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特許7150435硬化された複合部品の残留ひずみを測定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】硬化された複合部品の残留ひずみを測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
G01B11/16 H
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018000086
(22)【出願日】2018-01-04
(65)【公開番号】P2018185285
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】15/496,264
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ハオゾン・グ
(72)【発明者】
【氏名】イン・シャン
(72)【発明者】
【氏名】チ・ホ・エリック・チュン
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・エヌ・リン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・オルバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・イー・マクラリー
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-087888(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056790(WO,A1)
【文献】特表2000-501176(JP,A)
【文献】特開平04-172192(JP,A)
【文献】特表2009-508193(JP,A)
【文献】特開2016-094040(JP,A)
【文献】特開2017-032530(JP,A)
【文献】特開平07-219266(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0320176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30 102
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化された複合部品内の残留ひずみを測定する方法であって、
硬化された複合部品の面に位置付けられた少なくとも2つの離間した粒子の第1の画像を得るステップであって、前記面は第1の面を横切るように位置付けられ、前記硬化された複合部品が、繊維を含む第1のプライと、繊維を含む第2のプライとを含み、
第1のプライと第2のプライとが、互いに重なり合う関係で位置付けられ、前記第1の面は、第1のプライの面のうち、第2のプライと接する面とは反対側の面であり、
第1のプライの繊維の少なくとも一部が、第2のプライの繊維の少なくとも一部と角度を有する関係で位置付けられ、
硬化された複合部品の面に位置付けられた少なくとも2つの離間した粒子が、第2のプライに配置される、ステップと、
第1のプライの少なくとも一部分を除去するステップと、
硬化された複合部品から第1のプライの少なくとも一部分が除去された後、少なくとも2つの離間した粒子の第2の画像を得るステップと、
を含み、
残留ひずみが、前記第1の画像における少なくとも2つの離間した粒子の位置の差と前記第2の画像における少なくとも2つの離間した粒子の位置の差とから測定される、方法。
【請求項2】
第1の画像を得る前に、硬化された複合部品を調製するステップをさらに含み、前記調製するステップが、
第1のプライおよび第2のプライの端部を含む硬化された複合部品の面を塗料でコーティングするステップと、
塗料上に複数の粒子を分配するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塗料上に複数の粒子を分配するステップが、塗料と視覚的コントラストを有する複数の粒子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
塗料上に複数の粒子を分配するステップが、塗料上に粒子を噴霧するステップを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
複数の粒子を分配するステップが、トナーを含む複数の粒子を含む、請求項2から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数の粒子を分配するステップが、塗料の斑点を含む複数の粒子を含む、請求項2から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
