートを準備した。
またERゲルとしてジメチルポリシロキサンを準備し、そこに30重量%の割合でER粒子を混合してERゲルを調整した。ER粒子は、アクリルポリマー粒子の表面に、半導体酸化スズを付着させたものを用い、その平均直径は16μmであった。
【0038】
そして調整したERゲルを、ガラス電極基板上に塗布し厚さ70μmに均してERゲルの層を形成した。さらに、ガラス電極基板のERゲル層が形成されている面から170μm離れた位置に電極の先端が配置されるように、テンプレートを固定した。
【0039】
このようにセットされた試験体を複数準備し、それぞれのテンプレートと、ガラス電極基板に、500V、600V、700Vの電圧を所定時間印加して3種類の電気粘着シートを製造した。いずれの電気粘着ピラーもテンプレートの形状に従い、ピラー間の距離は300μmを保って形成された。
【0040】
そしてこのように製造された電気粘着シートの保持力を測定した。保持力を測定する際には、ガラス電極基板と、電気粘着シートを平面上に固定し、その上に更なるガラス電極基板を配置した。歪ゲージ式の力センサと保持対象となる電極を接続し、力センサを介して電極をスライドすることで、発生する固定力を測定した。
【0041】
(比較例)
比較例では、電極一つあたりの大きさが100μm×100μmで、電極同士の間隔がX方向において100μm、Y方向において100μmであるテンプレートを準備したこと以外は、実施例と同一の条件で電気粘着シートを形成した。
【0042】
(試験結果)
図4は、実施例及び比較例により電気粘着シートを形成するときの電圧の印加時間(s)と電圧(V)との関係を示すグラフであり、図5は、製造された電気粘着シートの表面の拡大写真を示す。図4において、Tは、電圧印加開始から一個目のピラーが形成されるまでの時間を示し、Tは、電圧印加開始からすべてのピラーが形成されるまでの時間を示す。そして「100-100」は比較例で準備したテンプレートを用いたときの測定結果を示し、「100-300」は実施例で準備したテンプレートを用いたときの測定結果を示す。なお、比較例で準備したテンプレートでは、最初のピラーが形成されるまでの時間T1を測定できたものの、ピラーが規則的に形成されなかったため、全てのピラーが形成されたのかを判定することができず、時間Twを測定することができなかった。
【0043】
図4に示す結果によれば、印加電圧が大きいほど時間T及び時間Tが減少し、ピラー完成までの時間が短縮化されていることが分かる。
【0044】
また、図6は、電気粘着シートの保持力(単位面積当たりの保持力)と電圧との関係を示すグラフである。図6に示す結果によれば、保持力は印加される電圧に比例して大きくなることが分かる。特に、600Vの電圧を印加したときには単位面積当たり8.2kPaの保持力が測定された。
【符号の説明】
【0045】
1 電気粘着シート
3 ERゲル
5 ER粒子
7 ピラー
9 導電性の基板
11 ERゲルの層
13 テンプレート
15 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6