硬化された複合部品を調製するステップが、塗料および粒子上にクリアコートを塗布するステップをさらに含む、請求項2から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1のプライの繊維が、第1の方向に延び、第2のプライの繊維が、複数の方向に延びる複数のチョップド繊維を含む、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1の画像を得るステップが、第1の画像を立体的に得るステップを含む、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1のプライの少なくとも一部分を除去するステップが、硬化された複合部品の前記第1の面の長辺の方向に沿って第1のプライの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1のプライの少なくとも一部分を除去するステップが、硬化された複合部品の前記第1の面の短辺の方向に沿って第1のプライの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1のプライの少なくとも一部を除去するステップが、第1のプライを研磨するステップを含む、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
第2の画像を得るステップは、第2の画像を立体的に得るステップを含み、
硬化された複合部品の残留ひずみを決定するステップをさらに含む、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1の画像を得るステップが、
硬化された複合部品が、第2のプライが第1のプライと第3のプライとの間に位置付けられるように、第2のプライと重なり合う関係を有する第3のプライを含むことと、
第3のプライが、繊維を含み、第3のプライの繊維の少なくとも一部が、第2のプライの繊維の少なくとも一部と角度を有する関係で位置付けられることと、を含み、
第1のプライの少なくとも一部を除去するステップが、少なくとも第1のプライの除去された部分が少なくとも2つの粒子と整列することを含み、
第1のプライの少なくとも一部を除去するステップが、少なくとも2つの粒子と整列する第3のプライの少なくとも一部を除去するステップをさらに含み、
少なくとも2つの離間した粒子の第2の画像を得るステップが、第1のプライの少なくとも一部の除去の後、および第3のプライの少なくとも一部の除去の後、実施される、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
第1のプライおよび第3のプライの繊維が、第1の方向に延び、第2のプライの繊維が、複数の方向に延びるチョップド繊維である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1のプライの少なくとも一部を除去するステップが、硬化された複合部品内に第1の凹部を形成し、
第1のプライの少なくとも一部を除去するステップが、硬化された複合部品内に第2の凹部を形成する、第3のプライの少なくとも一部を除去するステップをさらに含み、
第1のプライの少なくとも一部および第3のプライの少なくとも一部を除去するステップが、第1のプライを研磨するステップおよび第3のプライを研磨するステップを含み、
第1の凹部および第2の凹部の各々が、硬化された複合部品の幅を横切って延び、複合部品の面の長さの一部に沿って延びる、
請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
除去するステップが、第1の凹部および第2の凹部が硬化された複合部品に対して対称に位置付けられることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1の画像を得るステップが、第1の画像を立体的に得るステップを含み、
第2の画像を得るステップが、第2の画像を立体的に得るステップを含み、
硬化された複合部品内で残留ひずみを決定するステップをさらに含む、
請求項14から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
カメラによる画像化を使用して、硬化された複合部品内の残留ひずみを画像から測定するシステムであって、
前記硬化された複合部品に含まれる、繊維を含む第1のプライと繊維を含む第2のプライであって、
第1のプライと第2のプライとは重なり合う関係で位置付けられ、
第1のプライの繊維の少なくとも一部は、第2のプライの繊維の少なくとも一部と角度を有する関係にあり、
少なくとも2つの離間した粒子は、硬化された複合部品の面上に位置付けられ、第2のプライに配置される、繊維を含む第1のプライと繊維を含む第2のプライと、
2つの離間したカメラを含むカメラアセンブリであって、
それぞれのカメラが、少なくとも2つの離間した粒子と光学的に整列している、カメラアセンブリと、
を含み、
少なくとも2つの離間した粒子が位置付けられる前記面は、第1のプライの面のうち、第2のプライと接する面とは反対側の面である第1の面を横切るように位置付けられている、システム。
【請求項20】
第1のプライの少なくとも一部を除去するための第1のプライに関連する研磨工具をさらに含む、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合部品内の残留ひずみを測定すること、より詳細には、硬化工程において高温状態に曝された複合部品から生じる複合部品の残留ひずみを測定することに関する。
【背景技術】
【0002】
残留ひずみは、硬化工程中に複合部品が受ける温度の上昇および化学反応で複合部品内部に発生する。硬化された複合部品内部に保持された残留ひずみは、複合材料のクラック発生を容易にし、複合部品の疲労性能に影響を与える。複合部品内部の様々な位置に保持される残留ひずみの量を理解することは、クラック現象を低減し、複合部品の疲労性能を改善する機会を設計者および/または製造者に提供する有益な情報を与える。
【0003】
既存の方法は、繊維を含む複合材料ではない、等方性プラスチック材料における残留ひずみを測定するために使用される。複合部品における熱ひずみは、複合部品の温度を硬化温度に上げることによるひずみの変化を測定することによって決定されている。しかしながら、この方法論は残留ひずみを測定するのではなく、硬化温度までに複合部品に与えられるひずみのみを測定する。
【0004】
等方性材料の残留ひずみを測定するために用いられる方法としては、部品に穴あけ加工を施し、部品の表面で残留ひずみを測定するひずみゲージを設置することを含む方法がある。穴あけ加工の使用により材料除去の幾何学的形状が制限され、結果的に、その適用が低勾配ひずみ場に制限される。複雑で高勾配のひずみ場が対象である場合、除去工程には、円形の穴よりもはるかに複雑な幾何学的形状が必要となる。ひずみゲージの使用により、ひずみ測定の空間解像度もまた制限される。分解能が、ゲージのサイズによって制限され、配線による測定される部品に関連する空間の占有によってさらに制限されるためである。さらに、既存の方法は、使用可能であるが、ひずみ分布のフルフィールドを測定するためには使用することができない有限量のひずみゲージに起因して、部品に関して限られた位置しか測定することができない。
【0005】
硬化工程から複合部品内部に保持された硬化された複合部品内部の残留ひずみを測定し、複合部品の表面においてフルフィールド、高勾配および多軸ひずみ測定を行うことができることが必要である。さらに、ひずみゲージの設置または配置によって課される幾何学的制約を排除する必要がある。さらに、任意のターゲット形状における、および対象とする任意のひずみ勾配場の周りのひずみの測定を容易に可能にする方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一例として、硬化された複合部品の面に位置付けられた少なくとも2つの離間した粒子の第1の画像を得るステップであって、この面が第1の面側を横切るように位置付けられているステップを含む、硬化された複合部品の残留ひずみを測定する方法が挙げられる。硬化された複合部品は、繊維を含む第1のプライと、繊維を含む第2のプライとを含む。第1のプライおよび第2のプライは互いに重なり合った関係で配置される。第1のプライの少なくとも一部の繊維は、第2のプライの少なくとも一部の繊維と角度を有する関係で配置される。硬化された複合部品の面に配置された少なくとも2つの粒子は、第2のプライと関連している。この方法はさらに、第1のプライの少なくとも一部を除去するステップと、第1のプライの少なくとも一部が硬化された複合部品から除去された後に、少なくとも2つの離間した粒子の第2の画像を得るステップとを含む。
【0007】
硬化された複合部品の残留ひずみを測定するシステムの一例には、第1のプライが繊維を含み、第2のプライが繊維を含み、第1のプライと第2のプライとが重なり合う関係に配置され、第1のプライの少なくとも一部の繊維は、第2のプライの少なくとも一部の繊維と角度を有する関係で配置されるものが含まれる。少なくとも2つの離間した粒子が、第2のプライと関連する面に位置付けられる。システムは、2つの離間したカメラを含むカメラアセンブリをさらに含み、各カメラは、少なくとも2つの離間した粒子と光学的に位置合わせされている。
【0008】
議論された特徴、機能、および利点は、様々な実施形態において独立して実現され得るか、またはさらなる詳細が以下の説明および図面を参照して理解され得るさらに他の実施形態において組み合わされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】硬化された複合部品の残留ひずみを測定する方法のフローチャートを含む。
図2】硬化された複合部品の残留ひずみを測定するために使用される複合部品およびカメラの第1の実施例の斜視部分破断図である。
図3】第1のプライの少なくとも一部が除去された状態での、図2の複合部品およびカメラの第1の実施例の斜視図である。
図4】硬化された複合部品の残留ひずみを測定するために使用される複合部品およびカメラの第2の実施例の斜視部分破断図である。
図5】第1のプライの少なくとも一部分が除去され、第3のプライの一部が除去された状態での、図4の複合部品の第2の実施例の斜視図である。
図6】第2のプライがチョップド繊維を有する、複合部品の第2の実施例の図4の斜視部分破断図である。
図7】面上に2つの離間した粒子を示す図4の側面図である。
図8図5の側面図であり、除去された第1のプライの少なくとも一部および第3のプライの少なくとも一部分、図7に示す離間した粒子の元の位置、および第1および第3プライの少なくとも一部分を除去した後の新しい位置における離間した粒子の位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
硬化された複合部品の残留ひずみの測定は、複合部品に関して設計者および製造者に有益な情報を提供する。複合部品内部の残留ひずみは、クラックの発生を容易にし、使用中の複合部品の疲労性能に影響を及ぼし得る。上述したように、ひずみゲージおよび穴あけ加工による弊害および制限を課さずに、複合部品内部の対象となるひずみ勾配場内の硬化された構成部品に保持された残留ひずみを測定する方法を提供する必要がある。本明細書に記載される方法およびシステムは、複合部品に関してひずみゲージおよび穴あけ加工を使用することによって生じる弊害および制限を課すことなく所望のひずみ場情報を得ることを提供する。
【0011】
本明細書に記載される方法およびシステムは、硬化された複合部品の残留ひずみを解放し、デジタルカメラによる画像化を使用して対象領域内の残留ひずみを直接測定することを可能にする。当然のことながら、本方法および本システムの使用は、フルフィールドひずみ分布の測定結果、高分解能での測定結果、対象とする高勾配ひずみ場の測定結果、および部品の表面の多軸ひずみの測定結果を得る機会を提供する。さらに、本方法および本システムの使用は、残留ひずみ測定がひずみゲージの設置または配置によって制限されないので、幾何学的限界を排除する。本明細書に記載された方法およびシステムは、残留ひずみの拘束を緩和する複合部品の材料の除去と、残留歪の測定を容易にする光学デジタル画像化の提供で動作する。本明細書に記載された方法およびシステムの動作は、任意の対象の形状におけるおよび対象のひずみ勾配場に関する残留ひずみの測定を可能にする特定の形状およびシーケンスにおける残留ひずみ測定値を取得する際の汎用性を提供する。
【0012】
図1を参照すると、硬化された複合部品の残留ひずみを測定する方法10は、図2に示すように、例えば離間して配置されたデジタルカメラ15および17を含むデジタルカメラアセンブリ13を用いて、少なくとも2つの離間して配置された粒子AおよびBの第1の画像を撮影するステップ12を含む。この実施例では、少なくとも2つの離間して配置された粒子AおよびBが、硬化された複合部品16の面14に配置され、面14が第1の面側18を横切って位置決めされる。硬化された複合部品16は、複合部品16の第1の面側18に配置された第1の面22を含む第1のプライ20を含む。第2のプライ24は、第1のプライ20の対向する第2の面28に沿ってその上に位置付けられる第1の面26を含む。第1のプライ20は繊維30を含み、第2のプライ24は繊維32を含む。第1のプライ20および第2のプライ24は互いに重なる関係で位置付けられる。第1のプライ20の繊維30の少なくとも一部は、第2のプライ24の繊維32の少なくとも一部と角度を有する関係で配置される。この実施例では、第1のプライ20および第2のプライ24の繊維30および繊維32は、各々互いに横切る方向に延びる。少なくとも2つの離間した粒子AおよびBが、硬化された複合部品16の面14に配置され、第2のプライ24と関連付けられる。この実施例では、2つの離間した粒子AおよびBが第2のプライ24上に位置付けられる。
【0013】
方法10は、第1プライ20の少なくとも一部分36(図3の第1プライ20の除去部分として示される)を除去するステップ34をさらに含む。本明細書でより詳細に説明するように、第1プライ20の部分36は、複合部品16から研磨される。第1プライ20の少なくとも一部分36を除去することによって、第1プライ20の少なくとも一部分36から繊維30が結果的に除去される。第1のプライ20の部分36の繊維30は、第2のプライ24の繊維32および硬化工程から得られたひずみ位置にある拘束された繊維32に対して角度を有して配置された。第1のプライ20の少なくとも部分36を除去することにより、または方法10の特定の実施例では第1プライ20全体を除去することにより、部分36内部の繊維30は対応して除去され、繊維32に与えられた拘束が除去されて、繊維32が緩和され、繊維32内の残留ひずみが反転することを可能にする。残留ひずみの反転により、複合部品16は、硬化中に生じた伸長状態から収縮することが可能になる。
【0014】
残留ひずみが拘束された硬化された複合部品16の基準構造は、図2に示すように、複合部品16の面14の第2のプライ24上に位置付けられた少なくとも2つの離間した粒子AおよびBとともに示されている。少なくとも2つの粒子AおよびBの位置は、硬化部品16上の初期基準点であり、第1のプライ20および第2のプライ24は、複合部品16の硬化の結果としてひずみを受ける。したがって、第1のプライ20の少なくとも一部分36を除去するステップ34で、第1のプライ20によって部分36が除去された位置で第2のプライ24に付与された拘束が除去される。その場所にある第2のプライ24は緩和し、その場所にある第2のプライ24が、硬化工程から第2のプライ24に与えられた残留ひずみを反転させることを可能にする。その結果、図3に示すように、部分36を除去する前の少なくとも2つの粒子AおよびBの元の位置は、部分36を除去した状態でそれぞれ新しい位置A’およびB’に移動する。
【0015】
方法10は、第1のプライ20の少なくとも一部分36を除去した後、第2のプライ24を収縮させる残留ひずみの反転により今は位置A’およびB’にそれぞれ移動した、少なくとも2つの離間された粒子AおよびBの第2の画像を得るステップ38をさらに含む。この実施例では、図2に示すように、複合部品16は最初に所定の位置に位置決めされ、第1の画像の撮影が行われる時間ステップ12でデジタルカメラアセンブリ13が第2の所定の位置に位置決めされた。この実施例では、複合部品16は、第1の画像を撮影するステップ12の完了とともに、所定の位置から除去される。第1のプライの少なくとも一部分36が除去されると、複合部品16は、図3に示すように、第2の所定の位置に留まっているデジタルカメラアセンブリ13とともに、所定の位置に再位置決めされる。このように、第2の画像を撮影するステップ38が実施されると、少なくとも2つの粒子AおよびBの位置のそれぞれA’およびB’への移動が、第1のプライ20の部分36の除去の前にこの対象とする場の内部で硬化工程から複合部品16内に保持された、残留ひずみを表している。その結果、本明細書で議論されるような残留ひずみの測定値は、ひずみゲージおよび穴あけ複合部品16によって課せられる制限によって妨げられることなく、デジタル光学カメラアセンブリ13の使用を介して直接決定され、確認される
【0016】
硬化された複合部品の残留ひずみを測定するための方法10は、第1の画像を撮影するステップ12の前に、硬化された複合部品16を調製するステップをさらに含む。硬化された複合部品16を調製するステップは、この実施例では、複合部品16の面14をコーティングするステップを含み、該ステップは、この実施例では、第1のプライ20および第2のプライ24の端部を塗料でコーティングするステップを含む。面14のための視覚的背景を提供する、塗布された塗料を用いて、複合部品16の調製は、複数の粒子を塗料上に分配するステップをさらに含み、複数の粒子は、塗料と視覚的に対照的な関係にある。複数の粒子を塗料上に分配するステップは、この実施例では、粒子を塗料上に噴霧するステップを含む。複数の粒子は、トナーおよび/または塗料の斑点を含むことができる。
【0017】
複数の粒子39は、例えば本明細書で説明する複合部品16’に関する図7および図8に見ることができる。背景としての塗料と粒子39との間の視覚的コントラストは、少なくとも2つの粒子AおよびBの識別を容易にする。コントラストは、適用される色において、異なる色および/または明るさを使用して実現することができる。塗料および粒子39上にクリアコートを塗布することにより、例えば、第1のプライ20の少なくとも部分36が除去されたときに、粒子を保護することができる。この実施例における視覚的コントラストは、白色塗料と黒色トナー粒子39を使用している。
【0018】
図3に示すように、この実施例の第1の画像を撮影するステップ12では、第1のプライ20の繊維30が、硬化された複合部品16の幅Wを横切って第1の方向40に延び、第2のプライ24の繊維32が、硬化された複合部品16の長さLに沿って第2の方向42に延びている。この実施例において、第2の方向42は、第1の方向40と交差する方向である。前述のように、第1プライ20と第2プライ24との間に維持された拘束は、繊維30の少なくとも一部分が、繊維32の少なくとも一部分と角度を有する関係で位置付けられることで実現される。
【0019】
この実施例における第1のプライ20の繊維30は、第2のプライ24の繊維32と角度を有する関係にあり、硬化工程中に複合部品16に与えられたひずみを拘束する。この拘束は、第1のプライ20と第2のプライ24との間の様々な異なる方向に延びる繊維によって実現され得る。この繊維の角度方向は、多数の異なる方法で実現され得る。例えば、第1のプライ20の一方向繊維は、第2のプライ24の一方向繊維に対して角度を有して配向させることができる。第1のプライ20内部の織物繊維および第2のプライ24内の織物繊維は、互いに対して角度を有して配向され得る。第1プライ20および第2プライ24の内部に異なる繊維構造を使用することができ、例えば一方向性繊維を第1のプライ20に使用し、第2のプライ24内の織物繊維に対して角度をなして配向させることができる。第1のプライ20および第2のプライ24内部に配置された繊維の様々な組み合わせは、2つのプライの繊維間に必要な角度方向性を提供し得る。繊維のさらなる角度配向はまた、例えば図6の第2のプライ24に見られるように、チョップド繊維44を利用して実現され得る。この実施例では、複数の方向に延在するチョップド繊維44の少なくとも一部は、本明細書でさらに論じるように、第2のプライ24を挟んでいるプライの繊維に対して角度を有する関係にある。図2および図3に示される実施例において、拘束は、第1のプライ20の繊維の少なくとも一部の角度関係が、第2のプライ24内の繊維の少なくとも一部との間で確立される限り実現される。図2および3において、チョップド繊維44が、第1のプライ30および第2のプライ32の一方または両方に用いられ得る。
【0020】
図2を参照すると、第1の画像を撮影するステップ12は、第1の画像を立体的に撮影するステップと、この実施例では第2のプライ24に配置されている、少なくとも2つの離間した粒子AおよびBを配置して特定するステップとを含む。少なくとも2つの離間した粒子AおよびBは、図2および例えば図7に見ることができる。図2に示すように、この実施例のデジタルカメラアセンブリ13は、複合部品16の面14に位置付けられた少なくとも2つの離間した粒子AおよびBの立体画像を撮影する2つの離間したデジタルカメラ15および17を含む。この実施例では、2つのプライ20および24が使用され、第1プライ20の少なくとも一部分36を除去することによって、少なくとも2つの粒子AおよびBが損傷を受けないまたは除去されないような位置で、第2のプライ24上に少なくとも2つの離間した粒子を選択することが有益である。また、第1の凹部46の配置の内部に少なくとも2つの離間した粒子AおよびBを選択することも有益であり、図3に見られるように第1のプライ20の少なくとも一部分36が除去されている。方法10の使用では、選択された対象領域内の残留ひずみ測定に使用するために多数の粒子対を選択することができる。
【0021】
部分36が除去されている図3に示される、第1のプライ20の少なくとも一部分36を除去するためのステップ34において、この実施例では、硬化された複合部品16の面14の全長L未満の第1のプライ20の一部分を除去するステップが含まれる。さらに、この実施例では、第1のプライ20の少なくとも一部分36を除去するステップ34は、硬化された複合部品16の幅Wに沿って第1のプライ20の少なくとも一部を除去するステップをさらに含む。この実施例では、第1のプライ20の少なくとも一部分36は、図3に示すように、硬化された複合材料16の全幅Wを含む。本明細書の複合部品16内部の残留ひずみを測定する方法10を実施する際に、第1のプライ20の一部または第1のプライ20のすべてを除去することができることを理解されたい。
【0022】
第1のプライ20の少なくとも一部分36を除去するステップ34は、研磨工具(図示せず)を用いるステップと、この実施例では、複合部品16の第1のプライ20から部分36を研磨により取り除き、かつ図3に示すように、複合部品16に第1の凹部46を形成するステップとを含む。この実施例では、凹部46は、長さLの一部分を横切って、かつ複合部品16の全幅Wを横切って延びている。図3に示すように、第1のプライ20の少なくとも一部分36を除去するステップ34を実行することで、面14に位置する2つの離間した粒子AおよびBの第2の画像を撮影するために、ステップ38を用いることができる。この実施例では、粒子AおよびBは硬化された複合部品16の第2プライ24上に配置される。
【0023】
第1のプライ20の少なくとも一部分36が除去された状態で、2つの離間した粒子AおよびBがそれぞれ位置A’およびB’に移動している。それらは、硬化の結果として複合部品16に最初に与えられた残留ひずみの反転に対応して移動している。その結果、AからA’およびBからB’の位置の変化を求め、AとBとの位置の差とA’とB’との位置の現在の差を知ることにより、硬化された複合部品16のこの対象領域での残留ひずみが決定されかつ確認される。
【0024】
図4から図6および図7および図8を参照すると、硬化された複合部品16’内の残留ひずみを測定するための方法10が、複合材料の3つの重なり合うプライを含む複合部品16’に関して示され、ここで説明される。図2および図3に示す複合部品16の2つのプライ構造に関連した要素は、図4から図6および図7および図8の複合部品16’の3つのプライ構造に関して同じ要素であり、番号による識別には同じ番号を用いる。図4を参照すると、第1の画像を撮るステップ34は、第1の面50を含む第3のプライ48を有する複合部品16’を含み、第3のプライ48は第2のプライ24の対向する第2の面52の上にかつ沿って位置する第1の面50を含み、第3のプライ48が第2のプライ24と重なり合う関係を有するようにし、かつ第2のプライ24が第1のプライ20と第3のプライ48との間に位置付けられるようにする。第3のプライ48は、繊維54を含み、第3のプライ48の繊維54の少なくとも一部分が第2のプライ24の繊維32の少なくとも一部分と角度を有する関係で配置される。第1の画像は、立体画像を撮影する離間したデジタルカメラ15および17を有するデジタルカメラアセンブリ13で撮影される。
【0025】
図5を参照すると、第1のプライ20の少なくとも一部分36を除去するステップ34は、第1のプライ20の少なくとも一部分36が除去された形態、この実施例では、少なくとも2つの粒子AおよびBと整列した硬化された複合部品16’内の第1の凹部46、を含む。第1のプライ20の少なくとも一部分36を除去するステップ34は、少なくとも2つの粒子AおよびBと整列した硬化された複合部品16’内に第2の凹部58を形成する第3のプライ48の少なくとも一部分56を除去するステップをさらに含む。この実施例では、少なくとも2つの粒子AおよびBは、第1のプライ20の少なくとも一部分36の除去および第3のプライ48の少なくとも一部分56の除去の際に損傷を受けまたは除去されないように、第2のプライ24上に配置される。第1のプライ20の少なくとも一部分36および第3のプライ48の少なくとも一部分56を除去するステップ34は、この実施例では、図5に示されるように、研磨工具で第1のプライ20および第3のプライ48を研磨することによって実現される。
【0026】
第1のプライ20の少なくとも一部分36および第3のプライ48の少なくとも一部分56を除去するためのステップ34は、図5に見ることができ、部分36および56は除去されている。部分36は、硬化された複合部品16の面14の全長L未満の第1のプライ20の一部分を除去することで除去され、部分56は、硬化された複合部品16の面14の全長L未満の第3プライ48の一部分を除去することで除去されている。さらに、この実施例では、第1のプライ20の少なくとも一部分36を除去するステップ34は、硬化された複合部品16’の幅Wに沿って第1のプライ20の少なくとも一部分36を除去するステップをさらに含み、複合部品16’の幅Wに沿って第3のプライ48の少なくとも一部分56を除去するステップを含む。この実施例では、第1のプライ20の少なくとも一部分36および第3のプライ48の少なくとも一部分56は、硬化された複合部品16’の全幅Wを含む。残留ひずみの測定を実施する際に、第1のプライ20の一部または第1のプライ20のすべてを除去することができ、第3のプライ48の一部または第3のプライ48のすべてを除去することができることを理解されたい。部分36および56が除去された状態で、第1のプライ20のすべておよび第3のプライ48のすべてが除去されていない場合、第1のプライ20および第3のプライ48に形成された凹部46および58の各々はそれぞれ、硬化された複合部品16’に対して対称に位置づけられる。この実施例では、第1のプライ20の少なくとも一部分36が除去され、第3のプライ48の少なくとも一部分56が除去されて、少なくとも2つの離間した粒子AおよびBの第2の画像を撮影するステップ38が実施される。
【0027】
複合部品16の所定の位置での位置決めに関して既に述べたように、同様に複合部品16’は、図4に示すように所定の位置に位置決めされ、デジタルカメラアセンブリ13は、少なくとも2つの粒子AおよびBの第1の画像を撮る際に第2の所定の位置に位置決めされる。この実施例では、複合部品16’が所定位置から除去されて、第1のプライ20および第3のプライ48の少なくとも一部分36および少なくとも一部分56がそれぞれ除去され、デジタルカメラアセンブリ13が図5の第2の所定の位置にとどまっている状態で、図5に示される所定の位置に戻される。複合部品16’が所定の位置にある状態で、少なくとも2つの離間した粒子AおよびBの第2の画像を撮影するステップ38は、立体画像を撮影するデジタルカメラ17から離間されたデジタルカメラ15を有するデジタルカメラアセンブリ13を使用して実施される。
【0028】
複合部品16に関して既に説明したように、複合部品16’も同様に、硬化工程中にひずみを生じ、図7に見られるように少なくとも2つの離間した粒子AおよびBは、複合部品16上の位置を表し、複合部品16は、硬化工程中に収縮する際にひずみを受ける。第1のプライ20の部分36と第3のプライ48の部分56とを除去すると、第1の凹部46および第2の凹部56にある第2のプライ24が緩和し、図8に示すように、残留ひずみが粒子AおよびBの移動を、新しい位置である今は収縮された第2のプライ24上に位置するA’およびB’に反転させる。複合部品16’の位置を所定の位置に戻すと、ステップ38で第2の画像が取得されるが、粒子AおよびBが、位置A’およびB’に位置付けられる粒子へと位置を移動するのは、複合部品16’における残留ひずみの除去の結果である。
【0029】
この実施例では、第1のプライ20の少なくとも一部分36が除去され、第3のプライ48から少なくとも一部分56が除去された状態で、2つの離間した粒子AおよびBがそれぞれ位置A’および’に移動している。それらは、図7および図8に見られるように移動しており、これは、硬化の結果としての複合部品16’に最初に付与された残留ひずみの反転に相当する。その結果、AからA’およびBからB’の位置の変化を求め、AおよびBの間の位置の差と、A’およびB’の間の位置の現在の差を知ることにより、硬化された複合部品16’のこの対象領域において残留ひずみが決定されかつ確認される。
【0030】
図4において複合部品16’について示された実施例に見られるように、第1のプライ20の繊維30と第3のプライ48の繊維54は第1の方向40に延び、第2のプライ24内の繊維32は第2の方向42に延びている。複合部品16に関して同様に上述したように、一方では、第2のプライ24の繊維32に関する、第1のプライ20内部の繊維30の少なくとも一部との間の角度の関係、および第2のプライ24の繊維32に関する、第3のプライ48内部の繊維54の少なくとも一部分との間の角度の関係が、複合部品16’における残留ひずみの拘束を提供する。後で解放することができる残留ひずみの必要な拘束を実現するために、第1のプライ20、第2のプライ24、およびまた第3のプライ48の間に、上述したような繊維の多数の構成を用いることができる。この構成の別の実施例を図6に示す。図6では、第1のプライ20の繊維30および第3のプライ48の繊維54は第1方向40に延び、第2のプライ24内の繊維は複数の方向に延びるチョップド繊維44である。チョップド繊維の他の使用形態が、第1のプライ20、第2のプライ24および第3のプライ48のうちの1つまたは複数において採用され得る。
【0031】
図4および図5に示す実施例において、第2のプライ24内の繊維32に対する拘束は、第1のプライ20の部分36および第3のプライ48の部分56の除去時に解除される。拘束は、第1のプライ20内の繊維30と第2のプライ24内の繊維32との間の角度の関係、および第3のプライ48内の繊維54と第2のプライ24内の繊維32との間の角度の関係の結果として、上述したように得られる。拘束は、上述したように、繊維30、32、および54の数多くの様々な配列で、第2のプライ内で実現されることができる。これらの配列は、単方向繊維、織物繊維、(複数の方向に伸びる)チョップド繊維の使用、および上述のようにプライの間に角度を有して配置されたこれらの配列の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0032】
硬化された複合部品内の残留ひずみを測定するためのシステムがさらに含まれ、該複合部品は、硬化された複合部品16の第1の面側18上に配置された第1の面22を含む第1のプライ20と、第1のプライ20の対向する第2の面28上にかつそれに沿って配置された第1の面26を含む第2のプライ24とを含み、第1のプライ20と第2のプライ24とは互いに重なる関係に配置される。第1のプライ20は繊維30を含み、第2のプライ24は繊維32を含み、第1のプライ20の繊維30の少なくとも一部は、第2のプライ24の繊維32の少なくとも一部と角度を有する関係にある。少なくとも2つの離間した粒子AおよびBが、第2のプライ24に関連して、面14に配置される。さらに、システムは、2つの離間したデジタルカメラ15および17を含むカメラアセンブリ13を含み、各カメラは、少なくとも2つの離間した粒子AおよびBと光学的に整列している。さらに、システムは、少なくとも2つの離間した粒子AおよびBと整列した第1のプライ20の少なくとも一部分36を除去するための、第1のプライ20に関連する研磨工具(図示せず)をさらに含む。本明細書に記載のシステムは、硬化された複合部品16内の残留ひずみの測定を容易にする。
【0033】
様々な実施形態について上述したが、本開示はそれに限定されるものではない。添付の特許請求の範囲内にある開示された実施形態に変形を加えることができる。
【符号の説明】
【0034】
13 カメラアセンブリ
14 面
15 デジタルカメラ
16、16’ 複合部品
17 デジタルカメラ
18 第1の面側
20 第1のプライ
22 第1の面
24 第2のプライ
26 第1の面
28 第2の面
30 繊維
32 繊維
36 少なくとも一部分
39 複数の粒子
40 第1の方向
42 第2の方向
44 チョップド繊維
46 第1の凹部
48 第3のプライ
50 第1の面
52 第2の面
54 繊維
56 少なくとも一部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8